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1 : 2014/04/29(火) 20:15:38.33 -
フリーゲームibの二次創作です。
時々安価があります。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398770138
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398770138/
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2 : 2014/04/29(火) 20:16:54.95 -
「もう、これしか方法はない!」
ギャリーがライターの火をつけた。
「やめて!お願いッ!やめてーーーーッ!!!」
メアリーが悲痛な声を上げる。額縁に移った火は勢いよく燃え広がった。ガラスが割れ、
キャンバスも燃え始める。「ああ、あれ?私…何で、こんな…」
メアリーの体が黒ずみ、そして、炭の様に粉々に崩れ落ち、彼女は消え去った。
「はあっ、はあっ!」
私達はその場にへたり込んだ。
「大丈夫?ケガしてない?」
ギャリーが私を見て言う。
「ギャリーこそ、手をケガしてるよ?」
「あらホント、さっきガラスでやっちゃったんだわ。ま、これくらい平気よ」
私はハンカチを取り出しギャリーに渡した。
「え?これレースじゃない?もう遅いけど。まあ、いいや。じゃあしばらく借りるわね」
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3 : 2014/04/29(火) 20:17:47.04 -
………そして桃の鍵を使い下に降り、『絵空事の世界』の前まで私達は来た。
「「イヴ!」」
絵の中からギャリーが、私の前でお母さんが、手を差し出している。
目の前のこの人は、ホンモノのお母さんじゃない。ギャリーを見る。私は『絵空事の世界』に駆け寄り、ギャリーの手を掴んだ。
………………
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4 : 2014/04/29(火) 20:18:49.78 -
「…あれ?」
目を開ける。ちょっと目を瞑っただけの様な気も、長い事眠っていた様な気もする。
何だかとても疲れた。「初めての」美術館だからかな。
少し頭もぼうっとする。
私は立ち上がり、フラフラと歩きだした。
階段を降り、真っ直ぐ進む。
バラのオブジェが目についた。ボロボロのコートを着た男の人の隣に立ち、オブジェを眺める。それにしても、この人、前にどこかで見た気がする…。
男の人が私のしせんに気づいた。
「何か用?おじょーちゃん」
「この像は何なの?」
「『精神の具象化』って言う名前の作品らしいわ」
…あれ?この人男性、だよね?
「この絵をみてるとさ、何だか切ない気持ちになるのよねえ。何でかしら…、って急に言われても困るわよね。ごめん、イヴ」
やっぱり、この人と私はどこかで会った事がある。でも、どこで…?
「あれ、…誰よイヴって?」
それは、私の名前。
「え?アンタの名前?アンタ本当にイヴって言うの?変ね、アタシ別にアンタの事知らないのに。何か口走っちゃったの。変なの」
そこで少し言葉を切って、男の人は言葉を続けた。
「でも、何か…私達前にどこかで会った様な気が…あ、いやごめん、変な事聞いて。今のは気にしないで、じゃあね」
男の人はそう言って立ち去ろうとした。
「ん?」
しかし、何かに気づいたようで立ち止まる。
「何これ、ハンカチ?こんなの持ってたっけ?」
…っ!それは!私は目を見張った。そのハンカチは!私は男の人に駆け寄った。
「え?これアンタの?あらホントだわ“IB”名前が入ってる。でも何でアタシのポケットに?しかも血がついて…」
頭のはじっこで、ある筈のない記憶がチラつく。
「…ケガ…ケガしたんだわ、手に。それで…女の子が、イヴが…ハンカチを私に!」
それは男の人の方、ギャリーも同じらしい。
「そうよ…このハンカチ、貸してもらってたんだわ!イヴ!思い出したわ!」
「そうだ、私はギャリーとおかしな世界をさまよってたんだ。それで…」
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6 : 2014/04/29(火) 20:21:22.77 -
安価を取ります。選択によってENDが変わります。
安価下1
1、ハンカチの事
2、マカロンの事
3、メアリーの事
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8 : 2014/04/29(火) 20:44:06.02 -
私はギャリーと美術館を歩きながら、あの美術館での事を互いの記憶を確認し合う様に話した。
「アタシ達、よく戻って来れたわよね…」
2階の『逆さ吊りの男』の前でギャリーが呟く。
「2人とも無事で戻ってこれたなんて」
うん、2人で…。
「やっぱり、気になってるのね、メアリーの事」
「うん」
私はメアリーの事を思い出す。
「本当に、これしかなかったのかな」
「しょうがなかったのよ。あの子が外に出るためには、私かイヴがあの世界に残らなくちゃいけなかったんだから…」
『逆さ吊りの男』の横で目を瞑るギャリー。
…
………あれ?「ギャリー、ここに元々あった絵って『逆さ吊りの男』だった?」
「そうよ?私はこの絵を見ていた後にあの世界に行ったんだから」
何か、別の絵があったような…、そう、丁度ギャリーの様な人の絵が……。
私は必死に思い出そうとする。しかし、
「あら?イヴ、こんな所にいたの。そろそろ帰るわよ」
お母さんが階段を上がって来て私を見つける。
私はギャリーと「また」会う約束をして、美術館を後にした。
イヴの背中を見つめ、アタシは呟く。
「…青いバラの花言葉は『奇跡』よね?これだけじゃあ、『奇跡』とは言えないわよ」
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9 : 2014/04/29(火) 20:44:40.46 -
END.9 小さな奇跡
…新しいルートが解放されました。
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10 : 2014/04/29(火) 20:47:42.24 -
ここまでが序章です。
ここから、少しづつですがハッピーエンドを目指して書いて行きたいと思います。
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14 : 2014/04/29(火) 21:04:45.69 -
昼下がりの灰色の空の下、私はお父さんとお母さんと美術館に向かっていた。
「さあ着いたわよ。…イヴは美術館は初めてよね?」
お母さんが私の顔を覗いて尋ねる。そうだった、かな?
何だかずっと前に来た事があった様な気もするんだけど。
「今日、観に来たのは『ゲルテナ』って人の展覧会なのよ」
『ゲルテナ』と言う名前、どこか懐かしい響きがする…。
「絵の他にも彫刻とか色々と面白い作品があるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ」
やっぱり、何かこの感じには覚えがある。そう、きっと次は…
安価下1
1、お母さんがパンフレットを貰おうと言う
2、お父さんが受付を済まそうと言う
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17 : 2014/04/29(火) 21:26:41.08 -
「受付、済ませてしまおうか」
お父さんがそう言ってカウンターに寄る。
あれ?外れた…、気のせいだったのかな。私は早く美術館を巡りたくなった。
お父さんとお母さんに言って奥に進む。
「へえ、これが雑誌とかによく載ってるやつなのか」
「この作品、生で観てみたかったの!」
「やっぱり、本とかで見るのと全然違うわ…雰囲気がもう…もう……ね!」
次のフロアでは沢山の人がざわついていた。目の前の床には、海の底の絵がある。
地上から見れる深海かあ…
安価1
1、飛び込んでみる
2、他の作品を見に行く
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19 : 2014/04/29(火) 21:35:50.47 -
私は少し後ろに下がって距離を取った。
軽く屈身をする。
両手両膝を地面に付けた。
ヒザを上げる。
軽く息を吸って、
スタート!
思いっきり走って、ジャーンプ………
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20 : 2014/04/29(火) 21:36:20.52 -
「ぐすっ…ぐす…っ!」
「まったく、イヴがあんな事するなんて思わなかったわ」
「でも、作品に傷がつかなくて良かったよ」
美術館に入ったと思ったらいつの間にか出ていた。何を言っているか分からねえと思うが(以下略)
END12.もう、イヴったらうっかんりさん♪
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21 : 2014/04/29(火) 21:38:03.27 -
まさか真っ先にこのエンドに行くとは思わなかったww
コンティニューしますか?
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22 : 2014/04/29(火) 21:40:00.86 - ID変わってるけど1です。
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23 : 2014/04/29(火) 21:40:52.46 - 見間違えた。変わってなかった…ごめんなさい。
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26 : 2014/04/29(火) 21:49:32.31 -
はじめから行きます。
昼下がりの灰色の空の下、私はお父さんとお母さんと美術館に向かっていた。
「さあ着いたわよ。…イヴは美術館は初めてよね?」
お母さんが私の顔を覗いて尋ねる。そうだった、かな?何だかずっと前に来た事があった様な気もするんだけど。
「今日、観に来たのは『ゲルテナ』って人の展覧会なのよ」
『ゲルテナ』と言う名前、どこか懐かしい響きがする…。
「絵の他にも彫刻とか色々と面白い作品があるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ」
やっぱり、何かこの感じには覚えがある。そう、きっと次は…
安価下1
1、お母さんがパンフレットを貰おうと言う
2、お父さんが受付を済まそうと言う
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29 : 2014/04/29(火) 22:14:21.54 -
「受付、済ませてしまおうか」
お父さんがそう言ってカウンターに寄る。お母さんもそれに続いてパンフレットを貰いに行った。
当たった…。何だろう、この変な感じ…。私は早く美術館を巡りたくなった。先に行く事をお父さんとお母さんに言って、奥に進む。
「へえ、これが雑誌とかによく載ってるやつなのか」
「この作品、生で観てみたかったの!」
「やっぱり、本とかで見るのと全然違うわ…雰囲気がもう…もう……ね!」
次のフロアでは沢山の人がざわついていた。目の前の床には、海の底の絵がある。
地上から見れる深海かあ…。引き込まれそうな気がして思わず後ずさる。
他にも一階にはバラのオブジェとかきれいな石が入ったケースとかがあった。
二階に上がってみる。
二階に上がって最初に目に飛び込んできたのは首のないマネキンだった。辺りを見るがどこにも首はない。どうやら『無個性』と言うタイトルらしかった。
他の絵も見て回る。
『赤い服の女』と言う絵は変に生々しい雰囲気で少し怖かった。
『口直しの木』はきっと綿菓子か何かをイメージしたんだろうな。
青くてドロドロした像は字が難しくて名前が分かんなかった。
ネコの絵、目の絵を見て先に進む。
…あれ?この反対側の廊下ってこんなに長かったっけ?
何だか廊下の長さが変な気がする。試しに一周してみる。
『無個性』の廊下を曲がって、『赤い服の女』の廊下を曲がって、『口直しの木』の廊下を曲がる。
やっぱり変だ。4回とも真横に曲がったし、『無個性』の廊下と『口直しの木』の廊下は同じ位の長さだった。
それに、ネコの絵を見てたお母さんと子どもはこの絵が見えていないような感じだった。私は目の前の大きな絵を見る。題名を読んで見ようとすると電気がまたたいた。電気はすぐについたが、何か変だ。
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31 : 2014/04/29(火) 22:24:49.32 -
…いつの間にか2階から人がいなくなっていた。
「…え?何で?」
さっきまで結構人がいた筈なのに。
一階に下りてみる。
トコトコトコトコトコ!
二階から床を踏み鳴らす音が聞こえた。
「何だやっぱり誰かいるんじゃない」
二階にもう一度上がる。ふと窓の外に何者かの気配を感じた気がした。
近寄ってみる。どうしよう…
安価下1
1、窓をのぞく
2、窓をたたく
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33 : 2014/04/29(火) 22:39:36.89 -
そっと窓をのぞこうとする
バンッ!
「きゃあっ!」
窓の外から誰かがいきなり窓を叩いた!?びっくりして尻餅をつく。
…ここってそう言えば二階じゃない?じゃあ、窓の外の人はどうやって叩いたの?「きゃあああっ!」
二階を走り廻り、誰かを探すがやっぱり誰もいない。
「はあ、はあ」
私はまた、不思議と長い廊下にある大きな絵の前に来ていた。
「何か垂れてる…」
いつのまにやら額縁の下から何かが垂れていた。
「あれ、絵の具かな」
近寄ってみる。それは、
安価
1、青色の絵の具
2、黄色の絵の具
3、赤色の絵の具
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35 : 2014/04/29(火) 23:05:31.88 -
額縁の裏から黄色い絵の具が流れている。
指で触ろうとした瞬間…、後ろの床がバンバンバンバンッ!と鳴った。
びっくりして後ろを見る。そこには「おいでよイヴ!いっしょにあそぼ!」
と黄色い絵の具で書いてあった。
絵の方に向きなおると、垂れていた絵の具が文字になっている。
「深海の世なう」
深海の世って、確か一階にあったやつだっけ。
…と言う訳で『深海の世』の前に来てみたんだけど、
「この中に入るの?」
ちょうちんアンコウもどきみたいなのが回遊してるんだけど…。
安価下1
1、入る
2、やっぱり止める
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37 : 2014/04/29(火) 23:32:34.93 -
…
………気が付くと私は知らない場所にいた。廊下が左右に続いている。
階段を挟んで左右の壁に赤い絵と青い絵があるけど、どっちから行こうか…。
考えて私は青い絵の方に進む事にした。
おいでおいでおいでおいで………
壁一面に「おいで」と黄色い字で書いてある。
「何これ…怖い」
そう言った瞬間、字が変わった。
「諦めんなよ!諦めんなよ、イヴ!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメ!諦めたら!私のこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!あともうちょっとのところなんだから!」
「暑い…」
まだ知らないあなたの事を思ってもしょうがないじゃん…。しょうがなく先に進むと花瓶に赤いバラが活けてあった。
バラを取ってみる。何だか自分にしっくりきた。
ふと机の後ろを見ると、扉がある事に気づいた。
「よいしょっと」
机をどかして扉を開けて見る。
中には女の人の絵と、緑色のカギがあった。
「すごく怪しい…」
安価下1
1、カギを取る
2、笑いを取る
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40 : 2014/04/29(火) 23:53:43.31 - すみません。何か違う気がしてたら。ここは青のカギでしたね。補完しといて下さい。
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41 : 2014/04/30(水) 00:01:21.40 -
女の人の絵をじっと見て見る。
あ、ちょっと動いた。
更に見つめて見る。
やっぱりこの絵は動いている。カギを取った瞬間に驚かす気だ。
じいっと見つめると、必死に無表情を作ってるのが分かる。
変顔をしてみた。
「ブフッ!!」
たまらず吹き出す女の人の絵。よし、勝った。
私は青のカギを拾って部屋を出た。
外に出ると壁の文字がまた変わっていた。
まけたまけたまけたまけた…
「そんなに悔しかったのかな」
歩いていると床がバンバンバンと鳴り、「ずるい」と文字が出た。
「じゃあ、今度また勝負ね」
反対側の廊下にあった扉を青のカギで開けて先に進む。
今度は緑色の部屋に出た。
虫の絵が飾ってある。…本物の虫も床を歩いてる。
あ、こっち向いた。
「ぼく、アリっ!ぼく、かっこいい!じゃなくて、ぼく、大好き!じゃなくて、ぼく、絵が好き!ぼくの絵、カッコいい!ぼくの絵、見たいけどちょっと遠い所にある!!」
アリが喋った…。
安価1
1、無視する
2、連れて行く
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65 : 2014/04/30(水) 21:03:14.43 -
「注意って言ってるし。危ないよね…」
私はそっと唇から離れた。
戻って、奥に続く通路を見る。
通路の壁から生えた黒い手が、クイッ!クイッ!と手招きをしていた。
「そっちに何かあるの?」
手招きされるままに奥へと進んでみると、
「うわあ…」
天井から沢山の人形が逆さまに吊るされていた。「さすがに、これは…ちょっと、怖いかも…」
ふと、その内の一体と目があった。
ん?何かごそごそしてる?
足の縄を持って、縄から足を外して、宙返りして飛び降りた!?ストン!スタスタ。
こっちにやってくる。
人形は自分の服を指差した。
18
服には緑色の文字でそう書いてあった。
戻る人形。
ジャンプして、縄を掴んで、足を入れて。逆さにぶら下がった。…人形さんも大変だなあ。
それにしても緑色の18と言う文字、
確か、どこかで見た事があったような。…でも、あの時の人形はドサッ!って、
あれ?「あの時」ってどの時?
逆さづりの人形の下を通り、その先にあった扉の前に立つ。
000
扉には数字を入れるダイヤルがついていた。
ダイヤルの上には式が書いてある。緑×赤+青=?
私は例しに、思いつく数字を入れて見る事にした。安価下1
1、162
2、164
3、166
4、168
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69 : 2014/04/30(水) 21:35:10.08 -
サカナの頭と木のリンゴを見比べる…。
私はサカナの頭を「もーしん」さんの中に投げ入れた。
…正直あのサカナの頭ちょっと生臭かったんだよね。バリッ!バリッ!ゴキンッ!
あっという間にサカナの頭を噛み砕く「もーしん」さん。
「シハ—ッ!ほねが、歯にはさまった。取ってくれたら。ここ通す」
「もーしん」さんの歯を見る。あ、ほんとだ。
私は小骨を取ってあげ、ついでに口周りを拭いてあげた。「おまえ、やさしい。こことおす。おれの口の中、くぐっていけ」
あんぐり口をあける「もーしん」さん。
私はちょっと生臭い口の中を通って、先へと進んだ。
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70 : 2014/04/30(水) 22:21:48.34 -
扉の先には廊下があった。壁には何枚もの絵が続いている。
ギロチンの絵だ。しかも連続写真みたいに段々上がっている。
廊下の角あたりの絵は完全に刃が上がっている。…危ないな。「アリさん、ちょっと向こうまで行ってきて」
アリを先に歩かせて様子を見る。あ、ギロチンが落ちてきた…。ちょっと心配。「アリさーん!大丈夫?」
「うん!ぼく、働きアリ!」
ほっ。よかった。ギロチンの刃はスッと消えてしまった。
どうやらもう落ちてこないらしい。どんどん進んで突き当りの扉を開ける。
今度は赤い部屋に出た。赤い像と青い像が対になって置いてある。
『「あ」』『「うん」』真ん中の奥には扉があった。
「やっぱり開かないのね」
カギを探す。
対になっている「あーさん」と「うんさん」に聞いてみた。
「あーさん、うんさん、カギ知らない?」「あー?」
「う~ん…」ダメだ。役に立たない。
右奥を見て見る。
『赤い服の女』
ああ、きっとあれだ。
あの絵が持ってるに違いない。でもなあ、絶対何かあるよね…。
安価下1
1、近寄る
2、近寄らない
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87 : 2014/05/01(木) 00:55:04.80 -
『キャンバスの中の女たち』と言う本を開いてみる。
「これって、さっきの絵の事よね…」
“ここの女性はすぐに人の物を欲しがる。目をつけられるとたいへん??である。
なんせ彼女たちは、自分が満足するまで??に追いかけて来るからである。”ふーん…
さっきの扉を開けて赤い部屋に戻ってみる。
『赤い服の女』は気を取り戻していた。
「ねえ、コレあげようか?」
私が木のリンゴを振りかぶる。
『赤い服の女』は逃げ出した!
壁から降りて、両腕を使ってガサガサと反対へ逃げてゆく『赤い服の女』。
「欲しくなかったのかな?」
私は本のあった小部屋に戻る事にした。
「この本だけ何か違うのよね…」
『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』
分厚い専門書が数ある中で、この本だけがクレヨンで書かれている。
「それにしても、XXXXってどこかで見た気がしたんだけど…」
ページを開く
“うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”
うっかりさん・A・B「誕生日おめでとう」
青髪「ありがとう」
うっかりさん「今日は、あなたのためにガレッド・デ・ロワを作ったの」
(途中省略)
お母さん「書斎のカギがないわ。このテーブルに置いておいたはずなのに…」
うっかりさん「このコイン、パイの中に入れたはずなのに…。もしかして」
お母さん「どこいったのかしら。お父さんに怒られちゃうわ…」
うっかりさん「どうしよう…」「そのナイフで青髪の子のおなかを開いて「私ってばうっかりしてたわ♪いま、ドアを開けるね!」なんてベタなオチはつまらないわよ?」
うっかりさん「…………」
「どうしたの?」
うっかりさん「どうしよう…」
幕間に引っ込むうっかりさん。
…
………
「…ちょっと何するの!?」
ドスドスッ!ドスッ!ドスッ!
「お願い!出して!お願い!」………しばらく待っていると、顔が腫れたうっかりさんと、おなかをさする青髪の子が出てきた。
うっかりさん・青髪の子「今、扉を開けるわね」
カチャリと奥のドアが開くおとがする。
「ありがとね!」
絵本はスウッと消えてしまった。
扉を開ける。次はどんな部屋なんだろう…。
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96 : 2014/05/01(木) 13:39:59.75 -
床に伏して嘆く男の人の顔をのぞく。
「ほら、飴よ」
私はさっきの会話を思い出す。
…
……
「大丈夫ですか?」「…うぅ。飴が食べたい……」
男の人の手に小さなカギを見つける。
「これ、どこのカギ?」
……
…「うーーん…。あぁ、おいしかった…」
男の人は袋から飴を一つ取り出して食べると、笑顔になった。
「あなたはこんな所で何をしていたの?」
私が聞くと、
「いつの間にかこの変な美術館に迷い込んじゃって、そしたらあの『青い服の女』が「よこせぇーーー」って追いかけてきたのよ。だから思わず袋を投げ渡したんだけど…」
諦めきれずに床に伏して咽び泣いていたって訳ね…。
「そんな事より、アタシの他にも人がいたのね!アンタも美術館にいた人よね?よかったわ。こんなとこにずっと一人でいたら、おかしくなっちゃうわ!」
「おまえ、おかしい!」
「失礼ね、何、このアリ?」
でも、飴が欲しくて床に伏して咽び泣いている人は、私もおかしいと思う…。
しゃべりかた、女の人みたいだし。「アタシ、ギャリー。アンタは?」
あれ?ギャリーって名前………、さっき思わず呼んだ気も…。
何なんだろう、この感覚。
「私はイヴよ。こっちはアリさん」
「イヴ、って言うのね。とりあえず一緒にここから出る方法を探さない?さ、行きましょ?」
そう言って歩き始めるギャリー。
キャア!ドシンッ!
あ、絵につば吐きかけられた。
「さっきのはちょっと驚いただけよ…。本当よ?」
はいはい。
進んだ先には扉があったが、『無個性』が塞いでる。「何これ、邪魔ね。イヴ、ちょっと離れててくれる?」
ギャリーが『無個性』をどかして扉を開ける。
私達2人と一匹は次の部屋へと入って行った。
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104 : 2014/05/01(木) 15:21:38.92 -
「迷路だ…」
左の小部屋に入ると、入口入ってすぐの壁にプレートが掛かっていた。
『ラビリンス』
「ちょっと行ってみましょうよ!」
意気揚々と歩き出すギャリー。絶対罠があると思うんだけどなあ…。「大丈夫よ。片手を壁につけて歩けば絶対に迷わないわ!」
私はアリさんを肩から降ろす。
「アリさん、ちょっとここで待ってて」
「ぼく、働きアリ。ぼく、働く。ぼく、ついてく!」
「何かあったら。呼ぶから。その時は出口まで道案内してね」
「わかった!ぼく、待つ!」
ギャリーと一緒に迷路を進む私。
やがて、狭い通路を曲がると、『無個性』A「やあ!」
『無個性』さんが現れた。
「ぎゃあ!イヴ!バック、バック!」
驚いて戻るギャリー。
『無個性』B「こんにちは!」
隣の角からも現れる『無個性』さん。
「うわわわわわっ!」
適当に走り出すギャリー。
追いかける私と『無個性』A・B
………
「じゃあね!」
最終的に私達は『無個性』A・B・Cを引き連れて迷路をさまよい、
何やら変なスイッチを押し、迷路を脱出したのだった。「よくイヴは平気ね…」
「何が?」
「あの『無個性』よ。アレ、頭無いのよ?怖くないの?」
「頭無いから噛まれたりしないでしょ?」
「怖がってたのは私だけだったのね…」
「さっきのスイッチって何だったのかな?」
「さあ、迷路の外からカチャンって音が聞こえたけど…」
「さっき、音した!あっち、部屋ある!」
「あ、アリさん!」
アリさんについていくと新しい扉が現れていた。
安価下1
1、新しい部屋に入る。
2、右の小部屋に入る
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107 : 2014/05/01(木) 16:08:16.85 -
そして一番奥にあるオブジェを見る。
「もしかして木ってこれの事じゃない?」
さっき額縁の裏で見た「木の後ろよ!」と言うメモを思い出す。
「あ、指輪だ!」
「結婚指輪ね」
木の後ろに銀色の指輪が落ちていた。
「ああ、あの入口の花嫁と花婿!指輪がなくて嘆いていたのね」
花嫁と花婿の絵まで戻る。
『悲しき花嫁の左手』の薬指に指輪をはめて上げると、絵の表情が変わった。
『幸福の花嫁』 『幸福の花婿』
『幸福の花嫁』がブーケを投げてくれた。
ギャリーがブーケを拾って私に差し出す。「アタシはもうバラを持ってるから。イヴにあげる」
「ギャリーもバラ持ってるの?」
「ん?イヴも持ってるの?」
「うん!」
私は赤いバラをギャリーに見せる。
「へえ、綺麗ね!」
「ギャリーのバラも見せて!」
「いいわよ。はい」
「ギャリーのも綺麗ね!」
「ありがと。ま、ブーケはとりあえずイヴが持ってなさい」
「やったあ!」
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111 : 2014/05/01(木) 17:28:31.64 -
「うわあ、これが動き出したらキツイわね…」
灰色の部屋には女の人の絵がたくさん飾ってあった。
『赤い服の女』『緑の服の女』『青い服の女』…
部屋を見て回る。
「これ、アタシが元の美術館で見てた奴だわ」
ギャリーが指差す。
女の人の絵に混じって『吊るされた男』が飾ってあった。「何で吊るされたのかな?」
「覗きね」
「こいつ、覗いた。女、怒った!こいつ、吊るされた!」
「ホントにそうだったの!?最低ね!男として許せないわ!」
アリさんの言葉にギャリーが憤慨する。
「でも、さすがに可哀そう…」
「イヴ、あなたってば優しいのね!」
私は絵の上下を変えてみた。
「あら、この男の服…」
ギャリーが何かに気づく。
『吊るされた男』の服には「6295」と書かれていた。
「ずっと「5629」だと思ってたわ…」
入口入ってすぐの細い通路と一番奥の隅、部屋の真ん中手前に扉を見つけたが、
どれも鍵が閉まっていた。今、私達は左右に並んだ二つの扉の前にいる。さて、どっちの扉を見ようか…。
安価下1
1、右の扉
2、左の扉
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113 : 2014/05/01(木) 18:32:42.07 -
左の扉には4ケタのダイヤル錠がついていた。
「これって、そういう事よね」
ギャリーが6295と打つ。
カチャン
扉が開いた。
中は小部屋になっていて、イスとキャンバス、そして机にのった花瓶があった。
イスの辺りから声がする。
イス「あー、絵を描きたいけど机の位置が悪いなあ!」
「誰かが、いる?」
「みたいね」
イス(仮)「机の位置を直したいけど、ぼくは筆とパレットで手がふさがってるからなあ!」
「ギャリー、なんかチラッ、チラッて視線を感じるわ」
「ええ」
イス(仮)「ああ!誰か机の位置を直してくれないかなあ!」
「うるさいわね。直せばいいんでしょ!」
ギャリーが机をガタゴトと動かす。
イス(仮)「もっと左!…違う!…行き過ぎ!…少し後ろに!…そう、そこ!」
そう、イス(仮)が言った途端、どこか遠くの方でドアのカギが開くような音がした。
「ああ、ありがとう!これで僕の芸術が…
イスを思いっきり後ろに引く。
ドシン!姿が見えない何かが尻餅をついたような気がした。
きっと気のせいだ。「ギャリー、早く行こっ!」
「そうね!」
私達は小部屋から出た。
部屋を出ると『赤い服の女』が1人、いや1体、…1枚?ガサゴソと床を這っていた。
「あれって何て数えればいいのかしらね」
そんなことより、次はどうしよう。
安価下1
1、音のした方へ行く
2、右の扉を調べる
-
118 : 2014/05/01(木) 22:16:19.82 -
「さっき見なかった右の扉見てみようよ!」
右の扉まで戻ってみる。
扉には、
「この部屋にある女の絵の数を答えよ」
と言う文と「00」と言う2ケタのダイヤル錠があった。
「女の絵の数?」
「確か14だったわね」
ギャリーが手早くダイヤル錠を回す。
カチャリ。
私とギャリーは左の扉の中に入った。
「ギャリー絵の数を数えてたの?」
「…え?ええ!アイツがどこに何体いるかは数えてたのよ。だって危ないじゃない?」
「ギャリー、さすが!」
アリさんがギャリーを誉める
「やっとアタシの凄さが分かったの?アリさん!」
得意げな顔でふんぞり返るギャリー。アリに…。
「ギャリー、凄いね」
「きゃ~、イヴに誉められちゃったぁ!!」
ギャリーってホントに年上の男性なんだろうか…。
「この部屋は何なのかな…」
奥の壁にある張り紙を読んでみる。
「作品にはお手を触れないようお願いします(イヴは除く!)
万が一、備品や作品に何らかの損害を与えた場合は、
あなたの を持 賠 させ ます(イヴは除く!)」「何か凄く差別を感じるわね…。可愛いは正義って事なのかしら?」
後ろからギャリーが覗き込んで呟く。
「?」
「何でもないわ」
-
122 : 2014/05/01(木) 22:55:29.67 -
「ねえ、遠くから「赤服さん」と「青服さん」が来てるよ」
「え?ホントだ!あ、開いたわ。イヴ、早く中に!」
ベンベン!ベンベン!と扉を叩く音が外から聞こえる。
「全く!レンジャーもびっくりの、ほふく前進だわ」
「女、鍛えてる!女、腕すごい!」
アリさんが震えた声で言う。確かに、今は私の肩にいるから大丈夫だけど、普段のアリさん目線であの女の人達を見たら相当の恐怖だろう…。
「その情報は知りたくなかったわね…」
ギャリーはそう言いながら部屋にあった本棚の一つを窓の前に移動させていた。
「何してるの?」
「ほら、あの女たち、窓なら割って侵入してくるじゃない。それを防ごうと思って」
部屋には元の美術館にもあったソファ『指定席』と…、
「これ…」
壁に飾ってある大きな絵を私は見る。
「ん?何?この絵がどうかしたの?…あら?これって…」
「この絵、私の家族だわ」
絵には、お父さんとお母さん。そしてその間で二人の手を握って笑っている私が描かれていた。タイトルは…
『家族』
「とても、暖かな絵ね…」
しばらく私達が感慨に浸っていると、
ドンドン!ドンドンッ!!
部屋の壁全体から叩く音が響き始めた。
「まずい!囲まれたわっ!」
慌てるギャリー。私は左の壁を思いっきり叩いてみた
ドンッ!!!
右側の壁は静かになった。
続いて左の壁も叩く。
左の壁も静かになった。
最後に奥の壁を蹴っ飛ばそうとした。
バゴン!蹴る前に壊れる壁。顔を出す『黄色い服の女』
「あ、ごめん!」
足が『黄色い服の女』の顔に直撃してしまった…。
「こいつら壁も壊せるの!?」
驚くギャリー。
「ギャリー!早く出よう?」
壊れた所から私達は外に出た。まだ見ていない扉はあと一つ。
先に進むのは入り口近くの細い通路にあった扉に違いない。「赤服さん」「青服さん」 「黄服さん」「緑服さん」「無個性さん」
沢山の作品たちがワラワラと寄って来る。
「イヴ!こっちよ!早く!」
-
123 : 2014/05/01(木) 23:14:44.82 -
扉を開けてギャリーが私に手を伸ばす。
急いで入る私。イヴ~~!イヴ~~~ッ!
扉の向こうから物悲しい声が聞こえてくる。
「これはこれで怖いわね…」
と呆れるギャリー。
更に進むと、小部屋があった。
カギは開いている。「特に何かがある訳ではなさそうね…」
部屋の周りを見渡すギャリー。
「さっきの部屋じゃ休めなかったし、少しここで休憩しましょ」
確かに、ここまで色々な事がありすぎて少し疲れたな…。
「ギャリー、少し寝てもいい?」
「え、ええ…。多分大丈夫だと思うわ」
私は少しだけ目を閉じる事にした。
…
………いつの間にか、私は不思議な美術館の出口まで来ていた。
でも、一人だ。
ギャリーは?いつの間にか、私は元の美術館に戻っていた。
あ、ギャリー!
アンタ、だれ?
え?私達、ずーっと一緒だね!
うん。でも、何故かとても悲しいの…あれ、これギャリーの肖像画だ。
…何で美術館に?そうだ。何度も何度も悲しい事があったんだ。
いつも、誰かが悲しい思いをしていたんだ…。何で?何でこんな事に?
矛盾する、沢山の「経験した事のない」思い出が私の頭を駆け巡る。そう、これはただの夢。起きたら忘れてしまう悪い夢。
だから、だから…………安価下1
1、目を覚ます
2、もう少し寝ている
-
125 : 2014/05/01(木) 23:53:03.73 -
「…ヴ、…イヴ」
ギャリーの声が遠くから聞こえる。さあ起きて、全部忘れなきゃ。
楽しくて不思議な美術館に戻らなきゃ…
—本当にそれでいいの?——
え?
—ハッピーエンドへのカギはもう揃ってるのに?——
どういう事?
—ギャリーと私は無事に元の美術館に戻った——
うん。——けれど、それだけじゃ満足できなかった———
何で?
——足りなかったから——
——みんな一緒が良かったから——
——ギャリーが「小さな奇跡」を起こしてくれた——
——それにあなたも前と比べてずいぶん変わった——
——あなたは忘れているだろうけれど———
——思い出して——
——XXXXを—
-
126 : 2014/05/01(木) 23:53:44.46 -
「…ヴッ!イヴ!?大丈夫?」
「うーん…」
目を開けると、心配そうなギャリーの顔が目の前にあった。
「ギャリー?どうしたの?」
「いや、何かイヴがうなされてるみたいだったから…。怖い夢見たの?」
うーん。何かとても大事な夢を見たと思うんだけど…
「ううん。ただ…」
「ただ?」
「何か悲しかった様な、でもそれだけじゃなかったような…」
「まあ、飴でも食べて落ち着きなさい」
「うん。ありがと」
私の体にはいつの間にかギャリーの上着がかけられていた。
その上着の中から飴を取り出し私にくれる。…飴を食べたらとても元気が出た。これ、ほんとにただの飴なのかな…。
「飴!飴!」
アリさんが手をバタバタさせてせがんでいる。
「はいはい。ちょっとだけよ」
もう一つ飴を取り出し、はじっこを砕いてあげているギャリー。
「ギャリー、良い人!ぼく、大好き!」
「すっかり懐かれちゃったわね…何か新鮮」
ほっこりしているギャリーに畳んだ上着を持っていく。
「ギャリー、上着ありがとね」
「いいわよそんなのぉ」
「この上着、端がボロボロだけど直さないの?」
「これはこういうファッションなのよ。まあ、使い込んでるから確かにボロボロにもなってるけど」
「私が寝てる間はアリさんと話してたの?」
「ええ。中々いいヤツよ。こいつ。それにしても、「アリさんと話していた」って改めて聞くと相当変なセリフよね」
ギャリーは大丈夫だと思うな。
その後もギャリーと私はしばらく部屋で雑談をして過ごした。
-
127 : 2014/05/02(金) 22:07:37.55 -
さて、そろそろ部屋を出ようかと思い立ち上がる。
「イヴ?もう大丈夫なの?」
「うん、もうすっかり大丈夫。ホントにありがとねギャリー。大好きよ!」
「~~~~~~~ッ!?!?」
「ぼくも、ギャリー好き!」
「はあ、アタシ幸せ………」
部屋を出て、廊下を歩く。
「何かあるわね…」
そこには柵で囲われた一角があった。『無個性』さんが3体ほど待ち構えている。
「どうする?イヴ?ってちょっと待って!早い!入るの早いっ!」
まあ、さっきの『ラビリンス』とは違って周りが見渡せるし。
それに、何か入らなきゃいけないような気がしたんだよね…。私を追って柵の中に入るギャリー。
カシャン
「「あ…」」
もしかして、閉じ込められた?
ヨタヨタと寄って来る『無個性』さんA。
「イヴ!あそこにボタンの絵があるわ!」
ギャリーが壁にある3枚の絵を指す。
私は左端の赤いボタンの絵を押した
「そっちじゃないわーーーーッ!」
ヨタヨタと動き出す『無個性』さんB。
ギャリーが真ん中の青のボタンの絵を押す。
カシャン
反対端の柵が開いた。
「イヴ!出口はあっちよ!」
出口へ私を引っ張ってゆくギャリー。でもここまで来たらやっぱり、ね?
…もしかしたら『無個性』さんが動きを止めるかもしれないし。右端の緑のボタンを押す。
『無個性』さんCが動き出した…。
「イヴ—————っ!」
柵から脱出して一息つく私達。
「凄い引っかけだったね!」
「イヴ、アナタ楽しんでるでしょ?」
「うん!」
「楽しそうで何よりよ…」
-
129 : 2014/05/02(金) 22:10:32.66 -
角を曲がり、新たに出来た通路に入る。
「きゃっ!」
「わっ!」誰かとぶつかった。
「あなたは…」
そこに倒れていたのは金髪の女の子だった。
「ちょっと、大丈夫?」
私は女の子を助け起こす。
「………!」
遅れて入って来たギャリーが女の子を見る。
「あら、あなたも美術館にいた人でしょ?」
「あ………」
「やっぱり!アタシはギャリー。こっちの子はイヴって言うの」
「ぼく、アリ!」
「え?」
私の肩にいるアリさんを見て目を丸くする女の子。
「アタシたちも、美術館にいたのに気づいたらこのワケわかんない場所に迷い込んじゃってて……。今、何とか2人、と一匹で出口を探してるワケなんだけど。アナタもそうじゃない?」
「わ、私は…人を探してて…、そしたらこっちの方で音がしたからここまで来たんだけど。そしたらこれがあったの」
そう言って女の子が出したのはクレヨンのセットだった。
「「…………」」
言葉を失う私達。
「ギャリー、これってもしかして…」
「イヴが“絵を描く道具が欲しい”って言ったからなのかしら…」
2人で顔を見合わせる。それをみてニコニコしている女の子。
気を取り直したギャリーが女の子に言う。
「ま、まあ女の子一人じゃ変なのうろついてて危ないし、一緒に出口探さない?」
女の子は満面の笑みで答えた。
「うん、行く………!」
「じゃあ、決まりね!あ、そう言えば名前まだ聞いてなかったわ。なんていうの?」
「メアリー………」
「メアリーね!…………よろしくメアリー」
「うん!」
私もメアリーに挨拶をする。
「よろしくね、メアリー」
「よろしく!イヴ!」
-
130 : 2014/05/02(金) 22:11:35.81 -
そうして私達は『ミルクパズル』の前に戻ってきた。
「せっかくクレヨンがあるんだから、何か描いちゃいましょう。好きな絵がパズルになってこそ、やりがいがあるってもんよね」
「よいしょっと!」
メアリーが額縁を壁から外す。
「ねえねえイヴ!何の絵を描く?」
クレヨンを持ってはしゃいで聞いてくるメアリー。
「うーん…」
「じゃあアタシたち三人の絵を描きましょうよ」
ギャリーがそう提案をする。
それを聞いて満面の笑みをメアリーが浮かべた。「いいね、ギャリー!イヴはどう?」
「うん!良いんじゃない?」
クレヨンで三人の絵を描く。
私はギャリーを、ギャリーはメアリーを、メアリーはイヴを描いた。
………
「よし、出来た!」
メアリーがパズルの絵を広げる
それを見て、私の中にまた奇妙な感覚が芽生える。…あれ?この絵どこかの「びじゅつかん」で見た事がある様な…。私はこの感覚の正体を思い出すため、更に集中しようとした。が、
「ぼく、アリ!ぼく、いない!」
…アリさんの声にさえぎられてしまった。
「ねえイヴ、このアリは何なの?」
メアリーが聞いてくる。
「一番最初に出会った生物がアリさんだったのよ。で、次がギャリー」
「ふーん」
「何かアタシ、今アリと同列に語られた気がするんだけど…」
-
133 : 2014/05/03(土) 02:17:05.25 -
「ねえ、ギャリーこの先まだ見てないよ?」
私は『ミルクパズル』の先に続く廊下を指差す。
頷き、歩き始めるギャリー。「そうね。そっちを見てみましょうか」
「「おー!」」
私とメアリーは腕を上げて後についた。
「また鏡だわ…って割れてる?」
廊下を進むとその先の壁に割れた鏡があった。
「イヴもメアリーもケガするからよっちゃダメよ」
「「はーい」」
割れた鏡を避けて先に進む。
一番奥には五十音のタッチパネルがついた扉があった。「あ、この絵、私が入った所だ」
パネルの上には、元の美術館の床にあった私が飛び込んだ深海の絵と、問題文が小さくのっていた。
「“この絵のタイトルは?”…何だったかしら『深海の…『深海の…」
私とギャリーが『深海の「あ」』から順番に五十音を当てはめ始めようとする。
すると、「確か、『深海の世』だったと思うよ?」
メアリーが教えてくれた。
「ああ!そうだったわ!」
ギャリーがパネルを押す。
扉が開いた。中に入る。
-
138 : 2014/05/04(日) 23:48:52.04 -
廊下をしばらく歩くと壁に張り紙が貼ってあった。
“一体どちらが正しいのか”
…どういう事だろう。
更に先進むと左に曲がる道と真っ直ぐ行く道があった。
「メアリー、さっきの張り紙って…」
私がメアリーの肩をつつくと、丁度私が言おうとした事を言った。
「これって、どっちかに進むのが正しいって事なのかな?」
「左から行ってみましょ」
そう言ってギャリーは道を曲がってゆく。
「「あ、ちょっと待ってよギャリー!」」
付いて行く私達。
曲がった所の壁に絵が飾ってあった。『嫉妬深き花』
「何にも描いてないね」
私がそう言うとギャリーが
「これには描いちゃダメよ」
と釘を刺してきた。
「「……フフッ」」
顔を見合わせて笑う私達。
曲がった先の扉を開けるとアトリエの様な場所に出た。
-
145 : 2014/05/05(月) 00:56:37.76 -
…
……
………
この世界はとびっきり変だ。アタシはそう感じていた。アタシもイヴもメアリーも、この世界を何度も何度も繰り返している。
原因はいつかの「アタシ」が奇跡を願ったから。
始めは何が起きたのか理解できなかった。
イブと二人で元の美術館に戻って、メアリーの話をして、別れた所でアタシの目の前が急に暗転したのだ。暗転した瞬間に見えたのは、あのゲルテナの世界で赤の部屋の前の廊下に隠されていた一枚の絵。
『魂を啜る群集』
だった。
-
146 : 2014/05/05(月) 00:57:57.42 -
最初のループでアタシが気を付けた事は、
・『告げ口』でアタシの失言をメアリーに聞かせない事
・アタシがメアリーと衝突しない事だった。
でも、イヴがメアリーのバラが造花である事に気づいて、結局ダメだった。
また、何週かして分かったのだが、普通にスケッチブックの「おもちゃ箱」の中まで行ってしまうと、
イヴのバラはギリギリのラインまで減ってしまう。
イヴのバラが減らないように気を付けると、今度はメアリーがイヴのバラを盾にアタシのバラを要求してきてしまう。でも唯一の救いは、どんな世界でも常にアタシが、イヴより先にこのゲルテナの世界にくると言う事だった。
だからアタシは、いつからか、赤と青のバラの造花をこの世界に持ち込むようになった。
すり替える事で、イヴにバラの本当の意味を分からせないように。
これでイヴはメアリーが造花を持っていても気にしなくなり、メアリーがおもちゃ箱でバラを要求してくる事もなくなった。
でも、おもちゃ箱まで何事もなく進むと、メアリーが警戒心を持っていない為に二階をツタで塞がなくなってしまう。
結果、イヴは二階に上がり『メアリー』を発見してしまう。
-
147 : 2014/05/05(月) 00:59:18.44 -
アタシが行き詰っていた所、ひとつ前の世界で変化が起きた。
イヴがゲルテナの世界にやってこなかったのだ。
元の美術館でイヴが何かをした結果、ゲルテナの世界が出現する前に美術館から出てしまったらしい。おそらく中途半端に記憶を思い出してしまった結果だと思う。
なのでアタシはメアリーと二人でゲルテナの世界を回った。
するとスケッチブックへと進む道が、出口となる『絵空事の世界』まで続く道に変わったのだ。「バイバイ、ギャリー」
そう言ってメアリーはアタシを『絵空事の世界』へと突き飛ばした。
そう、どんなに頑張ってメアリーを出口まで連れてきても、「代わり」がいなければメアリーは外に出られない。
スケッチブックには行かせてはならない。
だけど、ただ『絵空事の世界』まで連れて行くだけではダメだ。アタシとイヴは難なくゲルテナの世界から脱出することが出来る。
でも、どうすればメアリーを助けられるのかがアタシには分からない…。アタシはまたしても行き詰ってしまった。
-
153 : 2014/05/05(月) 17:12:34.57 -
※後半に入る前に少し補足します。
普通のルートでは紫の間かおもちゃ箱で詰んでしまいます。
ですので、まずはそれを回避する必要がありました。メアリーの大目的は「外に出ること」でした。
「イヴと外に出ること」は中目的。
「ギャリーとイヴと外に出ること」はほぼ諦めていました。ただ、【ある絵画の末路END】やスケッチブックの「びじゅつかん」を見る限り、
ギャリーを積極的に嫌ってはいないようでした。これら諸々を打開する策が「ループ補正」です。
しかし、イヴ主体でループしてしまうと、
ギャリーがメアリーを積極的に助けるよう動く事が難しくなります。152さんの言う通り、ギャリーは「メアリーは仕方がない」位に考えていました。
そこで、まずは「(イヴの為にも)メアリーを助けよう」と思わせる為にイヴからの働き掛けが必要でした。
それがイヴとギャリーの「メアリーに関する会話」です。更に、ループを可能とする為のガジェットが必要でした。
そこで目を付けたのが『魂を啜る群衆』です。更に【イヴってばうっかりさん♪END】は、
イヴは後に「ギャグ補正」を獲得するきっかけに
ギャリーはメアリーと二人で行動を共にする事で、
イヴの為だけでなくメアリーの為に自分の意志で「助けよう」と動くきっかけに、
メアリーはギャリーへの評価を改めるきっかけに必要でした。
今、この周回では、
イヴは中途半端にしか記憶を持っていないので、三人で出る事を当たり前と思っています。
ギャリーは完全に記憶を持っている為、絶対に三人で出るんだと決意しています。
そしてメアリーも、出来れば三人で出たいと思っています。ここまで下準備を整えて、やっとこれからメアリーを救う物語が始まります…。
-
157 : 2014/05/05(月) 19:10:11.64 -
さて、残る絵の具玉は三つだけど、その内二つは『聞き耳』の部屋にからイヴが木のカギを使ってくれないとダメだし。
今行けるのは「アノ部屋」しかないわね…。アタシは『ジャグリング』の絵の向かいにある部屋へ行く。
扉を開けた瞬間溢れ出す熱気。部屋の中は暑いガスが充満していた。すぐそこに紫の絵の具玉が見える
…さて、前までなら人目がなかったから本物のバラを回復させつつ行けたんだけど、
今回はメアリーが見てるからね。どうしましょうか…。「ねえ、ギャリー。ここ危ないよ?」
メアリーが心配そうな顔で聞いてくる。メアリーが心配してくれるなんて…。
ちょっとウルッと来たわ。「だ、大丈夫よ!」
アタシは覚悟を決める。
本物のバラが残り2枚位になっても大丈夫よね!多分…。「ギャリー、ごめんね…」
メアリーが謝ってくる。
「女の子にこんな所行かせられるワケないでしょ?ちょっと待っててね。すぐ行って来るから」
多分、メアリーが謝ってるのはそれだけじゃないでしょうけど…。
アタシが部屋の中に入ろうとしたその時。
「あっ!ギャリー!待って!」
メアリーがアタシにストップをかける。
アタシはメアリーの方を向く。すると、
そこには3体の『赤い目』がいた…。
「な、何なのかしら…」
『赤い目』の一体と目が合う。
すると、その『赤い目』はペコリとお辞儀をしてガスの充満する部屋の中に入って行った。
続く残りの2体。あっけにとられていると、間もなく部屋のガスが止んだ。
紫の絵の具玉を持って出てきた『赤い目』A
赤い傘を持って出てきた『赤い目』B
そして、ガスのスイッチがある奥からひょっこり顔を覗かせて戻ってきた『赤い目』C「きっとギャリーにお礼がしたかったんだね!」
と感心しているメアリー。
アタシは三体の『赤い目』の頭を撫でていった。
「ホントにありがとね。助かったわ」
コクコクと頷いて部屋に戻って行く『赤い目』達。
何だかホントに可愛く見えて来たわ…。 -
160 : 2014/05/05(月) 21:18:23.71 -
「イヴ!傘!傘!」
アリさんが「傘」を連呼する。
「あ、傘ってもしかして…」
私達は『傘をなくした乙女』の絵がある部屋に行く事にした。
「それにしてもこのガスは何なのかしら」
『傘をなくした乙女』の部屋の横には暑いガスが噴出していて通れない通路があった。
不思議に思いつつも部屋に入る。「はい、傘だよ!」
絵に傘を近づけるとスッと絵の中に入っていった。
乙女が傘を差す。すると部屋の中にザーっと雨が降り始めた「雨っ!雨っ!ぼく、アリ!ボク、飴好き!ぼく、雨嫌い!ボク飴っ!雨っ!?あm…」
肩でアリさんがパニック状態になっている。私は急いで部屋から出た。
すると、さっきまであったはずのガスが止み、通路が通れるようになっていた。雨が降って来たからガスも止んだのかな…。何か違う気もするけど…。
次に私達は扉にパスワードが付いている部屋へ行った。
「ミ・ド・リ・の・よ・る、っと」
カシャン。…扉が開いた。
中は小さな小部屋になっていて、いくつかの本棚があった。
右奥の壁にはこれまた小さな額縁が飾ってある。『一つの鍵穴』
私は木のカギを差し込んで回した。
………特に何もない?
私は色のない部屋の様子を見に行くことにした。
-
163 : 2014/05/05(月) 22:14:27.47 -
・Sideイヴ
茶のカギを使って扉を開けると、下りの階段があった。降りてみる。
降りた先は紫の間だった。一つ一つの部屋を見て回る。ある部屋にあった本棚で『ゲルテナ作品集(下)』と言う本を見つけた。
「そう言えば、ずっと前の部屋にも『ゲルテナ』って本があったね」
「ゲルテナ、凄い!ぼくも、凄い!」
「はいはい」
パラパラとページをめくってゆく。
「………あ」
開いたページには…、『メアリー』と言う絵が載っていた。
ザ、ザザ…
頭にノイズが走る。脳裏に溢れかえる、体験した事のない「記憶」。
「…思い出した」
私は、全てを、思い出した。
たまらず部屋から飛び出す。
いない、いない、いないいないいないいないいないっ!
ギャリーとメアリーはどこに行ったの!?
すると、隅の扉からギャリーとメアリーが入って来た。
「あら?…イヴじゃない!」
「わーっ!イヴだぁっ!」
私は二人に近づいた。ギャリーを見上げて言う。
「久しぶり、ギャリー」
ギャリーは少し考えるような素振りを見せた後、微笑んで口元に人差し指を当てた。
やっぱり。ギャリーは全部知ってたんだ。
それにしても、一体扉の向こうで何をしてたんだろう…。
-
164 : 2014/05/05(月) 22:43:06.18 -
ギャリーがメアリーを見て言う。
「ねえメアリー?イヴにも言って大丈夫よね?」
「うん!イヴにも手伝ってほしい!」
笑顔で頷くメアリー。一体何だろう…。
「実はね、メアリーはお父さんを探してるのよ」
「え?」
メアリーのお父さんって、それってつまり…
混乱する私。「お父さんがこの世界にいるかどうか、手掛かりになる物はないか探したいんですって。
もしお父さんだけこんな世界に取り残したままだったら大変じゃない。イヴも手伝ってくれるわよね?」そう言ってメアリーの後ろからウインクするギャリー。
ああ、そうか。私は理解する。「うん良いよ!メアリー、一緒にお父さん探そ?」
私がそう言うと手を握って飛び跳ねるメアリー。
「でね、アタシとメアリーでちょっと前までの部屋を調べて来てたのよ」
そう説明するギャリー。…あれ?
「でも、あのツタはどうしたの?」
「ああ、あれね。我ながら恥ずかしい話なんだけど、実はライター持ってたのよ。それを付けたら燃えて通れるようになってね」
そうだった。ギャリーはライター持ってたんだった…。
「ええーっ!?じゃあ私一人で行く事なかったじゃん!」
「本当にごめんね!イヴ!今度、美味しいお菓子おごってあげるから!」
「ホントに?」
「ええ、ホントよ。もちろん、メアリーも一緒にね?」
ギャリーがメアリーを見る。
「え?私も?…良いの?」
「「もちろんよ!」」
私とギャリーの声が被る。
「…うん、ありがと!」
メアリーが泣いてるような、笑ってるような、不思議な顔で頷いた。
「で、何か手がかりとかはあったの?」
私が聞くと、
「それが今までの部屋にはなくって」
と答えるギャリー。
「…じゃあ、三人そろった事だし!先に行きましょう!」
何か吹っ切れたような変に明るい声でメアリーが拳を突き上げた。
-
172 : 2014/05/06(火) 00:25:32.61 -
私達はいったん、通路を右に入った場所へ行ってアリさんを落ち着かせることにした。
そこにはカラフルな額縁で5枚の絵が飾られていた。
手前から赤い額縁、青い額縁、黄色い奴、紫の奴、緑の奴。「アリさん、落ち着いて。どうしたの?」
私が聞く。
「ぼく、アリ。あいつ、シロアリ。ぼく、あいつ嫌い!」
「…種族の争いって事なのかしら」
ギャリーがしみじみと言った。
「あのシロアリ、帰りたいとか言ってたよね?」
メアリーが言う。そう言えばそんな事を言ってた気がする。
「…あら?紅茶の香りがするわ」
クンクンとギャリーが鼻を利かせる。
「「ホントだ!」」
「紅茶、甘い。ぼく、好き!」
三人と一匹で香りを辿る。奥の方からだ。
香りの元は紫の額縁に入っている紅茶の絵だった。
絵から湯気が立ち上っている。「これはこれで酷いわね…。生殺しじゃない…」
「そうだよ!」
ギャリーとメアリーがうなだれる。
…あれ? -
176 : 2014/05/06(火) 00:49:14.89 -
中は資材置き場の様な部屋だった。
入って右を見てみる。「「「しっぽだ…」」」
そこにはあのヘビの物であろう下半身がニョロンと垂れていた。
「本物かなあ」
メアリーがしっぽを撫でさする。
「ちょっと、メアリー。止めた方が良いよ」
私はメアリーに注意をするも、
「ねえイヴ、これとっても障り心地良いよ!」
とグイグイ引っ張るメアリー。すると、
「あ…」
ズルン!
メアリーが引っ張り過ぎたのか、ヘビの上体が少し部屋の中に入ってきてしまった。
「「………」」
凍り付く私とギャリー。
メアリーも引きつった笑みを浮かべていた。音もなく最速で私とギャリーの陰に隠れるメアリー。
私とギャリーも無音かつ最速でヘビと反対の角へ逃げた。………ピクリとも動かないヘビの体。
「…なんだ、動かないんだ」
私達はホッと一息をついた。
-
180 : 2014/05/06(火) 14:43:33.73 -
ヒュン!ヒュンヒュン! …カンッ!カンカンッ!!
何かが飛んで壁にぶつかっているような音が部屋の奥からしている。
部屋の奥には細い通路が続いていた。通路は進んですぐに右に曲がっている。角を曲がってみた。
「何これ…」
ギャリーが絶句している。
通路は今度は左に曲がっているのだが、その左の壁から三本のナイフが突き抜けて、右の壁に刺さっては消えてゆく…。
そこにあるのは紛れもなない「敵意」や「害意」、「殺意」や「悪意」と言った良くない感情に基づく物だった。
と、メアリーがスタスタ歩いてゆく!?「メアリー!危ないよ!」
私は止めるが、
「大丈夫、大丈夫!二人はちょっと待ってて」
と言って行ってしまう。
私とギャリーはナイフを避けつつ、慌ててメアリーを追いかけて行った。
すると、ふとナイフが飛んでこなくなる。私達は奥にいるメアリーの下へ走って行った。「このバラ踏んづけちゃったらナイフも止まったの…」
メアリーは足元で粉々になっているバラを見る。
「黒いバラね…」
ギャリーが呟く。黒いバラの花言葉って…
「憎しみ…」
-
181 : 2014/05/06(火) 14:45:03.13 -
バラの先では通路が左右に伸びていた。
右側の端にある絵を見る。
『晴天の彼方』
「この絵、好き」
アリさんが言う。
「へえ」
私は続けて「何で?」と聞こうとした。が、
「この絵、いい匂い。甘いの、好き」
とアリさんが続けた。
「甘い香りなんてするかしら?」
ギャリーが絵をクンクンと嗅ぐ。
「特にそんな匂いしないけど…」
メアリーが首を傾げる。私にも特に匂いは感じられなかった。
左端へ行ってみる。そこには壁にピン止めされた蝶がいた。
ピク、ピクッ!
蝶がわずかに動く。
「この蝶、生きてるわ…」
ギャリーが驚く。
「可哀そう」
メアリーはそう言うと蝶を止めているピンをそっと抜いた。
フワッと羽ばたき宙に浮く蝶。
蝶はメアリーの頭を二周程回ってから通路を戻り始めた。
-
183 : 2014/05/06(火) 16:03:02.05 -
私は蝶の下にあったプレートを見る。そこには、
『捕らわれの炎』
とあった。
蝶はヒラヒラと飛んでゆく。
やがて、部屋の扉の前で止まった。「もしかして、廊下に出たいのかな」
扉を開ける。…ガシャンッ!
何故か右横の壁から音がした。振り向く私。
肩にはアリさん。隣にはメアリーとギャリー。そして後ろには『失敗作』。メアリーとギャリーもつられて振り向き、固まる。
顔が黒く塗りつぶされた男(?)がヨタヨタとゾンビみたいに寄って来る…。
「「「うわわわわわわわわっ!!」」」
慌てて部屋から飛び出す私達。扉を閉める。
「びっくりした…」
一息つく私。
「メアリー、あれ、お父さんなの?」
ギャリーがメアリーに聞く。
「絶対違う!あんなのパパじゃない!」
首を振って強く否定するメアリー。
私も、あんなパパは嫌だ。「あ、そう言えば蝶は?」
辺りを見る。蝶は私達が来た道を戻っていた。
「あ、待ってよぉ!」
トテトテと追いかけてゆくメアリー。「「可愛い…」」
メアリーの後姿を見て、私とギャリーの呟きが重なった。
-
187 : 2014/05/06(火) 17:31:49.01 -
「5ケタなの?でもさっき見つけた数字は6つだったよね?」
パネルを見てメアリーがギャリーに聞く。
「ええ。橙の8、赤の7、黄色の3、青の2、緑の1、紫の9。6つだったわ」
「と言う事は、一つはダミー?」
「多分そうね…。どれがダミーかしら…」
私とギャリーが首を捻っていると、メアリーが突然言った。
「ダミーは橙の8よ!」
「え?何で?」
私が聞くとメアリーが話す。
「まず。7と2と3は絶対いるでしょ?」
「メアリー、何でそう言えるのよ?」
ギャリーも聞くと、
「だって私達の色じゃない!」
そう断言して得意げに続けるメアリー。
「それで、最初ギャリーとイヴは二人だったから紫の9もいるでしょ?
次は私とギャリーが一緒だったから緑の1もいるでしょ?
だから、答えは赤・青・黄・紫・緑で、72391よ!」メアリーは「一緒だったから色も混ぜる」と考えているみたいだ…。
ピッピッピっとパネルに数字をいれてゆくメアリー。
-
192 : 2014/05/06(火) 19:15:26.88 -
大きな彫刻作品が三つ飾ってある。
その後ろには何も入っていない額縁があった。
一つづつ見て回る。『弾力のある石』
ギャリー「ちょっと触ってみたい気もするわね…」
メアリー「ねー二人とも!これプニプニしてて気持ちいいよ!」
…あ、ホントだ。柔らかい。『死後の逢瀬』
ギャリー「何でゲルテナはこれを作ったのかしら」
メアリー「………」
私は赤いバラの花言葉を思い出した。『呑み込める夜』
ギャリー「この空みたいなのどうやって浮いてるのかしら…」
メアリー「おいしそうだよね」
私「ねー」壁一面に掛かっている大きなカラの額縁を見る。
「これも真っ白なプレート?」
額縁の下のプレートをギャリーが見て言う。
「何ていうか、ゲルテナの感性には驚かされるわ…」
辺りの壁からいくつかの部屋に続いている様だった。
適当に見て回ろうとする。すると、
「これ、キャンバスの一部じゃない?」
メアリーが指差す方のは『呑み込める夜』と『死後の逢瀬』の間。
そこに大き目な正方形のカケラが落ちていた。手に取ってみる。すると、
「あ、消えた…」
カケラはスッと消えてしまった。
「これ、絵の具玉と同じだわ…」
後ろでギャリーが呟く。私は後ろのギャリーを見上げた。すると、
「ギャリー、メアリー!後ろ見て!」
2人が後ろにある大きな額縁を見る。
「あら!」
「おおっ!」
さっきまではカラだった額縁の右上に、私が拾ったカケラがくっついていた。
「ってことはやっぱり、この周りにある部屋から絵のカケラを探し出さなくちゃいけないって事ね」
「よーし、探そー!」
頷くギャリーと拳を突き上げるメアリー。
いくつか部屋があるみたい。中には入口にプレートが掛かってる部屋もあるけど、
どこから見ようか…。安価下1
1、『習作・単眼の微笑み』の部屋
2、『永遠の通路』の部屋
3、大きな額縁の左の扉
4、大きな額縁の右の扉
5、右奥の上り階段
6、『呑み込める夜』の向かいの部屋
7、『弾力のある石』の向かいの部屋
-
197 : 2014/05/08(木) 00:15:05.42 -
メアリーと手分けして(競争して)、見て回っていると部屋の隅に何かが落ちていた。
「あ、絵のカケラだ」
手にとった瞬間にスッ消えるカケラ。
私の言葉に反応してこっちに来るメアリー。
「え?じゃあこれでこの部屋はおしまい?」目を丸くしてメアリーが聞く。ギャリーも首を傾げていた。
「変ねえ…。絶対ホンモノの『単眼の微笑み』を見つけて絵のカケラをゲットって言う流れだと思ったのに…」
「「うんうん!」」
「一応、ホンモノも見つけましょ。何かあるかもしれないし」
「わかった!」
ギャリーの言葉に従う私。「わかった、けど、どこまで見たかわかんなくなっちゃった…」
どうやら自分が最後に見ていた所を見失ったみたい…。
「えーと…えーと…」と確認をし直しているメアリー。すると、その頭上に付いていた『捕らわれの蝶』がスッと舞い上がった。
一番上段にある『単眼の微笑み』の一つをその羽の光で照らしだす。何だろう…、あ。
「あの『単眼の微笑み』、動いてる…」
私が指を指して二人にも伝える。
「ホントだわ」
ギャリーが見上げる。
「“ホンモノ”は、あなたね!」
メアリーがビシッと指差すと、『単眼の微笑み(真)』の額縁と壁の間からコトリと絵のカケラが落ちてきた。
「メアリーの蝶が見つけたからメアリーの勝ち?」
と私。「でも気づいて指差したのはイヴじゃん」
とメアリー。「「ねえ、ギャリー!どっち!?」」
2人でギャリーに詰め寄った。
…まるでこれじゃお母さんが見てるドラマみたいね。少し考えるギャリー。そして判決は、
「最後に決めたのもメアリーだったから2対1でメアリーの勝ちね」
「やったーっ!!」
クルクル回って喜ぶメアリー。
「よーし!これでこの部屋はクリアね!次いこーっ!」
「わわっ!」
「メアリー、そんなにあせらなくてもっ!」メアリーが右手で私を、左手でギャリーを引っ張って進んでゆく。
一体メアリーは、次にどの部屋へ行くつもりなんだろう…。
安価下1
1、『永遠の通路』の部屋
2、大きな額縁の左の扉
3、大きな額縁の右の扉
4、右奥の上り階段
5、『呑み込める夜』の向かいの部屋
6、『弾力のある石』の向かいの部屋
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200 : 2014/05/08(木) 01:33:45.99 -
メアリーは『習作・単眼の微笑み』の部屋を出ると、
そのまま右に曲がって『弾力のある石』の向かいの部屋へと私達を引っ張って行った。「さーて!次の仕掛け掛かってこーい!…って、え?」
私達の手を握ったまま固まるメアリー。
私はメアリーの横に移動した。
メアリーの後頭部で見えなかった部屋の様子を見て、私も固まる。イー!イーイー!
イーッ!
イーイーイーッ!!沢山の黒い棒人間さんが部屋中を走り回っていた。
中に一匹(?)だけ、赤い棒人間さんも混じってるけど…。「みんな黒いのに、1匹だけはバラよりも真っ赤。走るのが誰よりも速かった」
ギャリーが何か教科書で聞いた事がある様な台詞を言う。
「イヴ、ギャリー、これ!」
メアリーがプレートを扉の横で見つける。
“赤に触れずに黒を追え”
「なるほどね」
ギャリーが両手をほぐし始める。「今度は三人で勝負よ」
メアリーが屈身を始める。私も軽く首を回した。
「「「かかれーっ!」」」
-
201 : 2014/05/08(木) 01:35:05.72 -
…
………残りの棒人間さん(黒)は、後1匹。
「あの棒人間、小鳥に乗って優雅に逃走してるわね」
スイー…スイー…
「何かこっち見て笑ってる気がする。棒人間に顔なんて無いけど」
「メアリー。挟み打ちしましょ」
「わかった!イヴはあっちからね」
「「せーのっ!」」
スイー…
メアリーと私が挟み打ちを仕掛けるが、軽く避けて逃げる棒人間オンザバードさん。
しかし、避けた先には丁度ギャリーがいた。
「捕まえた!」
結果、私5匹。メアリー5匹。ギャリー7匹と1羽。
「何か、小鳥に私懐かれたみたい…」
「良いじゃない、可愛くて!」
と私が言うとメアリーが、
「イヴはアリさんで、私が蝶。ギャリーが鳥ね!」
と言った。…私だけ何か地味だなぁ。
アリさんを見る。「ぼく、アリ。ぼく、カワイイ?」
「はいはい…」
-
205 : 2014/05/08(木) 17:45:57.34 -
私は最初この部屋を見て回った時から気になってた場所を見る。
『永遠の通路』
部屋に入って右にあるプレートだ。
「イヴもあれ気になる?」
とメアリー。
「うん。何か行ってみたいよね」
「じゃあ、次はあそこに行きましょうか」
ギャリーが中に入る。私とメアリーも後に続いた。
中は細長い通路になっていた。が、
「なーんだ…。奥が見えてるじゃん」
メアリーががっかりする。
確かに長い通路ではあったが、突き当りは普通に見えていた。
三人で歩き出す。トコトコトコトコ…トコトコトコトコ………トコトコトコトコトコトコ………
「おかしいね」
「うん」
「何なのかしら、これ」歩いても歩いても先が縮まらない。
突き当りの壁の見える大きさが一向に変わらない。
後ろを見る。「「「…………」」」
目の前に入って来た入口があった。
「私達、歩いてたよね」
メアリーに聞く。頷くメアリー。
「『永遠の通路』ってこういう事なのね…」
ギャリーが壁にもたれて呟いた。
-
211 : 2014/05/08(木) 20:23:58.68 -
ギャリーが『サボテンの園』に足を踏み入れると、
スイー…。
私の隣で何かが動き出した。
「「何、コレ?」」
カラフルでグチャグチャな「何か」がフワフワと移動し、ギャリーへ向かい始めた。
「ギャリー!何か行ったよ!ホントに気を付けて!」
メアリーの言葉に振り返るギャリー。
「何コレっ!?」
私達と同じ事言ってる。
私の隣にあった今は真っ白の絵のプレートを見る。
『色彩の暴力』
「ギャリー!それ『色彩の暴力』って言うんだって!」
私は大きな声でギャリーに伝えた。
「触れたらダメそうな名前だよね」
とメアリー。「うん。それに結構スピード速いよね」
あ、ギャリーが絵のカケラを一つ拾った。
でも、「ギャリー!『暴力さん』が近づいてるよ!」
『色彩の暴力』はギャリーが絵のカケラを拾う隙にその距離を縮めていた。
それにしてもメアリー、『暴力さん』って…。「いやーーーっ!!」
走るギャリー。
何とか一番奥に行ったけど、ギャリー、壁際に追いつめられてない?
と、ギャリーを追いつめていた『色彩の暴力』がフッと掻き消えた。私は横にある真っ白になった絵を見る。
真っ白なままだ。どうやら『暴力さん』は消えてしまったみたい。ギャリーがサボテンに触れないよう気を付けながら戻ってくる。
「一番奥に黒いバラがあったのよ。サボテンで自分を守るみたいに。それ砕いたらあの絵も消えたわ。さ、次行きましょ」
部屋から出るギャリーとメアリー。
私は最後に『サボテンの園』をチラリと見た。
ギャリーの“サボテンで自分を守るみたいに”と言う言葉がやけに引っ掛かった。 -
214 : 2014/05/08(木) 21:23:08.18 -
「んー、階段の方行ってみない?」
ギャリーがそう言うので3人で階段を昇ってみた。
「「「………」」」
階段を昇ると、床いっぱいに広がる穴と壁に掛かる『失敗作』があった。
そして、穴と『失敗作』の間に置いてある絵のカケラ。「罠だね」
「どう見ても罠だよね」お互いを見て苦笑いする私とメアリー。
「いいえ、ゲルテナの事だもの。罠と見せかけて実は…何て事もあり得るわよ?」
とギャリー。
「どうしようか…」
…
………結局、
「イヴとメアリーが盾になって、アタシがカケラを拾うのはどう?」
と言うギャリーの提案にのってみる事になった。「イヴ、メアリー、ちゃんと守ってよね?」
そーっとかがんで絵のカケラを拾うギャリー。
私とメアリーは『失敗作』を見ている為、ギャリーに背中を向けている。「大丈夫?どう、拾った?」
メアリーが首だけをギャリーに向ける。
「ええ。拾ったわ」
私が続けて、「じゃあ、慎重に階段まで戻って」と言おうとしたその時っ!
ガシャン!
後ろの壁から嫌な音がした。
飛び出してきた『失敗作』振り向きざまによろけるメアリー。
もつれる私。
穴に落ちてゆく、ギャリー。
「「…あ」」
『失敗作』もギャリーを追って穴へと落ちて行った。
「「ギャリーーーーーーッ!!!」」
穴に向かって叫ぶ私とメアリー。
ギャリー…
ギャリー…
ギャリー…が底の見えない穴に空しく木霊するだけだった。
-
218 : 2014/05/09(金) 00:07:38.73 -
部屋を出て、額縁の左にある部屋へ向かう。
床のシミはもう殆ど黒に近い青になって部屋全体を覆っていた。「あと、2枚…」
メアリーが殆どの絵が埋まった額縁を見て呟く。
残っている空白は左上の2枚分だけだった。絵の内容もほぼ見えてきている。
これは、キャンバスに向いている人の後姿だ。それが何を意味するのか、3人とも察しがついていた。
黙って額縁を見上げる。「………」
「………」
「…さ!イヴ、ギャリー!最後の部屋に行きましょ!」
メアリーが空回りした明るい声を出して前を歩く。
誰も、何も言わなかった。まだ、「それ」に触れる時じゃないんだ…。「ここが最後の部屋ね!」
メアリーがバーンと扉をあけ放つ。
「何か久しぶりに普通の部屋を見た気がするわ」
ギャリーがほっと一息ついた。
中は本棚が並ぶ普通の小部屋だった。
「な~んだ。最後の部屋だから、もっと派手なのを期待してたのに。…つまんないの!」
メアリーがむくれる。「でもここに残りの2枚があるんだよね?」
私が聞くと、
「そっか!よーし探すぞー!」
とメアリーが「元気よく」こぶしを突き上げた。
-
220 : 2014/05/09(金) 00:10:59.58 -
メアリーの本棚にも他には特に何もなく、私達はギャリーの方へと行った。
「ギャリー!」
「ねえねえギャリーっ!」
「あら、どうしたの?」
「イヴがねー、カケラを一つ見つけたんだよ!」
「あら、凄いじゃない」
「メアリーの本棚も探したんだけど、なかったからこっちに来たの」
「そう、アタシは今これを見てた所よ」
ギャリーが私とメアリーに見せたのは『ゲルテナ作品集 目』と言うものだった。
「“め”?」
「そう、ゲルテナの作品の中には“目”をモチーフにした物が結構あるみたい」
「なんでだろう?」
私の疑問にギャリーが答えてくれる。
「目は、人の心を映し出す鏡みたいな物だからね。ゲルテナは色んな目を描く事で人そのものを描きたかったのかもしれないわ」
「これ、さっきの部屋のだ」
メアリーが見つけたのは『単眼の微笑み』だった。
「私、これ見たよ!」
私が見つけたのは、スカート見たさに橋になってくれた「おめめさん」、『寡黙な視線』だった。
「アタシはこれを絵の具玉取る時に見たわ」
ギャリーも『悟り』と言う絵を見て感慨に浸っている。
今まで、色々な事があったなあ…。
今までのループの事、この世界での沢山の「新しい」事。
沢山沢山…。
-
222 : 2014/05/09(金) 01:04:27.97 -
「…ヴ、ねえイヴ!」
メアリーが私の肩を叩く。
「なに?」
「見て見て!本棚にあったの!」
メアリーが見せてきたのは『秘密の部屋の入り方』と言う本だった。
「良い香り…」
この本からは、何だか不思議な良い香りがした「何か、見つかったの?」
ギャリーも来て3人で読んで見る。
“入り方…どこかの本棚の裏を見てごらん”
ギャリーが右の本棚の裏で文字を見つける。
「“次は、大きな本棚の後ろの隙間を覗いてごらん”ってあるわ」
メアリーが奥の本棚と壁の隙間から小さな紙を見つける。
「“今度はキャンバスを見てごらん”だって」
本を置いてキャンバスを探して見る。
キャンバス、キャンバス…キャンバスは入り口の近くにあった。
文字が書いてある。「“目を瞑って3秒数えてごらん。これで準備は整うはず”」
「「「1、2、3」」」
3人で目を瞑ってみる。目を開けると、
「あれ?あんなのなかったよね?」
部屋の真ん中に紐が垂れていた。
「あれ、引っ張ってみる?」
「引っ張るしかないでしょ?」
「そうよねえ…」
三人で紐を持って引っ張ろうとする。しかし、
「あ、ちょっと待って!アリさん!」
アリさんが本のページの上をウロウロとしていた。
「アリさん、早く!」
アリさんをつまんで肩にのせる。
「じゃあ、せーので引っ張るよ?」
「「「せーのっ!」」」
紐を引っ張った瞬間、カチン!と音がして部屋が暗転した。
-
223 : 2014/05/09(金) 01:06:41.74 -
…
……
さっきまでの小部屋より、更に二回りほど小さな空間に私達はいた。
目の前には小さな額縁の右から左へ長い絵がスクロールで流れている。
下についているプレートには『○匹のカラスと5□の□□□』
とあった。そして左には数字のパネル。右には文字のパネル。
…
イヴ「6匹!」
ギャリー「4匹!」
メアリー「5匹!」
「「「???」」」………
イヴ「リンゴ!」
ギャリー「なまず!」
メアリー「ほし!」
「「「???」」」………
「いい?確認するわよ?カラスは3匹、5つあったのはサカナで良いわよね?」
ギャリーが私とメアリーに念押しをする。
「うん。大丈夫だと思うよ」
「大丈夫!やっちゃって!」ギャリーが数字のパネルに3と入れる。
ピンポン!
小さく音が鳴った。
続いて文字パネルの方にサカナと入れる。
再びなる正解音。3人でパネルを見ると
『3匹のカラスと5匹のサカナ』
とタイトルが付いていた。
出て来る絵のカケラ。「これが、最後の1枚…」
メアリーが肩を強張らせる。
「最後はみんなで、ね?」
私がメアリーとギャリーを見て手を出す。
3人でそっと最後のカケラに触れた。
今まで通り、フッと消えるカケラ。これで部屋に戻れば、あの額縁の絵が完成している…。
-
224 : 2014/05/09(金) 01:10:48.92 -
「ところでさ」
ギャリーが私とメアリーに向いて言う。
「どうやってこの秘密の部屋から出れば良いのかしら?」
「「え?」」
秘密の部屋には窓も扉も何もない。じゃあ、一体どうやって出れば良いの…。
「て、てっきり、正解を出したら出口も出るんだと思ってたけど」
メアリーが口の端を引きつらせる。
だが、出口は一向に姿を現さない。「どうしよう?」
「え?もしかしてアタシ達、このまんま?」
「そんな…」
動揺する私達。するとアリさんが、
「右下の壁、見る!」
と言い出した。
「右下の壁?」
「正面がこの絵だとすると…ここかな?あ、何かあるよ!」
メアリーが何かを見つけた。
「スイッチだ!」
「これを押せばいいのかしら?」
押して見る。
カチッ!
再び部屋が暗転し、あっという間に元の小部屋に戻っていた。
-
225 : 2014/05/09(金) 01:11:42.33 -
「いや…焦ったわ。出れなくなったかと思った」
ギャリーがホッと一息つく。
「アリさんがいなければ、私達あそこに閉じ込められてたわね」
とメアリー。
「何でアリさんは出口のスイッチを知ってたの?」
私が聞くとアリさんは、
「ぼく、賢い。ぼく、これ読んだ」
と言って広がっている本のページの上を歩いた。
秘密の部屋に行く前にアリさんがウロウロしていた所だ。
そう言えば前に本が好きみたいな事言ってたな…。“秘密の部屋から戻って来るには…その部屋の絵のタイトルを完成させた後に、右下の壁を調べてごらん。
戻り方を誤ると、二度と部屋から出られなくなるので注意して”「「「………」」」
冷たい物が背筋に走った。
最後の一文が頭の中でリフレインする。“二度と部屋から出られなくなるので注意して”
本当にアリさんがいて助かった。
思えば、今回のこのゲルテナの世界で一番の功労者はこのアリさんなのかもしれない。
そう、穴の対岸に投げ飛ばしたあの時からずっと…。「ま、まあ無事戻って来れたし、結果オーライよね?」
ギャリーが取り繕う。
「そ、そうそう、アリさんのおかげよね…」
「「「ありがとうございましたっ!!」」」
世界中を探しても、アリに平伏した事のある人間は私達だけだろうな。
-
227 : 2014/05/09(金) 01:20:58.26 -
…
……
私達3人はまだ小部屋にいた。
なんてことのない話をして、ひとしきり笑って、かと思えば静かになって。みんな分かってるんだ。
ここを出たら、
もう最後なんだって。
だから、
この部屋にずっといたいんだ。
外の部屋がどうなってるか。
床のシミはどうなってるんだろう?
額縁に完成した絵は、どうなっているんだろう?
これから、私達はどうなるんだろう?
みんな気になってるんだ。
だけど。
気にしたくないから…
だけど!
「「「行かなきゃ」」」
「「ギャリー…、
「「メアリー…
「「イヴ…
お互いがお互いの“目”を見る。
互いが互いに合わせ鏡。
きっと、おんなじ物が写ってる…。
3人一緒に立って、
私達は小部屋の外に出た。
-
230 : 2014/05/10(土) 01:49:14.72 -
・Sideメアリー
ずっと、パパに会いたかった。
きっと、外にいるんだと思った。
だから、外に出たかった。外は楽しそうだった。
いつも見てるだけだった。
うらやましかった。
一緒に遊びたかった。とても可愛い女の子を見つけた。
友達になりたかった。
でも、私は「むこう」にはいけない。
だから、「こっち」に呼んだ。でも、その前に誰かを呼ばなきゃいけなかった。
じゃないと、私が外に出れないから。
だから、もう1人呼んだ。始め私は、ギャリーを「代わり」にしてイヴと2人で外に出ようと思ってた。
でも、私の中の「何か」がおかしかった。イヴを呼ぶ時、バラへ案内した時、クレヨンで落書きしようとした時、
何度も何度も、既視感のような物を感じた。
何だか、自分自身に「こうしちゃいけない!」と言われている様な気がした。イヴとギャリーと出会って、3人(と1匹)で『ミルクパズル』に絵を描いて、
…幸せだった。
『嫉妬深き花』で分断された時、私はギャリーと一緒になった。
本当はイヴと二人になりたかった。
でも、ギャリーと話して「3人で出よう」って言葉を聞いて、嬉しかった。
一緒に部屋を回って、楽しかった。だから、私は決めた。
ギャリーも友達だ。
ギャリーは私をどう思ってるか分からないけど、でも友達だ。だから、現実の世界に行くのは、戻るのは、イヴとギャリーだって。
-
231 : 2014/05/10(土) 01:51:05.63 -
でも、もうちょっと一緒に居たかった。
だから、私はギャリーに「パパを探して」って無茶な事を言った。あの美術館は私の世界。
あそこにパパの手掛かりなんてない事くらい、
私が一番よく知っている。でも、
もうちょっとギャリーと、
そしてイヴと一緒にいたかったから。
私の最後のワガママ。その、はずだった。
手掛かりなんて当然なくて、
2人を『絵空事の世界』に連れて行こうとした時、
そこには、私の知らない世界があった。
きっと、神様がくれたボーナスステージだと思った。
もうちょっとだけ、いいよね?
私は、イヴとギャリーと初めての世界を楽しんだ。
パパの手掛かりもこの見知らぬ世界で本当に見つかった。
まるで、夢のようだった。
イヴとたくさん遊んで、たくさん笑った。
ギャリーが穴に落ちて行った時は本当に悲しかった。
失うって事はこんなに辛い事なんだって、初めて知った。
ギャリーが無事で本当に良かったって、自然にそう思えている自分に驚いた。でも、この世界ももうおしまい。
イヴとギャリーに、ぜんぶ話さなきゃ。
私の事を、全部。
-
232 : 2014/05/10(土) 01:54:02.46 -
…
……「ごめんね、2人とも。ずっと言えなかったんだけど、私のパパは、ゲルテナなの」
2人の目をしっかり見て、なるべく冷静に話す。
「私もね、絵なの。ゲルテナの遺作『メアリー』。それが、私なの。ずっと騙してて、ごめんね」
絶対に嫌われる。でも、騙してたのは、悪いのは、私だから。しょうがないよね。
ギャリーが口を開いた。
「知ってたわよ」
………え?今、何て?
「アタシもイヴも、メアリーが本当は絵だって事、知ってたのよ」
続けてイヴも私に言う。
「私達も、メアリーに話してない事、いっぱいあるの。聞いてくれる?」
それから2人が私に話してくれた事は、信じがたい事ばかりだった。
私達が、何度も何度もこの世界をやり直していただなんて。
『魂を啜る群集』は他の絵とは明らかに違う雰囲気を持ってたから遠ざけてたんだけど、
まさかそんな力があったなんてね…。イヴは泣きながら私に謝ってくれた。
「私はメアリーを見捨てた」って。
私だってギャリーを見捨ててた筈なのに。みんなお互い様ねってギャリーは笑ってくれた。
やっぱりギャリーは優しい。「イヴ、ギャリー。私はもう大丈夫よ」
「でも…」
イヴが反論しようとする。
「私はもう充分に楽しんだわ。だから、笑ってお別れさせて。ね?」
「でも、アタシ達はメアリーの願いを叶えれなかったわ」
「もう、外に出れなくてもいいの。友達も出来た。パパの手掛かりも見つかった。充分よ」
黙って私を見る2人。
「ギャリーとイヴが何度もやり直してくれたおかげで、こんなに楽しい思いができたわ。ありがとう。だから…だから……っ」
ダメだ。もう、がまん、できない…。
「だって…「代わり」がいなきゃっ!私はこの世界から出れない!でも、誰も「代わり」になんてしたくないっ!
これ以上っ!望む事なんて出来ないの!」目から熱い物が零れ落ちた。たくさん。たくさん……。
「もっと一緒にいたいよおっ!イヴと遊びたいっ!ギャリーと話したいっ!3人でお菓子食べたいっ!
雪も見たいし、海も見たいし…もっといっぱい色んな事がしたいよ!でも、でもっ!!」でも、でも…
膝から力が抜ける。2人の前で私は崩れ落ちた。
後ろから肩を叩かれる。
でも変だ。イヴもギャリーも私の前にいる筈なのに…。
後ろを向いた。
そこには『失敗作』がいた。
-
236 : 2014/05/13(火) 20:20:16.67 -
絵をくぐると、そこには黒い大きなベッドが置いてあった。
私達に背中を向けて、そのベッドを触っている『失敗作』。
『失敗作』がこっちを向いた。…え?顔を塗りつぶしていたものがキレイに取れている。
「………来たのか?」
そこに立っていたのは、パパだった。
「…パパ?」
私は信じられずに思わず聞いてしまう。
パパは私を見て、少し考る風にしてから、「…そうか、キミは『メアリー』か」
パパはイヴとギャリーを見て、「この人たちは?」と聞いた。
私は話す。ここまであった、楽しかった事、嬉しかった事、幸せだった事、
悲しかった事、辛かった事、嫌だった事、全部。…全部。パパは目を細めて、私の言葉一つ一つに頷いてくれた。
一通り話した所でギャリーがパパに尋ねる。「アナタは、ゲルテナですね?」
頷くパパ。当然よ。私がパパを見間違う訳がない。
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237 : 2014/05/13(火) 20:21:42.36 -
・Sideゲルテナ
私は芸術家だ。
己の魂を削り、作品を作る。世の者達は私を指して天才だ、いや鬼才だと持て囃すが、
そんなものは関係ない。
私は、私が作りたいものを作る。
ただそれだけだ。しかし、世の中は私を孤独にはさせてくれなかった。
私が私である為に、作品を作れば作る程、
私は私でなくなっていった。取材だなんだと押し寄せる馬鹿共。
作品に価格を付ける下種共。
地位や名声、そんなものに釣られて添い寄って来る屑共。そんな者達に囲まれる生活は苦痛の一言だった。
ある日、息子の為に描いた『サーカス』に値段が付けられた。
思い出も、団欒も、私が残したい物は全て「金」に変わってしまう。それが決定打となり、私の中に、狂気が生まれた。
私の「狂気」を宿した作品の内のいくつかは、それまでの作品達を呑み込んで、
やがて一つの世界を創り出した。小さな世界だ。
大部屋とそこから続くいくつかの小部屋。
ただそれだけ。だが、こここそが私の世界であり、私その物だったのだ。
「あの娘」が来るまでは。
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238 : 2014/05/13(火) 20:22:36.52 -
私が見つけた時、「彼女」は床に倒れていた。
散りかけた黄色いバラを持って。
聞けば美術館にいた筈が、迷い込んでしまったそうだ。
私の世界に勝手に入ったのだ。
襲われても文句は言えまい。始め私はその程度に思い、何も言わなかった。
だが、彼女は純粋だった。
一つ一つの作品を、私を、知ろうとしてくれていた。
何が彼女をそうさせているのかを聞くと、
「楽しい事だって、いっぱいある筈だから」とそう言った。
私は「彼女」を出口まで案内した。
私は、彼女を見つける直前まで、
この世界で残っている自らの魂全てを使って、己自身を一つの作品にするつもりだった。
そうする事で、私はやっと私になれるのだ。その為に、この世界に来ていた、筈だったのだ。
だが「彼女」を見て、やるべき事が一つ増えた。
「彼女」を見送ってから私は、
恐らく外の世界では最後の作品になるだろう絵を描いた。
私にとっての「希望」の象徴としての一枚、『メアリー』を。
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244 : 2014/05/13(火) 22:54:05.91 -
考えて、考えて、考えて。私は口を開いた。
「私は…パパと一緒にいるわ」
後ろで、はっと息を飲む音が聞こえる。
後ろを振り向いて私は2人に言った。「イヴ、ギャリー。…本当に、ありがとねっ!」
パパが私に、もう一度尋ねる。
「本当に、それでいいのかい?」
「……うん!ずっと、パパと一緒に居たかったから。だから、いいの!」
目からポロポロと落ちる涙。
嬉しさと、悲しさがないまぜになった不思議な気持ち。「…メアリーが、そう言うなら、しょうがないわね」
ギャリーが涙を拭いながら笑って言う。「メアリー…。メアリーっ!」
イヴが駆け寄ってきて、私の体を強く抱きしめる。ギャリーもやって来て、三人で抱き合って、ワンワン泣いた。
「良い「友達」じゃないか」
しばらく泣いて、ようやくお互いを離して立ち上がった所で、
パパは微笑んでそう言った。「イヴちゃん、ギャリーさん。ここまで『メアリー』を連れて来てくれて、本当にありがとう。イヴちゃんの「情熱」と、そしてギャリーさんの「奇跡」がなければ、こうはならなかっただろう。本当に、ありがとう」
ギャリーがパパに尋ねる。
「本当に、もう元の世界には戻らない気ですか?」
「ああ。…絶望したから、だけじゃないよ。今はね。出口はこの奥だ。さあ、行きなさい」
イヴとギャリーは『最後の舞台』に、私とパパに背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
奥の出口を2人が出る瞬間、私は大声で2人へ伝える。
「イヴ、ギャリー!大好きだよっ!だから、…またねっ!!」
手を大きく振って答える2人。
そして2人の姿は、見えなくなった。
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245 : 2014/05/13(火) 22:56:09.01 -
私とギャリーは『絵空事の世界』を通って元の世界へと戻って来た。
「メアリーは、あれで良かったんだよね?」
私の問いかけに。
「ええ。とても、幸せそうだったもの」
とギャリー。
「「はあ………」」
2人して大きな溜め息をつく。
「うう…、メアリー……」
「メアリー…」
まだまだ未練たっぷりの私達だった。
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246 : 2014/05/13(火) 22:57:17.88 -
2人で一階へ降りると館内が少しざわついていた。
「お客様!大変申し訳ありません!道をお開け下さい!」
美術館のお姉さんがアナウンスをしている。
「なんだろうね?」
「なんでしょう?行ってみましょうか?」
『深海の世』と『精神の具現化』の間にある何も飾られていなかった廊下、
そこに大きな絵が運び込まれていた。「…ギャリー。これって!」
それは、大人の人(多分男の人だ)の膝に嬉しそうに座っている女の子の絵だった。
大人の人は首から下の部分しか描かれていないけれど。
これは、きっと…。ギャリーが解説を読む。
“ゲルテナの遺作、ついに公開。
架空の少女だが、実在しているかの様に見る者に錯覚を与える。
描かれている三色のバラも興味深い”続きの文を2人で読む。
「赤のバラは、愛情を、」
「青のバラは奇跡を表しているが、」「この黄色はただの黄色ではなく、イエロードットのバラである」
「イエロードットのバラの花言葉は」「「君を忘れない…」」
「ふふ。こんな笑顔で言われたら。未練も吹き飛んじゃうわね」
「私達も、忘れないよ。絶対に」「イヴー、そろそろ出るわよ?」
お母さんが私を見つけて呼ぶ。
「じゃあギャリー、またね!」
「ええ。また今度ね」
「お菓子おごるって約束、忘れないでよ?」
「あら、覚えてたの?」
「もちろん!」
「ふふっ、食べに行きましょうね?」
「うん!」私はもう一度、振り返って絵を見る。
『とある親子の肖像』
プレートにはそう書かれていた。
Happy End
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254 : 2014/05/14(水) 00:02:50.42 -
1の解釈がどれも秀逸で素晴らしい
これはほんの一部だけど、「単眼の微笑み」のとことか上手かった
そんな1の残りの選択肢も見られるとか幸せすぎる -
256 : 2014/05/14(水) 00:46:29.23 -
もう一つのEND(240<より分岐)
考えて、考えて、考えて。私は口を開いた。
「私は…、2人と一緒にいたい。外に出たいわ」
パパが微笑む。
「ああ。そうしなさい。『メアリー』、君は私にとっての希望そのものだ。
外の世界へ行って、もっともっと、輝いてきなさい」パパがイヴとギャリーに向いて言う。
「イヴちゃん、ギャリーさん。ここまで『メアリー』を連れて来てくれて、本当にありがとう。イヴちゃんの「情熱」と、そしてギャリーさんの「奇跡」のおかげで、私は本当に幸せだ。本当に、ありがとう。そして『メアリー』を、「彼女」をよろしくお願いします」
ギャリーがパパに尋ねる。
「本当に、もう元の世界には戻らない気ですか?」
「ああ。…絶望したから、だけじゃないよ。今はね。出口はこの奥だ。さあ、行きなさい」
「メアリー。ゲルテナさんに何も言わなくていいの?」
イヴが私に聞く。私はパパを見た。
「パパ…」
ポロポロと涙が溢れ出てくる。
「パパ…パパっ!」
私はパパを強く強く抱きしめた。
パパが頭を撫でてくれる。とても大きくて、優しい手だ。
パパの服からは絵の具とか石膏とかの色々な匂いがした。
とても落ち着く優しい匂いだ。ずいぶん長い事、抱きしめていた気がする。
パパも、イヴもギャリーも、私の気が済むまで、笑って待っていてくれていた。
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257 : 2014/05/14(水) 00:48:37.68 -
「パパ。本当にありがとう。行ってくるね!」
私はパパに大きく手を振って、イヴとギャリーと共に奥の出口へと向かった。
…
……
私達は『絵空事の世界』を通って元の世界へと戻って来た。だが、
「あれ、メアリーは?」
私の問いかけにギャリーも辺りを見回す。
「…嘘、でしょ?」
2階を探し回るが、メアリーはどこにも見つからなかった。
2人で一階へ降りる。すると、館内は少しざわついていた。
「お客様!大変申し訳ありません!道をお開け下さい!」
美術館のお姉さんがアナウンスをしている。
メアリーに関する何かが分かるかもしれない。私とギャリーはお姉さんの下へ行った。
お姉さんが私とギャリーを見る。
「…あら?」
「「…え?」」
キレイな金髪のお姉さんが私とギャリーを見て微笑む。
「…ずっと、ずっと待ってたんだからね!」目の前にいるお姉さんは、メアリーだった。
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258 : 2014/05/14(水) 00:51:11.77 -
今、私とギャリーとメアリーは喫茶店にいる。
私達はあの後、一旦別れて後日改めて会う事にしたのだ。「で、メアリー…さん?一体どういう事なのかしら?」
「メアリーで良いよぉ、もうっ!つまりね、説明すると、メアリーは、実在してたんだよね。実は。」
「え?だって…」
私がしゃべろうとすると人差し指で塞がれた。
「イヴ、聞いて」
そしてメアリーさんは説明を始めた。
「『メアリー』は、ゲルテナの世界に迷い込んだ女の子がモデルだったの。つまり、私ね。あのゲルテナの世界は時間の流れがおかしかったのよ」
そう言ってメアリー(さん?)がメモにペンを走らせる。
・元の世界
①『メアリー』が描かれる→②私がゲルテナの世界に迷い込む→
③2人がゲルテナの世界に迷い込む→④3人でお茶をする(今ココ!)「これが本来の順番ね。で、こっちがゲルテナの世界での順番」
②私がゲルテナの世界に迷い込む→①『メアリー』が描かれる→
③2人がゲルテナの世界に迷い込む→④3人でお茶をする(今ココ!)ギャリーが「ホォ」っと息を吐いて言う。
「つまり、存在しない少女って言うのは…」
「そう!(まだ)存在しない少女って事だったのね!」
私は手を挙げた。
「メアリーさん質問です!」
「もう!イヴまで!メアリーって呼んでよねっ!で、何?」
「それだと迷い込んだメアリーと描かれた『メアリー』の2人がいる事になりませんか?」
「ふふっ、そうね。『メアリー』は、ゲルテナの一部ではなく、私の一部だったのよ。だって、ゲルテナは私の心を描いたのだから。だから、ゲルテナは『メアリー』にとっては間違いなく生んでくれた、「パパ」なのよ」
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259 : 2014/05/14(水) 00:53:53.75 -
「じゃあ、「代わり」はいらなかったって事?」
そうギャリーが質問するとメアリーは首を横に振った。「ううん。人は必要だったの。「パパ」であるゲルテナと、もう一人以上の誰かがね」
「どういう事?」
「つまり、『メアリー』は私の一部だから、私の所まで戻らなくちゃいけない。その為にはまず、生みの親であるゲルテナが『メアリー』をゲルテナの世界から切り離さなくてはいけないの。でないと『メアリー』は絵のまんまだから。そして『メアリー』を元の、この世界にまで案内する人も必要だったの」
「それが、アタシ達だったって事ね」
「そう。『メアリー』だけだと、元の世界に戻れない。そして、ゲルテナの協力がなければ『メアリー』は絵のまんま外に行く事になる。真相はこういう事だったの」
何となく聞いてはいるけど、私にはちょっと難しい話だった。
ギャリーとメアリーさんがそんな私を見て簡単に説明をしてくれた。
「つまり、アタシとイヴが頑張らなくちゃ、『メアリー』はこのメアリーさんと一つになれなかった、っていう事よ」
「そしたら私はただの美術館の職員でしかないから、イヴやギャリーを見ても何も思えなかったっていう事ね」
そう言って笑う2人。
「……うん、何となく分かった!」
私は頷いた。
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260 : 2014/05/14(水) 00:58:20.51 -
「でも、イヴとギャリーにも「私が実在する」って気づくヒントはあったのよ?」
「え?」
「どこに?」「イヴ、『メアリー』が書いた『うっかりさんとガレッド・デ・ロワ』って覚えてる?」
「あ!覚えてる」
あの私がネタを潰しちゃったやつだよね…「じゃあギャリー、元の世界の『悪意なき地獄』の横の説明書きは覚えてる?」
「え?ああ、あの“ワイズ・ゲルテナ展へようこそ”ってやつね」
「それらには、書いた人の名前もあったと思うんだけど、2人とも覚えてるかしら?」
「XXXXだったよ」
「XXXXだったわよ」「「…え?」」
目を丸くしてお互いに顔を見合わせる私とギャリー。
「それ、私の苗字よ?」
満面の笑顔でメアリーがそう言った。
メモにまた、何かを書きつけて私とギャリーに見せる。XXXX(美術館の職員)=XXX(うっかりさんとガレッド・デ・ロワの作者)
=私!!その笑顔を見て、何というか、やっぱりメアリーだなあと私は思った。
「お客様、お待たせいたしました」
店員がお盆を運んできた。
ギャリーが「マッカロン、マッカロン♪」と手を合わせる。
「こら、ギャリー?」
メアリーがギャリーをたしなめている。
面白い光景だった。三人で手を合わせる。
「「「いただきます!」」」
私達はこれから、きっとずっと、一緒にいれるんだろう。
そう思うと、とても嬉しかった。True End
おまけ:あの日運び込まれた絵を見に行った所、赤いバラと青いバラ、そしてゴールデンイエローのバラが活けてある花瓶の横に、アリと蝶と小鳥がいる様子をキャンバスに描く男の後ろ姿が描かれていた。
タイトルは『素敵な友達』
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