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1 : 2010/06/11(金) 06:05:24.99 -
朝の男子寮。日向は目を覚ました。
日向「………」
時刻はまだ6時30分だ。
いつもよりずいぶん早く起きちまったな。
早寝したからか?
1時間も早く目が覚めるなんて……とりあえず着替えて…久しぶりに早めにいくか。
ルームメイトの大山はまだ眠っている。
彼を起こさないよう音をたてずに着替え、出来る限り静かに歯を磨き顔を洗い髪を整える。
ソース: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1276203924/
-
2 : 2010/06/11(金) 06:07:11.34 -
日向「神も仏も天使もなし…っと。おはよーっす。」
校長室の前にて日向は合言葉を言い扉をあけた。
ゆり「おはよう、日向君。」
日向「ああ、おはよう。まだゆりっぺしか来てないのか?皆は?」
ゆり「まだ早いからね、私しかいないわよ。後少ししたら高松君あたりから来はじめるんじゃない?」
日向「ふーん…。」
毎日だらだらしてる戦線メンバー実行班だがミーティングがある日は朝9時頃に校長室に集合する。
日向と音無はいつもは10分前に来ている。が、今日の自分はずいぶんと早い。 -
3 : 2010/06/11(金) 06:07:49.46 -
ゆり「それにしても、日向君がこんな時間にくるなんて久しぶりね。」
それまで窓の外をぼ~っと眺めていたゆりが皮肉を込めた顔をこちらにむけた。
ゆり「今日は雪でも降るのかしら。…そういえばこの世界で雪が降った事ってまだないわね。」
日向「雪ね…。まあ降らないだろうな。今日はたまたま早く起きただけだ。深い意味なんてねーよ。」
ゆり「ふーん…。」
興味をなくしたのかゆりっぺはまた窓から外の景色を眺め始めた。
-
4 : 2010/06/11(金) 06:09:30.43 -
暇なのでゆりっぺと話そう。
と思ったが今話しかけると「黙ってて」と言われそうなのでやめる。
ゆりっぺが窓の外をぼ~っと見てる時は話しかけない方がいい、とこれまでの経験が語っている。
日向「…」
しばらくの間校長室は静まりかえっていた。
-
5 : 2010/06/11(金) 06:11:20.79 -
ゆり「ねえ。」
日向「ん?なんだよ。」
ゆり「あたしの気のせいかもしれないけど…最近音無君の様子、変じゃない?」
日向「音無が?」
ゆり「ええ、なんだかこう…そわそわしてるような…。音無君について何か変わった所とかない?」
日向「うーん、特に…ないと思うけどな。」
ゆり「そっか。ならいいわ。」
-
6 : 2010/06/11(金) 06:15:35.49 -
………
ゆり「それじゃ、今日はこんなところね。」
ミーティングが終わり各自解散となった。
ちょうど腹もへってきたし音無でも誘って食堂にでもいくか。
日向「音無ぃー。飯食いに行こうぜ!」
音無「悪い、日向、今日はちょっと野暮用があるんだ。」
日向「ええー…!?マジかよぅ…。」
音無「マジなんだ。悪いな。」
-
7 : 2010/06/11(金) 06:19:14.54 -
日向「…女でも出来たか?」
音無「…ッ!?」
お?…音無が焦ってる。これはもしかしてもしかすると…。
音無「そ…そういうのじゃない。…それじゃ俺、もう行くからな。」
日向「…」
最近よく野暮用があると言われて飯のお供を断られてる気がする。
戦線メンバーA(モブ)が音無が天使と一緒にいる所を見たとか言ってたな。
ここ最近は天使と飯食ってるとかか?
…はは…まさかね。
-
10 : 2010/06/11(金) 06:22:19.30 -
天使は分身事件以降、生徒会長に戻った。
あの日以来、以前のように戦線メンバーと対立している。
…とはいえ前までの天使と今の天使はまたちょっと違うんだよな…。もしかして音無のやつが…
いや、考えても意味がないな。とにかく昼飯を食べよう。
日向「にしても…」
日向「食堂で一人飯は流石に嫌だな。」
-
11 : 2010/06/11(金) 06:28:11.35 -
NPCの目線など気にしなければいい…と思ったがやはり一人飯はハードルが高い。
彼らにも自我はあるし一人で昼食を食べていれば
NPC「あいつ一人飯wwww悔しいのうwwww」
などと思うかもしれない。
自意識過剰だと思うがそこは日本人の性、しょうがないと考える。
大山は藤巻ともう食ってるだろうし…松下五段とTKはミーティングの後にどこかいっちまったし…
…ユイでも誘ってみるか。
ユイとは球技大会以降よく行動をともにしている。(勝手についてくるともいえる)
女子の中ではユイが一番話しやすい相手となっていた。
-
13 : 2010/06/11(金) 06:43:41.21 -
天上学園のとある空き教室。ユイはよくそこで弾き語りの練習をしている。
ユイ「いつでも一緒にいるって♪いってくれたよね確か♪」
日向「ユイ。」
ユイ「覚えていたのはあたしだけだったのかな?」
日向「おーい、ユイ。」
ユイ「君と見た映画忘れて♪」
日向「ユイ!!!」
ユイ「…だぁーッ!!うっさいわ!!人が歌ってんの見えてねえんですかぁ!?」
日向「昼飯食いにいこうぜ。」
ユイ「…練習の邪魔しにきていきなりそれですかぁ?」
日向「お前ならきっとぼっちだと思ってたんだ。」
-
17 : 2010/06/11(金) 07:14:11.92 -
ユイ「あたしぼっちじゃないもん!!……まあ…お腹空いてきてたしいいですけどッ!!」
日向「そんじゃいくか。」
ユイはなんだかんだで付き合いがいいから助かるな。
食堂につき食券機の前に並ぶ。
日向(今日は何にするか…。…たまには激辛麻婆豆腐でもいくか。)
麻婆豆腐の券を買い食堂のおばさんに渡す。
おばさんは少し驚いていたがすぐに麻婆豆腐をつくり持ってきた。
食事を受け取り二人して空いてる席にすわる。
ユイ「せ…せんぱい…。」
日向「ん?なんだよ?」
ユイ「それって…誰も食べない事で有名な麻婆豆腐じゃ…。」
日向「ああ。めっちゃ辛いけどさ、音無と前に挑戦してみたら意外と美味かったんだよ。食うか?」
-
18 : 2010/06/11(金) 07:20:47.34 -
ユイ「ええ!?嫌ですよ!罰ゲームでもない限り絶対食べたくないです!」
日向「いいから食えって!ほれほれ。」
スプーンで豆腐をすくい無理やりユイの口に突っ込んだ。
ユイ「先輩!熱いです辛いです無理ですぅぅぅぅぅ!!!」
日向「ははは。美味すぎて叫んじまったか。もっと食うか?」
ユイ「…」プルプル
ユイ「食うわけねえだろうがゴラあああああああああ!!!」
叫びながらユイは麻婆豆腐がのった皿を手にのせた。
日向「や、やめろユイ!!」
ユイ「やめると思ってんのかゴッルぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
こ、こいつ…この麻婆豆腐でパイ投げするつもりか!?
-
20 : 2010/06/11(金) 07:27:57.70 -
日向「ちょ、ちょっと待てぇ!!激辛麻婆豆腐のパイ投げなんて食らったら死ぬっ!!」
ユイ「もう死んでるだろおがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ユイはこちらの顔面めがけて麻婆豆腐を持った手でサイコクラッシャ—を繰り出した。
ブシャッ!!
響くは麻婆豆腐がつぶれる音、そして皿自体が自分の顔面に直撃した音だ。
日向「ゴブッッッぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
日向「か…辛ええええええええええええええ!!!」
日向(あ…あいつ…手加減無しでぶちかましやがって…。)
ユイ「おおっとぉ!どうしたんですかぁ先輩!!脳みそ蕩けてお亡くなりになりましたかぁ!?」
日向(こ…こいつ…。)
日向「んな訳あるかぁぁぁ!!」
-
22 : 2010/06/11(金) 07:33:00.32 -
ユイ「な、何するんですかぁ!?」
日向「こうするんだよおおおおおおお!」ギリギリギリ
日向はユイの体に腕と足を絡ませ関節技を決めた。
ユイ「い、痛い痛い痛い痛い!!先輩!せんぱぁい!!ギブ!ギブぅぅぅ!」
日向「ぬうおりゃああああああ!!」ギリギリギリ
ユイ「せ、先輩!!先輩!!このままじゃ不味いです!ユイにゃんマジ死にますって!」
日向「知った事かぁぁぁぁぁぁ!!なぁにがユイにゃんだこのやろおぉぉぉぉぉぉ!」ギリギリギリ
ユイ「せ、先輩!い、逝っちゃいますって!ユイにゃんマジ逝きます!逝きますぅぅぅ!!いぐ!!いぐぅぅぅぅぅぅぅ!!」
日向「…っな」
いくという言葉につい反応しユイの体を解放した。
-
25 : 2010/06/11(金) 07:39:19.23 -
日向(こいつ…人目がある場で何て事を言うんだよ。)
ユイ「…あ、あれ?先輩…?どうしました?」
ユイは涙目になりながらも不思議そうに日向の顔をのぞきこんできた。
その仕草に少しドキッとしてしまう
涙目の女の子っていいな。
…
俺は何を考えてるんだ。
日向「…」
ユイ「先輩?」
日向「お前な…女の子が昼間から逝く逝く言ってんじゃねーよ。はしたないぞ…。」
ユイ「…」
ユイ「……はっはーん…まさか日向先輩…ユイにゃんのバディに触れて欲情したんじゃ…」
ユイはセクシーポーズをとりこちらを挑発してきた
日向「」プチッ
日向「んな訳ッ!あるっかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
-
26 : 2010/06/11(金) 07:45:46.71 -
発情した訳ではないがユイを少しでも可愛いと思った所に今の挑発である。ムキになり先ほどよりもきつく技をかけた
ユイ「んぎゃぁぁぁぁぁ!!せ、先輩!!マジギブです!というかさっきよりきつ……た…タップタップ!!」
日向「もう生意気はけないようにこらしめてやんよぉぉ!!」
ユイ「い、逝きますよ!?ユイにゃんマジ逝きますよ!?」
日向「勝手にいってろおおおお!!」ギリギリギリ
ユイ「……あぅぅ……」ドサッ
ユイがうめき声をあげ気を失った。
日向「…あ。」
日向「や、やべっ。ユイ!しっかりしてくれ!」
-
28 : 2010/06/11(金) 07:52:35.14 -
日向(やりすぎた…。なんでこいつ相手だとむきになっちまうかな…俺って。)
保健室にてため息をつく。
ユイが倒れた後、彼女をおんぶし保健室へ移動した。
食堂に気を失ったユイを放置するのは流石に良心が痛むからだ。
ユイは今、ベッドの上でスウスウと眠っている。
日向「…ごめんな。少し調子にのりすぎたよ。」
起きてる時に謝罪を述べてもケンカになるだろう。
眠ってる間に勝手に謝らせてもらう事にした。
ユイ「zzz」
-
29 : 2010/06/11(金) 07:57:47.17 -
日向(気持ち良さそうに寝てるな。)
日向(…。)
日向(こいつ…普段はぎゃあぎゃあウルサイから気づかなかったけど…。)
日向(結構可愛い顔してんだな。)
ぷにぷにと指でほっぺをつつく。
日向(ほっぺ…柔らかいな。)
ぷにぷに
ぷにぷに
ユイ「…うぅん。」
日向「!?」
急に声を出すので慌ててユイから指を離した
-
31 : 2010/06/11(金) 08:07:07.28 -
ユイ「う~…」
つついてた事には気づいてないようだ。
少し安心する日向「やっと起きたな。」
ユイ「あれ…?先輩?」
まだ完全に意識が戻っていないのかぼんやりとしている。
ユイ「ぅう…ん…まだ夢の続きなのかな…。」
日向「夢じゃないぞぉー。ほれッ!シャキッとしろよ。」
ユイのほっぺを叩く。
ユイ「あぅ。あぅ。」
日向「………」ぺちぺち
ユイ「あぅ~…。」
日向「起きたか~?」ぺちぺち
ユイ「………そうだ!あたし先輩に絞め付けられて!!」
ガバッと起き上がりユイはこちらにむけてファイティングポーズをとった。
日向「やっと起きたか。」
-
35 : 2010/06/11(金) 08:16:39.38 -
ユイ「…先輩…もっとレディには優しくした方がいいですよ?こんな乱暴してたらドメスティックなバイオレンスで恋人出来ても逃げられちゃいます。」
日向「余計なお世話だ!」
ユイ「…そもそも先輩は何であたしの事虐めるんですか?あたし以外には暴力振るってないですよね?」
日向「………」
いつもお前が絡んでくるからだろ…。まあ…今日は俺からだったけど。
ユイ「ぶー、何かいって下さいよぉ…何であたしだけプロレス食らわなきゃいけないんですかぁ!?」
ユイは口をとがらせ必死に抗議してくる。
なんでっつってもな…
何かこいつ見てるとこう…虐めたくなるんだよな。
何故か虐めたい。
ひたすらに虐めたい
日向「Sだからだな。」
結論にたどり着いた
-
38 : 2010/06/11(金) 08:26:31.11 -
ユイ「うわぁ…アホなだけじゃなく変態だったんですね。」
ユイはこちらに軽蔑のまなざしを送った。
その視線を無視し口を開く。
日向「ちなみにお前Mな。よし、目も覚めたみたいだしプロレスやろうぜ。次は縦四方固めだ。」
ユイ「勝手にMにしないで下さいよぅ!っていうかあたしホントに死にますよ!?っていうかそれプロレスじゃなくて柔道の技じゃ…」
ユイは涙目になりながらも必死に訴えてきた。
その顔をもっと見たくてさらにからかうことにする。
日向「冗談だよ冗談。」
ユイ「そういいながら近づいてくるのは何故ですかぁ!?」
日向「なぁに、死にゃしないさ。よし、そんじゃ、縦四方固め、行くぜぇ!?」
-
39 : 2010/06/11(金) 08:35:36.71 -
ユイ「ちょ、ちょっと!先輩!?」
ユイに素早く近づき押し倒す
ユイ「きゃ!」
腕と首をこちらの腕で挟み込み覆いかぶさった。
ユイ「せ、せんぱい…///」
日向「いっくぜえ!!!」
ユイ「せ、先輩!…これ!これは流石に恥ずかしいですよ///」
不意にユイが叫んだ。
日向「へ?」
日向「あ、ああ、悪い…。」
突然女性らしい声を出すので調子が狂ってしまった。
慌ててユイの体から離れる。
-
43 : 2010/06/11(金) 08:42:56.26 -
ユイ「…あ///」
体を離すとユイは少し残念そうな顔で日向の顔を見つめた。
な、なんなんだよ…。訳わからん…。
ってか…何でこいつ顔赤いんだ。
日向「…わ、悪い。」
ユイ「あ、えと…こっちも挑発してごめんなさい…。」
日向「お、おう…」
ユイ「……///」
ユイは顔を真っ赤にしながら下を向いている。
こんな顔もするのかと驚いた。
…いつもと態度違いすぎないか?
なんでだ?
なんか凄く
可愛いじゃんか
-
44 : 2010/06/11(金) 08:54:09.88 -
ユイ「……うぅ~ッ///」
日向(あ、あれ…俺、なんで胸が熱いんだ!?)
保健室が静まりかえる。
保健室…ベッド…二人きり…
ドクンドクンと鼓動の音がうるさくなる
頭が少しずつ煩悩に侵されていく。
保健室…ベッド…二人きり…
イヤイヤイヤ!!何考えてんだ俺!!ありえない!!
ユイ「せ、先輩?だ、大丈夫ですか?何か顔色がいつもと…」
ユイは一向に喋らない自分を心配したのか顔を近付けのぞきこんできた。
日向「ユ、ユイ…///」ドクンドクン
ユイ「あ…///」
二人の顔が近付く。少し動けばキスも出来る程に。
まずい…この空気は…
-
45 : 2010/06/11(金) 08:55:14.13 -
ユイ「…///」
ユイが目を閉じた
これは…そういう事か?
していいって事か?
…勢いに身をゆだねるのも
悪くない……か…?
日向「…っ。」
ユイ「せ、せんぱ…」
-
46 : 2010/06/11(金) 08:57:45.84 -
ガラっ!!
突然保健室の扉が開いた。
日向「!?!?!?!?!?!?!?」
ユイ「●×▼○?□!!▽×?□○○?」
ひさこ「やっと見つけた…。ユイ!練習の時間になっても部屋にこないってどういう事!?探したわよ!」
日向「!?!?!?!?!?!?!?」
ひさこ「ってあんたら…こんな所で何やってんのよ…。」
ユイ「ごごごご、ごめんなさい!!今行きまっすぅ!!超高速で練習しに行きまっすぅ!!ひさこさんごめんなさい!!」
ユイが慌てて保健室から出て行く。
ひさ子はユイを見送ると日向の方へ顔を向けた。
ひさ子「…もしかして…あたし邪魔しちゃった?」
日向「…え?い、いや…たぶんそんなことない…のか?」
ひさこ「?」
お、俺は…今何を…
-
50 : 2010/06/11(金) 09:05:06.97 -
ひさこ「あんたさぁ。」
ひさこ「キス、しようとしてたんじゃないの?」
日向「!?」
日向「ま、まっさかあ!!」
ひさ子「…ふーん。あ、……付き合ってはいるの?」
日向「おおお、俺があいつと!?はは、ひさ子もジョーク言うようになったなぁ!!」
ひさこ「…腰ぬけ。」
日向「う、うぐぅ…」
ひさ子「…そんじゃあたしもいくわ。」
興味がなくなったのかひさ子もユイを追って保健室を出て行った。
日向「はぁ…」
日向(なんか今日は朝から変な一日だ…もう部屋に戻って休も…。)
-
51 : 2010/06/11(金) 09:06:43.94 -
ユイ(さっきあたし…ドキドキしてた…。)
ユイ(これが好きって気持ちなのかな…。)
ユイ(お母さん…お母さんもお父さんにこういう気持ちを抱いてたの?)
ユイは考え事をしながら歩く。
目的地はいつもバンド練習をしている空き教室だ。
ユイ(皆を待たせちゃったし…いつもより気合を入れて頑張るぞぉぉぉぉ!!)
-
52 : 2010/06/11(金) 09:10:54.69 -
ユイ「皆、ごめんね…遅れちゃったよ…。」ガラっ
関根「もう、ユイ遅いよ!」
入江「あれ?ひさこさんと会わなかった?」
ユイ「あ、もうすぐ来ると思う。さきに来ちゃった。」
入江「それじゃ、早く準備してやろ~。」
ユイ「…うん。」
関根「…なんかユイ、いつもと様子がちがう…。」
ユイ「え!?いやいや、そんな事ないよ~。」
入江「もしかして…日向先輩と何かあったの?」
ユイ「な!?」
ユイ「…っな、な…。」
関根「やっぱりそうだ!ねえねえ、何があったの!?」
ユイ「…そ、それは…」
ひさこ「日向に迫られてたんだよ。」
ユイ「!?」
-
53 : 2010/06/11(金) 09:11:59.72 -
入江「あ、ひさこさん。お帰りなさい。」
関根「ちょ、ちょっと待って、ひさこさん!ホントですか!?ねえユイ、話聞かせてよ!!」
ユイ「ち、違うよ!!迫られてた訳じゃ…」
関根「ユイ~…詳しく教えろ~!」
ユイ「…う~…もうこの話は嫌です…早く練習しましょうよ!!」
関根「つまんないの~。」
-
54 : 2010/06/11(金) 09:15:06.67 -
大学行ってくる
15:00時に再開予定
-
66 : 2010/06/11(金) 14:45:43.33 -
日付は変わり翌日。
今日はミーティングがないので朝から自由時間である。
日向(今日は何すっかな…。)
音無を誘って釣りにでも行くか?
久しぶりに射撃の訓練もいいかもしれない
それとも松下五段に柔道の稽古をつけてもらうのもいいか?
日向(うむむ…)
部屋で悩み数分が経つ。
すると、ドンドンと扉を叩く音が響いた。
日向「誰だ?音無か?」
ユイ「先ッぱああい!!暇ですかあ?暇ですよね!?よっしゃぁ!!一緒に出かけましょう!!」
日向「 」
-
68 : 2010/06/11(金) 14:50:27.19 -
唐突な訪問に反応が遅れてしまう
日向(え?なんであいつが来てるんだ?意味がわからない…。)
当たり前だ
ここは男子寮であり女子は立ち入り禁止。
女子がここまで来る事はまずない
日向(あいつには関係ないのかもな…そんな事。)
ユイ「先輩ぃ~。いないんですかぁ!?」
日向「ちょっと待ってろ!今行くから!」
慌てて着替え外へでた。
ユイ「せん♪パイ♪」
日向「今日はどうしたんだ?用もないのに来た訳じゃないだろ?」
ユイ「はい。少し付き合ってもらいたい事がありまして…」
日向「断る。」
-
69 : 2010/06/11(金) 14:53:24.83 -
ユイ「えぇぇ!?わ、私、まだ何も言ってませんよ!?」
日向「どうせろくでもない事だろ…付き合ってられるか!」
ユイ「何でですかぁ!?せめて内容だけでも!!」
日向「…内容聞くだけならいいけどよ…」
ユイ「実は…あたしとデートしてほしいんです!」
日向「…。」
日向「断る」
ユイ「バッサリ断ってんじゃねぇぞゴルぅあぁぁぁぁぁぁ!!」
-
71 : 2010/06/11(金) 14:59:28.86 -
朝の男子寮に音が響く。ユイが日向にけりを入れた音だ。
日向「いってえなっ…骨折れたらどうすんだこのアホ!!」
ユイ「先輩♪いきますよね?いかないなら…」
日向「行かないならなんだよ…」
ユイ「先輩がッ!行くまでッ!蹴るのをッ!やめねえッ!」
日向「こんな凶暴な奴と誰がデートなんてするかッ!」
ユイ「な、なんだとぉ~!?」
日向「なんだとぉ~!?じゃねぇっ!」
-
75 : 2010/06/11(金) 15:15:16.49 -
日向「そもそも…何でデートなんてしたいんだ?」
ユイ「…えっと…ですね…。あ、あのっ…そのですね。そ、そうそう。あたし今、新曲を作ってるんですよ!」
日向「新曲~?それがどうデートに繋がるんだ?」
ユイ「え、ええとですね。新曲のテーマを恋にしようかなぁと思いまして…。恋といえばデートじゃないですか!」
日向「…デート=恋はおかしいと思うぞ。」
日向「というかよ。恋の歌なら初恋でも生前の恋人でも思いだして作ればいい話じゃん。」
ユイ「……あたし、お付き合いどころか初恋だって経験ないもん…。」
ユイは急に顔を下に向け呟いた。いつものイキイキとした表情に影が出来る。
しまったと思った。
あたり前だ。
この世界にいる人達は皆、生前に嫌な事があった者だ。
彼女もまた、なんらかの事情で恋人どころか初恋の経験も出来なかったのかもしれない。
もしかしたら、思い出したくもない事を思い出させてしまったのかもしれない。
-
77 : 2010/06/11(金) 15:22:55.04 -
日向「…悪い。」
気遣いが足りなかったと反省する。
ユイ「いやいや!!あたしこそ急にごめんなさい!!今のもう忘れて下さい!!」
日向「…あ、あぁ。」
日向(…。)
日向「…なあ、何で俺なんだ?」
ユイ「はい?どういう事ですか?」
日向「…いや、何で音無とか大山じゃなくて俺のとこに来たのかって。」
ユイ「先輩と行くのが一番楽しそうだからですよ?」
日向「…そうか。」
日向(もしかしてこいつ俺の事…いやいや!そんな都合のいい事は考えんな。きっと俺の自意識過剰だ。)
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78 : 2010/06/11(金) 15:24:31.47 -
ユイ「あの…ダメ…ですか?」
ジトッと上目づかいでこちらを見てくる。
日向(…)
日向(くそ…デートに誘われたら期待しちまうだろ…このバカ。)
日向「…まぁいいか、暇だし付き合ってやんよ。」
ユイ「ホントですかぁ!?やったぁ!!」
ばんざーいとユイがとび跳ねた
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79 : 2010/06/11(金) 15:32:10.22 -
日向「しっかしデートか。」
この世界には映画館もカラオケもない…ショッピングもできない…
日向「何をすればいいんだ。」
ユイ「えぇっと…一緒にご飯食べるとか…」
日向「そんなのいつもの事じゃねぇか。っていうか学食デートなんて俺は嫌だぞ…。」
ユイ「う~ん…」
日向「…学園の外にでも行くか。」
ユイ「ま、まさか山登りですか!?」
日向「いや、そこまで遠くにはいかねえ、近場の森でピクニックでもしようぜ。」
ユイ「…な、なんだかあたしの想像してたデートと全く違うんですけど…」
日向「俺だってそりゃあ、もっとムードある場所がいいけど… 学園の中よりはマシだろ?」
ユイ「そりゃぁ…そうですけど。」
-
80 : 2010/06/11(金) 15:33:17.93 -
日向「それじゃ決まりだな。ちょっと待ってろ。ギルドの連中にピクニックに必要な物貰ってくる。」
ユイ「ええ~…あたし今すぐ行きたい~。」
日向「ガキじゃないんだから我慢しろ!一時間したら女子寮の前に行くから。」
ユイ「はぁ~い…。」
にしても不便だな…この世界は
歩きながら日向は考える。
NPCの中には付き合っている生徒もいる。彼らは休日は何をして過ごしてるんだろう。
ふと思った。
ま、NPCの事なんて考えても意味ないか。とりあえず…ギルドの連中に連絡とらないと…。
遊佐にとりつないでもらおう。
-
81 : 2010/06/11(金) 15:37:57.95 -
遊佐を探し食堂を訪れる。
いたいた。あの金髪ツインは間違いなく彼女だ。
日向「おーい、遊佐ぁ~。探したぜ。」
遊佐「日向さん…どうかしましたか?」
関根「あ、ども。」
入江「…」ぺこ
ひさこ「珍しいじゃない。今日は音無と一緒じゃないのね。」
遊佐は普段ゆりといる事が多い。
しかし、今日は珍しくガルデモメンバーと朝飯を食べていたようだ。
せいかくにはユイを除いたガルデモメンバーだが。なあユイ…お前、もしかしてはぶられてるんじゃ…
この場にただ一人いないボーカルの立場を少し考えた
っと。今はそんな事はどうでもいい。
日向「なあ遊佐、今ちょっといいか?」
-
83 : 2010/06/11(金) 15:42:06.59 -
ひさこ「うわ、朝っぱらから女たらすき?」
遊佐「日向さんはたらしにきたんですか?」
日向「ちげえよッ!遊佐に頼みがあるんだ。」
関根「もしかして告白ですか?」
日向「だああ!違うわ!ギルドのメンバーに連絡をとってほしいだけだよ。」
遊佐「そういう事でしたか。わかりました。」
遊佐はトランシーバーを取り出しこちらに差し出した。
遊佐「…はい、どうぞ。」
日向「サンキュー。これをどうしたらいいんだ?」
遊佐「もうギルドと繋がっています。」
日向「おお、ありがとな。」
-
84 : 2010/06/11(金) 15:49:21.84 -
日向「…あー、あー…こちら実行班の日向だ。聞こえてるか?」
斉藤「よう!今日は何の用かな?」
日向「おお!斉藤だったか。実はかくかくしかじか…。」
ピクニックに行きたいので色々必要な物を持ってきてほしいと頼んだ
斉藤「OK!荷物を持ってすぐそちらへ向かう。30分程待っててくれ。」
日向「悪いな。今度肉うどんの食券でたらゆずるよ。」
斉藤「wow!頼んだぜ!!」
-
85 : 2010/06/11(金) 15:50:26.79 -
遊佐「日向さん、誰とピクニックに行くんですか?」
遊佐は横で斉藤との話を聞いていたらしい。
疑問をぶつけてきた。
日向「別に誰とだっていいだろ。」
ひさこ「どうせユイだろ?」
一発であてやがった…
日向「…何でわかるんだ。」
関根「ユイ、最近先輩の事気にしてるからね、デートでもしたら?って昨日練習の後言ったんです。」
日向「お前らの差し金かよ!」
ひさこ「別にいいだろ?あんたもユイの事まんざらでもないくせにさ。」
日向「…知らん!…もう行くからな!」
ひさこ「遊佐知ってる?あいつらこの間保健室でさ」
日向「や、やめろおおおおおおおお!違うんだ!!あれはそういうのじゃないッ!!」
まあ、ひさこが来なかったらやばかったけどな。
-
87 : 2010/06/11(金) 15:54:39.42 -
何とかひさこを止め、食堂を後にし斉藤と合流する
斉藤「待たせたな。約束の敷物と釣り道具だ。」
日向「ありがとな。今度釣りに付き合うよ。」
斉藤「肉うどんも忘れないでほしいぜ。」
日向「勿論だ。」
斉藤から荷物を受け取り女子寮へ向け歩き始めた。
日向「そんじゃな。」
斉藤「おう。青春してきやがれ!!」
日向「おおよ!!」
…俺、あいつと出かけるの楽しみにしてないか?
まさか、
まさかね…
-
89 : 2010/06/11(金) 15:57:07.46 -
ユイ「おっそぉぉぉぉぉぉい!!」
女子寮に到着するやユイに怒鳴られる。
俺が10分程遅れたからだろう。
日向「悪い悪い。準備してたら遅れちまってな。」
ユイ「ぶぅ~…。先輩、レディを待たせないで下さいよぉ~。」
日向「あんま怒んないでくれって。ほら、行こうぜ。」
ユイ「あ、はいッ!」
日向「…」
ポリポリと頬を軽くかきながら日向は思う。
日向(…なるべく楽しませてやりたいな)
-
91 : 2010/06/11(金) 16:01:46.58 -
荷物を入れたリュックを背負いユイと共に学園を出た。
ユイ「せんぱいせんぱい。ピクニックといっても具体的には何をするんですか?」
日向「そう遠くない場所に綺麗な湖があるんだ。そこで飯でも食って…後は釣りをしよう。」
ユイ「ええ~…それってデートというより兄弟で出かけてるだけな気が…」
日向「俺ら兄弟じゃないし、ちゃんとデートっぽいって。」
ユイ「デートっぽいじゃなくてデートがしたいんですけど…。」
日向「ほら、文句言ってないでシャキシャキ歩け。」
ユイ「…。せんぱいのアホ~…。」
-
94 : 2010/06/11(金) 16:11:47.43 -
学園付近湖にて
持ってきた敷物をリュックから取り出し地面に敷く
日向「まずは飯でも食うか。」
ユイ「先輩。あたしサンドイッチ持ってきたんですよ。一緒に食べませんか?」
マジか
日向「…」
ユイ「…どうしました?」
日向「いや、お前が気をきかすなんて、もの凄く意外だと思ってな。」
ユイ「…どういう意味ですかぁ!?」
日向「まあいいや…どこから持ってきたんだよ。」
ユイ「へへー…食堂のおばちゃんに貰ったんだ!」
ユイがピースをしながらこちらに頬笑みかけてくる。
日向「なんだ…貰い物か。」
ユイ「む。」
-
95 : 2010/06/11(金) 16:14:06.49 -
ユイ「…あたしだって…手作り弁当とか持ってきたかったですよ?」
日向「食ったら腹壊れそうだけどな。」
ユイ「そんな事ないもんっ!!」
日向「じゃあさ、いつか作ってくれよ。」
ユイ「いいよ!あたし、美味い弁当作るもん。覚悟して待っとれやぁ!!」
日向「腹壊さない覚悟はしとくぜ!!」
ユイ「う~…」
ユイ「先輩嫌い!!」日向「…」
嫌いと言われ、少しへこむ
ユイ「あ、あれ?先輩?」
日向「なんでもねえよ。」
何か最近変だな…
こんな事で傷つく程俺の心はセンシティブだったっけ?
ユイ「とりあえず、食べませんか?」
日向「そうだな。」
-
96 : 2010/06/11(金) 16:17:50.79 -
湖をぼ~っと眺めながらサンドイッチを食べる
鳥のさえずりや虫の鳴き声が心地いい
人の心を癒すもの、それはやっぱり自然だな
そういえば…この世界に来てピクニックなんて初めてだ
自然に包まれて何もきにせずに昼食を食う
幸せだ…
たまにはこういうのもいい
ユイ「風が気持ちいいですねぇ~…」
日向「そうだな…」
自然は人を和ませる
いつもぎゃあぎゃあ騒いでるユイも珍しくのんびりとしていた
来てよかった。
心の底から思えた
-
97 : 2010/06/11(金) 16:20:48.29 -
ユイ「釣れませんね~。」
日向「釣りは獲物がかかるのを待つ事も楽しみの一つだ。気長に待たなきゃな。」
ユイ「…」
日向「…」
ユイ「かかりませんね~。」
日向「そうだな…。」
-
99 : 2010/06/11(金) 16:23:34.55 -
2時間が経過した
未だに一匹もつれない
日向「おっかしいな…。いつもならそろそろかかるんだけど…。」
ユイ「zzz」
こっちは寝てるし…
日向「ユイ、ユイ、寝るなー。」ゆさゆさ
ユイ「むにゃ…せん…ぱぁい。」
日向「ほれ…寝るなって。」ゆさゆさ
ユイ「んぁ…やめて下さいよぉ…」
日向「変な声出すなよ…。」
ユイ「ん~…」
日向「…ま、いっか。」
ユイに上着をかぶせ敷物に寝かせた
しばらくしたら起こしてやろう
-
100 : 2010/06/11(金) 16:29:29.02 -
それからしばらく粘ったが結局一匹も釣る事が出来なかった
ユイも途中で目覚めた。が
釣りには飽きたのか気持ち良さそうにゴロゴロしてばかりであった
次第に日が沈み始めたので帰る支度をする。
ユイ「結局釣れませんでしたね…。」
日向「そうだな…。」
…地味にショックだ。
こう、何匹か釣りあげて
ユイ「先輩すげー!!」
とか言って欲しかったんだが…。
-
101 : 2010/06/11(金) 16:33:43.77 -
とぼとぼと釣り道具を回収する
日向「ん?これって…もしかして…」
ユイ「?」
ユイ「どうしました?」
日向「は、ははは…」
ユイ「せ、先輩?」
日向「釣れるわけ…なかったんだ…。」
日向「俺…餌もルアーもつけずに釣りしてたんだ…これじゃ魚もかからない訳だぜ…。」
ユイ「」
ユイ「アホですね!!!」
日向「…ぅぅ…し、死にたい…。いや、この場合消えたい…。」
普通気づくだろ…どんだけ頭緩いんだよ…俺は…。
-
102 : 2010/06/11(金) 16:43:58.55 -
ユイ(か、かつてない程へこんでる…)
ユイ「せ、先輩!元気出して下さい!!私は今日めっちゃ楽しかったですよ!?」
日向「ユ、ユイ…」
ユイ「ほら、今日の失敗を次にいかしましょう!また一緒に釣りしましょ!?」
日向「…サンキュ。」
日向「…そうするか。…そうだな、また来るか。」
ユイ「はい!」ニコっ
日向「…」
ぽりぽりと頬をかく
今日はやけに頬が痒くなるな
日向「それじゃ帰るか。」
ユイ「そうしましょう。」
その日の夜は最高に気持ちよく眠れた。
-
137 : 2010/06/11(金) 23:42:23.18 -
それから数日が過ぎた
天使との衝突も小さなものばかりで俺たち戦線メンバーは各自好き放題して楽しんでいた。
ユイ「せんぱいせんぱい♪今日は何します?」
日向「朝から元気だな…お前は。」
ユイ「そうだ!先輩のお話聞かせてくれますか?生きてた頃の先輩きになります。」
日向「…ここんとこ俺と遊んでばっかだけどバンド練習はいいのか?」
ユイ「失礼な、練習はちゃんとしてます。」
ユイ「最近は新曲も作ってるんです。絶好調ですよ!?」
日向「悪い悪い。ならいいんだ。」
ユイ「…日向先輩も音無先輩と最近はあまりつるんでないっすよね。」
日向「音無はな~…最近冷たいんだ…。」
飯も前程一緒に食べていないし、遊びに誘っても参加率がずいぶん落ちてる
-
138 : 2010/06/11(金) 23:51:02.04 -
日向「…」
たぶん
音無は天使と何か企んでるよな
戦線メンバーは基本アホなので気づかないかもしれないが、親友の俺にはわかる
音無が何かやろうとしているなら応援してやりたい
しかし音無は俺に相談してこない
なら話してくれるまで待つというのが親友だ
日向「そんじゃ、今日は昔話でもするか。ただ…あんまり楽しくないぜ?」
-
139 : 2010/06/11(金) 23:57:57.12 -
ユイ「知られざる先輩の過去に…ユイにゃんどきどきです。」
日向「そんな素敵な話しじゃないって。」
日向「…俺、生きてた頃野球部でさ。」
生きてた時の話を始める。
昔の話をするのは久しぶりだな
音無以来だ
-
140 : 2010/06/12(土) 00:02:09.76 -
日向「っとこんな所か。」
ユイ「………」
ユイ「…あたし、もしかして先輩の未練を消す邪魔しちゃいましたか?」
日向「どうして?」
ユイ「球技大会のセカンドフライ…」
日向「あれか…そうだな、あんときのセカンドフライ取ってたら大分すっきりしてたかもな。」
ユイ「あぅ…ごめんなさい…。」
日向「いいっていいって、最近はもう生前の事とかどうでもよくなってきたからな。」
ユイ「…というと?」
日向「この世界が楽しすぎてさ、もう生きてた頃の嫌な思い出も笑い飛ばせるんだよ。」
ユイ「…。」
日向「お前は?まだユイの生前って聞いた事なかったな。よかったら聞かせてくれないか?」
ユイ「そうですね…私は…生きてた頃…」
-
141 : 2010/06/12(土) 00:06:31.56 -
ユイ「…」
日向「言いたくなかったらいいぜ?」
ユイ「ごめんなさい…。やっぱ話せません。」
日向「話したくない理由は…聞いてもいいか?」
ユイ「それはですね…。」
ユイ「…生前のあたしを先輩に知ってほしくないんです」
-
143 : 2010/06/12(土) 00:09:36.95 -
日向「…そっか。」
きっと、複雑な過去があるんだな
俺のは、そこまで酷くない
だから軽く笑って話せるけれども
こいつの過去は俺が思ってるよりもきついものなのかもしれない。
ユイ「あの…怒りました?」
日向「いや…」
日向「それじゃ、仕方ないな!」
怒ってない事をアピールするため出来るだけ軽く、笑って答えた。
ユイ「…先輩、ありがと。」
-
148 : 2010/06/12(土) 00:29:20.41 -
今日はガルデモメンバーが空き教室でセッションしてる日だ
日向(そろそろ練習が終わる時間か)
空き教室にユイを迎えにいく。
日向「ユイ~。迎えにきたぞぉ~。」ガラっ
入江「ユイなら天使追いかけてどこかいっちゃいました。」
日向「なんじゃそりゃ?」
-
150 : 2010/06/12(土) 00:31:24.12 -
関根「実はかくかくしかじか」
日向「へえ…天使にギターの腕をバカにされ挙句取られちまったと。」
日向「なにやってんだよいったい…。」
ひさこ「あたしらが知るか!」
日向「…俺、探してくる。」
関根「いってらっしゃ~い。」
-
153 : 2010/06/12(土) 00:38:27.25 -
あいつ…どこに行ったんだ?
いつもの空き教室にもいねえし…
日向「う~ん…。」
とにかく…しらみ潰しに探そう
日向「…」
ふと立ち止まった。
そもそも何でこんな必死になって探してるんだ?
おれは…
-
155 : 2010/06/12(土) 00:54:15.82 -
日向「ったく…どこだぁ~?ユイ~!」
いるわけないと思うが校舎裏を探す
もしかしたらもうひさこ達の所に戻っているかもしれない
それでも探した
-
156 : 2010/06/12(土) 00:55:41.93 -
ユイ「せえのぉっ……」ブルブルブル
音無「ほら…頑張れ。」
日向「やっと見つけた…。」
まさか校舎裏にほんとにいるとは…
しかし、音無も一緒で何やってるんだ?
影に隠れて二人の様子をうかがう
ユイ「ぐはぁ…」パタっ
音無「ダメだろー、ほら。」
ユイ「だってこんな格好した事ないんだもぉん!」
音無「でも…出来なきゃジャーマンスープレックス出来ないぞぉ?」
ユイ「うぅ…がんばりますぅ…。」
-
157 : 2010/06/12(土) 01:01:37.52 -
日向「…」
あの二人…なにやってんだ…?
ユイがブリッジをし音無がそれを眺めながら何か言っている
状況がわからない
ただ一つ確かな事は
日向「面白くねえな…」
なんだか面白くない
せっかくユイを見つけたのに気持ちが冷めてしまった
-
158 : 2010/06/12(土) 01:05:47.63 -
日向「…ああ、そっか。」
不意にこの気持ちがなんなのか気づく。
日向「まいったな…。」
嫉妬してるのか、俺は。
いつのまにか…あいつに惚れちまったらしい
気がつけば一緒にいたいと
そう思っていたんだ
そして今、俺は音無に嫉妬してるんだ
日向「…やな奴だな…俺って。」
-
159 : 2010/06/12(土) 01:09:25.61 -
その日の夜
日向「……」ズーン
大山「日向君、どうしたの?なんだか凄く元気がないよ?」
日向「なあ、俺ってさ、嫌な奴だよな…」
大山「ええ!?い、いきなりなに?何かあったの!?」
日向「俺は女々しい男だ…せんたくばさみより使えない無能なんだ…。」
大山「ちょ、…日向君?」
日向「うぅ…。音無ぃ…ごめん…俺は嫌な奴だぁ…。」
大山(…?)
-
161 : 2010/06/12(土) 01:19:49.18 -
翌日、とぼとぼと1人飯を済ますとTKが話しかけてきた
TK「HEY!YOU!」
日向「…何か用か?」
TK「Yes。オレニツイテコイ~。」
日向「?」
-
162 : 2010/06/12(土) 01:27:06.43 -
TKに案内された場所は男子トイレであった。
日向「な…まさか!…お前、俺のケツを掘る気か?」
TK「crasy baby」
音無「違う違う。悪いな、俺が呼んだんだよ。」
日向「音無。どうしたんだよ」
音無「ちょっと皆に用があってな。野田と藤巻もきてるぞ」
野田「ふん!」
藤巻「なんの用だ?」
この二人もきたのか…
音無「実は…ゆりには内緒だが…天使からこんな手紙が…」
野田「…よこせ」
野田が音無の持っていた手紙を奪い読み始めた。
-
164 : 2010/06/12(土) 01:31:05.19 -
野田「おんなひとりにも歯が立たぬのに…男をかたるとはかたはらいたし」
藤巻「片腹痛しなんてよく読めたな。…アホが治ったか?」
日向「いや…アホでも読めるよ?」
手紙にはご丁寧に振り仮名がふってあった
野田「スポーツマンシップにのっとりその女々しき根性叩き直してくれる。放課後、サッカー場にて待つ、天使。だとお!?」
日向「訳がわからん内容だなぁ。ほんとにあいつが書いたのか?」
音無「今の天使は、もう前の天使じゃないからな。」
藤巻「色んなものが混ざっちまったから、こんなアホな挑戦状も書きかねないか…。」
野田「こんなバカらしい話、つきあってられるか!ゆりっぺに報告するぞ。」
音無「だから!ゆりには内緒だっていっただろ?」
野田「何故?」
-
165 : 2010/06/12(土) 01:35:30.47 -
音無「ゆりにいったら…また物騒な話に発展するぜ?ほら、スポーツマンシップにのっとり、って書いてある。今回はスポーツで、正々堂々と戦おうっていってきてるじゃん?」
音無「それに、俺ら男に向けての挑戦状だぜ?ゆりに言いつけるなんて…それこそ男のながすたる」
藤巻「なるほど、いえてるぜぇ。」
野田「う…む…。」
日向「…そんじゃ、この五人で行きますか。」
TK「Get you!!」
-
166 : 2010/06/12(土) 01:40:56.21 -
男五人でサッカー場へと歩く。
日向「なあ、音無。」
音無以外には聞こえないよう小さな声で話しかける。
音無「ん?」
日向「…なに企んでるんだ?いくらなんでもあの手紙はないだろ…」
音無「な、何のはなしだ!?」
日向「ほ~…。」
怪しすぎる…。
-
169 : 2010/06/12(土) 01:50:32.31 -
サッカー場に着く。
日向「ん?」
すでに誰かがグランドの真ん中に立っている
日向「…ユイじゃん。何してんだあいつ…。」
ユイ「来やがったか……」
ユイ「キックオフ!!」
日向「?」
野田「ボールをけり始めたぞ。」
ユイ「いっくぞてめえらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
-
170 : 2010/06/12(土) 01:53:14.01 -
サッカー場に着く。
日向「ん?」
すでに誰かがグランドの真ん中に立っている
日向「…ユイじゃん。何してんだあいつ…。」
ユイ「来やがったか……」
ユイ「キックオフ!!」
日向「?」
野田「ボールをけり始めたぞ。」
ユイ「いっくぞてめえらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
-
171 : 2010/06/12(土) 01:56:43.56 -
音無「わ、わかった!!手紙の主はあいつだ!!きっと、普段から不甲斐ない俺たちにいら立ちを覚えていたんだ!!それでこんな真似を!!よおし!ゴールを守れ!!この戦い負けられねえ!!俺たち男が勝つ!!」
野田「よくわからんが…」
野田「わかったぁぁぁぁぁ!!!」
藤巻「なめんじゃねえぞおらあああああああ!!!」
音無「日向!!キーパー!!」
日向「お、おうよ!!」
…なんでこんな事やってんだ俺らは
何故サッカー?
っていうかなんでユイが?
そして音無。怪しすぎる。
-
172 : 2010/06/12(土) 02:02:50.42 -
などと考えてるうちにユイはディフェンスの4人を抜き(音無の画策込で)ゴール前にたっていた。
ユイ「最後は…てめえかぁ!!殺してでもゴールを奪う!!」
日向「おまえ、スポーツマンシップはどこへいった!!!」
ユイ「んなこと知るかぁぁぁぁぁぁぁあ!!覚悟!!」
ユイ「必殺殺人ギロチンシュート!!」
日向「俺を殺したいのかゴールを決めたいのかどっちなのか突っ込みどころの多いシュートがきやがったぁ!!」
訳がわからないがユイに負けるのは嫌なのでなんとかキャッチを試みる。
が
球を補足しキャッチしようとした瞬間横から何かが飛来し球に衝突、球は軌道を変えゴールインした。
日向「な…なん…だと……」
-
173 : 2010/06/12(土) 02:09:10.17 -
ユイ「やったぁ!!五人抜き達成だぁ!!やったやったぁ!!」
野田「お、女に…負けた。」
藤巻「ユイ一人に…」
日向「最悪だぁ…。」
よくわからないうちによくわからない事に巻き込まれてよくわからないままユイに負けてしまった。
日向「…」
日向「…なあ音無。お前は…何しようとしてるんだ?」
-
208 : 2010/06/12(土) 16:57:07.88 -
サッカー事件から数日がすぎた
あれからも俺たち戦線は特に変わりなく過ごしている
ただ、一つだけ変わった事があった。
日向「最近空き教室に来ないな。ユイのやつ。」
あの日のサッカー事件以来ユイが空き教室にこないのだ
日向「なにしてるんだろうな…あのアホは…。」
結局今日も空き教室で待ち伏せしてたがユイは来なかった。
日向「…はぁ。」
気分がめいってしまう。これじゃダメだ。
たまには運動でもするか
そうときまれば、行動あるのみだ。
久しぶりに、壁を相手に野球の球でも投げるか。
-
209 : 2010/06/12(土) 16:58:17.45 -
軽く汗を流そうと野球のグラウンドに来たがそこには先客がいたようだ。
音無「もっとしっかりふれよ!」
ユイ「やってますって…」キィン!
日向「…」
また二人で何かしてるな。
サッカーの次は野球とは
音無もいったい何を考えてんだ…
なんとなく、見つからないように隠れつつ練習の風景を眺める。
ユイは楽しそうにバットを振っている
いい笑顔だ
音無は楽しそうな顔でもなくつまらなそうな顔でもなく、
何故か使命感をもったような顔で球を投げていた。
ほんとに何やってんだか…
-
211 : 2010/06/12(土) 17:01:50.14 -
翌日もユイと音無は野球をしていた
音無に少し嫉妬を覚え、そんな自分に自己嫌悪する
…
日が沈みかけ夕方になった。
音無「よし、今日はここまでだ。」
音無が叫んだ。
ユイ「はい。それじゃ、また明日。」
ユイはそう言ってグラウンドから去っていった。
-
212 : 2010/06/12(土) 17:02:47.84 -
日向「お前ら何やってんの?」
ユイが帰ったのを見計らって音無に話しかける。
音無「日向。」
日向「よっ。」
ユイが投げ捨てたバットを拾い軽くスイングをした。
やっぱバットを振るのはいいな
こう…スカッとする
-
214 : 2010/06/12(土) 17:03:42.49 -
音無「お前もやるか?本気の野球。」
日向「フルスイングか…最近してねえや。」
バッターボックスに立ち構える。
日向「そういうのも…悪くねえかもな。」
音無「ふっ!」
音無が球を投げた
ストレートだ
日向「…!」
タイミングを合わせバットを振る。
カキィン!!
と爽快感のある音がグラウンドに響いた。
-
215 : 2010/06/12(土) 17:04:34.90 -
音無「くっそ~、ホームランか…。悔しいな。」
日向「ま、俺も元野球部だからな。」
音無「ユイもお前くらい運動神経があればなぁ…。」
日向「あいつ酷いからな…。」
音無といつものように話す。
だけど…聞かなきゃならない。
-
216 : 2010/06/12(土) 17:05:33.83 -
日向「なあ、お前さ、ユイと何してるんだ?」
音無「…」
グラウンドが静まる。
音無は言葉を詰まらせている
それは俺に後ろめたい事をしてると自覚しているからだろう。
やっぱり何か企んでるんだな
音無「ホームランを一度打ってみたいって言われてな。それで協力してるんだよ。」
日向「それだけか?」
音無「それだけだよ。」
日向「ならこの前のサッカーは?」
音無「ユイに五人抜きをしたいと頼まれたんだ。」
日向「なるほどね…」
-
217 : 2010/06/12(土) 17:06:40.70 -
音無はお人好しだ。
頼まれれば大体の事には応える性格である。
だけど…それだけでここまではしないはずだ。
日向「なんでそんな事してるんだ?わざわざお前があいつの我がまま聞く事はないだろ?」
音無「…」
日向「お前…あいつをさ、満足させてどうするつもりなんだ?」
音無「それは…」
-
218 : 2010/06/12(土) 17:11:03.01 -
日向「…」
たぶん
ユイをこの世界から去れるようにしているのだろう
だからユイの頼みをこなしている
それならば、最近音無とユイが色々している事に説明がつく
日向「…」
この世界から消える
自らの意思で消えるなら、悪いことではないと思う
それは、生前出来なかった事をした時、または後悔を断ちきった時だからだ。
-
219 : 2010/06/12(土) 17:11:57.88 -
日向「…」
だけど…
それでも俺は、もっと、あいつとこの世界で過ごしたい。
日向「悪い、変な事聞いちまったな。片づけ、手伝うよ。」
音無「日向…。」
二人で球を集める。
日向「明日もやるのか?」
音無「ああ、そのつもりだ。…日向も一緒にやるか?」
日向「俺は…いいや。」
音無「そっか…わかったよ。」
日向「悪いな。」
音無「いいって。」
-
220 : 2010/06/12(土) 17:12:58.94 -
その日の夜
部屋にて悩む
日向「なあ…大山。」
大山「どうしたの?日向君。」
日向「好きな子の願いってさ、叶えてやるべきだよな。」
大山「突然どうしたのさ?」
日向「ちょっとな、お前はどう思う?」
大山「僕は…好きな子の願いなら、自分に出来る事なら叶えてあげたいな。」
日向「そうだよな。それが普通だよな」
大山「?」
-
255 : 2010/06/13(日) 00:52:24.55 -
日が段々としずみ夕方になる。
ユイ「はぁ…はぁ…ふぅ…。」スカッ
ユイのバットは球をかすりもせず空をふる
音無「どうしたぁ!?全然ふれてねぇぞ。」
ユイ「はぁ…」
ユイがその場に座りこむ
もう体力が限界なのかもしれない
-
257 : 2010/06/13(日) 00:54:09.66 -
音無「…手ぇ見せてみろよ。」
音無はユイの心配してかそう言った。
ユイ「嫌だ。」
音無「いいから見せろって、…これは…酷いな。」
音無はユイの手のひらを見てそう言った
ユイ「所詮無理なんだよ。」
ユイ「もういいや、この夢。」
ユイは立ち上がると音無にそう告げた。
-
258 : 2010/06/13(日) 00:55:14.39 -
ユイ「色々ありがとね、…何でこんな事してくれたの?」
音無「それは…」
ユイを成仏させるため…とはあいつもいえないよな…
音無は質問にはこたえず聞き返した
音無「お前がやりたかった事だろ!?最後まで頑張れよ。」
ユイ「ホームランなんて冗談みたいな夢だよ」
ユイ「ホームランなんて打てなくてもこんなにいっぱい体動かせたんだから、もう十分だよ。」
ユイ「毎日部活みたいで楽しかったな。」
ユイ「言ったでしょ?あたし、体動かせなかったから…だから、すげー楽しかった。」
-
259 : 2010/06/13(日) 00:57:08.64 -
音無はユイから過去の話を聞いたのか。
…俺には言わなかったくせに音無には言うなんて
…
またも嫉妬する自分に自己嫌悪するが二人の会話を聞き続けた。
音無「じゃあ…もう全部かなったのか?」
ユイ「叶う?何が?」
音無「その…体が動かせなかった時にしたかった事。」
ユイ「ああ…もう一個あるよ。」
音無「…なに?」
ユイ「結婚。」
音無「な…?」
-
262 : 2010/06/13(日) 01:00:22.49 -
日向(……あいつ、そんな夢を持ってたのか。)
ユイは女の子だ
その事を改めて思いしった
ユイ「女の究極の幸せ。」
ユイ「…でも、家事も洗濯も出来ない、それどころか一人じゃ何にも出来ない。…迷惑ばかりかけてるこんなお荷物。誰が貰ってくれるかな。」
音無「…」
-
263 : 2010/06/13(日) 01:05:06.98 -
こいつは…もしかしたら,これを気にして…俺に過去を語らなかったのだろうか
生前のあたしを先輩に知ってほしくない
ユイはそういった
日向(なんだよ…知ったら嫌いになるとでも思ってたのかよ…あいつは!)
ユイ「神様って酷いよね…」
ユイ「あたしの幸せ…全部うばっていったんだ。」
日向(………)
音無「そんなこと……ない…。」
ユイ「じゃぁ先輩…あたしと結婚してくれますか?」
-
265 : 2010/06/13(日) 01:10:29.09 -
ユイは音無を睨みつけそう言った
あいつが本気で怒ってるのは初めてみた
悲しい目をしている
その目がユイの心の声を代弁していた
自分と結婚してくれる人などいる訳がない
そう語っている
音無「それは…」
音無は返答出来ずにいる
こんな展開になるとは予想もしていなかったんだろう
-
269 : 2010/06/13(日) 01:22:28.66 -
じゃれ合って
笑い合った日々は
かけがえがなくて
失いたくなくて
今じゃ俺の宝物だ
なくしたくない
失いたくない
だけど…
それでも俺は
日向「っ!」
日向「俺がしてやんよ!」
-
270 : 2010/06/13(日) 01:23:05.52 -
グラウンドに歩を進め叫んだ
悲しそうな顔をもう見たくなかったから
ユイ「!?」
ユイが驚いてこちらを向いた。
はは…すっげえびっくりしてる
そんな仕草も可愛いって思ってる
俺はどうもこいつを好きになりすぎたみたいだ
-
271 : 2010/06/13(日) 01:23:55.97 -
ユイ「せ、せんぱい…?」
音無「日向…お前…」
日向「俺が、結婚してやんよ。」
ユイ「あ…」
ユイ「そんな…先輩は…ホントのあたしを知らないもん…。」
日向「現実が…生きてた時のお前がどんなでも…俺が結婚してやんよ。」
日向「もし、お前がどんなハンデを抱えててもだ。」
ユイ「…ユイ…歩けないよ?…立てないよっ!?」
日向「どんなハンデでもっていったろ!!」
-
273 : 2010/06/13(日) 01:25:02.95 -
ユイ「ぁ………」
日向「もし歩けなくても…たてなくても!……もし、子供が産めなくても…」
ユイ「…」
日向「それでも…それでも…俺が結婚してやんよ。」
ユイ「…」
日向「ずっとずっと…そばにいてやるよ。」
ユイ「……ぅぅ……」
日向「ここで出会ったお前はユイの偽物じゃない。ユイだ。」
日向「どこで出会っていたとしても…俺は…好きになっていたはずだ。」
日向「また60億分の1の確立で出会えたら、そん時もまた…お前が動けない体だったとしても」
日向「お前と結婚してやんよ。」
-
274 : 2010/06/13(日) 01:27:06.88 -
ユイ「出会えないよ……」
ユイ「ユイ…家で寝たきりだもん…。」
日向「俺、野球やってるからさ、ある日お前の家の窓、パリーンって割っちまうんだ。」
日向「それを取りに行くとさ、お前がいるんだ。…それが出会い。」
日向「話すると気があってさ、いつしか毎日通うようになる。…介護も始める。そういうのはどうだ?」
ユイ「うん………」
ユイ「ねえ……そん時はさ…あたしを、いつも一人で…頑張って介護してくれた…あたしのお母さんを…。」
ユイ「楽にしてあげてね…」
日向「任せろ。」
-
275 : 2010/06/13(日) 01:28:06.49 -
ユイ「…。」
ユイ「よかった…。」
ユイの頬を涙がぬらした
だけど
泣いてはいても
ユイは笑っていて
-
279 : 2010/06/13(日) 01:31:07.83 -
日向「…。」
音無「…よかったのか?」
日向「…よかったさ。」
音無は…気にしてるだろうな
俺がユイに惚れてた事…ばればれだったもんな
-
281 : 2010/06/13(日) 01:32:46.26 -
音無「お前は…これからどうする?」日向「俺も最後まで付き合うさ。」
音無はたぶん
ユイだけじゃなくて
この世界にいる皆の夢を叶えて
皆でこの世界から去ろうとしているんだろう
どんな過去をもっていても
この世界で幸せを掴めるんだと
そう伝えたいんだろう
-
283 : 2010/06/13(日) 01:36:35.55 -
日向「…」
ふと
涙がこぼれそうになった
だけど、涙は流したくなかったから
涙をこぼさないよう目を瞑って上をむき、言った。
日向「まだまだ…心配な奴らが残ってるからな。」
音無「そうか…。」
-
284 : 2010/06/13(日) 01:38:10.98 -
麻枝「もういいや、このアニメ」
鳥羽「あきらめんなよ」
麻枝「いろいろありがとね。なんでこんなに尽くしてくれたの?」
鳥羽「それは……。お前とやりたかったからだろ。最後までがんばれよ」
麻枝「人生賛歌なんて……。冗談みたいなコピーだよ。 人生賛歌が浸透しなくても、
こんなにいっぱい曲生み出せたんだからもう十分だよ。 主題歌初動8万枚。うれしかったな。
言ったでしょ。オレ、曲作るの好きだから。だからすげー楽しかった!」
鳥羽「じゃあ、もう全部叶ったのか?」
麻枝「叶う?何が?」
鳥羽「その……。アニメでしたかった事だよ」
麻枝「ああ……。もういっこあるよ」
鳥羽「何?」
麻枝「伏線」
鳥羽「えっ」
麻枝「物語の究極の仕掛け。 でも、張りも回収もできない。それどころか一人じゃなんにも思いつかない。
説明不足ばかりのこんな展開……。誰が支えてくれるかな。 神様ってひどいよね。
オレの名声、全部奪っていったんだ」
鳥羽「そんなこと……。ない……」
麻枝「じゃあ、10話の伏線張ってくれますか?」
鳥羽「えっ……。それは……」岸 「張ってやんよ!俺が伏線張ってやんよ・・・これが、俺の本気だ!」
麻枝「ん、そんな・・・監督は本当のオレの脚本を知らないもん・・・」
岸 「告白が・・・感動のシーンがどんな唐突でも俺が伏線張ってやんよ! もしお前が、どんな脚本を書いてたとしても!」
麻枝「准、プロット書かないよ?設定丸投げだよ?」
岸 「どんな脚本でもっつったろ!」 -
286 : 2010/06/13(日) 01:39:02.35 -
日向「…」
ほんとなら…俺も今消えたかった
俺は多分、もう満たされていた。
ユイと一緒に過ごした日々は楽しくて
生前したミスがちっぽけな事と思える程幸せで
きっといつ消えてもおかしくなかった。
だけど
俺は消えなかった
俺はこの世界である約束をした
ゆりっぺを一人にはしないと
お前は最後まで見守ると
そう約束した
-
288 : 2010/06/13(日) 01:41:09.01 -
日向「俺がしてやんよ!」
fin
-
295 : 2010/06/13(日) 01:45:00.10 -
エピローグ
日向「用があるって…いきなりどうしたんだ?」
部屋に訪ねてきたひさこに問う。
ひさこ「黙ってついてきて。」
日向「なんなんだよ…全く…。」
正直に言って、まだ先日の事が響いている
しばらくは何もしたくなかった…
-
297 : 2010/06/13(日) 01:49:13.27 -
連れてこられた場所
そこはユイが弾き語りの練習をしていた空き教室であった。
日向「ん?なんだよ。ここ、あいつが練習してた空き教室じゃねえか。」
ひさこ「これ、受け取って。」
ひさこは空き教室の隅に置いてあったCDケースを拾いこちらに渡してきた。
日向「これ、何?」
ひさこ「このCDね、ユイが残した最後の曲が入ってるの。」
日向「マジかよ!?なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!!」
ひさこ「顔近い!!後、大きな声出さないで…。」
日向「あ…悪い。あいつの事になるとついな。」
-
299 : 2010/06/13(日) 01:56:24.68 -
ひさこ「昨日ここの教室に皆で来た時、そのCDケースを見つけたの。」
ひさこ「中身は私達もきいた事のないユイの弾き語りの曲だった。」
日向「これを聞かせる為に俺を呼んだのか?」
ひさこ「そゆこと。」
日向「ありがとな。」
ひさこ「ん、どういたしまして。」
ひさこ「ユイ、言ってたわ。「今作ってる秘密の曲が完成したら、先輩に聞かせてびっくりさせるんだ」ってね。」
ひさこ「きっと、その曲の事だと思ったのよ。だから、聞いてやって。」
日向「そっか。」
-
300 : 2010/06/13(日) 01:57:43.91 -
日向「なぁ、…今から聞くからさ、一人にしてくれないか?」
ひさこ「言うと思ったわ。」
日向「悪いな。」
ひさこ「いいって、それじゃ、あたしはもう行くよ。」
ガラっ
ひさこが空き教室から出ていく。
教室がしずまる
………そういえば、お前、恋の歌を作りたいって言ってたよな
これ、もしかしてその曲なのか?
-
309 : 2010/06/13(日) 02:16:16.22 -
ダサすぎる
いなくなった女の子を想って泣くなんて
女々しすぎるだろ
だけどさ
しょうがないだろ
お前のライブ…もっと見たかった
釣りだってもっと一緒にしたかった
新曲を自慢げに弾くあいつをもっと見ていたかった
日向「…俺はっ。」
日向「俺は!!もっと一緒にいたかったんだよ!!この馬鹿野郎!!」
叫んだとたんまた涙があふれてきた
なんでだ
なんで
今更こんなに泣いてるんだ
-
312 : 2010/06/13(日) 02:24:51.96 -
日向「くそっ!!」
ユイ「せん♪ぱい♪」
ユイ「一緒にどこか出かけましょう!!」
ユイ「せ、先輩!…これ!これは流石に恥ずかしいですよ///」
今になってあいつの声が頭に響く
どれほどあいつが大事だったのか気づかされる
日向「…っ。」
涙をふく
また涙がこぼれる
また涙をふく
何度もくり返した
-
313 : 2010/06/13(日) 02:33:59.20 -
日向「はぁ。」
一時間程泣いて
やっと落ち着きを取り戻す。
日向「落ち込んでても、しょうがないよな」
まずは…音無と合流しよう
そしてこれからの事を話しあっていこう
日向「なあ…ユイ。」
日向「俺は、音無もゆりっぺも、大山も野田も他の皆も大好きなんだ。」
日向「だから、待っててくれよ。皆の幸せも見つけてさ、すぐにいくから。」
エピローグ
fin
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