-
1 : 2013/02/15(金) 02:24:22.96 -
千早「まぁ、そうでなければ、私なんか選びませんよね」
P「ち、千早……お前、いつの間に……」
千早「いま帰ってきたところです。予定よりはやくスケジュールが済んだので」
P「ごめん」
千早「どうしたんですか? 急に謝ったりして」
P「反省しています」
千早「ふふっ、へんなプロデューサー。私、何も怒ってなんかいないのに」
P「もう二度と観ないから……機嫌を直してくれないか」
千早「観ないって、何を?」
P「……」
P「この、ロリ貧乳モノのAV……」スッ
千早「……」
P「ごめんなさい……」
P(千早と結婚して数年)
P(またしてもやらかしてしまった)
ソース: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1360862662/
-
2 : 2013/02/15(金) 02:25:54.14 ID:ZGqs8FiI0 - この前の巨乳AVverの続きかな?
-
4 : 2013/02/15(金) 02:27:53.16 -
>>2
千早「パ○ズリってこうやるんですね、なるほど」だったっけ?
-
6 : 2013/02/15(金) 02:30:05.79 -
千早「……」スタスタ
P「っ! 千早、どこに行くんだ?」
千早「どこにって、キッチンですよ。夜ご飯を作らないといけませんから」
P「あ、あの……てつだ」
千早「結構です。プロデューサーはお休みになっていてください」
P「了解しました……」
P(洒落にならないくらい怒っていらっしゃる)
P(家で千早が俺をプロデューサーと呼ぶとき、
それは生理のときか激怒しているときなんだよな……)* * *
P「……い……いただきます」
千早「召し上がれ♪」
P「あは、あはは……なんか独創的だな! オムライスに、ケチャップでAAって文字を書くだなんて」
千早「うふふっ、プロデューサー、そういうの好きかと思って」
P「お、おう! 大好きだぞいろんな意味でな! あっはっは!」
-
15 : 2013/02/15(金) 02:39:03.20 -
P「……もぐもぐ」
千早「いかがですか?」
P「あ、あぁうん! いやぁ、本当に美味いよ! たとえ胃が痛くてもいくらでも入るってもんさ!」
千早「ふふっ……、もう、大げさですよ」
P(……実際、千早の料理の腕はここ数年でメキメキ上達しているんだ)
P(結婚当初はまぁ、なんていうか、どうなることかと思ったけど……、
とにかく、いま俺が食べているオムライスだってそう。実に美味しい)P(ただひとつ、ここに書かれている文字さえ無ければ、言うことなしなんだけどな……)
P「そ、そういえば! 今朝もらったバレンタインのチョコレートもさ、すごくうまかったよ!
あはは、事務所のみんなにもついつい自慢しちゃって……それで」千早「プロデューサー?」
P「どうしたんだいマイワイフ?
おおっといけない、つい向こうでの喋り方が出てしまったな! HAHAHA」千早「食事が終わったら、あとで、じっくりお話しましょうね」ニコッ
P「はい……」
──────
────
── -
20 : 2013/02/15(金) 02:48:41.64 -
* * *千早「……とりあえず、頭を上げてください」
P「うん……」スッ
千早「私が言いたいこと、わかりますか?」
P「よくわかっております。このたびは、真に申し訳ございませんでした」
千早「……もう二度とこんなビデオは借りないと、あなたは以前そう言いましたね」
P「きょ、巨乳モノは……な?」
千早「ジャンルの問題ではないと言っている!!!」
P「ごめんなさいですぅっ!」
千早「……これまで何度も言っているように、
こういうものを観たくなってしまう気持ちは理解しているんです。あなたも男性ですから」千早「でも……でもっ! なぜ、あなたが選ぶビデオはこう、極端なんですか……!?」
『妹は未成熟ボディ~お兄ちゃん、だーいすき~』
P「いやーはは……目と目が逢う瞬間ティンと来るものがあって」
千早「このツインテールに惹かれたんでしょう!? ちゃんとわかっていますからねっ!!」
-
27 : 2013/02/15(金) 02:56:13.73 -
千早「本当にもう……仮にそれをするにしても、
もう少し、私の目の届かないところで出来ないんですか?」P「ごもっともです……」
千早「……まだ、わかるんです」
P「え?」
千早「胸の大きい女性のビデオを借りるのは、百歩譲って、いえ千歩譲ってまだわかるんです。
前に私が自分でも言ったように、それは私には足りないものだか──千早「くっ……! 自分で言ってなんだか傷ついてきたわ……!」グッ
P「そ、そんなこと言わないでくれっ! 俺は千早の胸が一番好きだよ!」
千早「え……」
P「俺はな、千早……いつだってお前のことを一番に考えているんだ」
P「朝起きてから、夜眠るまで。常に俺の心の中にはお前がいる……。
仕事で辛いことがあっても、千早の笑顔を思い浮かべれば、なんだって頑張れるんだよ」千早「あなた……」
P「そして……こうやって、ひとりでシコ
千早「台無しよ。というか良い話っぽくしようとしても無駄です」
P「はい」
-
28 : 2013/02/15(金) 03:03:43.78 -
千早「……それで……し、したんですか?」
P「した? な、なにを?」
千早「私が帰ってきたときには、あなたはまだ下着を穿いていたから……。
ビデオを使って、その……ひとりで、……を、したのかって聞いているんですっ」P「いや……再生してインタビューの部分を楽しんでたところだったから、まだ……」
千早「……そうですか」
P「あ、ちょっとホッとした?」
千早「調子に乗らないの」
P「すみません」
千早「……」
P「……ごめんな」
千早「……もう、いいです。仕方の無いことだから」
P「仕方の無いって……」
千早「私が家庭に入って、毎日あなたの相手を出来ていれば、
こんなことにはならなかったんですよね……」P「……!」
-
30 : 2013/02/15(金) 03:09:26.56 -
P「ごめん千早っ!」
千早「な、なんですか? また土下座なんてして……」
P「本当ごめん……! このとおりだ!!」
千早「……ですから、ビデオのことはもういいって……私も少し──」
P「ちがう! あ、いや、もちろんそれもそうなんだけど……、
なにより、千早にそんなことを言わせてしまったことを……謝りたい」千早「……そんなこと、って?」
P「……『仕事をしていなければ良かったんですね』って、
それだけは、お前の口から言わせちゃいけないことだった」P「だから……本当に、すまなかった」
千早「……」
-
33 : 2013/02/15(金) 03:16:37.53 -
千早「……私も、ごめんなさい」
P「え……?」
千早「あなたがこんなに謝ってくれているのに、意地を張ってしまいました。
だから……ごめんなさい」P「千早……」
千早「きっと心のどこかで思っていたんです。こう言えば、あなたは反省してくれるって。
あなたは今、そのことを私に言わせてはいけなかったって言ったけど……、
それは私にとっても同じこと。そう簡単に言ってはいけないことでした」千早「……ずるい手を、使っちゃったわね」
P「ずるいなんて……そんな風には思わないよ」
千早「……ホッとしたのは本当です。たとえ愛はなかったとしても、あなたが一瞬でも
他の女性のことを考えているなんて……わ、私は……嫌。
想像しただけで……っ、身が、引き裂かれそうになるんです……!」P「……! 千早、お前──」
千早「だから!」
P「っ!」
千早「だから……、これだけ、確認させてください」
P「……確認?」
-
35 : 2013/02/15(金) 03:22:35.76 -
千早「……私の、こと……」
P「……」
千早「一番に、愛していますよね……?」
P「! な、何言ってるんだ、当たり前だよ!」ガシッ
千早「きゃっ……」
P「今こんなこと言ってもさ、信用できないかもしれないけど……、
千早と付き合い始めたあの日から、千早以外の女性を好きになったことなんて、一度もない」千早「……本当ですか?」
P「ああ……」
千早「……ふふっ。それなら、もういいです。
あなたはちゃんと謝ってくれたし、私ももう、気にしないから」 -
38 : 2013/02/15(金) 03:31:57.52 -
P「……でも、俺が悪いのにこんなことを言うのも変だけど、
千早はもっと俺のことを責めたって……」千早「もう、責めたでしょう?」
P「そりゃそうだけど……あれくらいで」
千早「……確かに、悲しい気持ちにはなりました。
だけど、いつまでも意地を張ってこんな空気のまま過ごすほうが、私は嫌だから」千早「私はただ……このままふたりで幸せに、笑顔で一緒にいられれば、それで良いんです」
P「……本当に、ごめんな」
千早「私も、つまらないことでまた怒ってしまってごめんなさい。
それと、あんなことを言ってしまったことも……ごめんなさい」千早「もう私はアイドルではないけれど、私は、今の自分のことが好きです。
あなたと一緒に、今の仕事をしている自分が好き。だから、さっき言ったことは撤回します」千早「……はい。これでもう、この話はお終いにしましょう?」
P「……うん」
千早「もう、そんな顔をしないでください。そんなの、いつものあなたらしくないですから」
P「いつもの俺?」
千早「……自信満々で、いつもわけのわからないことを言ってくる……、
私の大好きな、プロデューサーの顔ですよ」 -
41 : 2013/02/15(金) 03:38:01.69 -
【寝室】
P「……千早、こっちおいで」
千早「……はい」モゾモゾ
P「……最近、千早、変わったって思うよ」
千早「変わった? そうですか?」
P「うん。前はさ、なんていうか……
素直になれずに、怒ったらしばらくそっぽ向いてたじゃないか」千早「そ、そんなつもりも無かったんですけど……」
P「……何か、あったのか?」
千早「……いいえ、何も。ただ、優先順位が変わっただけです」
P「優先順位?」
千早「ええ。私が意地を張ることで、素直になれないせいで、この幸せな日常が崩されてしまうなんて……
それこそ、いやだなって思うようになったんです」ぎゅぅっ……
千早「……さっきも、それに以前にも言ったでしょう? 私は、今の私が好きだから。
そして、今の私を形造っているものは……、なによりも、あなたの存在なんです」 -
46 : 2013/02/15(金) 03:46:00.97 -
P「……本当に嬉しいよ、そう言ってくれて。
でもさ、そんな風に考えたら、色々と不満を溜め込んじゃうんじゃないか?」千早「そんなことはありません。だって私、いやなものはいやだと、ちゃんと言いましたから」
千早「気持ちのすべてをしっかりと話した上で、あなたと仲直りする……。
結局、それが一番の近道なんだっていうことに、気が付いたんです」P「千早……」
千早「……でも、私が悲しくなったのは本当ですからね?」
P「う、うん」
千早「だから、あのビデオは明日にでも返してきてください。
それと、ひとりでするならするで……せめて、私の目の届かないところでして」P「……ああ、わかった。名残惜しいけど、あれは明日の朝、事務所に出勤するついでに返してくるよ」
千早「……今回のことはもういいけれど、これからも何度も何度もこんなことがあったら、
また、私……泣いてしまいますからね」P「……ごめんな」
千早「ふふっ、謝るのはもういいですから。……それより、その……」
P「ん? その……なんだ?」
千早「……だから、えっと……」モジモジ
-
48 : 2013/02/15(金) 03:53:37.59 -
P「千早……?」
千早「ま、まだですか?」
P「まだって……えっと、なんの話?」
千早「……まだ、言ってくれないんですか?」
P「言うって──あ」
P(……ああ、なるほど。千早が言いたいこと、なんとなくわかった気がする)
千早「わかってくれました……?」
P「いやー、ごめん。さっぱりわからないよ」
P(……でももう少し、様子を見よう。かわいいし)
千早「も、もうっ! どれだけ鈍感なのよ……!」
P「千早の口から言ってくれないか?」
千早「ええっ!? ほ、本当にわからないんですか? からかってる、とかじゃなくて……」
P「からかうなんてとんでもない! 俺はいつだって、千早に対しては誠実でいるつもりだよ!」キリッ
千早「…………じゃ、じゃあ」
千早「………………仲直りの、しるしに……………………、愛してるよ、って、言ってください」ボソッ
-
51 : 2013/02/15(金) 04:00:49.47 -
P「……ちは──」
千早「ちがいますからねっ!」
P「えっ」
千早「だ、だって! いつもだったらこういうとき、
まるで『千早が怒ってもこう言えば誤魔化せるだろ』って勘違いしてるんじゃないかってくらい、
えっと……わ、私のこと、大好きだよ、とか、愛してるよ、とか」グリグリP「あ、あの、ちょ待って、頭グリグリしないで、苦しい」
千早「だから変だなって! ど、どうして、いつまで経っても言ってくれないのかしら、って!
もしかして、まだなにか後ろめたいことでも隠してるんじゃないかって……そう、確認をっ」P「いや、後ろめたいことなんて、そんなわけ」
千早「で、ですから別にっ、深い意味なんてなくてですねっ……!」
P「千早っ!」
千早「はいっ!」
P「……落ち着いて。後ろめたいことなんて、もう何もないから」
千早「は、はい……」
P「こういうのは、まだ照れちゃうんだなぁ」
千早「て、照れてなんかいませんっ!」
-
53 : 2013/02/15(金) 04:08:20.31 -
P「ごめんな。からかっちゃったりして」
千早「い、いえ……、勝手に取り乱したのわた──え? からか……」
P「」ニヤニヤ
千早「っ!! や、やっぱり騙したのねっ!?」
P「あはは、悪い悪い! それで、えっと……」
千早「……もういいですっ」プイッ
P「愛してるよ、千早」
千早「……」
千早「……そ、そうですか。まぁ、私はあなたのこと、嫌いですけれど」ツーン
P「えっ!? ま、マジか……」ズーン
千早「え……」
P「……千早に嫌われた……もう終わりだぁ……」
千早「あ、あのっ! ちがくてっ! だってわかるでしょう、今のは、うそ──」クルッ
P「」ニヤニヤ
千早「……────~~~っ! ばかっ!」
-
54 : 2013/02/15(金) 04:14:18.69 -
P「おーい、機嫌を直してくれよ……」
千早「……」ツーン
P「悪かったって……慌てる千早が可愛くてさ、ついつい」
千早「か、可愛くなんてありませんっ。あんな姿……」
P「……うん、まぁ、確かにそうだな。慌てる千早が可愛いっていうのは、間違ってた」
千早「……え……」
P「……」
千早「な……それは、そうですけど……でも、いつもだったらあなたは──」
P「慌ててなくても、千早は常に世界一可愛いから」
千早「……!」
ぎゅうっ
千早「……ばか」グリグリ
P「あはは……」
-
58 : 2013/02/15(金) 04:22:24.86 -
P「……千早」
千早「なんですか……」
P「愛してるよ、本当に」
千早「…………。……じゃ、じゃあ……証拠、見せてください」
P「証拠?」
千早「言葉だけでは、なんとでも言えます。何が面白いのか知りませんけど、
あなたはすぐからかってくるし……だから、愛してるって証拠を見せてくれないと、信じられません」P「そうだな……どうしたらいい?」
千早「……まず、抱きしめてください。思いっきり」
ぎゅぅぅぅ
千早「! ……そ、それから……頭を撫でて」
P「うん……」ナデナデ
千早「……ばか、ばか」
P「はは……今日はやけにばかって言われる日だな」
千早「あなたのせいですからね……」
P「……うん、そうだな」
-
61 : 2013/02/15(金) 04:30:50.94 -
P「……なぁ、千早」
千早「え……?」
P「いいかな」
千早「……!! い、いいって、なにがですか」
P「パジャマ、脱がしてもいいか?」
千早「……それで、どうするんですか?」
P「キスをするんだよ」
千早「キスくらい、服を脱がなくたって……」
P「脱がせないとできないところにキスをしたいんだ」
千早「……な、なんであなたはそういうこと、サラっと言えるんですか……」
P「……だめ?」
千早「……だめです」
P「……」
千早「……」
千早「……うそ、です……」
-
62 : 2013/02/15(金) 04:43:43.49 -
千早「……しかたないですから」
P「しかたないって?」
千早「だから……さっきは、結局ひとりで出来なかったみたいだし……
ああいうビデオを借りてくるってことは、あなたも今、我慢しているってことだろうし」千早「……だからです」
P「……ひとりでするのより、千早とするときが、一番だよ」
千早「べ、べつにそんなこと聞いていませんっ!」
P「あはは……えっと、それじゃあ……ばんざいしてくれる?」
千早「うぅ……」カァァ
シュルシュル……
P「……千早」
千早「ま、待って! あの……おねがいが……」
P「え?」
千早「……する前に……部屋を真っ暗にして欲しいのと……あと」
千早「……ちゃんと、一番最初に……、私の唇に、キスをしてください」
P「……うん、もちろん」
-
63 : 2013/02/15(金) 04:49:31.46 -
千早「……ん……ぷは」
P「……千早、今日はごめんな」
千早「……こんなときにまで謝るのは、やめてください。
謝るくらいなら……、本当に、申し訳ないって思っているなら……」千早「その分、たくさん……私のことを、愛してください……」
P「……ああ、わかっ
(いぇーい高槻やよいです! 貧乏ですけどガンバりますけど、とりあえず今日は省略しまーす!)
──────
────
──千早「……ってことが、昨日あって」
春香「ごちそうさまでした」
千早「春香、もう食べないの? 口に合わなかったかしら……」
春香「ちがうよっ、おいしいよ! じゃなくてっ!
のろけ話をこんなに聞かされて、もう胸がいっぱいだって言ってるのよ!」 -
64 : 2013/02/15(金) 04:51:27.19 - 休憩しますぅ
-
67 : 2013/02/15(金) 05:22:06.46 -
春香「もー、千早ちゃんたち、結婚して何年経ったっけ?
いつまで経ってもラブラブでいいなぁちくしょうめ!」千早「何よその喋り方……というか、春香」
春香「へっ?」
千早「突然遊びに来てお昼ごはんをねだってくるのはいいけど、時間は大丈夫? 今日も仕事なんでしょう」
春香「あー、うん。十四時くらいまではね」
千早「そう……ところで、そう言うあなたは、いい加減に良い話ないの?」
春香「んー、私? ないない、全然ないって~……もぐもぐ」
千早「……本当? 人に言えないようなこと、してたりして……」
春香「っ!? けほっ、こほっ!」
千早「ああもう、いつまで経っても落ち着きがないんだからっ。
誰も取ったりしないんだから、ゆっくり食べなさいよ」春香「あたしのお母さんか! ……っていうか、
言えないことなんてしてるわけないでしょっ! もう、どんなこと想像してるの?」千早「ど、どんなことって……、それは…………」モジモジ
春香「……千早ちゃんってさ、意外とそういう話、好きだよね」
千早「ご、誤解よっ!」
-
68 : 2013/02/15(金) 05:32:28.37 -
千早「と、とにかく、私は嫌よ。ある日突然、春香を芸能以外のニュースで見ることになるなんて」
春香「だからぁ~……何かあったら、すぐ千早ちゃんに言うってば。
それにさ、私は今でも、みんなに歌と夢と笑顔を届けるアイドル! なんですから!」春香「天海春香、二十代中盤に差し掛かってもまだまだ現役っ! 若い子には負けませんよ!」
千早「……ふふっ、アイドルに恋愛はご法度だからね」
春香「えへへー……まぁ、あの頃口をすっぱくしてそんなこと言ってたプロデューサーさんと、
あの真面目な千早ちゃんが、本当に結婚しちゃったんだけどねぇ」* * *
春香「ふぅー、お腹いっぱい。今度こそほんとに、ごちそう様でした」
千早「あの量、よく食べきったわね……」
春香「おいしかったからね! 千早ちゃん、本当にお料理の腕前上がったよねー。
やっぱり食べてくれる人がいるからかな?」ゴロン千早「ありがとう。まぁ……たしかに、料理を作る機会は、比較にならないほど増えたから」
春香「……あーあ、千早ちゃんが私の旦那さんだったら良かったのにな」ゴロゴロ
千早「何言ってるのよ。そういう台詞は、真に言ってなさい」
春香「本気で怒られちゃうもん……」
-
69 : 2013/02/15(金) 05:43:54.07 -
春香「それに真ったら、今ではすーっごく女の子らしいんだよ?
さすが女優さんだよね、ほんっとに綺麗で可愛いんだから。王子様なんて昔言われてたのが嘘みたい」千早「まぁ、そうね……というか、春香?」
春香「なにー?」ゴロゴロ
千早「食べてすぐ横になったら丸くなるわよ」
春香「いーんですー。もう映画の撮影終わったんだもーん」ゴロゴロ
千早「まったく……あなたのファンがこんな姿見たら、なんて思うかしらね」
春香「オンとオフの切り替えは大事だって、律子さんも言ってた。
それにね、最近はこういう、生活感溢れるアイドルっていうのが受けるんですよっ」千早「……ふふふっ」
春香「えへへー……」
千早「十四時までってことは、もう少しゆっくりできるんでしょう? お茶、いれるわね」
春香「おー、嬉しいっ! さっすが私の嫁!」
千早「さっきは旦那とか言ってなかった? それに私は、春香じゃなくてあの人の嫁です」
春香「ちぇー。千早ちゃん、結婚して色々性格変わったと思ったけど、
そういうところは相変わらず真面目なんだから」千早「春香のほうこそ色々変わったと思うけどね。それともそれが、あなたの素なのかしら」
-
70 : 2013/02/15(金) 05:53:19.53 -
コポポ……
春香「……ねー、千早ちゃん」
千早「どうしたの?」
春香「あのさ……、そんなにラブラブなら、もうそろそろ……」
千早「……」
春香「……ううん、やっぱりなんでもないや」ゴロゴロ
千早「……今更、気を遣わなくてもいいのよ? 私とあなたの仲じゃない」
春香「えへへー……私が言いたいこと、わかっちゃった?」
千早「わかるわよ。でも、まぁ……そうね。
私も、考えてはいるんだけど……こればかりは、簡単に決めていいことじゃないから」* * *
千早「はい。ココアで良かったわよね」コトッ
春香「ん、ありがと。千早ちゃんは相変わらずコーヒーなんだね」
千早「ええ、まぁ──って、春香、その本……」
春香「ふっふっふ……さっきゴロゴロしてたら見つけちゃいました! 思い出のお菓子作りの本!」
-
71 : 2013/02/15(金) 06:04:12.51 -
春香「……千早ちゃんさ、これ読みながら、一生懸命バレンタインのチョコレート手作りしたんだよね。
チョコ・フォンデュだっけ? 作ったの。たしかあの頃出した、千早ちゃんの新曲が……」千早「……よく覚えてるわね、そんな昔のこと」
春香「だって、私が言い出したことだもん。プロデューサーさんにチョコあげなよ、って。
それなのに千早ちゃんったら、『別に好きじゃないよぅ、恥ずかしいよぅ』なんて言っちゃって……」千早「そ、そんな風には言ってなかったでしょうっ?」
春香「あれ、そーだったっけ? えへへ……」
パラララ……
春香「……あのとき、ついついしちゃった告白から、いろんなことが変わったんだよね」
千早「……そうね」
春香「あーあ、これでここにやよいがいたら、あの頃のユニットメンバー勢揃いなのになぁ」
千早「でも、たか……じゃなくて、やよい、大学生活で忙しそうだから、しかたないわよ」
春香「あははっ! また高槻さんって言いそうになった。
『よそよそしい呼び方はもうやですーっ!』って、またやよいに怒られちゃうよ?」千早「似てないわよ。……でも、まぁ、私はあの子の怒った顔も……だし……それはそれで……」ボソボソ
春香「えっ?」
千早「なんでもないわ」
-
74 : 2013/02/15(金) 06:14:50.63 -
* * *
春香「……それでそのとき、美希ったら」
『千早さんとキスしたら、ハ……じゃなくて、プロデューサーとも間接キスしたことになるかな?』
春香「ってね、あの子なりに、わりと真剣に考えてたんだよ。
あははっ、あの頃は結構、いやかなり大変だったけど、今思うとおかしいよねっ!」千早「そ、そうだったの……だからあの頃、神妙な顔をしながらやたらとくっついてきてたのね。
今度からどんな顔して会えばいいのかしら……」春香「えへへー……でもほーんと、懐かしいなぁ。
あ、あとあと! あのときさ、プロデューサーさんが千早ちゃんにプロポーズしたときも……」春香「──って、いけないいけない」
千早「……? どうしたの?」
春香「なんだか、昔話ばかりになっちゃってたわね……最近はこればっかりだなぁ」ポリポリ
千早「ふふっ、でも、こういうのもいいじゃない。思い出はいくら語っても尽きないもの」
春香「……でもね、千早ちゃん。昔話に華を咲かせるようになると、それは年を取った証拠なのよ?」
千早「……それ、誰に言われたの?」
春香「小鳥さん」
千早「ああ……音無さんらしいわね」
-
78 : 2013/02/15(金) 06:24:28.50 -
春香「……ね、千早ちゃん」
千早「なに?」
春香「プロデューサーさん結婚して……、良かった?」
千早「……ええ、もちろん」
千早(……春香とは、私がアイドルだったあの頃から、ずっと一緒だった。
人には話せないようなことも、上手に聞き出してくれて……、
そしていつだって、私の味方だった)千早(だから春香は、私がその頃に抱えていた悩みも、
私たちの馴れ初めも、どんな風に過ごしてきたかも、すべて知っている。
だから……)千早「あの人と結婚して夫婦になったこと、それを後悔したことは……一度もないわ」
春香「……そっか! えへへ、それを聞けて良かったよ」
千早(だから、こんな風に笑ってくれる。心から、私達の幸せを喜んでくれる)
千早(……そして私は──)
-
79 : 2013/02/15(金) 06:25:38.84 -
ちょっと日本語が気になるので訂正
×春香「プロデューサーさん結婚して……、良かった?」
○春香「プロデューサーさんと結婚して……、良かった?」
でオナシャス -
80 : 2013/02/15(金) 06:30:11.08 -
千早「……ありがとう、春香」春香「えー? どうしたの、急にお礼なんて言っちゃって」
千早(……そして私は)
千早(あなたに出会えたことを、そんな親友を持てたことを、何よりも誇りに思う)
千早「なんでもないわ。ただなんとなく、そう思っただけ」
春香「ふふっ……へんな千早ちゃん」
千早(……恥ずかしいから、面と向かってこんなこと、言えないけれど)
千早(でもきっと、それは……言葉にしなくたって、あなたには伝わってしまっているんでしょうね)
-
81 : 2013/02/15(金) 06:39:20.03 -
春香「いやー、でも、結婚かぁ~。話を聞いてると、なんだか私まであこがれちゃ──」
ピピピ……
春香「ん……うわっ、もうこんな時間!?
ご、ごめん千早ちゃん、私、そろそろスタジオ行かないと! 律子さんにまた怒られちゃうっ」千早「そう……。それじゃあ、しゃちょ──じゃなくて、律子にもよろしく言っておいてね。
あと……ごめんなさい、久しぶりに会いに来てくれたのに、
今日は私の話ばかり聞かせてしまって」春香「ううん、気にしないで。千早ちゃんとこんな風にお喋りできるときが、私、一番楽しいから」
千早「そ、そう……」
春香「あっ、照れてる~」
千早「そそ、そんなんじゃないったら!」
春香「えへへ……また家に呼んでね! 次に日本に帰ってくるのは、えーっと……」
千早「三月の末。あなたの誕生日までには、また帰国するわ」
春香「え……そんなに早く?
も、もしかして……、スケジュール調整してくれたの? 私のために?」千早「ふふっ、さぁ、どうかしらね? あの人に聞いてちょうだい」
春香「……あはは……そ、そっか……」ウルウル
-
82 : 2013/02/15(金) 06:47:46.15 -
春香「……も、もう、参っちゃうな。
ふたりとも、相変わらず、ふいをついてくるんだから……」ゴシゴシ千早「春香……」
春香「でも……本当に……、嬉しいよ……!」
ぎゅぅっ
春香「! ち、千早ちゃん……これ、ハグってやつ? さすが海外暮らししてるだけあるわね……」
千早「……春香。どんなに離れていたって、同じアイドルでは無くなったって……、そんなの関係ない」
千早「だって、私たちはずっと……──でしょう?」
春香「……うん……そうだね!」ギュー
* * *
春香「……お昼ご飯、ごちそう様。すっごくおいしかったよ」
春香「プロデューサーさんにも、春香が会いたがってたって言っておいてね。
忙しい忙しいなーんて言って、最近は765プロの方にはあんまり顔出してくれないんだもん」千早「ええ、わかったわ。忙しい中、わざわざ来てくれてありがとう。
それじゃあ……またね」春香「うん、またねっ! 次会えるときまで、千早ちゃんの歌、日本で聴きながら待ってるから!」
-
83 : 2013/02/15(金) 06:56:37.48 -
* * *
千早「……」
千早「……後片付け、しないと。春香の使った食器……」
ジャー……
千早(……春香が帰って、ひとりきりになって……
改めて、この家の広さを……、身にしみて感じてしまう)千早(私がこの家にいるとき、いつもはあの人がそばにいてくれて……
今日は、私だけオフだったけど、ちょうど春香が会いに来てくれて……)千早「……」
千早(いつから、こんなに、さみしがり屋になってしまったのかしら)
千早(元気で賑やかな春香が帰ってしまったから? それとも、昔話をしたせい?)
千早「……ううん。どれも……、ちがうわね」
千早(……いつから、とかじゃない。
今思えば、私は最初から……、さみしがり屋だったのよ……) -
84 : 2013/02/15(金) 07:05:12.13 -
千早(まだ十六歳だった、あの頃の如月千早も、
結婚して苗字が変わった、今の千早も……)千早(これまで生きてきたどんな私も……本当は、そうだった)
ジャー……
キュ、キュ……千早(私は、小さな子供だったときから、本当は、ずっとずっと……)
千早(ひとりになるのが、怖かったんだ)
『……──えちゃん!』
千早「……っ!」
千早(──この手で繋いでいたはずの、大切な何かを失うのが……何よりも、怖かった)
千早(だからあの頃の私は……それを失うくらいなら、そんなもの、最初からなければいいって思って……)
……ポタ、ポタ
千早「……、……! ……──な、た……」
-
85 : 2013/02/15(金) 07:11:21.30 -
千早(……でも、今の私には……、失いたくない宝物がたくさんある)
千早(数え切れないほどの思い出を作ってきた、大切な仲間達と)
千早(そんな中で出会えた……私のことを世界で一番理解してくれる──大切な親友)
千早(私の人生そのものと言ってもいい、大切な歌の数々。そしてなにより……)
千早「……あなた……!」
千早(それまでの私の世界のすべてを変えてくれた、大切なプロデューサーであり……)
千早(そして、今の私のことを……、世界で一番愛してくれる──大切な夫)
ポタ、ポタ……
千早「……はやく……」
千早「はやく帰ってきて……」ポロポロ
-
87 : 2013/02/15(金) 07:25:10.74 -
──────
────
──ガチャッ
P「ただいまー」
千早「!」
タッタッタ
千早「……おかえり、なさい」
P「うん。いやーごめんごめん、帰りにちょっと買い物してたら遅くなっちゃって……」
P「……って、千早?」
千早「は、はい……なんですか?」
P「……いや、玄関まで走って迎えに来てくれるなんて珍しいなって思って」
千早「……あなたの顔を、はやく見たかったんです。
あの……だめ、でしたか?」P「いやいや、そんなわけないって! もちろん嬉しいさ、旦那冥利に尽きるっていうか……」
P(……千早の目、赤くなってる……?)
-
89 : 2013/02/15(金) 07:34:42.95 -
千早「……えっと……」
P「……」
千早「……夕飯の準備、しちゃいますね。もうあと少しだから」
P「……いや、いいよ」
千早「でも……、お腹、空いてるんでしょう?」
P「たしかにそうだけど……でも、まだいい」
千早「なんで……」
P「……」テクテク
ぽふん
P「いやー、やっぱりこのソファはいいな。奮発したかいがあったってもんだ。
事務所の安椅子とは大違いだよ」千早「あなた……あの──っ」
P「千早」
千早「……っ」
P「……隣、おいで」
千早「……はい」
-
93 : 2013/02/15(金) 07:44:35.30 -
千早「……」
ぽふんっ
P「……ほら、これ。受け取ってくれ」スッ
千早「え? これって……」
P「帰りが遅くなったのはさ、これを買いに行ってたんだ」
千早「……チョコレート?」
P「うん。まぁ、バレンタインには一日遅くなったけど……たまには、男のほうからあげたっていいだろ?
前に撮影で使わせてもらった店なんだけどさ、ちょー高級で美味しいやつなんだぞ、それ」千早「……ふふっ、昨日のお詫びですか?」
P「あはは……バレたか」
千早「こんなプレゼント貰わなくても、もう、気にしてないのに……」
P「……一粒、食べてみてくれよ」
千早「……はい。それじゃあ……」
パクッ……
千早「……」
千早「……甘い……」
-
95 : 2013/02/15(金) 07:52:22.77 -
モグモグ……
千早「……美味しいです、とても」
P「……なぁ、千早」
千早「……?」
P「目、赤くなってた気がするんだけど」
千早「そ、そうですか? ゴミが入っちゃったのかしら」ゴシゴシ
P「……」
千早「……今日、春香が会いにきてくれたんです」
P「春香? なんだ、春香が家に来るなんて随分久しぶりだな」
千早「ええ。それで、少し昔の話を……」
P「……そっか」
千早「……ふふっ、あなたに会いたがってましたよ?
日本にいるときくらい、私たちの事務所だけじゃなくて、
たまには765プロの方にも顔を出してあげてください」P「あはは、そうだな……」
-
96 : 2013/02/15(金) 07:58:25.78 -
P「……」
千早「……あの、あなた……」
P「ん?」
千早「……それ以上は、何も聞かないんですか?」
P「千早が話したくなったらでいいさ」
千早「……」
千早「……お願いが、あるんですけど」
P「お願い? なんだ、言ってみて」
千早「目が、まだ少し、痛いんです。
だから……、目の中に入ったゴミを、取ってくれませんか?」P「……うん、わかった。どれどれ──」クルッ
千早「……っ」
ちゅっ……
P「……ゴミなんて、見当たらないな」
千早「……それはそうです。だって、目が痛いなんて嘘」
千早「ただ……、こっちを向いて欲しかっただけですから」
-
100 : 2013/02/15(金) 08:07:05.68 -
ぎゅぅぅぅっ千早「……あなた……あなたっ……!」ギュー
P「うん、うん……」
千早「わっ、私、なんだか、よくわからないけど……っ、
春香が帰って、ひとりになったら……、急にさみしく、なっ……て……!」P「そっか……よしよし」
千早「あなたが帰ってくるまで、ずっと私、ひとりで……!
も、もしこのまま……あなたまで、帰ってこなかったら、どうしようって……!!」P「……大丈夫、俺はいなくならないよ」
千早「でも──」
P「あのプロポーズのとき、こう言ったよな。
生涯、千早をひとりぼっちになんてさせないってさ」千早「……!」
P「……俺がその約束破ったこと、ないだろ?
だからもう、何も言わなくていいよ。言わなくても、ちゃんと俺はわかってる」千早「……う、う……!」
P「何も気にしないで、今は思いっきり泣いていい。泣き止むまで、頭を撫でてあげるから」
-
101 : 2013/02/15(金) 08:09:15.45 - 朝ごはん食べる
-
107 : 2013/02/15(金) 08:39:42.26 -
保守ありがとうございます
再開する -
110 : 2013/02/15(金) 08:47:10.75 -
* * *
千早「……ごめんなさい」ズビッ
P「気にしないでいいって。あーあー、鼻水が……ほら、ちーんして」
千早「こっ、子ども扱いしないでくださいっ!
それくらい、あなたに頼らなくても、自分で出来ますから……」ちーん!
P「……すっきりしたか?」
千早「……はい」
P「そっか……それなら良かった」
千早「……私、だめですね」
P「え? だめってなにが?」
千早「いつまで経っても、あなたに甘えて……。
特に何があったというわけでもないのに、こんな風に、迷惑をかけてしまうから」P「……迷惑なんかじゃないよ」
千早「でも……」
P「絶対、迷惑なんかじゃない。だってさ……、
嬉しいことも、悲しいことも、ふたりで分かち合うのが、夫婦だろ?」 -
116 : 2013/02/15(金) 08:58:05.97 -
千早「……」
千早「……私、あなたと出会えて良かったです」
P「……急にどうした?」
千早「あなたに出会えてなかったら……、
いま私の胸に生まれた気持ちを、知ることが出来なかったから」P「……千早。それは、俺だって一緒だよ」
千早「え? いっしょ?」
P「うん。あのとき千早に出会ってさ、最初はなんていうか、
千早をプロデュースするのは大変だなって思うときもあったけど……」千早「……ふふっ、私、わがままばかりでしたからね」
P「あはは、今となっては良い思い出だよ」
P「……それからさ。だんだんと、少しずつ、千早との距離を近づけていって……
アイドルとしてじゃない、千早本人の魅力っていうのを知っていった。
そして……本当に、色々とあったけれど……、こうして夫婦になったんだ」千早「……」
P「今の俺の原動力は、千早だ。
千早の笑顔のためなら、なんだって頑張れる。だから……」P「俺も、千早といっしょ。千早と出会えて……良かった」
-
118 : 2013/02/15(金) 09:07:30.39 -
千早「……──」
ポロッポロ……
P「え!? な、なんでまた泣くんだ?」
千早「……」ゴシゴシ
千早「……泣くことならたやすいけれど、悲しみには……、流されない」
P「……? 蒼い鳥?」
千早「……あなたのプロポーズに返事をしたとき、私はこう決めたんです。
もう、ひとりで涙を零して……、悲しみに流されるのはやめようって」P「……」
千早「泣くときは、あなたの腕の中で……。
そうすれば、きっと……、泣く前よりもずっと……私は強くなれるから」千早「だからこれは、悲しくて泣いているんじゃありません。
あなたの言葉が、嬉しくて……、泣いているんです」P「……そっか」
千早「あなた……」
P「ん?」
千早「……愛しています。世界中の、誰よりも」
-
119 : 2013/02/15(金) 09:13:38.49 -
P「千早……」ぎゅぅっ
千早「ん……」
P「……」
千早「……」ドキドキ
P「……千早の心臓の音が、よくわかるよ」
千早「……ふふっ、私も……。
あなたの心臓の鼓動、あなたの熱い体温、そのすべてが……
まるで、私とひとつになったみたいに感じます……」P「……千早、あの──」
ピ──!!
P・千早「!?」
千早「い、いけない……お鍋が……」
P「あはは……そ、それじゃあ、いい加減、夕飯にしよっか」
千早「……はい」
-
120 : 2013/02/15(金) 09:21:36.83 -
タッタッタ……
千早「……あの……」チラッ
P「……続きは、夕飯のあとでな」
千早「も、もう……」プイッ
P「ふふふ、どんな顔してるんだー?」
千早「こ、こっちに来ないでくださいっ! 料理の邪魔ですっ!」
P「ひ、ひどいな」
千早「……ばか」
P「あはは……」
千早「……でも」
グツグツ……
千早「……好き」
P「んー?」
千早「ど、どうせ聞こえてるんでしょう? そういうところは、嫌いですっ」
-
124 : 2013/02/15(金) 09:33:30.72 -
──────
────
──【寝室】
P「……千早」
千早「……」ツーン
P「あの、悪かったって……」
千早「……私が何を怒っているか、わかりますか?」
P「……」
P「さっき一緒に風呂に入ったとき、その……ついつい」
千早「……お風呂は、嫌なんです。明るいから……」
P「で、でも、ちょっといじくっただけだったし、それに千早だってまんざらじゃ──」
千早「……──~~!!」ポコポコ
P「ご、ごめんごめんっ!」
-
125 : 2013/02/15(金) 09:43:36.70 -
千早「……」
ぎゅっ
P「……ち、千早?」
千早「……いいから。はやく、抱き返してください」
P「あ、ああ……」
ぎゅぅっ……
千早「……やっぱり、ここにいるときが、一番好きです」
P「ここって?」
千早「ベッドの上で……、あなたの腕の中にいるとき」
P「……」
千早「夜眠りにつくときも、朝目が覚めるときも……
いつもあなたがそばにいてくれるこの場所が……、私は、一番好き」P「……うん」
千早「……あなた」
P「うん?」
千早「……愛して、ください。さみしさも全部、忘れてしまうくらいに……」
-
126 : 2013/02/15(金) 09:51:19.81 -
P「……千早……」
千早「……んっ……」
P「……それじゃあ、脱が──」
千早「……?」
P「あっ」
千早「な、なんですか?」
P「ご、ごめんっ、千早!」
千早「ごめんって……なにが?」
P「……アレ、切らしてるんだった」
千早「アレ? アレ、って……」
千早「……」
千早「……ええっ!?」
P「昨日、一箱まるまる使っちゃったんだったな……」
千早「たしかに、そういえば……で、でも……それじゃあ……」
-
130 : 2013/02/15(金) 10:02:32.13 -
P「……ちょっとコンビにまでひとっ走りして買ってくるよ」スック
千早「……! ま、待ってくださいっ」ガシッ
P「え?」
千早「行かないで……ひとりに、しないで」
P「……でも……」
千早「……、……!」
ドックン ドックン……
千早「……い、今から、私が言うこと……、ちゃんと聞いてください」
P「……うん」
千早「たしかに、こうなってしまってから言うけど……、
私は、本当に真剣で……簡単な気持ちで言うつもりは……ないから」P「……わかった。言ってみてくれ」
千早「…………きょ、今日は……」
千早「今日は、アレを……つけなくて、いいです」
P「……!」
-
132 : 2013/02/15(金) 10:10:36.54 -
『……ねー、千早ちゃん』
『あのさ……、そんなにラブラブなら、もうそろそろ……』
千早(……今日、春香からも、こう言われたけど)
千早(私は、私なりに……そのことを、ずっと考えていて……)
千早「……色んなこと、たくさん考えました。
出来ることなら考えたくなかったことも……たくさん、考えました。
大切なことだから、簡単に決断していてはいけないって……、わかっています」千早「でも、それでも私は……!」
千早「私は、あなたのことを、世界中の誰よりも、愛しているから……」
千早「あなたと私の間にある、この愛を……
はっきりとした形にして、この両手で抱きしめたいから……!」ぎゅぅっ……
千早「──だから、私は……」
千早「あなたとの、赤ちゃんが欲しいんです」
-
134 : 2013/02/15(金) 10:19:44.08 -
千早「……」ドキドキ
P「……赤ちゃん、か」
千早「……あの、でも……あなたがだめというなら、私は……」
P「……だめなんかじゃないよ」
千早「! そ、それじゃあ……!」
P「……そうだね。俺達も、もう結婚して数年……
そろそろ、いいのかもしれないな」P(……まだだ)
P(まだ、──ちゃだめだ……)
千早「……あなた」
P「ん?」
千早「……ありがとう」
P「……なんで、ありがとうなんだ?」
千早「あなたはいつだって、私のことを気遣って……、
『そのこと』を、言葉にしないでいてくれるから……」 -
136 : 2013/02/15(金) 10:29:51.48 -
P「……余計な言葉なんて、要らない。
俺が千早に対して抱いている気持ちは、たったひとつだけなんだから」千早「ひとつ……?」
P「……俺は、今の千早のことを愛している。世界中の、誰よりも……」
千早「……」
P「それは、千早もいっしょだろ?」
千早「……はい!」
P「それなら、なんにも心配することないよ。
大丈夫、なにがあったって……俺達なら、きっとうまくいく」千早「……あなた」
P「……」
ちゅっ……
千早「……──」
P(──もう俺達はこれまで、何度唇を重ね合わせたかもわからないけれど……)
P(千早の唇は、このとき、少しだけ……、震えていた)
-
137 : 2013/02/15(金) 10:39:55.69 -
P(……それなら、千早が震えているのなら……
俺に出来ることは、たったひとつだけだ)P(俺達なら、きっとうまくいく。それを千早に、心から信じさせてやること……)
P「……大丈夫、大丈夫だよ」
千早「……、……!」
P「そうと決まれば……ほら、ベッドに戻ろう」
千早「…………」コクン
P「……さみしい気持ちも、不安な気持ちも……。
千早が抱えてるものは、俺が全部、消してあげるから」P「だから……心配するな」
千早「……」
千早「……はい……!」
-
139 : 2013/02/15(金) 10:44:21.06 -
(…………)
──────
────
──P「ん……?」パチッ
千早「……すぅ……すぅ……」
P「……」
P(……真夜中に、ふと目が覚めて……、
隣で寝ている、妻の顔を見た)P(……とても幸せそうな寝顔だ)
-
141 : 2013/02/15(金) 10:51:15.68 -
P「……千早。いまお前は、どんな夢、見てるんだ?」ナデナデ
千早「ん……」
P「幸せな夢なら、いいんだけどな……」
P(……でも、結婚してから気づいたことだけど……)
P(幸せな夢を見ると、千早はときどき、
どうしようもなく悲しい気持ちになってしまうときがあるんだ)『私のそばを……勝手に、離れないでください……!』
P(……そんなとき、彼女は少し混乱してしまって……
この間も、こんな風に言われてしまった)P(きっと、目が覚めるとき──目の前にあった幸せが消えるとき、
その喪失感が、千早の心を、強く締め付けてしまうんだろう)P「……」
P(だから俺は……喧嘩をしたときだって、いつだって……最後には千早と一緒に眠る)
P(目が覚めたときに隣にいてやることで、その喪失感は、少しだけ軽くなるから……)
-
143 : 2013/02/15(金) 10:58:19.00 -
『──だから、私は……』『あなたとの、赤ちゃんが欲しいんです』
P(……まさか、千早の口からこんな言葉を聞ける日が来るなんて)
P(本当にあれから……千早と出会ったあのときから、長い時間が経ったんだな……)
P「……っ、……!」
P(……それまでの千早の人生のこと……千早の身に起きてしまった、様々な出来事のこと)
P(その言葉に含まれた、彼女の気持ちのこと、そして……彼女の心の変化のことを考えると……)
P(嬉しいはずなのに……、なぜか、強く胸が締め付けられてしまって……)
P「……千早……!」
ポロポロ……
P(そして、俺は……)
P(彼女が寝ているすぐそばで……声も出さずに、少しだけ泣いてしまった)
-
144 : 2013/02/15(金) 11:05:15.28 -
モゾモゾ……
千早「……? あなた……?」
P「──! ち、千早……ごめん、起こしちゃったか」
千早「……。泣いているんですか……?」
P「……」ゴシゴシ
P「……大丈夫、悲しいことがあったわけじゃないから」
千早「じゃあ、嬉しいこと?」
P「……ああ、そうだよ」
千早「……そうですか。でも……だめですよ」
ぎゅっ
P「……?」
千早「それだったら、なおさら、どうして泣いているのかを話してください」
P「なおさらって……」
千早「……だって、あなたもさっき、言ってくれたように……」
千早「嬉しいことも、悲しいことも……
どんなことだって、ふたりで分かち合うのが……夫婦なんでしょう?」 -
145 : 2013/02/15(金) 11:10:51.17 -
P「千早……」
千早「……大丈夫。私だってもう……昔ほど、弱くはないから」
千早「今の私の隣には、あなたがいるから……
だから、何も怖くありません。どんなことだって、話してください」P「……うん、そうだな。
それじゃあ、少し……、昔の話をしよっか」千早「……はい」
P「あれは……、ああ、そうだ。千早と俺が、初めて出会ったとき──」
P(……これからも、俺たちはこんな風に生きていくんだろう)
P(きっとまた、喧嘩をしてしまうこともあるし、悲しい気持ちになってしまうこともある)
P(でも……そのたびに、俺たちはこうやって……
なんだって伝え合って、一歩ずつ歩いていくんだろうな) -
146 : 2013/02/15(金) 11:16:43.08 -
* * *P「それでさ……」
千早「……ふふっ、あなた?」
P「ん?」
千早「愛しています……世界中の、誰よりも」
P「……うん、俺もだよ」
千早「……だから……」
千早「これからも、いつまでも……」
千早「ふたりでいっしょに、歩いていきましょうね」
P「……ああ、もちろん!」
おわり
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