ある小さな制作会社の一夜


1 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:56:34 ID:KFgDtUpg
男「先輩ー、もう今日は泊まりですかねー」

先輩「は?私は事務所に泊まり、絶対に嫌ですけど?」

男「でも、今の案件、まだ時間かかるんでしょー?」

先輩「私の作業分は終わるわよ。終わらせる!」

男「そりゃ、終わらせてくれないと、明日の朝困った事になりますけどー」

先輩「なるべく早く終わらせてそっちに回すから」

先輩「おとなしく待ってて!」


ソース: http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1348973794/


2 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:57:03 ID:KFgDtUpg
先輩「それともあんたがやる?」

男「それはdtpオペレーターである俺を馬鹿にしてるんですかー?」

先輩「しょうがないでしょ、そういう職業なんだから」

先輩「悔しかったらデザイナーになってみれば?」

男「それは、センスのない俺への嫌味ですねー」

男「それに俺は、オペレーターである事に、一応誇りを持ってますからねー」

先輩「誇りで飯が食えれば苦労しなわよ」


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:57:46 ID:KFgDtUpg
男「だから、迅速に作業出来る様に、知識を詰め込んでるんじゃないですかー」

男「そっちの仕事が上がってからが、こっちの仕事なんだからー」

男「早くしてくださいよー」

先輩「うっさい!」

男「何キレてるんすかー」

先輩「あんたのその、だらーっとしたしゃべり方によ!」

男「まぁ、これは昔からなんでー」


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:58:20 ID:KFgDtUpg
先輩「知ってるけど、忙しい時に聞かされると、イラっとする!」

男「俺、手持ち無沙汰なんですよー」

先輩「あんた、そうやって話しかけて、作業妨害して」

先輩「私を家に帰さないつもり?」

男「ははは。ご冗談を」

男「俺は深夜作業大好きですからねー」

男「しかも1人で、何の音もなく真っ暗な中」

男「1人でペチペチとキーボードを打つのが好きなんですよー」

男「だから、先輩、とっとと帰って下さいよ、自宅に」


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:58:52 ID:KFgDtUpg
先輩「…そんなに暇ならさ」

男「あいー」

先輩「次回のプレゼンに使う資料の文字打ちしてよ」

男「そんなのあるなら、もっと早く言ってくださいよー」

先輩「本当なら来週からの作業で十分間に合うんだけど」

先輩「文字打ちでもしてれば、黙るんでしょ?」

男「そりゃあもうー」


6 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 11:59:34 ID:KFgDtUpg
先輩「んじゃ、はいこれ」
ドサッ

男「なんすか、この資料」

男「分厚いー」

先輩「そうでしょうよ。何せ資料だけなら200ページはあるからね」

男「字が汚いー」

先輩「それは仕方ない。書いた人に文句言ってよ、自分で」


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:00:10 ID:KFgDtUpg
男「そんな事、平社員の俺が言えるわけないじゃないっすかー」

先輩「いや、あんた普段から結構言ってるでしょ」

男「いやいやーそんな事ないですよー」

先輩「て言うか、さっさとやれ!うるさいから!」

男「そんな怒ると、シワ増えますよー」

先輩「…」

男「それじゃ、作業しますかねー」


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:00:55 ID:KFgDtUpg


1時間後

男「ふー」

先輩「ん?一息入れるの?コンビニ行くならお使い頼んでもいい?」

男「一息っていうか、文字打ち終わったー」

先輩「マジで!?早くない?」

男「本気出したー」


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:01:30 ID:KFgDtUpg
先輩「チェックは?」

男「2回した。あとは先輩がチェックしてくれればー」

先輩「それは来週頑張ります…」

男「テキストのままでいいの?」

先輩「それじゃ、流し込みまでお願いしようかな」

男「手書きでざっくりひな形書いてくれれば、あとはこっちでそれっぽく作るよー」

先輩「あ、そ?んじゃ、前回の企画書を元にして、進めてくれる?」


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:02:23 ID:KFgDtUpg
男「前回データを共有に入れてくださーい」

先輩「はいはい…っと」

男「…相変わらず、ファイル名もフォルダ名もテキトーですなー」

先輩「自分がわかれば良いのよ、そんなの」

男「作業引き継ぐ、こっちが苦労するんですけどー」

先輩「そんな苦労はオペレーター様がしてください」

男「作業する前に、少しだけ名前を変えるのが、そんなに手間な事なんすかー?」

先輩「あぁ、またうるさくなった!」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:03:14 ID:KFgDtUpg
先輩「あっ!」

男「…もしかして?」

先輩「イラレがクラッシュした…」

男「保存は?」

先輩「30分前…」

男「山場だった?」

先輩「かなり…」

先輩「しくじったー!あーもうっ!」

男「落ち着いて下さいよ、先輩ー」


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:04:26 ID:KFgDtUpg
先輩「時間ロスだわ…」

男「その分、こっちでフォローしますからー」

男「取り敢えずリカバー頑張って下さい」

先輩「はぁ…がっくり来る…」

先輩「この突然クラッシュって何とかなんないのかしら」

男「まぁ、昔からマックにはつきものらしいからねー」

先輩「それはウィンドウズでも変わんないでしょ」

男「そりゃそうだけどさー」


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:04:55 ID:KFgDtUpg
男「マック本体への愛情が足りないと、クラッシュするらしいよ?」

先輩「残念ながら、私の愛は一人分しか無いんでね」

男「そうっすかー」

先輩「あー…あとお腹空いた…」

男「じゃあ、俺とりあえずコンビニ行ってきますよー」

男「何買ってくればいい?」

先輩「…おにぎり。具は何でもいい」

先輩「あと、今おまけが付いてる飲み物、何か」


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:06:02 ID:KFgDtUpg
男「えー?何そのアバウトな指示」

先輩「おまけ付いてるなら何でもいいよ」

男「おまけ…どうせいらないのにー」

先輩「何か得した気分になりたいのよ」

男「なかったら?」

先輩「任せる」

男「任されたー」


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:06:34 ID:KFgDtUpg


先輩「…」

男「…おーい、起きろー」

先輩「ん!寝てない!」

男「じゃあ、この鏡をみてみるといい」

先輩「…」

男「頭に飛行機がささってますよー」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:08:13 ID:KFgDtUpg
先輩「ちょっと、何してくれてるのよ!」

男「暇だったんで、コーヒーのおまけの飛行機のフィギュアさしてみたー」

先輩「一瞬だけ、意識が飛んだだけだから!」

男「俺がコンビニから戻って既に1時間が経過しているー」

先輩「さっさと起こしなさいよ!馬鹿!」

男「ひでーなー、せっかく起こしたのに」

男「あと、企画書、出来たんで、出力しておきましたー」

先輩「マジで?」

男「またまた本気出したー」

先輩「…チェックは来週頑張ります」


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:08:45 ID:KFgDtUpg
男「あのー、先輩ー」

先輩「何よ」

男「そっちの作業さぁ」

男「作業時間的に見ても、そろそろこっちに渡してくれないと」

男「明日の朝に間に合わないんだけどー」

先輩「もうちょっとだから!」

男「んじゃ、これ食べて、これ飲んで、元気だしてー、頑張ってー」

先輩「ありがと」
モグモグ
ゴクゴク


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:09:31 ID:KFgDtUpg
先輩「…おにぎりとコーヒーって、合わないわね」

男「おまけ付いてるの、コーヒーしかなかったー」

先輩「よしっ!頑張ろうっ!」

男「今、ちらっと見ちゃったんだけどさー」

男「画像処理が必要なデータあるんじゃない?」

先輩「ん!何点か、ある!」

男「それ、先にくださいなー」


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:10:08 ID:KFgDtUpg
先輩「じゃちょっと指示書く」

男「もっと作業効率を考えて下さいよ先輩ー」

先輩「…私の事、先輩って言うの、やめてもらえる?」

男「じゃ、何て呼べばいいの?」

先輩「名前呼び捨てで良いじゃん、今までずっとそうだったじゃんか」

男「そんなー。社長の事呼び捨てにする平社員がどこに居るんすかー」

先輩「ここに居るじゃない」

男「そんな失礼な事言えませんー」


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:10:46 ID:KFgDtUpg
男「じゃ、これからは社長って呼ぶかー」

社長「それは一番最初に却下したでしょ!」

社長「次、社長とか言ったら、蹴っ飛ばすからね!」

男「じゃ、やっぱり先輩で」

先輩「同い年なのに…チッ」

男「舌打ち良くない」


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:11:11 ID:KFgDtUpg
先輩「ほら、指示書けた」

男「了解ー」

先輩「画像合成が12点ある」

先輩「建物切り抜きで、背景青空にしておいて」

先輩「こっちの人物は指示してある分だけ、切り抜きね」

男「わかりました先輩ー」

先輩「…」


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:11:43 ID:KFgDtUpg


男「ふいーっと」

先輩「ん?」

男「久々に集中して切り抜きしたー」

先輩「まさかもう全部終わったとか?」

男「終わったー」

男「背景合成の奴は、色味調整そっちでお願いー」

男「psdデータの奴で、ラベル赤くしてあるのが、そうだからー」

先輩「あとでやります…」


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:12:13 ID:KFgDtUpg
男「他に作業あるー?」

先輩「それじゃあ…ちょと別件なんだけどさ」

男「んー」

先輩「これ、客が書いたサムネなんだけど」

先輩「これ、ちょっとざっくり作ってみてくれない?」

男「サムネって…ぷっ」

男「このボールペンでぐしゃぐしゃに書かれた書類を俺に託すのー?」


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:13:41 ID:KFgDtUpg
先輩「出来る?出来ない?」

男「あー」

先輩「やるの?やらないの?どっち?」

男「まぁ、やるだけやってみるー」

先輩「ちょっとだけ任せたっ」

男「任されたー」


25 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:14:17 ID:KFgDtUpg


男「なぁなぁー」

先輩「…何?」

男「一応出力してみたけど、こんな感じ?」

先輩「…」

男「どうすか?」

先輩「ちょっと直しの指示するから」

男「お願いしますー」


26 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:14:46 ID:KFgDtUpg
先輩「やっぱりあんたはデザインのセンスないね」

男「そりゃそうだー。有ったらデザイナーになってるだろー」

先輩「何でも罫線で囲むの止めなよ」

先輩「あと、ホワイトスペースちゃんと取って」

男「そこらへんが出来ないから、dtpオペレータやってるんですけどー」

先輩「…まぁ、スピードだけは褒めてあげる」

男「やったー!社長に褒められたー!」


27 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:15:15 ID:KFgDtUpg
男「給料上がるかな?」

先輩「それはない」

男「ですよねー」

先輩「はい、こんな感じで直して」

男「了解ー」

先輩「あんたがデザイン出来たら、私がもっと楽出来るんだけどね」

男「そんな無茶なー」


28 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:15:46 ID:KFgDtUpg
先輩「でも、あの落書きから、そこまで情報読み取れるならさ」

先輩「デザインも出来そうなもんだけどね」

男「お、俺には…無理なんだ…無理、なんだよ…」

先輩「何をためながらしゃべってんの、キモイ」

男「キモイとか言うなー」

先輩「ほら、早く作業して!」

男「了解ー」


29 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:16:31 ID:KFgDtUpg


男「はい、これでどうすか?」

先輩「ありがと、助かった」

男「そっちそろそろ終わる?」

先輩「うん、あと5分」

男「おっけー。待ってるー」


30 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:17:01 ID:KFgDtUpg
先輩「…ごめんね、私、結構無茶言ってるよね」

男「何をいまさらー」

先輩「頑張るから!」

男「先輩が頑張ってるの、わかってるからー」

男「この会社、先輩のお父さんから引き継いだ時、ちゃんと決めただろー?」

男「それをフォローする為に俺達が居るんだぜー?」

先輩「ありがとね、男」


31 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:17:36 ID:KFgDtUpg



男「ふぃー、終わったー」

男「なんとか間に合ったかなー」

男「部長、そろそろ来るかな」

?「おはよう!」

男「おはようございます、部長」


32 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:18:04 ID:KFgDtUpg
部長「なんだ、部長って」

男「だって、一応肩書きは部長じゃないすかー」

部長「まぁ、部長だけどさ」

部長「形だけなんだから、部長って呼ぶなよ」

部長「急に呼ばれたら、照れるだろ」

男「もう、社長といい、部長といい」

男「ウチの取締役は皆わがままだなー」


33 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:18:41 ID:KFgDtUpg
部長「おい!平社員!クビにすっぞ!」

男「おー。やれるもんならやってみろー」

部長「この野郎…部長の俺をなめてるな?」

部長「部長権限で命令する事も出来るんだぜ?」

男「何を?」

部長「無期限で休みとか?」

男「給料出るなら、一生休みでもいいー」


34 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:19:20 ID:KFgDtUpg
部長「怠けんな、ボケ!」

男「部長が言ったんじゃないすかー」

部長「元はと言えば、お前が部長とか言い出すからだろ」

男「まぁまぁ、怒るなよ、友」

部長改め友「元々、俺は部長とか嫌だったんだ!」

友「別に平社員でいいだろ、営業なんて」

男「まぁ、役員決める時にじゃんけんで負けたお前らが悪いー」

友「それはまぁ、そうだけどよ」


35 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:19:55 ID:KFgDtUpg
男「ほら、プレゼン用の資料、全部仕上がってるよー」

友「二人とも徹夜…だよな?」

友「3日連続か?」

男「まぁ、俺は3日完徹だなー」

男「社長は3時くらいから、爆睡中ー」

友「自宅、2階なんだから、上で眠ればいいのに」


36 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:20:28 ID:KFgDtUpg
男「俺もそう思ったんだけどさー」

男「それ言い出すと、喧嘩になるからさー」

男「とりあえず、毛布だけかけておいたー」

友「仲良し夫婦だな、お前ら」

男「えっへっへ」

友「頑張ってたもんな、二人とも」

男「うん、このコンペ取れたら、凄いよなー」


37 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:21:14 ID:KFgDtUpg
友「まぁ、プレゼンは任せておけよ」

友「絶対取ってくるからよ!」

男「きゃー!営業部長、カッコイー」

男「やっぱり仕事が出来る男は背中が違うなー」

友「だろ?」

男「だから給料上げてくださーい」

友「まぁ、この仕事が取れれば、嫌でも上がるさ」

男「税金も上がるけどなー」


38 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:21:38 ID:KFgDtUpg
友「おっと、それじゃそろそろ行ってくる」

男「絶対…絶対に事故るなよー?」

友「フラグ立てんな、アホ!」

男「いってらー」

男「あ、そうだ。あと一つ言いたい事があるー」

友「何だ?」


39 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:22:09 ID:KFgDtUpg
男「ボールペン習字でも習って下さいお願いしますー」

友「…そんなに下手かな?俺の字って」

男「下手でも読めれば良いけどさー」

男「友の字は暗号レベルだー」

友「考えておきます…」

男「じゃあ、今度こそいってらっしゃいー」

友「おう!行ってくるぜ!」


40 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:22:42 ID:KFgDtUpg


男「んー。デザインの勉強、してみるかなー」

男「でもなー」

男「俺は社長のデザインが好きで…」

男「それをサポートする為に、オペレーターとしての腕を磨いてきたんだしなー」

男「今さら路線変更は無いよなー」

男「ふわぁ…」

男「俺もちょっと寝ようかな…」

男「ちょっとだけ…」

男「そろそろ課長も出勤するだろうし…」

男「…ホント、ちょっとだけ…」

男「…」


41 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:23:15 ID:KFgDtUpg


先輩「おーい、ぼんくらー?」

男「…」

先輩「…寝た?かな?」

男「…」

先輩「あぁ、もう朝かぁ…」

先輩「また寝てしまった…」


42 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:23:53 ID:KFgDtUpg
先輩「こいつだって同じ時間起きてるはずなのになー」

先輩「くっそう…悔しいのぅ」

先輩「…」

先輩「…ふふっ。社長か」

先輩「久しぶりに言われたなー」

先輩「まぁ、4人しかいない会社で社長もなにもあったもんじゃないけどねぇ」

先輩「こいつが起きる前に、朝ご飯でも作ってみようかな」


43 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:24:19 ID:KFgDtUpg
先輩「フフフ。びっくりするだろうな」

先輩「あー、でもダルいか…」

先輩「コンビニ飯でいいか…」

先輩「でも、出し抜かれてばっかじゃ悔しいしなー」

先輩「それに、妻としてどうなのよって話しよね」

先輩「よし!ご飯作ってこよう!」

男「…」


44 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:25:00 ID:KFgDtUpg
先輩「あー、カレー食べたいけど、時間無いなぁ」

先輩「取り敢えず、定番の焼き魚と味噌汁でも作ってみっか!」
パタパタパタ

男「…」

?「おっはよー」

男「おはようございます、課長」

課長「は?課長?」


45 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:25:31 ID:KFgDtUpg

男「課長は課長じゃないですかー」

課長「あぁ、まぁそうね。私一応課長だったわね」

男「今日も一日宜しくお願いいたします」

課長「何?今日ちょっとテンションおかしい?」

男「さすがに3日も寝てないと、テンションもおかしくなるー」

課長「まぁ、それは仕方ないわよね」

課長「仕上がったの?って聞くのは野暮よね」


46 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:25:54 ID:KFgDtUpg
課長「あんた達の事だから、きっちりしっかり仕上げたんでしょ?」

男「今回のは自信あるー」

男「取れると思うー」

課長「よく頑張ったと思うよ、本当に」

男「取れなきゃ、売上にならないからねー」

課長「だから売上になる仕事も並行してやらなきゃね」

男「利益率の良いお仕事だけ、やって暮らしたいー」


47 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:26:24 ID:KFgDtUpg
課長「ウチって一応、広告代理店なんだから」

課長「攻めて行かなきゃでしょ!」

男「夢を追うのは悪くないー」

男「でも、人間なんだから、食って行かないといけないからなー」

男「金になる仕事もしないとー」

課長「解ってるって。で?社長は?」

男「社長って呼んだら、蹴っ飛ばすって言ってたぜー?」


48 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:27:08 ID:KFgDtUpg
課長「あんたが急に課長とか言い出すからでしょ」

男「それは秋の夜が見せたひと時のマボロシー」

課長「もう朝だけどね。で?社長は?」

男「毒物を製造しに、自宅に帰ったー」

課長「あんたねぇ…自分の奥さんが作った食事を毒物って言わない!」

男「クリエイティブな人だからさー」

男「料理もチャレンジ精神溢れる物になる事が多いー」

課長「まぁ、知ってるけどさぁ」


49 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:27:55 ID:KFgDtUpg
男「課長、手伝ってあげてくれると助かる。俺が」

課長「はいはい。じゃちょっと行ってくるから」

課長「寝ないで待ってなさいよ」
パタパタパタ

男「よろしくお願いしますー」

男「…」

男「さて、と」

男「そろそろ、利益のある方の仕事でもしますかねー」


50 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:28:28 ID:KFgDtUpg
男「パチンコ屋のチラシ3本」

男「半5段の新聞広告2本」

男「全3段の協賛広告1本」

男「…そこそこ多いー」

男「でもま、行けるっしょー」

男「やるかー!」

?「おはよう、男君」


51 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:28:56 ID:KFgDtUpg
男「ありゃ?会長じゃないすかー」

会長「会長?あぁ、そういえば僕、会長だったね」

男「こんな朝早くにどうしたんですか?」

会長「いやあ。年寄りは朝が早くてね」

会長「散歩してたんだけど、事務所の電気が付いてるのが見えてね」

会長「ちょっと顔出してみたんだけど…娘は?」

男「二階で朝ごはん作ってますー」

会長「…それじゃ、僕はそろそろ帰ろうかな」


52 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:29:26 ID:KFgDtUpg
男「そんな事言わずに、一緒に朝ごはん食べましょうよ、お義父さんー」

会長「…」

男「そういえば、今回の件、どうもありがとうございましたー」

会長「何の事かな?」

男「会長が先方に直接話してくれたお陰で」

男「俺たち、今回のコンペに参加出来たんですよね?」


53 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:29:56 ID:KFgDtUpg
男「そうじゃなければ、俺たちみたいな弱小会社」

男「参加自体無理だったでしょう」

会長「僕は別に特別な事はしてないよ」

会長「それに、使える物は何でも使った方が良いと思わないかい?」

会長「コネだろうが、金だろうが、ね?」

男「まぁそうですねー」

会長「扉は開いてるんだから、後は君たち次第だよ」


54 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:30:55 ID:KFgDtUpg
会長「どう?取れそう?」

男「結構自信ありますよー」

会長「それは楽しみだ」

男「良い報告、期待してて下さいー」

会長「…君には本当に感謝してるんだよ」

男「はい?」

会長「この会社は元々は僕と女房の二人でやってた個人事務所だった」

男「はい」


55 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:32:34 ID:KFgDtUpg
会長「女房が病気であんな事になって、事務所を閉めようとした時」

会長「娘は大手広告代理店の内定を蹴って」

会長「この会社を引き継いでくれた」

会長「僕はそれが嬉しくてねぇ」

会長「そして、それを傍で支えてくれる君達に」

会長「僕はとても感謝してるんだよ」

男「…俺は彼女を守るって、昔から決めてましたから」


56 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:32:58 ID:KFgDtUpg
会長「本当はね」

男「はい」

会長「娘には、さっさと結婚して、家庭に入って欲しかったんだ」

会長「グラフィックデザイナーなんて、弱肉強食の世界に入って欲しくなかった」

会長「年を取ってから出来た娘だからね」

会長「苦労させたくなかったんだ」

男「はぁ…その願い、半分だけ叶いましたね」

会長「そうだね、半分だね」


57 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:33:26 ID:KFgDtUpg
会長「君が『娘さんと結婚させて下さい』って言ってくれた時は…」

男「泣いてましたもんね。号泣」

会長「凄く嬉しかったんだよ」

会長「次は孫の顔を見たいんだけどね」

男「それは娘さんに言って下さいー」

男「まだしばらくは無理だと思いますけどねー」

会長「あはは、そうだろうね」


58 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:34:09 ID:KFgDtUpg
男「…そろそろかなー」

会長「え?」

バタバタバタ

先輩「おらー!起きろー…って、起きてるじゃん!」

先輩「あ、お父さん、おはよう。どうしたの?」

会長「おはよう、朝から元気だな」

会長「散歩の途中に寄っただけだよ」

会長「も、もう帰るから」


59 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:34:56 ID:KFgDtUpg
先輩「丁度良かった、今から朝ごはんなのよ」

先輩「久しぶりに一緒に食べようよ」

会長「う…」

男「俺の方を見られても、困りますよ、会長ー」

先輩「え?あんたまだそれやってんの?」

先輩「その役職名で呼ぶの、やめなよ」

男「え?そんなに嫌?」


60 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:35:33 ID:KFgDtUpg
先輩「嫌だわね、はっきり言って」

会長「なるほど、そんなブームが来てたんだね」

会長「僕は会長って呼ばれるの、嫌じゃないけど」

先輩「私が嫌なの!」

先輩「社長命令よ!そのブーム、今すぐ終了させなさい!」

男「はぁ、社長命令なら仕方ないですねー」

男「それじゃ、本日の業務の前にー」

男「朝ごはん食べに行きますか、お義父さん」


61 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/09/30(日) 12:35:55 ID:KFgDtUpg
会長「う、うん。行こうか」

男「そんな、泣きそうな顔しないで下さいよ」

男「今日は大丈夫ですよ。お手伝いも居るし」

男「ちゃんとしたお味噌汁と、焼き魚が出てくると思いますよ」

先輩「ちょっと!今のどう言う意味よ?」

男「何でもないよ、幼馴染。さ、みんなで朝ごはん食べよう」

おわり

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