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1 : 2014/10/01(水) 02:46:12.16 -
俺ガイルSSです
・亀進行注意
・原作1巻しか読んでないので、キャラの口調に自信なし
・八幡の性格改変ものよければ見ていってください
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412099162
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412099162/
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2 : 2014/10/01(水) 02:48:08.84 -
静「——比企谷。お前は、自分が変わっているという自覚があるのか?」
八幡「ええ、まあ」
静「それを変えようとは思わないのか?」
八幡「いや、別に困ってないですし……」
静「お前自身が困っていなくとも、教師としてまともに人付き合いをしないお前のことを放っておけないんだ」
八幡「はあ……」
静「気のない返事をするな。衝撃のファーストブリットを食らわせて根性を叩き込んでやろう」
八幡「懐かしいですね、スクライド」
静「……お前自身の話だというのに、何故そうも他人事みたいな反応なんだ。私はお前のことを心配しているんだぞ!」
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3 : 2014/10/01(水) 02:48:53.95 -
八幡(平塚先生はいわゆる熱血教師という奴で、今時珍しく生徒に道を押し付けるような教師だった)
八幡(生徒に積極的に言葉を投げかけ、そいつが間違っていれば殴ってでも道を正そうとする強烈な人間)
八幡(方法や言い分が正しいかどうかは置いておくとして、他人と関わるのが苦手な生徒に必要となる部類の教師だ)
八幡(まあ……教師ともまともな会話をしない俺が、平塚先生が生徒によく声をかけているのか判断できるとは思えないが)
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4 : 2014/10/01(水) 02:49:46.42 -
静「それになんだ、この作文は!」バンッ!
八幡(そう言って平塚先生が叩いたのは、国語の時間に出された俺の作文の課題)
静「『高校生活を振り返って』————。そんな題名で、なぜ中学との授業内容の違いや施設の充実さしか書くことがないんだ」
静「普通『高校生活』と言えば、体育祭や文化祭といった友達と楽しむイベントが来るはずだ。なのに……お前の作文では友達の存在が一切書かれていない!」
静「比企谷、お前は友達を必要とすらしていないのか?」
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5 : 2014/10/01(水) 02:50:38.60 -
八幡「と、言われても……」
八幡(何の興味もないクラスメイトの走る姿を見ているのは苦痛でしかないし、応援なんかするわけもない。俺にとって体育祭は校舎の影で時間が過ぎるのを待つイベントだ)
八幡(文化祭は一人で行動することが前提のイベントなので、回りたいところを回れば後はヒマだった)
八幡(え? 準備期間は何してたかって? ただ仕事をしていただけで、今まで以上に誰かと仲良くなるはずがないだろう)
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6 : 2014/10/01(水) 02:52:40.04 -
静「ああ、もちろん担任には話を通してある。クラスで孤独なお前を少しでもいい方向に変えれたらと言ったら、快く了承してくれたぞ」
八幡「本人のやる気は関係なしっすか?」
八幡(部活動なんて面倒なことはやりたくない。そもそもどんな部活か分からないが、まともにこなせるとは思えない)
八幡(とはいえ担任まで敵に回ったんじゃ、抵抗したところで逃れられそうにないな)
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7 : 2014/10/01(水) 02:55:28.61 -
静「お前のことだ。最初はまともに取り組もうとするはずだ。合わないなら合わないでもいい、気楽にやってみてくれ」
八幡「…………」
八幡(そうやって「信じている」みたいな言葉で相手を持ち上げるのは、卑怯だと思う)
八幡(でも実際、俺が先生の頼みを断らないのは事実な訳で)
八幡(どんな部活か分からないにしろ、できるか分からない以上挑戦するのが俺なのである)
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8 : 2014/10/01(水) 02:58:24.10 -
とりあえずここまで
ストック書いて、一気に投稿していくスタイル取ります(投稿分短いけど)原作の八幡は人付き合いにマイナスな感情を持ってますが、ここの八幡は人付き合いそのものに興味がないって感じです
ストックはまだあるんで、早ければ明日また投稿します
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11 : 2014/10/01(水) 21:48:30.75 -
>>6正。抜けがあった
静「やはりいくら説教したところで気にもならないようだな……。なら私は強行手段を取って出てやろう」
静「比企谷八幡。これからお前は私の部活に入ってもらう」
静「ああ、もちろん担任には話を通してある。クラスで孤独なお前を少しでもいい方向に変えれたらと言ったら、快く了承してくれたぞ」
八幡「本人のやる気は関係なしっすか?」
八幡(部活動なんて面倒なことはやりたくない。そもそもどんな部活か分からないが、まともにこなせるとは思えない)
八幡(とはいえ担任まで敵に回ったんじゃ、抵抗したところで逃れられそうにないな)
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12 : 2014/10/01(水) 21:50:50.81 -
少ないけど続き投下します。>>7ら
八幡(結局先生の話を断ることはできず、その部活をやっている教室まで連れてこられたのだった)
静「入るぞ」
???「平塚先生。入る時はノックをしてくださいと何回も言っているんですけど」
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13 : 2014/10/01(水) 21:51:45.97 -
八幡(平塚先生に連れられて入った教室には、一人の女子生徒がいた)
八幡(恐らく美少女に分類されるであろう整った顔立ち。華奢な体型で人一倍白い肌。胸はそこまで大きくない。第一印象から見るにこいつは他人に対してキツめの態度を取るのだろう)
八幡(つまり俺のタイプの女子ではない。『だからどうした』レベルの女子だということだ)
静「悪い雪ノ下。次からはちゃんとする」
雪ノ下「毎回そう言って全く改善しませんね。……それで、そちらの男子は今回の依頼人ですか?」
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14 : 2014/10/01(水) 21:53:48.48 -
静「いいや、こいつは新しくこの部活に入る仲間だ。こう見えて結構変わった人間でな、他人と人間関係を作ろうとしない奴なんだ」
八幡「どうも」ペコリ
八幡(とりあえず目があったので挨拶しておく)
八幡(こういう時は名前とか自己紹介するべきだってか? 平塚先生も言っているだろう。俺が人間関係を作りたがらない人間だと)
八幡(初対面だとか相手が美少女だとか関係ない。『他人』に対して俺の心が開かれることは絶対にない)
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15 : 2014/10/01(水) 21:55:11.76 -
雪乃「……つまり彼はいわゆる、『ぼっち』という人種ですか?」
八幡「ずばり言うな……」
静「おい比企谷、初対面なんだから自己紹介くらいしろ」
八幡「(隠し通せなかったか。やれやれ)あぁ、はい」
八幡「比企谷八幡、1-A所属で、趣味は読書。とりあえず今後ともよろしく」
雪乃「……雪ノ下雪乃。1年J組所属。この部活の部長をやっているわ。『とりあえず』よろしく」
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16 : 2014/10/01(水) 21:56:03.29 -
八幡(雪ノ下雪乃……。ああ、こいつ学年トップの奴か。今思い出した)
八幡(あととりあえずを強調して返す辺り、嫌味ったらしい人間だと分かる)
静「うん。お前ら似た者同士だな」
八幡・雪乃「「はぁ?(怒)」」
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17 : 2014/10/01(水) 22:00:04.64 -
今日はここまで。短くてすいません
この八幡は原作よりも難攻不落です。雪ノ下レベルの美人で動じない時点でアレですし、恋愛にも興味持ってません
後々出てくるガハマちゃんは苦労すること確実ですね -
19 : 2014/10/01(水) 23:49:21.68 ID:B9HAdt/0o -
乙!
この感じだと小町との関係が気になるな
原作同様に仲の良い兄妹なのか -
20 : 2014/10/02(木) 01:35:21.73 ID:dwEh0N030 - 学年って2年生じゃなかったっけ?
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21 : 2014/10/04(土) 02:49:50.66 -
>>20幡たちは2年生でした
>>15『1-A』と『1年J組』を『2-A』『2年J組』に修正してください
それではこれから投下していきます。今回でプロローグは終わりです
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22 : 2014/10/04(土) 02:52:19.92 -
雪乃「平塚先生。言っていいことと悪いことがあります。こんな何事にもやる気を出そうとしない無気力な男と私を一緒にしないでください」
八幡「そうだな。こんな躊躇なく人を罵倒する心無い女と一緒にして欲しくない」
雪乃「先生の目は節穴ですね。いえ毎回私の忠告が届かない辺り耳も悪いんでしょう」
八幡「だから碌な男を見つけられないんですよ」
静「……お前らが私のことを嫌いだというのはよく分かった」
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23 : 2014/10/04(土) 02:54:19.43 -
八幡(自分らしくもなく怒ってしまったな)
八幡(とはいえ今のは平塚先生が悪い。俺は他人の悪口は言わずに心の中で言うタイプだ。俺は雪ノ下のように無駄にヘイトを集めるような真似はしない)
静「ともかく、雪ノ下も比企谷が無気力な人間だと見て分かったようだな」
静「比企谷は一般的な学生生活やら友達との楽しいお喋りやら、そういう青春めいたことに興味を示さないんだ」
静「だから比企谷の孤独思考を改善して欲しいというのが私からの依頼だ。——お前たちに対する、な」
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24 : 2014/10/04(土) 02:56:43.36 -
八幡「依頼……?」
静「やってくれるか、雪ノ下?」
雪乃「………………分かりました」
静「そう言ってくれて嬉しい。雪ノ下以外の部員がいないことは気になっていたからな。私はやり残した仕事があるので職員室に戻る。後は若い二人で精一杯親交を深めるように」
八幡(おいこいつもぼっちかよ。まあさっきの憎まれ口からして女子友達ができなそうな性格ではあるが)
八幡(具体的な説明は何もないまま平塚先生は行ってしまった。後に残ったのは会話を広げようとしないぼっち二人だけだ)
八幡(『ふたりぼっち』って書くとなんかかっこいい。厨二臭いけど)
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25 : 2014/10/04(土) 02:57:55.28 -
八幡「……あそこにある椅子、使っていいのか?」
雪乃「ご自由に。というか立ったままでいられると目障りだから読書の邪魔になるわ」
八幡「それで、ここは一体何部なんだ?」ガガガッ スッ←椅子引いてきて座った
雪乃「当ててみなさい。いきなり人に答えを聞くという姿勢は、自分の無能さを曝け出す愚かな行為よ」
八幡「………………依頼っていうワードからしてここがよろず屋めいた部活なのは分かる。問題はそのよろず屋めいた活動に似合う名前が存在しないことだ。だからこそ聞いてるんだよ、『ここはどんな名前の部活だ?』ってな」
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26 : 2014/10/04(土) 02:59:31.53 -
八幡(そう言うと雪ノ下は勢いよく読んでいた本を閉じ、椅子から立ち上がって俺を睨みつけた)
雪乃「比企谷くん。貴方は自分一人の力で解決できない問題に直面した時、どのような行動が最善だと思う?」
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27 : 2014/10/04(土) 03:02:22.44 -
八幡「そうだな……」
八幡(諦めて他の方法を模索する。そして解決に至るまでの労力と解決した時の対価を比較し、それが見合わないようなら即刻諦める。俺にとって効率は何をおいても肝要なのだ。タイム・イズ・マネーの精神だ)
雪乃「私は——もし本人に問題を解決する能力を不足していても、諦めずに自己研鑽に努めるべきだと思うの。人の可能性は無限大。何事にも挑戦して可能性を広げていくべきよ」
八幡(俺の答えを聞かずに雪ノ下は自分の弁を述べる。おそらく雪ノ下は俺が『諦める』というような答えを出すことを読んでいたのだろう)
雪乃「しかも私たちは未来ある学生。そんな私たちが自分から可能性を閉じるようなことはしてはいけないのよ」
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28 : 2014/10/04(土) 03:04:14.67 -
雪乃「ここは奉仕部。生徒の自己改革を促し、悩みを解決するその手助けを行う場所よ」
雪乃「改めて歓迎するわ。比企谷くん」
八幡「…………よろしく」
八幡(『奉仕』という言葉とその部活内容を聞いて、俺は思った——)
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29 : 2014/10/04(土) 03:08:10.85 -
八幡(これまでの人生で、本気で誰かを助けたいと思うことは一度もなかった。目の前で傷ついた人間がいても、手を差し伸べることはなかった)
八幡(他人に感情を向けないことが当たり前で、家族や好きな相手でさえそれは例外じゃない。冷静に、冷酷に、冷淡に、相手を傍観していた)
八幡(むしろ小中学で虐められた反動で、見知らぬ人間の破滅を願ってしまう俺がいる)
八幡(足を引っ張るのは目に見えている。だから俺はすぐこの部活を辞めることになる。そう確信した)
八幡(雪ノ下は俺を見て、俺も雪ノ下の顔を見返しながら、しかし俺の心は別のところに向いているのだった)
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30 : 2014/10/04(土) 03:09:19.68 -
プロローグ 「この比企谷八幡に優しさは微塵もない」 終
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31 : 2014/10/04(土) 03:15:50.96 -
これにてプロローグは終了です
プロローグだけで3回分の投下が必要とか……
しかも第一章はプロローグ以上に長くなってるし…………恐らく第一章も3回ぐらい投下が必要になると思います
>>19
性格が改変しているので、八幡と小町ちゃんの関係も若干変化しています
ガハマちゃんが登場する第二章の次の次の、第四章を小町ちゃんの話にする予定ですあと言い忘れていたことが二つ、
アニメは全話視聴しています
そして応援レスありがとうございます! これからも頑張ります!
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33 : 2014/10/04(土) 03:22:20.12 -
抜けすいません。>>29前部分にさしこんでください
八幡(他人を見ようともせず、まして興味も抱かない。ボランティア精神を欠片も持ち合わせない俺に、奉仕活動なんてできるわけがないと)
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37 : 2014/10/06(月) 02:11:37.75 - それじゃあ今から投下していきます
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38 : 2014/10/06(月) 02:13:11.11 -
八幡「…………………………」ペラリ
雪乃「…………………………」ペラリ
八幡(会話が弾みません。とても本が読みやすいです)
八幡(何をすればいいか聞いたら、依頼がない時は活動がないと言われたので俺も本を読むくらいしかやることがなくなった)
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39 : 2014/10/06(月) 02:16:35.66 -
八幡(俺が読んでいるのは『異能バトルは日常系のなかで』というライトノベル。もちろんブックカバーを着けてある。いやこれタイトルや主人公の厨二度とかパロディとか抜いたら、結構マジメな作品だからな?)
八幡(人の身に余る能力を手に入れたヒロインに対し、真摯に向き合って励ます主人公の姿がとんでもなく格好いい。これがあの『トリガー』でアニメ化されるとあっては、期待せずにはいられないだろう)
八幡(なんでガガガ文庫を読まないかだって? ……いやなんでガガガ文庫限定すんだよ)
八幡(ちなみに雪ノ下もブックカバーを使ってるので、何を読んでいるのかは分からない。実はヤバめの本を読んでいるのかもしれない。『神さまのいうとおり』とか『暗殺教室』とか)
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40 : 2014/10/06(月) 02:17:47.72 -
雪乃「…………比企谷くん。会話をしなさい」
八幡「えぇ……」
八幡(ようやく本に集中してきて、雪ノ下のことが頭から離れかけてたのに。現実に戻さないでくれよ)
雪乃「貴方の問題を解決しなければいけないのだから、貴方が協力しないことには始まらないわ」
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41 : 2014/10/06(月) 02:19:09.27 -
雪乃「平塚先生は孤独思考と言っていたけれど、実のところどうなのかしら? 貴方、友達いるの?」
比企谷「友達なら——いるぞ」
比企谷(俺にとって友達と呼べる関係にいる人間と言えば…………、『あいつ』と『あいつ』、だけだな)
比企谷「少なくとも2、3人いる」
雪乃「(……結構いたのね)それだけかしら?」
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42 : 2014/10/06(月) 02:20:20.56 -
八幡「それだけって……、確かに普通より少ないのは分かっちゃいるが」
雪乃「少ないのが分かっているなら、どうして増やそうとしないのかしら?」
八幡「なら逆に聞くが、どうやって本を読みながら友達を増やせるんだ?」
雪乃「人と話すならまず本を読むのを止めなさい」
八幡「ならお前も人と話す必要がないからって部室で本を読むなよな」
雪乃「…………貴方、見た目に寄らず性格悪いわね」
八幡「そうだな」
八幡(相手の好きなものを弁護材料にするなんて自分でも卑怯だと思うさ)
八幡(だけど、これが俺なんだ)
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43 : 2014/10/06(月) 02:21:35.28 -
八幡「大体話し相手なら他にもクラスにいるっての。雪ノ下だってそうじゃないのか?」
雪乃「あら。私にはそんな曖昧な関係の人間は存在しないわ」
八幡「いやそれだと友達いないことにならないか?」
雪乃「そういう風に取るのかしら。比企谷くんは人の粗探しをするのが好きなようね。そんなことばかりしているから友達が増えないのよ。直しなさい」
八幡(雪ノ下の目が言っている。『余計なことを言えば殺す』と)
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44 : 2014/10/06(月) 02:22:38.16 -
八幡(ていうかマジかよ……。友達いない女子とかありえんの? こいつの方がよっぽど孤独思考だよ)
八幡「はぁ……」
雪乃「その溜め息は何かしら。言いたいことがあるなら素直に言いなさい」
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45 : 2014/10/06(月) 02:23:53.21 -
八幡(その問い掛けは、これ以上この話題に触れないことの確認なんだと思うが、俺はそんな空気を読むような殊勝な人間じゃない)
八幡(もし俺が普通の奴なら、そもそもこんなよくも分からん部活に押し付けられたりしない)
八幡(つまり俺は他人と仲良くする気は全くなく、わざと空気を読む必要性など感じたりしないのだ)
八幡「いやさあ——」
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46 : 2014/10/06(月) 02:24:28.67 -
八幡「なんだか平塚先生は俺の孤独思考を直して欲しいんじゃなく、雪ノ下の孤独思考を直して欲しくて依頼したんじゃないかって思うんだよ」
雪乃「……………………は?」
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47 : 2014/10/06(月) 02:30:35.60 -
今日はここまでです
一つの行が長くなってるところがあるので、読みにくかったりしませんかね……?
特に八幡の脳内会話とか長くなってると思いますでももし名前表示『八幡() ←こんなの』を外したら、
改行しやすくなる代わりにさらに分量多くなって投下が遅くなると思うんです。なので余程苦情が来ない限り、今の様式で投下していくつもりです
あ、ちなみに今回おすすめしてる『異能バトルは日常系のなかで』はホントにおすすめです
私はコミカライズ読んで嵌りました -
49 : 2014/10/06(月) 06:14:24.69 ID:74odnrBDO -
>>36
ガハマさんの出番が無いってことですね
必然的に
わかります -
51 : 2014/10/09(木) 02:14:09.97 -
短いですが、これから投下していきます
>>49
ガハマちゃん『の』出番は減ってないよ! 減ってるのは他のキャラだよ! -
52 : 2014/10/09(木) 02:17:57.99 -
八幡(ちなみに今の俺の発言を意訳すると、『俺よりお前の方がぼっちだよな』だ)
八幡(あくまで遠まわしに、受け取る側がこの発言を挑発と取らなければ、ただの分かりにくい言葉でしかない)
八幡(しかし俺の言葉が挑発であることは変わらず、相手が馬鹿でもなければ気が付かないわけがないわけで、もちろんのこと相手は学年トップの雪ノ下雪乃である)
八幡(誤解などあるはずもなく、雪ノ下は俺が雪ノ下のことをバカにしているのを理解した)
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53 : 2014/10/09(木) 02:19:00.54 -
雪乃「比企谷くん。よく聞こえなかったから、今言ったことをもう一度言ってくれるかしら?」
八幡(うわー。目が笑ってないというか顔が引きつっているというか、ガチでキレてるっぽいなこれ)
八幡(まあ雪ノ下の言いなりになりませんが。言いたいことだけ言ったら後は相手がより怒らないよう会話を進めるだけである)
八幡「別になんでもない。忘れてくれ」
雪乃「なんでもないわけがないでしょう。私にはしっかり貴方の言葉が聞こえていたわ。誤魔化しなんて通じると思っているの?」
八幡「思ってないことが口に出たんだ。ちょっとした言い間違いなんだ。俺が悪かったから許してくれ雪ノ下」
雪乃「許すわけがないでしょう。貴方の言葉で私の心が傷ついたのよ」
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54 : 2014/10/09(木) 02:20:02.19 -
八幡(そこから暫く雪ノ下の説教は続く。相手が傷つく言葉を言ったことを過去の虐められたトラウマを引用しながらネチっこく追及してくる)
八幡(もっとも俺は雪ノ下がぼっちなのを否定しないことの確認が取れただけで満足だ。なので雪ノ下の説教を話半分に聞きながら、雪ノ下が求めているであろう返事を繰り返していた)
八幡(そして平塚先生がこの教室に戻ってきた)
静「随分会話が弾んでいるようだな」
雪乃「ノックをする気がないなら死んでくれませんか、平塚先生」
静「ど、どうした雪ノ下……?」
雪乃「…………失礼しました。どうにも気が立っていたので」
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55 : 2014/10/09(木) 02:21:21.57 -
静「なるほど。早速比企谷と衝突したか。予想した通りだ」
雪乃「予想していたんですか? なら何故仲がいいなんて言うんですか」
静「本質的に似通っているのさ、お前たちは。もっとも考え方が真逆なのだがな」
静「親しくはならないかもしれんが、お互いに見るべきところがあると思うんだ」
八幡(初対面から気に入らないと思っていたら、そういうことか。雪ノ下も俺もぼっちだし、どこか似ていたからこそ嫌悪していたのか)
八幡(まあ具体的にどこが似ているかは言語化しにくいが。平塚先生は分かっているのだろうか)
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56 : 2014/10/09(木) 02:22:48.92 -
雪乃「この男から学ぶところがあるように思えませんが」
静「こいつは結構強かなところがある。正攻法ばかりのお前では対処できないことも、もしかしたら比企谷なら対処できるかもしれん」
雪乃「私より比企谷くんの方が上手く依頼をこなせると、先生は考えているんですか?」
八幡(そう言って雪ノ下は俺の方を睨む。何こいつどんだけ負けず嫌いなの?)
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57 : 2014/10/09(木) 02:28:41.88 -
今回はここまで
次で第一章が終わりで、第二章が書きあがってから投下しようと思うので、投下が遅くなると思います
ちなみにこの八幡は目が腐ってません。笑ったらキモイでしょうけど、笑うことが少ないのでそれほど嫌われることがないかもしれません
むしろ腐る余地すらなかったとも言えますが。ある意味原作より酷い人間に仕上がっております -
60 : 2014/10/09(木) 09:44:16.25 ID:sksUmaM30 - 見てくれはイケメンだから裏で女子人気は結構ありそうだな
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65 : 2014/10/13(月) 14:43:25.12 -
今から投下していきます
台風だから会社とか学校とか休みになって見ている人は多いはず!>>60
初対面ではよく見られるでしょうが、時間が経てば話しかけてもらえなくなります
ソースは作者小町との関係は第二章や第三章でも仄めかしますから、気長に待ってください
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66 : 2014/10/13(月) 14:44:10.06 -
静「ふむ。折角の機会だし、ここでお互いの力を示しておくのも悪くない」
静「ここは一つ、どちらがより奉仕できるか勝負してみてはどうだ? 勝った方が————負けた方になんでも一つ命令できる」
八幡「なんでも……」
雪乃「下卑た考えは止めてもらえないかしら。確かに私は世間一般的に見ても魅力のある容貌をしているけれど……」
八幡「コンビニスイーツくらいでいいか」
八幡(『なんでも』とかクソどうでもいい。セクハラを意識させて引かれるより、不感症をほのめかせて哀れまれる方が気が楽だ)
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67 : 2014/10/13(月) 14:46:32.67 -
静「ふふ。どうやら比企谷からすれば、雪ノ下よりコンビニスイーツの方が魅力的らしいな」
雪乃「へぇ………………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
八幡「なんで煽ってんすか平塚先生ェ……」
静「比企谷。勝負である以上手を抜くことは許さない。全力を尽くせ」
雪乃「安心しなさい比企谷くん。私も全力で貴方の心を叩き潰してあげるわ」
八幡「いやこれ奉仕できるかの勝負だから。俺の心壊しても意味ないからね」
八幡(壊せられるもんなら壊してみろよ。——俺の心はとっくに壊れてるんだからな)
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68 : 2014/10/13(月) 14:47:19.37 -
静「判定基準は私の独断と偏見で決めさせてもらう。異論は認めん」
雪乃「異論なんてありません。こんな男に負けるとは思えませんから」
八幡「勝手にしてくれ……」
八幡(こうしていつも通り、俺の意思が介在することなく展開は進む)
八幡(本音を言えば奉仕勝負なんて向いてないことに力を入れたくない)
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69 : 2014/10/13(月) 14:48:44.02 -
八幡(適当にやって頑張っている姿を見せて、努力は最低限でただ終わるのを待つつもりだった)
八幡(しかし平塚先生の『全力でやれ』という言葉のせいで、俺は頑張らないといけなくなった)
八幡(断る理由が特にないなら、俺はその言葉に従う義務が発生する)
八幡(やれやれ。いつも通り俺の性格は難儀なことで。球磨川さんみたいに上手い負け方を目指してやるか)
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70 : 2014/10/13(月) 14:51:14.29 -
八幡(そういえば、もし球磨川さんがここにいたら、絶対に雪ノ下に裸エプロンさせようとするだろうな)
八幡(雪ノ下の裸エプロン…………)チラ
八幡(まあ需要はあるんじゃねえの?)
雪乃「何を見ているのかしら、比企谷くん。それともコンビニスイーツより私の方が魅力的だと撤回する気に「いやそれはない」」
八幡(あ、やべ。思わず本音言っちまった)
八幡(でも今のはコンビニスイーツを馬鹿にした雪ノ下が悪い。エクレアとかパフェとか侮れねえからな)
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71 : 2014/10/13(月) 14:51:55.29 -
雪乃「……どうしましょう。今まで男からはずっと好意的に見られていたから、こういう時どんな顔をすればいいか分からないわ」
静「笑えばいいと思うぞ。私のように!」
八幡「平塚先生。たぶん雪ノ下はエヴァを分かってません。あとモテない恨みを他人にぶつけないでください」
八幡(ぶつけるなら雪ノ下本人にぶつけてください)
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72 : 2014/10/13(月) 14:53:19.41 -
第一章 「しかし雪ノ下雪乃は相手にしてもらえない」 終
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73 : 2014/10/13(月) 14:58:59.42 -
これにて第一章は終了です
書き上げてみたら実はプロローグと大して字数は変わりありませんでした切り方がちょっと悪いかもしれませんが、これ以上長くやると他のキャラの出番が遠のくので、
小町ちゃんとか戸塚とかね。ただしこのスレにおいては天使ではありません台風でバイトが休みになりませんように、とか思う私は間違いなく社畜
皆さんも台風にはお気を付けください! -
75 : 2014/10/13(月) 19:01:45.96 ID:Pu9qd6CXo -
面白いわこれ
人が少ないのはタイトルかなあ
人物とか作品名検索で引っかかりそうにないしな
ただすごくしっくりくるいいタイトルだから勿体ない -
76 : 2014/10/13(月) 23:03:00.06 -
>>75
八幡「タイトル」にしようか考えたんですが、この八幡はわざわざこういうセリフは言わないと思いまして言うとしたら絶対内心でしょうね
検索に引っかからないのは覚悟の上です
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80 : 2014/10/15(水) 18:52:23.86 -
今から第二章投下していきまーす
……実はまだ第二章は完成してなかったりします
このままいけば第一章の倍近い分量になりそうですまあ何の問題もありませんね
今回投下分ではまだガハマちゃんの名前は出ない。次で出ます!
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81 : 2014/10/15(水) 18:53:18.48 -
八幡「平塚先生、奉仕部の活動日って何曜日ですか?」
静「特に決めていない。ただ雪ノ下は毎日行っているぞ」
八幡「なら雪ノ下に相談して交代制にして、担当曜日決めるか」
静「……あのなあ比企谷。依頼としてお前の性格矯正が受理されている以上、お前自身もそれに協力しないといけないだろうが」
静「大体逃げたところで、雪ノ下が簡単にそれを許すと思わない方がいい。教室に直接迎えに来るのは当然のようにしてくるだろう」
静「別に用事がある時まで無理に来いとは言わん。だが予定がないなら素直に部室に行くのをおすすめする」
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82 : 2014/10/15(水) 18:55:00.17 -
八幡(そんなわけで俺の放課後の予定は強制読書タイムに決定したわけだ。心底面倒臭い)
八幡(これで読む本を探すために、昼休みは図書館に、休日に本屋に行かないといけなくなった。別に本を読むのは好きだが、時間潰しと暇つぶしの意味合いは全く違う。無駄な時間を過ごすほど愚かなことはない)
八幡(俺が変わればいい話だと普通の奴なら思うが、俺のことを一番知ってる俺自身が『変わるはずがない』という結論を出している)
八幡(結果、俺はあの雪ノ下と同じ時間を過ごさなくてはならなくなった。誰かこの『美少女(毒舌)と過ごす時間』を金で買ってくれねえかな……、五千円くらいで)
八幡(まあ、売る相手がいないんだけどな。俺には)
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83 : 2014/10/15(水) 18:56:28.96 -
雪乃「………………」ペラリ
八幡「………………」ペラリ
雪乃「………………比企谷くん」パタン
八幡「?」 ←顔だけ向けて返事しない
雪乃「貴方は——自分自身を改善するつもりがないのかしら?」
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84 : 2014/10/15(水) 18:57:19.37 -
八幡「いやそもそも改善と言ったって、何をしたらいいか……」
雪乃「何をすればいいか、どんな方向に変わるのかはこの際別の話よ。でもね、比企谷くん————」
雪乃「部室に入って挨拶をしたら、仕事が終わったみたいに一目散に椅子に座って本を読み始めるのはどうかと思うのよ……」
雪乃「さすがの私でも、それがダメなことくらい分かるわ」
八幡(『さすがの私』とか言うのもどうかと思う。コミュ障だって言ってるようなもんだぞ?)
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85 : 2014/10/15(水) 18:57:57.02 -
雪乃「挨拶をしたっきり一度も顔を合わそうとしていないし。——貴方、わざとやってない?」
八幡(やっぱりこの態度はまずいよなあ……。まあ自覚的にやってんだけども)
八幡「そんなわけねえよ。本当に何をしたらいいか分かんねえんだよ」
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86 : 2014/10/15(水) 18:59:03.95 -
雪乃「そうかしら? 昨日のように誤魔化そうという考えが透けて見えるのだけれど?」
八幡「してねえよ、誤魔化そうとなんて」
雪乃「なら、自分のどういうところを改善させるべきかちゃんと考えなさい」
八幡(つまり雪ノ下には俺の悪いところが思いつかないんですね)
八幡(学年一の秀才相手にキャラを掴ませないとか、さすがです俺。略してさくおれ。全然略せてねえな)
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87 : 2014/10/15(水) 18:59:50.43 -
八幡「ん~…………。やっぱり人と深く関わろうとしないところだな」
雪乃「まずはそこよね。どう改善するべきかしら」
八幡「そうだよなあ。これはもはや生来の性質っぽいし」
雪乃「能力とか性質とかいう言葉で誤魔化そうとしないで、直す努力をしなさい」
八幡「(あ、これ次言い訳したら怒るな)……ああ、はい。頑張ります」
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88 : 2014/10/15(水) 19:00:18.95 -
八幡(雪ノ下を怒らせないよう慎重に会話をしていると、部室のドアが開いた)
八幡(そこには『見覚えのない』女子生徒がいた)
??「失礼しま~す」
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89 : 2014/10/15(水) 19:08:49.82 -
投下分終了。八幡が皮肉を返さないから雪ノ下のテンションが低い!(歓喜)
ていうか「異能バトルは日常系のなかで」が爆死してんじゃん!(憤怒)
スタッフよく見たら「キルラキル」メンバーほとんど参加してませんでした。
言っておきますがこの作品、「中二病版俺ガイル」と言ってもいいほどのシリアス作品です読むなら小説かコミカライズにしましょう。絶対ですよ!(ダイマ)
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91 : 2014/10/15(水) 22:56:42.75 ID:G93yb/p7o -
乙
八幡が察しまくってあたりさわりないからヒートアップすら出来ない雪乃がザマァかわいい
元からそうっちゃそうだけど、ことごとく言ってることがブーメランな雪乃がザマァかわいい
原作ゆきのん好きじゃないけど
言われっぱなしとも違う、ここの(心が)強化八幡が雪乃に逆攻撃しないのはバファリンの半分なんだろうか
関心のカケラもないというパターンも……>>90
たった8分で……?
他スレでもあちこちでsageずに「はよ」してるから間違ったのか? -
92 : 2014/10/15(水) 23:17:29.86 -
ここの八幡の呼び名を探していたら、
「神八幡」
[副]《八幡神にかけて偽りない意から》絶対に。神かけて。誓って。という言葉を見つけたので、これからはここの八幡を「神八幡」と呼んであげてください
なんせここの神八幡は、絶対に自爆することがありませんから(周りに爆弾を投げ入れます)
>>91
後者です。
半分はわざわざ指摘してやる義理がないから
もう半分は指摘すると反撃されるから徹頭徹尾自分の都合しか考えてません
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93 : 2014/10/15(水) 23:19:55.14 - sageとかsagaとかレスごとにブレてますが、トリップが同じなのでスルーお願いします
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95 : 2014/10/16(木) 09:51:47.56 ID:hTLHYbD9O -
むしろここまでだと部活に来るのが不自然な件
どんな手使ってでも帰宅しそう -
97 : 2014/10/18(土) 02:23:20.97 -
>>15gt;>21
八幡のクラスは「2-F」でした。これでは主要人物と別クラスになってしまいますね>>91
そもそもプロローグのタイトルからして、バファリンの半分はありえません>>95
神八幡は自分の悪い部分を自覚しています
だからこそ負い目を感じて部活に足を運んでいるわけですそれではこれより投下していきます
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98 : 2014/10/18(土) 02:25:07.11 -
??「え、なんでヒッキーがここにいるの!?」
八幡「一応ここの部員なんだよ。昨日この部活に入ったばっかりだがな」
??「へえ~。あれ、でもヒッキーって部活に入る気ないとか言ってなかった?」
八幡「色々あんだよ。色々。つーか俺のことよりお前のことだろ。相談事があるんじゃねえのか」
??「こういう機会じゃないとヒッキーと話できないじゃん」
八幡(ていうかこの女子、ガチで誰だよ)
八幡(クラブに入る気がないって話はしたことあるけど、何でそのこと知ってんの?)
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99 : 2014/10/18(土) 02:27:00.64 -
雪乃「えっと、あなたは2年F組の由比ヶ浜結衣さんよね?」
結衣「え? なんで私の名前……っていうか雪ノ下雪乃さん!? なんでここに!」
雪乃「それは私がこの奉仕部の部長だからよ」
結衣「そうなんだ。じゃああたしの名前を知ってたのは?」
雪乃「同じ学校なのだから、あなたの名前を知っていてもおかしくないわ。それに記憶力はいい方よ。もっとも例外はあるけれど」
結衣「ああ、確かにヒッキー影薄いもんね」
八幡(男子より女子が多くなると、会話のメインが女子になる法則)
八幡(ならその法則に従って俺を除け者にしておいてくれ。会話をしなくて済むからな)
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100 : 2014/10/18(土) 02:28:08.44 -
結衣「相談を受けてくれるって平塚先生から紹介されたけど、そもそも奉仕部って何の部活?」
雪乃「奉仕部とは、その人の問題をその人に解決させるよう促し、本人の成長を臨む部活。分かりやすく例えるなら、飢えている人に魚を釣ってあげるのでなく釣り方を教えて飢えないようにするのよ」
結衣「正直よく分かんないけど、凄いことをしているのは分かった!」
八幡(いや今の例えくらい分かれよ。仮にも進学学校生じゃねえのかよ)
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101 : 2014/10/18(土) 02:29:17.70 -
結衣「それで相談なんだけど、クッキーを…………」チラ
八幡(由比ヶ浜がなぜかこっちを見て言い淀んだ。理由を推測し、俺は鞄を持って立ち上がった)
八幡「男子には話しにくい相談か。なら俺は外す。困ったことがあったら図書館に呼びに来てくれ」
八幡(本当なら少し席を外すくらいでいいのだが、自分以外の人間しかいない空間に鞄を置いておくことはありえないので、それだったらいっそ戻ってこないことを前提にした方が俺的に都合がいい)
雪乃「何を逃げようとしているのかしら。あなたも奉仕部員なのだから、ちゃんと依頼に向き合いなさい」
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102 : 2014/10/18(土) 02:30:15.65 -
八幡「逃げようとなんてしてねえよ。なんだか由比ヶ浜が言いにくそうだったし、女同士の方が話しやすいことがあるだろうから気を使ったんだよ」
八幡(とはいえ俺は本気で図書館に行くつもりだったし、お前らが呼びに来なければずっと図書館に居るつもりではあった。つまり俺が逃げるかどうかの選択権は俺ではなくこいつらにあった)
八幡(まあ閉館時間になれば一回戻ってくるだろうが。それくらいの紳士性はさすがの俺も持ち合わせている。逆に言えば最低限の紳士性しか持ち合わせる気がないとも言えるが)
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103 : 2014/10/18(土) 02:33:02.93 -
雪乃「言い訳は結構。あなた自身の性根の改善も依頼なのだからきちんとこなしなさい」
八幡「分かってるよ(嘘だけど)」
結衣「……二人とも何の話? あたしついていけないんだけど」
雪乃「ごめんなさい由比ヶ浜さん。奉仕部内の話だから気にしないでもらえるとありがたいわ」
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104 : 2014/10/18(土) 02:34:23.98 -
八幡「結局のところ問題は、由比ヶ浜が俺に依頼内容を話してくれるかどうかだな」
雪乃「早速由比ヶ浜さんに責任を負わそうとしていないかしら? 依頼内容がどうであれ、比企谷くんの参加は絶対よ」
八幡「あっそ。で、由比ヶ浜。お前は依頼内容を俺に話せるのか、話せないのか、どっちだ?」
結衣「え、えーっと……別にヒッキーに話せないってわけじゃない……かな?」
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105 : 2014/10/18(土) 02:35:14.05 -
八幡「なるほど。じゃあ話してくれ」
雪乃「待ちなさい。聞き役は私がするわ。比企谷くんはメモでも取っておきなさい」
八幡「……まあ書記くらいやってもいいが、なんか俺への当たりが強くないか?」
雪乃「そう思うのはあなたの不真面目な態度のせいよ。さて由比ヶ浜さん、話してもらえないかしら」
結衣「あ、…………うん」
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106 : 2014/10/18(土) 02:36:33.90 -
結衣(なんだろう……? ようやくヒッキーと話ができたのに全然嬉しくない。雪ノ下さんと話しているのを見ても、全然羨ましくない)
結衣(むしろヒッキーと話す雪ノ下さんが気の毒に見える。ムダなことを頑張ってるみたいな……)
結衣(——ううん。こんなこと考えてちゃダメだよね)
結衣(だってヒッキーは)
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107 : 2014/10/18(土) 02:39:52.30 -
結衣(ヒッキーは————あたしとサブレの命の恩人なんだもん)
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108 : 2014/10/18(土) 02:47:05.74 -
今回はここまで。神八幡ひどいな!
でもようやく、神八幡のひどさが浮き上がってきた感じです
今更言いますけど、性格改変によって入学式の交通事故にも変化が起きています
どうしてサブレだけではなくガハマちゃんまで助けたことになってるかは、後々語られます神八幡がガハマちゃんのことを知らないのは、単純に「同じクラスになって時間が経っていないから」
そして何より「1年前に助けた相手なんて覚える価値すらないから」です……うん。ヤバイ
これから依頼を通して、ガハマちゃんの理想は滅多打ちされていきます
ぶっちゃけガハマちゃんは神八幡に惚れないでしょうけど、その方が被害が少ないのでよっぽど幸せです
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109 : 2014/10/18(土) 04:27:21.00 ID:MpPrALwDO -
>>108
>惚れない
せめてメインヒロイン候補の一人くらい欲しかった…
つーか先の展開暴露し過ぎじゃね? -
110 : 2014/10/18(土) 06:28:01.79 ID:rbmzVmgd0 - 八幡が言い返さないから、雪ノ下が好き勝手言うから苛立ってくる。
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113 : 2014/10/18(土) 09:28:45.90 ID:8sYWM9G80 -
この八幡は他人に無関心なのに、面倒を避ける性格じゃないのがアンバランスに見えるな
となりの関くんみたいに他は無視して自分の興味が有ることだけに黙々と打ち込むタイプにも見えないし
毎日放課後部活に行くのも、負けたら何でも言うことを聞くという理不尽な勝負させられるのも
たいして面倒に感じてないのかな?
平塚先生の『全力でやれ』の一言でなんでもハイハイ聞いちゃったら破滅まっしぐらな他人にとって都合のいい人間になりそう -
116 : 2014/10/18(土) 12:20:27.71 -
>>109gt;>115
解説が多くなっているのは、本文の文章量を少なくしたいからです
ただでさえ亀進行なのに、描写を増やしたらさらに展開が遅くなります
むしろ意図して本文外での解説を多くしていきます>>110gt;>111
他のキャラや読者がいくら不快に思っても、神八幡は雪ノ下の発言に動じることはないので……>>113
「面倒を面倒だと思っていない」と言いますか、自分に降りかかる災難に対しても第三者の視点から傍観しようとします
なので理不尽な命令には普通に逆らいます -
117 : 2014/10/18(土) 12:26:31.06 -
神八幡は他人にも興味ありませんが、自分にも興味を持っていません
自分にしろ他人にしろ、誰がどうなっても構わないけれど、善悪の価値基準だけははっきりしています。
相手が間違っている時に限り文句は言います神八幡に一番近い性格をしているのが、西尾維新の「戯言遣い」だと思ってください
雪ノ下だろうがガハマちゃんだろうが平塚先生だろうが小町ちゃんだろうが戸塚だろうが、
これまでもこれからも、「好きが零で嫌いが零」です神八幡は誰かを好きになることがないので、ヒロインかどうかは「神八幡のことが好きかどうか」で決まります
異性として好きじゃなくても友人として好きになればいいので、ガハマちゃんがヒロインになる可能性はまだあります -
120 : 2014/10/19(日) 02:34:07.25 -
試験作として、本文内に説明をプラスしたSSを書いてみました
八幡「雪ノ下にグロマンガを読ませてみた」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413652879/グロ描写はまったくないですし、内容短く終わらせたので良かったら意見欲しいです
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124 : 2014/10/19(日) 13:22:58.12 -
【】は要らないですよね……
好評なようですので、次回から本文に説明を追加してみようと思います
次回投下は若干遅れると思います -
125 : 2014/10/19(日) 13:24:55.77 -
よく考えたら、作者は第二章をほぼ書き終えているのに対し、
読者はガハマちゃんが登場したばかりで「惚れない」と言ったわけですからね……見通しが悪くてすいませんでした。猛省しないと……
確かに【】は要らないですよね
好評なようですので、次回から本文に説明を追加してみようと思います
次回投下は若干遅れると思います -
129 : 2014/10/24(金) 02:14:22.47 -
このSSはそもそも神八幡の視点から書かれているので、グロ雪乃みたいに三人称の地の文を入れたら、
一人称と三人称とが入り乱れてこんがらがりましたせめて第二章が終わるまでは今まで通りのやり方で書かせてください
それでは投下します
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130 : 2014/10/24(金) 02:15:09.79 -
雪乃「手作りクッキーを作りたい、と」
結衣「友達に相談したらマジな雰囲気に取られちゃうし」
八幡(好意を持ってるってわざと取られるわけですね)
結衣「別に好きとかそんなんじゃなくて、本当にお礼の意味を込めてプレゼントしたいの」
雪乃「分かったわ。奉仕部は由比ヶ浜さんの依頼を受けましょう。ではまず家庭科室に行きましょうか」
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131 : 2014/10/24(金) 02:16:25.99 -
八幡(そうして色々あって時間が経過し、由比ヶ浜のクッキーが完成したわけだが……)
クッキー「コゲタヨー」
八幡(由比ヶ浜なんとかさんはメシマズ、いや料理の適性がこれっぽっちもなかった)
八幡(卵の殻が入ったまま作業を続けようとするのはまだ序の口。小麦粉の代わりに片栗粉やパン粉を入れようとしたり、味の素を入れれば料理が美味しくなると本気で言ってやがった)
八幡(『料理をしたことがない俺でさえ』、由比ヶ浜が駄目なのが分かる。料理も得意だと言っていた雪ノ下は完全に青ざめていた)
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132 : 2014/10/24(金) 02:17:01.65 -
雪乃「これは……処置なしね」
八幡「とりあえず由比ヶ浜は今後一切料理はするな」
結衣「その結論早くない!?」
雪乃「比企谷くん駄目よ。それはまだ最終手段だから」
結衣「まだ!? もう最終手段想定してるし!!」
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133 : 2014/10/24(金) 02:17:41.53 -
八幡(まあ別に失敗作というだけで味見しない理由にはならないな)ヒョイパク
雪乃・結衣「「あっ」」
八幡「………………」モグモグモグ
八幡「……駄目だなこれは。端的に言って、腐った味がする」
八幡(俺としても酷評はしたくないが、事実は事実である。それにこの場合わざと酷いことを言った方が由比ヶ浜のためになる)
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134 : 2014/10/24(金) 02:18:24.12 -
結衣「そ、そんなにダメ……?」
八幡「普通なら作った本人なんだから食えと言いたいが、さすがに人前で戻すのは勘弁だろ」
雪乃「言いたくないのだけれど……これは捨てましょう、由比ヶ浜さん。今度は私も手伝うから、もう一度作りましょう」
結衣「うぅ……」
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135 : 2014/10/24(金) 02:19:17.04 -
八幡(クッキーカッコカリは結衣自身の手で三角コーナーに送り込まれる。泣きそうな結衣を雪乃が精一杯励まし、もう一度クッキー作りが再開する)
八幡(次は雪ノ下と、少ないながら俺もフォローに回る。しかしそれ以上に由比ヶ浜が失敗を繰り返した)
八幡(俺たち三人とも疲れを溜めながら、なんとかクッキーは完成。完成品は一つ一つの焼き加減が曖昧で、生焼けのものもあれば焦げているものがある)
八幡(とはいえ先のものより数段上手くできている。ムラがあるが、一部は食べられるものに仕上がっていた)
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136 : 2014/10/24(金) 02:19:58.01 -
雪乃「さっきよりは十分上達したわ」カリカリ
八幡「食えるには食える」ガリガリ
結衣「でも……こんなんじゃまだ」カリカリ
八幡(確かにまだ雑味やしっとり感が残っていて、素直に美味しいとは言いにくい)
八幡(しかし雪ノ下が手伝ったとはいえ、二回目にしてこの成長具合はむしろ上出来。あと二、三回作れば一度くらい成功品が作れるはずだ)
結衣「ヒッキー的には、どう?」
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137 : 2014/10/24(金) 02:21:04.45 -
八幡「どう、と言うと?」
結衣「このクッキーを貰って、喜ぶ——と思う?」
八幡「そうだな。一般的な男子なら女子からのプレゼントはどんなものだろうと喜ぶと思うけどな」
結衣「ヒッキーの意見が聞きたいの。正直に言って」
八幡「……………………」
-
138 : 2014/10/24(金) 02:23:29.34 -
八幡(正直になんて、言えるわけねえだろ)
八幡(たとえプレゼントであろうと、相手が女子でも一国の姫だろうと、俺は不味い食べ物を押し付けられたら躊躇なく憎める人間なんだ)
八幡(さすがに感想をそのまま言うほど、今はもう幼くない。それに本音を言って他人を騒がせるのは、うんざりなんだ)
八幡(自分の心の醜さは自覚した)
八幡(だから俺はいつも嘘をつく。言い繕い、誤魔化そうとする)
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139 : 2014/10/24(金) 02:24:06.07 -
八幡「手作りだってことなら納得する。でもこれだったらどうして市販のやつをプレゼントしないのかって思う」
結衣「っ……! そっか……」
雪乃「比企谷くん、言い過ぎよ!」
八幡「でもまあ————」
結衣「もういい……」
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140 : 2014/10/24(金) 02:24:37.03 -
結衣「こんなクッキーじゃ、貰っても誰も喜ばないよね」
八幡「おい……」
八幡(俺の言い訳タイム……)
結衣「あはは、あたし調子乗ってたのかな。不器用だって分かってたのに…………」
雪乃「いい加減にしてくれないかしら」
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141 : 2014/10/24(金) 02:25:54.05 -
今日の投下分終了
どうやら本文で説明が少ないことよりも、本文外で解説が多かったことが不評のように思えます
今後ともしっかり書いていくので、応援よろしくお願いします
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149 : 2014/10/26(日) 12:06:28.50 -
私も「神八幡」は痛いとは思っていますが、それ以上に思い当たる呼び名がないので
これからも使っていくつもりです別に無理強いまでしませんし、他の呼び名が思いつけばそっちに乗りかえて構いません
では投下します
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150 : 2014/10/26(日) 12:07:24.81 -
雪乃「この際だから二人に言うわ。向いてない、とか能力がない、とか大した努力もせずに諦めて分かったようなことを言わないでもらえないかしら」
雪乃「中途半端な努力で諦めて、才能のある人を羨んで、それで満足? 成功した人間だって努力をしているわ。あなたたちはその努力を想像すらせず、どうして自分には無理だと決めつけてしまうの」
雪乃「駄目だったなら、やり直せばいいだけじゃない。そこで踏みとどまることくらいできるでしょう。負けることが恥ずかしい? 違うわ、挑戦することを止めて負け犬になるのが一番恥ずかしいの」
雪乃「分かったかしら、そこの愚かな負け犬二人。いいえ、負け犬二匹」
八幡「…………」
結衣「…………」
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151 : 2014/10/26(日) 12:08:41.18 -
八幡(……俺はいいとして、なんで由比ヶ浜まで負け犬呼ばわりされてんの?)
八幡(俺が過小評価されようがどうでもいいが、由比ヶ浜まで悪く言われるのは納得できん。…………ん? 俺らしくないこと考えてるぞ?)
八幡(由比ヶ浜なんてどうでもいい。そもそも由比ヶ浜の言葉がきっかけで雪ノ下は怒っている。どうして真っ先にまず俺のせいだと考えた?)
八幡(あ、そっか)
八幡(今までの俺の言動で雪ノ下に鬱憤が溜まっている可能性があるからか。そのことで発生する俺への責任に真っ先に考えが及んだだけか)
八幡(由比ヶ浜のことを心配したんじゃなく、リスクに目がいっただけ。ならいつも通りの俺だ。どこもおかしなところはなかった)
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152 : 2014/10/26(日) 12:09:15.15 -
八幡(とはいえこれで由比ヶ浜は俺ら二人ともに否定されたわけだ。さすがにやる気も失せただろう)
八幡(初回の依頼は失敗か、やれやれ。残念無念また来週、ってか)
結衣「……かっこいい」
八幡・雪乃「は?」
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153 : 2014/10/26(日) 12:10:21.30 -
八幡(雪ノ下とハモってしまった。いや、それはいい。それよりさっきの雪ノ下のどこがかっこよかったんだ?)
雪乃「比企谷くんと被ってしまったわ、腹立たしい。それはそれとして由比ヶ浜さん、今の私のどこがかっこよかったのかしら? 結構キツイことを言ったはずだけれど」
結衣「うん、確かに雪ノ下さんはキツイことを言ってるけど、でも思ったままのことを言ってるでしょ」
結衣「あたしって周りに合わせてばっかで、友達相手でも本音を言えないことが多くって。本音を言って友達との仲が悪くなるのが怖くて、言いたいことをいっつも我慢してるの」
結衣「でも雪ノ下さんは真っ直ぐ言いたいことを言ってる。言葉を選ぶのが間違ってて、本音を言うことが何よりも正しいと思ってる。自分にとっても正直で、そんな雪ノ下さんがかっこよく見えた」
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154 : 2014/10/26(日) 12:11:01.71 -
雪乃「————」
雪乃「そ、そうね。周りに合わせるなんて、自分の責任を周りに押し付けてるだけよ。心の通った友人を作りたいなら、本音を言わないといけないわね」
結衣「きゃー! ゆきのんすっごくかっこいい!」
雪乃「えっと……。その『ゆきのん』というのは何かしら?」
結衣「仇名だよ。呼びやすいじゃん。ゆきのん、ゆきのん、うん!」
雪乃「由比ヶ浜さん、それ止めてもらえないかしら。ちょっとバカっぽく聞こえるから」
八幡(由比ヶ浜が雪ノ下を褒め出してから、終始由比ヶ浜のペースだった。普段の上から目線な態度と比べれば、今の雪ノ下は可愛げがあるというか、見ていて大変面白い)
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155 : 2014/10/26(日) 12:12:10.75 -
八幡(だが由比ヶ浜の正論を聞いているせいで、むしろ俺は気分が悪くなっている)
八幡(正論は正しい。大衆ドラマみたいに夢があっていい。しかしそれは現実ではない)
八幡(言いたいことを言いたいなら、会話のジャンルで話す相手を変えるべきなのだ)
八幡(ペットの話は同じくペットを飼っている相手か動物が好きな相手にする。勉強の話は勉強ができない相手にはしない。相手に通じる話でしか会話は弾むことはない)
八幡(友達に言いたいことを言わないのは間違っているってか? 逆だ。潔癖な奴にズリネタを話す馬鹿がどこにいる。沈黙は金。言うべきことと言うべきでないことを線引きし、言わなかったことを別の相手に言えば、秘密を少なくすることができる)
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156 : 2014/10/26(日) 12:12:50.45 -
八幡(まあこれは俺のやり方であり、秘密を少なくできたとしても秘密を無くすことはできない。そもそも由比ヶ浜が友達に隠し事できないほど心細いから、こうして悩んでいるんだろうしな)
八幡(俺の価値観と由比ヶ浜の価値観、どちらが正しいかはどうでもいい)
八幡(俺の『言いたいこと』は別にある)
八幡「なあ由比ヶ浜、さっきの話の続きなんだが」
結衣「なあに、ヒッキー?」
-
157 : 2014/10/26(日) 12:13:37.19 -
八幡「お前はなんで手作りに拘ってるんだ?」
結衣「……………………」
雪乃「……比企谷くん、何を聞いているのかしら。それは由比ヶ浜の好みなのだから、問い質す意味がないわ。というか、依頼内容に口出ししてどうするの」
八幡「あのさ。最後まで喋らせてくんね?」
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158 : 2014/10/26(日) 12:14:16.37 -
八幡「で、だ」
八幡「俺が言いたいのはまさに、手作りにしたいっていうのが由比ヶ浜の好みだということだ」
八幡「大抵の日本人なら贈り物を貰ったら感謝する。女子から何か貰ったらたとえゴミだろうと男子は喜ぶ。そういうもんだ」
八幡「稀に受け取る側が不満を言うことがあるが、それはそれ、これはこれ。贈る側の思いと受け取る側の喜びに因果関係なんてない」
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159 : 2014/10/26(日) 12:14:44.52 -
八幡「結論を言おう」
八幡「由比ヶ浜。お前が手作りに拘っているのは、相手が手作りクッキーで喜ぶのが分かっているからか?」
八幡「そもそもお前は手作りクッキーを完成させたいのか、手作りクッキーを作れるようになりたいのか、どっちなんだ?」
八幡「これといって手作りに拘る理由がないなら————自己満足以外に理由がないなら————お前はここで頑張る必要はねえよ」
-
160 : 2014/10/26(日) 12:19:27.12 -
ここまでです
原作知ってる人からすれば、神八幡はめちゃくちゃ酷いこと言ってますね
ガハマちゃんの思い全否定してますから第二章は後二回くらい投下すれば終わるかと思います
長かった……第三章が終わればようやく小町ちゃんを登場させられます!
お楽しみに! -
168 : 2014/10/31(金) 01:08:19.79 -
神八幡は性根がねじ曲がってますけど、他人を積極的に言い伏せて何かしたりしません
ていうか平塚先生はそこまで職権乱用してないような……というか特定の生徒に目をかけるなんてことはどんな教師だろうとやってます
一番身近な例が、顧問教師が部員に何かおごるとかでは投下していきます
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169 : 2014/10/31(金) 01:08:49.70 -
八幡(ここまで断言しておいてなんだが、俺は今の言い分に言い返して貰いたかったりする)
八幡(ちゃんと由比ヶ浜が相手のことを思って手作りクッキーを作りたいっていうなら、俺はその意思を尊重したい)
八幡(だからこそ俺は悪役を買って出てでも、由比ヶ浜の思いを確かめたかった。悪いのは俺だと、間違っているのは俺なのだと確信を得たかった)
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170 : 2014/10/31(金) 01:09:16.83 -
八幡(だが、滅多にない俺の純心なる願いは叶わなかった)
結衣「——————」
雪乃「——————」
八幡(雪ノ下も由比ヶ浜も『そんなこと考えもしなかった』という顔をしていた)
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171 : 2014/10/31(金) 01:09:56.23 -
八幡(別に由比ヶ浜はいい。こいつはこういうことを友達から教わるタイプの人間だ。……だけど雪ノ下、お前は違うだろ)
八幡(お前は頭のいい人間なんだろ。他人を助けたいと思っているのはお前の方だろ。なのになんで……っ、こんなことにさえ頭がいかねえんだ!)
八幡(——いや。今は雪ノ下が期待外れかどうか考えてる場合じゃない)
八幡(このままだと俺が正しいまま話が進む可能性がある。それだけは避けないといけない)
-
172 : 2014/10/31(金) 01:13:01.86 -
八幡(俺は正しく見られようが悪く見られようが、そんなことに興味はない。だが助けたいとかけらも思っていない俺が正しく見られるのは違う。そんなのは間違ってる。俺の心境を知れば、誰だってそう思うだろ?)
八幡(なら俺のやることは一つだ。尖った正義は少数派へと立場を変え、正論は暴論に変わる)
八幡(余計なことを言い過ぎれば、人は勝手に言い返してくれる)
八幡(任せたぞ————雪ノ下)
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173 : 2014/10/31(金) 01:14:52.14 -
八幡「まあ由比ヶ浜のことだし、相手が喜ぶ方を選ぶんだろ? さっき手作りを諦めかけてたし」
八幡「それに由比ヶ浜って化粧得意そうだから、クッキーを作るよりも買ってきたクッキーを飾り付ける方が案外上手くいくんじゃねえの?」
八幡「無駄な努力……とまでは言わなくても、もっと効率的に相手が喜ぶよう努力するのも一つの手だと思うぞ」
八幡「ほら、バレンタインとかで手作りキットみたいなのあんじゃん? あれ使うのズルって言わないだろ。たとえ手順を省いたり友達に手伝ってもらったからって、手作りなのは変わらない。なら湯銭とラッピングだけしかしてなくても、手作りだって言え——」
雪乃「そこまでにしておきなさい」
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174 : 2014/10/31(金) 01:17:35.11 -
雪乃「あなたが言っているのは飢えている人に魚の釣り方を教えているのではなく、釣りをしている人に魚屋の場所を教えるようなものよ。言うなれば、その人の努力の意味を霧散させる最低な行為よ」
八幡「違うな雪ノ下」
八幡「ここは災害大国日本だぞ? 大地震で家屋が潰れようがコンビニで行列を作る、大変律儀で真面目な民族だ。魚屋が閉まるなんてありえない。きっと誰もが頼めば店を開き、魚を売ってくれるさ」
雪乃「話をずらさないで。今さっき由比ヶ浜さんが努力しようと決心してくれたのに、どうしてそれを否定するようなことを言うの」
八幡「否定してねえよ。努力の方向を間違うなと言ってんだよ」
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175 : 2014/10/31(金) 01:18:27.00 -
結衣「ヒッキーは、あたしがクッキーを作るのが、間違いだって言うの……?」
八幡(由比ヶ浜の声は震えていた。けれど由比ヶ浜が傷ついているという事実を気にせず、俺は躊躇することなく言葉を続けた)
八幡「…………間違ってるかどうか決めるのは俺じゃない。作る側である由比ヶ浜と、受け取る側の誰かだ。俺たち奉仕部は、手助けの立ち位置から出ることはできないんだよ」
結衣「でもヒッキーは間違ってるって思ってるんでしょ?」
八幡「………………」
結衣「——————そっか」
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176 : 2014/10/31(金) 01:19:28.13 -
八幡(俺が否定しなかったのを受け、由比ヶ浜は顔を俯け黙り込んだ)
八幡(俺も雪ノ下もどう対処していいか分からず、しばらく時間が経つ)
八幡(——不意に由比ヶ浜がエプロンを外し机の上に置いた)
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177 : 2014/10/31(金) 01:20:30.14 -
結衣「ごめん——————」
八幡(そう言って由比ヶ浜は家庭科室から一人出ていった)
八幡(多分——泣いていたのかもしれない。そしてこれからどこかで泣きに行くのだろう)
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178 : 2014/10/31(金) 01:25:35.91 -
次回で第二章が終了
なんだかガハマちゃんが酷い目に遭う区切り方ばっかりな気がしますが、
たぶん気のせいなんだと思います神八幡のやり方は球磨川さんというよりパリストンの方が近いと感じますね
球磨川さんは勝ちたいと思ってますが、
パリストンは勝ちも負けも一緒くたに考えているところが神八幡と似ているようなていうか神八幡は相手の心を折りたいとか思ってねーから!
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183 : 2014/10/31(金) 10:11:12.34 ID:ecIcKmOwO -
パリス豚てなんだよ?
とりあえず他作品のキャラで例えを出すなら、もっと分かりやすいキャラでお願い神八幡てよりは偽八幡のほうがしっくりくるな
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188 : 2014/10/31(金) 22:09:49.91 -
ここまで反対意見が出れば黙っているわけにはいきませんね
ようやく新しい呼称も出ましたし、「神八幡」という呼称はお役御免ということで
偽八幡を使うかは人それぞれ
>>183
ハンターハンターは少年ジャンプだから!
パリストンと球磨川さんは出身同じです! -
193 : 2014/11/02(日) 17:05:07.44 -
ちょっと分量長くなったので、投下は二回に分けます
夜に第二章終了まで投下します
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194 : 2014/11/02(日) 17:05:56.59 -
雪乃「なんてことをしてくれたの……!」
八幡(雪ノ下は怒りをあらわにし、鋭い表情を俺に向けてきた。当然の流れである)
八幡(しかし俺は悪びれることもなく泰然としていた)
雪乃「由比ヶ浜さん、泣いていたわ。あなたが泣かせたのよ。あなたには…………人の心というものが存在しないの?」
八幡(——無いよ。そんなものは)
八幡(人の心があるせいで第三者の視点立てないなら、どちらかに肩入れする可能性が出てくるのなら、俺はそんなものなくていい)
八幡(たとえ人の心がないことで割を食うとしても……、俺なら耐えることができる)
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195 : 2014/11/02(日) 17:06:40.66 -
八幡「ないはずないだろ。だが感情と理性は別のものだ。俺はこれで良かったと思ってる」
雪乃「どこがいいと言うの!! 由比ヶ浜さんがクッキーを作らなくなったらどうするの!!」
八幡「それが由比ヶ浜の選択なら、俺はその選択を尊重する。そもそもの話、クッキーを作るって相手が喜ぶのかも不明瞭だったんだ。そのことを指摘しなかったのは——由比ヶ浜の依頼が『クッキーを作りたい』だったからだ」
雪乃「なら…………あなたはあなたなりに由比ヶ浜さんのことを考えていたと言うのね」
八幡「そういうことになるな」
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196 : 2014/11/02(日) 17:08:43.35 -
雪乃「————そう。けれど、あなたのやり方が間違っているわ。人道的ですらない」
八幡「間違ってるかどうかは後で分かる。多分平塚先生辺りに、由比ヶ浜が自分の手でクッキーを作るか作らないかの話が伝わるはずだ。そこで初めて依頼完了と俺たちの勝負結果が分かる」
八幡「じゃあ今日はこれで帰っていいか?」
雪乃「愚かだと思っていたけれど、ここまでとはね。帰っていいわけないでしょう」
八幡「いやだって、由比ヶ浜はもう戻って——————あ」
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197 : 2014/11/02(日) 17:09:28.94 -
八幡(思わず俺は笑ってしまった)
八幡(なぜかって? 確かに俺は由比ヶ浜のことを否定した。けれど俺は彼女のことが嫌いだから否定したわけじゃない。彼女が徒労をしかけていたから許せなかっただけだ)
八幡(だから………………由比ヶ浜がこのまま帰るでなく、由比ヶ浜が戻ってきて努力を続けると言ってくれるのなら、俺は心から嬉しく思う)
八幡(俺の性根が腐っているとしても、由比ヶ浜の幸せくらい願ってもいいよな?)
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198 : 2014/11/02(日) 17:10:33.64 -
雪乃「由比ヶ浜さんは必ずここに戻ってくるわ。あなたはそれを見届けなさい。そもそも由比ヶ浜さんを泣かせた時点であなたの負けよ。たとえ居た堪れなくても最後まで付き合うのよ」
八幡「りょーかい」
雪乃「……どうしてそこで笑うのかしら? 見ていて気分が悪くなるわね。もしかして被虐にくんはMなのかしら?」
八幡「Mじゃねえよ。つーか被虐にくん言うな」
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199 : 2014/11/02(日) 17:11:27.16 -
八幡(その後雪ノ下が言った通り、由比ヶ浜は家庭科室に戻ってきた。泣いて顔を洗ったのだろう、目が赤らんで化粧が落ちており、髪に濡れた部分が残っていた)
八幡(見る者が見ればみっともないという感想が出る姿だが、由比ヶ浜の強い眼差しがむしろ逆の印象を与える。目に宿る敵意は俺に向いている)
結衣「——あたし、考えたよ。ヒッキーはあたしが不味いクッキーを作るのが許せないんでしょ?」
結衣「食材を駄目にしてるんだもん。美味しく作らないと、食べ物に失礼だよね」
結衣「だからあたし………………絶対に美味しいクッキーを作れるようになる!」
結衣「クッキーだけじゃない、どんな料理だって美味しく作れるようになりたい。そしたらヒッキーも文句ないよね!!」
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200 : 2014/11/02(日) 17:12:20.68 -
八幡(……由比ヶ浜って最初はお礼の品を作りたいから相談しに来たんじゃなかったか?)
八幡(ま、いいか。ここは依頼を通して相手を成長させる部活だからな。依頼が解決しようがしまいが関係ねえだろ。肝心なのは相手に奉仕することだ)
八幡(お礼に渡す一回だけ作ってごまかすのではなく、これからも努力が続けられるよう仕向けられたなら、俺が悪役を買って出た意味があった)
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201 : 2014/11/02(日) 17:13:27.85 -
八幡(では由比ヶ浜のこれからの成長を願って、努力の方向性を示しておいてやろう)
八幡「ならせめて『コレ』くらいは上手く作れるようにならなきゃな」スッ
八幡(雪ノ下のものでも由比ヶ浜のものでもないクッキーを俺は差し出す)
結衣「もしかしてこのクッキー……、ヒッキーが作ったの?」
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202 : 2014/11/02(日) 17:14:32.87 -
結衣「うぅ………………ちゃんとできてる」
八幡(ちなみにこのクッキー、俺が由比ヶ浜を待つ間持ってきた本を読もうとしたら雪ノ下に怒られたので、代替案で作られたものだったりする)
八幡(もちろん、そんな邪な理由で作られたと言える訳がないな)
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203 : 2014/11/02(日) 17:18:18.78 -
八幡「携帯で作り方を調べながらやったが、雪ノ下の手を借りず一人で作った。人生初の料理でこれなら上出来だな」
八幡(『人生初だからこの出来で満足』みたいな卑屈な言い方ではなく、あえて自慢するような言い方で由比ヶ浜を煽った)
結衣「絶対にこれより美味しいの作って、ヒッキーを驚かせるからね!」
結衣「ゆきのん、よかったらこれからも料理のこと教えてもらってもいいかな?」
雪乃「ええ、喜んで手伝わせてもらうわ。比企谷くんの何倍も上手く作れるようになりましょう」
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204 : 2014/11/02(日) 17:20:39.33 -
八幡(たとえまずまずの出来だとしても、元々料理下手な由比ヶ浜だし、このくらいの目標で十分だ)
八幡(俺の料理という憎き目標があることで、由比ヶ浜はとても努力がしやすいことだろう)
八幡(これで依頼完了だ)
八幡(俺は負けることで自分の無力を証明し、雪ノ下は勝利を得て、由比ヶ浜は成長できた。誰もが得をする結果になった)
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205 : 2014/11/02(日) 17:23:49.42 -
ひとまず乙
第二章は全部で1万文字ぐらいになりました
ホントに長かった……それでは夜にまた会いましょう
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207 : 2014/11/02(日) 22:44:22.47 -
ではこれより投下していきます
……どうせ一気に投下するんだし、開始前宣言要らないよね?
次からは投下終了宣言だけ書きます
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208 : 2014/11/02(日) 22:45:44.43 -
結衣「やっはろー!」八幡(数日後の放課後、由比ヶ浜は部室に現れた)
雪乃「その『やっはろー』というのは何かしら? 流行っているの?」
結衣「え、変かな?」
八幡「別に挨拶くらい何だっていいだろ。それで何の用だ?」
結衣「クッキーに一人で再チャレンジしてみたの。よくできたと思うから、二人に食べてもらいたくって」
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209 : 2014/11/02(日) 22:47:18.02 -
八幡(そう言って由比ヶ浜は小袋を渡してきたが、なぜか俺と雪ノ下のものはサイズが違った)
八幡(雪ノ下は型でくり抜いたみたいに綺麗な形がたくさん入っているのに対し、俺は歪なハート型と尖った鼻と曲がった耳の顔型の二つだけ。細い目と口も相まって、顔型のやつはまるで悪魔の顔に見える)
八幡(絶対これ包丁で形取ってるよな。俺に嫌いな態度を見せるためだけに、ここまで凝るか?)
八幡「羊か、山羊か、それとも狐かこれ?」
結衣「犬だよ! 他の何に見えるの!?」
八幡「まあ形は何でもいいが……」パク
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210 : 2014/11/02(日) 22:48:29.73 -
結衣「ねえヒッキー、美味しい?」
八幡「普通」ゴクン
八幡(特に不味いところがない、普通に美味しいクッキーだ)
結衣「えっと……、他に感想とかないの?」
八幡「まあまあだな。ちゃんとできてると思うぞ」
八幡(俺は感想を出すのが苦手だ。貶す部分がないなら他に言うことがない。意地でも他人を誉めたりしない)
八幡(どこまで他人が嫌いなんだと、自分でも思わなくもない。それでよく妹の小町を困らせるが、俺は困らないので多分一生このままだな)
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211 : 2014/11/02(日) 22:49:05.12 -
雪乃「その男に感想を求めるのが間違いよ。比企谷くんは感想を言いそうにないもの、私がクッキーの感想を言うわ」
結衣「そうなの?」
雪乃「仮に『100点満点で何点?』と聞いても、恐らく比企谷くんは『及第点』としか言わないんじゃないかしら」
八幡(なぜ分かったし)
結衣「うわあ……、それありえなくない?」
雪乃「それより由比ヶ浜さん、クッキー以外の料理は作ったのかしら? そちらの方も聞いておきたいのだけれど」
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212 : 2014/11/02(日) 22:51:01.38 -
八幡(そうやって楽しく話をする雪ノ下と由比ヶ浜は、まるで友達同士の普通の会話のようだった)
八幡(ところどころ毒舌で皮肉を混じらせる雪ノ下。そしてその解説を由比ヶ浜が求め、雪ノ下は楽しそうに説明する)
八幡(回転を始めた歯車みたいに会話の勢いが弾んでいく)
八幡(誰がどう見ても、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣は親友に見えるはずだ)
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213 : 2014/11/02(日) 22:53:18.53 -
八幡(この前ぼっち認定されてたが、簡単にぼっち卒業してんのな。雪ノ下)
八幡(では俺も日頃の説教への当て付けを兼ねて、雪ノ下のぼっち卒業を祝福してやろう)
八幡(皮肉と悪意が混じるプレゼントを受け取るがいい)
八幡「さて。俺はこれから飲み物買ってくるが、お前らにも何かおごってやろうか?」
結衣「えっ、ああ……、うん…………、じゃあお願いしようかな……」
雪乃「比企谷くんの善意は気持ち悪いというか、裏がありそうで受け取りづらいわね……」
八幡「人の善意はちゃんと受け取れよお前ら」
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214 : 2014/11/02(日) 22:54:07.29 -
第二章 「決定的に、由比ヶ浜結衣と彼はすれ違っている」 終
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215 : 2014/11/02(日) 23:00:16.28 -
ようやっと終わったーー!!
ここまで長引いた理由は、八幡とガハマちゃんのすれ違いをしっかり書きたかったからでしょうね
そう思うと、思いつきで書いたサブタイが妙にはまっているように思いますガハマちゃんのクッキーが二つに増えているのには理由があります
といっても、理由は単純なんですが第三章は八幡のたった二人の友人について触れます
次回から地の文が入るので分量が増えるかもしれません
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223 : 2014/11/05(水) 21:17:52.27 -
八幡「…………」モグモグ
比企谷八幡の昼食は基本、教室で一人弁当を摘まむというものだ。
孤独を感じる性格でもない上、他の誰にどう見られようとひとっ欠片も気にならない。机をくっつける邪魔にでもならない限り、堂々と教室の真ん中で昼食を取っている。
俺が今食べている弁当は出来合いの弁当ではなく、小町が毎朝早起きして作ってくれたものだ。
八幡(今日も失敗したおかずはなし、と。相変わらず小町の料理は美味い)
別に昼飯なんて菓子パンや味噌汁で軽く済ませたり、なんなら塩むすびだけでいいと俺は思うのだが。けれど小町は、
小町「お兄ちゃんは放っておいたらアンパンとコーヒー牛乳だけみたいな味気ない昼ご飯になっちゃうから、小町がお弁当作らなくっちゃ!」
と言って受験生であるにも関わらず家族全員分の弁当を作っているのである。小町偉いぞ。
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224 : 2014/11/05(水) 21:19:46.47 -
メニューを選ぶ手間を省けるし、不味いものじゃなければ特に文句もないので、俺は小町の家族愛を遺憾なく利用している。
しかし今この教室には、小町の家族愛の結晶を曇らせるものがある。
優美子「ねえ結衣さー。あーしらって友達だよね? ならなんで最近あーしらとの付き合い悪いの?」
結衣「え、えっと、それは————」
八幡「…………」ムグムグ
クラスカースト女子一位の三浦が、由比ヶ浜をいびっていた。
——とはいえ俺は三浦の怒鳴り声がうるさいと思うだけで、由比ヶ浜を助けたいという気持ちは微塵もない。
気にしなければ弁当を食べる邪魔にもならないし、後ろで騒ぐ二人に一切の興味もないので首を向けることはない。
アニメによく出る寡黙キャラみたいに、俺は黙々とおかずを口に運ぶ。
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225 : 2014/11/05(水) 21:21:15.32 -
隼人「まあまあ優美子。少し落ち着こう」
優美子「あーしは落ち着いてるし。それより結衣、なんで理由言えないの? 結衣とあーしらは友達でしょ? 理由くらい言ってくれてもいいじゃん」
結衣「それは…………ごめん」
優美子「さっきから結衣ごめんしか言ってないよね。結衣のために言うけどさー、あーしはそういう煮え切らない態度が——」
別に騒ぐのは構わないが、明日以降にその怒りを持ち込むなよ。三浦。
まあどうせ由比ヶ浜は雪ノ下辺りと約束してるからさっさと行きたいのに、三浦が意地張って引き止めてるのが全容ってとこだろ。俺に関係ない話だし、さっさと弁当片付けて図書室に行くかな。
そんなことを考えていると、雪のように冷たく氷柱のように尖った声が教室に木霊する。
雪乃「オウムみたいな鳴き声が聞こえるけれど、この教室では鳥を飼っているのかしら」
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226 : 2014/11/05(水) 21:22:01.30 -
他人を鳥扱いとか、俺でも酷いと思うようなことを言いながら雪ノ下は教室に入ってきたようだ。
ようだ、が付くのは雪ノ下が来てもなお、俺は振り向かずに弁当をつついているから。
雪乃「それに由比ヶ浜さん、謝る相手が違うわ。あなたの方から約束してきたのにその約束を保護にするのはどうなのかしら」
結衣「ゆきのん! ごめんね、あたしゆきのんの携帯知らないから……」
優美子「ちょっと雪ノ下さん、今あんためちゃくちゃ失礼なこと言わなかった? ていうかあーしと結衣は話の途中なんですけど」
雪乃「そうかしら? 相手の言葉を聞こうとせず自分の意見だけを押し付ける行為を会話とは呼ばない。そんなものは獣の威嚇と何ら遜色ないわ」
雪乃「あなたの常識では威嚇行為が会話として扱われてるのかしら? ……ごめんなさい。そうとは知らず、あなたの縄張りに踏み込んでしまって」
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227 : 2014/11/05(水) 21:23:35.47 -
ごちそうさん。と俺は食べ終わった弁当を片付け、席を立つ。目指すはもちろん図書室だ。
音を一切立てずに動くことで周りから見られないように努める。まあ見られたところで見返さずさっさと教室から出ればいい。
三浦と雪ノ下に皆の注意が向いている内に教室から出ようとしたところで、俺は声をかけられた。
彩加「ねえ、八幡」
八幡「ん?」
コイツは戸塚。俺の数少ない友人の一人。小動物を彷彿をさせるかわいい見た目と『ニセコイ』の誠士郎にも似たソプラノ声。
こんなに可愛い子が女の子のはずがない! ——そう、コイツは男だ。いわゆる男の娘って奴らしい。
彩加「三浦さんと雪ノ下さん、…………とっても怖いね」
八幡「そうだな」
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228 : 2014/11/05(水) 21:26:49.20 -
戸塚に話題を振られて、ようやく俺は雪ノ下がいる方を見た。雪ノ下はいつもの暴言で三浦の精神を滅多打ちにしていた。
一瞬、雪ノ下の視線が俺の方に動いた気がした。
彩加「ねえ八幡、今雪ノ下さんこっちを見たかな?」
八幡「気のせいだろ」
戸塚のおびえる姿は、タングステン製の堅物である俺でさえ、可愛らしいと感じるものだった。
男子の癖にここまで可愛いとなれば、女子に虐められないわけがない。
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229 : 2014/11/05(水) 21:27:46.73 -
実際————戸塚はこのクラスで虐められる寸前だった。
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230 : 2014/11/05(水) 21:30:53.81 -
もっとも本人が言うには、戸塚は高二になるまでずっと虐められてきたらしいが。だから俺と同じく他者の視線に敏感なのかもしれない。
今のところこのクラスにおいて戸塚へのいじめはない。……はず。他人と碌に接しない俺が断言できるわけがない。
もっとも、戸塚を救うきっかけとなったのは俺なんだが、俺は戸塚を助ける気はさらさらなかった。
戸塚は間接的に助かっただけだ。
実際に戸塚を救ったのは————
そこで雪ノ下にいびられている、三浦優美子だ。
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231 : 2014/11/05(水) 21:34:44.77 -
今日はここまで
大量の二次作家がいる中で、「男の娘は虐められてしかるべし」なんてポリシーを掲げているのは私ぐらいだと思います
バカテスの木下秀吉なんかは、そっくりな姉がいた分さらに酷かったと妄想してたり
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233 : 2014/11/05(水) 23:55:26.27 -
トラウマものの虐めを受ける→常に可愛く振るまうよう強要され、その癖が抜けない→男子にキモいぐらいモテる→主人公にだけトラウマを明かす→特に伏線は回収せず主人公はヒロインとくっつく
まで行きますね
どっちかって言うと性的や肉体的な苦しみより精神的な苦しみが好みです
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235 : 2014/11/09(日) 14:39:51.89 -
オカマとか性同一性障害のやつは、芸人の過去ドキュメントを見る限り同性に虐められてるみたいだが、源君物語には可愛い男が女子に虐められてる描写があった。
その二つを分けるのは、中身ではなく見た目なんだろう。そして可愛い子を虐めていた理由は————自分より可愛いから。
戸塚もその例に漏れなかった。新学年が始まったばかりの頃、戸塚は主に男子より女子に話しかけられていた。主に話しかけていたのは、そこで「三浦ザマァww」と笑っている女子グループだ。
三浦に幾歩か劣る程度の求心力しか持っていないアイツらでは、恐らく戸塚と同じくらいの魅力しか持っていないのだろう。むしろ戸塚の方が可愛いのかもしれない。
だからアイツらは戸塚の魅力を取り込もうとした。
もちろん俺はそんな戸塚の姿など目に入るわけもなく。
入学して一年経ち誰かと仲良くするのに飽きていたので、その頃は新調したばかりの教科書を読んでいた。
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236 : 2014/11/09(日) 14:40:40.73 -
ある時、俺と戸塚は英語の授業でペアになった。俺は戸塚をクラスメイトの一人としか認識していなかったし、戸塚も俺なんかに自分の境遇を相談することはない。
その代わり戸塚が相談したのは、男子テニス部のことだった。
戸塚『男子テニス部ってさ、上級生が僕しかいないんだ。でも僕は皆に頼られるくらいテニス上手いわけじゃないからさ、自信なくって』
八幡『ふーん』
戸塚『どうでもよさそうに返事しないでよ! 僕ホントに困ってるんだもん。八幡はテニスが得意な人知らないかな?』
八幡『知らん。そういうのは自分で探さないのか? あとOBに訊くとか』
戸塚『だから今八幡にも聞いてるんだよ』
八幡『といっても俺知り合い少ないし、探してはみるが期待するなよ』
そして俺は当時、既にクラスの中心になっていた葉山に話を聞きに行った。葉山の名前は覚えていなかったがそんなものはどうとでもなる。
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237 : 2014/11/09(日) 14:42:16.08 -
八幡『おっす。なあ、テニスの上手い奴探してんだけど、誰か知らないか?』
隼人『君は確か——“比企谷(ひきがや)”くんか?』
隼人『テニスか……。確か優美子が中学の時テニスで全国に行ったらしいけど』
八幡『おっ。それすごいな。じゃあそいつ紹介してくれねえか?』
さすがの俺も、人口が多い関東で全国に行くレベルの人間は尊敬する。まあいくら相手が恐そうでも偉そうでも、人見知りして話すのを躊躇う俺ではない。
戸塚を(半ば無理矢理)引き連れ、俺は三浦に話しかけた。
優美子『で、あーしに言いたいことって何?』
八幡『いいや、話があるのはコイツだ。ほら、こういうのは本人が頼まなきゃ駄目だろ』
彩加『ええっと………………。三浦さんがテニスが上手だって聞いて、それでできたら僕にテニスを教えてもらえないかな……?』
優美子『はぁ? なんであーしがそんなことしなくちゃいけないわけ?』
三浦は高圧的な態度で俺らを威嚇する。
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238 : 2014/11/09(日) 14:45:05.88 -
だが戸塚は三浦の威嚇に怖気づくことはなかった。
彩加『お願いします! 僕、どうしてもテニスが上手くなりたいんです!!』
優美子『————本気で、あーしに教えて欲しいの? 多分あーし容赦しないし、キッツイこと言うと思うけど』
彩加『頑張って全力でついていくから。三浦さん、お願いします!』
戸塚は頭を下げ、三浦に頼み込む。必死の熱意が三浦にも伝わったはずだ。
——もしかしたら俺はフォローに着いて来ることも、俺が三浦を探し当てる必要もなかったのかもしれない。と、今になっても思うことがある。
俺が動かなくてもいつか————戸塚は三浦とこうして対面していただろうから。
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239 : 2014/11/09(日) 14:45:42.76 -
優美子『……あんた名前は?』
彩加『え、あっ。戸塚彩加です』
優美子『そ。じゃあ彩加、いつなら空いてんの?』
彩加『! じゃあ、今日の放課後!』
そして戸塚は『三浦の弟子』というポジションを得て、カーストトップの三浦グループに属することで虐められなくなった。
今でも戸塚はその見た目ゆえに余り同性からは話し掛けられないが、時たま三浦やその友達らと話しているのを見かけるので、寂しい時間を過ごさずに済んでいるらしい。
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240 : 2014/11/09(日) 14:48:00.63 -
今日はここまで
三浦のことを馬鹿にしている女子、いったい何者なんだ……?
それと>>230修正
もっとも、戸塚を救うきっかけとなったのは俺なんだが、俺は戸塚を助ける気はさらさらなかった。
↓
とはいえ戸塚を救うきっかけとなったのは俺なんだが、俺は戸塚を助ける気はさらさらなかった。
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243 : 2014/11/12(水) 22:01:56.96 -
とまあ——誰に向けてか分からない戸塚の話を思い出したが、そろそろマジで図書室に行きたい。
今日の奉仕部で読む本は別にあるが、今はとにかく雪ノ下と由比ヶ浜から距離を置きたい。
彩加「八幡ならあの二人の間に割って入れそうだね」
八幡「やろうと思えば入れるが、やる理由がないだろ」
彩加「由比ヶ浜さんを助けようって思わないの?」
八幡「由比ヶ浜が完全に被害者なら助けることも考えるが、あの状況を作り出してるのは由比ヶ浜自身だからな」
至極残酷なことを言って、その言葉に戸塚は顔を歪ませたが、すぐに戸塚は笑顔を取り戻す。
そこに俺は戸塚の処世術を垣間見るけれど、それ以上踏み込むことはない。
彩加「相変わらず……、冷たいよね。でもそれが八幡らしいよ」
八幡「そうだな。じゃあ俺は図書室に行ってくる」
彩加「行ってらっしゃい。八幡」
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244 : 2014/11/12(水) 22:03:21.98 -
戸塚に手を振って別れ、ようやく俺は教室から脱出することに成功した。
雪ノ下が教室の壁に背をもたれて由比ヶ浜を待っているのが目に入る。
……美少女がいるからなんだって? 絵になるからどうかしたか? 別段気にせず、俺は雪ノ下の前を通り過ぎようとした。
雪乃「待ちなさい、比企谷くん」
八幡「……何なんだ?」
しかし雪ノ下に呼び止められてしまう。
……どうして皆俺が図書室に行くのを邪魔すんだよ。
雪乃「平塚先生に言伝を頼まれているの。今すぐ生徒指導室に来るように、だそうよ」
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245 : 2014/11/12(水) 22:04:52.19 -
八幡「はぁ……。了解」
結局図書室に行けなくなってるじゃねえか。大きなため息を吐く。
雪乃「この前の依頼について、あなたから詳細を聞きたいらしいわ。由比ヶ浜さんへの発言の意図を含めてね」
雪乃「私も平塚先生と一緒にあなたを糾弾したかったけれど、由比ヶ浜さんとの約束があるから今回はパス。命拾いしたわね」
八幡「あっそ」
俺がこれから叱られるのが心底嬉しいのか、雪ノ下は見せつけるように笑顔を浮かべる。
別にお前と一緒に叱られたところで大したダメージは増えなそうだが、今から平塚先生の相手をするのに余計なエネルギーは使いたくないので、雪ノ下の相手はこれ以上したくはない。
挨拶もおざなりに済ます。
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246 : 2014/11/12(水) 22:05:39.45 -
雪乃「ねえ、比企谷くん」
八幡「何だよ」
雪乃「——————いえ、何でもないわ」
笑顔のまま雪ノ下は何かを問おうとして、突然真顔になって問いを撤回した。
その態度が少々気になるが、面倒なので追及しないことにする。
八幡「そうか。じゃあな」
雪乃「ええ————」
俺は雪ノ下に別れを告げ、生徒指導室へと足を向ける。
——背中に雪ノ下の視線を感じながらも、やはり俺は振り返らなかった。
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247 : 2014/11/12(水) 22:10:23.89 -
ほんとはもっと長かったんだけど、今回はここまで
保存ミスやっちまったからなぁ! よくあるけれど、毎度毎度モチベ下がるんだよぉ!!
それと前回出てきた、三浦を馬鹿にしている女子の正体はなんと「相模南」でした
……誰か突っ込んでよぉ!
テンションが変になってるのは見逃してください
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252 : 2014/11/15(土) 00:16:18.36 -
* * *
比企谷八幡という男は、この私でさえ——雪ノ下雪乃でさえ、実態の掴めない人間だった。初めて奉仕部の扉を越えた時から、彼は私に本性を見せたことがなかった。
無表情で無感動で、会話からは主体性が欠片も感じられない。私の言葉にありきたりな返事をするだけで反省の姿勢が感じられるわけもなく、異常な程に自分のことに対して無関心だった。
一応、趣味が読書とアニメ観賞だとか、得意科目が国語だとか、好き嫌いが全くないというわけではなかったけれど、それくらいしか選り好みが確認できなかった。人間関係においては壊滅的と言っていい。
校内一の美しさと評されることもある私に目を向けようとしない。それ程に彼に情欲というものがない。
比企谷八幡は、私でさえ想像もつかない精神構造を持ち合わせていた。
-
253 : 2014/11/15(土) 00:16:55.10 -
何よりも特異だったのは、彼の思考——いえ、視点と言ってもいいかもしれない。
彼の視点は客観的過ぎる。第三者視点、どころか…………神の視点と言ってもいいくらいに。
客観視というものは、自分の感情を排して両側の善悪を判断するもの。とは言うものの人間である以上完全に感情をなくすことができないので、絶対的な客観視という概念は存在しない。
けれど客観視をすることによって、個人の身勝手な感情に流されず状況に即して正しい判断が下せるようになる。それがより究極に近いなら、尚更正しい判断が下せると言うことができる。
完璧な視点に立つことを諦めるのは奉仕部部長として、怠慢だと言い切れる。…………でも、完璧を求める立場だからこそ比企谷くんがどのような視点に立っているか分かる。
————彼は自分自身に対しても常に客観視を行っている。
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254 : 2014/11/15(土) 00:17:31.62 -
私と比企谷くんは以前こんな会話を交わした。
雪乃『ねえ比企谷くん。もしあなたが海の上で木の板に捕まっていて、大切な人が溺れそうになっている時、あなたはどうする? 助けようって考える?』
彼は一瞬の迷いもなく答えた。
八幡『大切な誰かなら、そいつに人殺しの罪悪感を植え付けたくないから見捨てる』
予想とは余りにかけ離れた回答に、私は言葉につまった。彼へ問い返すにも重い心の負荷がかかる。
それでもどんなに心の負荷がかかろうと、こんな思いやりのない非人間に言い負かされるのは死んでも御免だった。
雪乃『…………どうしてそんな答えになるの? 大切な誰かでしょう。家族や——あなたにできるとは思わないけれど——恋人の顔が思い浮かぶはずよ。その誰かを自分の手で殺すことに……躊躇いを感じないの?』
八幡『俺なら耐えられるって分かってるからな。それにたとえ家族だとしても、極限状態で俺を動かせるとは思えないし』
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255 : 2014/11/15(土) 00:18:07.01 -
雪乃『——なら、あなたに全く関係ない他人ならどうするの?』
好奇心から出た質問。彼が冷たい人間だと確認したかったとその時は思っていたけれど、今思えば本心は違っていたと思う。
私の想像しない答えが出てくると、分かっていたから——
八幡『そいつが俺より「生きたい」という意思が強いなら、俺は生きるのを諦める。いや、ただ今掴まってる木の板を渡すだけなんだが』
雪乃『……随分と、簡単に自分の命を諦めるのね。二人とも生き残る方法を考えたりしないのかしら』
八幡『一応、たとえ絶望的でもそこから自分が生き残る方法を模索するからな?』
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256 : 2014/11/15(土) 00:19:28.72 -
あとそういうお前はどうなんだ、と比企谷くんに聞かれ、私は人道的な回答をした。彼の回答が衝撃的で自分の回答はほとんど覚えていない。
しかしこの一連の会話で肝要なのは比企谷くんの回答だけで、これだけでも彼の異常さがよく分かると思う。
この問題の回答に逡巡しないだけで充分な性質(たち)を持っているけれど、自分の命を捨てる可能性をいとも容易く導き出したことが重要なのだ。
一体どういう人生を送ってくれば、どういう経験があれば、自分の命に無頓着になれるのだろうか。どれほどのトラウマを彼は抱えているのか。いつか私は…………彼の過去と向き合うことになるかもしれない。
私が比企谷くんに向ける感情は、呆れと苛立ちと——そして畏敬。
人間らしくしない彼にどうしようもない怒りを覚えることがあるけれど。
私は彼に————少しだけ憧れていた。
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257 : 2014/11/15(土) 00:20:11.85 -
由比ヶ浜さんを待つ廊下。比企谷くんに平塚先生からの伝言を渡して、私は比企谷くんとの勝負の報酬を思い出した。
そういえば私が勝った時に比企谷くんに出す願いを言っていなかった。そのことで『コンビニスイーツ>私』だと言われた時の恨みを晴らしておこう。
雪乃「ねえ、比企谷くん」
八幡「何だよ」
——ありえない。
そんな思考が浮かんで、私はその話を切り出すことができなくなった。
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258 : 2014/11/15(土) 00:27:17.08 -
ここまで
この雪ノ下視点は場面転換のための筆休めのつもりだったんですが、予想以上に長くなってます
雪ノ下は陽乃さんに憧れを抱いてますし、雪ノ下なら陽乃さんに匹敵するほど頑なな八幡にも惹かれると思います
惚れるかは別として
伏線はなるべく分かりやすいように、なるべく早く回収するようしているんが……
これでも分かりにくかったりします?
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262 : 2014/11/16(日) 17:09:09.97 -
内から聞こえた心の声に私自身が一番驚いている。
確かに私には今、比企谷くんにしてもらいたいことはない。そもそも能力面から見て彼にできて私にできないことはないと思う。やる気を見せないから彼の能力は分からないけれど、クッキー作りを見る限りそこまで悪くはないと言える程度。
でもそれならそれで、彼の能力面のなさを冷やかすこともできる。私の多才さを披露することもできる。もっと単純に、彼に何か奢ってもらうのもありかもしれない。
……ならどうして私は、彼に報酬の話を持ちかけることを躊躇うのだろう?
雪乃「——————いえ、何でもないわ」
そう言って誤魔化した。誤魔化しなんて私らしくもない。
けれど自分でもどうしてか分からないのに…………本能が私の口をつぐませ、感情が話すことを嫌がって、比企谷くんを拒絶してしまう。
そもそも『ありえない』というのはどういうことかしら? なぜそんな声が形を成したのだろう。一体『何』が『ありえない』と言うのだろうか。
八幡「そうか。じゃあな」
比企谷くんは幸いにして私の変化を気にすることなくそのまま行ってしまった。
この得体の知れない感情の原因となった彼を見続けても、私の疑問が晴れることはなかった。
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263 : 2014/11/16(日) 17:09:47.57 -
結衣「ゆきのん、お待たせ」
雪乃「あっ。——いいえ、そこまで待たされていないわ」
結衣「よかった。じゃあ早く部室に行こっか。私のせいでお昼遅くなっちゃってるし」
教室から由比ヶ浜さんが出てきたので、私は気持ちを切り替えようとする。
しかし由比ヶ浜さんが廊下の先にいる比企谷くんを見つけてしまった。
結衣「あれ、ヒッキー? さっき教室にいたはずなのに」
雪乃「さっき教室から出てきたわ」
音も立てず生気も発せず出てきた姿は亡霊と見分けがつかなくて、かなり……少し怖がってしまったことは言わないでおく。
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264 : 2014/11/16(日) 17:10:15.94 -
雪乃「彼を誘う必要はないわ。由比ヶ浜さんを待っている間に平塚先生が部室に来て、私がここに来ることを言ったら、比企谷くんに生徒指導室に来させるように言われたの」
結衣「そっか……。でもヒッキーってこの時間にはもうお昼食べ終えてるから、どっちにしろ誘えなかったかも」
そう言えば私が教室に入った時も比企谷くんは弁当を食べ続けていたわね。あそこまで他に興味を示さずにいれば、食べ終わるのも早いはずだ。
私は周りの人に「線が細い」と言われて、無理矢理におかずを増やされることが常だったから、なるべくおかずが増える隙を与えないために少ない量をゆっくり食べる習慣が身に着いてしまったけれど…………。
雪乃「由比ヶ浜さん、教室での比企谷くんはどういうものなの?」
結衣「えっ?」
雪乃「違うわね、……比企谷くんは教室ではどんな風に扱われているのか教えてもらえないかしら?」
私は先の自分の感情を把握するために、あえて比企谷くんのことを知ることにした。
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265 : 2014/11/16(日) 17:11:45.84 -
結衣「——どうして? ヒッキーのこと気になるの?」
雪乃「…………」
その言葉は、由比ヶ浜さんらしくもない圧迫感があった。
由比ヶ浜さんの変わった態度に私は一瞬戸惑う。由比ヶ浜さんは一体彼の何を知っているというの?
雪乃「いいえ。私は平塚先生から比企谷くんの性格の改善を依頼されているの。だからそのために、比企谷くんのことを知ろうとしているだけで、他意は全くないわ」
真実を話しているはずなのに、言い訳がましくなるのはどうしてだろう。
結衣「やめたほうがいいよ」
その声は————先程の『ありえない』という自分の心の声と同じ響きだった。
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266 : 2014/11/16(日) 17:15:52.37 -
ここまで
第三章はもう後半に差し掛かってるのに、このままいけば第二章の字数を越えそうです
やっぱり地の文入れたからですね。どうしても描写を細かく書きたくなります
まあそのおかげで分かりやすくなるなら結果オーライです
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269 : 2014/11/16(日) 23:18:53.93 -
>>265正。どーしても最後の部分が脈絡なくて気になった
結衣「——どうして? ヒッキーのこと気になるの?」
雪乃「…………」
その言葉は、由比ヶ浜さんらしくもない圧迫感があった。
由比ヶ浜さんの変わった態度に私は一瞬戸惑う。由比ヶ浜さんは一体彼の何を知っているというの?
雪乃「いいえ。私は平塚先生から比企谷くんの性格の改善を依頼されているの。だからそのために、比企谷くんのことを知ろうとしているだけで、他意は全くないわ」
真実を話しているはずなのに、言い訳がましくなるのはどうしてだろう。
結衣「ふーん。…………ねえ、ゆきのん。」
結衣「それ、やめたほうがいい」
その声は————先程の『ありえない』という私の心の声と同じ響きだった。
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271 : 2014/11/19(水) 16:26:47.24 -
本編と全く関係ない話ですけど、異能バトルの今週のはやりんの演技、凄かったですね
私が望んでいたのはこういうのですよ! 異能バトルとか期待してヌェ!(タイトルに入ってるのに)
……でもですね、『悲しみの向こうへ』を合わせるのは止めて頂きたい
ttp://sp.nicovideo.jp/watch/sm24940845/ニヤニヤできなくなるから。雰囲気合い過ぎて
ついでに本編と少し関係のある話。次回投下は明後日になります
それと本編とは全く関係ない話。俺ガイル10巻読みました
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273 : 2014/11/20(木) 22:30:27.32 ID:Y6USgRx0o -
はやりんって誰だよ!
はやみんだろ!! -
274 : 2014/11/21(金) 12:28:21.34 -
雪乃「『止めた方がいい』というのは、どうして由比ヶ浜さんはそう思うの?」
結衣「えっと。説明しにくいけど……、とりあえず歩きながら話そっか」
そうね、と私はうなずく。由比ヶ浜さんの話の続きも気になるけれど、昼ご飯を食べ損ねては本末転倒になる。
廊下を歩きながら、由比ヶ浜さんは滔々と比企谷くんのことを話していく。
結衣「まずヒッキーって、そんなに話すタイプじゃないんだよね」
雪乃「えっ、そうかしら? 奉仕部での彼を見る限り、そこまで会話が苦手なタイプに見えないのだけれど。それに教室で戸塚くんと話しているのが見えたし」
戸塚彩加くんのことはJ組の女子の間でも話題になるので知っている。やはりと言うか、男なのにその可愛い見た目が嫉妬の対象になっていることもある。
内心そんな戸塚くんと比企谷くんの組み合わせを意外に思っているけれど。
結衣「うん。まあ、男子とだったらたまに話をすることもあるかな。——でも女子でヒッキーと話したことあるのって、多分優美子くらいだと思う」
雪乃「由比ヶ浜さんは話したことがないの?」
結衣「ううん。ない」
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275 : 2014/11/21(金) 12:29:53.34 -
私は周りに人がいるのも構わず、声を荒げて言った。
雪乃「もう始業式から二ヶ月経っているのに、そんなことがあり得るの——!」
比企谷くんが奉仕部に入って一週間は経っている。その間、私と比企谷くんが話さない日は一日もなかった。
むしろ会話を楽しんでいると、そう感じることもあった。
だから由比ヶ浜さんが話す彼の実態を、私は想像だにできなかった。
雪乃「最低でも授業でパートナーになって、会話することもあるでしょうに」
結衣「授業で一回、ヒッキーと一緒になったことがあったの」
いつもは由比ヶ浜さんが感情的になって、私が冷静に対処する。しかし今は私が怒り、由比ヶ浜さんが大人しく話している。
いつも通り冷静沈着に由比ヶ浜さんの話を聞くべきだと分かっているのに、どうしても私は心の昂りを抑えられない。
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276 : 2014/11/21(金) 12:30:29.01 -
結衣「四人グループになって、その時確か男子女子が二人ずつだったかな。グループの中でヒッキーだけ先にプリントを解き終わったの。そういう時って普通、他の誰かに話しかけたりするじゃん?」
結衣「……ヒッキーはね、誰にも話しかけないで、ただぼーっとしてたの。天井を向いて誰とも目を合わさないで」
ありえないよね、と由比ヶ浜さんはさみしそうに笑う。見ていてとても痛ましい。
まさかそこまで彼は他人に興味を持っていなかったというの?
結衣「だからあたし、思い切ってヒッキーに話しかけたの。そしたらさ、斜めにいたヒッキーじゃなく前にいた子が反応しちゃって。……ヒッキーは反応してくれなかった」
雪乃「……酷い話ね。許し難い行為よ」
結衣「それでもゆきのん……、ヒッキーのことあんまり怒らないで」
由比ヶ浜さんは比企谷くんを庇うけれど、私にはどうしても彼を許せそうにない。今日の放課後、彼の他者への認識について徹底的に追及し、糾弾しなくてはならなくなった。
今までずっとはぐらかされてきたけれど、今度こそは誤魔化されない。むしろどうして今まで彼に誤魔化されていたのか不思議に思う。
私は固い決心を誓う。
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277 : 2014/11/21(金) 12:31:22.41 -
それでもたとえどれほど痛ましかろうと、由比ヶ浜さんは笑いながら話を続ける。
結衣「————ヒッキーにはとんでもなく深い心の溝があるの。ヒッキーはそれを越えられないから、あたしが……あたしたちが頑張らないとヒッキーは心を開いてくれない」
結衣「そう思ってたの、最近まで」
雪乃「…………」
由比ヶ浜さんの口振りから見るに、もう話は佳境に入っている。
私は由比ヶ浜さんの言葉を一言一句聞き逃さぬよう、そしてそれを話す由比ヶ浜さんの感情を見逃さぬよう、怒りを抑え意識を彼女に集中させた。
結衣「ヒッキーと話してなんとなく感じたことだけど————」
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278 : 2014/11/21(金) 12:34:01.18 -
結衣「ヒッキーはね、空気を読んでるところがあるの。無難な答え方で反応することがそもそもあんまりない」
結衣「でもね……本音を隠してる理由が私とは違う気がする。言いたいことを言わないんじゃなくって、言わない方がいいことを隠してるんじゃないかって思うの」
結衣「もしかしたらヒッキーは、あたしの依頼の時みたいなことを普段から考えてるのかも。ヒッキーはみんなのためにわざと距離を置いてるんじゃないかな」
だからヒッキーがみんなと関わるようになったら、あたしみたいに傷つく人が出てくるのかもしれない。それで由比ヶ浜さんの発露が終わった。
* * *
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279 : 2014/11/21(金) 12:37:50.28 -
雪ノ下視点は一端ここまで
第三章、まだ続くんだぜ……? 下手したら第二章の二倍の分量とか、そういうことにならないよね?
>>273
すみません。間違えました『“はや”みさお“り”』で“はやりん”って今まで略してました
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282 : 2014/11/23(日) 15:28:31.11 -
雪ノ下が変な様子だったが、大したことないよな? ヤンデレフラグや死亡フラグだったのにそれを見逃したとか、そんなんじゃないですよね?
まあたとえ死亡フラグでも、自分含め誰が死ぬことになろうが構わないんだが、心の準備くらいはしておきたいので前もって把握させて欲しい。
————なんて、とりとめもないことを考えながら進路指導室に向かっている道中。前の角から見覚えのある、黒縁メガネの太マル男が出てくるのが見えた。
義輝「ん? 八幡ではないか!」
太マル男も俺のことを発見し、話しかけてきた。
俺は手を挙げて返事をする。
八幡「よ、材木座」
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283 : 2014/11/23(日) 15:29:20.22 -
材木座義輝。一年の頃同じクラスだった、俺の数少ない友人のもう一人。
そしてこの学校で唯一、俺と趣味を共有している人物でもある。平塚先生もアニメやマンガは見るんだが、いかんせん年代とジャンルが合わない。熱血系はちょっと……。
今は別クラスになってるが、体育ではよくペアになることが多い。俺は余っている誰かと普通にペアを組めるんだが……材木座は雪ノ下と同じかそれ以上に人見知りなので、俺ぐらいしかペアを組める相手がいないらしい。
義輝「まさかこんなところで会うことになろうとはなあ。やはり我々は運命を共にする相棒」八幡「ウッゼェから止めろ。別にお前がどんなキャラを構築してもいいし、大抵の設定を見過ごしてやるが、俺を巻き込むのだけは止めろ」
義輝「はい…………。すみません……」
見て分かる通り材木座は厨二病だ。高二で厨二なのはもはや突っ込むまい。
脳内設定を惜しげもなく晒し、黒い指グローブを着け、かっこいいポーズ(笑)を人前で決めちまう奴だ。
右手を抑えることがあるから邪気眼っぽいが、キャラのモチーフが歴史の偉人の足利義輝らしいので、厳密には違うらしい。
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284 : 2014/11/23(日) 15:30:24.96 -
平塚先生に生徒指導室に呼び出されているが、よくよく考えてみると俺は食べるのが早いから昼休みが始まってまだ十分も経っていなかった。
何もこんなに早くに行く必要はない。少し材木座と話をしていってもいいだろう。
義輝「相変わらず八幡は厳しいでござる……」
八幡「厳しいか? 俺としては公平にやってるつもりなんだが」
義輝「いやいや。我の設定を理解しているからこそ、我以上に設定に厳しいところがあるぞ!」
そうか? まあ俺も昔は…………現在進行形でラノベ見てるし、今も厨二病かもしれんという自覚はあるが。厨二病だったからこそ設定に厳しいのだろうか。
というより多分これはあれだ。虐められっ子が同じ虐められっ子を心の中で格下に見て、扱いを雑にしているのと同じものだろう。
実際材木座は、人に好かれる見た目も好意的に取られる態度もしてないしな。
義輝「そんなことよりビッグニュースがあったのだ!」
自分の設定を『そんなこと』っつったぞコイツ。
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285 : 2014/11/23(日) 15:30:53.95 -
義輝「もちろん聞いてくれるな! 八幡!?」
八幡「ああ。言ってみ」
聞くだけだがな。
それでも俺が無表情であろうと、材木座にとっては聞く姿勢があるだけで嬉しいらしい。材木座は『のうりん』の林太郎のような独特の響くヴォイスで、そのビッグニュースとやらを俺に報告した。
義輝「次回の演劇で、我の脚本を使ってもらえることになったのだ!!」
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286 : 2014/11/23(日) 15:33:32.62 -
ここまで
これで八幡の友達は二人とも登場しましたね
多分、もうすぐ、第三章が終わるはず……
それとこれで戸塚パートと材木座パートが終わるので、第三章で原作一巻分を消費したことになります。
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287 : 2014/11/25(火) 02:23:24.89 -
八幡「ほう。それは凄いな」
義輝「ふふんっ。そうであろう、そうであろう」
とは言っていても、内心俺はそのことを凄いとは思っていない。入部してすぐならまだしも、半年も行っていれば採用されるくらいわけはない。
材木座は去年から演劇部に入っている。勧めたのは俺だ。
日頃キャラ作りしていることと、声が大きいことから演劇部で上手くやれることは分かっていた。しかし俺が材木座に演劇部を勧めた理由はそれではない。
材木座はかつて厨二病の御多聞に漏れず、ラノベ作家になることを夢見ていた。拙いながらも小説を書いて努力していた。
そして俺は材木座に、より物語を書き続けられるよう新たな環境をプレゼントした。
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288 : 2014/11/25(火) 02:24:19.17 -
もちろん当時の材木座は書き始めたばかりで相応の文章力もなく、痛い設定がふんだんに盛られた読むに堪えない未完成小説しか書けていない。
オリジナルを書いてる分だけ二次創作しか書けない奴より少しマシだが、どうせすぐに諦めるだろうと俺は踏んでいた。
しかし材木座は本気でラノベ作家を目指していた。
義輝『言っておくが、そもそも小説家自体儲からない仕事なのだ! 数十万部売れるトップセールスだけ目に入るだろうが、本来なら数万部売れるだけでももの凄いのだぞ!』
義輝『そしてラノベの市場は普通の小説の数分の一! ラノベ作家のほとんどが兼業作家という話を聞いたことはないか? つまりそれだけ儲からんのだ!』
義輝『…………というかまず、我は十五万字相当のストーリーを書けるようになりたいです』
とまあ一部の内容を抜粋するだけでも、これだけ材木座はラノベ作家という職業に熱を注いでいた。
だからこそ俺は材木座の熱意に応えた。
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289 : 2014/11/25(火) 02:27:42.76 -
八幡『なら材木座、演劇部に入ったらどうだ?』
義輝『演劇部? 文芸部ではないのか?』
八幡『いやお前、マンガとか読んでるだけでも文芸部が地雷なのは分かるだろ。文芸部ってのは自分の好きな本について語るのが九割の活動だった。…………いや、俺の体験談じゃないからな?』
俺の小学生の頃のマンガ部の話だから当てにならないが。しかし一年に一冊しか部誌を出さないような部活に期待するのは時間の無駄だろう。
かの涼宮ハルヒだって部誌を発行するエピソードは短編扱いだった。真面目に部活動をしているのなんて、氷菓と文学少女くらいだろう。それほどまでに文芸部での文芸活動は可能性の低い行動なのである。
涼宮ハルヒはSFメインだから仕方ないけど。
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290 : 2014/11/25(火) 02:34:43.63 -
短いけどここまで
ちょっと材木座を原作から改変しました。より作家に向けての努力ができている状態にしています
別に自己投影させてるわけじゃないですよ! ただ原作の材木座のままだとつまんなくなりそうだったので
兼業作家で有名所を出すと「バカとテストと召喚獣」の井上堅二です。後書きで仕事の話がよく出てます
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292 : 2014/11/27(木) 21:09:26.65 -
八幡『演劇部では教師が脚本を用意することもあるが、生徒が脚本を用意できるパターンもある。演劇は生徒全員の前で披露することが分かってるからな。もし後者で生徒自身が脚本を用意するなら、文芸部とは比べ物にならない程真っ当なアドバイスをするはずだ』
義輝『な、なるほどぉ!』
話に引き込まれる材木座に、とどめとなる言葉を告げる。
八幡『それにだ——学校の演劇は大抵一時間だ。一時間のアニメと言えば、ラノベ二分の一冊くらいの分量になるだろ?』
そして材木座はその日の内に演劇部へと入部した。
ちなみにこの時材木座に意図的に伏せた情報がある。そもそもなんで俺がそんなに演劇部の事情に詳しいのかと言うと、かつて俺も作家になることを目論んで演劇部に突撃したことがあったからだ。
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293 : 2014/11/27(木) 21:10:12.27 -
演劇部に入ろうとした時に、顧問の教師に聞かされた。
「演劇部に入るなら演劇の練習はしてもらうが、それでもいいか?」
その演劇の練習とは、体力作りのための筋トレや発声練習で、それをほぼ毎日やる。小道具作りもあるにはあるが、よくよく考えれば部活動の時間に関係ない小説の執筆を許してくれるはずもないだろう。
だからかつての俺は作家の道を諦めた。ではなぜ、今になって材木座に演劇部を勧めるのか?
理由なんて、一目瞭然だろ。
八幡「痩せた分の見返りはあったわけだな」
義輝「……もしや八幡。いやもしかしなくても、我に痩せさせようと演劇部に入れたのではあるまいな?」
八幡「そんな訳ねえだろ。純粋にお前のためを思ってだ」
実際少し痩せようが、お前の痛さは変わらなかったしな。そこは残念だ。
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294 : 2014/11/27(木) 21:11:20.23 -
義輝「八幡の愛は歪んでおるのう……」
八幡「愛とか言うんじゃねーよ。まあ言われてみれば俺は変わってるな」
否定しない俺を追及しない辺り、材木座は俺と相性がいいと言える。雪ノ下や由比ヶ浜よりな。
あいつらも俺に人間性を求めたりせず、話し相手として扱ってくれればいいのに。そこを諦めないのが雪ノ下らしいと言える。
義輝「変わってはいるが、我からすれば頼りになる相手であることに変わりはない。これからも『心友』としてよろしく頼むぞ八幡。…………ホントに我のこと見捨てないでね?」
八幡「見捨てねーから抱き付こうとするな」
前に抱き付かれたことがあるので結構警戒している。その時はすぐさま蹴り飛ばしたので、幸いにも俺がホモだという噂は立っていないようだ。
でも今よりキモくなるならさすがの俺も友達辞めたくなるから、マジで抑えような。
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295 : 2014/11/27(木) 21:12:32.92 -
八幡「お前のことはちゃんと友達だと思ってるんだ。安心しろよ材木座」
義輝「『友達』止まり、だと……っ!」
八幡「友達扱いでむしろ上等だ。俺にとって友達と呼べる相手なんて、お前含め二人しかいないからな」
義輝「…………ん? 確か出会った時に他にも友達は何人かいると言っておらんかったか?」
八幡「ああ、それは出任せだな」
出会ったばかりなら俺の本性を見せるはずがない。友達だと思っているからこそ、本当のことをお前に言おう。雪ノ下には言えない真実をな。
……いや、雪ノ下は木の板の問題で俺の答えを聞いても拒否反応を示していなかった。見所がありそうだし、もしかしたら今後俺の本心を話すことになるかもしれないな。
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296 : 2014/11/27(木) 21:13:49.54 -
今の時点での俺の友人は、戸塚と材木座の二人だけ。それ以外の人間は————
八幡「俺からすれば『友達』って言うのは基本、『友達』だと紹介する時だけ友達になる」
八幡「逆に『友達』だと紹介しない時、つまりそれ以外の時は無関係の他人だ。——気楽だろ?」
義輝「お、おう……」
完全に引いてるな。発想が吹っ飛び過ぎててどう返せばいいか分かってないみたいだ。
また材木座から話題を振られる前に退散するとしよう。そろそろ生徒指導室に行かないと図書室に行けなくなりそうだし。たとえ五分しか行けなくても新刊が入っているかくらいはチェックできるだろ。
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297 : 2014/11/27(木) 21:14:43.45 -
ここまで
第三章はもうすぐ終わります
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301 : 2014/11/29(土) 20:50:10.48 -
八幡「そういや俺行くとこあるんだった。じゃあな材木座」
義輝「はっ!? さ、さらばだ八幡!」
材木座と別れる。これで普段俺と話をする相手全員と距離を置いたことになるから、もう誰かに話しかけられることはないはずだ。
クラスメイトとか顔見知りはまだ残ってるが、さすがに放課後ならまだしも昼休みの時間を削って俺と話をするとは思えない。
歩いていると俺はとあることを考える。戸塚と材木座のことだ。
そういえば俺は、奉仕部に入る前から他人の相談事を解決していた。
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302 : 2014/11/29(土) 20:51:31.87 -
>>301正
八幡「そういや俺行くとこあるんだった。じゃあな材木座」
義輝「はっ!? さ、さらばだ八幡!」
材木座と別れる。これで普段俺と話をする相手全員と距離を置いたことになるから、もう誰かに話しかけられることはないはずだ。
クラスメイトとか顔見知りはまだ残ってるが、さすがに放課後ならまだしも昼休みの時間を削って俺と話をするとは思えない。
歩いていながら、俺はふと考える。戸塚と材木座のことだ。
そういえば俺は、奉仕部に入る前から他人の相談事を解決していた。
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303 : 2014/11/29(土) 20:52:12.76 -
もっとも人と関わること自体少ないから相談事を持って来られることが少ないし、誰だって人の相談事を知らず解決していることがある。
だからこそ俺は不思議に思う。奉仕部として活動した由比ヶ浜の件は、由比ヶ浜を傷つける形で取り組んだのに。奉仕部外の戸塚と材木座の件は正攻法で解決していることを。
いや、材木座の件も正攻法と言い難いな。普通なら書いた作品を見てそのアドバイスをするだけに終わる。ラノベ作家を目指すなら小説を書かせるべきなのに、小説を書く以外のことをさせている。
結果的に解決しているのに、俺は相手のことを思っている時は捻くれた解決法を示して、どうでもよかった戸塚に関しては一般的な対処に留まっている。
あべこべなのだ。俺は相手のためを思うと、相手のためにならない解決方法を考えてしまっている。
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304 : 2014/11/29(土) 20:54:04.74 -
はっ、と俺は口元をゆるめた。
————これでいい。これでこそ比企谷八幡らしい結果になっている。
俺は初めから相手を助けたいと思ったことは一度だってない。俺はむしろ————面倒だから助からなくていい、とまで考えていた。
ゆえにこれは俺の間違った精神性が生み出した結果だ。“たまたま”“偶然”“相手が頑張ったから”という解決の仕方になるよう誘導し、間違っても“俺のおかげで”なんていう形にならないようにという責任逃れの精神から。
問題を別問題にすり替え…………当初の問題を解決せずに、俺が用意した別問題を相手に解決させる。俺がいなくても良かったという状況にスライドさせていたのだ。
由比ヶ浜の件は『お礼のクッキーを作りたい』から『思いのこもったクッキーを用意したい』に。
材木座の件は『ラノベ作家になりたい』から『ラノベを書けるようになりたい』に。
だから初めから俺を必要としない戸塚の件は穏便に済んだ。
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305 : 2014/11/29(土) 20:55:44.73 -
元々の問題が解決していることに変わりないが、それがいいのだ。
今のやり方を繰り返せば、奉仕部は俺がいない方が依頼に真摯に取り組めると思うようになる。
そうなれば平塚先生も雪ノ下も俺が奉仕部から出ていくことに文句を言えなくなる。むしろどれだけ不本意でも推奨すべきことだと錯覚するまである。
頑張れば頑張る程、俺は奉仕部に向いていないことを証明できる。その相反する事象につい厨二心がくすぐられ、常に表情の浮かばない顔に珍しく笑みを浮かべるのだった。
——————やはり俺の奉仕活動はどうしようもなく履き違えていて。間違っているがゆえに正しくなる。
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306 : 2014/11/29(土) 21:01:20.30 -
ここまで
自分でもこの八幡は痛過ぎると思います。原作とどっちが痛いんだろうか
とりあえず言えることは、この八幡は原作の八幡より“有害”だということですか
あと一回雪ノ下視点を書いて、第三章は終わりです
当初の目的から外れて、戸塚と材木座より雪ノ下にスポット当ててしまいました
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310 : 2014/12/03(水) 01:27:00.46 -
* * *
由比ヶ浜さんは、比企谷くんが今だ本心を隠していると言う。なるほど、もしかしたら私が感じた違和感はそこから来ているのかもしれない。
けれど、彼が他人を傷つけたくないから本心を隠しているという部分が納得できなかった。
雪乃「由比ヶ浜さんは、比企谷くんがいつも誰かを傷つけることを考えていると思うの?」
結衣「な、なんとなくだよ! なんとなく!」
雪乃「なんとなく、という言葉を使っても由比ヶ浜さんがそう考えていることに変わりないわ」
由比ヶ浜さんも彼女なりに他人と付き合ってきて、比企谷くんにそういう印象を抱いているのでしょう。——でも私だって社交界で狡猾な人達と接してきている。
だから私は言うことができる。比企谷くんはそんな人達とは違うと。
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311 : 2014/12/03(水) 01:28:19.27 -
雪乃「私だってよく人を傷つけることを言う。もちろん相手を傷つけたいから酷いことを言っているわけではないわ。彼と私と何が違うというの?」
結衣「そ、それは…………」
雪乃「比企谷くんだってきっと由比ヶ浜さんのためを思ってあんなことを言ったのよ」
私は比企谷くんのことを擁護する。私よりずっと儚く遠い価値基準を持った彼のことを尊く思うがゆえに。
……とはいえこれ以上由比ヶ浜さんを責めるのも気が引けるので、比企谷くんの話はここまでにしておこう。
雪乃「…………比企谷くんの話はもう止めましょう。このままだと昼ご飯が不味くなるわ。暗い話は止めて、楽しい話をして盛り上げましょう」
先程教室に入ってまで由比ヶ浜さんを助けに入ったと言うのに、私が由比ヶ浜さんを苦しめてどうするというのだろう。
険しい表情を収めて、私は由比ヶ浜さんに優しく笑いかける。
由比ヶ浜さんが気にしないで、と言って明るく笑い返した。由比ヶ浜さんが他の友達の話を振ってきてようやく明るい雰囲気が戻った。
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312 : 2014/12/03(水) 01:32:00.00 -
たとえ今、あの『声』の正体が分からなくても、比企谷くんと接していればいつかその正体に辿り着くはず。今回はここまでにしましょう。
ただ私の感じた『声』が由比ヶ浜さんと違うこと、そして由比ヶ浜さんの『声』の起因は推測することができた。
きっと由比ヶ浜さんは比企谷くんのことを恐れている。だから————『恐怖』から「止めた方がいい」という警告が出てきたのだろう。
私の『声』は恐らく警告ではない。けれど本質は同じのはず。由比ヶ浜さんと私で比企谷くんに向ける感情が違うように、『声』を生み出す感情も違うのだと思う。
あるいは………………答えが出ることこそが「ありえない」のかもしれない。
なんて、それこそ「ありえない」だ。
比企谷くんはどんなに面倒臭がっても相手を助けようとするだろう。彼はとんでもなく捻くれていて、そんな自分に嫌気が指しているけれど、おそらくそれ以上に彼は人の可能性を信じている。
だから彼は選択肢を他人に委ねることができる。その行動は…………彼の心の奥底に眠っている、優しさから来ていると私は思う。
私には人ごと世界を変える力があった。比企谷くんは人を変える程の力を持っていなかった。それでも彼はその優しさで、相手を正しく導くことができる。
比企谷くんは客観的には正しい方法で、けれど人として間違ったやり方ばかり選ぶのかもしれない。でも——
——————きっと彼の奉仕活動は結果的には正しい。
そうして私は一先ず思考を閉じることにする。私は比企谷くんのことを頭の端に追いやり、由比ヶ浜さんとの会話に没頭していった。
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313 : 2014/12/03(水) 01:33:26.41 -
第三章 「たった二人、戸塚彩加と材木座義輝だけが彼の友達たり得ている」 終
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314 : 2014/12/03(水) 01:37:10.92 -
第三章終了
書いててそんなに長く感じなかったのに、実際は別作書いてた第二章より投稿期間長かったりします
第四章は、生徒指導室で平塚先生と話した後に……お待ちかねの小町ちゃん登場です!
お楽しみに!
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318 : 2014/12/06(土) 12:27:36.17 -
八幡「失礼します」
静「来たか…………」
進路指導室に入ると、平塚先生は沈痛な面持ちで腕を組んで応接イスに座っていた。呼び出した相手が来たというのに、平塚先生は顔を上げることをしない。
普段のがさつな態度なら顔を上げなくても不思議ではないが、この真面目な表情で動きがないとなると、よっぽどの感情を抑えているということになる。
熱せられた石は見た目に変化がなくとも、手を近づかせればその熱が伝わる。俺は対面のイスに座り、平塚先生から漏れ出す怒りを感じ取った。
静「さて比企谷。どうしてお前がここに呼び出されたか分かるか?」
八幡「由比ヶ浜の依頼のことでしたっけ」
静「そうだ」
平塚先生は備え付けの菓子を一つ手に取り、口に入れる。俺も食べてもいいですかね?
なんて思っていると、菓子を飲み込んだ平塚先生は空になった菓子のビニール袋をぐしゃりと握り締め、大きく見開いた目で俺を睨んできた。
静「先の依頼、お前は由比ヶ浜の気持ちをないがしろにし、泣かせたそうじゃないか」
八幡「ないがしろにした覚えは——」
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319 : 2014/12/06(土) 12:29:03.14 -
静「黙って聞け比企谷!!」
大声を張り上げる平塚先生。さすがの俺も驚いて体を震わせた。
こほーーーーと息を吐いて平塚先生は気を落ち着かせようとしているみたいだが、どうしても握り拳に入る力が緩まず震えている。
それはともかく俺は平塚先生の大声が外の生徒に聞かれないかが心配だった。
静「比企谷。まずは一発、殴らせろ。話はそれからだ」
八幡「はい」
俺は簡素に返事をし、イスから立ち上がる。平塚先生も立ち上がり、歩いて俺の横に来ると菓子袋を握った右腕を回し始めた。
俺は平塚先生の拳を潔く受け入れるため、体の向きを変えて腹に力を込める。
静「キャプテンパンチッッ!!」
八幡「ごふっ」
神谷浩史の声は…………、クール過ぎて……、キャプテンっぽい貫禄が、感じ取れない……、です…………。
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320 : 2014/12/06(土) 12:31:56.02 -
静「大丈夫か?」
八幡「大したことありません」
腹をさすりながら答える。確かに平塚先生のパンチは重かったし、今も吐き気がするくらい効いている。しかし何事にも鈍感である俺にとって、痛みを無視して会話することは朝飯前である。今は昼飯後だけど。
静「お前は強いな、比企谷。強すぎて、周りの人間を傷つけてしまう程に」
八幡「……………………」
平塚先生の言葉を否定しない。自分の精神が人として異常なまでに強靭だということも、周りを傷つけていることも自覚しているから。
静「まずは今回の依頼について、お前が何をしたのか、そしてその行動の理由を語ってもらおうじゃないか」
分かりました。と素直に俺は依頼の時のことを思い出しながら、自分の行動を説明していく。
ちなみに菓子袋は既に備え付けのゴミ箱に捨ててあり、俺が説明している間平塚先生はやけ食いするかのように菓子を開けていった。
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321 : 2014/12/06(土) 12:35:03.98 -
第四章始動
それはそうと第二巻のエピソードに入ってるわけですが、今更ながら原作と展開が変わってます
第四章からはほとんどオリジナル展開だと思ってください
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323 : 2014/12/09(火) 15:39:07.83 -
由比ヶ浜がクッキー作りに失敗したこと。雪ノ下が努力を諦めようとした由比ヶ浜を嫌悪し、なぜか和解したこと。そして俺は二人の『お礼』に関する常識を壊し、由比ヶ浜個人が納得できる形に誘導したことを話した。
八幡「——————ってな具合です」
静「……なるほど。そもそもお前は由比ヶ浜のことを覚えていなかったのだな」
八幡「同じクラスになって時間が経ってないですからね」
静「そういうことを言っているんじゃないっ!!」
再び大声を上げる平塚先生。どうやら俺が由比ヶ浜の存在を認識していなかったことを怒っているようだ。
俺と由比ヶ浜はどこかで関係を持っている? 首を傾げて記憶を探ってみるが、一向に思い出せない。
静「思い出せないのか? ……なら今度は私の口から説明してやろう」
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324 : 2014/12/09(火) 15:40:08.21 -
そう言って——俺を憐れむように見て、平塚先生は衝撃の真実を告げた。
静「由比ヶ浜は————入学式お前が救った、“犬の飼い主”だ」
八幡「ああ……」
平塚先生の言葉を聞いて…………、やはり思い出すことはなかった。一年前以上のことだ、仕方がない。
けれど、これまでの全てに納得が付いた。
————そうか、あの時“見捨てた女子”が由比ヶ浜だったのか……。
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325 : 2014/12/09(火) 15:40:47.66 -
静「思い出したか……。なら後は分かるな? 由比ヶ浜のお礼の相手は——比企谷、お前だ」
八幡「なるほど。俺は無自覚に由比ヶ浜の思いを踏みにじっていたわけですか」
静「…………そうだ」
由比ヶ浜は俺のために手作りのクッキーを作ったというのに、恩人である俺ときたらそのクッキーを「食えたもんじゃない」とか言って、さらには「市販のやつの方がいい」「手作りに拘るのは由比ヶ浜の自己満足だ」と終始由比ヶ浜の思いを否定し続けた。
その事実を知れば、俺が最低の男だということは否定しようのないことだ。もっともその事実がなくても俺は最低の男だったが。
たとえ真実を知ったところで、俺は変わることができない。『この程度』のことで自分の内面に後悔できていたなら…………俺はここまで酷くなっていない。
何もかもが手遅れだ。俺はもう————誰かが傷ついたことで感情を動かすことはないのだから。
静「比企谷…………。お前は、由比ヶ浜のことを覚えていたら別の方法をとっていたか?」
八幡「いえ——————変わらず同じ方法をとってましたね」
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326 : 2014/12/09(火) 15:41:32.06 -
静「……だろうな。その答えは予想していたよ。だから私はお前のことを可哀想だと思う」
八幡「……………………」
生徒をそんな目で見ないでください。惨めな気分になる。
教師の癖に俺の気分を害してんじゃねえ————なんて、思いたくない。
静「私が何を言ったところで、どうせお前に私の言葉は届かないんだろう!? ……なら私は比企谷に何も言えないさ」
八幡「——ですね」
平塚先生はとても悔しそうな顔をして言った。懐から煙草を取り出し、火を点ける。
八幡「良いんですか? 学校で煙草なんて吸って」
静「お前が気にすることではない。…………誰にも言うな」
と言われて俺は黙ることにした。正直俺は煙草の臭いは嫌いなんだが、平塚先生を不機嫌にさせているのは俺なので、文句を言える立場にない。
静「これからもこんなやり方を続ける気か?」
八幡「はい。もしそれで誰かが傷つくのが許せないというなら、今ここで俺を退部させてください」
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327 : 2014/12/09(火) 15:44:58.39 -
ここまで
八幡の性格の変更により、入学式のイベントも変化しています。この八幡が素直にサブレを助けるなんてありえないことですから
実際に入学式のイベントであったことはまた今度語るとして、>>215ガハマちゃんのクッキーが二つに増えていたことが伏線だったりします
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328 : 2014/12/09(火) 15:46:29.26 -
ここまで
八幡の性格の変更により、入学式のイベントも変化しています。この八幡が素直にサブレを助けるなんてありえないことですから
実際に入学式のイベントであったことはまた今度語るとして、>>215ガハマちゃんのクッキーが二つに増えていたことが伏線だったりします
それと、魔法少女オブ・ジ・エンド100万部突破おめでとうございます(震え声)
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329 : 2014/12/09(火) 16:03:01.68 - ダブってるの気付かんかった
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331 : 2014/12/13(土) 11:55:21.55 -
初めからこんな風に平塚先生とぶつかることは分かっていた。平塚先生は俺のことを一番理解している人間で、俺も平塚先生のことを理解しているつもりだ。
だから次に平塚先生の言葉も予想がつく。
静「いいや。比企谷はこれからも奉仕部で活動を続けろ」
八幡「それで奉仕部が、雪ノ下が割りを食う事になってもですか?」
静「ああ。と言っても雪ノ下がお前を見放すとは思えないがな」
そう言って平塚先生は煙を吐き、挑発的な目で俺を睨む。俺はその視線に堪えることもなく、焦点の合わない目で見返した。
しばらく見つめ合った後、平塚先生がため息を吐いてあっさりと根負けした。
-
332 : 2014/12/13(土) 11:56:03.60 -
静「比企谷、お前は由比ヶ浜にしたことが悪いことだと分かっているか?」
八幡「分かってます」
静「お前は自分のやり方が間違っていると分かった上で、今後もそのやり方を続けるのか?」
八幡「そうです」
平塚先生は言葉に怒気を混じらせながら言う。俺は機械的に即答していく。
静「……なあ比企谷。どうしてお前は、誰かの間違いも自分の間違いも許容することができるんだ。そのことの残酷さを分かっていながら、どうしてお前は————」
八幡「………………」
俺の根幹に関わることを問われ、答えに迷った。これは考えて答えないといけない質問だ。
素直に比企谷八幡の価値観を暴露するか、即興で思いついた考えを言うのか。零コンマ数秒に満たない逡巡で、俺は素直に言った場合の被害をシミュレートし、誤魔化すかどうかを決める。
八幡「——俺なら耐えられるって、分かってますから」
結局俺は誤魔化さないことにする。誤魔化そうにも平塚先生は俺の内面を知り過ぎていた。
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333 : 2014/12/13(土) 11:57:00.75 -
八幡「もう慣れたんです。自分が間違っても、誰かを見捨てても、それによって感情を動かさずにいられるようになりました。そういう自分だって分かってますから、……だからこれからもこの『生き方』を続けると思います」
たとえこの『生き方』でどんなに辛い目に遭うことになっても、きっと耐えることができるだろう。
敵味方を問わず、周りの人間の全てに悪影響を及ぼすと分かっていながらそれを選べる自分に嫌気が差し、そしてその嫌気さえ飲み込めてしまうのだ。
ならもう…………どうしようもないだろ?
静「比企谷。お前は————————そういうお前だって分かっているから、みなと距離を置こうとするのか?」
八幡「…………そうかも、しれないですかね」
平塚先生は俺の優しさの一面を指摘した。それを否定し切ることはできなかった。
-
334 : 2014/12/13(土) 11:57:36.63 -
静「とりあえず今日の部活動は休め。せめて一日くらい、今後雪ノ下や由比ヶ浜とどう接していくか考え直してくれないか」
八幡「分かりました」
もちろんそう言われなければ俺はいつも通り部室に行って、素知らぬ顔で二人と会うつもりだった。
入学してから度々話しているだけある。やはり平塚先生は俺のことを理解している。
静「それと比企谷、お前は雪ノ下のことをどう思っている?」
八幡「部長ってだけで、特に思うところはないですけど」
静「色恋の話じゃない。まったくお前に限っては、惚れた腫れた話は一切通じないな。お前は雪ノ下雪乃がどんな人間に見えるかを聞いているんだ」
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335 : 2014/12/13(土) 11:59:50.00 -
ここまで。師走ってすげぇ忙しい!!
色々な予定が立て込んで12月中は更新頻度が少なくなるかもです
執筆自体はちゃんとやってるんで、心配しないでください
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339 : 2014/12/18(木) 12:17:49.18 -
八幡「……………………」
どのような人間に見えるか、と聞かれても俺は雪ノ下雪乃という人間に対し興味を抱いたことはない。せいぜい、奉仕部という空間を破壊するに当たって彼女の人格を把握している程度だ。
けれどこの質問は、何がしかの答えを用意しなければ納得しない。ならどう答えればいいのか。
俺は……、俺が感じ取った雪ノ下雪乃の価値観を語ることにした。
八幡「雪ノ下の考えは『努力をせずに有能な他者を蹴落とす人間だらけの世の中を変える』でしたっけ? 確かにその考えを一概に否定できないし、理想として正しいものかもしれません」
八幡「その理想を雪ノ下が周りに押し付けても、俺は興味ありません。だけど…………自分のやり方に拘って、相手への対処方法の選択肢を狭めるのは間違ってます」
意図的に奉仕部に不利益になるよう解決方法を歪ませた俺が言えたもんじゃないが。
八幡「過去のトラウマか何か知りませんけど、問題の原因を『当人の努力不足』だと決めつけるのは下策ですよ。もし本当に……雪ノ下が『努力』しか人を助ける方法を知らないなら、致命的過ぎですね」
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340 : 2014/12/18(木) 12:18:44.28 -
静「さすがにそこまで雪ノ下は頑なではない。しかしお前の言う通り、雪ノ下は正攻法しか使いたがらないところがある」
八幡「潔癖過ぎるんですよ。あるいは————正しさに固執していると言いますか」
あるいはそれが雪ノ下の厨二病とも言える。自分が正さなくては誰もが間違いを続けるなんて考えは正直言って痛い。それを言っているのが雪ノ下だから、実現性があると思わせ人を錯覚させる。
人の負極面に晒されてきたから自分の清浄部分にこだわっているのか。気持ちは分かるが————他人を助けるのに自分の好みを持ち出すのは、やってはいけないことだ。
自分のやり方で誰かを助けることを、奉仕などと呼べない。自己満足——そう呼ぶべきだ。まあ本来、誰かを助けているだけで十分なんだけどな。
八幡「アイツは俺みたいに…………間違った正しさを——自分以外の正しさを——考えつかないんですかね?」
静「確かに、それを考えつけば雪ノ下は正攻法じゃないやり方を覚えるんだろうが……。ケガレたやり方は雪ノ下の雪ノ下らしさを損なうことになる。本能的に恐れているんだろうさ」
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341 : 2014/12/18(木) 12:19:55.99 -
さすがに自意識を捻じ曲げてまで人助けを求めるのは酷に思う。
こうして思うと、俺と雪ノ下は『正しさに強いこだわりを持っている』というところで似ていたのだ。
八幡「結局平塚先生が俺を奉仕部に入れた真意って、俺を雪ノ下への当て付けにしたかったからですか」
静「まあそれもあるが————実際のところは、お前に変化するきっかけを与えたかったからだな。人助けを通じて、お前に自分を見つめ直して欲しかったんだ」
八幡「そうですか」
自己嫌悪なら常時しているから、余計なお世話だ。
平塚先生は吸い切った煙草を携帯灰皿に捨てながら、試すように俺に問いかけた。
静「それとも、奉仕部に入らない方が良かったか?」
俺の心は最初から変わらず、『比企谷八幡が奉仕部にいるのは間違っている』と思っている。
確かに学年成績一位の雪ノ下と話をする機会をもらえたことは良かったし、俺から見て雪ノ下はこれから付き合いを通して改変していきたい相手だ。
但し、俺は雪ノ下を改善する気は微塵もなく、これからも間違った方法を取り続ける自信がある。
だからこそ俺は『平塚先生のために』こう答えた。
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342 : 2014/12/18(木) 12:20:49.68 -
八幡「——————いいえ。先生が言ってたように、学べるところがありました」
静「そうか、ならいい。もう行って構わない」
八幡「失礼しました」
生徒指導室から出ると昼休み終了十分前くらいだった。今から教室に戻ればちょうど次の授業の準備ができるくらいだ。
けれど平塚先生との会話で少し感傷的な気分になり、来る前より体が重く感じてしまう。どうせ授業が始まる頃には忘れる気分だが。
真実は残酷で嘘は優しい。なんて言うこともあるらしいが、俺の場合はそれは当てはまらない。俺の破壊的な感情を相手に言うことはむしろ優しさで、隠すことは被害の拡大に繋がる。
それを分かっていながら俺は嘘をつく。相手のためにならないと分かっていながら、相手のことを思って嘘をつく。
なら……どうして俺は『平塚先生のため』と思ったのだろうか。
はっ、と短いため息を吐いた。答えは分かりきっている。責任逃れ以外の何があるというのか。
俺は自分のために誰であろうと見捨てる。平塚先生であっても、雪ノ下雪乃であっても、由比ヶ浜結衣であっても。クラスメイトでも、友人でも、家族でも、——————自分であっても。
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343 : 2014/12/18(木) 12:21:41.62 -
そして————————何も始まることもなく、物語(セカイ)は終わっていく。
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344 : 2014/12/18(木) 12:30:48.37 -
ここまで!!!
これで「やはり俺では青春学園ドラマは成立しない」は全体の半分を書いたことになります
このSSは全部で7章+プロローグ+エピローグを予定していて、今ちょうど第4章の中間です
なのでこれから登場できるキャラも限られてきます。前に相模が登場していたのも、あれで出番が最後だったからです。…………すいません
他にも登場できないキャラが多々います。皆さんが期待しているキャラを出せないのは心苦しい限りです
次回は本編ではなく幕間を投下する予定です。もしかしたら登場できないキャラをそこにぶちこむ可能性があります
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347 : 2014/12/25(木) 11:29:47.54 -
ここで報告していいのか分かりませんが、リョナの鐘SSをpixivに投稿しました
サイコパスの霜月美佳のお腹を叩く小説。結構ガチでグロく書いたから、閲覧にはご注意ください
ようやく、このSSに執筆に集中できるようになりました。年内には幕間を投下していけそうです
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348 : 2014/12/27(土) 12:15:09.53 -
【奉仕部の相談窓口】
八幡「前に作ったメールフォームがあるだろ? あれに何通か相談が来てるらしい」
雪乃「そう」
八幡「仮にも同じ学校の相手だと分かってて、よくもまあ相談事を持ち込めるな。そういうことはネットの掲示板に書き込めばいいものを」
雪乃「……部員であるあなたが奉仕部の活動を否定しないでくれるかしら」
と言われてもなあ……。総武高校のホームページにバナーを作ったとはいえ、それでもこんな胡散臭い部活に相談事を持ち込みたいと普通は思わないだろ。
日々の生活の悩みは近くの誰かに相談すればいいし、大抵時間が経てば解決する。総武高校に限った悩みだとしても、裏サイトや裏掲示板、裏コミュニティで話してしまえばいい。
わざわざこのメールフォームを利用するということは、冷やかしか、奉仕部にしか聞けない奉仕部関連の相談か、それともこんな掲示板しか頼り処がないか————といった面倒な理由しか想像できない。
ぶっちゃけ真面目に活動したくないし。
雪乃「たとえ顔が見えない相手でも、相談事を持ち込んでくれた依頼主であることに変わりはないわ。真摯に応対しなさい。————間違っても相手の意思を否定しては駄目よ」
八幡「はいよ」
平塚先生から渡されたノートパソコンを机の真ん中に置き、人一人分の間隔を空けてパソコンの前に座る俺と雪ノ下。肩を並べて座るほど俺たちは心を許していないから。
右側にいる俺がマウスを操作し、雪ノ下がキーボードで返事を書く。こうして書くと仲良く見えそうで困る。
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349 : 2014/12/27(土) 12:18:19.16 -
【M・Sさんの相談】
『奉仕部って、実際にはどんな活動をしてる部活なんですか? 相談事を解決するって書いてますけど、スケット団みたいなものと考えていいですか?』
八幡「じゃあよろしく。雪ノ下」
雪乃「ええ、まあ、奉仕部の仕事内容について聞かれているから部長である私が答えた方がいいのは分かるけれど…………」
こうも躊躇なく私に仕事を押し付けるのはどうなのかしら? と雪ノ下はぼやく。
でもこれストレートな質問だし、俺の出る幕ないっす。恐らく部活運営の立場の生徒が気になって聞いてきたって感じだな。ならなおさら俺ではなく雪ノ下が答えるべき質問だ。
雪ノ下はキーボードに文章を打ち込んでいく。予想していた以上にタイピングが速かった。
八幡「ていうか雪ノ下はスケット団が分かるのか」
雪乃「アニメで見ただけよ。活動内容は似通っていたもの。チェックくらいはしているわ」
八幡「じゃあ万事屋銀さんの方は?」
雪乃「ギャグセンスが酷くないかしら。たまに至極真面目なことを言ってるみたいだけど、基本ギャグ漫画だし参考にできないわ」
でもそのギャグセンスが海外で超ウケてるんですけどね。メジャー以上に人気らしいよ、銀魂。
たまにシリアスとかホラーとかあるから馬鹿にできん。ていうかアニメは原作以上にふざけてるよね。ホラー回をよりホラーにしたり、ガン○ム回にガン○ム声優起用したり。
小町は眠れない話とマダオが引っ越す話を見てトラウマになってたな。
当時小学生の俺でも怖かったもん。
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350 : 2014/12/27(土) 12:27:09.42 -
ひとまずここまで。
未登場キャラを出すと言ったが、顔を出すとは言ってない
というかこういう形じゃないと、三年のキャラと一年のキャラを絡ませられないです
最初は無難な質問から。後になるにつれて質問に後ろ暗い要素が増えていきます
イニシャルや説明まで入ってるのに「このキャラ誰?」とか言う人がいても暖かい対応でお願いします
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351 : 2014/12/27(土) 13:01:27.97 -
見直して見つけたミス二つ
戸塚が八幡と一年の頃から同じクラスなのに初対面みたいな対応をしたこと
第三章の終わりで八幡が図書室に向かわず教室に行っていることスルーよろしく
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354 : 2014/12/30(火) 12:53:09.61 -
【I・Iさんの相談】
『異性の友達はいっぱいいるけど、同性の友達が一人もいないせいでクラスでの肩身が狭いです。どうしたらいいでしょうか』
八幡(真面目な悲鳴出してんじゃねぇよ!!)ボソボソ
雪乃「どうしたの、比企谷くん?」
八幡「いや何も」
これマズイ。だってこれ99%女子の相談だもん。男子が女子にモテてるとしたら、こんな自慢をわざわざメールフォームに送って来ない。本当に男子と友達になれないならそいつはオカマってことになるし。結局女子じゃん。
女子は仲間意識がもの凄いと聞くし、状況が容易に想像できる。異性に友達ができるくらいフットワークが軽いなら一年経って一人も同性の友達ができないのも想像しづらいし、恐らくこいつは新一年生ということになる。
このメールがデマカセなら万事解決なんだがな…………。本人がどれほど悩んでいるかは分からんが、事実であることに変わりないはず。
というかこんな二、三行の文章からどれだけ情報を読み取ってるんだ俺。俺は折木じゃねえよ。どっちかと言うと折気だ。
雪乃「これは————自慢かしら?」
八幡「十中八九そうだろうな」
よし、雪ノ下が常に友達ゼロ人のぼっちでよかった!! もし雪ノ下がこのメールに隠されたメッセージを読み取れていたら、全力を尽くして取り組むことになっていただろう。
そんなことは果てしなく面倒臭い。
ぶっちゃけこれは時間が解決する問題だからな。捨てる神あれば拾う神あり。俺は捨てる神だが、拾う神だってどこかにいてもおかしくない。
恐らくこのメールは駄目元で送ってるだろう。けどまあ、俺しか気づいていないならちゃんと応対してやらないとな。
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355 : 2014/12/30(火) 12:54:15.93 -
雪乃「この思い上がりには現実を突きつければいいのかしら」
八幡「待て待てっ。自分から現実に気づくよう誘導すべきだろ。それが奉仕部じゃねえのか」
雪乃「……そうね。どんな相手でも平等に対応すべきだわ。たとえこのメールが他人の精神を逆撫でするためだけに送られたもので、心底腹が立つとしても」
それ多分、過去のトラウマと共通してることから来る苛立ちだぞ? 絶対に言ってやらんが。
俺は雪ノ下をなだめて無難な返事を出させる。メールの送り主が周りから見れば恵まれていることを指摘し、毒舌を比較的少なくなるように努めた。この年にして中間管理職かよ。
そして俺はパソコンを返す時、誰も見られないよう隠れて本命の返信をした。
女子に好かれず男子にのみ好かれるというのは、自分の魅力を最大限把握し、それを発揮することに終始するような人間だろう。性格などは関係ない、彼女はただ自分らしくあった結果孤独になるのだろう。
俺が何を言ったところで、そいつは自分を変えないかもしれない。しかし変化を起こすことはできる。
まあいくら顔の見えない相手の邪推をしたところで、実態なんて分かるはずもない。俺の予想が外れていても恥ずかしくないように、お調子者っぽい文章で対処法を送った。
『たぶんあなたは同年代より魅力があるから、周りの人はあなたが自分より上の存在に見えて気が引けているんだね。ならいっそのこと、年上の同性の人と交友を持ってみたらどうかな? 先輩としても、カッコいいまたは可愛い後輩に頼られて悪い気持ちにはならないし』
誰だよ。俺だ。
あとはここに『P.S 今奉仕部には1年生がいないので、あなたが入ってくれれば大歓迎です』という文を入れれば完璧なんだが、それをやると俺のこの所業が明るみになってしまうため、尻切れ悪い文になる。
俺の抜けた穴を埋める新しい後輩、並びに新しい雪ノ下の友人が作れるチャンスだったが、俺の身が危ぶまれてまで手に入れるほど重要なものではない。
もしこのメールだけでメールの主が部室に来たら、その時は諦めよう。諦めてメールの送り主を雪ノ下だと錯覚させよう。
残念ながらあなたには奉仕部との縁が御座いませんでした、ということでここは一つ。
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356 : 2014/12/30(火) 12:59:22.14 -
ひとまずここまで
I・Iさんのキャラクターが登場してなくても強い。他の人は1レスなのに、この人だけ2レス使う羽目に
あと一回の投稿で幕間は終わりです
けれど後半の二人は前半の二人と違い、どこがどう後ろ暗いのか大変分かり辛くなってます
だからこそ闇が深くなると言うか。ちゃんとヒントとか補足とか出すんで、分かりにくかったら言ってください
先に謝っておきます。サキサキごめんなさい
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359 : 2015/01/02(金) 12:09:37.56 -
【?????の相談】
『雪ノ下雪乃さんには誰か付き合ってる相手がいないんですか?』
雪乃「さて………………どうしてくれようかしら」
八幡「気持ちは分かるが落ち着け。まだそう決まったわけじゃないだろ」
さすがにこれは雪ノ下も察したか。このメールは女子が送ってきた可能性があることを。
例えば雪ノ下と同じクラスの女子が雪ノ下が奉仕部であることを知っていて、面白がってメールをしてきたとか。
さっきのメールが冷やかしだったから、雪ノ下は連想するのは簡単だったろう。ならさっきのメールも女子が送った可能性があることに気づかないよう、心から祈る。
しかし——男子が本気で雪ノ下に質問している可能性だってあるのだ。
八幡「雪ノ下にはこのメールが男子と女子、どっちが送ったか分かるのか?」
雪乃「この『いないんですか?』の部分から明け透けの上から目線が見て取れるけれど、これだけではこのメールの送り主が私のことを見下している身の程知らずということしか分からないわ。ならそれはそれで、業務内容に関係ない質問をしてくるなと言えばいいだけだし」
八幡「いや、普通に無視すればいいだろ」
雪乃「…………それもそうね」
送ってきたメール全部に律儀に返事を書く必要なんてない。それも、明らかに冷やかしだと分かる内容なら尚更だ。
たとえ送り主が男子生徒でも、ここまで回りくどいかつナルシストな人間を相手取りたくない。
放置する、という対応で正しいはず…………、なのに。
どうにも俺は違和感が拭えない。
いつもの、いや俺と出会う前の雪ノ下雪乃なら、こんなメールを送る人間だろうと説き伏せようとしただろう。返事をしないというアイデアは俺のもので、雪ノ下のものではない。
このメールは、雪ノ下のことをよく知る人間が送ってきているのではないか。
————もしかしたらこのメールには『雪ノ下雪乃の言葉』で答えておくべきだったのかもしれない。俺はそう思えてならなかった。
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360 : 2015/01/02(金) 12:12:50.02 -
【S・Kさんの相談】
『クラスに変、っていうか怖い、と言うより不気味な男子がいるんだけど。でもクラスメイトだし一年間はそいつと一緒にいないといけないわけだから、その対処法とかって教えてもらえんの?』
雪乃「要するに、進んで関わりたくない相手との付き合い方を教えて欲しい、といったところかしら」
八幡「ま、そうだろうな」
雪乃「気にかかるのはこのメールに書かれた表現ね。『変』と『怖い』と『不気味』とわざわざ書いているということは、それぞれの印象があるということ。でもその三つを兼ね備えた人間性の想像が全く付かないわね」
八幡「いや、その三つは同義語だ。少なくとも人間関係においては」
雪乃「え、そうなの?」
その三つの感情は、相手のことが『理解できない』から生ずるのだ。
相手の思考が全く想像できない、自分とは別種の人間。異次元の発想の持ち主。そんな相手に人はこの『変』『怖い』『不気味』という三つの感情を思い浮かべる。
表現は過激になったが、よくあるパターンでは陰気なオタクがこういう印象を持たれる。クラスの誰とも趣味が合わなくて孤独になっちゃった不憫な奴とかな。オレノコトジャナイヨ? エルフェンリートナンテミテナイヨ?
八幡「対処法として一番実践的なのは、そいつの活動圏を把握することだ。そいつがどんな話題に反応し、どんな場所によく行くか知っておくんだ。そうするだけでそいつと関わる可能性をかなり減らせる」
雪乃「……なるほど。でもその方法では、最初に何回かその苦手な相手との交流を持たないといけなくなるのだけど」
八幡「もしくは又聞きでそいつの特徴を聞いてる内に、興味を持ってると勘違いされるってか? それが嫌なら怯えていればいいだろ。ホラー映画の怖さを克服するのに、ホラー映画を見る以外の対処法があるのか? あらすじネタバレ見て誤魔化しても、実像への恐怖が無くなると思えんがな」
雪乃「嫌な相手との交流なんてこれから先何度でもあるし、ここは無理矢理でもその人と交流を持つようにするべきね」
雪ノ下は小気味良くキーボードを打ち始めた。相手を矯正できることがそんなにも嬉しいんでしょうか?
その正しさがたまにしか通用しないことに気づき、自分のやり方を疑うことになるのはこの先いつの事だか。
あと気になることがあるとすれば、それは一つだけ——————その不気味な人間って、俺のことじゃないよね?
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361 : 2015/01/02(金) 12:25:22.52 -
はいここまで
書いてて思ったけど伏線とか思わせぶりなことしか書いてない。でもそれが面白いんだからしょうがないよね
名前が出せない人は、いずれ本編で出てくるから名前が出せないだけです
まぁこんなメールを奉仕部に出してくる人間なんて一人しかいないでしょう
第6章、早くて第5章ラストに出るのでお待ちください
そして最後の人。この質問で一番後ろ暗い背景あるわけですが、予想できないですよね
実を言うとこれは逆。この質問の背景が後ろ暗いのではなく、元々彼女が持っていた問題が『存在しない』から全く関係ない質問をしています
そう、『問題の原因が存在しない』のです
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362 : 2015/01/02(金) 18:38:26.16 ID:jm9AlYdv0 -
乙
人付き合いに興味ないのに、人の評価が気になるのは変じゃない?
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363 : 2015/01/02(金) 20:00:55.36 -
>>362
どの部分の話ですか? -
364 : 2015/01/03(土) 21:29:35.00 - スルーされる方が、余計な雑談でスレ潰されるより数段マシだって考えよう
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365 : 2015/01/04(日) 11:28:34.60 -
小町「ねーお兄ちゃん、今日ヒマだよね?」
八幡「暇だけどそれがどうした?」
小町「よし! じゃあ買い物行こう! お兄ちゃんの服を買いに!」
八幡「メンドイからパス。略してメントス」
小町「お兄ちゃん、それダサいし寒い……。小町的に超ポイント低いよ…………」
平塚先生に呼び出された次の日。休日のリビングでくつろいでいた俺を小町は買い物に誘う。
もちろん俺は『女と買い物』なんてストレスフルなイベントに参加したくない。たとえ相手が家族だろうと遠慮なく言う。
だからと言って寒い略語を使って空気を殺すのは自分でもどうかと思うが。
八幡「着れる服のストックならまだあるはずだろ」
小町「おしゃれっ気がなさすぎだよ!! お兄ちゃんの持ってる服って、ほとんど黒とか白とかモノクロちっくなやつしかないじゃん。もうちょっと着飾ろうよ。お兄ちゃんは顔がいいんだから……!」
八幡「と言われてもな…………本屋に行くのに着飾っても意味ないだろ」
小町「お願いだから、友達付き合いしてっ!!」
相も変わらず、小町は小うるさい。
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366 : 2015/01/04(日) 11:29:33.01 -
昔から真人間であろうとしない兄の俺にろくに帰ってこない仕事人間の両親、そんなさみしい環境で育った小町は「この家でちゃんとできるのは自分だけ」だと言って、家族の——主に俺の面倒を見るようになった。
家族全員の食事や洗濯、掃除、ごみ出し等の家事を自主的に行い、俺の生活にやかましく口を挟む。母親の仕事を小町が肩代わりしている。
つまり言うなら————小町はこの家の『母』になった。
それはとても悲しいあり方だ。俺が家に帰ると大抵小町が先に帰っていて、「おかえり」と言って迎える。同級生との交友はあまり聞かず、むしろママ友の話をする方が多いくらいだ。
そんなんでいいのか、と問うたところで小町は「大丈夫」と疲れた顔で応える。
…………俺はそんな妹の姿を痛ましいと思っても、それで俺が困ることはない以上、助けたいと思えない。
小町自身が————『もう、いやだ』と全てを投げ出したりしないか、もしくは小町に結婚相手ができてこの家から出て行かない限り。ずっと俺は小町に甘え続け、寄生するだろう。
歪なる俺の影響を一番に受けている人間は、雪ノ下でも平塚先生でも戸塚でも材木座でもなく、比企谷小町。俺の実の妹なのだ。
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367 : 2015/01/04(日) 11:35:19.31 -
小町「本屋にばっかり行ってないで、人並みに友達と遊んでよ。前言ってた戸塚さんや材木座さんとは遊ばないの?」
八幡「そいつらは学校でしか話さない相手だ。片方は超アウトドアで、もう片方は超インドアな上コミュ障だからな。共通の遊びが思いつかない」
小町の追究に逃れるために、戸塚や材木座の名前を利用する。友人の紹介には虚飾を加える。俺が休日に一人で行動するのをなんとしても阻害されないために、しっかりとした理由を用意する。
もちろん奉仕部の名前は出さない。出せば小言とともにプレッシャーをかけられるのが、部活動と部員とのコミュニケーションを強制させられるのが分かっているからだ。
小町「もう…………、ホントお兄ちゃんポイント低い。とにかく! 今から買い物に行くからね。行かないならお兄ちゃんの今日のご飯抜きだからね!!」
八幡「はぁ————。行けばいいんだろ」
小町「なんでそんなに面倒くさがるかなあ…………。行きたくないの、お兄ちゃん?」
八幡「じゃあ行かなくていいのか?」
小町「 ぜっ! たい! 行くからね!!」
ここで肯定すれば俺が行かなくなるのは承知の助(しょうちのすけ)だ。一番近しい人間として、小町は俺のことをよく分かっている。
しかし小町が理解しているのは俺の行動だけ。俺が何を考えているか、どうして俺がこんな風に育っているのかまるで考えもしない。生まれた時からずっと一緒だったから俺の行動に疑問を持てないのだ。
比企谷小町は————俺の心を知らない。きっとこの先も知る機会は訪れないだろう。
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368 : 2015/01/04(日) 11:47:05.75 -
>>343らの続き、第4章です
ようやく小町ちゃんの登場ですね
これでもかと言うくらいやさぐれてるけどなあ!!
小悪魔どころか堕天使ですね。でもやさぐれ小町、アリだと思いません?
ここの八幡の被害を一身に受け続ける悲劇のヒロイン。本編において二番目に不遇なキャラです
一番は言わずもがな
幕間で作者が何をしたかは、コメントがない限り答え合わせは一切しないつもりなので
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369 : 2015/01/04(日) 12:00:49.86 ID:0oQ/s8fi0 -
>>363
どの部分がっていうよりは八幡に対する自分の印象です
人に対して無関心なら、その他人からどう思われようが関係ないでしょうし
かえって余計なトラブルさけるのに周囲と同化したり、擬態すると思うんですよあと、レス遅れて申し訳ないです
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370 : 2015/01/04(日) 13:19:26.54 -
>>369
概ねあなたの言う通りなんですよ奉仕部との勝負以外で八幡が他人の評価を気にすることは一切ないように努めています
だからこそ、どんな部分で他人の評価を気にしていたと感じたか聞きたかったんです
全体的な評価ならどうしようもないんですがね……
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372 : 2015/01/07(水) 17:54:35.19 -
ららぽに到着。巨大レジャー施設に来ていつも思うんだが、どうして施設の大半がファッション店なんだ。もっと他に売る物ないのか? えっ、ないの? …………そうですか。
いやいや分かってますよ。ファッション店といっても色々あるってことくらいは。トップバリューやユニクロみたいな大量既製品や一般人の手に届かない高級ブランド、またはスーツやベルトなどのビジネスファッション、果ては女性しか目をつけないアクセサリーやランジェリーなどetcetc…………。
人は見た目が9割だって言うけどさあ、もう少しくらい1割の方にもスポットを当ててくれてもいいんじゃないか? ————無理ですよね、だって1割の意見なんだから。
それに他人の見た目に一切の興味を示さない俺は、1割どころか1厘にも満たない極少数派だ。ボソボソ何を呟いたところで聞こえやしない。
小町「お兄ちゃんボソボソうるさい」
八幡「ああ、わりぃ」
小声で文句言ってたら一蹴されました。
そんな訳でららぽに来てから約一時間、俺は大観衆の中で実の妹に自分の着る服を選ばれるという憤死寸前に恥ずかしい目に遭っている。
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373 : 2015/01/07(水) 17:57:36.18 -
小町「これなんかどうかな? ……ちょっとお兄ちゃん自分で持ってよ! ————うんっ、これカッコイイ!」
俺も鏡で見てみるが、なるほどカッコイイと思った。黒い地の半袖Tシャツにピンクの虎柄迷彩が施され、正面には野性味溢れる虎の顔がプリントされている。
ピンクタイガーではなく、ピンクで描かれた虎というのがミソなんですか? しかし、俺にはそのセンスが理解できない。何より————
八幡「これは目立つからダメだ。もっと無難なのがいい」
小町「だーかーらーぁ!! お兄ちゃんはもっと着飾った方がいいって言ってるでしょーが!!」
またやいのやいのと小町が怒り出す。いや小町が怒ってる原因が俺なのは分かってるけどね? でも目立つの嫌だし。俺はどこにでもいる一般人Aでいたい。
ステルスよりもなお高度な、視界に映ってもなお気にも止められない木のような存在に、俺はなりたい。
けれど俺のその考えを、小町は納得も理解もできはしない。
八幡「こういうやつの方がいいんだけどな…………」
小町「じみっ!? それめっちゃ地味だよお兄ちゃん!!」
黒と白しか使われていないTシャツを手に持って広げる。柄は胴部分の横縞のみという味気ないもの。これを下に着てどうファッションに活かせばいいのか。そもそも部屋着ですら使われないんじゃないか、コレ。
しかしだからこそ、俺の心をそのまま表していると思うんだけどな…………。
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374 : 2015/01/07(水) 17:58:39.19 -
俺の出した地味Tシャツは当然却下され、いつも通り小町が勧めたものから俺が選ぶというやり方で買い物は進む。ズボンや上着も同様。
小町は親から俺の服飾代はある程度支給されているとはいえ、さすがにアクセサリーは手を伸ばすには金がかかる。なのでそれらの小物が増えることなく、俺の持ってるアクセサリーは中学一年の時に貰ったデジタル腕時計のみである。
もし俺がラノベキャラだったなら、こんな飾り気のなしのモブキャラは間違いなく降板だな。絵の比重が高いライトノベルにおいて私服がダサいことはそれだけありえないことだ。といっても大衆小説なら私服がダサくても何一つ問題ないけれど。
兄妹共々、精神を削りながらようやく買い物が一段落し、ゴーゴーカレー丼丼で昼ご飯を食べる。
そしてこれも小町が親から支給された生活費から払われる。『もしかしてヒモ?』と聞かれたら否定できない自信があるぞ!
自分のダメ人間さを再認させながら歩いていると、目の前で見覚えのある二人組の女子が歩いてくるのが見えた。
片方は艶やかな黒髪を二つに括り、水色のワンピースとその上からレースの入った白いカーディガンを羽織るクール系女子。もう片方はミニチュアダックスを共にし、薄桃のシャツにカラフルなスカートと色々なアクセを付けた快活そうな女子。胸のサイズは前者が貧乳、後者が巨乳。
…………なんだ。赤の他人じゃないか。
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375 : 2015/01/07(水) 18:10:22.90 -
はい、ここまで
今更な話ですけど、この八幡のモデルは作者です。なので作者のファッションセンスはダサいとかそういう以前に判断材料が無い状態
二次元イラストや漫画は見ているとはいえ、作中のファッションが正しいのか分からないまま書いてます。最後の二人の服装に至っては、アニメも見返してませんし
まあ小説の登場人物の服装なんて脳内補完するしかないし、むしろ奇抜な方がキャラ立ちするんですけどね(開き直り)
もちろん八幡が語るエピソードの半分は創作です。作者は現時点で腕時計すら持ってません
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376 : 2015/01/07(水) 18:11:51.32 -
>>374正
自分のダメ人間さを再認させながら~~ → 自分のダメ人間さを再認させられながら~~
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378 : 2015/01/09(金) 14:27:17.09 -
特に視線を向けることなくそのまま横を通り過ぎる。ここで重要なのは絶対にこちらから注意を向けないこと、相手に気付いても1ミリも首を動かさず眼球も前に戻すこと、何よりも表情を変えないことだ。
風景と一体化し、心を鎮める————。何が起きても動じない。
結衣「あれ? 今のヒッキーじゃなかった?」
雪乃「え、比企谷くんがいたの? 私には分からなかったけれど」
たとえ相手が自分の存在に気付いても、一切動じてはならない。そのまま歩くスピードを変えず、あいつらから距離を取れば話しかけられることはなくな——————
小町「もしかして今の可愛い女の子、お兄ちゃんの友達?」
腕を引っ張るな小町ィィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!?
妹に腕を掴まれ引きずりながらも、表情を変えないまま歩こうとする俺と両足を揃え全力で踏ん張り、大理石の床を鳴らす妹。そんな異質な二人が目立つことこの上なく。
雪乃「ああ。私も見つけたわ。それで————彼の腕を全力で引き止めているのは誰なのかしら…………?」
はい終了。俺の静かなる休日は、今をもって完全に終わりを迎えました。
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379 : 2015/01/09(金) 14:28:03.71 -
結衣「へぇ~~。小町ちゃんヒッキーの妹なんだ。どことなくヒッキーと似てなくもないかも」
小町「もう、よしてくださいよ~。あんな兄に似てるなんて失礼ですよ!」
結衣「あっ、そうだよね。ごめんね」
小町「そうですよ。今日だってお兄ちゃんの服を買うために、妹の私がわざわざ付いてきてあげてるんです。お兄ちゃん一人だと、服すらまともに買えないんですよう…………」
結衣「小町ちゃんのお兄ちゃんはホントダメダメだね。その点小町ちゃんはしっかりしてるし、あたしの妹として家に来て欲しいくらいだよ」
小町「私も結衣さんみたいなお姉ちゃんが欲しいです!!」
顔を合わせ名前を紹介し合った小町と由比ヶ浜は、まるで長年連れ添った幼馴染のように一瞬で意気投合していた。
というか既に事実上の姉妹関係まで発展する勢いである。
別に小町が由比ヶ浜をお姉様と呼ぼうが、二人がハーレムだか逆ハーだか形成しようが構いはしない。俺の目の前で騒ぎを起こさなければ。
ですから初めて同年代で同性で兄のことを話題にできる気の合う友人ができたからって、さすがにそろそろ声を抑えた方がいいと思うわけですよ、小町さん?
二人のテンションについていけず、同じように置いてけぼりを食らっている雪ノ下をチラリと見ると、雪ノ下はおずおずと躊躇いがちに俺に質問する。
雪乃「……ねえ比企谷くん。もしかして」
八幡「んぁ?」
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380 : 2015/01/09(金) 14:30:38.72 -
雪乃「今あなたが着ている服も、小町さんが選んだものなの?」
八幡「まあ服に拘るのは小町の役目だしな」
雪乃「————————ハァ」
いやお前が代わりにテンション引かせてどうするよ。
雪乃「人として恥ずかしくないの? 妹に自分の服を選ばせて、——妹に負担をかけて。あなたはそれなりに努力すれば人の目を引けるはずよ。少なくとも素材においては、そこまで劣っていないと思うの」
それ、褒めてるのか? 美少女と称される人間に見た目を褒められて若干嬉しいけどさ。
あるいは——————期待か? こうあって欲しいと希望を言うくらいには俺のことを好ましく思ってるのか?
あいにく俺は人の目を見て会話しない。だからお前が何を思っているのか欠片も想像できない。予想や予測が正しいのか確かめる気にすらなれない。自分がしたいように、言葉を紡ぐだけ。皆そうやって会話をし、自分の意思を表現しているだろ?
聞きたいからではなく——言いたいことがあるから人は言葉を使うのだ。
…………けどまあ、その煩わしい期待に対し、俺の本心で応えてやるよ。
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381 : 2015/01/09(金) 14:32:16.32 -
八幡「劣ってようが劣ってまいがどうだっていい。——俺は自分の見た目が相手の判断材料になって、相手の意識を阻害するのが嫌なんだ」
雪乃「…………阻害? どうしてそんなことを気にするの?」
八幡「透明でありたいんだよ、俺は。余計な重みを背負わなければ……、何事も楽観的に考えられるからな」
気になるものは気になるんだから、しょうがないじゃん。本能にどう説明を付加しろっての。
雪乃「理解できない価値観ね————」
八幡「自分でもややこしい価値観だって思ってるさ」
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382 : 2015/01/09(金) 14:38:35.74 -
ここまで
小町ちゃんのキャラとか口調が迷走気味。これでいいのかな?
いやむしろ小町ちゃんの台詞はサクサク書けてるんだけど、だからこそ不安になっていると言うか……
この小町はブラコンなのかそうじゃないのか、作者にも分かんないです
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389 : 2015/01/11(日) 11:30:28.18 -
雪ノ下との会話はそれきり————。立ち止まっていた俺たちは歩きながら会話をする。主に小町が、雪ノ下と由比ヶ浜に話題を振る形だ。今は料理の話で女三人姦しく騒いでいる。一緒にいる俺の肩身の狭さよ。
男の嫉妬の視線(と女の羨望の視線)は、お得意のステルスと感情の閉鎖で乗り切る。それらを受け取るストレスを感知せずに済んでいる。
その代わり美少女たちと過ごす時間を楽しめなくなるが、そんなもの今更すぎるデメリットだ。男子高校生の日常のモトハルより数段マシだろ! ……モトハルのは美少女ですらなかった気がするけど。
小町「ちなみにうちは三毛猫飼ってます」
雪乃「——————ねこ」
結衣「そういえばゆきのん、犬は苦手だけど猫は好きって言ってたっけ」
話題がころっとペットの話になった。女の会話は勢いがありすぎて付いて行くのも一苦労だ。今時女子がLINEで三、四つ並行して話題と応答をしてるらしいけど、あれは日常会話でも起きているらしい。男には理解できない世界である。
その法則の通りなら、さっきの料理の話の続きをしながら更に追加の話題が投下されることになる。まさに外道。
しかも会話が長引くことで、終わりかけていた俺と小町の買い物が無視され、帰宅時間が遅くなってしまう。最低でもあと一時間はこのままららぽを散策するだろう。
…………よし。
八幡「おい小町。俺いる意味なさそうだし、買った物だけ持って俺だけ帰ってもいいか?」
小町「ええ゛っ!?」
-
390 : 2015/01/11(日) 11:31:11.47 -
ぐんっ! と小町は首をこちらに振り向かせる。顔が怒りで染まっていた。
小町「女友達ほっぽって自分だけ帰るとか、男としてありえないよっっ!! ガールフレンドだよ!!? ポイント低いポイント低い、超ひっくーーーい!!」
結衣「ポイント低いって……」
八幡「小町の持ちネタだ。気にするな」
雪乃「というより、私は比企谷くんの友達ではないのだけれど」
小町「…………………………へ?」
ああ。確かに雪ノ下は自分を小町に紹介する時『同じ部活仲間』って言ってたな。しかも由比ヶ浜も『同じクラスメイト』って言ってたし————多分こいつら俺を友達扱いしてないよな。それはそれでいいことだけどな。
その後の小町の『ここにいるド腐れ人間の保護者こと、妹の小町でっす♪』とか言って由比ヶ浜もそれに乗っかってしまい、あまり突っ込まずそのまま親交を深めてしまっていた。
おそらく小町は俺に女友達ができたことへの喜びで頭が回らなくなってしまったんだろう。まあ『顔見知り=友達』扱いは当然のことだからな。
小町「え? あれ? じゃあお二人はお兄ちゃんの何なんですか?」
雪乃「最初に、単なる部活仲間だと言ってたはずよ」
単なる、は付けていなかったな。確か。
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391 : 2015/01/11(日) 11:38:01.57 -
短いけれどここまで
黒歴史になるとかそれ以前に、俺ガイルssの執筆はどうあがいても自分の黒歴史を晒すことに繋がると思うのですが
自分のエピソードを晒さないと、書けないんだよ俺ガイルssってのは!!!
でもまあそんなことは、学園ものの小説を書いてたら避けられないことですから
今のところ作者は本編書いてて辛いなんて感じることはないので、読者の皆さんは心配しなくてダイジョーブです
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394 : 2015/01/11(日) 14:28:16.28 ID:YzD56jRLO -
この作者の臭さに嫌気さしてる人はとっくに読むのやめてると思ってた
短レス+自分語りの投稿は今に始まったことじゃないし -
395 : 2015/01/11(日) 15:08:57.58 ID:JelsWPA5O - 俺ガイルss書いてるけど自分の黒歴史晒さずに書けてるんですが
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396 : 2015/01/11(日) 15:11:21.79 -
>>395
黒歴史晒すことになるのは、八幡視点で書いた時だけだったね一括りにしてすいませんでした
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402 : 2015/01/13(火) 21:13:52.55 -
小町「というかお兄ちゃん。最近帰りが遅いなーって思ってたら部活に入ってたんだね。小町は何も聞いてないんだけど……?」
小町は真正面から俺の顔を見上げ、威圧する。
三つ目の話題は俺の人間関係、並びに部活動についてというところか。俺は既に前二つの話題を忘れちまったよ…………。なんて、ハードボイルドに現実逃避をする。
現実逃避をするのは、俺の現状を小町に説明すれば面倒なことになるのが分かっているからだ。それもとてつもなく。
奉仕部の活動内容とか、俺が入った経緯とか、雪ノ下と由比ヶ浜の出会いとか、説明事項が多い上に一つ一つがややこしい。そしてどの事項をとっても俺がまともな行動をしていない。
突っ込みどころが満載だということは、その度に補足説明と言い訳が必要だということ。——つまり労力がかかるということ。
じゃあもういつも通り——————俺に降りかかる被害を減らすために、事実を捻じ曲げるしかないじゃないか。
それでも面倒くさい。事実を曲げれば雪ノ下が突っかかってくることは分かっている。けれどこれが俺の得意なことで、唯一俺が思いつく対処策なのだから。
一般的で普通でまともな策は——実行に移せない。捻くれ過ぎて八方塞がりに陥るのが——————俺のような、『人生を間違っている者』の末路なんだろう。
八幡「正式には俺、その部活に入ってないぞ」
結衣「はぁ!?」
雪乃「はぁ!?」
わーお。雪ノ下が瞠目する姿を初めて見た。
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403 : 2015/01/13(火) 21:15:00.64 -
八幡「俺が通ってるのは言うなればボランティア部みたいなところでな。顧問の先生にペナルティとしてその部の活動を手伝わされてるんだ」
小町「本当なんですか?」
雪乃「……いいえ。似通っているようで、事実とかなりかけ離れたことを言っているわ」
八幡「そうだったか? 俺の生活態度が悪いから、考えが直るまで続けるって話だっただろ」
雪乃「(そうやって事実と寄り合わせていくのね…………。順序立てて否定しにくいことを並べていくことで、最初に言った間違いを正しいことだと認識させる。もはや悪魔的な手法ね)」
雪ノ下にかかれば、俺のちぐはぐな発言なんて一つ一つ正していけるはずだ。しかし全てを正すことはできない。先入観や類義語のせいでどうしてもズレが残ってしまう。
少しのズレさえ残れば俺にとって十分である。それだけで数割の労力が削減される。
さらに————説明する人間を雪ノ下にすり替えることに成功している。本来俺が負うべき労力は、この時点でほぼ消失しているのだ。
この恐ろしく自然な手際、冨樫ワールドの住人でなきゃ見逃しちゃうね。
雪乃「彼の言うことを真に受けては駄目よ。実際には——何事にも無気力、無関心であろうとする彼の価値観を変えるため、私が部長をしている奉仕部で活動させられているの」
小町「奉仕部……? 奉仕ってどんな意味ですか?」
雪乃「報酬、見返りを求めない労働のことよ。サービスの日本語訳ね」
小町「へぇ~。でもボランティアにしろサービスにしろ、お兄ちゃんがそういうことをする姿って想像つかないですね」
雪乃「ええそうよ。彼はいつも理屈をこねて反抗して、私の邪魔ばかりするの」
小町「お兄ちゃん! 雪ノ下さんの邪魔ばかりしてるって本当!?」
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404 : 2015/01/13(火) 21:15:32.22 -
はあ、と俺はうんざりした風にため息をついた。実態を知らない奴らは憐れでしかないな。その実態を語っていない俺が言えることではないが。
俺は邪魔などしていない。むしろ裏で雪ノ下のフォローをしている。しかしそれを本人に明かすことができない以上、俺が嫌われるのは避けようがない。
元々嫌われて無用の長物として見られるのが目的なのだ。むしろ狙い通りと言える。
————結局俺は、自分の求めた結果にうんざりしているだけだった。
雪乃「…………どうやら否定できないみたいね。したくないことをさせられているからって、嫌そうな顔をされると真面目に活動をしているこちらのやる気も削がれるの。やる気がないのならせめて邪魔だけはしないで欲しいわ」
言ってろ。なんなら『いっそのこと辞めてくれるかしら?』と罵っ……言ってくれればいいのに。
雪乃「言い訳もないなんて…………。よっぽど腑抜けてるのかしら?」
そう言って雪ノ下は何かを諦めたように俺を一瞥し——、視線を小町に戻してからは俺のことを話題にしなくなった。
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406 : 2015/01/13(火) 21:20:58.67 -
今回はここまで
第四章の終わりが見えない。ヒロイン三人揃った途端、セリフの量が倍増しているような気がします
執筆ペースは上がってるのにそれ以上に内容が膨れ上がってます。まあ、その分ヒロインたちのシーンが増えているので喜びましょう
というか最初期から比べて描写の濃さも段違いですね!
『 「~~」ボソボソ 』みたいなの書く必要なくなってますもん
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410 : 2015/01/16(金) 13:59:47.67 -
会話に入れなくなった俺は小町と雪ノ下から意識を外す。由比ヶ浜は俺の方を訝しそうに見ていたかと思えば、雪ノ下の会話に合いの手を入れたりと忙しそうだ。
ふと、俺は由比ヶ浜が連れている犬がこちらを見ていることに気づいた。塗れた黒曜石のような透き通った瞳。短い四足をせわしなく動かしながら俺を見つめる視線は動かない。
人の感情も分からない俺に、動物の感情が分かるはずもない。………………とでも思ったか?
動物の感情なんて『快』か『不快』、もしくは『好奇心』か『嫌悪』くらいしかないんだよ。他にあるとすれば『空腹』『苦痛』『退屈』か。
覚えていないがこいつが俺の助けた犬なのだとして、恐らくこの犬は俺に好意を抱いているのだろう。
しかし犬だろうと動物だろうと人間だろうと、自分に向かう好意に喜ぶほど俺は安くない。
もし俺が折れるとしたら——、と俺はあるものに目を引かれる。
結衣「あ。小町ちゃんゆきのん、クレープあるよ。記念に買って食べようよ」
雪乃「何の記念なのかしら」
小町「まあまあ何でもいいじゃないですか、友達になった記念でも。お兄ちゃんも食べる?」
八幡「チョコバナナ一択」
結衣「あぁ…………ヒッキーも食べるんだ」
雪乃「そういえば比企谷くんって甘党よね。手をつけてるものが甘いものばかりだし、欲しいものがコンビニスイーツとか言ってしまうくらいだし」
ちょうど今欲しがってたものを買ってくれたりすれば、簡単に折れるんだけどな。
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411 : 2015/01/16(金) 14:00:39.59 -
当然のように、クレープは俺の奢りでした。女性店員は女三人に付き添う俺を財布役なんだと同情したかと思えば、真っ先に「カスタードチョコバナナ一つ」と頼まれてまさか男が!? と驚いたり、結構見物だった。
全員分の注文を終え、俺が金を払い、その間の周囲の視線はこんな奇特な男を引き連れる女子三人に向いている。俺がぱっとしないのもあり、どうやら周りの人から見たらこの三人は『遊んでいる』ように見えるらしい。
雪ノ下さんビッチの括りに入れられてますよ。やだー(笑)。…………そんなギラついた目で睨まないでくださいすいませんでした。
先に俺と由比ヶ浜の分のクレープが完成し、店舗から離れた柱に背もたれ、並んで食べる。後になった二人は店先近くで待機している。
また由比ヶ浜のミニチュアダックスが俺のことを見上げている。と思えば今度は俺の足に飛び掛り、鼻をフンフンと鳴らす。
結衣「あはは。ヒッキーに懐いてるんだね」
八幡「クレープ欲しがってんじゃなくて?」
結衣「それもあると思うけど……。————ううん、やっぱりサブレはヒッキーに懐いているんだよ」
あ、サブレは犬の名前ね。と由比ヶ浜は言う。
この犬に興味はないが、一応名前を頭を片隅に置きながらクレープを口に運ぶ。サブレという名前が甘くない印象だから、若干クレープの甘味も薄らいで感じてしまった。
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412 : 2015/01/16(金) 14:01:15.64 -
いい加減抱きついてくる犬ッコロがうざいので、適当に相手をしてやろう。
クレープを持つ反対の手で犬の首や耳の裏を撫でる。動物は自分で掻けない部分の感覚が鋭敏になるらしい。犬猫が首周辺、耳裏を撫でられると気持ちよがったり、人間が背中をつつかれ身を捻ったりするのは同じ生理反応なのだ。
指が犬の体を引っ掻く度、犬は目を細めて体を捩じらせる。しばらくしゃがんで犬の相手をしていると、由比ヶ浜もしゃがんで犬の胴を撫で出した。
温かみを感じさせる指やスカートからはみ出る太ももが目に入る。思わず唾を飲み込んだことも生理反応なんだろうか。
俺は努めて冷静に犬を撫で回す。顔も動かさず、目線を揺らさず、犬と目を合わそうとせず、由比ヶ浜を見ようともせず…………。
だから俺は、由比ヶ浜がどんな顔をしてそのことを言ったのか知ることはできなかった。
結衣「ヒッキーはさ————ゆきのんには自分のことを話すのに、小町ちゃんには何も話さないよね」
一瞬。由比ヶ浜に言われたことに動揺して、犬を撫でる手が止まった。指と頭の意識を切り離し、なんとか犬を撫でる指を動かした。
由比ヶ浜に核心を突かれた。————数秒前まで疲れを見せていた俺の顔に、鋭い生気が宿る。頭の中で血と電流が巡り出す。これから始まる由比ヶ浜の発言を一つたりとも聞き逃さないために。
八幡「……………………そうか?」
由比ヶ浜の追及から…………“全力をもってして”逃れなければならない。
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413 : 2015/01/16(金) 14:07:43.28 -
ここまで
さてさてシリアスムード。書いてみて分かるガハマちゃんの良さ
本編でも八幡は人に深く踏み込みませんから、地雷発見器があると便利ですよね
今作品だと、ここの八幡の地雷を発掘してくれます
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414 : 2015/01/16(金) 14:21:51.79 ID:8JPhYMqqO -
うん、あのさ、色々あとがきとして言いたいことがあるのはわかるんだけどさ
毎回毎回そうだと痛々しいだけだから、たまには今日はここまでとかだけにしてフェードアウトした方がいいよ -
417 : 2015/01/16(金) 15:15:39.80 -
>>414
作者もそう書くきっかけを求めてました。あなたのおかげで切り替えられそうです>>394たいな、一見否定しているようで肯定しているように取れる意見だと反映しにくいです
意見があるなら明言してください。批判は受け付けます
作品外であれば大抵のことは聞き入れますし、場合によっては振ってくれたネタも拾いますよ
次回から後書きは省略し、「ここまで」レスだけで済まそうかと思います
さすがに章終わりとかに後書き書くくらいは許してください
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424 : 2015/01/19(月) 14:32:27.35 -
結衣「うん……、そうだよ。さっきヒッキーがゆきのんと話してた時、実はあたし聞こえてたの。…………でもね、聞こえてきた話をあたしは理解できなかった」
俺は今、どんな貌をしているのだろうか。少なくとも正面を向いて見せられた表情じゃないことは分かる。だから俺は顔を上げることができない。
結衣「ゆきのんには理解できたんだよね? あたしには理解できなかった……。ううん————理解したくなかったっていうのが正しいのかな? 多分……小町ちゃんも分からないと思う」
八幡「何を言ったか思い出せないんだが。思いついたことをそのまま言っただけだし、大したこと言ってなかったんじゃないのか?」
結衣「『透明になりたい』って言ってたと思うよ。ホント意味分かんない。どんな意味なの?」
八幡「さあな————————」
由比ヶ浜は分かりやすい————そう俺は思った。
これから由比ヶ浜が何を話そうとしているのか、何を話したいのか、俺は手に取るように分かった。
分かったところでどうしようもないが。………………俺に由比ヶ浜を止めたいという意思はない。
結衣「ヒッキー」名前を呼ばれて………………それより次の言葉は告げられない。仕方なしに、俺は顔を上げ由比ヶ浜を見返した。
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425 : 2015/01/19(月) 14:33:26.34 -
由比ヶ浜は————ただ、見ていた。
無表情で————体の中に激情を秘めながら。彼女の大きく綺麗な瞳に俺を映している。
ヒン、ヒン、ヒン、と犬が喉を鳴らしている。この犬は——サブレは——誰の怯えを、悲しみを、代わりに背負ってくれているのか。
事ここに至っても俺は…………由比ヶ浜から言い逃れることしか考えられなかった。
結衣「入学式のこと、覚えてる?」
————心の奥底に触れる一言を、由比ヶ浜は口にした。
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426 : 2015/01/19(月) 14:35:02.84 -
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
あの日————入学式の朝に。
横断歩道で待っている時、飛び出した犬とそれを追った女の子が車に撥ねられるのを目撃した。
すぐ目の前で起きた事件に体は動かない。でも俺にとってそれは、目の前の出来事に動じないのはいつものことであって。むしろ珍しい場面に出会えたとその光景を脳に刻み込んでいた。
つんざくブレーキ音は衝突音を塗り潰し、吹き飛んだ犬と女の子はアスファルトの上を何回転も転がる。運転手は何かを叫びながら(恐らく女の子を轢いたことを嘆きながら)車から出てくる。
さすがに一年も前のことなので、誰がどんな顔だったのかも犬がどんな色や種類だったのかも思い出せない。
覚えているのは…………あの時俺は何を思い、何を為したのか。
俺は轢かれた女の子を助けたくないと思った。恩を感じたくなかった。今も昔も変わらず俺は感情を向けられることが嫌だった。
立ち上がることのできない女の子。死に体の犬。被害の大きさに比例する恩義の大きさを感じ、俺は怖気づいた。
しかしこのまま彼女らを見捨てて入学式に行くのも後味が悪い。けれど周りには当事者以外に俺しかいない。
女の子を助けたくない、いや助けなければならない。責任感のジレンマに陥った当時の俺は——————とんでもない行為に走る。
自転車を道路脇にとめ、携帯を取り出す。119番を押しながら転がった先にいる彼女らに駆け寄る。
ただし————俺が駆け寄ったのは、女の子ではなく犬の方だった。
道に倒れ伏すミニチュアダックスフントの息があることを確認し、繋がった電話に向かって俺は言う。
八幡「もしもし。交通事故で犬が轢かれました。動物病院の救急車って119番で呼べますか?」
入学式。俺は車に轢かれた女の子を見捨て、死にそうな犬を助けた。
これが————俺がひた隠しにしている“真実”である。
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427 : 2015/01/19(月) 14:35:41.85 -
ここまでです
今後ともよろしくお願いします
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436 : 2015/01/20(火) 17:11:15.77 -
次回投下分、八幡のキャラ崩壊注意
あとこの辺りから八幡の異常さを明るみにしていくので、受け付けられない人はブラウザバック
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437 : 2015/01/20(火) 17:12:39.29 - それと次回投下は明日予定
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449 : 2015/01/21(水) 18:44:18.54 -
電話の向こうの指示に従い、近くにあった自動販売機で住所を伝えた。自動販売機に住所が書かれていることをその時知った。
犬が轢かれたことの説明が終わったという確信を感じてからようやく、飼い主も轢かれていることを伝えた。
応対している人に薄情だと思われただろうか。それともパニックになって説明下手になっただけかと思われたか。少なくとも追加の救急車が必要か聞かれただけで、咎められた記憶はない。
倒れている犬と女の子のことは運転手に任せ、両方の救急車を呼ぶ仕事をこなして責任感から解放される。俺は悠々と自転車に乗って高校への道を走り出した。
元々このような不幸なトラブルが起きても間に合うように、早くから家を出ていた。入学式に遅刻するなんてことになるはずもなく。
俺は無事入学式に出席した。犬が助かることを願いながら。轢かれた女の子の入学式が事故の前であることを祈りながら————
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
結果的に犬と由比ヶ浜両方助かっていて、その時取った対応が最善だったと言われたとしても……、俺は自分の考えが間違っているとしか思えない。
周りから見れば結局、飼い主も助かってるじゃんと言われてしまうけれど。当時の俺は誰かと接点を結ぶことを怖がっていた。
だから俺は他人との接点を限りなく薄めるために、人間を後回しにしたという名分が欲しかった。その名分さえあれば安心できた。そのためなら傷ついた動物さえ利用できた。
それに、たとえ真実を告げても相手が傷つくことが分かっている。そしてこれまでもこれからも俺はこんなやり方しか取れないんだろう。だから俺はあらゆる他人を遠ざけることにした。
なのに……そんな俺の思いをわずかにでも察していながら…………なお俺に踏み込もうとする由比ヶ浜を、
——————俺は許せなかった。
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450 : 2015/01/21(水) 18:45:11.92 -
パチン————と、しゃぼん玉が割れたような音が体の中で響いた。
それは堪忍袋の緒が切れる音。そして心のスイッチの切り替わる音だ。
怒りやストレスは一瞬で閾値を超え、抑えきれない感情は切り離される。
そこには人でなく、機械でもなく————まるで『人に牙を剥く獣』と呼ぶべきものがあった。
…………比企谷八幡は柄でもなく、少しキレてしまった。
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451 : 2015/01/21(水) 18:49:08.75 -
八幡「…………なんのことだ?」
この女、触れられたくないことに触れやがった。
ったく、腹立つ。何が腹立つって……、コイツ俺が答えないのを分かっていながら、それでも聞いてきたことがだ。
しかも…………この話題を小町がいる時に持ち出したから尚のこと許せない。小町に今の会話を聞かれでもしたら………………そして俺が交通事故のことを覚えていて詳細を小町に聞かれたら………………どうなっていたと思う!?
間違いなく小町は俺にコイツと仲良くするよう言ってくるだろう。
つまりこの女は俺からの恩に付け込み、小町を利用し、 俺 と 仲 良 く な ろ う と し た 。
そんな所業を許せるだろうか。いや…………許せるはずがない。何よりも許せないのが…………俺の善意を、心を踏みにじったことだ。
だから俺は————由比ヶ浜の問いを踏み倒す。
結衣「ホントに……、覚えてないの……?」
八幡「なあ、由比ヶ浜」
俺は笑った。口の端を吊り上げ、犬歯を見せつけるように笑う。
目に狂気と怒りを滲ませながら。
笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である————というのは誰のセリフだっただろうか。
八幡「入学式って言ったら一年前のことだろ。そんな大昔のことなんて覚えてなくてもおかしくないよな?」
由比ヶ浜は体を大きく震わせ、魂が抜け落ちたような顔をした後うつむいて——もう話しかけてくることはなかった。
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452 : 2015/01/21(水) 18:50:40.32 -
ここまで
八幡は「少し」怒っただけなので、次回にはキャラは戻ります
もう一回言いますけれど、受け付けられない人はブラウザバックしてください
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459 : 2015/01/21(水) 20:12:56.18 -
え、もしかして動物の救急車ってほとんど実施されてないんですか!?
でもこの展開は割と初期から考えてたので、今更訂正できそうにないし…………
かといって新しい展開が思いついても、書き直すのは滑稽なのでこのまま進むしかありません
にわか知識で混乱させてすいませんでした
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464 : 2015/01/22(木) 00:21:01.78 ID:sdXQUHVlo - なんでそんな救急車があると今の今まで思い込んでいたのかがまったく想像できないんだ・・・
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465 : 2015/01/22(木) 00:31:55.98 -
>>464
ドクタードリトルで虎を救急車に乗せるシーンがあった -
475 : 2015/01/23(金) 15:24:08.52 -
パチン————と再び鳴って冷静な思考が、いつもの比企谷八幡が戻ってくる。俺の怒りは基本、十数秒しかもたない。
由比ヶ浜から顔をそむけ、甘いクレープを口一杯に頬張る。クレープの甘さが頭に残った熱を和らげる。熱が完全に消えるまであと数分といったところか。それでも十分に早いと自負する。
けれど怒りによるストレスは、しっかりと俺の心に残る。
俺は感情を上手く発露できない。発散できない感情は何よりも人を苦しめることを、フィクションやテレビ番組などの製作物を通して痛いほど理解させられている。だから俺は人一倍、ストレスになり得る感情が湧くことに対し敏感になっている。
俺が無感情であることを邪魔する事象はどんなものであろうと排除する。そこには躊躇や容赦といった甘さは持ち込ませない。
犬が俺の手元から離れる。ちらりと見ると、飼い主を慰めるように膝元に歩み寄って、クレープを持っていない方の手を舐めている。
慰められているということは、由比ヶ浜が悲しんでいるということなのだろうか?
もしそうなら、悲しませた立場として申し訳思う。
悲しませると分かっていても行動は変わらなかったと思うが。
小町「お待たせ~~。……あれ? 何かあった?」
八幡「いや何も」
雪乃「由比ヶ浜さん、どうしたの? 顔色が悪いわよ」
結衣「うん……。ちょっと気分悪いっていうか————疲れたの」
雪乃「そんな急に————比企谷くん、由比ヶ浜さんに何か良からぬことを言ったんじゃないの?」
八幡「何も言ってねえよ。それに……、俺は何もしていない。犬を可愛がっただけさ」
遠回しに、これでもかというほど皮肉が込めながら俺は実際にあったことを言った。当然、何を言っているのか由比ヶ浜にしか伝わらなかった。
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476 : 2015/01/23(金) 15:25:04.99 -
由比ヶ浜が疲弊した理由は、俺と小町が出会う前にはしゃぎ過ぎたということになった。
どうやらメッセージも伝わっているし、今のところは秘密にしておいてくれるらしい。俺のことを怖がってくれているなら何よりだ。
もちろんこの先ずっと隠しきれるとは思っていない。今でも雪ノ下は俺が由比ヶ浜に何かしたんだと決めかかってくる。
俺は俺でそもそも由比ヶ浜が気分を悪くしていたのに気づかなかった、と言い返す。さすがにその態度は許せなかったのか、雪ノ下は怒りを露わに俺に怒鳴りかかろうとした。
雪乃「そう……。反省の余地なしと言ったところね——!」
結衣「やめて。ゆきのん」
由比ヶ浜が雪ノ下の袖を引っ張り、雪ノ下の声を詰まらせた。
雪乃「っ!? 由比ヶ浜さん…………!?」
結衣「ごめんね小町ちゃん。あたしたち先に帰るね。また今度、サブレのいない時に遊ぼっか」
雪乃「でも、彼が悪いのは分かりきっている。なら——」
結衣「ゆきのんと二人で話したいことがあるから」
雪乃「………………分かったわ。由比ヶ浜さん」
ただならぬ雰囲気の由比ヶ浜に、雪ノ下は俺への断罪より由比ヶ浜のフォローを優先させることにしたらしい。
雪ノ下は殺気を込めて俺を睨んだ後、小町に別れの言葉をかけ、由比ヶ浜を連れてどこかへと歩いていった。
小町「お兄ちゃん………………!」
そしてただならぬ雰囲気の奴がここにも一人。とりあえず落ち着け。誤解だ。俺は悪くない。
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477 : 2015/01/23(金) 15:28:06.28 -
やってしまったことはもう取り返しがつかないので、とにかく今はこの作品を完結させることだけ考えます
だから皆さんも救急車のことについて過剰に掘り返さないようお願いします
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