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1 : 2014/08/21(木) 14:00:07.78 -
ご覧いただきありがとうございます。
・こちらは『【咲SS】淡「ここが白糸台高校麻雀部かー!」』の続きとなっております。
・ここまでのお話、特記事項は、以下をご参照ください。
【咲SS】淡「ここが白糸台高校麻雀部かー!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392028470/【咲SS】淡「ここが白糸台高校麻雀部かー!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401382574/・以下、あらすじ等。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408597197
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408597197/
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2 : 2014/08/21(木) 14:03:51.39 -
<あらすじ>
科学《デジタル》と能力《オカルト》が共存する街。
白糸台研究学園都市。
現在、白糸台研究学園都市に在籍する高校生は約一万人。書類上、その全員が、同じ高校の、同じ部活に所属している。即ち、白糸台高校麻雀部。
五月上旬。夏のインターハイに白糸台高校麻雀部代表として出場する一軍《レギュラー》の一枠を勝ち取るべく、学園都市各所でチーム編成が行われていた。
超能力者《レベル5》の第一位——《通行止め》こと、花田煌。
最高位の支配者《ランクS》——《超新星》こと、大星淡。
転校生として学園都市にやってきた二人は、東横桃子、森垣友香、宮永咲を仲間に引き入れ、チーム《煌星》を結成する。
ブロック予選を突破したチーム《煌星》は、本選へ進出。
各ブロック予選を勝ち抜いた計52チームによる、一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》。
チーム《煌星》は、ベスト8の激突するA・Bブロック三回戦を三位通過、準決勝へと駒を進めた。
他方、C・Dブロック三回戦でも、ベスト8同士の熾烈な戦いが繰り広げられていた。
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3 : 2014/08/21(木) 14:04:43.15 -
<ベスト8チーム一覧>
《チーム名》:リーダー、メンバー×4(名前順)
○C・Dブロック三回戦(一位→決勝進出、二位・三位→準決勝進出)
《久遠》:竹井久、愛宕洋榎、新子憧、小瀬川白望、白水哩
《幻奏》:小走やえ、江口セーラ、片岡優希、ネリー=ヴィルサラーゼ、亦野誠子
《永代》:宮永照★、井上純、臼沢塞、染谷まこ、高鴨穏乃☆
《新約》:園城寺怜☆、愛宕絹恵、薄墨初美、鶴田姫子☆、原村和
○決勝進出
《劫初》:弘世菫、天江衣★、荒川憩、エイスリン=ウィッシュアート、辻垣内智葉
○準決勝進出
《逢天》:二条泉、姉帯豊音、神代小蒔★、松実玄☆、龍門渕透華
《煌星》:花田煌☆、大星淡★、東横桃子、宮永咲★、森垣友香
○三回戦敗退
《豊穣》:渋谷尭深☆、石戸霞、清水谷竜華、福路美穂子、松実宥
(※ ☆=レベル5、★=ランクS)
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5 : 2014/08/21(木) 15:07:31.82 -
<元ネタ一覧(敬称略)>
咲キャラ:禁書キャラ
○主人公1
花田煌:一方通行
大星淡:打ち止め
○主人公2
小走やえ:上条当麻・木原数多
○アイテム・主人公3
二条泉:浜面仕上
松実玄:麦野沈利
神代小蒔:滝壺理后
龍門渕透華:フレンダ=セイヴェルン
姉帯豊音:絹旗最愛
○ジャッジメント・スピンオフ主人公
原村和:初春飾利
園城寺怜:佐天涙子
○スキルアウト
染谷まこ:駒場利徳
○スクール
竹井久:垣根帝督
新子憧:心理定規
○ナンバーセブン
高鴨穏乃:削板軍覇
○魔術サイド
ネリー=ヴィルサラーゼ:インデックス
辻垣内智葉:土御門元春
メガン=ダヴァン:ステイル=マグヌス
○教職員
三尋木咏:月詠小萌
藤田靖子:電話の女
久保貴子:寮監
赤阪郁乃:冥土帰し
小鍛治健夜:アレイスター=クロウリー
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・元ネタはあくまで参考程度なので、元ネタ的にありえないことも平気で起きたり設定されたりします。竹井さんがレベル5でなかったりとか、小走さんが二属性(元ネタではまずありえない組み合わせ)を備えていたりとか。
・元ネタから反映されているのは、『肩書き』『役割』『属性』とかです。例えば、花田さんは『肩書き』と『役割』、大星さんは『役割』と『属性』ですね。
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6 : 2014/08/21(木) 15:09:56.17 -
では、ご覧いただきありがとうございました。
次の更新は来月(二週間後)くらいになります。
失礼しました。
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22 : 2014/09/06(土) 16:45:49.50 -
大変お待たせしました。
<あらすじ(本編とは何の関係もない落書き)>
ネリインデックスさんのシェオールフィアが発動!
弘世さん・大星さんがKO!
憩「なあ、花田さん。これって対抗策とかあるん?」
煌「原作では……何人かの魔術師の方々が、ペンなどの細長いものを耳に突っ込んで、自らの鼓膜を破っていましたね」
憩「痛い痛い痛い!!」
煌「正直、あまりオススメはできません」
憩「いや、やらへんからな!?」
*
では、始めます。
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25 : 2014/09/06(土) 17:00:55.28 -
久「それにほら、見てご覧なさいよ。我らが《頂点》の泰然自若たる様を。さすが学園都市のナンバー1は、私たち三下とは格が違うわっ!!」
初美「こっちはベラベラ喋って動揺を隠そうとしてるってのに、この異常事態に対しても、いつも通り、ただ無言で賽が振られるのを待つのみですー」
ネリー(て……てる——!?)ゾワッ
照「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
西家:宮永照(永代・124800)
久「どうかしら、ネリーさん? これが学園都市の《頂点》よ。あなたがどこの世界から来て、どれだけすごい打ち手なのか知らないけれど、お生憎様だったわね」
初美「全てにおいて最高の雀士——悔しいですけどー、やっぱり宮永照は、私たちのナンバー1なんですよー」
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26 : 2014/09/06(土) 17:04:29.56 -
ネリー「オ、オーケーなんだよ……!! 私の魔滅の声《シェオールフィア》を聞いて、ここまで普段通りでいられるなんて……さすがてるなんだよっ!!
その《頂点》としての揺るぎない姿に敬意を表して——私も持てる力の全てをぶつけるんだよ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ照「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー「(わ、私がこれだけプレッシャーを掛けても、顔色一つ変えない……!? てる……てるはすごいよ……っ!! これが——科学世界……学園都市の《頂点》!!)
さあ、後半戦を始めるんだよっ!!」初美「サイコロ回れですよーっ!!」コロコロ
久「能力ナシで打つのなんて久しぶりで楽しみねーっ!!」
照(……………………どうしよう。驚いて声も出ないでいたら、なんだかとても勘違いされてしまった……)
ネリー(てる……魔術世界の《頂点》として、運命奏者《フェイタライザー》として——私はあなたに勝ってみせる……!!)
照(ま、まあ……いっか)
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27 : 2014/09/06(土) 17:07:49.80 -
——《永代》控え室
穏乃「ああああああああああああああああーーーーー!!」
まこ・純・塞「——ッ!!」キーン
穏乃「ああああぁぁぁぁー……。ふう。山以外でこんな大声出したのは初めてです」
塞「び……びっくりさせないでよ!! 高鴨、あんた何考えてるのっ!?」
まこ「後半戦が始まると思ったらいきなり叫び出しよって」
純「ったく……耳塞いでたのに、まだ頭がガンガンしやがる……」
穏乃「あっ、その様子だと、ひとまず大丈夫そうですね」
純「……はあ?」
穏乃「すいません。今しがた、ネリーさんがかなり危険な『何か』を口ずさみ始めたのが聞こえたので、みなさんの耳に入ったらマズいと思い、叫んでみました。咄嗟のことで、他に対策が思いつかなくて」
まこ「穏乃……わら何を言っとるんじゃ?」
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28 : 2014/09/06(土) 17:14:30.05 -
穏乃「私もよくわからないんですけど。なんでしょう……《無効化》とかじゃなくて、能力そのものを奪うような呪文といいますか。
効果対象は対局者に限られている感じでしたけど、そうではない能力者にも、かなりの精神的ダメージを与えるものだと予想されます」純「呪文? 能力を奪う……?」
穏乃「とりあえず、スピーカー越しに聞く分には、物理的に耳を塞ぐことで、あの呪文の影響を回避できるみたいですね。
面と向かってやられると、どうしようもないかもしれませんが」塞「高鴨は、耳塞いでなかったけど、大丈夫だったわけ?」
穏乃「大丈夫みたいですね。私はちょっと特殊なので断言はできないのですが、たぶん、あの呪文はレベル5には効かないと思われます。
なので、今はレベル5とレベル0しかいない《新約》の控え室は、比較的平和かと」純「えーっと、あいつの謎呪文を聞いたレベル5以外の能力者は、能力を奪われる——奪われずとも、それなりの精神的ダメージを喰らう……と。
だとすると、《幻奏》はまあ予備知識があるはずだからいいとして、《久遠》のとこが心配だな」まこ「もちろん対局室のほうも心配じゃけどな。まあ、照とあの《凶悪》の二大レベル4なら、滅多なこともないじゃろうが……」
塞「シロ……大丈夫かしら……」
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29 : 2014/09/06(土) 17:16:54.14 -
——《久遠》控え室
哩「おーい、シロ。後半戦始まったと」
白望「」
洋榎「ん? なんや……シロのやつ、様子おかしないか?」
憧「えっ……? シロ? あんた、どうかした? どこか悪いの……?」
白望「」
憧「シ、シロ!? ねえ、起きてよ!? どうしちゃったの!?」ユッサユッサ
白望「う……?」パチッ
憧「あ、起きた!! ねえ? どうしたの? 大丈夫!?」
白望「うぅぅ……なに言ってるかわからない……」キュポン
憧「み——耳栓……!?」ゾワッ
白望「あー……もう後半戦始まった……? もう少し寝かせてほしい……」
憧「応援しなさいよ、このバカ!!」
白望「ダルい……」
哩・洋榎「シロはブレなかね(んなー)」
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30 : 2014/09/06(土) 17:19:50.03 -
——《幻奏》控え室
やえ「よーし。亦野、片岡。もういいぞ」ポンッ
優希「これはどういうことだじょ、やえお姉さん?」カポッ
誠子「急にヘッドホンをつけろだなんて」カポッ
やえ「ネリーから魔滅の声《シェオールフィア》の合図があったからな。いくら効果対象でないとは言え、能力者なら下手すれば気を失うレベルの超毒音波だ。
まだ対局があるお前らに、無駄なダメージを与えるわけにはいかない」セーラ「……えっと、ネリーは今何をやったん? その、魔滅の声《シェオールフィア》ってなんなん?」
やえ「ネリーの魔滅の声《シェオールフィア》を聞くと、効果対象となった能力者は、一時的に、レベル4以下の能力を全て失う」
優希・誠子・セーラ「ぶうううううううううう!!!」
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31 : 2014/09/06(土) 17:25:41.81 -
やえ「宮永の《万華鏡》も、竹井の《悪待ち》も、初美の《裏鬼門》も例外じゃない。
あいつらは、今、それらの能力を根本から失っている。能力論的に言えば、半荘一回ずっと《完全無効化》を食らってることになるな」優希「ネリちゃんがオカルト過ぎるじょ!!」
誠子「能力を奪うって……意図的にそんな……!?」
セーラ「まあ……せやけど、それを事前知識なしに喰らっときながら、わりと普通にデジタルで対応しとるあの三人のほうが、俺はよっぽど恐いわ」
やえ「竹井と初美は《凶悪》——レベル4の中でも、かなり性質の悪い二人というか、ある意味で、どっちも聞く耳を持たないタイプだからな。まあ、宮永に関しては、さすがと言ったところか。
魔滅の声《シェオールフィア》を聞いて平然としていられる能力者など、ネリーも初めて見るに違いない」優希「けど、ネリちゃんは《悪魔》のお姉さんと同じことができるんだじぇ。
いくら日焼けお姉さんと悪女お姉さんの素の実力が高くても、能力を使わずネリちゃんをどうこうするのは、無理に決まってるんだじょ」誠子「前半戦では、あの宮永先輩でさえ、ネリーさんの起親を流すまでに七局かかったわけですからね」
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32 : 2014/09/06(土) 17:29:06.16 -
セーラ「やり方次第やろな。あの《悪魔》とは、俺も個人戦で当たったことがある。
白水と福路と俺と、全員レベル0やったけど、三人がかりなら、まあそこそこええ勝負ができたで。もちろん、ええ勝負止まりやったけど」ネリー『ロン、2000なんだよ!』
久『っと。はい』
やえ「ふむ。ネリーも、それなりにてこずってるみたいだな。安手なのがいい証拠だ」
優希「どうなっちゃうんだじぇ?」
誠子「聞く限りでは、明らかにネリーさん優勢ですが……」
セーラ「どうやろな。後半戦はまだ始まったばかりや。何がどうなるかは、まーだわからへんよなー」
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33 : 2014/09/06(土) 17:36:07.68 -
——《新約》控え室
和「ぺ……北家の初美さんが——!!?」
絹恵・姫子・怜「東と北を一枚も」
和「なんて無駄のないデジタル打ち!!! 惚れ惚れします!! やっと私の祈りが届きましたか!!
そうですよっ、初美さん!! それでいいんです!! さすが我らが風紀委員長!!」絹恵(怜さん、これ、どないなっとんですか?)コソッ
怜(わからへんけど、《無効化》どころの騒ぎやないで。初美の《裏鬼門》には、デフォルトで《配牌に東と北を二枚ずつ引き寄せる》能力も複合しとる。
そこが機能しとらへん上に、あのデジタル打ち……たぶん、能力そのものを失っとるんや)姫子(そ、そういえば、後半戦の始まるときに、ネリーさんの何か呟いとるのが聞こえたとです!)
怜(うちにも聞こえたで。ま……これはただの憶測やけど、初美があの状態やのに、うちと姫子に異変がないっちゅーことは、レベル5には効かへん力なのかもしれへん。なんにせよ、これはピンチやで)
和「これはチャンスですよ、皆さん! あの初美さんがついにオカルトに対する妄執を捨て去りました!! 後半戦はもらったようなものです!!」
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34 : 2014/09/06(土) 17:39:48.28 -
ネリー『ロン、2900なんだよ!』
初美『……はいですよー』
絹恵「おい、直撃されとんで、和」
姫子「あの待ち……完全に見透かされとう」
和「なんの! あんな無茶鳴きの安手。親とは言えNGにも程があります。一方で、初美さんはパーフェクトと言っていいほどの手の進め方をしていました。
今回はたまたま振り込んでしまいましたが、数千局ほど打てば、間違いなく初美さんが勝ち越します。なんの心配も要りません!」怜「数千局かぁ。また気が長い話やんなー」
絹恵「……せやけど、よくよく考えたら、和にここまで言わせるほど、今の初美さんのデジタルは精度が高いわけやんな」
姫子「前半戦でん一点読みばしとったもんな。普段はあんなオカルト打ちやのに……」
和「初美さんっ! その調子ですよ! 頑張ってください!!」キラキラ
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35 : 2014/09/06(土) 17:45:48.12 -
——観戦室
憩「薄墨さんも竹井さんも地力が高い。せやけど、少なくとも、ウチは負ける気せーへん。ほな、ネリーさんもきっとそうやろ」
煌「荒川さんがそうおっしゃるのならば、そうなのでしょう。さて、この親、どこまで続くのか」
ネリー『ツモ、1000は1100オールなんだよ!』
憩「あくまで速攻……隙があらへんな。ウチもようやるけど、まあ、速さと高さは決して両立できひんもんやない。
配牌によっては高い手を狙ってくるはずや。できれば、デカいのが来る前に親を流しておきたいわな」煌「鍵になってくるのは、やはり宮永さんでしょうか。魔滅の声《シェオールフィア》があったとは言え、状況的には、前半戦の東一局とほぼ変わらないわけですから。
ネリーさん以外の三人が共闘すれば、十分対抗できるはずです」 -
36 : 2014/09/06(土) 17:51:44.72 -
憩「……せやろなーとは思っとったけど、花田さんは、ホンマどこまで知っとるん?
それ——宮永照の一和了目は能力を使ってへんこと——たぶん、白糸台でウチとガイトさんと小走さんしか知らへんことやで?」煌「いえ、その……まあ、宮永照さんの牌譜は真っ先に見ましたからね。それに、うちのチームには咲さんがいますし」
憩「嘘やな。花田さんの性格的に、身内から能力の詳細を聞き出すようなセコい真似はせーへん。
宮永照の《万華鏡》——そのカラクリを見抜いたんは、ぜーんぶ花田さん一人の力。ちゃうか?」煌「はて。それはどうでしょう」
憩「たぶんやけど、直に打ったことのない雀士で、宮永照の連続和了の仕組みに気付くことができたんは、世界で花田さんだけやと思うで」
煌「えっと、私、昔からウォーリーを探せは得意でしたから」
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37 : 2014/09/06(土) 17:57:41.59 -
ネリー『ロン、2000は2600なんだよ!』
照『はい』
憩「……と、ついに宮永照も振り込んだか」
煌「ノーリスクで今のネリーさんを止めることはできません。安手であることを承知の上で、勝負を掛けたのでしょう」
憩「ほな、次くらいで親を流すこともできるかもやんな。三人で連携してもええし、少し無理すれば、宮永照なら独力でいけるやろ。
変な言い方やけど、山牌掌握タイプの打ち筋は、ウチで慣れとるわけやから。
大体、連続和了の力なんか、失ったところでさほど困らへんやろ、あのナンバー1は」煌「ほう。連続和了と言えば、宮永照さんの代名詞のような力ですが——」
憩「少なくとも、ウチは連続和了——《万華鏡》なんて、さほど脅威やとは思ってへんよ。
強い強い言うたかて、所詮はレベル4の能力や。《絶対》やあらへん。前半戦でネリーさんがやっとったように、攻略法はいくらでもある。打点かて、衣ちゃんや小蒔ちゃんのほうがよっぽど高い。
《万華鏡》の《無効化》とか《完全無効化》とか、そんなんで宮永照を倒せると思たら大間違いや。このまま行けば、普通に、また宮永照が勝つで」 -
38 : 2014/09/06(土) 18:03:08.30 -
煌「なるほど。では——このままは行かないでしょうね……」
憩「…………花田さん、ウチ、もう何聞いても驚かへんで」
煌「そうですか。ならば、お話いたしましょう。
運命奏者《フェイタライザー》の真骨頂——『運命を奏でる者』の由来である、ネリーさんの四つ目の力について」憩「ちなみに……五つ目はあるん?」
煌「あるかもしれません。ただ、私が文献を調べた限りでは、《神の耳》、強制詠唱《スペルインターセプト》、魔滅の声《シェオールフィア》、そして、今から話す四つ目の力で、最後のはずです」
憩「ま、花田さんが四つって言うなら四つなんやろ。そっかー。やっと最後の力か~」
煌「ただ……最後の力と言いましても、これは、広義で一つだというだけで、事実上、世界中のほぼ全ての雀士の力と同等の価値を持つ、いわば無限の力なんですよね」
憩「そらまた恐ろしい……」
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39 : 2014/09/06(土) 18:07:27.38 -
煌「ネリーさんの四つ目の力。あちらでは、俗に《ヨハネの弦》とも呼ばれています」
憩「ヨハネ——って、黙示録のアレか? その名前からやと、全然内容が予想できひんな。正式名称はなんて言うん?」
煌「正式名称は、自動即興《エチュード》といいます」
憩「自動即興《エチュード》……? 即興で曲を奏でる力っちゅーことか。自動で即興……曲を奏——」ハッ
煌「名前を聞いただけで正解に辿り着くとは、さすが荒川さんですね」
憩「おいおい……ホンマか!? ウチの思うとるやつで正解なら、知らんやつらみんなショック死するんちゃうか……!! この——自動即興《エチュード》……!!」
煌「あちらの世界では、『運命奏者《フェイタライザー》は、たった一人で他の全魔術師と同等の価値がある』と言われるほどの、驚異的な力です。
学園都市風に言えば、ネリーさんは、自動即興《エチュード》を発動させることにより、全系統に属するレベル4以下の能力を、全て扱うことができます」憩「それ、要するに——」
煌「ええ。理論上の厳密な表現とは若干のズレがありますが、ネリーさんの自動即興《エチュード》——それは、《実在する全ての能力を使える》力です」
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40 : 2014/09/06(土) 18:10:31.48 -
憩「ほ、ほな、あいつは——! 運命奏者《フェイタライザー》は、あらゆるレベル4以下の能力を奪うことができる上に、あらゆるレベル4以下の能力を使うことができるっちゅーわけか……!? どんだけやねん!?」
煌「いかがでしょう、荒川さん。ネリーさんと宮永照さん——どちらが勝つと思いますか?」
憩「わ、わからんっ!! ガイトさんもそら『わからん』言うわけや……これはホンマにどうなるかわからんで……!!?」
煌「さて——ついにネリーさんの親が流れそうですね。そうなると、次は宮永さんの親番。仕掛けてくるとしたら、ここでしょう」
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41 : 2014/09/06(土) 18:19:26.64 -
——《幻奏》控え室
やえ「さて……ここで宮永に親を流されたら、いよいよ自動即興《エチュード》のお出ましだろうな」
セーラ「自動即興《エチュード》? なんなん、あいつまだ妙な力持っとんのか」
誠子「そんな……これ以上は私の心が破裂しますよ……」
優希「その《えちゅーど》っていうのはなんなんだじょ?」
やえ「いきなり結論から言うと、亦野が爆発するそうだから、馴染みのある話から入ろう。
お前ら、『夢の魔法』という都市伝説を聞いたことがあるか?」セーラ「ああ、知っとるわ。あれやろ、『能力者やないのに能力が使える不思議な中学生がおる』ってやつ」
優希「中学生? 学園都市にいる学生って、白糸台高校の生徒だけじゃないんだじぇ?」
やえ「高校生、となると私たちだけだ。ただ、私たちの生活圏からは離れたエリア——外の世界との緩衝地帯になっている地区に行くと、一般の居住者のための小学校や中学校というのが、ちゃんとあるわけだな。
それは、外の世界の小学校や中学校とほとんど変わらない。ま、違いがあるとすれば、比較的麻雀部の部員が多い、くらいだろうな」 -
42 : 2014/09/06(土) 18:22:15.36 -
誠子「それで……その、『夢の魔法』ですか。『能力者じゃないのに能力を使える』というのは、一体どういうことなんですか?」
やえ「どういうことなんだ、と思うだろ? だから、私は直にそいつに会ってきた。
去年の九月頃だったかな。とある中学の麻雀部員で、当時は一年だった。色々話を聞いて、各種測定もした。なかなか面白い中学生だったよ」優希「その中学生は、能力者だったんだじょ?」
やえ「いや、私の測定によれば、あの『夢の魔法』は確かに無能力者だった。ランクFで、レベル0。まったくの一般人だよ」
セーラ「けど……都市伝説になるくらいや。ただの一般人、ってわけでもないんやろ?」
やえ「そう。この『夢の魔法』……一日に一回は必ずチョンボをするくらいのド素人なんだが、よく白糸台の校内大会をネット中継で見るそうなんだな。
たぶん、この一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》も見ているだろう」誠子「ふむふむ」
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43 : 2014/09/06(土) 18:27:21.56 -
やえ「『夢の魔法』は言うのだ。『自分もああいう風に打ちたい』と。
まあ、それだけなら、白糸台高校麻雀部に憧れる普通の中学生なんだが……いざ対局をしてみると、たまになんだが、『今ならあんな風に打てる気がする』と言うときがある」セーラ「へえ……?」
やえ「で、好きなように打たせてみるんだな。すると、驚いたことに、本当に、高い精度で該当する雀士の《模倣》をしてみせるんだよ。
打ち筋から、雰囲気、細かいクセ、能力者ならその能力の効果に至るまで、まるで本人がそこにいるかのような打ち回しを見せるんだ」優希「なんだそれだじょ」
やえ「あのときは、ちょうど去年の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》が終わったあとだったから、チーム《千里山》で決勝まで行ったセーラ——お前の《模倣》もしていたぞ。いい感じの親満ツモを決めていた」
セーラ「いや、まあ、親満くらい、和了れるときは和了れるやろ」
やえ「或いは、三副露した直後にツモったりな」
誠子「私の能力も《模倣》できるんですか……?」
やえ「他にも、上重の《導火線》、弘世の《シャープシュート》なんかも《模倣》していた。愛宕や清水谷みたいなキレのある打ち筋を見せるときもあったな。
ちなみに、一番私の背筋が震えたのは、十七巡目リーチからの海底を和了ったときだ」セーラ「姿を見せたんは一回戦と二回戦だけやったけど、去年の天江衣は鮮烈やったからな」
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44 : 2014/09/06(土) 18:30:10.00 -
やえ「とまあ、なかなか楽しい数時間だったよ。で、帰り際に、私は聞いたんだ。なんであいつの真似はしなかったのか、と。
なぜなら、あいつは去年の一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》で、最もその名を馳せた能力者だったから」誠子「もしかして……尭深のことですか?」
やえ「そう。《ハーベストタイム》——当時レベル5の第二位だった、渋谷尭深」
セーラ「去年のあいつにはホンマやられたわー」
優希「で、どうだったんだじょ?」
やえ「『夢の魔法』曰く、『あの人の真似はしたいけどできない』。非常に興味深い発言だったよ。聞いた瞬間に鳥肌が立ったね」
誠子「どういうことなんですか……?」
やえ「あまりにも特徴が酷似していたんだ。『夢の魔法』の《模倣》は、私の知識の中にある運命奏者《フェイタライザー》の自動即興《エチュード》と、ほとんど同じ特性を持っていた」
セーラ「おい、やえ、それは……」
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45 : 2014/09/06(土) 18:33:27.63 -
やえ「学園都市の測定には引っかからないランクFのレベル0。なのに、どういうわけか、能力を含めた他人の《模倣》を次々にやってのける。
そして、その《模倣》は、ことレベル5の超能力者に限って、『したくてもできない』」優希「ま、まさかなんだじょ……!?」
やえ「そう——ネリーの自動即興《エチュード》。それは、《実在する全ての能力を使える》力だ。
理論的に厳密な表現をするなら、《実在する全ての雀士の完全模倣をする》力。ただし、レベル5の超能力者だけは、その例外となる」誠子「お……驚きが大き過ぎて、むしろ無我の境地に入ってます……!! 《実在する全ての能力を使える》!?」
セーラ「《実在する全ての雀士の完全模倣》——ほな、あいつは俺になったり自分になったりもできるっちゅーことやんな?」
やえ「もちろん。片岡や亦野になることもできる。能力込みでな」
優希「無茶苦茶過ぎるじょ……!! 一人何役こなすつもりなのか!?」
やえ「実際、向こうの世界では、『運命奏者《フェイタライザー》は、たった一人で他の全魔術師と同等の価値がある』とまで言われている。
さらに言えば、ネリーの自動即興《エチュード》は、理論上、過去に存在した雀士や、未来に現れる雀士の《完全模倣》も可能だ」誠子「ネリーさん……時空まで超えてしまうとは……」
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46 : 2014/09/06(土) 18:38:00.42 -
やえ「この自動即興《エチュード》。強いて難点を挙げるとすれば、その《完全模倣》の対象がランダムだということだな。
山牌が持ち上がるまで、ネリー自身も、自分が一体どこの誰になるのか読めないんだ。ま、あくまで理論上はそうだ、というだけだがな」セーラ「っちゅーと?」
やえ「もしも、ネリーが意思のない機械だったら、《完全模倣》の対象は純然たる無作為抽出になるだろう。しかし、『夢の魔法』の例もある。
恐らく、ネリーは自動即興《エチュード》による《完全模倣》の対象を、ある程度コントロールできるはずだ。
そして、それはあの場……ネリーや宮永や初美や竹井に縁のある雀士である可能性が高い。要するに、私たちがよく知っている、白糸台の誰か——」照『ツモ……300・500は600・800』
誠子「っと……!! 宮永先輩があんな苦しい形で和了りに行くなんて……」
セーラ「ネリーの親が流れた。ほんで、宮永の親。《万華鏡》は使えへんとしても、ここで——」
優希「え、《えちゅーど》……!? 誰だじょ!! ネリちゃんは誰になるんだじょ!?」
-
48 : 2014/09/06(土) 18:44:12.49 -
やえ「すぐにわかるさ。あらゆる《運命》を奏でる運命奏者《フェイタライザー》の自動即興《エチュード》。これが、その記念すべき第一曲目。開演はまもなく——耳を澄ませて待とうじゃないか」
誠子「あれ——!? ネリーさんが理牌し始めましたけど……っていうか、あの配牌……ッ!!?」
セーラ「他家の配牌があれっちゅーことは、これはあいつか!? 《煌星》の——」
優希「淡ちゃんだじょ!!」
ネリー『行っくよー、ダブリーッ!!』ゴッ
優希・誠子・セーラ「!!?」ゾワッ
-
49 : 2014/09/06(土) 18:47:28.36 -
——《永代》控え室
ネリー『行っくよー、ダブリーッ!!』ゴッ
塞「いやああああああああああ!!!」カタカタ
まこ「いきなり理牌し出したと思ったら……なんじゃこれ、なにがどうなっちょる……!?」
純「ネリー以外の配牌が五、六向聴で、ネリーがダブリーのみだと? これじゃまるで——」
穏乃「《超新星》——大星淡さん! これはすごい! 完全にご本人です!!」
塞「本人ってなによー!? あいつはネリー=ヴィルサラーゼでしょ!?」
穏乃「いえ! あそこに座っているのは、もはやネリーさんではありません。どこからどう見ても大星淡さんです。それはもう、何から何までっ!!」
純「どこからどう見てもネリーなんだが……?」
-
50 : 2014/09/06(土) 18:51:51.71 -
穏乃「えーっと、なんて言えばいいんでしょう。今、あそこに持ち上がっている山は、大星さんの山と、まったく同じなんです。
いや……逆ですかね。持ち上がった山が大星さんの山だったから、ネリーさんは大星さんになった。ここに来て初めて理牌したのも、それが理由だと思われます」まこ「誰か頭痛薬もっとらんか……」
穏乃「うーん……まだはっきりとはわかりませんが、この理屈を突き詰めると、ネリーさんは《実在する全ての能力を使える》ことになりますね」
塞「はああああああ!? 豊音もびっくりの多才能力者《マルチスキル》じゃない!!?」
純「おい……穏乃、お前それ本気で言ってんのか?」
穏乃「もちろん本気ですよ。あ、でも、レベル5の山はちょっとあれなので……『ただしレベル5は除く』っていう注釈がつくかもしれません。
ですが、大星さんの能力を使えているということは、少なくともレベル4以下の能力は、問題なく使えると思います」塞「薄墨の《裏鬼門》も!? 竹井の《悪待ち》も!?」
穏乃「はい。塞さんのお友達さんで言えば、姉帯さんの《六曜》、小瀬川さんの《マヨヒガ》、ウィッシュアートさんの《一枚絵》も、全部です」
-
51 : 2014/09/06(土) 18:54:54.77 -
純「目玉が飛び出るな」
まこ「わしなんか五臓六腑が飛び出そうじゃ」
塞「だったら私はもう私自身が飛び出していくわ……!! 対局が終わってれば間違いなく逃げ出してるレベルの超異常事態よっ!!」
穏乃「私も驚いています……。大会が終わったら、ネリーさんとちゃんとお話してみたい」
塞「あんなオカルトの塊と話したい!? 高鴨、あんたってマジすごパ!! そして私もマジすごパ!! マジすごいパニック!! いやホントに!!」
純「っていうか……もし、あれが本当に大星のダブリーだっつーなら……!!」
まこ「どっかで来るはずじゃな——」
ネリー『カンッ!!』ゴッ
塞・純・まこ「……ッ!!!!」ゾワッ
穏乃「わあーっ! そっくり!!」キラキラ
-
52 : 2014/09/06(土) 18:59:23.41 -
——《新約》控え室
ネリー『カンッ!!』ゴッ
姫子「おうおぉおっ!? こ、これはヤバかことになってきたとですね……!!」
絹恵「ほな、ネリーさん、やっぱり大星さんの——!!」
怜「本当に違う世界から来たんかもな……あの子は」
和「あの、皆さん? 何をそんなに驚いているんですか? たまたま配牌が良かったからダブリーして、たまたま暗槓のチャンスが来たからカンしただけじゃないですか。
幸いカンドラは乗りませんでしたし、なんの問題もありません」姫子「こっからカン裏の乗るんが問題と!!」
絹恵「このまま和了られたら12000になってまうやん!!」
和「どこからどう見ても3200、ツモで5200じゃないですか……」
怜「いや、せやけど、宮永照が攻めとる……!! 場合によっては流れるんとちゃうか——!?」
ネリー『ロンだよっ!!』
照『わっ』
姫子・絹恵・怜「!!!」ゾワッ
ネリー『ダブリー……裏四ッ!! 12000!!』ゴッ
和「ふむ。なかなかの偶然ですね」キリッ
-
53 : 2014/09/06(土) 19:02:28.30 -
——《久遠》控え室
ネリー『ダブリー……裏四ッ!! 12000!!』ゴッ
憧「あいつマジかああああああ!?」
洋榎「オモロい!! くっそー、こんなオモロいんならうちが先鋒に出るんやったわー!!」
哩「なんのどがんなっとうとね」
白望「次くらいには……わかるかも……」
憧「次いいい!? 次があるわけ、これッ!!?」
洋榎「なんやあいつ! 能力のびっくり箱か!!」
ネリー『このツモには意味がある気がするんだよ……』
哩「お、おい……あいつ、わけのわからんところば切りよるぞ……!!」
白望「これ……知ってる……」
憧「私らみんな知ってるわよ!! こんな《最悪》……っ!? どうなってんの——!!?」
洋榎「盛り上がってきたでー!!」
ネリー『リーチッ!!』ゴッ
憧・洋榎・哩・白望「久の《悪待ち》ッ!!?」
-
54 : 2014/09/06(土) 19:07:02.99 -
——対局室
東四局・親:久
ネリー「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
西家:ネリー=ヴィルサラーゼ(幻奏・145700)
久(何がどうなっちゃってるのかしらねー、この子!?)
東家:竹井久(久遠・71700)
初美(この雰囲気は完全に《最悪》のそれですー……!!)
南家:薄墨初美(新約・70500)
照(むむむ……さっきの大星さんにはやられたけど——)
北家:宮永照(永代・111100)
照「ポン」タンッ
ネリー「っ!?」
照(《照魔鏡》で見たことがある能力なら……辻垣内さんほどじゃないけど、多少の対策が取れなくもない、かも)
-
55 : 2014/09/06(土) 19:10:50.10 -
ネリー(やるじゃん……てる。けど、無駄なんだよ——ッ!!)
久(どうかしら、私ならこのくらいのズラしは許容範囲な気がするけど……)
初美(《最悪》の《悪待ち》は差し込みで止めるのが一番なんですけどねー。さて、どうなるですかー?)
ネリー「ッ!!」パシュッ
初美(こいつ牌を飛ばしやがったですねええええ!!?)
照(わー……)
久(これは完全に私の——)
ネリー「ツモ……ッ!!」パシッゴッタァァァァン
久(こんなことって!! 私がその技をできるようになるまで、一体どれだけの練習を重ねたと思っているの……!?)ゾワッ
ネリー「3000・6000なんだよ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
-
56 : 2014/09/06(土) 19:14:50.56 -
久(——と、冗談はさておき……)
初美(こんな悪作法《アンチマナー》野郎が《最悪》以外にいたんですかー!? なかなか壮絶なことになってきたですよー!!)
照(うーん……)
ネリー(私の自動即興《エチュード》——これにまともな対応ができたのは、魔術世界でもさとはだけっ!!
けど、そのさとはでさえ、今の私を相手にすればトビ回避が精一杯だったんだよ……!!
さあ、あなたたちは止めることができるかな!? 魔滅の声《シェオールフィア》を聞いてしまった今のあなたたちに——あの《背中刺す刃》さえ叩き折る今の私を……ッ!!!)ネリー「さっ、南場もいっぱい奏でるんだよっ!!」ゴッ
初美:67500 ネリー:158700 照:108100 久:65700
-
61 : 2014/09/06(土) 20:18:38.80 -
——観戦室
ネリー『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
煌「これは……まだ序盤なのでなんとも言えませんが、まさかあの方ですか」
憩「衣ちゃんの《一向聴地獄》やな。ウチの記憶にある牌譜と照合した。間違いあらへん」
煌「ネリーさんは南家ですから、このまま誰も鳴かなければ」
憩「海底やんな」
照『ポン……』
煌「おお……この対応の速さはすばらですね。こんな序盤に、場を支配している能力が《一向聴地獄》だと見抜くとは」
憩「ま、ウチら《三人》ならそれくらいできるで。ほんで、薄墨さんも竹井さんも、ガイトさんほどやないけどカンはええ。今の宮永照の鳴きで、二人も異変に気付いたやろ」
煌「そのようですね。しかしながら……」
憩「そう——関係あらへんのや。そんなこと。衣ちゃんには」
ネリー『ポン……ッ!!』ゴッ
煌「やはり海底を引き戻しましたか」
憩「すごいな、これ……能力だけやない。打ち筋まで完璧に衣ちゃん本人やん」
-
63 : 2014/09/06(土) 20:22:35.49 -
煌「《実在する全ての能力が使える》力……これは、厳密には《実在する全ての雀士の完全模倣をする》力ですからね。
細かいクセや雰囲気も含めた《完全模倣》。理牌するようになったのも、それゆえです。
今のネリーさんは、天江さんの能力を使っているから打ち筋まで天江さんと同一になっているのではなく、打ち筋が天江さんと同一だから天江さんの能力を使えているんですね」憩「んんん……? ようわからんけど、ほな、これも運命論的にちゃんと仕掛けがあるっちゅーことなん?」
煌「はい。私は先ほど、運命論では『山牌が持ち上がってからは誰もが無能力者』と言いました。魔術師は、その確率干渉を、全て山牌が持ち上がる前に完了します。
そして、何度も言いますが、あちらの世界の山牌は不動不変。なので、理論上は、こんなことも可能になるわけです」憩「なに?」
-
64 : 2014/09/06(土) 20:25:53.07 -
煌「ここに、魔術師と、魔術師でもなんでもないまったくの一般人の、二人がいたとしますね?
そして、まずは、魔術師が先に卓に入ります。山牌が持ち上がる前、魔術師は詠唱によって魔術を発動、確率干渉を行います。
やがて、魔術によって非古典確率論的偏りが生じている山牌が、不動不変のものとして、卓上に姿を見せるわけです。
さて、ここから、魔術師と一般人……二人が席を入れ替わると、一体何が起こると思いますか?」憩「何って、そんな——」ハッ
煌「いかがです? 後付けの能力論ではまずありえないことですが、山牌の不動性を基礎とする先決めの運命論では、こういうことも『ありえる』わけなんです」
-
65 : 2014/09/06(土) 20:28:25.53 -
憩「え、えっと……花田さんが言いたいのは、つまり——こういうことやんな?
その、入れ替わった一般人……そいつに、魔術師が指示するわけやろ? 『自分なら何を切るか』——を」煌「まさしく。魔術師が魔術によって偏りを生み出した山牌。それは、持ち上がった瞬間から終局まで、不動不変。
ゆえに、たとえ魔術師でもなんでもないまったくの一般人が途中で席に着いても、ある一定の順番で牌を切っていきさえすれば、その人は、さっきまでそこに座っていた魔術師と、全く同一の結果を出すことができるのです。
つまり——」憩「無能力者でも……能力者の真似事ができる……っ!?」
煌「これが、無能力者であるはずのネリーさんが能力を使える——使っているように見える——理由です」
-
66 : 2014/09/06(土) 20:32:14.82 -
憩「せ、せやけど! あいつはさっきからずっとあっこに座っとるやん。誰とも交換してへん。
ほな、その入れ替えマジックみたいなんはできひんはずやろ……!?」煌「その通り。この『入れ替え魔術』は、ただの一般人がやるには、魔術師の協力が不可欠です。
しかし、ネリーさんは、ただの一般人ではありません。10万3千局の《原譜》——魔術世界一千年分の蓄積と、《神の耳》があります」憩「ど、どういうことや……」
煌「『検索』しているんですよ。《神の耳》によって、その局の《運命》を聞き、その《運命》と高い精度で類似した一局を、10万3千局の《原譜》の中から見つけ出しているんです。
あとは、簡単ですね。その一局において、該当する魔術師が奏でたのと全く同じように、自ら《運命》を奏でればいい。
これなら、魔術師の協力なしに、単独で『入れ替え魔術』を行使することができます」憩「ちょ、あかん……頭ごちゃごちゃになってきたわ……」
-
68 : 2014/09/06(土) 20:39:39.45 -
煌「能力や魔術と言うから、わかりにくいのかもしれませんね。
例えばですが、荒川さん。荒川さんは山牌が見えます。『他人の《上書き》がなければ全ての牌の位置と種類がわかる』とおっしゃいます。原理的にはありえないのですが、それはさておき。
さて、そんな荒川さんなら、山牌の中から、ヤオ九牌だけを抜き取ることもできますよね? 一色牌だけを抜き取ることもできますよね?」憩「もちろんできるわ。今ここでやってみよか?」
煌「いえいえ。それには及びません。
はて……しかしながら、私のような一般人からすれば、伏せられた山牌からヤオ九牌だけを抜き取ったり一色牌だけを抜き取ったりする——といった芸当は、まったく不可思議なものに見えます。
さながら、何かの《能力》のように見えるわけですね」憩「いや……まあ、ウチはただ見えとるもんを見えとるように抜き取るだけなんやけど……」
-
69 : 2014/09/06(土) 20:44:44.94 -
煌「ちなみにお聞きしますが、今の例のように、伏せられた山牌から『ヤオ九牌だけを抜き取ったり』『一色牌だけを抜き取ったり』できる方が、荒川さん以外にいらっしゃると思いますか?」
憩「それは……いーひんやろ。《悪魔の目》を持っとるウチやからできんねん。
普通の人には、牌の背は全部一緒に見える。小走さんからそう教えてもろたもん」煌「そうですね。荒川さんと同じ原理で今言ったことができる人は、学園都市にはいないでしょう。しかしながら、能力者なら、どうでしょうか?」
憩「え……?」
煌「例えばですが、二回戦の《飛雷神》こと友清さん。そして三回戦の神代さん。
あのお二人なら、能力を使って、伏せられた山牌から『ヤオ九牌だけを抜き取ったり』『一色牌だけを抜き取ったり』できるんではないですか?」憩「た、確かにできる……!! 《上書き》したらええんやもん! 《飛雷神》さんが引く牌は全部ヤオ九牌になるし、《九面》の小蒔ちゃんが引く牌はぜーんぶ一色牌になる……!!」
煌「同じ要領で考えていきましょう。《悪魔の目》を持つ荒川さんなら、伏せられた山牌から『筒子及び四五六牌』だけを抜き取ったり『赤い牌』だけを抜き取ったりすることもできますね?」
憩「も、もちろん」
-
70 : 2014/09/06(土) 20:49:03.60 -
煌「はて。すると、仮に私が荒川さんの《悪魔の目》について何も知らなかったとすれば、今例に挙げた現象を、このように解釈することもできるわけです。
『荒川さんは、友清さんや神代さんや藤原さんや松実宥さんの能力を、全て使うことができる』——と。
これは大変不思議なことです。荒川さんは無能力者であるはずなのに、まるで複数の能力を使っているように『見える』のですから」憩「いや、でも、ウチは別に《上書き》したわけやないし——」
煌「荒川さんが《上書き》をしているかいないかは、残念ながら、私の平凡な目には区別がつかないのですよ。特殊な計器を扱えるわけでもありませんし、能力者の支配領域《テリトリー》も感じ取れません。
伏せられた山牌から好きな牌を好きなように抜き取れる荒川さんが、『自分は能力者だ』と言い張れば、《悪魔の目》の原理を知らない私は、間違いなく、その言葉を信じるでしょう」ネリー『ツモッ!! 4000・8000なんだよっ!!』
憩「——と、倍満かいな。さすが衣ちゃんやな」
煌「そうです。さすがは天江さんなのです。ネリーさんは、言ってしまえば、天江さんの真似をしたに過ぎません。
ネリーさんが今できたということは、天江さんも、この南一局、宮永さんと薄墨さんと竹井さんを相手に、同じようにして海底で倍満をツモることができるのです。
そのメロディを、ネリーさんは、此度の山牌の《運命》の中から聞き取った。そして、それを即興で、且つ忠実に奏でてみせたのです」 -
71 : 2014/09/06(土) 20:49:31.08 -
変な艦これ劇場 -鎮守府狂騒曲-
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409906850/
大面白いSSと銘打って自信を持ってお送りする艦これSS!
その名も「変な艦これ劇場 -鎮守府狂騒曲-」!
コメディタッチなほのぼの艦これSSでございます!
しかしまあ大面白いというと語弊がありますし、自信なんてものもさっぱりで。
ほのぼのってのもあんまりだし、でもコメディはホント。
つまりはただのコメディ艦これSSに過ぎないのであります!
わかりづらいパロ、妙ちくりんな独自設定やキャラ崩壊などございますので
お気を付けてお読み下さいませ!
-
72 : 2014/09/06(土) 20:51:43.70 -
憩「せやけど……なんでよりにもよって衣ちゃんやねん。《運命》や《運命》や言うけど、山牌の並びが一体何パターンあると思うとるんや。
その膨大なパターンの中からここで衣ちゃんが出てくる必然性はないはずやろ?」煌「確かに、ネリーさんが機械なら、無数にある《運命》の中から天江さんの《運命》を引き当てる確率なんて、古典確率論的にほとんどゼロでしょう。
しかし、ネリーさんも生きた人間です。その意思は、ほんの僅かですけれど、世界に影響を与える。
見る限り、ネリーさんはどうやら、理論上ランダムであるはずの自動即興《エチュード》を、ある程度コントロールして使っているようですね。
今後も、私たちがよく知っている雀士が出てくる可能性が高いと思います」憩「大星さん、竹井さん、衣ちゃんと来て……次は誰や」
煌「宮永さんに対抗しなければならないわけですから、半端な雀士ではないはずですよ。
また、自動即興《エチュード》が《完全模倣》できるのは、何も能力者に限りません。なので、能力者ではない福路さんや清水谷さんが現れる可能性も、十分にあります」 -
73 : 2014/09/06(土) 20:56:24.77 -
憩「つまり……あいつはあれか。小走さんの《幻想殺し》を地で行くようなやつなんやな? そのときそのときの山牌の並びに合わせて、宮永照相手に最も勝率の高いNPCを選んどるわけか。
すごいな……ほな、今のあいつと打つっちゅーことは、古今東西世界中の雀士を全て敵に回すんと同じことやん」煌「ただしレベル5は除く、ですがね。或いは、どうでしょう。《特例》
である荒川さんも、自動即興《エチュード》で《完全模倣》できる対象から外れるかもしれません」憩「なるほどなぁ。最初に比べるとかな~り飲み込めてきたで。ほんで、ますます小走さんがあいつに目をつけた理由がわかったわ……ってーぇ! ちょいちょい——それホンマか……!?」
煌「これはなかなか……タネも仕掛けもわかっているとは言え、ネリーさんが無能力者であるというのが信じられなくなりそうです」
ネリー『ダブルリーチなんだよッ!!』
-
74 : 2014/09/06(土) 20:57:47.65 -
——《久遠》控え室
ネリー『ダブルリーチなんだよッ!!』
洋榎「ほっほーっ!? これは目の錯覚かー!? さすがのうちも開いた口が塞がらんでー!! 誰かはよ《塞王》つれてこんかーい!!」
憧「」
哩「憧、憧! しっかりしんしゃい!!」ユサユサ
憧「はっ!? い、今のは——夢!!」
白望「惜しい……正夢」
憧「ぎゃあああああマジだったぁー!! さっきから何がどうなってんのよー!?」
-
75 : 2014/09/06(土) 21:02:07.53 -
——《新約》控え室
ネリー『ダブルリーチなんだよッ!!』
和「なかなかの偶然ですね」キリッ
絹恵「アホかー!! 和ああっ!! 自分、いっぺん『偶然』の意味ちゃんと調べてこんかい!! 古典確率論を小学生からやりなおしてこんかい!!」
姫子「偶然こうなる確率の一体いくつとね!! 限りなくゼロと!! SGA!! そんな偶然ありえなか!!」
和「確率はゼロではない。それ即ち、デジタル的には十分『ありえる』こと。確かに珍しいは珍しいですが、取り立てて騒ぐようなことではありません」
絹恵「怜さああああん!! どう思いますか!? ネリーさんだけやなくて、和も違う星から来たんとちゃいますか!?」
姫子「私たちの間違っとっとですか!? あいば見てもNGですねの一言で片付けらるっのが正解とですか!?」
怜「……ちなみにやけど、二人とも、うちが未来見えることについてどう思う?」
絹恵・姫子「なかなかの能力ですね」キリッ
和「SOAー!! 絹恵さんも姫子さんも、『未来』の意味ちゃんとわかってますか!?
小説や漫画じゃあるまいし、人間に未来など見えるはずがありません!! 怜さんのそれはただの勘違い!! 目の錯覚だと何度言えばわかるですかーッ!!」絹恵・姫子「えー? まあ珍しい(か)は珍しい(か)けど(ばってん)、そんな騒ぐほど不思議なことやろか(と)?」
怜「うん。確かに自分ら生まれた星違うわ」
-
76 : 2014/09/06(土) 21:07:22.88 -
——《永代》控え室
ネリー『ダブルリーチなんだよッ!!』
塞「高鴨おおおおおお! なんとかして!! あんたのすごパであいつなんとかしてえええええッ!!」ギュー
穏乃「さ、塞さん……抱きついてくださるのは嬉しいのですが、首を絞めるのはやめてください……」ウウウ
純「何がどうなってやがる……マジで。いやホント、マジで」
まこ「あんなことができる人間がこの世に二人もおるとはのう……」
塞「あんたらああ! なんでそんなに余裕なの!? 驚くならもっと驚きなさいよっ!!
少しは『うわあああああ!!』とか『なんじゃこりゃあああ!?』とか言ったらどうなの!?」純「悪いな、塞。それオレらのキャラじゃねーんだわ」
まこ「わしらは会話の隙間をいい感じに埋める係じゃけえ、わらみたいな面白い反応はしたくてもできんのじゃ」
塞「まるで私がリアクション担当みたいなのやめてー!! テンション要員みたいなのやめてー!!」
純・まこ「実際そうだろ(じゃろ)」
塞「そうなの!? 高鴨、私ってリアクション担当のテンション要員なの!? 違うわよね!?
モノクル曇ったのを見て『さァ、かかってくるがいいよ……』って不敵に笑うイカしたクールキャラよね!?」穏乃「よくわかりませんが、塞さんは塞さんのままでいるのが一番素敵だと思いますっ!!」
塞「うぅぅぅ……私が二年以上かけて積み上げた《塞王》のイメージがあああ……」
-
77 : 2014/09/06(土) 21:11:59.88 -
——《幻奏》控え室
ネリー『ダブルリーチなんだよッ!!』
優希「うおおおおおお!! ネリちゃんそこだじぇ!! ぶちかませーッ!!」
誠子「これは……神代さんですか……」
セーラ「せやろな。配牌もツモも一色牌。こんなふざけた能力持ちが神代以外におってたまるか」
やえ「ちなみにだが、昨日、私とネリーと宮永と臼沢で神代のあれを見ていたとき、ネリーと宮永はこんな会話を交わしていた。『てるならどうやってこれに勝つ?』『超頑張る』とな」
誠子「頑張ってどうにかなるんですか!? あれが!?」
優希「奇跡でも起こらないと無理だじぇ!!」
セーラ「《奇跡》……か。なるほどなー」
-
78 : 2014/09/06(土) 21:15:36.15 -
やえ「さて、ここに取り出したりますは《不規則格子晶体》——通称《不晶体》だ」ジャーン
セーラ「おっと、いきなりやな。ほんで、なんなんその硝子板」
やえ「ただの硝子ではない。《塞王》こと臼沢のトレードマークであるモノクルの素材にもなっている、特殊な硝子だ」
誠子「どこにでもある普通の硝子にしか見えませんが……」
やえ「まあ人間の目にはそうだろう。見分けるには荒川を連れてくるか電子顕微鏡を持ってこないと無理だな。
さて、この《不晶体》。分子内にいくつか結晶構造に不必要な原子が散在していてな、常温常圧では安定を保っているんだが、ある力による干渉を受けると、その原子が活性化し、分子構造を不規則——非結晶なものにしてしまうんだ」優希「何一つ言ってることがわからないじょ!?」
-
79 : 2014/09/06(土) 21:18:24.31 -
やえ「透明な氷の塊がある。その中に、目に見えないほど小さく、しかし鉄より硬い特殊な粒子が混ざっている。
その粒子は、とある力の干渉を受けると、氷の中を自由に動き回り始める。すると、氷はどうなるか」誠子「えっと……バキバキになる……?」
やえ「そうだな。基本的には力の源に近い表層部ほど良く反応するから、状態としては、表面にアイスピックを突き立てたのと似た感じになるわけだ。当然、目に見える変化が起こる」
セーラ「透明な氷にアイスピック……白くなるな」
やえ「大正解。で、そのアイスピック——《不晶体》の結晶構造を崩す力とは、何を隠そう《意識的確率干渉力》のことだ。というわけで、片岡」
優希「じょ?」
-
80 : 2014/09/06(土) 21:21:07.49 -
やえ「私たちの中で一番ランクが高いのはお前だ。この《不晶体》に触れながら、東初で親倍をツモるイメージで、ちょっと意識を集中してみろ」
優希「むむむ……! 我が呪われし血の盟約に応えよ——タコスの神ッ!!」ゴッ
フッ
誠子「硝子が曇った!?」
セーラ「ははっ、こらオモロい玩具やなー」
優希「やえお姉さん、これほしいじょ!!」
やえ「売ってやらないこともない。ただし、これ一つでお前の一ヵ月分の生活費がぶっ飛ぶが、構わんか?」
優希「こんな硝子板が!? ぼったくりだじょー!!」
やえ「確率干渉力測定用の特殊素材だ。それなりに値が張るのは当然だろう」
誠子「研究ってお金かかるんですね……」
-
81 : 2014/09/06(土) 21:24:10.53 -
やえ「ま、こんなのはただの消耗品だがな」フキフキ
セーラ「おぉ、その曇り拭き取れるんか」
やえ「『拭く』よりは『掃く』に近いな。透明な結晶部から剥離した白い非結晶部を払い落としているんだ。当然、使うごとに、本体はすり減ってくる」
優希「本当に消耗品だったじぇ!?」
やえ「さて……片岡。お前、今、どれくらい本気で確率干渉力を使った?」
優希「わりと全力だったじょ」
やえ「だろうな。測定用の比較的柔らかいものとは言え、能力を介さずに《不晶体》の表面を目に見えるくらい曇らせたんだ。なかなかできることじゃない。素質だけなら十分《十最》レベルの化け物だよ、お前は」
誠子「ちなみに、私がやるとどうなります?」
やえ「傷一つつかない」
セーラ「俺なら?」
やえ「極薄にカットした《不晶体》を何枚か割ることができるレベルだろうな。というか、能力論の実習授業でやったことがあるだろう」
セーラ「あっ! あの瓦割りみたいなやつか!?」
優希「我、最強だじぇ!!」
-
82 : 2014/09/06(土) 21:26:48.02 -
やえ「そういう戯言は、ランクSの魔物がこの《不晶体》をどんな状態にできるか見てから言ったほうがいいぞ。あいつらは本物の化け物だからな」
誠子「えっと……ヒビが入るとか?」
優希「真っ二つだじぇ?」
セーラ「内部まで曇り硝子にできる……とかやろか」
やえ「全員不正解。正解は『粉々に砕け散る』だ」
優希「じょおおおおおおお!?」
誠子「全力の優希でも表面を曇らせるのが精一杯なのに!?」
セーラ「アイスピックやないやん。10トンハンマーやん」
やえ「それがランクSの魔物だ。さて、その中でも最高の支配力を持つとされる宮永照。
あの神代小蒔さえ凌駕すると謳われるあいつは……一体この《不晶体》を、どんな状態にできると思う?」照『ポン』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
誠子・優希・セーラ「ッ!!!?」ゾワッ
-
83 : 2014/09/06(土) 21:29:25.02 -
やえ「……と、あの化け物め——」
誠子「あっ、うあぁ……!? 硝子が真っ白になってますけどっ!!?」
優希「これまさか内側まで真っ白なんだじょ!?」
セーラ「それで済めばええんやけどな……」
やえ「片岡、ちょっと触ってみろよ。きっと驚くぞ」
優希「ば……爆発とかしないじょ——」サワッ
サラッ
優希「砂になってるじょー!!?」ガビーン
誠子「粉々も粉々じゃないですかあああ!?」
やえ「ちなみに、あいつは今、電磁防壁で囲われた対局室に隔離されているということを忘れるなよ」
セーラ「ホンマ神業やな……」
やえ「そう……まさに神業なんだよ。これが《呼吸するように奇跡を起こす者》——ランクSの魔物の絶大なる確率干渉力だ。
あいつらは、そこに在るだけで、世界のあらゆる理をブチ破る」 -
84 : 2014/09/06(土) 21:31:53.14 -
照『ポン』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希「ネリちゃんの手番が回ってこないじょ……!!?」
誠子「これが……超頑張ってる宮永先輩——!!」
セーラ「なんやこれ。ネリーと宮永のどっちがオカルトなんかわからんなってきたわ」
やえ「ネリーの自動即興《エチュード》——あれは、膨大な知識と脅威の解析力に拠る、言わば論理の集大成。
対して、宮永の支配力はオカルトもオカルト。あらゆる理屈を吹き飛ばす超常の頂上だ」照『ポン』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希「ど、どういうことだじょ!?」
誠子「結局どっちがオカルトでどっちがデジタルなんですか!?」
セーラ「ごっちゃ混ぜやなー」
やえ「魔術世界《オカルト》と科学世界《デジタル》の頂上決戦——その実体は、論理《デジタル》と奇跡《オカルト》の衝突ということになるな」
優希「ついていけないじょーっ!!」
照『ロン、1000』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー『あっはっはー! これは笑うしかないんだよー!!』
-
85 : 2014/09/06(土) 21:35:33.60 -
誠子「食いタンでネリーさんの親が流された……!?」
セーラ「あわや天和のトンデモ配牌から門前清一ダブリーをぶっ放したネリー。
ほんで、そのネリーの手番を三連続で飛ばした上に、手牌にたった一枚だけあったネリーの色でぴたりと直撃を取る宮永照。
しかも、やえの話を聞く限り、あの二人は今、俺らで言うところの《能力》を使ってへんのやろ? いやホンマ人間やないで……ネリーも宮永照も」やえ「実に面白いじゃないか。さあ、ここで南三局。宮永の最後の親番だ。先鋒戦もいよいよ大詰め。
点数状況は——順に、ネリーが172700点、宮永が106100点、竹井が61700点、初美が59500点……」優希「ネリちゃんと咲ちゃんのお姉さんには七万点も差があるじぇ!! なんの能力も使わずに、これを一回の親番で削り取れるっていうのか!?」
誠子「宮永先輩ならやっちゃいそうな気がしますが……ネリーさんも全力で阻止しにかかるでしょうからね。どうなることやら」
セーラ「これがひっくり返ったら、まさに《奇跡》やな。それとも、もう《運命》は決まっとるんやろか? いやー読めへんわー」
やえ「《奇跡》を起こす者と《運命》を奏でる者……《頂点》対決を制するのは、果たしてどちらになるのか——」
照『ツモ、500オール』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
-
86 : 2014/09/06(土) 21:38:36.55 -
——《新約》控え室
照『ツモ、700は800オール』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
怜「えらいこっちゃで……!!」
和「ただのツモのみじゃないですか」
絹恵「二巡目やで!? 和、なあ、わかっとる!? あの人、なんの能力も使わんと二巡目にツモったんやで!?」
和「はあ? 誰にでも出来ますよそんなこと」
絹恵「姫子ー!! うちが間違っとるんか!? 能力ナシで二巡目ツモは誰にでもできることなんかーっ!?」ウワーン
姫子「絹恵……安心しんしゃい。私は絹恵の味方と」ギュ
怜「ホンマ《奇跡》でも見とるような気分やけど、点数自体はむっちゃ低い。もっと高い手で和了らへんと……こないな安手、たとえ十回和了っても逆転できひんで」
和「せっかく一巡目で張ったのに、なぜダブルリーチを掛けなかったのでしょうか」
怜「たぶん、それやと未来が変わってまうんやろな。あそこはきっとダマが正解やってん。点数は低いけど、和了らへんよりはマシ。仕方あらへん」
和「怜さん、言ってること無茶苦茶じゃありませんか……?」
-
87 : 2014/09/06(土) 21:42:41.19 -
——《久遠》控え室
ネリー『出端くじきリーチなんだよっ!!』
洋榎「うちの百八ある必殺技の一つを勝手にパクんなー!! ちゃんと使用料払わんかいコラァー!!」
哩「驚いたと……能力ば無数に使えるだけやなかとね」
ネリー『なんで六筒やねんなんだよっ!!』
白望「ひっかけ後のせさくさく……ここまで完コピ……」
憧「洋榎、あれあんたの妹かなんか?」
洋榎「ま、まさか……!! ほな、あいつがオカンが死に際に言うてたネリ江=アタゴ=ヴィルサラーゼ……!! うちと絹の生き別れの妹——ってなにやらすねんッ!!」
憧「あんたが勝手にやったんじゃない……」
照『ロン、2400は3000』
ネリー『なんやとなんだよ!?』
洋榎「ネリ江ええええええ!! 自分なに振り込んどんねんドアホ!! この愛宕家の面汚しがッ!! まるでうちが宮永より弱いみたいやんかー!!」
哩「実際弱かけん、仕方なかと」
憧「あったま痛いわ……三割くらい洋榎がうるさいせいだけど」
白望(あれ……これそう言えばさっきから……)
-
89 : 2014/09/06(土) 21:46:50.48 -
——《永代》控え室
塞「よしっ! 行けっ!! そこよ宮永ーっ!!」ヒャホーイ
純「おぉ……照の活躍で塞が立ち直ったか」
まこ「ネリーの手牌が真っ赤に燃えとるんは目に入っとらんのじゃろな」
穏乃「あと三つ……和了れるといいんですけど——」
純・まこ「?」
塞「っしゃあ、宮永ァ!! 早いとこそのガキやっちゃってー!!」
純「なあ、おい、穏乃……?」
まこ「わらさっきから何を数えとるんじゃ?」
穏乃「えっ? 照さんの和了回数ですけど?」
塞「はあ? なに言ってんの、高鴨。よくわかんないけど、あんたが言ったんでしょ、ヴィルサラーゼの呪文で《万華鏡》はもう使えないって。
だったら和了回数なんて数えても意味ないじゃない」まこ「知っちょると思うが、白糸台標準ルールに八連荘はないけえの?」
穏乃「…………あれ。これも言っちゃマズかったやつでしたかね」
純「……どういうことだ、穏乃」
-
91 : 2014/09/06(土) 21:59:14.31 -
穏乃「え、えーっと……さっきから照さんの打点がちょっとずつ上がってるんですけど、お気付きですか?」
まこ「言われてみればほうじゃの。じゃが、《万華鏡》は失っとるっちゅう話なんじゃろ? なんで照は律儀に《制約》を守っちょるんじゃ?」
塞「そっちのほうが打ちやすいからじゃない? 宮永の連続和了で打点が下がってるケースなんて、私、見たことないもの」
純「あのな……《万華鏡》を失ったことが今まで一度もねえんだから、《制約》フリーになったこともねえはずだろ。打点下降を見たことがねえのは当たり前だ」
穏乃「あ、あの……すいません。誤解させちゃいましたかね。私、《万華鏡》に《制約》があるとは、一言も言ってないんですけど」
純・まこ「ッ!!?」
塞「はあ!? じゃ、じゃあ、いつものあの《打点上昇》はなんなの!? 性癖!? 私たちに恐怖を植えつけるための演出!?
そ、そっか……宮永ってそういう趣味が——」穏乃「あ、いえ、照さんの《打点上昇》は、確かに《制約》なんです。けど、それは、《万華鏡》の《制約》じゃない。
というか、むしろ《万華鏡》って、その《制約》をクリアするために、後天的に発現した能力なんだと思います」純「そ、そりゃ……じゃあ、《照魔鏡》の《制約》ってことか? まあ、感応系最強の能力なんだから、それくらい強い《制約》があってもおかしくはねえと思うが……」
穏乃「いえ。《照魔鏡》には《一局打つ》という《発動条件》がありますけど、《制約》はこれといってありません」
まこ「じゃ……じゃあ、なんの《制約》じゃ? というか、《照魔鏡》でも《万華鏡》でもないじゃと……? それは、つまり——」
穏乃「そうです。照さん……あの人は、全部で三つの《鏡》を持っているんです」
純・まこ「ッ!!!?」
塞「ちょ……それ、詳しく頼むわ、高鴨——」
-
95 : 2014/09/06(土) 22:17:31.72 -
照「」タンッ
久(もう張ってるかしらね……?)タンッ
初美(まーたツモられそうですねー)タンッ
ネリー(今は視野の広い《無極点》ネリー……さとはと同じ討魔《アンチオカルト》の属性を備えたりゅうかを《完全模倣》してる。オカルトには相性がいいはずなんだけ——ど!!)
ネリー「チー」タンッ
ネリー(これで、テンパイ——)
照「ツモ……1000は1300オール」パラララ
ネリー(うぬぬ……!? 最高状態のりゅうかでもダメなのか。論理の隙間が見つからないよ……おっかしーなぁ)パタッ
久(また打点が上がった、か。コークスクリューの気配はないけれど、看過できないわよねぇ)
初美(ネリーさんの今の鳴きはいい線いってたような気がしたですけどねー。んー、やっぱりこの崩れなさは異常ですー)
照「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー(うっ……!? また例の嫌な音——恐怖のカウントダウンなんだよ。早く止めないとねっ!!)
照「四本場」コロコロ
初美:56900 ネリー:166100 照:117900 久:59100
-
96 : 2014/09/06(土) 22:22:03.81 -
——観戦室
煌「安手ながらも五連続和了……ネリーさんの自動即興《エチュード》を掻い潜りながらこんなことができるのは、宮永さんの絶大な支配力と、人並み外れた集中力があってこそですね」
憩「………………」スッ
煌「……荒川さん? なにか、お考え事ですか?」
憩「あ……いや、ちょっとな……」
煌「ご気分が優れないようでしたら、横になりますか? ベッドはあの通りですが、ソファを繋げれば」
憩「『花田さんの考えは合うてるよ』」
煌「は……て——?」
憩「結論から言うてみただけや。せやけど……通じたやろ?」
煌「い、いえ、何のことやら……」
憩「ええねんええねん。運命奏者《フェイタライザー》について、こんだけ懇切丁寧な解説をしてもろてん。これくらいの対価は払わんとフェアやないやろ」
煌「あの……その、申し訳ありません。顔に出てしまっていたようですね……」
憩「あっ、いや、なんちゅーか、ホンマに気にせんでええからな? むしろ、ありがとな、気い遣うてくれて。ウチのことはええから、聞きたいこと聞いてーな。
例えば……宮永照の《打点上昇》について——とか」 -
97 : 2014/09/06(土) 22:25:48.79 -
煌「…………あれは、《万華鏡》の《制約》ではありませんね。むしろ、《万華鏡》とは、《打点上昇》の《制約》をクリアするために後天的に発現した能力である——違いますか?」
憩「違わへん。大正解や」
煌「だとすると、当然、あの《打点上昇》が一体何の《制約》なのか……という疑問が湧いてきます。そして、その答えは——」
憩「せやで。遠からずその目で見れる。正確に言うと」
煌「南三局六本場になれば、ですね?」
憩「まさに。っちゅーわけで、花田さんの考えは合うてるよ。宮永照の本当の脅威は、連続和了なんかにはないねん。
やって、あんなもん、ただの《発動条件》に過ぎひんのやから」煌「全てにおいて最高の雀士——宮永照さん。ようやく、その真の意味を理解することができました」
憩「白糸台でこれを知っとるのは、やっぱりウチと小走さんとガイトさん、あとは、菫さんもうっすら気付いてはると思う。
ただ、まあ……それもきっと今日で最後やろな」 -
98 : 2014/09/06(土) 22:32:38.12 -
照『ツモ、1200は1600オール』
煌「これで六連続和了。非常に緩やかですが、《打点上昇》の《制約》はクリアしています」
憩「あと一つ……次の局で、全てが決まるで。小走さんが言うところの、宮永照の持つ三つの《鏡》。《照魔鏡》、《万華鏡》ときて、これがその最後。
宮永照が公式戦でこれを見せたんは、たったの二度だけ。奥の手も奥の手や」煌「《制約》は《打点上昇》。《発動条件》は《途中流局を挟まない七連続和了》ですかね」
憩「せや……よう見とくとええで、花田さん。白糸台に四人しかいない元一軍《レギュラー》にして、常勝無敗のナンバー1。
さらには五人しかいない支配者《ランクS》であるあの《頂点》の、もう一つの最高——」煌「学園都市に七人しかいないレベル5……その第六位」
憩「《八咫鏡》——あの超能力を、小走さんはそう呼んどったな」
-
100 : 2014/09/06(土) 22:40:50.08 -
——《幻奏》控え室
優希「《やたのかがみ》?」
やえ「古代の伝承の一つに、『岩戸隠れの伝説』というものがある。太陽神たる天照大神が天岩戸に引き籠り、世界が闇に包まれ、様々な禍が起こったという話だ」
優希「お、お日様が引き籠りか……それは大変だじぇ」
やえ「大変も大変さ。だから、八百万の神々は、どうにかして天照大神を天岩戸から引っ張り出そうと、あの手この手で天照大神の興味を引いた。
最終的には、とある神が素敵なダンスを披露してくれるんだが、それによって——」誠子「その踊りを見た他の神様たちがみんな笑って、天照大神が何事かと訝しむんですよね。自分が引き籠っているのに、なんで外の皆はそんなに楽しそうなんだって」
やえ「その通り。外の様子が気になった天照大神は、天岩戸の扉を少しだけ開ける。で、『なんでみんな笑っているんだ』と訊くんだな。
すると、『あなたより貴い神様が現れたからです』と返ってくる。そして、その返事と一緒に、天照大神は渡されるわけだ——とある一枚の鏡を」セーラ「それが《八咫鏡》っちゅーわけか」
やえ「いかにも。天照大神は、《八咫鏡》に映る自分自身の姿を見て、それを貴い神様なのだと思い、もっとよく見ようと、天岩戸の扉を開く。
その隙をついて、別の神が天照大神を天岩戸から引きずり出すんだな。こうして、世界は再び光で満たされた。めでたしめでたしというわけだ」 -
101 : 2014/09/06(土) 22:43:59.80 -
優希「その……引き籠りのあまてらすっていうのが、咲ちゃんのお姉さんのことなんだじぇ?」
やえ「宮永ジョークの一つにこんなものがある。『Q:ちゃんと自分のこと鏡で見てますか?』『A:照魔鏡で他人を見ることのほうが多いです』ってな」
誠子「笑っていいのか悪いのか……」
やえ「事実、あいつは何百回と《照魔鏡》を使っているが、《八咫鏡》を使ったのは、公式戦ではたったの二度きりだ」
セーラ「二回も使ってたんか……宮永の牌譜は一通り見とるけど、まったく気付かへんかったで」
やえ「まあ、目立つ特徴はあるが、《打点上昇》という観点では《万華鏡》と区別がつかないからな。加えて、同じ条件を満たしても発動させないことのほうが圧倒的に多い。
直に対局したやつじゃないなら、よくて違和感を覚える程度。確信には至らないはずだ」 -
102 : 2014/09/06(土) 22:47:23.41 -
優希「その……《やたのかがみ》っていうのの《制約》が、《打点上昇》なんだじぇ?」
やえ「ご名答」
誠子「は、《発動条件》は……?」
やえ「《途中流局を挟まない七連続和了》」
セーラ「あと一回やん!?」
やえ「そうだな。ネリーがここを凌げなければ、間もなくその時が来てしまう。
《八咫鏡》……あいつがあいつ自身を鏡に映し出すとき、その光は、卓上《セカイ》の隅々まで行き渡る——」照『ツモ……1300は1800オール』
優希「き、来たじょ、七連続和了!!」
誠子「打点も上昇している……!! じゃあ、これで!?」
セーラ「来るっちゅーわけやんな!! 《絶対》の超能力が……ッ!!」
やえ「しっかり気を張れよ、お前らッ!! 天岩戸が開くぞ——!!」
照『』ギギギギギギギギギギギギギギギ
優希・誠子・セーラ・やえ「ッ!!!」ゾゾゾ
-
106 : 2014/09/06(土) 23:03:45.11 -
ネリー(てる……あなたは今、何を想っているの? この力を、どう受け止めているの? ねえ、てる——お願いなんだよ……!!)タンッ
照「ロン」パラララ
久・初美(えええっ!!?)ゾワッ
ネリー(これからたとえどんなことがあっても……決して道を踏み外さないでね。あなたの絶望は、世界の絶望になるんだから——)
照「国士無双、48000は49800」ギギギギギギギギギギギギギギギギ
照手牌:一九19①⑨東南西北白發中 ロン:西 ドラ:8
ネリー「……はいなんだよー……」チャ
久(こ——国士無双十三面待ち……!!? ってか、第一打からずっとツモ切りだったじゃないあなた!!)
初美(こ、これは確かに《奇跡》ですけどー……それだけなわけがないですよねー? もっとヤバい何かですよねー……?)
ネリー(てるの超能力——《八咫鏡》。やえ曰く、《打点上昇》の《制約》と《七連続和了》の《発動条件》によって成立する、《配牌を国士無双十三面待ちにする》レベル5の配牌干渉系能力。
けど……これは違うんだよ。この戦慄の旋律は、決して一型の運命創者《プレイヤー》のそれじゃない……)照「七本場」コロコロ
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108 : 2014/09/06(土) 23:10:43.59 -
照「あ、あの、ネリーさん、大丈夫……?」オズオズ
ネリー「ほえっ!? あっ、ごめん! 私のツモか!? こいつは失敬なんだよ!!
まっ、逆転されちゃったけど、まだまだ対局は終わってないんだよっ! てる、最後まで油断しないでねっ!!」照「あ、えっと、うん(あ……笑ってる——よかった……)」ホッ
ネリー(まあ……とりあえず、きらめのことは後で考えよう! 今はこの対局に勝つこと!! それが最優先事項……!!
がっつり点棒持っていかれちゃったからねー!! がつーんとやり返さないと!! はてさて、次の《運命》は一体どこのどちら様で——)ゾワッ照(と、思ったらまた難しい顔に……?)アワワ
ネリー(ちょいちょいちょい……!! はあ!? 嘘でしょ!? どうして今このタイミングでこんな……!!? これはまた——とんでもない《運命》を聞いちゃったんだよー!?)
初美:53500 ネリー:112900 照:177900 久:55700
-
109 : 2014/09/06(土) 23:16:42.85 -
——《久遠》控え室
洋榎「宮永の国士十三面待ち——これ見るのは三回目やな。せやけど、久らの様子を見る限り、今は能力を奪われとるはずや。少なくともレベル4の能力は。
ほんなら……あれはそれより上の何かっちゅーことやんな。これはええこと知ったでー」憧「ちょっと、洋榎っ! 珍しく真面目に能力解析するのはいいけど、そんなことよりあのネリー=ヴィルサラーゼの手のほうを説明してよっ!! あんな……あんなのってある!?」
洋榎「ん~? 今のとこただの門前清一やん。ま、確かに妙な偏り方しとるけど」
哩「配牌はバラバラやったけん、神代小蒔や石戸霞の能力……とはまた別やろか」
白望「あ……一筒掴まされた」
憧「あの宮永照が迷ってる……?」
洋榎「まっ、子ハネくらいええやん。今は押せ押せ——」
ネリー『か……っ! カンなんだよっ!!』ゴッ
ネリー手牌:②②②②③③③③④⑤/①①①(①) 嶺上ツモ:? ドラ:南・?
照『ッ——!!?』
哩・白望・憧「っ!!!」ゾワッ
洋榎「………………ほほう?」ビリッ
-
110 : 2014/09/06(土) 23:20:13.20 -
——《幻奏》控え室
ネリー『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー手牌:②②②②③③③③④⑤/①①①(①) 嶺上ツモ:④ ドラ:南・?
優希「門前清一出和了り見逃しで大明槓からの嶺上開花!? 超わけわかんないじょネリちゃん!!」
やえ「これは……しかし、誰なんだ……? 明らかに意図した嶺上開花だと? 莫迦な……そんなもん都市伝説でしか聞いたことがないぞ——」ゾクッ
誠子「け、けど、確かに嶺上開花はすごいことですが! これだと点数が変わりません!!」
セーラ「……ほな、ここでは終わらへんっちゅーことやんな——」
ネリー『もいっこ……カンなんだよっ!!』ゴッ
優希・誠子・やえ・セーラ「っ!!!」ゾワッ
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114 : 2014/09/06(土) 23:24:14.97 -
——《新約》控え室
ネリー『』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー手牌:③③③③④④⑤/②②②②/①①①(①) 嶺上ツモ:? ドラ:南・9・白
絹恵「姫子おおお!! うちもうダメ!! ずーっと我慢してきたけど、もう限界っ!! こんな異常現象のオンパレードもう一秒やって耐えられへん!!」カタカタ
姫子「門前清一見逃し大明槓——からの嶺上開花……からの二連槓やと?」ゾクッ
和「偶然にしてもひど過ぎます……」
怜「信じられへん……王牌は支配領域《テリトリー》の《未開地帯》やで? その《最高峰》からあんな自在に有効牌を——」ハッ
姫子「うおぉうおおおわっ!? また嶺上と!? これで二連続嶺上開花!!」
絹恵「いやああああああああ!! 聞きたない!! 聞きたないそんなことッ!!」カタカタカタカタ
怜「せやけど、これでも12000……!! いや、嘘やん! いやいやいや!!?」ゾワッ
ネリー『もいっこー……カンッ!!』ゴゴッ
和「SOA……」
-
115 : 2014/09/06(土) 23:28:47.80 -
——《永代》控え室
ネリー『もいっこー……カンッ!!』ゴゴッ
ネリー手牌:④④④⑤/③③③③/②②②②/①①①(①) 嶺上ツモ:? ドラ:南・9・白・西
塞「いっやああああああああ!! どういうこと!? ねえ高鴨!! これどういうことー!?」ユッサユッサ
穏乃「まったくわかりません……!? というか信じられません!! 山のあんな深いところを、あそこまで完全に支配できるなんて——!?」
純「いや……これは本気でヤバ過ぎんだろ! 衣や透華や小蒔でさえ、あの《未開地帯》の《最高峰》にはまともな手出しができねえんだぞ……!? それをあんな易々と——」
まこ「なにが恐ろしいて……穏乃の話じゃと、この能力を持った雀士が世界のどっかにおるっちゅうことなんじゃろ?
わしゃあ死んでもゴメンじゃけえの、こんな化け物の相手だけは……!!」ネリー『ツモ……ッ!!』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
塞「うぎゃあああああああああ!!?」ガタガタ
純・まこ「うあぁあぁー……」ゾワッ
穏乃「す、すご過ぎる……っ!? こんな!! こんなことを狙ってできる人が世界のどこかにいるんだ……!! 一度でいいから打ってみたいっ!!」キラキラ
-
116 : 2014/09/06(土) 23:35:51.29 -
——対局室
南三局七本場・親:照
ネリー「ツモ……ッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー手牌:④④④⑤/③③③③/②②②②/①①①(①) 嶺上ツモ:⑤ ドラ:南・9・白・西
久(ラス前に今日一番のオカルトが来たわっ!!)ゾワワッ
初美(ちょっと心臓が止まりかけたですよー……)ドキドキ
照(ネ……ネリーさん、それは——)
ネリー「清一……対々……三暗刻三槓子……」
照(咲っ!!?)ゾワッ
ネリー「嶺上開花——24000は26100……責任払いなんだよっ!!」ゴッ
照「は、はい」チャ
ネリー(うわああああああああ!!? 本当に《神託》が次々とっ!! すっげえええ!! マジすげえええ!!
あの《神域》を完全に支配するとか!! とんでもねえな!! これが原点にして源泉——始祖の大魔術師かッ!!!
でもなんで!!? どうなってんの!!? こんな神話級のメロディ……ッ!!! 魔術世界にいた頃だって奏でたことないんだよ!!?
さては、てるか!!? てると打ってるからなのかああああ!!?)照(ま、まさか——ネリーさん……!! 私の咲愛を——咲はこの世にたった一人しかいないという世界の大原則を逆手に取って、こんな真似をしてくるなんて!! なんて卑劣な……ッ!!)ギリッ
-
118 : 2014/09/06(土) 23:45:47.53 -
——観戦室
憩「いやーぁ、凄まじいもん見たな。久しぶりに自分の目を疑ったで。
あ、いや、つい昨日の花田さんとのオーラス以来やから、全然久しぶりでもなんでもないんやけど」煌「恐れ入ります」
憩「さて……連荘ばっかでかなり長かったけど、とうとうオーラスやな。ここまで、ネリーさん8和了、宮永照9和了。そのうち、宮永照からネリーさんへの直撃は、安いの二回と、《八咫鏡》の国士が一回。
ほんで、ネリーさんから宮永照への直撃は、大星さんのダブリーと今の嶺上開花責任払いと、合わせて二回。点数的には子の役満分+α。
今の……赤五を引けとったら、ネリーさんが捲くり返してたんやけど。なかなかままならんなー」煌「それにしても、ネリーさんは嬉しいことをしてくれますね。あの宮永照さんから直撃を取るのに、我らが《煌星》のメンバーの力を使っていただけるとは」
-
119 : 2014/09/06(土) 23:49:01.78 -
憩「……ま、確かに、花田さん——っちゅーか運命論の理屈やと、コピー元である大星さんなら、あの局あの山で同様に直撃が取れるってことやもんな。
まだ直接打ってへんから《照魔鏡》でネタバレしとらへん状態とは言え、快挙やわ」煌「鼻高々です」スバラッ
憩「さーて……オーラスは誰になるんかな、っと」
煌「ふむ。右目を閉じましたね」
憩「今度は《磨道》の福路さんかー。これで右目を開いて目の色までコピーできてたらオモロいねんけどな」
煌「さすがにそれは無理でしょう」
憩「せやろな。まぁ……ただ、ちゃう人の目の色が変わったな」
煌「はて——」
-
127 : 2014/09/07(日) 00:17:03.90 -
久(待つことにはもう慣れたわ。十分待ったわよ。大丈夫……そのおかげで、私はみんなに会えたんだから。
今の私は三年前とは違う。一人じゃない。一人じゃないから、こんなに弱い私でも、前に進む勇気が持てる——!!)久「チー」タンッ
久手牌:2344588⑥⑦⑧/(1)23 捨て:7 ドラ:5
照(……鳴かれた?)
北家:宮永照(永代・151800)
ネリー(えっ、なにそのメロディ……?)
西家:ネリー=ヴィルサラーゼ(幻奏・139000)
久(断ヤオ一盃口ドラ一テンパイを崩して役ナシ。また憧にわけわかんないって呆れられるかしら。
でも、これでいいの。一索——ぴーちくぱーちくうるさい鳥さん。これは……洋榎ってことにしましょう)——なあ、一個、素朴な疑問を呟いてええかな?
——これ、五人目のスペース空けたんはええけど。
——二年後はこれ、うちの机ちゃうのに、一体どないしてそいつにここ書き込ませるん?
-
128 : 2014/09/07(日) 00:21:17.63 -
久「ポン」タンッ
ネリー(は——?)
久手牌:2345⑥⑦⑧/8(8)8/(1)23 捨て:4 ドラ:5
久(ふふっ。八索は緑色でMだから哩。なーんて、言ったらビンタされそうね。哩ってば、本当にむっつりさんなんだから……)
——すごかこと思いついたと!
——二年後のこん机の持ち主……!
——そいつば、五人目にしたらよかッ!!
初美(《最悪》……今度は何をしてるですかー?)タンッ
南家:薄墨初美(新約・53500)
ネリー(また変なメロディ。超信じられないことに、まるで検索に引っかからない。
けど、これ……なんとなく、今私が奏でているみほこの曲とは、相性《最悪》な気がするんだよ)タンッ照(竹井さん……?)タンッ
-
129 : 2014/09/07(日) 00:24:35.08 -
久(さーて、いっつも遅れてやってくるシロさんは、今日もダルダル重役出勤なのかしら?)タンッ
久手牌:2345⑥⑦白/8(8)8/(1)23 捨て:⑧ ドラ:5
初美(混一狙いですかー? いや、《最悪》がそんな普通っぽいことするわけないですー)タンッ
ネリー(むむむ……これはマズいなんだよ)タンッ
照(なるほど。これはわからない)タンッ
久(そうそう。シロ——あなたは、なんだかんだで仕事はきっちりやるタイプよね)タンッ
初美(生牌ですけどー、どうなるか)タンッ
久「ポン」タンッ
久手牌:2345/白白(白)/8(8)8/(1)23 捨て:⑥ ドラ:5
久(混一テンパイ。役牌確定。さすがシロね。いつもありがとう)
——都市伝説曰く、新入生代表になる生徒は問題児か優等生のどっちからしい。
——愛宕先生は前者で、赤土先生は後者だったとか。
——二年後の新入生代表が優等生のほうなら……ダルくなくていいんだけどな。
-
130 : 2014/09/07(日) 00:32:00.27 -
初美(出来面子を崩して見え見えの混一……?)
ネリー(わからない。わからないけど、まだ《流れ》は私にある。このまま行けば、無問題なんだよ!)タンッ
照(あっ……また和了れなかった。しまったな。さっきの局でムキになり過ぎた。
いや、しかし、咲のためにやったことだから、悔いはない。今は今できることをしよう……)タンッ久(さてさて……ここであなたが来るわけね、憧——)
久手牌:2345/白白(白)/8(8)8/(1)23 ツモ:[⑤] ドラ:5
久(今でもはっきり覚えているわよ。真っ赤なドレスに身を包んだ一年生。
可愛くて、見た目は少し軽そうで、それでいて瞳は怜悧に光ってて、口を開けば小生意気で、思わず一目惚れしそうになったわ)タンッ久手牌:234[⑤]/白白(白)/8(8)8/(1)23 捨て:5 ドラ:5
初美「ポンですよー! ドラいっぱいですよー!!」タンッ
ネリー(ここでー!? 嘘!! 《流れ》が断ち切られたんだよ……!?)タンッ
照(ここまでかな……)タンッ
久(あら?)ツモッ
久手牌:234[⑤]/白白(白)/8(8)8/(1)23 ツモ:⑤ ドラ:5
-
133 : 2014/09/07(日) 00:42:56.70 -
初美(げっ、この感じは!?)タンッ
ネリー(こ、こんなことが……!! 完全に《原譜》レベルの一曲なんだよ!?)タンッ
照(わー……)タンッ
久(さあ、憧っ!! お色直しは済んだかしら——ッ!?)スッ
パシュッ
初美(やっぱ飛ばしやがったー!?)
ヒュルルル
照(たーまやー)
ルルルルル
ネリー(かーぎやー! なんだよっ!!)
パシッゴッタァァァァァァァン
久「ツモ——」ゴッ
初美・照・ネリー「ッ!!!」ゾワッ
久「白赤二……2000オールッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
久手牌:234[⑤]/白白(白)/8(8)8/(1)23 ツモ:[⑤] ドラ:5
-
135 : 2014/09/07(日) 00:48:37.26 -
初美(断ヤオ一盃口ドラ一を捨てて役ナシ! 出来面子を崩して白を集めたのに、そこから混一とドラを捨てて赤五単騎!!
それを一巡でツモっておきながら和了り拒否して次巡に残り一枚しかない赤を引いてくるとか……!! もー解説するのも《最悪》ですよー!!!)ネリー(三局連続で《原譜》級のメロディ……!! これ見てる人たちみんな発狂するでしょ!!?)
照(《最悪》の大能力者は……能力を失っても《最悪》)
久(最高に綺麗よ、憧。やっぱり、あなたみたいな強い子には、真っ赤に燃えるドレスがお似合い。
もうっ、ますます大好きになっちゃったじゃない。憧は本当に罪な女の子よね。まったく誰に似たんだか。ま、それはさておき——)久「さて……と! やーっと調子が出てきたかしら? というわけで、まだまだお楽しみはこれから! 連荘続行よっ!!」ゴッ
ネリー「ええええぇー!? まだ奏で足りないの!? もう十分すっごいの聞いたよっ!?」ガタッ
久「あらあら。何を言っているのかしら、この子は。麻雀は一位を目指すものでしょう?
トップまで十万点近い差があるっていうのに、ここで和了り止めをする雀士がどこにいるのよ」ネリー「いやいやいや!! そっちこそ何言ってるのなんだよ!? 十万点近い差ができるほど力の差があるんだよ!?
今みたいな一曲は千年に一度あるかないかの超激レアメロディ!! ここで終わりにしておいたほうが正解に決まってるんだよ!!?」 -
136 : 2014/09/07(日) 00:59:35.47 -
初美「ネリーさん……そんな一般論をこの《最悪》に説いても馬鹿の耳に念仏ですー。
こいつがそんな素直なやつだったら、私も苦労はしてないですからねー」ネリー「さ——《最悪》も《最悪》なんだよ!? 私の脳内には一千年分の蓄積があるっ!! その私が言ってるんだよ!?
ここで連荘続行しても、点差が開くだけ!! そういう《運命》!! ひさだってそれくらいわかってるでしょ!?」久「一千年分の蓄積? 《運命》? よくわからないけど、ネリーさんってすごいのね。道理で強いはずだわ」
ネリー「じゃ、じゃあ——」
久「けれど……それが何だって言うの? たとえ結果が見えていようと、力の差があろうと、私は和了り止めなんかしてやらない。
どころか、分の悪い勝負ほど……私って雀士は燃え上がっちゃう性質なのよね——!!」ゴゴ初美「まあ《最悪》ならそうですよねー」
ネリー「い、いやでも……っ!!」
久「いいこと、ネリーさん? よーく覚えておきなさい。
たとえあなたに何千年分の蓄積があろうと、あなたが《運命》の全てを知っていようと、私には、そんなこと関係ない」ゴゴゴゴゴ初美「そうですねー。そうですよー」
久「既存のあらゆる概念や観念は——知識も、経験も、法則も、論理も——私にとって意味をなさないのよ。
私はあなたの理解の外側にいる。あなたの理屈《ルール》で私を縛ることは決してできない。そう、つまり……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴネリー「ひ、さ——」
久「私の《最悪》に常識は通用しないわッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー「……っ!!?」ゾワッ
-
137 : 2014/09/07(日) 01:05:00.99 -
初美「まったく相変わらずですねー、《最悪》は」
久「お褒めにあずかり光栄だわ、《最凶》」
初美「褒めてねーですよー」
ネリー「そ、そんなことって……!?」
初美「ネリーさん、こいつと言い合うなんてバカな真似はやめといたほうがいいですよー。こいつの《最悪》は《罪悪》。端から私たちとは背負ってる業が違うですー。
そもそも、理屈でオリたり力に降参したりするお利口さんじゃないんですよねー。
こいつの《最悪》を止めたいなら、それこそ《絶対》の《通行止め》でも持ってこないと無理無茶無駄ってもんですよー」ネリー「嘘でしょ……」
久「残念ながら、嘘じゃないのよね。誰がここで止まるもんですか。せっかく盛り上がってきたんだもの。やっと憧れの舞台に立てたんだもの。もっともっと私を楽しませなさいよっ!!」
-
138 : 2014/09/07(日) 01:08:04.67 -
ネリー「……わかったんだよ。ひさがその気なら、こっちも全力で叩き潰すまでだよッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
久「ひゅうっ! いいわねっ!! そーこなくっちゃ……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
初美「さーて……これで焼き鳥は私だけですかー。気合入れていくですよー。このまま終わったら赤っ恥ですからねー」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
照(頑張ろう……)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
久「みなさん準備はいいかしらっ!? 張り切って行くわよー、一本場ッ!!」ゴッ
初美:51500 ネリー:137000 照:149800 久:61700
-
139 : 2014/09/07(日) 01:11:37.82 -
——《久遠》控え室
憧「ひ……久ぁ……」ウルウル
洋榎「泣くな泣くなー憧ちゃんよ。せっかく久が楽しんどるんや。うちらも一緒にわいわいやろーや」ナデナデ
憧「うっ……ううう……!!」
哩「笑って応援しんしゃい、憧。そいがきっと、久の力になっけん」
憧「わ、わかってるけどぉ……」
白望「泣かれると……ダルい……」スッ
憧「はうっ……!? い、いいわよっ。シロに世話なんて焼かれたらおしまいだもん。自分でやる……!!」ゴシゴシ
洋榎「さっ、憧ちゃんが泣いとる間に、ええ感じに《最悪》な手が仕上がってきたでーっ!」
哩「能力の使えなかはずやのに、ようやっとね」
白望「それでこそ……久……」
憧「あ、あんな……!? もうっ!! またわけのわからない待ちして——!!」
久『ツモよ……700オールは800オール!』ゴッ
-
140 : 2014/09/07(日) 01:14:56.28 -
憧「本当に……久は《最悪》よ……」
久『二本場ッ!!』
洋榎「せやけど、憧ちゃんはそんな久のことがー?」
哩「《最悪》な久のことば——」
白望「最高に……」
憧「大好き……っ!! 大好き大好き大好きっ!! だから、久っ!! 頑張っ——」
ネリー『ロンですなんだよ……12000は12600』
久『っ!?』
憧「う、ぁ——」
洋榎「ほーぅ、最後はあいつやったか」
哩「《百花仙》——藤原利仙」
白望「《最愛》の大能力者……」
憧「久……お疲れ……マジでお疲れ」
久『ちゃー……やられたわーっ! けど、まだまだ諦めないからねっ! さっ、じゃ、次行きましょうっ!!』
憧「え……ひ、久——?」
-
141 : 2014/09/07(日) 01:18:59.89 -
——対局室
南四局二本場・親:久
ネリー「ロンですなんだよ……12000は12600」パラララ
久「っ!?」
初美(綺麗なド真ん中の三色。これは利仙ですかー)
照(終わった……)パタッ
久「ちゃー……やられたわーっ! けど、まだまだ諦めないからねっ! さっ、じゃ、次行きましょうっ!!」
ネリー(え? ひさ?)
照(竹井さん……?)
久「なーにきょとんとしてんのよ。ラス親は《連皇》の薄墨でしょ? 《一期》の藤原さんにはやられたけど、まだまだ私はトップ取る気だからね。油断しないでよ、《初代》の宮永さんっ!」
初美「お、おい、竹井……」
久「なあに? っていうか、薄墨。あなた、私のこととやかく言う前に、その乱れに乱れた巫女服をどうにかしなさいよ」
初美「……わかったですー。わかったですからー、もうそれくらいにしとくですー」ガタッ
-
143 : 2014/09/07(日) 01:22:33.78 -
久「なんで席を立ってるの……? ねえ、薄墨。勝負はまだ——」
初美「よーく見ろですー。これはクラス対抗戦の決勝じゃないですー。一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》の三回戦。あれからもう二年以上経ってるですよー」
久「よ……よく言ってることがわからないわね。二年も経ってる? 嘘つかないでよ。あなた、一つも成長してないじゃない……!!」
初美「これでもちょっとだけ身長が伸びたですー」スッ
久「や……ちょ、やめてよ、薄墨っ!! 私は遊び足りないの!! あなただってそうでしょ!?
やっとお祭りらしくなってきたんじゃない!! もっともっと楽しみましょうよ!! だって、ここで終わりなんて、そんな——」初美「それが規則《ルール》ですー。さ、いい子だから大人しく帰るですよー……」ポム
-
144 : 2014/09/07(日) 01:28:32.92 -
久「な……なんなのよ、あなた!? 口を開けば規則規則って——私はまだ遊んでいたいのにっ!!」
初美「門限は守れですよー。大丈夫ですー。今日でこの星が滅ぶわけじゃないんですからー。明日でも明後日でも、また好きなときに遊べばいいんですよー」
久「私は今遊びたいのっ!! この面子と!! 今この瞬間に打ちたいの!!」
初美「何事にも終わりは来るですー。だから今が楽しいんですよー。私の言ってること何か間違ってるですかー?」
久「ど、どうして……!? どうしてよ、薄墨っ!! なんであなたはそうやって……いつもいつも私のこと——」
初美「それはもちろん——お前のことが大嫌いだからですよー、竹井……」ギュ
久「薄墨……バカ……本当に信じられない……っ!!」ポロポロ
初美「それはこっちの台詞ですー。っとに、最後まで世話焼かせるなですよー。私たちはもう三年ですよー?
しゃんとするですーしゃんと! 一年生の模範になるように……しゃんとするですーッ!!」ベシッ久「痛っ!? も、もう……こんなときまでっ!!」
初美「まったく仕方のないやつですねー。後ろ見るといいですー」
久「え——」
-
145 : 2014/09/07(日) 01:33:47.16 -
憧「……久の《最悪》。いつまで泣いてんのよ。いや、泣いてる久もなかなか悪くないけどさ。
でも、あたしの久は……あたしの大好きな久は、残念ながらそっちじゃないのよね」久「憧……」
憧「まったく。こちとらこれから十万点差をひっくり返さなきゃいけないのよ?
せめて笑って送り出しなさいっての。いくら久が《最悪》でも、それくらいはできるでしょ」久「……あははっ、憧ってば、いつの間にそんな強くなったの?」
憧「バカ、なに言ってんの。久が強くしてくれたんじゃない」
久「そう——そうだったわね。ありがとう。それから、大分やられちゃって、ごめんなさい。あとは……よろしくお願いします」ペッコリン
憧「や、やめてよ気持ち悪い……っ!! っていうか、あたしより先に頭を下げなきゃいけない人がいるでしょ!?」
久「あらあら。薄墨に頭を下げるとか、私、死んでも嫌よ」
初美「おいコラ竹井。今ここであの世に送ってやってもいいんですよー……?」
-
146 : 2014/09/07(日) 01:38:03.25 -
憧「ホッッッントすいません! うちの久がすいません!! よく言って聞かせますからっ!!」ペコペコッ
久「わおっ!」
初美「一年生にここまでさせるとは……さすが《最悪》ですよー」
久「まっ、憧に免じて私は許して♪」
憧「久ーっ!? あんたってやつは本当に——」
久「冗談よ。ってなわけで……本当に、あれこれかれこれ、ごめんなさいね。それから、ありがとう。あなたに出会えてよかったわ、薄墨」ペッコリン
初美「ふ、ふんっ。やめろですよー、気色悪い。こっちはお前なんかと一生出会いたくなかったですー」プイッ
和「何を子供みたいな意地張ってるですか……」
初美「和ーっ!?」
和「委員長がとんだ失礼を致しました。深くお詫び申し上げます」ペコッ
久「しっかりしてるわねー」
和「ちなみに……言わなくてもわかると思いますが、竹井会長にはあとでみっちり反省文を書いていただきますから。
あと、初美さんと一緒に、お説教&デジタル講座を受けていただきます」久「本当にしっかりしてるわね……」
初美「っていうかなにゆえ私も巻き添えですかー!?」
-
147 : 2014/09/07(日) 01:41:09.29 -
憧「……原村和」
和「新子憧さん……あなたも反省文&お説教ですよ」
憧「わかってるわよ。けど、お互い、その前にやることやりましょうか」
和「そうですね。とにもかくにも点棒を取り返さなくては」
初美「も、申し訳ないですー。あとは頼んだですよー、和」
四位:薄墨初美・−49300(新約・50700)
和「どこまでやれるかわかりませんが、私は私のベストを尽くします」ゴッ
久「……憧、あとはお願いしていいのかしら」
三位:竹井久・−48500(久遠・51500)
憧「決まってるでしょ! 任せなさいよっ!!」ゴッ
憧・和「じゃあ(では)! 行ってくるわ(きます)!!」
久・初美「行ってらっしゃい(ですよー)!!」
————
-
148 : 2014/09/07(日) 01:43:42.28 -
————
ネリー「いやー強いねー、てる。100点が遠いんだよー」
二位:ネリー=ヴィルサラーゼ・+48800(幻奏・148800)
照「よくわからないけど、ネリーさんの世界(?)で打ってたら、たぶん、結果は逆になってたんじゃないかな」
一位:宮永照・+49000(永代・149000)
ネリー「まったまたー。そんな思ってもないこと!」
照「うん、まあ、それはそう……」
ネリー「またどこかで打とうよ、てるっ!」
照「そうだね。決勝とか」
ネリー「次は私が勝つからね~! それまで負けないでよ、てる!!」
照「うん。わかった」
-
149 : 2014/09/07(日) 01:47:20.47 -
ダダダダダダダダダダ
照・ネリー「ん、このダッシュ音は——」
穏乃「照さあああああああああん!!」ガバッ
優希「ネリちゃあああああああん!!」ガバッ
照・ネリー「うおっぷ……っ!」ヨロッ
穏乃「照さん! さすがですねっ!!」ギュー
優希「ネリちゃん! すごいじぇ!!」ギュー
照・ネリー「ありがとう」
穏乃「ではっ! 照さんの言いつけ通り、このまま一位を死守しますっ!!」
優希「むっ!? そこなジャージ! 何を言っているじょ。貴様のトップなど、私の東初で即刻陥落大暴落だじぇ!!」
穏乃「片岡さん、ですね。私は高鴨穏乃です。もちろん、全力で阻止しますよ!!」
優希「ふっふっふっ、身の程知らずの小童め! 世界の広さを教えてやるじょ!!」
-
150 : 2014/09/07(日) 01:50:11.83 -
ネリー「じゃ、ゆうき。あとは任せたなんだよっ!」
優希「応だじぇ!!」
照「高鴨さん。えっと、その、この点差は私の力不足だから、朝言ったことは気にしないで、普通に頑張って」
穏乃「なんのこれしき! 私のすごパに限界はありませんっ!!」
優希「じょじょじょー? シズちゃんとか言ったな。ほざくではないか、お主!!」
穏乃「片岡さんっ! 残念ですが、あなたの風がどんなに疾くても、私の山は動きませんっ!!」
優希「フッ……貴様とは、なんだか他人という気がしないじぇ、シズちゃん。構わず私のことは優希と呼べだじょっ!! あとタメ口でいいんだじぇ!!」
穏乃「実は私もそんな気がしてたよ、優希っ! うーっ、楽しくなってきたああああああ!!」
優希「私もだじぇええええええ!!」
照・ネリー「じゃ、行ってらっしゃい(なんだよ)」
穏乃・優希「行ってきます(くるじぇ)!!」ゴッ
-
151 : 2014/09/07(日) 01:55:18.22 -
——観戦室
憩「いやいや、えらいもん見てもーたわ。ウチは《特例》やから除くとして、まさかこの世に宮永照と互角にやり合える人間がおるとはな」
煌「たぶんですが、ネリーさんのお仲間の方々も、同じことを言うでしょうね」
憩「あとでガイトさんに感想聞くんが楽しみやで~」
『まもなく次鋒戦を開始します。対局者は席についてください』
煌「さてさて、次鋒戦は一年生対決ですか。ネリーさんを除けば、各チーム一人ずつの一年生ということになりますね」
憩「ゴールデンルーキーこと片岡さん、《デジタルの神の化身》の原村さん、竹井さんの愛弟子で速攻屋の新子さん、ほんでもって、学園都市最高の《原石》こと高鴨さんかぁ」
煌「私は全員と打ったことがありますよ」
憩「そらすごいな。ほんで、そんな花田さん的には、どないなると思う?」
煌「一年生はいい意味でも悪い意味でもブレがあります。皆さん実力も伯仲していますし、なかなか読めませんね」
憩「一年生を四人も抱える花田さんらしい意見やね。さっすがやわー」
煌「恐れ入ります。……と、そろそろ淡さんたちを起こしますか」
-
152 : 2014/09/07(日) 01:57:27.27 -
憩「せやね。本気でヤバいなら帰ったほうがええし、そうやないんやったらちゃんと偵察してもらわな。ここに来た意味がのーなってまう」
煌「では、失礼して——と。淡さーん、お身体の具合はいかがですかー?」
憩「菫さ~ん、辛いん治りまし——」ハッ
淡「うーん……キラメー、だっこー」ギュー
菫「く、苦しい……」ウウウ
憩「」ブチッ
煌「おやおや」
バキッボコッドカッボコスカボコスカ(イメージ)
-
153 : 2014/09/07(日) 02:00:47.85 -
淡「こんな手荒な起こされ方は生まれて初めてだよーっ!?」
憩「ウチもこんなにキレたんは生まれて初めてやわッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
菫「よ、よくわからんが、本人に悪気はないんだ。そうムキにならなくても……」
憩「あきません。こういうケジメはきっちりつけとかな。また同じことが起きるに決まってますわ」
煌「淡さん、ちゃんと謝ってください」
淡「うぅー……ごめんね、ケイ?」
憩「いくら謝っても許さへん……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
淡「キラメー! ケイが恐いよーっ!!」ウワーン
煌「申し訳ありません、荒川さん。なんとか淡さんの粗相をお許しいただけないでしょうか?」
憩「……ほな、花田さん、ちょっとこっち来て」
煌「は、はい」
憩「ふう~、っと」ゴロン
淡「ちょおおおおおおおお!? ケイ!? 誰の許可を得てキラメの膝を枕にしてるわけー!?」
-
154 : 2014/09/07(日) 02:04:31.01 -
憩「なあ、花田さん、次鋒戦いっぱいこうしててええ?」
煌「よくわかりませんが、こんなことで荒川さんの気が済むのなら、お好きなだけどうぞ」
淡「キラメー!?」ガーン
憩「ちなみに、大星さん。もういっぺんでも菫さんに失礼な真似してみい。花田さんの膝は一生ウチの枕になるで……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
煌「それは大変ですね。というわけで、淡さん。大人しくしていてください」
淡「なんてこったい!!」
菫「荒川の機嫌を損ねるとこういうことになるのか……」
憩「はーぁ! 快適やわーっ! 花田さんの膝枕、最っ高やわー!!」
淡「ぐぬぬぬぬぬぬ……っ!!」
煌「おっと、皆さん。次鋒戦が始まりますよ」
淡「それどころじゃないよー!?」
-
155 : 2014/09/07(日) 02:05:50.74 -
——対局室
優希「よろしくだじぇ!!」
東家:片岡優希(幻奏・148800)
穏乃「よろしくお願いしますっ!!」
南家:高鴨穏乃(永代・149000)
憧「よろしく」
西家:新子憧(久遠・51500)
和「よろしくお願いします」
北家:原村和(新約・50700)
『次鋒戦前半——開始ですっ!!』
-
169 : 2014/09/07(日) 08:00:22.34 ID:5kWrNzgPo -
乙です
頂上対決はとりあえず照が制したかいろんな意味で部長らしい感じで、部長好きとしては満足
>>163
最初に煌と淡と打ってた《三家立直》の先輩の名前がこんなところでも
つかこの時に胡桃と接点あったから、今のトーナメントでもチーム組んでたのか -
174 : 2014/09/07(日) 16:21:43.78 -
>>169ん
《三家立直》さんの供養(?)のために、無駄に設定メモを開示してみます。
*
~《三家立直》さんの略歴~
幼少期:祖母、父、母と家族麻雀。テンパイ則リー一家で育つ。
小学時代終わり:祖母、帰らぬ人となる。能力発現。
*
中学時代:祖母から受け継いだ麻雀でインターミドルを目指す。麻雀部に入部、練習に打ち込む。
その能力の強度から、仲間たちから『これはきっと超能力だ!』と喝采を浴びる。白糸台高校への進学を考え始める。
三年生のとき、チームを地区大会優勝に導く。
中学時代終わり:白糸台高校を一般入試で受験。合格。後の強度測定で、大能力者《レベル4》であること、その中でも上の上の強度があることが判明し、二軍《セカンドクラス》配属が決まる。
*
高校時代:二軍《セカンドクラス》一年四組所属。中学時代に鍛えた雀力、持ち前の分析能力、使いどころは難しいが抜群の強度を誇る大能力を駆使し、その実力をいかんなく発揮。藤原さんの目に留まる。チーム《一期》に加入。
クラス対抗戦決勝、江口さん・愛宕さんの捲くり合いに、待ってましたと追っかけリーチ。が、臼沢さんに塞がれ不発。自身初となる《無効化》を喰らう。
その後、成績が伸び悩み、二軍《セカンドクラス》落ち。転落の一途を辿る。
二年生に進級。感知系能力を持つ二人の新入生をオヒキに。上位ナンバー狩りを始める。
三年生に進級。《超新星》、《通行止め》に遭遇。
ほどなくして、鹿倉さんと和解(鹿倉さんは、不良みたいなことをしている昔のお友達を『バカみたい』と言いつつ放っておけなかったとかたぶんそんな感じです)。オヒキの後輩二人も含め、チーム《一会》を結成。
メンバーに火力が足りないことが問題に挙がる。
三家「任せろ。ちょうどいいやつを知ってる」ニヤッ
ということで、三家さんの知り合いの不良娘さん(新子さんに絡んで竹井さんにコマされた人です。《三元牌(※最大八枚まで)とドラ(※表ドラのみ)が集まる》大能力者——通称、小龍さん)を五人目に引き込む。
選別戦を経て、一軍決定戦《ファーストクラス・トーナメント》に臨む。
予選決勝、チーム《幻奏》と対戦。小龍さんが小走さんに倍直。オヒキの後輩二人が片岡さん・亦野さんを翻弄。三家さんは江口さんと二年ぶりとなる捲くり合い。臼沢さん不在のため、捲り勝つ。
鹿倉さん、ネリーさんと対戦。前半戦は喰らいついたものの、後半戦で二割→三割にグレードアップしたネリーさんに独奏される(三割ネリーさんは、そこらの地区代表より強い亦野さんを完封できて、国広さんや新子さんを一方的にボコれるくらい強いです)。
チーム《一会》、惜しくも予選敗退。
——以下、聞かれてもいないことを——
三家さんや小龍さんは完全にオリキャラですが、暴力暴言ではなく、『麻雀』の土俵で大星さんや新子さんとやり合うキャラなので、それなりの強者として設定しています。
(油断していたとは言え)大星さんを残り600点に追い込んだり、(三対一とは言え)新子さんをトばしたりというのは、誰にでもできることではないと思うのです。
花田さんは三家さんを『さぞかし名のある方』と評していて、竹井さんは小龍さんを『それなりに根性はある』と認めています。主要キャラとガチバトルするなら、ある程度の格が必要だと、私は思います。
余談ですが、イメージとしては、三家さんが『玄さんに敗北した後に超グレた小走さん』、小龍さんが『剥かれて悪堕ちした宥さん』みたいな感覚で書いています。
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182 : 2014/09/13(土) 17:36:29.96 -
東一局・親:優希
優希(さてさてだじょ。配牌一向聴でドラ三……負ける気がしないとはこのことだじぇ!)タンッ
穏乃(東初の優希は要注意っと。けど、どうかな。新子さんと原村さんは、わりとそういうのお構いなしって気がする……)タンッ
憧「……チー」タンッ
和(一巡目から? そんなに苦しい配牌だったのでしょうか)ヒュン
優希(む、なーんかヤな感じだじぇ)タンッ
穏乃(んー)タンッ
憧「チー」タンッ
和(鳴き三色……?)ヒュン
優希(鳴いて紛れを起こすつもりだじぇ? 無駄なことを……東場の私に不可能はないんだじぇ!!)ゴッ
優希「リー」
憧「ロン。3900」パラララ
優希(じょーん!?)
和(その手で鳴き……? この点差で? まったく理解できませんね)
穏乃(東場の優希を速度で圧倒するつもりなのかな。新子さんが速攻に自信があるのは知ってたけど、この点差だから、てっきり火力で勝負してくるもんだと思ってた。思い切ったことするなぁ)
優希(マズったじょ!? やえお姉さんが速度優先って言ってたのはこういうことだったんだじぇ!? 意識はしてたけど……あと三局の間に切り替えられるのか——!?)
憧(とりあえず……一つ和了れた。よかったわ。余計な力入ってるかと思ったけど、全然いつも通りっていうか、いつもより集中できてる。
さすがに十万点差をまくれるとは思ってないけど……とにかく、少しでも多く取り戻す——!!)穏乃「次は私の親ですねっ!」コロコロ
優希:144900 穏乃:149000 憧:55400 和:50700
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183 : 2014/09/13(土) 17:46:22.28 -
東二局・親:穏乃
優希「ポンだじぇ!」タンッ
穏乃(おっと、ドラポン。今度は優希が先に仕掛けてきた)タンッ
憧(もう切り替えてきたわけ? 対応早過ぎるでしょ、《東風の神》。けど、ま、いいわ。受けて立ってやるわよ……!!)
憧「チーッ!」タンッ
和(ふむ……)ヒュン
優希「チー(張ったじぇ……!!)」タンッ
穏乃(参った。全然ついていけない)タンッ
憧「こっちもチー!」タンッ
優希(追いつかれた……!? まだ不完全とは言え、今の私はそれなりに速度特化だじょ。この速さについてこれるのはネリちゃん(三割)か誠子先輩くらい。憧ちゃんとか言ったな。なかなかやりおるじぇ!!)
憧(片岡優希……門前主体の高火力系雀士だと思ってたけど、鳴きの速攻もお手の物ってわけね。条件五分のガチ勝負じゃ勝てる気しないわ。
ただ、今のところはまだ後手に回ってるっぽい。その隙は——見逃せないっ!)和(見えているところから察するに……新子さんのほうは、あまり高くはなさそうですね)ヒュン
憧「ロン、3900!!」パラララ
優希(先を越されたー!?)
和(また勿体ない和了り……)
穏乃(まさに電光石火っ!!)
憧「さあ、次はあたしの親番ね……!!」ゴッ
優希:144900 穏乃:149000 憧:59300 和:46800
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184 : 2014/09/13(土) 17:51:49.86 -
東三局・親:憧
優希「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
憧(集中するのよ……! こいつはあの数絵の東場バージョン。得意な場で主導権を握られたら、あっという間に持っていかれる。火力じゃ勝負にならないんだから、とにかく手数で攻める!!)
憧「ポンッ!!」タンッ
和(ふむ……)ヒュン
優希(憧ちゃんとやら、あくまで速攻一本で私を抑え込むつもりか。いいじぇ……!! やれるもんならやってみろだじぇ!! 《東風の神》の名に懸けて、積み棒は積ませないッ!!)
優希「ポンだじょ!!」タンッ
穏乃(役牌特急券っ! 優希のギアがまた一段階上がった気がする……!!)タンッ
憧(逃げ切ってやるわよ!!)タンッ
和(一向聴から動けませんね)ヒュン
優希「チ」
憧「ポンッ!!」タンッ
優希(のわー!? 奪われたっ!? なんてことだじぇ!! これがもし偶然じゃないとすると、こやつ誠子先輩レベルの副露ぢからがあるってことになるじょ……!!)
憧(なんかわかんないけどラッキー!! これで一歩リードできたかしらね!! いい子だからそのまま足踏みしててよ、《東風の神》……!!)
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185 : 2014/09/13(土) 18:05:36.28 -
和(なるほど……では、これは抱えておきますか。幸い、向聴数は変わらない。わざわざ手が進むとわかっているところを切ることもないでしょう)ヒュン
優希(ッ——!? ま、まさかのどちゃん!! 四枚目を止めたんだじぇ……!?)タンッ
穏乃(新子さんが鳴いてツモ順を乱すから、本来なら優希に行くはずだった有効牌が他家に流れてるんだ。意図的かどうかはわからないけど、これ、優希的にはかなり困るよね)タンッ
憧(さあ、こっちはいつでも受け入れオッケーなんだから……!! さっさと来なさいっての——!!)ゴッ
憧「ツモ! 1300オール!!」パラララ
優希(三連続だじぇー!?)
穏乃(すごい! 全部ザンク!)
和(なかなかの偶然ですね)
憧「っしゃあー、一本場!!」ゴッ
優希:143600 穏乃:147700 憧:63200 和:45500
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186 : 2014/09/13(土) 18:28:26.94 -
東三局一本場・親:憧
憧「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(なんたることだじぇ。東場でこの私が圧倒されている……? デジタル最強ののどちゃんにだって、東風戦なら私は勝ち越せる自信があるんだじょ?)タンッ
優希(憧ちゃん……こやつからは、のどちゃんほどの凄みを感じない。シズちゃんほどの不気味さも感じない。
鳴きが得意な非能力者——この四人の中では一番普通だじぇ。なのに、これはどういうことなんだじょ……!!)タンッ優希(む……張った。一通確定ドラ三。憧ちゃんはまだ動きなし。これは先制リーチのチャンスだと思っていいんだじぇ?)
憧「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(何をやってくるか全然わからないじょ……。点差いっぱいあるし、ここはダマ? 否——!!)
穏乃「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(やえお姉さんの指示はトップ帰還! 今回の私の使命はシズちゃんをまくって次鋒戦を終えることだじょ。
やえお姉さん曰くシズちゃんはスロースターター……ここで押さずにいつ押すんだじぇ!!)優希「リーチだじょッ!!」ゴッ
優希手牌:①②③④⑤⑥⑦⑨11133 捨て:2 ドラ:1
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187 : 2014/09/13(土) 18:32:44.76 -
穏乃(うわっと曲げてきたー!? これ、和了られたら間違いなくまくられるよね……)
憧「ポン——!!」ゴッ
憧手牌:**********/2(2)2 捨て:3 ドラ:1
優希(なんとー!?)
和(一発を消してくれたのはありがたいですね)ヒュン
優希(むっ、和了れない……!? ツモを食われたせいだじょ? けど、わかってるのか、憧ちゃん。その鳴きだと、次に憧ちゃんが掴むのは私の一発だった牌だじぇ……?)
穏乃(さてさて、新子さんはどうするのかなっと)タンッ
憧(もちろん抱えるわよっ!)タンッ
優希(それ私のだじぇー!?)
和(手出しで三索対子を落としてきた……鳴いて回すつもりでしょうか)ヒュン
優希(四枚しかない私の和了り牌のうち、一枚が憧ちゃんに持っていかれたじぇ。というか、一枚で済めばいいんだけど……!!)タンッ
穏乃(んー……じゃあ、もしかしてここを待ってたり?)タンッ
憧「チー!!」ゴゴゴッ
憧手牌:*******/(8)67/2(2)2 捨て:[⑤] ドラ:1
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188 : 2014/09/13(土) 18:41:48.24 -
和(三索対子落としからの、赤五筒切り。染め手の可能性は低いでしょうか。678の三色はありそうですが、赤を残しても食い下がり三色を選んでも、打点は変わらない。
となると、優希のリーチに赤ドラで突っ張った意図が気になります。三色以外に手役がないのか、或いは、また別の理由があるのか。いずれにせよ、張っていると見ていいですかね)ヒュン優希(よくない予感しかしないじぇ!!)タンッ
穏乃(どうなるか——)タンッ
憧「ツモッ! 1000は1100オールッ!!」パラララ
優希(そ、その手牌は……!?)
憧手牌:六七八⑥⑧⑧⑧/(8)67/2(2)2 ツモ:⑦ ドラ:1
優希手牌:①②③④⑤⑥⑦⑨11133 ドラ:1
優希(この三巡の憧ちゃんの捨て牌は三索、三索、赤五筒。つまり、私がリーチを掛けたとき、憧ちゃんの手牌はこんなだった……)
憧手牌:223367六七八[⑤]⑥⑧⑧ ドラ:1
優希手牌:①②③④⑤⑥⑦⑨11133 捨て:2 ドラ:1
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189 : 2014/09/13(土) 18:48:10.60 -
優希(私の和了り牌を見切って、鳴き三色に移行したってことなんだじぇ? しかも、私が三索でリーチしてても同じことができたとか。どこまで狙ってたのかわからないけど、隙がないにもほどがあるじぇ……)
穏乃(和了り牌を抱えつつ、ツモ順をズラして優希の支配領域《テリトリー》に揺さぶりをかける。結果的にだけど、新子さんは、純さんと同じようなことをしたんだ。これは優希には効果抜群だよね)
憧(我ながらわっけわかんないことやったわねー! けど、あそこで鳴いてなかったら、たぶん和了られてた。
この感じ……あれだわ、久たち相手に何度もやったやつ。あいつらマジ放っておくと和了り続けるから! 無茶鳴きして、どーにかこーにか自分の得意分野に持ち込んで、安くてもいいから和了りを潰す——。
まあ、三回に一回成功すればいいほうだけどね。でも、こいつ相手なら、二回に一回くらいはうまくいくでしょ! 特に根拠はないけどっ!
っつーわけで、まだまだこの親を手放すつもりはないからよろしく……ッ!!)優希(おのれ憧ちゃん……鳴きで私のリーチを止めるとは、小癪な真似を。なかなかに鍛えられているようだな!
でも、だじぇ!! 私だって、鳴きの揺さぶりに負けないよう、ネリちゃんと誠子先輩に散々鍛えられたんだじょ……!! 次もうまくいくと思ったら大間違いなんだじぇ!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ憧「(うわー恐い恐い、っと! けど、久たちに比べたら全然平気っ!! 笑える余裕があるくらいよ……!!)じゃあ、張り切って行くわよーっ、二本場!!」ゴッ
優希:141500 穏乃:146600 憧:67500 和:44400
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190 : 2014/09/13(土) 18:51:28.55 -
東三局二本場・親:憧
優希「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
憧「」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
和(偶然とはいえ四連続和了。東場のほうが調子がいいなどと豪語する優希を相手に大したものです。もちろん、これくらいの偏りはよくあること。騒ぐほどのことではありません)ヒュン
和(しかし、私が点を取れていないのは事実。優希はもちろん、新子さんも、先輩方同様に手強い相手なのは認めましょう。ここまでミスはしていないつもりですが、そうそう思うように点が取れたら苦労しませんよね)ヒュン
和(東場が得意な優希。鳴きが武器の新子さん。いいですよ、あなたたちがそこに拘りを持つのは、あなたたちの自由です。私は私のやり方を貫くだけ……)ヒュン
優希「ポンだじぇ!!」タンッ
和(私には得意技なんて必要ない。必殺技なんて必要ない。状況に合わせてひたすら最高効率を追求して、勝利を目指す。それが私の麻雀——私の信じる道です)
憧「チーッ!!」タンッ
和(行きましょう。いつも通りに。怜さんからもそのように指示が出ている。何も迷うことはありません。全ては……チームの勝利のために——ッ!!)ゴゴゴゴゴゴゴ
和「リーチです」ヒュン
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191 : 2014/09/13(土) 18:54:19.93 -
優希(うっ。相変わらず嫌なとこで仕掛けてくるじぇ、のどちゃん……!!)タンッ
穏乃(高いのかな? 安いのかな? 気配なくて全然わからない)タンッ
憧(攻めたいっ! けーどー、さすがにここは切れないでしょっ!!)タンッ
和「ツモ……!!」パラララ
優希・穏乃・憧(一発ーっ!?)
和「3000・6000の二本場は、3200・6200!!」ゴッ
憧(高っ!? こんのっ、人がやっとこさ積み上げた点棒を……!!)
優希(のどちゃん……張ってたのに、手を伸ばしてからリーチ掛けてるじぇ)
穏乃(細かく刻むより一つ一つの和了りを大きくすることを選んだ——ってことだよね。新子さんとは対照的。これがどう結果に響いてくるのかな)
和(安手の連荘も悪くないですが、この点数状況、できる限り高めを狙っていきたい。次は親番、稼げるだけ稼ぎますよっ!!)
優希:138300 穏乃:143400 憧:61300 和:57000
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192 : 2014/09/13(土) 18:57:58.18 -
東四局・親:和
和「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(この巡目で手出しの中張牌。明らかに危険信号だじぇ。けど、この点差……さっきみたいに、張ったらリーチ掛けてくるか?
出和了りはしにくくなるけど、待ちが広いなら、のどちゃんはフリテンでもリーチを掛けてくる。むむむ……わからんじょ!!)タンッ穏乃(手が進んだっぽい原村さんに対して、優希はツッパるつもり、と。新子さんは——)タンッ
憧「チーッ!!」タンッ
穏乃(こっちも前傾っ!!)
和「」ヒュン
優希(ツモ切り……? なら、いけるじょ!!)
優希「リー」
和「ロンです。11600」パラララ
優希「じょー!?」ガタッ
憧(ちょ——あたしのが見逃されてるとか!?)
穏乃(下を蹴落とすより上の首を取りに来た! さすがに次鋒戦の間に逆転されることはないと思うけど、これは恐い!!)
優希(やってくれたなのどちゃん……っ! それでこそ私の認めたのどちゃんだじぇ!!)
和「一本場です——」コロコロ
優希:126700 穏乃:143400 憧:61300 和:68600
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193 : 2014/09/13(土) 19:01:56.77 -
東四局一本場・親:和
和「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
憧「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(ここまで憧ちゃん×4和了、のどちゃん×2和了だじぇ。東場も終わりだというのになんたる様だじょ。二回戦であの白いのと打ったときだって、東場は私がリードしていたというのに……)タンッ
優希(このままマイナス収支で南場に突入したら、プラスにするのはかなーりキツいじぇ。そしたら、またやえお姉さんとセーラお兄さんに袋叩きにされる!! あのくすぐり地獄だけは二度とごめんなんだじょ!!)タンッ
優希(のどちゃんと憧ちゃんが点を獲り合って、私はシズちゃんから離される一方。トップを逃すばかりか、下手すると三回戦突破も危うくなる。それだけは避けないと——)タンッ
優希(って、ゆーか、だじぇ……!!)
和「リーチです」チャ
憧「ポン——ッ!!」タンッ
優希(二人して……さっきからごちゃごちゃ五月蠅いんだじぇ。お構いなしにも限度ってものがあるんだじょ。あまり——調子に乗らないでもらおうか……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
憧・穏乃(このプレッシャーは……ッ!?)ゾクッ
和(む。さては、優希……張りましたね?)
優希「追っかけるじぇ——リーチ」チャ
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194 : 2014/09/13(土) 19:08:57.75 -
優希(随分と好き放題やってくれたなッ!! 東場は私の庭——私の王国だじょ。試合展開も大事だけど、何より、東場でやられっぱなしってのは……私のプライドが許さないんだじぇ!!)ゴゴ
穏乃「(無駄だと思うけど、一応……一発は消しておかないとね)チー」タンッ
優希(ふん、好きなだけ揺さぶればいいじょ!)ゴゴゴゴ
憧(先に和了っちゃえば関係ないでしょ——って、さすがにそんな都合よく引けないかぁー!)タンッ
優希(東の風が吹く限り、この卓上《セカイ》は私の思うがまま《テリトリー》……)ゴゴゴゴゴゴゴ
和(リーチを掛けた以上覚悟はしていましたが、やはり捲くり合いは緊張しますね——)ヒュン
優希(我こそは《東場の神》——たとえ相手が誰であろうと、ここだけは譲るわけにはいかないんだじぇッ!!)ゴッ
優希「ツモだじょ!! 3000・6000は3100・6100——!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
憧(そうやって当然のようにハネ満を和了ってくるわけよね……! もー勘弁してってのっ!)
和(さすが優希。偶然とはいえ力強い和了りですね)
穏乃(わわっ、一発消しておいて本当によかった……!!)
優希「(むうー……暴れ足りないけど仕方ない。風向きが変わってもめげないじぇ!!)さあ、前半戦も折り返し——南入だじょ!!」ゴッ
優希:140000 穏乃:140300 憧:58200 和:61500
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195 : 2014/09/13(土) 19:14:35.85 -
——《永代》控え室
純「どいつもこいつもやるなぁ」
まこ「四人とも楽しそうでええのう。見てて清々しいわ」
塞「っていうか……高鴨だけ焼き鳥だけど?」
照「まあ、一位守ってるし」モグモグ
憧『チー!!』
塞「げっ、また新子が鳴いてきた」
純「あいつの鳴きは面白いな。オレの副露が場の《流れ》を変えるもんだとしたら、あいつの副露は自分に《流れ》を引き寄せるもんだ」
まこ「これに火力が乗っかってきたら手がつけられんの」
照「また30符3飜……」モグモグ
憧『ツモ、1000・2000!!』
純「うーん。ダメージは小せえが……どうなんだろうな、これ」
塞「この点差だし、安手で回してくれる分には構わないんじゃない?」
まこ「その回転が速過ぎるんじゃ。穏乃はエンジンが掛かるまでに時間がかかるけえの」
照「確かに、サクサク進めるのは高鴨さんに効果的かも」モグモグ
-
196 : 2014/09/13(土) 19:16:49.42 -
和『リーチです』
まこ「っと……今度は原村か。あいつもブレんのう」
塞「厄介なのよねぇ。オカルト無視のくせに、逆にオカルトに強いっていう、謎の属性」
純「三人ともオリか。クセがねえから読めねえんだろうな」
照「冷静」モグモグ
和『テンパイ』
優希・憧・穏乃『ノーテン』
まこ「次は南三局流れ一本場じゃな」
純「穏乃のやつはいつ動くんだよ」
塞「どうなの、宮永? 高鴨はいけそうなの? っていうか、あいつのすごパってなんなの?」
照「高鴨さんのすごパは、一言で言えば、よくわかんない」モグモグ
塞「何それ……」
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197 : 2014/09/13(土) 19:18:43.65 -
——《新約》控え室
和『テンパイ』
優希・憧・穏乃『ノーテン』
絹恵「なんやろ、和の対局見てて気持ちが落ち着くなんて、初めての体験かもしれへん」
姫子「普通にテンパイして普通にリーチして普通にオリられて普通に流局したと」
初美「先鋒戦のオカルト合戦が嘘のようですよー」
怜「片岡さんも高鴨さんも、能力者にしてはクセが少ないほうやもんな」
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198 : 2014/09/13(土) 19:26:21.88 -
絹恵「っちゅーか、高鴨さんの能力って結局なんなんでしょうね」
姫子「能力者っぽかばってん、詳細は不明。支配領域《テリトリー》も、たぶん山の深かとこ——ってことくらいしかわかっとらん。
支配力についても、最高でランクS級のとんでもなか数値ば叩き出すこともあれば、一般人相当のランクD~Fにまで落ち込むこともあっとか」初美「ネリー=ヴィルサラーゼ並みにわけがわからないですねー」
怜「どうやろな。ネリーさんはたぶん、ネリーさんの世界ではわけがわかるんやと思う。うちらが知らへんってだけで、あの人の根底にはちゃんと筋の通った理屈がありそうな気がする。
対して……高鴨さんのは、ホンマもんのオカルトかもしれへんで」絹恵「オカルト……和が対応できればええんですけどね」
初美「私はそんなに心配してないですよー。それよりも、今のところは《原石》さんより新子さんのほうが厄介そうですー」
姫子「安手の多かばってん、和了率は高か。和は大きかのば狙っとうけん、勝負手流さるっかもしれんのは恐かですね」
怜「地味やけど、リー棒持っていかれるのも痛いしな」
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199 : 2014/09/13(土) 19:29:29.39 -
憧『チー!!』
初美「おお、高め三色のタンピン一向聴を、ダマで待たずに三色確定でテンパイを優先ですかー。この辺りは意見が分かれそうなところですねー」
姫子「私はあそこまで仕上がっとったら鳴かんとです」
絹恵「他家が張っとるようなら鳴くかもですね」
怜「うちは未来とご相談やな~」
憧『ツモ! 2000は2100オール!!』
絹恵「っと……また30符3翻やんな。親やから3900の1.5倍の点数。単純に火力が五割増し。確かに、親の新子さんは危険ですね」
初美「言わんこっちゃないですよー」
姫子「和、大丈夫とですかね?」
怜「大丈夫やと信じとるけど、結果まではわからへんよ。特に和は全く読めへん。確率の神様にでも聞いてーな」
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200 : 2014/09/13(土) 19:32:42.55 -
——《久遠》控え室
憧『ツモ! 2000は2100オール!!』
洋榎「おっしゃ、これで六つ目! 今日は調子ええなー、憧ちゃん。こんな和了っとるとこ初めて見たわっ!」
久「まあ、普段打ってる相手は私たちだものね」
哩「今日の相手はみんな一年生と。こいが憧の本来の力なんやろ」
白望「連荘かぁ……」
憧『二本場っ!!』
洋榎「ん、シロ。なんか気になるん?」
白望「いや、局数増えると……あれかなって」
哩「高鴨穏乃か? 姫子の話やと、対局の後半に本領ば発揮してくるらしいが」
久「牌譜は一通り見たのだけれどね。彼女の能力はどうにもわからないのよ。《通行止め》もかなりわけわからないけど」
-
201 : 2014/09/13(土) 19:34:59.09 -
洋榎「うちのカンやと、《通行止め》の能力は七文字で説明できる。ほんで、あの高鴨の力は、たった三文字で説明できるわ」
哩「ほう……? 面白か。聞かせんしゃい」
白望「《通行止め》のほうから」
洋榎「《通行止め》——あいつは《絶対に○○へん》!」ドヤァ
久「……いや、その○○の部分が一番知りたいんだけど?」
洋榎「そこを調べるのは久の仕事やん。うちそんなコマいことできひんもんー」
哩「洋榎に期待した私のバカやった……」
白望「で……《原石》の力は?」
洋榎「そんなん決まっとるやん!」
久「なに?」
-
202 : 2014/09/13(土) 19:37:05.09 -
洋榎「すごいパワー、略して『すごパ』や!! ほれ、ぴったり三文字やろ!?」ドヤァ
哩「その顔やめんか」
白望「まったく情報が増えない……」
久「そんな漠然とした認識で打ち合えるのは洋榎くらいよ」
洋榎「何を隠そう、うちがその洋榎やもん! 《通行止め》は絶対に○○へんし、高鴨はすごパ使ってくる!! そんだけわかっとれば楽勝やろー!!」
久「憧があなたくらい大物ならいいんだけれど……」
穏乃『……ロン』
憧『ふきゅっ!?』
哩・白望「!?」ピクッ
久「ちゃー……ついに山が動いたかぁ」ゾクッ
洋榎「『すごパ』発動やんな……!! ようわからんけど、どーにかしたれ、憧ちゃーんっ!!」
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203 : 2014/09/13(土) 19:39:31.83 -
——対局室
南三局二本場・親:憧
穏乃「……ロン」
憧「ふきゅっ!?」
優希(シズちゃん!?)
和(高鴨さん……)
穏乃「8000は8600です」パラララ
憧(マ……ジで言ってんのそれ——!?)クラッ
優希(トップの背中が遠のいたじぇ……!!)
和(この程度で動揺しても仕方がありません。麻雀はみんなが和了りを目指すものですからね)パタッ
穏乃「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
和「さて……オーラスです」コロコロ
優希:134900 穏乃:144800 憧:59900 和:60400
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204 : 2014/09/13(土) 19:43:18.23 -
南四局・親:和
穏乃「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(学園都市に七人しかいないレベル5の第七位——シズちゃん。その能力の詳細は、やえお姉さんでもわからないって話だじょ。
曰く、得体の知れない支配力的な何かが、場の深くに浸透しているとかなんとか。なら、やることは一つだじぇ!)憧(《原石》こと高鴨穏乃の力。久情報によれば、対局の後半から発動してくる全体効果系的な何か。主な支配領域《テリトリー》は山の深部。
補足として、普通の人には見えない何かが見えてるっぽい……ま、だったらこっちは——)優希・憧(速攻でケリつけるッ!!)
優希「ポンだじょ!!」タンッ
憧「こっちもポン——!!」タンッ
優希・憧(これ以上トップと引き離されるわけにはいかない……!!)ゴッ
フワッ
優希(じょ……羽——!?)
憧(何コレ! どゆことっ!?)
和「リーチです」チャ
優希・憧(そっちー!?)ゾワッ
-
205 : 2014/09/13(土) 19:47:37.57 -
優希(ノ、ノーマークだったけど、のどちゃんのリーチはとにかく頭使って読む以外、特に対策がないんだじょ!)タンッ
穏乃「」タンッ
憧(って現物!? いや、親リーの一発目なら、点差もあるしそうでしょうけど、もっとこう……レベル5的なアレで切り込んでいくとか、そういうのないわけ!? 安牌増えないじゃない……!!)タンッ
和「」ヒュン
優希(な、南場は頑張るしかないんだじぇ!!)タンッ
穏乃「」タンッ
憧(また現物かーい!! 動かざること山の如しじゃないのー!!)タンッ
和「」ヒュン
憧「ポンよっ!!」ゴッ
優希(憧ちゃん!?)
憧(デジタルの読み合いならそこそこ自信はある。原村和ほど計算速くないけどね。この手なら勝負できるはず……!!)
和「ツモ」
優希・憧(じょー(ぎゃー)!?)
和「4000オールです」パラララ
優希(シズちゃん警戒かと思ったら!! さすがのSOAちゃんだじぇ。私も何も考えずデジタルに徹するのが正解なのか!? いや、そんなことしたくてもできないけど!!)
憧(やっば!! 最初とほとんど点数変わってないし!! っていうか原村和、さっきから高い手和了り過ぎでしょ!! いや、狙ってるんだろうけど、そこが隙になったりとかしないわけ!?)
和「連荘続行……一本場です」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希:130900 穏乃:140800 憧:55900 和:72400
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207 : 2014/09/13(土) 19:58:46.08 -
和「リーチです」ヒュン
優希(またのどちゃん!?)
憧(どうやって止めたらいいのよ……!!)
穏乃「ツモ……!!」
優希・憧(へ——?)
穏乃「1000・2000の一本場は、1100・2100です」パラララ
優希・憧(はあああああああ!?)
和(どういうことですかそれ……私のリーチ宣言牌で5200の直撃を取れたのに、見逃して安めの1000・2000をツモ?)
憧(原村和から直撃を取ってれば、積み棒含めて5500。ツモだと、リー棒入れても5300。えっ? 意味わからないんだけど?)
優希(シズちゃんの妙な和了り……余人には推し量れない何かがあるって、やえお姉さんは言ってたけど。一体何が見えてるんだじぇ、シズちゃん?)
穏乃「前半戦はここまでですねっ! ありがとうございました!!」ペッコリン
『次鋒戦前半終了ー!! トップは《インターミドルチャンピオン》——《新約》原村和!! 下位の二チームが追い上げる展開となりました!!』
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209 : 2014/09/13(土) 20:08:57.68 -
——《幻奏》控え室
やえ「で、どうだ、ネリー。間近で聞いて、高鴨穏乃の力は」
ネリー「私の脳内にある牌譜には一致するものがない。要するに、魔術世界の知識では解析できないね」
やえ「運命論でもダメか。弱ったな」
誠子「優希は大丈夫なんですかね……?」
ネリー「たぶん大丈夫じゃないんだよっ!」
セーラ「東初を速攻で流されたんが痛かったな。あれでペースが乱れて、東場をプラスにできひんかった。新子が相手やなかったら、ここまで凹まされることはあらへんかったやろ」
やえ「二回戦から速度特化で戦わせるべきだったか。素で東場の片岡を抑え込めるのは《一桁ナンバー》くらいだと思っていたんだがな。これは完全に私の作戦ミスだ」
セーラ「ほな、優希には決勝で爆発してもらおかー。ほんで、この三回戦は俺らでどうにかするってことで。自分もそれでええやろ、誠子?」
誠子「はい。頑張ります」
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210 : 2014/09/13(土) 20:12:32.58 -
やえ「おい、ネリー。本当に高鴨の力に心当たりはないのか?」
ネリー「能力論の権威であるやえが解析できなかった力をこの数局で見抜けとか、無茶言うよねー」
やえ「できることなら、後半戦はあいつを勝たせてやりたい」
ネリー「気持ちはわかるけど、ごめんなんだよ。今のところは、なんかすごいパワーを使ってるってことしか聞き取れない。もう少し時間がほしいんだよ」
やえ「むう……」
セーラ「そんな難しい顔せんでもええやろー。優希なら心配要らへんって。やれるだけのことはやってきた。ここはあいつに任せたろーや」
誠子「私も江口先輩に同じです」
やえ「もちろん私だって信じている。前半戦は新子にしてやられたが、後半戦の東初は——」ハッ
ネリー「……どうかした、やえ?」
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212 : 2014/09/13(土) 20:14:46.94 -
やえ「そういうことなのか……!? 高鴨穏乃——!!」
セーラ「ど、どないしたん……?」
誠子「小走先輩?」
やえ「……300点足りない」
セーラ・誠子「え?」
ネリー「ほ、え……うああっ!? 本当だ!! すっご!!」
セーラ「お、おい、どういうことや」
誠子「300点……?」
やえ「直にわかる。信じ難いな。一体どこまで見えているんだ、あの山の主には」
ネリー「しずののすごパ……山……うーん……」ブツブツ
セーラ「よ、ようわからんが、俺らは応援に集中するかっ!」
誠子「そうですね! 頑張れー、優希っ!!」
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213 : 2014/09/13(土) 20:15:55.09 -
——対局室
優希「よろしくだじぇ!」
東家:片岡優希(幻奏・129800)
憧「よろしく!」
南家:新子憧(久遠・54800)
和「よろしくお願いします」
西家:原村和(新約・69300)
穏乃「よろしくですっ!」
北家:高鴨穏乃(永代・146100)
『次鋒戦後半——開始ですっ!!』
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220 : 2014/09/17(水) 21:14:24.57 -
ご覧いただきありがとうございます。
更新をするわけではないのですが、取り急ぎ、書き溜めが終わりましたので、その報告をば。
——いきなりのあとがき
SSに限らず、こんなに長い話を書いたのは人生で初めてです。本文を全て合わせると、テキストデータで4MBくらいになるでしょうか。チーム結成、修行、からの本選五試合ですから、まあこれくらいにはなりますよね。
『渋谷さん率いるおもち軍団! その名もチーム《豊穣》!』——全てはここから始まりました。『チーム《豊穣》』という概念をこの世に発信する。これは、そうして書かれたSSです。
その頃は、白糸台高校麻雀部の問題児軍団——大星さん、咲さん、森垣さん、新子さん——に花田さんが振り回されるという話を思い描いていました。
主将の弘世さんに教育係を任命され、一年生ズにモーションを掛けていく花田さん。部内での順位はあまり高くないけれど、すばらくすばらな花田さんに、生意気盛りの一年生が次々とデレていくんですね。
いつしか五人の間には強い絆が生まれます。そんなある日、一年生カルテットは、とある部員たちが花田さんの陰口を言っているのを耳にします。
『あいつ弱いくせに最近ちょーし乗ってね?』
黙っているわけがありません。
淡「すばらが本当に弱いかどうか!!」
咲「教えてやろうよ!!」
友香「私たちが先輩と一軍になれば!!」
憧「全て解決よね!!」
かくして、チーム《小生意気》が結成されます。一年生ズは、花田さんとイチャイチャしながら、部内戦で快進撃を続けていき、ついには、ラスボスこと《虎姫》の弘世さんとバトることになります。
はたしてチーム《小生意気》は一軍になれるのか!
そんなコメディタッチのシンデレラストーリーになる予定でした。なにはともあれ、最後まで辿り着けてよかったです(新子さんを弾いたのは、久憧を書きたかったからですよ!)。
——色々と
書き溜めが終わったと言っても、ストーリーとして最低限必要な部分を書いたという意味で、まだ仕上げの作業が大量に残っていたりします。
大星さんのダブリーに喩えると、和了り牌をツモって逆回転したところです。あとは、カン裏めくるだけなんですが、ここをしくじると、涙目の二位通過になるので、高鴨さんに気をつけながら、慎重にやっていきたいと思います。
なので、更新頻度の加速はもう少しかかると思われます。更新そのものが仕上げの最終段階なので、なかなかコピペでドンとは行けないのです。
ひとまず、お話として、未完で終わることはなくなりました。私かこちらのサーバーが死なない限り、このSSはいずれ完結します。
当然ながら、ストーリーのほうは、もう動かせません。期待されているベクトル、望まれているベクトルであればいいのですが、どうなのかは蓋を開けてみるまでわかりません。つまり、あれです。
『 こ こ か ら 先 は 《 一 方 通 行 》 だ 』
これが言いたかっただけです。あと2MBほどで終わりますので、よろしければ、どうか最後までお付き合いください。
では、失礼しました。
(パソコン変えたので特殊記号のテスト:①②③ ■■■)
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