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1 : 2013/10/07(月) 14:25:48.56 -
三澤紗千香さんの『明日、晴れるかな』よりインスピレーションを頂きました、上条×アリサの短編ssです
劇場版の内容はガン無視なので、パラレルだと解釈して貰えれば。
至らないところもあるかと思いますが、よければご一読ください。
それでは、最終確認が済み次第、投下させていただきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1381123548
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1381123548/
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2 : 2013/10/07(月) 14:28:36.59 -
「はぁ……」
とある学生寮の一室。
ツンツン頭の少年は、ベランダ先を眺めながら溜息を吐いた。
外は既に暗く、同じくその少年の表情も暗い。「とうま。溜息吐くと幸せが逃げちゃうんだよ? ただでさえとうまはふこーなのに」
すると、隣のテーブルで丼に乗った巨大なサラダにありつく彼女が、それを拾った。彼女の名はインデックス。諸事情があり、少年が寮で居候として預かっている、見た目14歳程度の女の子だ。
「はは。言ってくれるな。……でも、この大雨を見ると溜息も吐きたくなるよ」
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3 : 2013/10/07(月) 14:29:56.32 -
ベランダから目を移し、とうまと呼ばれた少年──上条当麻はテレビを見る。そこには、女性のニュースキャスターが事務仕事のように翌日の天気予報を述べていた。
上条はそれを見て、更に困ったように呟く。「この学園都市で降水確率90%超え。おいおい。まじでやめてくれよなぁ、明日はアリサと初めてのデートだってのにさ」
「むっ、私をこもえのところに預けるのは、そんな不純な動機だったんだね?どういうことかなとうま?」
そんな呟きを聞いたインデックスが、ジト目をしながら上条に問いかける。彼女は口を開いて犬歯を見せて、まるで動物が威嚇しているようだった。上条は「やべっ」という顔をしたあと、慌てて取り繕うように返した。
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4 : 2013/10/07(月) 14:31:07.50 -
「い、いや。ほら。最近上条さんちはこうやってひもじいだろ?だから、小萌先生がインデックスの飯の面倒見てくれるってだけで……」
「問答無用なんだよ!!とうまぁ!!」
かぶり。今し方サラダを食べたその口で、インデックスは上条の頭に飛びついて、かじった。比喩表現でもなんでもなく、がぶっと。
因みにここ数日質素な食生活を送っているのは、その軍資金(デート諸経費)を温存し、願わくば彼女にプレゼントしよう、と考えているからだ。「不幸だぁぁっ」とかなんとか叫びながら、しかし上条はすぐに我に返った。携帯がある音楽を流し出したからだ。上条の携帯の着メロ。それは、『ARISA』──上条の恋人である新人アーティスト、鳴護アリサの曲『グローリア』だ。
「っと、アリサからメールか」
頭をかじられていても、意識はアリサ。痛覚さえ無視して、上条は受信フォルダを開いた。
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5 : 2013/10/07(月) 14:32:21.80 -
From:アリサ
To:当麻くん
Sub:明日、晴れるかな?
本文:
当麻くん、こんばんは。
生憎の雨だね(-_-;)
でも、私照る照る坊主作ってみたんだ!
えへへ、これで明日、晴れるといいね(^o^)当麻くんとの初デート、凄く楽しみです。
p.s
もし雨が降っても、会ってくれますか??そんな内容のメールだった。添付画像には、かわいらしくデコレーションされた照る照る坊主が写っている。こんなに可愛く作って貰えたなら、ティッシュも本望だろう。上条は無意識にニヤニヤとしながら返信ボタンを押す。
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6 : 2013/10/07(月) 14:33:26.33 -
なんて返そうか。ああ、そうだな、的な。いや、それは簡素すぎるよな。とりあえずその文から入って……
「聞いてるのかなぁ? と・う・まぁぁ!!」
「いでっ!!」
[メールを送信しました]
送信内容“あ”。頭を噛まれて手が滑り、途中送信してしまったようだ。
「いってぇな、何しやがるインデックス!!この上条の至福を!!」
「ふん、とうまなんてありさに愛想つかされちゃえばいいんだよ!」
「な!てめぇ、冗談でもそんなこと言うんじゃねぇ!」
あんな可愛い彼女が出来たの、初めてなんだからな!と上条は怒鳴り散らす。すると、また携帯電話が震えた。着信音は、恐らく初期設定と思われるものだ。どうやら、アリサだけわかるように着信音を変更しているらしい。
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7 : 2013/10/07(月) 14:34:23.58 -
「あん?またメール……土御門か。って……」
From:土御門
To:カミやん
Sub:
本文:
こんな時間にまで騒がしいぜよカミやん。
惚気るのは勝手だが、せめて隣の部屋に聞こえないぐらいには声を抑えて欲しいにゃー……最後に、うざったらしく殴りたくなるような猫のドヤ顔をした絵文字が貼り付けてある。
「あんにゃろ……まぁ、俺が悪いんだけどさ」
「とうまぁぁ!」
「ああもう、うるせーよインデックス。ご近所さんに迷惑だから、早くそのサラダ食って寝ろ!寝てください!」
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8 : 2013/10/07(月) 14:35:16.02 -
インデックスは憤慨しながら、残りのサラダを丸飲みしてしまった。上条はやれやれと言った様子で風呂場へ向かう。彼のいつもの寝床なのだ。
正直、冬場である現在は凍えるほど寒い環境なのだが、しかしインデックスと同じ部屋、間違っても同じベッドで眠るなんてことはあってはならない。
優しいアリサの性格なら、せめて部屋の床の上でと譲歩してくれるかもしれない。けれど、逆に上条の視点で考えれば、幾ら同性で親しい友達であっても、そいつと恋人が同じ部屋、まして同じベッド、なんてのは考えることすら拒否反応がでるほどの苦痛だ。男と女では事情が違うかもしれないが、ともかく上条はそう考えるとどうしても譲れない。結果、以前と同じように、むしろ以前(アリサと交際する前)よりも、部屋で寝ることは頑なに拒んでいるのだ。
「ふわぁぁ……。マジで、明日、晴れてくんねーかなぁ」
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9 : 2013/10/07(月) 14:36:33.25 -
* * *
「帰ってきた。当麻くんからメール」
「……『あ』って。あはは、途中送信しちゃったのかな」
「もう遅いし、私も明日に備えてしっかり睡眠取らなきゃ……」
「晴れてくれるかなぁ……。おやすみ、当麻くん」
* * *
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10 : 2013/10/07(月) 14:37:37.65 -
翌朝。
決戦の日である。
転じて、初デートの日である。上条は朝7時に起床し、ベランダから外を眺める。若干雲がかった空だが、雨は降っていない。それを確認して、彼は思わずにやっと笑う。
顔を洗い、ワックスで頭髪をツンツンに固定する。いつもの髪型だ。
その後トイレをすませ、万が一インデックスにイチャモンをつけられまいと、いつものトーストに卵とベーコンを加えたベーコンエッグパンを5つ用意する。うち4つはインデックスのものだ。時計は7時45分。約束は9時だ。インデックスを起こして飯を食わせて、小萌先生のところに預ける。間に合う。
因みに小萌先生とは、上条が通う高校の、その彼のクラスの担任だ。見た目小学生だが、その私生活は、煙草に酒という、子供のような見た目からは想像もつかないようなえげつないものだ。
いい先生なんだけどな、と上条は心の中で零しながら、インデックスを起こす。パジャマもはだけていない。いつものラッキースケベが発動して、急に噛みつかれることはない。
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11 : 2013/10/07(月) 14:38:34.20 -
インデックスは久々の豪華な朝食にテンションをあげてありついた。美味しそうに食べてくれて、下心なしに上条もご機嫌だ。
「じゃ、小萌先生のとこ行くぞー」
「お泊まりだっけ?」
「おう、迷惑かけるんじゃないぞ?俺んちとは違って、せめてちゃんと手伝いとかするんだぞ」
本当は自分の家でも家事手伝いをしてほしいものだが、そこは上条当麻。わざわざ争いの火種になるような台詞は投入しない。ここでまたぎゃーぎゃー騒がれると、最悪遅刻しかねないのだ。
小萌先生の家へのインデックスの送り迎えも滞りなく完了し、上条はそっと胸を撫で下ろす。だが、これからが本番だ。
「8時19分……よし、余裕だな」
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13 : 2013/10/07(月) 14:40:57.54 -
* * *
待ち合わせ場所。とある学区にある、目立つ噴水のある場所。なのだが、周りを見渡しても依然としてアリサの姿は見かけない。
それもそうだ。まだ時刻は8時43分。まだ15分以上の開きがある。
どう暇つぶしをしてくれよう、と考え出す上条だったが、そこで尻ポケットが突然震えた。携帯のバイブだ。
「ん、……アリサから電話? もしもし?」
『あっ、当麻くん。ごめんねー、ちょっと電車のほうにトラブル起きたみたいで。まだ駅なんだ』
「あー、そうなのか。どれぐらい遅れそう?」
『わかんない。ダイヤにどれだけ影響のあるトラブルなのかもよくわかってないし……バス停はこの辺りには……』
「あー、そっか……」
ここに来ての、『不幸』。
上条自身に降りかかったわけではないが、今の彼にしてみればそれも不幸のうちと言えるだろう。 -
14 : 2013/10/07(月) 14:42:23.12 -
『……ごめんね、当麻くん』
「あ、いやいや! アリサのせいじゃねーって。事故なら仕方ないよ。冬休みだし、混雑とかもするもんだろ」
『ううん。そうじゃなくて、昨日、遅くに突然メールしちゃって』
「ああ……別に、」
気にしてないよ。
そう言おうとした上条だが、それより先に、受話器から声が漏れてくる。『本当はさ』
「……?」
『一人で、暗い部屋の中で、雨の音を聞いてると……なんだか怖くなっちゃって』
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15 : 2013/10/07(月) 14:43:36.15 -
「怖い?」
『うん。私がこうして当麻くんとお付き合いしてることは、すごい幸せだなぁって思うの。でも』
「……」
『……いざ一人になると、心細くって。歌のほうも、最近は、ね。そしたら、当麻くんの顔が浮かんで。メールしちゃった』
迷惑だったよね、あんな時間に、と再び謝るアリサ。
そんな独白を静かに受け止めて、上条は口を開く。「……迷惑なんかじゃねぇよ」
『え?』
「怖かったら言ってくれ。心細かったら、いつでも呼んでくれ。メールだけじゃなくて、電話でも何でもいつでも付き合うし、相談だって乗ってやる!」
……流石に授業中は無理だけどさ、と最後に笑いながら付け加える上条。
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16 : 2013/10/07(月) 14:44:46.37 -
『……当麻くん』
「アリサ、今駅だったよな?今から迎えに行くよ。そっちには『セブンスミスト』もあるし、デートはふつうに出来る」
『え? でも、当麻くんがプラン考えてくれてて……』
「そんなことより、今すぐ会いたいんだよ。確か、こっちと駅の間に、セブンスミストがあったよな?そこで落ち合おうぜ」
『……うん』
今すぐ会いたい。
そんなことを言われたら、もう断れない。『ねえ、当麻くん』
「どうした?アリサ」
『……えへへ。なんでもない。じゃあまた後でね!』
「おう!」
通話終了。上条は切り替わった画面の時計を確認する。
「8時51分か……ま、時間なんてこれからも一杯あるしな!」
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17 : 2013/10/07(月) 14:45:43.48 -
* * *
鳴護アリサは、一足先にセブンスミストにたどり着いていた。
もともと、待合い場所と、先刻アリサが居た駅とでは、このセブンスミストに近いのは後者だ。それも、結構差がある。
「……当麻くん」
いつでも呼んでくれ、か。
「ありがとう、なーんて」
今更照れくさくて、言えないや。
「おーい、アリサ!」なんて声が聞こえてきたのは、それから10分後のことだった。
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18 : 2013/10/07(月) 14:48:00.42 -
* * *
上条と合流したアリサは、早速もご機嫌だった。
彼女は最近、路上ライブで有名になり始めてきた新人アーティストだ。アーティスト、といっても自称のようなもので、現在は持ち曲『グローリア』をオーディションで披露したのだが、最初から上手く行くはずもなく落選。
作曲は続けているのだがここ最近スランプ気味で、メロディーが出来ても歌詞が出来ない。しかしそんなストレスも、上条と出会って解消された。二人の出会いは、とある日の路上ライブだ。アリサの歌を上条とインデックスがえらく気に入り、深い仲に進展した。現在は出会って一ヶ月程度、交際を始めて、一週間といったところだ。
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19 : 2013/10/07(月) 14:49:01.02 -
「それにしても、今日は珍しい格好だな。確かにいつも白系の服だけど、今日はピンクっぽい感じだし」
「あ、気づいてくれたんだ。今日の為に、ね。似合うかな……?」
首をかしげながら身長差のある上条を間近で見上げると、それは自然と上目遣いに見える。上条はそんな男殺しの表情にゴクリと一度喉を鳴らしてから、平静を保って言う。
「ああ、よく似合ってると思うぜ。色も、その髪と合ってるし。なんていうか、これこそアリサ!って感じだな」
「あはは。なにそれー? ……よかった」
そんな、どこにでもある恋人達の光景。実に幸せだ。
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20 : 2013/10/07(月) 14:50:12.92 -
と、アリサの目線が一ヶ所に留まった。小さく漏れた声に上条が気づき、その視線を追う。
「アクセサリー店?入るか?」
「え?でも」
彼女は、少なからず上条が質素な暮らしをしていることを知っている。そして、とある事情からそれが少々仕方ないことであることも理解していた。
「ほらほら、見たいなら入ろうぜ」
少し迷うアリサの肩に、上条は手を回して押していく。若い女性店員がにこやかに「いらっしゃいませ!」と出迎える。店内は流石というか、キラキラとした金属の反射が煌めいていた。
「わぁ、可愛いなぁ」
ブレスレットの一つを手に取り、思わずアリサは呟いた。
「欲しいのあったら、上条さんが買ってあげますよ?」
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21 : 2013/10/07(月) 14:51:20.00 -
やっぱり、と、アリサが懸念していたことが起きた。
上条当麻は、基本的に優しい。その本質は見返りを求めない。それは勿論、彼女であるアリサへも例外ではない。アリサは、自分が欲しいと言えば彼が無理してでも何かを買ってくれることを、自惚れではなく理解している。
だから。「そんな、悪いよ」
自分の我が儘で、彼と、そして友達だあり彼の居候であるインデックスの私生活を圧迫したくはない。アリサはそんな思いで一杯だった。
「まぁまぁ。実はわたくしこと上条当麻、この日の為にしっかりと軍資金は蓄えてきたんだ!欲しい物があったら言ってくれよ、遠慮せずに買ってやるからさ」
プレゼントは彼氏として当然だろ?と上条は笑いながら言う。
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22 : 2013/10/07(月) 14:52:57.56 -
彼氏として。
彼氏。そんな甘い言葉に、アリサの我慢メーターは臨界突破だ。
しかし、彼女はすんでのところで、とある妥協案を閃く。
「じゃ、じゃあさ、当麻くん。私も、同じ奴を当麻くんに買ったげる。だから、当麻くんのは私にちょうだい?」
ペアルック。或いはプレゼント交換。
一方的に貰うのは、プレゼントといえどやはり抵抗がある。彼のお金は、恐らく少ない奨学金と、両親の仕送りによるものだろう。
アリサは路上アーティストと言えど、ダウンロードで安く販売している『グローリヤ』やその他の歌で少なからず稼いでいるのだ。この条件ならwin-win。困る者は居ない。そんな提案に「お揃いか、いいぜ」と上条は返した。その後、二人は仲良くお揃いの品を選び合った。
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23 : 2013/10/07(月) 14:54:13.40 -
* * *
楽しい時間というのは、すぐに終わってしまうというものだ。かの偉人が唱えたように、暑い中ストーブの前に居続ければ長く感じるし、電車で可愛い女の子が隣に座っているとなぜか早く目的地についてしまう。世界とは実に損な仕組みだと、上条は心の中で嘆く。
まぁ、時間はまだまだあるのだ。焦る必要はない。
時刻は8時前と言ったところだ。
冬にもなれば、この時間帯は非常に暗い。彼らは川沿いの土手に、月明かりの下二人並んで星空を眺めていた。「ほら見て当麻くん。昨日は降水確率90%超えなんて言ってたのに、結局降らなかったね。こんなに空が澄んでる」
空には雲一つない。代わりに、一面に星々が煌めいていた。アクセサリーショップで見た、金属の反射光とは桁違いな光だ。赤や青、数は少ないが、白だけではなくそんな色の星もある。
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24 : 2013/10/07(月) 14:55:23.71 -
「はは、学園都市の精度は世界でもピカイチなのに、奇蹟みたいだな。アリサの照る照る坊主のお陰じゃないか?」
「あ、そうかも。えへへ、一生懸命作ったもん」
実は彼女の部屋には、男を模したものと女を模したものが二つ並んでぶら下がっているのだが、それは伏せておく。何を指すのかは、もはや語るまい。
二人が互いに握る手。その手首には、初デートで買った、赤と青のお揃いブレスレットがある。「手を伸ばしたら届きそうだね」
「え?」
「星。ほら、あの私たちとお揃いの、赤と青の星とか」
「そうだな」
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25 : 2013/10/07(月) 14:56:44.24 -
「……あっ、流れ星! アーティストとして成功しますように、成功しますように、あっ、でも当麻くんとも……ああ、消えちゃった!」
「へえ、アリサって、流れ星の願い事とか信じてるんだな」
「うーん、どうせなら、願わないよりはましかなー、って」
そうだな、と言って上条は立ち上がる。ほら、とアリサに、繋いでいないほうの手を差し出す。両手で引っ張られて、アリサも立ち上がった。
「……当麻くん?」
「今日みたいにさ」
「え?」
「……強く願ったら、きっと叶うから。歌手のことも、それから、」
俺たちの未来も、なんて言葉が辛うじて聞こえた。アリサは恥ずかしくて顔を俯かせる。聞こえなかったことにしよう。
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26 : 2013/10/07(月) 14:57:56.65 -
「アリサの歌声は、本物だ。インデックスもさ、ああ見えて、実はかなり歌にはうるさいんだぜ?」
「そうなんだ、えへへ。……ありがと、当麻くん」
「おう。……さ、もう遅いし、帰ろうぜ、アリサ」
「うんっ」
初デートは、大成功。
二人は幸せな雰囲気に包まれながら、まずアリサを家に送った。こんな時間なのだ。流石に暗いし、女の子一人では危ない。
「今日はほんとにありがとう。とっても楽しかったよ、当麻くん」
「ああ、俺もだ。その、……また、どっか行こうな」
「っ……うん!冬休み中は暇だし、毎日行けるよ!」
「はは、流石に毎日は、インデックスが放置されてうるさくなっちまうよ」
「じゃあ、次会うのは───」
「 」
「 」
「」
* * *
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27 : 2013/10/07(月) 14:59:09.40 -
数ヶ月後。
上条当麻の元に連絡が来た。
とある新興事業のためにと、専属アーティストとして、アリサが雇われたという話だ。
その新興事業とは、どうやら近日初公開される、軌道エレベーターに関係することのようだ。
初ライブの日は必ず招待するから来てね、と上条は誘われて、現在、その『初ライブ』の会場に向かっているところだ。
「アリサもついにプロデビューかぁ、満を待して、って感じだな」
「ねぇとうまとうま!あっちにたこ焼き屋さんを見つけたんだよ!丁度小腹がすいてきたところだったかも!」
「こら、いけません! 折角招待状くれたのに万が一遅れて見ろ、一番いい席で見れなくなるでしょう!!」
「むう、でもお腹が……」
「はいはい。アリサのライブ成功打ち上げとして、また三人で食いに行こうぜ。あとでたらふく食わせてやるから、今は我慢しなさい」
「本当だねとうま!?約束だよ!」
「へいへい。ったく……っと、ここか、会場は」
* * *
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28 : 2013/10/07(月) 15:00:30.03 -
使い古された照明や音響機器は、しかし一目見れば高級で、その道のプロ達の歴史が刻み込まれている、そんな世界。そんなステージ。
鳴護アリサは、そのステージ中央で、巨大なディスプレイをバックに立っていた。
数々の照明は、彼女の左手の青いブレスレットを始め、衣装の様々な装飾も煌めかせている。
そして、並べられた音響機器から、彼女の声が会場内に響きわたった。「皆さん、今日はライブに来て頂き、ありがとうございます!」
「お、ほら、始まりますよインデックスさん。アリサだ」
「ほんとだ、おーい!!」
「こらこら、今はあんまり大きい声は出すな」
──きっと、ここまでこれたのは奇蹟で。
「本日は、初公開となります、私、鳴護アリサの新曲を歌わせてもらいます」
「へぇ……」
──これから更に先の世界は、そんな運だけじゃ乗り切れないと思う。歌も、恋も。
「聞いてください──」
──でも、心配は要らない。だって……。
「『明日、晴れるかな』」
──あの晴れの日のように、“彼”と強く願ったら、それはきっと叶うから。fin
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