女「それでも、だよ」


1 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:25:03.54 ID:RF4XLZSHO

「あいつ、売りやってるらしいな」

「頼めばヤラしてくれたりして」

「金なきゃ無理なんじゃね?」

「顔も身体も最高なビッチか。へへっ、たまんねーな」

女「……」スタスタ

これは、私を気に入らない人達が流した噂。

私は人付き合いが苦手だ。うわべだけの関係なんて嫌だ。

器用だとか不器用だとか。

多分、そういうんじゃなくて、私はそういう風に出来てない。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402935903


ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402935903/


2 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:27:38.39 ID:RF4XLZSHO

きっと疲れてしまう。

少なくとも、このクラスの女子みたいには出来ない。

さっきまで一緒に笑ってたのに、離れれば平気で悪口を言う。

悪口を言い合って盛り上がってる人も、その人が居なくなれば別の人と別の居場所で悪口を言う。

何を考えてるのか、何が本当なのかが分からない。

だったらいい。一人でいい。無理に付き合うこともない。

私は私だし、周りは周り。それぞれが好きにしてるんだから。

そう思っていたら、これだ。


3 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:29:34.42 ID:RF4XLZSHO

『見た目が良いからって調子に乗んな』とか、先輩には『生意気』だとか色々言われた。

それからだ。

あんな根も葉もない噂が流れ始めたのは……

でも、みんなはその噂を信じた。

私を見る目は、あの男子達のような好奇の目。

女子は軽蔑の目で、私を見る。

私はそれが嫌で、あの目が怖くて、ここに逃げて来たんだと思う。

そこで、出逢った。


4 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:30:33.91 ID:RF4XLZSHO

女「放課後に校舎裏の花壇に水やりする奴なんて、初めて見た」

男「あ、えーっと……」

女「あんた、同じクラスにいる奴の名前も分からないの?」

男「分かるけど何で?」

女「何でって、なに?」

男「女さんが何でこんな所に来るのかな、と思って」

女「意外?」

男「え、まあ、うん」


5 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:31:35.69 ID:RF4XLZSHO

女「私の噂、知ってるんだ」

男「知ってるけど、そんな風には見えないね。なんか、寂しそうだし」

女「……」

男「水やり終わったし、帰るよ」スタスタ

女「待って。あんたは辛くないの?寂しくないの?」

男「……」ピタッ

女「あんた、いつも一人だし。色々、言われてるし」

男「寂しくも辛くもないよ。ただ、退屈なだけ」

女「退屈?」


6 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:33:14.04 ID:RF4XLZSHO

男「うん。キモい、根暗、ぼっちだとか、ただ『それだけ』」

男「あんなのは、ただの言葉。誰かを見下したいだけなんだ」

男「きっと僕じゃなくてもいいんだ。誰かを見下して、安心したいんだよ」

女「……ねえ」

男「何?」

女「放課後、いつもここに来るの?」

男「うん。先生に頼まれたから」

女「そっか…」

男「もう帰るよ。女さん、さよなら」スタスタ

女「あっ…うん」


7 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:33:59.44 ID:RF4XLZSHO

【女の自宅】

女「ただの言葉、か」

男は、他の誰とも違って見えた。

同じクラスで、何度も見た顔なのに、何かが違って見えた。

話したことのない人に話し掛けられて困ってるような、そんな目。

それが当たり前の反応なんだろうけど、私には嬉しかった。

あんな風に会話したのは、あの噂が流れてから初めてだと思う。

みんなは私を知ってる。私が何をしているのかを知ってる。


8 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:34:39.80 ID:RF4XLZSHO

見ず知らずの男に身体を売って、お金を貰う私を知っている。

勿論、そんなことはしてない。

それは噂で作られた私。

だけど、みんなはそれを信じて、それが私だと思っている。

私のことなんて、何一つ知らないのに。

女「はぁ…」


9 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:35:48.80 ID:RF4XLZSHO

若干目つき悪いし、性格もきつめに見られてるのも知ってる。

でも、そんなに気は強くない。寧ろ打たれ弱い。

何人かに囲まれて滅茶苦茶言われた時は、怖くて何も言い返せなかった。

睨んでると思ったらしくて退散したから良かったけど、悔しかった。

悔しいのに、何も出来ない。それが情けなくて、もっと悔しくなる。

『ただ、それだけ。ただ、退屈なだけ』


10 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:36:20.11 ID:RF4XLZSHO

女「男は、悔しくないのかな……」


11 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:36:55.61 ID:RF4XLZSHO

翌日 放課後

女「あ、いた。っていうか、草むしりもやるんだ」

男「あの、何しに来たの?」

女「あ、えっと……手伝いに来た」

男「手伝いって、ゴム手袋もないのに?」

女「それは大丈夫。私、ミミズも虫も平気だし」ニコッ

男「……」

女「ん、どうかした?」


12 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:38:15.58 ID:RF4XLZSHO

男「見た目と違うんだなと思って、ちょっと面白かった」

女「え、微笑んですらないけど」

男「あははー、マジウケる。とか無理」

女「真顔でその台詞言う奴初めて見たよ。怖いわ」

男「素手で草むしりする女子も初めて見た。爪に土入ったり、嫌じゃないの?」

女「爪、伸ばしてないからね。ベキッって曲がる方が嫌だから」

男「……何で手伝いに来たの?」

女「邪魔だった?」


13 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:39:39.47 ID:RF4XLZSHO

男「本当に手伝ってくれてるし、邪魔じゃないけど、何で急に」

女「根も葉もない噂立てられて、色々言われて、だけど何も言えなくて」

男「……」

女「それが、凄く悔しい」

女「昨日、あんたと話して思ったんだ。あんたは、悔しくないのかなって」

男「……」

女「ごめん。いきなり押し掛けて来て迷惑だと思うし、嫌な質問だと思う」

女「でも、どうしても聞きたくて」

男「どうして僕なの?」

女「それは…」


14 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:41:06.04 ID:RF4XLZSHO

男「僕がからかわれたり、馬鹿にされたりしてるから?」

女「っ…それは」

男「自分と同じだと思った?」

女「違っ…わないよね。ごめん」

男「……中学の頃、僕は義父に虐待されてた」

男「腕にタバコ押し付けられたり、殴られたり蹴られたり」

女「……えっ?」

男「我慢したよ。怖くて怖くて仕方が無かったから。何度も殺されると思った」

男「いつか終わると思った。誰かが、助けてくれると思った」

女「……」


15 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:42:21.59 ID:RF4XLZSHO

男「でもね、誰も助けてくれなかったよ」

女「!!」

男「そんな日々が数ヶ月続いた。長かったよ。数年に感じるくらいに…」

男「ある日、あいつは妹にまで手を出そうとした。その時、初めて人を殴った」

男「そしたら、あいつは呆気なく倒れたよ。でも僕は殴るのを止めなかった」

男「仕返し出来て嬉しかったのかもしれないし、興奮してたのかもしれない」

男「妹が止めてくれなかったら、本当に殺していたかもしれない」

女「……」

男「それからすぐ、母親はまた離婚したよ」


16 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:43:32.74 ID:RF4XLZSHO

男「挙げ句、僕等を親戚に預けてどこかに行った」

男「引き取ってくれたのは、実父の両親だった。今は幸せだよ」

女「………」

男「どう?」

女「ど、どうって、いきなりそんな話し聞いたら

男「自分よりも不幸な人間の話しを聞いて、楽になった?」

女「ッ!!」

バチンッ…


17 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:49:36.02 ID:RF4XLZSHO

女「……帰る」

男「そっか、さよなら」

女「さよなら」スタスタ

男「分かってたけど、やっぱり痛いな」ポツリ

女「……」ピタッ

男「?」

女「男っ!!」クルッ

男「あ、はい。何?」

女「また明日。んじゃ」スタスタ

男「えっ?」


18 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:50:37.22 ID:RF4XLZSHO
ここまで。多分短い。

19 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 02:10:27.96 ID:GvsNO1pAO
おつ

20 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:12:08.12 ID:RxR1ArUgO

【女の自宅】

女「……最低だ」

きっと私は、男と自分を重ねてたんだ。

話したい理由。

それは、どこか似通っている部分があると感じたからだ。

もしかしたら、単なる好奇心から自分勝手に近付いたのかも。

ただ言えるのは、そんな理由で男に近付いた挙げ句、逃げたってこと。

『どう?自分より不幸な人間の話しを聞いて楽になった?』

女「きっついなぁ…」


21 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:13:58.39 ID:RxR1ArUgO

私は男の話しを聞いた時、『可哀想』だと思った。

自分のことなんて全部忘れて、男が語った不幸に聞き入っていた。

頭の中には

『こんなに酷く悲しい話しがあるのか』『今はもう平気なんだろうか』『本当のお父さんは?』『妹さんは元気?』

こんな言葉ばかりが浮かんでた。

視線や陰口、纏わりつく噂。

男の語った不幸は、そんなものから私を解放してくれた。

本当に最低だ。

私は自分のことなんて忘れて、男を憐れんでいた。


23 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:20:42.11 ID:RxR1ArUgO

女「謝ろう」

許してくれなくても、なんて。また自分勝手なことを思ってる。

やっぱり、人って難しい。

自分のしたいこと。やりたいこと。

でもそれが、相手にとってはして欲しくないことがある。

謝ったって、私が男にしたことは変わらない。

だけど、私がやったことだから、私が謝らなきゃ駄目なんだ。

言葉を変えても、結局は、私がそうしたいだけ。

女「何やってんだろ、私……」


25 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:36:20.42 ID:RxR1ArUgO

嫌なら、辛いなら。

『ただの言葉だよ』

私は、男みたいに、あんな風には到底考えられない。

ビッチだのヤリマンだの、金出すからやらせろだの……

お構いなしに好き勝手言ってくれるよ。思い出したら何だか腹が立ってきた。

一人でいい、なんて強がっておきながら。

結局は周りを気にして、視線を怖がってたら話しにならない。

今更『誰かに』嫌われたって、私には何もない。離れゆく友人も、恋人もいない。

何もしないまま終わりたくない。噂が消えるまで我慢するなんて、私には出来ない。

あんな風に言われるのは嫌だ。

もう知るか、そっちがそうなら、私だって好き勝手やってやる。

あんな悔しい思いをするのは、もう沢山だ。


26 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:37:43.29 ID:RxR1ArUgO
ここまで。夜書く。

28 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/17(火) 13:04:00.95 ID:GtGd7/CY0
舞ってる

29 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:45:54.34 ID:RxR1ArUgO

翌日 放課後

男「あんなこと言ったんだ。来るわけない」

シーン…

そう言えば、そうだった。

本当は、元々は『こう』だったんだ。

薄暗くて気味悪くて、人が寄りつきそうにない、僕にお似合いの場所。

たった二日間。

それもちょっと話しただけなのに、随分と賑やかに感じた。

たった一人増えただけで、あんなにも変わるものだったんだ。


30 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:47:37.93 ID:RxR1ArUgO

まるで、全く別の場所にいるような感じがする。

たった二日。

しかも、ちゃんと話したのは一日。そのはずなのに、やけに残ってる。

草むしりを手伝うと言った時の笑顔が、懐かしい。

真っ直ぐに目を見て話す彼女が、昨日は此処に、隣りにいたのか。

『人と話す時は目を見て話しなさい。でないと、何も伝わらない』

お父さんに怒られた時、よく言われたな。目を見て、伝える。

僕は、彼女の目から逃げたのかもしれない。


31 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:50:39.23 ID:RxR1ArUgO

逃げ出したいから、あんなことを言ってしまったのかもしれない。

彼女の真っ直ぐな瞳が、僕には辛くて、怖かったんだ。

きっと、彼女は強い人なんだろう。

あんな風に噂されても屈せずに、学校に来るだけでも十分強い。

佇まい、あの瞳が、噂が噂でしかないと証明している。

大体、彼女にこんな場所は似合わない。あれで、良かったんだ。

もう帰ろう。もう少しだけ待とう。

何度も何度も、頭の中で繰り返される言葉。でも、もういい。

男「……帰ろう」


32 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:53:11.04 ID:RxR1ArUgO

これでいい。

明日からは、今まで通り。何も変わらない退屈な毎日。

家族のことだけを考えればいい。大切にすべきなのは、この場所じゃない。

妹が、お爺ちゃんとお婆ちゃんが待ってる。僕の居場所は、あの家だ。

明るい家族。

それだけで、僕は幸せだ。他には何もいらない。

こんな退屈な毎日も、あいつと過ごした数ヶ月に比べれば大したことはない。

『辛くないの?寂しくないの?』

そんなことはない。耐えるまでもない。

周りで起こる色々、意味を持たない言葉、それを眺める毎日。

僕は、そうあるべきだ。


33 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:55:16.44 ID:RxR1ArUgO

女「ごめん。遅れた」


34 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:57:29.84 ID:RxR1ArUgO
また後で。今日中には終わる、はず。

35 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:35:31.51 ID:RxR1ArUgO

男「えっ、あの、髪が凄いことになってるけど」

女「あんたと話したら、何か吹っ切れちゃって」

男「僕?」

女「そう、あんた。あんたと話してから、色々考えた」

女「結果。やられっぱなしも、甘えるのも駄目と思ったんだ」ニコッ

男「……それで?」

女「話し合いじゃあ収まりが付かなくて、ちょっと長引いた」

男「よく見たら顔とか腕にひっかき傷あるけど、喧嘩したの?」


36 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:36:39.17 ID:RxR1ArUgO

女「あんな風に言われて、私は我慢なんて出来ない」

女「ただの言葉なんて風には思えない」

女「もう、何も出来ないまま悔しいのは、嫌だから」

男「その傷、相手は大人数だっだんだ」

女「えっ、うん」

女「五、六人かな。掛かってきたのは二、三人だけど」ウン

男「っ、全員で袋叩きにされたかもしれない」

女「え?」


37 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:37:58.29 ID:RxR1ArUgO

男「ひっかき傷どころじゃない。大怪我したら、どうするつもりだったんだ!!」

女「!?」ビクッ

男「保健室に行こう。ちゃんと消毒しな

女「男」

男「何?」

女「昨日は本当にごめんなさい」

男「!!」

女「実はね、自分のことを終わらせてから謝ろうと思ってたんだ」


38 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:43:23.67 ID:RxR1ArUgO

女「ずっと、待っててくれたんだね」

男「……待ってたよ」フイッ

女「……ありがと」

男「それより傷、痛まないの?」

女「あちこち痛いけど、何とか勝ったよ」ニコッ

男「はぁ、もういいよ。取り敢えず保健室に行こう」

女「あっ、ちょっと待って」

男「まだ何かあるの?」


39 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:52:44.96 ID:RxR1ArUgO

女「違う違う。あ、あったあった」

男「なにを、うわ…ちょっと止め

ジョキンジョキン…パラパラ…

女「よし、行こう」スタスタ

男「あの、大丈夫?変な薬でも

女「至って正常。私は素直に生きることにした」ウン

男「……」

女「どうしたの?行こう?」スタスタ

男「園芸用の鋏で髪切る女の人なんて初めて見た」

女「私も初めて切った」

男「だろうね」

女「でも、気分は良いかな」ニコッ

男「(僕は、こんな風にはなれない。こんな風に笑えない)」

男「(彼女は、僕なんかと一緒にいちゃ駄目だ)」


40 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:53:58.52 ID:RxR1ArUgO
また後で。

41 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:28:09.47 ID:RxR1ArUgO

【ーーー】

男「何も欲しがっちゃ駄目だ。もう、十分に得た」

いつものように、あの時のように、何度も自分に言い聞かせても、ざわついたままだ。

これ以上は、望んじゃいけない。この平穏な生活こそが、僕の求めたもの。

なのに、頭から離れない。

あの笑顔が、声が、強い瞳が、焼き付いてる。

それを想う自分が、気持ち悪い。

彼女は、綺麗だ。

見た目も、きっと心も綺麗なんだろう。

だから、あんな風に堂々と歩ける。だから、あんな風に笑えるんだろう。


42 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:30:07.24 ID:RxR1ArUgO

こんな気持ちは、知りたくなかった。

やっぱり、待つべきじゃなかったんだ。

すぐに帰っていれば、こんな思いをする必要もなかった。

男「僕は、もう何もいらない」

此処に来たばかりの頃、物音がするだけで、電話が鳴るだけで、僕は怯えていた。

妹は、泣いていた。

あの頃と同じように、小さな体を震わせて、泣いていたんだ。

困惑するお爺ちゃんとお婆ちゃんに理由を話すと、二人は優しく僕等を抱き締めてくれた。

それから、夜になると電話線を抜いてくれるようになった。


44 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:36:35.26 ID:RxR1ArUgO

夜になると、思い出す。

きっと妹もそうだろう。今でも泣きながら布団に入って来る時がある。

忘れられないんだ。

あいつの怒鳴り声。

痛み、熱、狂った笑い声、見下す瞳、妹の涙。

目を閉じれば、あの時に戻ってしまいそうな気がする。

それから抜け出す方法。一時だけでも忘れられる方法を、僕は知ってる。

体に残った火傷の跡も、耳に残る笑い声も消す方法。

「ようやく見つけた。男ってのは、お前だな」

「……そうだけど、何の用?」

「病院にいるあいつの代わりに、俺がお前をやる」

「あいつって誰だか分からないけど、勝手だね」

「大体、みんな自分から仕掛けてくるのに」

「黙れ。ぶっ殺してやる」

それを消すのは、あいつが僕にしたことに他ならない。

それは『誰かを』傷付けること。早い話しが、暴力を振るうことだった。


46 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:54:44.85 ID:RxR1ArUgO

【女の自宅】

女「 変だ 」

おかしい、何かが引っ掛かる。

こういうのが胸騒ぎってやつなのかな。部屋にいるのに、落ち着かない。

自分のことも一段落付いたはずなのに、何でだろ。

本当は話し合いで解決したかったし、やりたいこととは違ったけど、何とかなった。

顔とか腕とかピリピリするけど、心はすっきりしてる。

なのに、妙にそわそわする。

男、保健室に入ってから急に口数減ったし、顔も暗かったな。


48 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:58:06.72 ID:RxR1ArUgO

こう言っちゃ悪いけど、何かされても、何かする側じゃない。

あくまで見た目だけを判断しての話しだけど、そう見える。

背はそこそこ高いけど体は細いし、顔は大人しそうだし、優しそうだし。

それに、今日校舎裏で私を見た時の男は、少し微笑んだような気がした。

でもその後すぐに、あの目。暗いのに、ぎらぎらして見えた。

女「それを知りたいと思うのは、何でだろ」

まあいいや。また明日の放課後に話せばいいんだ。

謝ったけど、まだお礼を言ってない。

保健室に入ってから妙な雰囲気だったし、言い辛かった。


49 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:59:00.10 ID:RxR1ArUgO

昨日の夜、あの女子達と話そうと決めた。真正面から行こうと決めた。

言いたいこと全部言って、後でどうにかなっても絶対に逃げないって決めた。

決めたのは私だけど、きっかけは男の言葉に違いない。

ぐさっと来たけど、あれがなかったら、私は動けなかっただろう。

だから、ありがとうって伝えたい。

女「早く、男に会いたいな」

あ、髪は一応整えておこう。このままじゃ流石にマズい。

その場の気分で何かをするのは、これきりにしよう。

お母さんにはちゃんと伝えたし、お父さんには上手く言ってくれるはずだ。

お母さん、泣いてたな。私も泣いたけど、心配かけちゃったな。

これからは気を付けよう。


51 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 21:03:30.70 ID:RxR1ArUgO
やはり、今日中に終わるのは無理そう。ちまちま書いてく。

53 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:11:47.43 ID:EOa3EEBFO

五日後 校舎裏

女「……男、学校休んで何してるんだろ。って言うか、何で私が水やりしてるんだろ」

あれから五日が経った。あの日の放課後から五日が経った。

男は、あれから学校を休んでる。

理由無く休むようには思えないし、風邪とかかもしれない。

教師は触れなかった。

男なんていないみたいに、時間が流れる。

本当に、教室にぽっかり穴が空いたような感じがした。

一番仲の良い友達が休んだ時の気持ちに似てる。

友達いないけど。


54 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:15:40.18 ID:EOa3EEBFO

家庭の事情とかだったら悪いし、教師にも何だか聞き辛いんだよね。

そしたら、あっと言う間に五日が経った。そのうち来るだろうと思ってた。

でも、男は来なかった。

女「心配させんな。私には怒鳴ったくせに」

男がいないと暇で退屈で、急に学校がつまらくなった。

つまらくなったってことは、楽しかったってことだ。

男と校舎裏で出逢ってからは、学校が楽しかった。

学校っていうより、この場所に来るのが楽しみだったのかもしれない。

暗くてじめっとしてるけど、ちょっと落ち着く。

そんな、不思議な場所。

男は私がここに来るずっと前から、ここにいたんだよね。


55 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:18:31.09 ID:EOa3EEBFO

どんな気持ちだったんだろう。

何を考えてこの場所に立っていたんだろう。

今は、どこにいるんだろう。

もしかして、違う居場所があるのかな。

男にとって居心地の良い場所が、どこかにあるのかな。

もしそうなら、ちょっと寂しい。

それから、こんなことを考える度に、決まって胸騒ぎがする。

背筋ぞわぞわして、鳥肌が立つ。

女「駄目だ、やっぱり気になる。担任に聞いてみよう。何か、嫌な感じがする」

私は職員室に走った。

迷っている所為か、やけに脚が重いけど、とにかく走った。


56 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:28:31.89 ID:EOa3EEBFO

盛大に転けて、笑われて、また走る。

そんな私を指差して、また笑う。

だけど、もう誰の視線も怖くない。笑いたきゃ好きなだけ笑え。

好きでもない友達と、好きなだけ笑えばいい。

女「はぁっ、はぁっ」

こんな風になれたのは、男と出逢って、ぐさっとされたからだ。

ありがとうって言いたい。

また、あの場所で話したい。

何かあったのなら力になりたい。私は、男に救われた。

救ったなんて思ってないだろうけど、私はそう思ってる。


57 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:36:03.19 ID:EOa3EEBFO

あの時、保健室で別れてから話してない。

今想えば、何かを決めたのかも。

何を決めたのかは分からない。でも、そんな気がしないでもない。

何を決めたって別にいいけどさ、せめて学校には来てよ。

女「はぁ、はぁっ…」

たった一日二日話した相手に、何でそこまでしようとするのか。

知るか、私にも分からない。

もしかしたら、単純に、男を好きなのかもしれない。

単なる好奇心で、男を知りたいだけなのかもしれない。

そんなのどうでもいい。どうせ、どっちも似たようなものだ。

心配、暇、退屈、怖い、知りたい、知りたくない。

行こう、やっぱり止めよう、きっと迷惑だ、嫌われる。

走りながら色々な言葉が浮かんできたけれど、本当の答えは出てる。

私は、男に会いたい。


59 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 23:00:09.10 ID:CCt64tPDO
待ってる
この文章すごい好き

61 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:29:16.20 ID:MdClivtcO

【男の自宅前】

女「どうしよう。勢いに任せて来てしまった」

担任は、表情一つ変えずに男の住所を私に教えた。

目上の人間に言う台詞じゃないけど、正直気に食わなかった。

担任ならもう少し何かあるはずだ。心配じゃないのか。

あんな無気力な、まるで何も感じないような目。何だか気味が悪かった。

本当に生きてるのか疑いたくなるくらいだ。

大人になると、ああなっちゃうかな。

何か、嫌だな。

それはともかく、担任への怒りも手伝って、私は何も考えずに男の自宅へ来た。


62 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:30:36.88 ID:MdClivtcO

その場の気分で何かするのは止めようと決めたばかりなのに。

だけど、ここまで来たんだ。

今更逃げるわけには行かない。

会いたくて来た。心配だから来た。理由なんて、そんなものだ。

女「……行こう」

呼び鈴を鳴らす手が震える。

どうやら、緊張とかではなく、怖じ気付いてるみたいだ。

何とか呼び鈴を押すと、可愛らしい女の子が。どうやら男の妹さんみたいだ。

妹「お兄ちゃんの友達ですか?」


63 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:31:47.97 ID:MdClivtcO

女「……」

妹「えっと、あの」

女「あっ、ごめんね。私は同じクラスの女です」

女「友達なのか何なのかよく分からないけど、男が心配で会いに来ました」

妹「お兄ちゃんのこと、知ってるんですか?」

女「え?」

妹「あ、ごめんなさい。どうぞ、入って下さい」

女「う、うん。おじゃまします」


64 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:35:24.65 ID:MdClivtcO

女「あの、男は大丈夫なの?」

妹「……お兄ちゃんは、部屋で寝てます」

女「こんな時間に?随分早いね」

妹「女さんは、お兄ちゃんに聞いたんですか?」

女「義理のお父さんの話しなら聞いたよ。どうしたのかも、聞いた」

妹「そっか。お兄ちゃん、自分から話したんだ」ポツリ

女「ねえ、男は何をしてるの?もう、五日も学校休んでる」

妹「お兄ちゃんは、多分、病気なんです」


65 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:37:19.10 ID:MdClivtcO

女「病気って、そんな風には見えないけどな」

妹「風邪とか、そういうのじゃなくて、心が痛いやつです」

女「それは、あの…」

妹「あの人の所為で、お兄ちゃんは違う人になりました」

女「(あの人って、やっぱり義父のことだよね。それに、違う人って)」

妹「お兄ちゃんは毎日殴られたりして、私が殴ら…そうにな…た

女「無理しないで。それに、男はあなたを守ろうとしたんだよね?」

妹「大丈夫、です」


66 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:39:10.01 ID:MdClivtcO

女「でも、顔色が

妹「違うんです。お兄ちゃんは、その後も、あの人を」

女「……その、後?」

妹「夜になると、今度はお兄ちゃんが、あの人を殴るようになったんです」

女「!?」

妹「何度も謝らせて、何度も殴りました。自分がやられたように、何度も」

女「で、でも離婚したんじゃ。今は幸せだって、そう言ってたよ?」

妹「お兄ちゃんは、夜遅くになるとお家を抜け出すんです」

妹「来たばかりの頃は、殆ど毎日抜け出してました」

妹「それで、いつも痣だらけで帰って来るの……」


67 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:40:36.84 ID:MdClivtcO

女「そ、それって、わざわざ喧嘩しに行ってるってこと?」

妹「……」コクン

女「何で、そんな危ないことを」

妹「それをしないと、声が消えないって。そう言ってました」

女「声?」

妹「あの人の、声。お兄ちゃんを傷付ける、合図…」

女「(……酷い。体が震えてる。まだ怖いんだ。まだ、終わってないんだ)」

女「嫌な話しさせちゃって、ごめん。私、何も知らなかった」


68 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:45:11.92 ID:MdClivtcO

妹「あっ、あの」ズイッ

女「うわっ、な、何かな?」

妹「えっと、女さんはお兄ちゃんが好きなの?お兄ちゃんが大事なの?」

女「うん、好きだよ。だから、男のことを知りたいんだと思う」

妹「……なんか、お父さんみたい」ポケー

女「えっ?」

妹「あっ、ごめんなさい」

女「お父さんは、その…」

妹「事故で、いなくなっちゃいました」

女「……そっか」


69 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:48:33.73 ID:MdClivtcO

妹「すっごく強くて優しいお父さんなんだ」

妹「お兄ちゃんも私も、お父さん大好き」ニコッ

女「(凄く嬉しそう。今でも好きなんだろなぁ)」

妹「お姉ちゃん、あのね?」

女「お姉ちゃん?あ、私か。なに?」

妹「お兄ちゃんがお姉ちゃんに話したのは、お父さんに似てるからだと思うんだ」ニコッ

女「私、女なんだけど。喜んでいいのかな、それ」

妹「男の人みたいってことじゃないよ?雰囲気とか、うーん。色々、色々似てるの」


70 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 02:07:11.28 ID:MdClivtcO

女「良かった。ほっとしたよ」

妹「へへっ、お姉ちゃんが来てくれて本当に良かった」

女「(何だか分からないけど、警戒解いてくれたみたい。随分とご機嫌だなぁ)」

女「(どう見てもまだ小学生。こっちの方が本当なんだろうけど、しっかりした子だ)」

妹「ねえねえ」クイクイ

女「どうしたの?」

妹「お兄ちゃんに、会いたい?」

女「そりゃあもう。その為に来たんだから」


71 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 02:13:08.92 ID:MdClivtcO

妹「じゃあ、一緒に行こう?」ギュッ

女「うん、行こう」ギュッ

妹「お兄ちゃん、ずっと『夜』だったんだ……」

妹「最近、また抜け出し始めたの」

女「(なるほど、だから学校に来れなかったのか。五日間も、ずっと……)」

妹「お爺ちゃんお婆ちゃんも、心配してる」

妹「それで、お婆ちゃんが具合悪くなっちゃったんだ……」

女「(だから居なかったのか。男、そんなに酷いのか)」

妹「でもね?お兄ちゃんだって本当は心配かけたくないんだよ?」

妹「きっと痛くて泣いてる」

女「(……私に何が出来るのかは分からない。でも、会えば分かるはずだ)」

女「(私が会いたくて来たんだ。今度は何があっても、逃げない)」


72 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 02:14:50.29 ID:MdClivtcO
遅くなってごめん。多分、多分そろそろ終わる。寝る。

74 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 13:57:51.18 ID:5nXLbPBOO

妹さんと手を握って、階段の前に立った時、突然足が動かなくなった。

膝が震える。

あの目を見たら、私は竦んでしまうだろう。

怖い、やっぱり駄目だ。行きたくない。

私がどうにか出来るような問題じゃない。

家族の問題。兄妹の痛み。私が入り込んじゃいけない場所。

これ以上、首を突っ込むのは止した方がいい。

例え好意があっても、何かをしたくても、男の心に踏み込んでいいのだろうか。

ほんの少しの間に、これだけの言葉が、全身に広がった。


76 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:03:08.13 ID:5nXLbPBOO

妹さんには、最近までは落ち着いていたと聞いた。

なのに何故再び夜に走ったのか、暴力に身を委ねるのかが、分からない。

学校に来なくなって、五日。

あの日から、男は夜を居場所にした。消えない声を、掻き消す為に。

五日前に何かがあったのかな。そう言えば、怒鳴ったのもあの日だ。

あのぎらついた目を見たのも、あの日。私が、何かをしてしまったのかな。

触れてはならない場所に、触れてしまったのだろうか。

じっとして動かないままで階段の上を見つめる私を、妹さんは心配してた。

とっても不安そうな顔で、私に何か言ってる。


78 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:07:28.04 ID:5nXLbPBOO

私は妹さんに頼んで、線香を上げさせてもらうことしにした。

後押し、きっかけ。

上手く行くようにと、お願いしたかったのかも。

妹さんは、ちょっと困ったような、不思議そうな顔で私を見たけれど、喜んでくれた。

二人一緒に、線香を上げた。

遺影以外にも、写真が何枚かある。

豪快で晴れ晴れとした笑顔。二人をぎゅっと抱きしめて、笑ってる。

どの写真でも笑顔だ。男も妹さんも、笑ってる。


80 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:13:19.11 ID:5nXLbPBOO

線香の香りは苦手だけど、今だけは、この香りが何だか落ち着く。

もう一度手を合わせて目を閉じると、風が吹いた。

応援してくれてるのかな、とか。

勝手にそんな風に思いながら。しばらく目を閉じた。

不思議だ。

さっきまでは怖くてたまらなかったのに、今は怖くない。

心の中で何度もお礼を言って、私は再び階段の前に立った。

妹さんと手を握って、一段一段、ゆっくりと進む。


82 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:31:56.73 ID:5nXLbPBOO

ちゃんと妹さんにお礼言わないとな。

こんな小さい子に勇気を貰った。沢山、助けてもらった。

さあ、行こう。腹は括った。

このドアの向こうに、男がいる。

寝てるか起きてるか分からないけど、上手く話せるかも分からないけど……

もしかしたら、二度と会えないかもしれない。それで、呆気なく終わっちゃうんだ。

突き放されて、終わるだけかもしれない。きっとそうだ。傷付くだけだ。

うん、有り得ない話しじゃない。そんなの、簡単に想像出来る。

そうだね。『もしかしたら』そうなるかもね。

確かにそうなる『かもしれない』よ。だけどさ、それでもいいと思ってる。

やれるだけ、やってみる。


84 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:43:16.27 ID:5nXLbPBOO
ちょっとくどいな。展開進むの遅くてすまん。

86 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/18(水) 16:22:50.82 ID:ViyjMsVK0
これはいいSSを見つけた

88 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:34:32.13 ID:4vrIvcY0O

これは夢だ。

こんな事が起きるわけがない。

こんな場所に、彼女がいるわけがない。

僕は君を忘れたかったのに、何故夢にまで現れるんだ。

さっさと消えてくれ。

その瞳で、僕を見ないでくれ。

もう何もいらない、何も欲しくなんかない、どうせ叶わない。

優しい家族がいる。

ご飯だって毎日食べられる。僕はそれだけで満足なんだ。


90 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:41:37.26 ID:4vrIvcY0O

側にいる人間が霞んでしまうくらいの、強い光みたいなものを放ってる。

髪型を真似しても何を真似しても、誰も君のようにはなれない。

だからこそ気に入らない。君の存在が許せないんだろう。

どうやっても届かないんだ。だから妬む。

例え君が、どんなに気さくな人間でも、君の隣には誰も立てはしない。

同性なら尚更だ。必ず比較されるだろうから。

それに、あそこにいる人間は、誰もが自分を見て欲しいと思ってる。

みんな『特別』になりたいと思っている。誰もがそうさ。


92 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:45:47.80 ID:4vrIvcY0O

君は、僕なんかといるべきじゃない。

僕は、君とは歩けない。

だから、もう消えてくれ。僕の中から、出て行ってくれ。

君と歩きたいなんて、君と一緒にいたいなんて……

そんな馬鹿げた願いが形を為す前に、僕の前から消えてくれ。

もうじき夜だ。

夜が来たら、行かないと。

君の声も君の笑顔も、あいつの声と同じように、消してやる。

あいつが僕にしたみたいに、分からせてやる。

どんなに謝っても終わらないって、どんなに願っても叶わないって、思い知らせてやる。

こんな馬鹿な願いを持った僕に、思い知らせてやるんだ。


94 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:54:34.07 ID:4vrIvcY0O

「……あの場所で、待ってるから」

突然、彼女がゆっくりと体を傾けた。

僕の体は思うように動かない。

彼女が、僕の馬鹿げた願いが、僕を見つめたまま、少しずつ近付いて来る。

僕は何とか目を逸らそうとしたけれど、彼女の瞳がそうさせない。

一瞬。ほんの一瞬だけ重なって、彼女は離れた。

僕は呆然として、何が起きたのか分からないまま、彼女を見る。

すると彼女は涙を流しながら笑って、優しく手を握った。

僕はその手を払うことも、握り返すことも出来ない。

何故だか分からないけど、強張っていた体から、力が抜けていく。

もう夜が来るのに、あいつの声は聞こえない。

彼女は長い間、僕のベッドに腰掛けて、僕の手を握っていた。

こんな夢を見ているうちに、僕はその夢の中で眠りについた。


95 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:58:10.64 ID:4vrIvcY0O
また後で。あと少しだと思う。多分。

97 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:01:53.90 ID:jgsCloEmO

【女の自宅】

先に電話してて良かった。

結構遠いから、帰るのが随分遅くなっちゃったよ。

事情を話したら、お母さんも分かってくれた。勿論、全部話したわけじゃない。

それにしても、色んなことが起きた一日だったな。

帰る時、妹さんに私の番号教えた。何かあった時の為だ。

妹さんは携帯電話持ってないから、自宅の番号を教えてくれた。

何だか、凄く疲れた。

こんなに沢山走ったのは、中学校のマラソン大会以来だ。


99 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:06:44.90 ID:2J/VteIbO

本当に察しが良い子だと思う。

そこら辺は、とても小学生だとは思えない。

それから二人になって、男と話した。

ちゃんと話したって言えるのかは、分からないけど。

男って、私のことをあんな風に思ってたんだ。かなり意外だ。

私は、男が言うような綺麗な人間じゃない。私だって嫉妬とかするし。

あれは、男が作った私だ。

私も男のこと知らないけど、男だって私のこと知らない。

取り敢えず、男の中の私は置いとこう。


101 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:16:56.05 ID:2J/VteIbO

そんな日々が、数ヶ月続いた。それが二人の体験したこと。

今でも忘れられない痛み、体に刻まれた傷跡、消したい記憶。

それを消す為に夜を歩いて、殴り合って、傷付いて……

ずっとあんなことを続けてたら冗談じゃなく、死んでしまう。

あの傷がもう少し深かったら?

それを考えるだけで、気が遠のく。

死ぬなんて嫌だ。もう止めて欲しい。

もう、あんな姿は見たくない。

それは妹さんも、お爺さんもお婆さんも、同じはずだ。

ちなみに、さっき電話が来た。

取り敢えず今日は大丈夫そうだと、妹さんは言っていた。


103 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:33:04.36 ID:2J/VteIbO

後、出過ぎた怒られるかと思ったら、何度もお礼を言われた。

お煎餅とか貰ったり、男とはどんな関係だとか聞かれたり。

妹さんも一緒に、四人で色んなお話しをした。

ちょっとくすぐったかったけど、とても楽しい時間だった。

女「……学校、来てくれるかな」

そう、問題はそこだ。

私の声が届いていたのか分からない。会話も成立してるか怪しかった。

聞こえてはいただろうけど、どうだろう。やっぱり不安だな。

最後の方は、私もボロボロ泣いちゃってたし。

何せよ、今の私に出来るのは待つことだけだ。言うべきことは、言えた。

だけど私には、まだ伝えてないことがある。

お礼と、私の気持ち。

伝える前に行動に移しちゃったけど、ちゃんと伝えたい。

あの場所で、男に伝えたい。


105 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:37:52.79 ID:2J/VteIbO
出過ぎた真似して怒られる、だった。誤字脱字すまん。

107 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 23:01:30.47 ID:XCO35WIY0
続き楽しみ

109 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:24:45.97 ID:FCY7BrJhO

彼女は、確かに此処にいた。

このベッドに腰掛けて、僕の手を握っていたんだ。

まだ手が熱い。唇にも熱が残ってる。

僕の為、僕に会う為。

それを聞いた時、喜びよりも戸惑いの方が勝っていた。

戸惑いと言うより、怖れているのかもしれない。

もう何も欲しがらない、そう決めていた。あの時から今まで、ずっと。

それを破った時、何かが起こりそうな気がして、怖いんだ。

そのはずなのに、僕の心はこんなにも落ち着いていて、安らいでいる。

夜の震えは収まり、あいつの声は、聞こえなくなった。


111 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:27:44.60 ID:FCY7BrJhO

答えは出ているのに、動けない。

分かってるさ、本当は会いたい。

僕は、彼女が好きなんだ。

知っている。もう、知ってしまった。

あの笑顔、優しさ、温もり……

僕に向けられた何もかもが、僕の中に溢れている。

でも、こんな僕が彼女と歩くことは許されるのだろうか。

僕は人を傷付けて自分を満たすような、あいつと何も変わらない、醜い人間だ。

そんな屑みたいな奴が、何かを得ようとするなんて、許されるはずがない。


113 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:30:59.15 ID:FCY7BrJhO

『あの場所で、待ってるから』


114 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:33:25.31 ID:FCY7BrJhO

「でも、僕は…」

『真っ直ぐに、人の目を見て話せる人間になれ』

『ははっ、大丈夫だ。間違わない奴なんて、失敗しない奴なんていないんだ』

もう、放課後。

本当に、僕を待っているんだろうか。

今も彼女は、あの場所にいるんだろうか。

それが知りたいのなら、行けばいい。

今からでも間に合うのかな。

こんな僕でも、まだ間に合うのかな。

考える暇があるなら動け。

ぐだぐだ考えるな。やりたいことを、やればいいんだ。

「……行こう。あの場所で、彼女が待ってる」


116 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:17:28.46 ID:FCY7BrJhO

「あの、僕もありがとう。君に会えて嬉しい」

「う、うん。何だか、少し変わったね」

「これでも、精一杯」

「ははっ、そうなんだ。あのね……」

「うん」

「私は、あなたが好きだよ」

「でも僕は、人を傷付けて

「それは知ってる」

「でも今は関係ない」

「誰が悪いとか何が間違いだとか、私には言えないよ」


118 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:21:32.84 ID:FCY7BrJhO

「何で、そんなことが言えるの?」

「分かんない。目、逸らさないからかな?」

「そんな理由で

「男は強いよ。自分が思ってるより、ずっと強い」

「……っ、女さん!!」

「な、なにっ?」

「僕は…いや、違うな」

「?」


120 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:24:38.55 ID:FCY7BrJhO

終わり

122 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:36:07.54 ID:FCY7BrJhO
見てくれてありがとう。

最後、手抜きに見えるかもしれないけど、手抜きじゃないよ。
考えた結果、これがいいかなと思った。

気に入らなかったら、すまん。


124 : ◆5l7a.r2Ghs 2014/06/19(木) 01:55:13.77 ID:FCY7BrJhO
前に書いたやつ。
男「童貞です」
古の力と四人の戦士

よければ暇な時にでも。


126 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 02:19:34.24 ID:6vy8Tan50
気に入った

128 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 05:52:39.54 ID:Ae1NYcNWo
一気に読んだ
とても面白かったです

130 : ◆5l7a.r2Ghs 2014/06/19(木) 22:32:42.33 ID:GhsHxbF4O
感想ありがとう。あと、イケメン「童貞です」だった。
まとめのコメント欄って怖いと思った。

131 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/20(金) 11:11:05.21 ID:3EQzu3tF0
突然ですが宣伝です!
>>1謝罪するまで続けます!
文句があればこのスレまで!

加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/

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132 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/20(金) 11:12:03.30 ID:3EQzu3tF0
突然ですが宣伝です!
>>1謝罪するまで続けます!
文句があればこのスレまで!

加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/

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>>458gt;>459>>460gt;>461>>462gt;>463>>464gt;>465>>466gt;>467>>468gt;>469>>470gt;>471>>472gt;>473>>474gt;>475
>>476gt;>477>>478gt;>479>>480gt;>481>>482gt;>483>>484gt;>485>>486gt;>487>>488gt;>489>>490gt;>491>>492gt;>493
>>494gt;>495>>496gt;>497>>498gt;>499>>500


134 : >>1 2014/06/25(水) 16:57:51.13 ID:LqPqQtC3O
ーー「そうだ、オレの名は…」未完
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
青年「ああ、認めるよ……」
青年「俺の帰る場所」
少年「それが、僕の名前……」
少女『優しい世界』未完
鬼姫「早く来ないかしら」
勇者「共に歩み、共に生きる」
イケメン「童貞です」
男「男には色々あんだよ」

今まで書いたやつの一覧。多分これで全部。


136 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/25(水) 20:52:20.33 ID:LqPqQtC3O

そんな彼は、誰もが一度は思い描く、夢や妄想を具現化したような存在だった。

しかし、彼は死んだ。

誰に知られることもなく、誰に送られることもなく、世界から消えた。

善悪関係なく、絶大な力への責任なども一切なく、ただただ、生きたいように生きた。

思いのままの人生を送り、生涯を終えたのだ。

彼の死を世界が知ったのは、数年が経ってからのこと。

皆は言った。

彼を殺せる者などいるはずがない、彼の命を奪える者などいるはずがない。

彼を奪える者など、この世界に存在するはずがない。

もし、もしそんな存在がいると言うのなら……


138 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/25(水) 21:01:22.48 ID:LqPqQtC3O
次はこんなのが書きたいと妄想してる。
地の文とかト書きとか未だに良く分からんが、書きたいように書こうと思いました。ssだし。
感想とか色々ありがとうございました。

140 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/25(水) 21:17:18.98 ID:LqPqQtC3O

ーー「そうだ、オレの名は…」未完
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
青年「ああ、認めるよ……」
青年「俺の帰る場所」
少年「それが、僕の名前……」
少女『優しい世界』未完

鬼姫「早く来ないかしら」
勇者「共に歩み、共に生きる」
古の力と四人の戦士
古の力と四人の戦士 話伽/01未完
イケメン「童貞です」
男「男には色々あんだよ」


142 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/26(木) 16:06:50.26 ID:cbG5iJk9O
次は完結させてくれ、待ってるから

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