-
1 : 2014/12/16(火) 23:59:07.21 -
もし小泉さんが主人公だったら REPEATED DESPAIR part2
ダンガンロンパ2
※注意
<重要!!>本編だけでなく1週目の重大なネタバレがしょっぱなからあります。
下に貼ってあるリンクのパ—ト1から6まで読破できていない人は、このスレをすぐに閉じることを切に推奨します。part1→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404917911/
part2→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406974060/
part3→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408702032/
part4→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410084963/
part5→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411466402/
part6→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412775904/
part7→ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414329511/
・これは、ス—パ—ダンガンロンパ2の二次創作です。
・小泉が主人公のIFの世界なので、島の構造やキャラの性格が微妙に違ったりするかもしれません。
・2週目は非日常編が存在しないので、基本ギャグ&ほのぼのだけです。絶望したい人向けではありません。
・(主人公含め)キャラ崩壊があります。キャラのイメ—ジを壊したくない人はご注意ください。
・エログロは(基本的には)ないですが、ラッキ—スケベはあるかもよ。
・カップリング要素が存在するキャラが数組あります(半数程度)。そういうのが嫌いな人は要注意。
・この小泉さんは日向クンにはなびきません。ヒナコイ派の人は要注意です。
・他にも、『これ、おかしくね?』みたいなところがあるかもしれませんが、希望があれば大丈夫だよね!!
それでもダンガンロンパ2が好きだぜ!!という人は見てやってください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418741937
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418741937/
-
9 : 2014/12/22(月) 23:39:45.69 -
モノクマ「今日から、こっちのスレで更新が始まるよ。」
モノクマ「逆にいうと、このスレが立った後にも、前スレでスト—リ—が更新されているからね。」
モノクマ「もし前スレの更新に気づいてない人がいたら、注意してね。」
モノクマ「後、前スレを埋めるのに協力願いたいね!!」
-
10 : 2014/12/22(月) 23:40:44.10 -
77「…攻めあるのみ、かぁ。」
64「あれぇ?小泉おねぇ、もしかして辺古山おねぇの言葉に感化されちゃったの?」
77「えっ。いや、そういうわけじゃ…。」
64「じゃあ、こういう水着はどう?」
77「これは…えっ!?」
64「いわゆる、マイクロビキニって奴だね—!!」
77「えええぇえええええっ!!!?な、なんでこんなものがあんのよ、ココ!!」
77「しかもこれ、い、いくらなんでも布地がなさすぎでしょ!!ペコちゃんのがかわいく見えるくらいよ!!」
64「だってぇ。小泉おねぇ、今夏は攻めで行くんでしょ?じゃあ、これくらいはしないと!!」
77「今夏って、ジャバウォック島は常夏の島でしょうが!!」
64「心配いらないって!!だって水泳大会に参加するのは女子だけだしさ!!」
77「で、でも…噂を聞きつけたエロ男子共が湧いてくるかもしれないし…」
77「そ、それに、アタシなんかがこんな派手な水着を着るなんてできないよ!!」
77「『アイツ、何頑張っちゃってんの?』って思われちゃうじゃん!!」
77「だ、だって、アタシ、その…身体が貧相で有名で…。」
77「皆の目を汚しちゃうよ…。」
77「だからアタシには、地味な水着がお似合いかなって思ったり…」
64「ふ~ん…。下着は派手なくせに?」
77「それとこれとは話が別!!」
64「そっかそっか…。小泉おねぇはそう言ってるけど。」
64「アンタはどう思う?」
84「…」
64「アンタだよ、そこの84!!」
77「え、84?そんな胸囲の人、いたっけ?」
-
11 : 2014/12/22(月) 23:42:27.31 -
狛枝「はは…。参ったな。隠れていたつもりなのに。」
小泉「えっ…!?こ、狛枝!?い、いつからそこに!?」
西園寺「最初っからいたよ、そいつ。わたしたちがマ—ケットに入る前から、ずっと。」
小泉「じゃ、じゃあアンタ、ずっとアタシ達の会話を盗み聞きしてたの!?」
狛枝「あはは…。意図して盗み聞こうとしたわけじゃないよ?」
狛枝「ボクは用があってここに来たんだけど、そこで女子たちがわんさか集まってきてさ。」
狛枝「女子たちの横を通り過ぎるのもはばかれるから、ほとぼりが冷めるまで隠れていようって思ってたんだ。」
小泉「ふ~ん。」
狛枝「信用してない?」
小泉「ま、いいわ。一応、アンタの言葉を信じといてあげる。」
狛枝「はは、ありがとう。女子達に変な噂を立てられたら、社会的に死んでるところだよ。」
西園寺「お前は既に死んでるだろその意味では…」
小泉「ちなみに、左右田とか花村とかだったならしばいてるところだけどね。」
狛枝「しばく!?」
-
12 : 2014/12/22(月) 23:43:50.03 -
西園寺「というわけで、わたし達の会話を盗聴してたことをバラされたくなかったら、質問に答えろ!!」
狛枝「え?質問って何?」
西園寺「この水着を着ている小泉おねぇを、アンタは見てみたい?」
小泉「ほぇっ!!!?な、何を聞いてんのよ日寄子ちゃん!!!?」
狛枝「う~ん。女性の水着姿には、基本的に希望が詰まっていると考えているけど。」
西園寺「煮え切らないな。そんな返答でわたしが納得するとでも?」
狛枝「えっと…。コレ、答えないといけないのかな?」
西園寺「答えなかったらアンタは社会的に死ぬ。」
狛枝「参ったね、これは…。」
小泉「え、えっと、その、狛枝…。む、無理に答えなくてもいいのよ?」
小泉「そ、それに、アタシにはこんなの似合わないってのはわかってるし…。」
西園寺「はいこれ、狛枝おにぃ。」
狛枝「え?」
小泉「…ん?今日寄子ちゃんが狛枝に渡した栗みたいなの、何?」
狛枝「…」
-
13 : 2014/12/22(月) 23:45:38.27 -
狛枝「素晴らしいよ!!」
小泉「へっ!!!?」
狛枝「極限にまで露出度の高い水着を着ている小泉さん。」
狛枝「素肌がほとんどあらわになることで、貧相と見せかけて絶妙に均整のとれたボディラインが発掘される悦び!!」
狛枝「アイツって実はけっこうエロい体してるよな~。みたいなね!!」
小泉「な、な、な、な…!!!!!」
狛枝「そして大胆な水着を勢いで着てみたはいいものの、冷静に自分の状況を再確認してしまって。」
狛枝「身体を手で隠してモジモジしながら!!」
狛枝「キュ—トなそばかすのある顔を真っ赤に染めて恥らっている小泉さんを、ボクは見てみたい!!!!」
狛枝「これが、希望なんだね!!小泉さんの水着姿に眠る希望!!」
小泉「…」
西園寺「小泉おねぇ、既に顔が真っ赤だけどね。」
西園寺「小泉おねぇの体温が急上昇しているのか、小泉おねぇの周りだけ湯気が立っているよ。」
西園寺「言いたいことを一気に捲したてられたから小泉おねぇ、一言も言い返せずに押し黙ってる—!!」
西園寺「はい、じゃあ狛枝おにぃ。栗を返してね。」
狛枝「…はっ。ボクは今、何をして…?」
-
14 : 2014/12/22(月) 23:46:27.98 -
小泉「…」
狛枝「あれ…。小泉さんが、なぜかボクをにらみつけている。もしかして今、ボクってかなりピンチ?」
西園寺「小泉おねぇ、狛枝おにぃに対して言いたいことがあるなら言っておけば—?」
西園寺「あっ。狛枝おにぃを処刑するなら、わたしも参加させてよね—!!」
狛枝「処刑!?ボク、なんか悪いことしちゃった!?」
西園寺「いわゆるセクハラだね!!ほら、やっちゃえ小泉おねぇ!!」
狛枝「セクハラ?あはは…。よくわからないけど、お手柔らかに頼むよ小泉さん。」
狛枝「パンチの1発や2発くらいなら、ボクは全然平気だからさ。」
小泉「…」
-
15 : 2014/12/22(月) 23:48:01.37 -
小泉「え、えっと。狛枝は、アタシの…」
狛枝「え?」
小泉「その、楽しみにしてくれるの?」
狛枝「何を?」
小泉「何をって…まさか、アタシに言わせるつもり!?」
狛枝「だから、何の話さ?」
小泉「…サイッテ—。そんな男だとは思わなかったわ。ふんっ。もう知らない。」
狛枝「意味が分かんないよ…。」
西園寺「小泉おねぇの反応も、ぶりっ子みたいでつまんな—い。いかにも、恋する乙女です!!なんて言いたげな感じで!!」
西園寺「もっとこう、血なまぐさい展開を期待してたのにさ!!」
小泉「日寄子ちゃんは日寄子ちゃんで、何を言ってるのよ!?」
-
16 : 2014/12/22(月) 23:48:47.69 -
小泉「と、とにかく、この話は終わり!!狛枝も、さっさとどっか行って!!」
狛枝「わかったよ。ボクみたいなクズは、そもそも小泉さんの視界に入る事さえおこがましかったよね…。」
小泉「もう、そうやって自分を卑下するのもやめてよ…。」
小泉「アタシにとってはアンタも、他の皆と変わらない仲間なんだからね。」
狛枝「へぇ。人を殺そうとしたり、その罪を被せて監禁してきたりした人間を、小泉さんは人並みに扱ってくれるんだ。」
狛枝「やっぱり小泉さんは優しいや。さすがは“超高校級のおか」
小泉「久々だけどムカつくわねそのネタ!!」
-
17 : 2014/12/22(月) 23:49:46.24 -
小泉「アタシは別に、アンタを責めるつもりはないよ。1人も犠牲が出ていない、今のところはね。」
小泉「だからこれからも、アタシはアンタと交流してみるつもりよ。」
小泉「アンタの考え方とか、価値観を…もっとたくさん聞いてみて、なんとか理解してあげるつもり。」
小泉「その上で、狛枝に教えてあげるのよ。16人の仲間がそろっている喜びをね。」
狛枝「…ふうん。仲間が誰も欠けないことが、小泉さんにとっての希望…ってことかな?」
小泉「少し違うかな。それを、アンタに知ってもらう事こそがアタシの希望よ。」
狛枝「そう…。じゃあ、ボクにも教えてほしいものだね。」
狛枝「そんな生ぬるい考え方で、“絶対的な希望”を本当に生み出せるのかをね。」
小泉「…」
-
18 : 2014/12/22(月) 23:50:49.45 -
…
西園寺「何アイツ。言ってることがさっぱり分かんないよ。小泉おねぇにはわかってんの?」
小泉「う~ん。正直言って、半分も理解できてるかどうかわかんないよ。」
小泉「長い間、狛枝と接してきたはずなのに…。」
西園寺「え?」
小泉「でも…理解できないからって、放っておいちゃダメだよ。ちゃんと、向き合わなきゃ。」
小泉「じゃないとまた、事件が起こったりするかもしれないからね。」
西園寺「…ほんっと。小泉おねぇはお人好しだね。ま…そこが小泉おねぇの良い所なんだけど。」
-
19 : 2014/12/22(月) 23:51:41.97 -
西園寺「とりあえずわたしはもう、水着を選び終わっちゃったけど。」
小泉「えぇっ!?いつの間に!?ってことは、未だに選べてないのってアタシだけ!?」
西園寺「ちなみにわたしのは、これだよ—!!」
小泉「えっ…。なにこれ。これっていわゆる、スク—ル水…」
西園寺「これしかわたしのサイズに合う水着がなかったんだよ!!ここの品ぞろえが悪いせいで!!」
小泉「しかもこれ、名前のところに『ひよこ』って書いてある…。誰の仕業よ?」
西園寺「小泉おねぇもわたしと同じ水着を着る?お揃いだよ—!!」
小泉「あはは…。アタシは、ちょっと遠慮するよ。」
-
20 : 2014/12/22(月) 23:53:08.97 -
小泉「でも、日寄子ちゃんも選び終えちゃったのか…。じゃあ日寄子ちゃん、先に帰ってていいよ?」
西園寺「え—。小泉おねぇが選ぶまで待ってるよ—。」
小泉「アタシ、まだまだ時間がかかりそう。1つ1つの水着を入念に吟味しないと。」
西園寺「小泉おねぇ…。澪田おねぇよりも張り切ってない?何が小泉おねぇをそうさせるの?」
西園寺「もしかして、男が原因…?」
小泉「お、男!?ち、違うって!!なんでそっちに話を持ってくのよ!!そもそも男子は参加しないんだって!!」
西園寺「じゃあ、そこまで張り切る必要もないじゃ—ん!!!!」
小泉「だ、だって…。アイツが、アタシの…その、水着姿を、見たいって…」
小泉「あ、違うの!!期待に応えたいとか、ほめて欲しいとか、そういうわけじゃないの!!」
西園寺「やっぱり男じゃねぇか…。」
-
21 : 2014/12/22(月) 23:54:38.31 -
西園寺「とにかく、小泉おねぇが選び終わるまでわたしは待ってるよ。」
西園寺「わたしには、小泉おねぇが必要なんだって。着付けしてくれるの、小泉おねぇだけなんだから。」
小泉「え…?どうして着付けが必要なの?」
西園寺「決まってんじゃん。服の下に水着を着るためだよ—。」
小泉「服の下に…?唯吹ちゃんと同じように?どうして?」
西園寺「だってコテ—ジで水着に着替えたら、ダイナ—に行くまで水着姿をさらさないといけないんだよ!?」
西園寺「スク—ル水着を、男たちの面前で!!」
小泉「た、確かに…。」
-
22 : 2014/12/22(月) 23:55:46.38 -
小泉「あ。じゃあ、ビ—チハウスで水着に着替えたら?それなら着付けも必要ないし、男子共に見られる心配もないよ。」
西園寺「あ、それは名案だね!!確かこの前モノミが、ビ—チハウスでなら着替えてもいいとか言ってたし!!」
小泉「なら決まりね。アタシのせいで日寄子ちゃんを退屈させちゃったら悪いから。」
小泉「アタシはここで、時間をかけてじっくりと検討を続けるよ。」
小泉「だから日寄子ちゃん。水泳大会まで一時解散だね。」
西園寺「え—。わたし1人でダイナ—に集まるのは嫌だよ。小泉おねぇ以外の女共の黄色い声なんて聴きたくない!!」
小泉「じゃあ、集合時間の30分前にはアタシもビ—チハウスに行くからさ。それでいいかな?」
西園寺「わかったぁ!!じゃあ、小泉おねぇも頑張ってね!!健闘を祈るよ—!!」
小泉「はは…。」
-
23 : 2014/12/22(月) 23:57:14.23 -
…
『受け身になっていては、相手の心はつかめない。』
『意中の相手を手中に収めたいのなら…ただ、攻めあるのみだ。』
小泉「攻め…攻め…攻めと言ってもこんなのを着てたら、ちょっと動くだけで水着がずれちゃうじゃない!!」
小泉「こんな派手な水着を着て行って、皆にどう弁解すればいいのよ…。」
小泉「でも…あの名言を参考にすると、これくらいの危険を冒さないといけないのかな。」
小泉「その先を追及してこそ、栄光を得られるのかも…。」
小泉「…」
『こ、小泉さん。大胆だね…。でも…似合ってる。今の小泉さんから、ボクは希望を見出せそうだよ。』
小泉「えへへ。そんなにほめないでよ。恥ずかしいって…。」
小泉「いやいや待て。そんな肯定的に相手がとらえてくれるかどうか。」
小泉「ひょっとしたら、過激すぎて幻滅されちゃうかも…。」
『えっ…。あはは。なんてハレンチな姿なんだ。寄らないでくれるかな。視界に入れたくないんだ。』
小泉「やめて!!そんなこと言われたらアタシ、もう2度と立ち直れない!!」
小泉「う~ん。やっぱりアタシには、控えめのコレなんかが似合うのかな…?」
『はぁ。今の小泉さんには、女性としての魅力が一切感じられないよ。そんな姿を希望とは呼べないね。』
小泉「何よ!!せっかくアタシが頑張って選んだんだから、少しはほめなさいよ!!」
小泉「う~ん。う~ん。う~~~~ん……」
-
24 : 2014/12/22(月) 23:58:07.41 -
2時30分前
—2の島—
小泉「やっぱりアタシには、マイクロビキニなんて似合わないって。」
小泉「この地味な水着あたりがアタシにはお似合いよ。」
そう言ってアタシは、手に持っている地味な水着をなんとなしに眺める。
小泉「全く、今までのアタシってなんであんなにバカだったの?」
小泉「そもそも、水泳大会に男子は誘ってないんだってば。」
小泉「どんな水着を着ても、アイツがアタシの水着姿を見ることはないよ。たぶん。」
小泉「だからアタシが、あんな恥ずかしい水着を着るわけが…。」
小泉「…」
-
25 : 2014/12/22(月) 23:59:19.24 -
小泉(普段着の下に、例の水着を着て来ちゃった…。)
小泉(このままダイナ—に行けば、アタシは…)
小泉(…)
小泉(いやいやいやいやいや!!やっぱり無理!!やっぱり無理!!着替えよう!!地味な水着に着替え直そう!!)
小泉(全く、何を考えてるんだアタシは。いくらなんでも悪ノリが過ぎるって。)
小泉(確かに前回は九頭龍との件のせいで、水泳大会に参加することすらできなかったけど。)
小泉(ちょっと心がはしゃぎ過ぎてんのよね…。)
小泉(とにかく…早くビ—チハウスに行って、着替えよう。日寄子ちゃんも待っているはずだし。)
そうしてアタシが、ビ—チハウスのドアを開けると…
-
26 : 2014/12/22(月) 23:59:54.12 -
—ビ—チハウス—
「来たな…。」
小泉「…」
小泉「えっ?」
-
27 : 2014/12/23(火) 00:00:39.92 -
今日はここまで。
-
30 : 2014/12/25(木) 14:17:45.51 -
クリスマスプレゼント。真昼ちゃんが攻めすぎたようです。受けの方向に攻めすぎて、恥ずかしくなっているようです。
ツッコミどころはいろいろあると思いますが温かい目で見てね。
需要があれば全身絵も…
http://i.imgur.com/1vbCii9.png
小泉「ど…どどどうかな…?」
西園寺「うわぁ…小泉おねぇ、ホントにそれ着ちゃったの?」
小泉「えっ!?だ、だって、日寄子ちゃんが勧めるから…!!」
澪田「限度というものがあるっしょ…。」
終里「小泉も誰かを接待すんのか?オレも昔はそういう店で働いて…」
ソニア「女子力というよりも女の力ですねこれは!!」
辺古山「ま、負けた…。」
小泉「わ~ん!!恥ずかしい!!早く着替えないと!!こんな姿を男子に見られでもしたら…!!」
左右田「ソニアさ~ん!!オレ達も混ぜて…」
狛枝「あれ、小泉さん。その格好…」
小泉「いやぁああああぁあああああああ!!!!!!」
黒歴史確定
-
37 : 2014/12/27(土) 23:06:06.34 -
小泉「あ、あれ…?」
小泉「な、なんで、アンタ…。」
あまりの驚愕に、うまく舌が回らない。
理解できない物事に対する驚きではない。
むしろ理解できないはずの事象を、なぜか理解できてしまうことに対してアタシは…怯えているのだ。
デジャヴ…?違う、間違いなく1度は体験したことがあるはずだ。
これからアタシに降りかかるであろう災厄に対する、言い知れぬこの恐怖を。
1度は体験したことがあるにも関わらず、もう2度と体験しないだろうと高をくくっていた。
安心しきって、完全に無警戒な状態だった。
だから心の奥底から湧き上がってくるどす黒い感情は、アタシのトラウマをえぐり起こすには十分だった。
-
38 : 2014/12/27(土) 23:07:46.48 -
小泉「く、くず、りゅう…?」
小泉「ど、どうして、どう、し、て…?」
九頭龍「…なんでオレがここにいるか、わからねぇって顔してんな?」
九頭龍「白々しいな…。」
小泉「え…えっと…。えっと…。」
小泉「あっ、そっか。く、九頭龍も、水泳大会の噂を聞きつけて…」
小泉「それで、ここに…」
九頭龍「本気で言ってんのか?」
小泉「ひっ…。」
小泉(九頭龍は、完全にアタシをにらみつけている。アタシがビ—チハウスに入ってから、ずっとだ。)
小泉(じゃあ…九頭龍がここに居る理由は。心当たりなんて、1つしかないけど…!!)
小泉(違う違う!!そんなはずがない!!だって、動機であるゲ—ム機は、豚神が監視しているはず!!)
小泉(だから誰も動機を得ることは出来ない。ましてや、アタシを殺すための動機を九頭龍が得ることなんて…!!)
小泉「な、なんでアンタがここにいるかは知らないけど。ア、アタシ、帰らせてもらうからね…。」
そう言ってアタシは、おそるおそる背中のドアノブに、震える手を伸ばして…
-
39 : 2014/12/27(土) 23:09:20.17 -
九頭龍「逃げるな!!!!」
小泉「っ…!!!?」
九頭龍「逃げたら…殺す。」
小泉「こ…こ、ころ、殺す…?」
小泉「そ、それっても、もしかして…アタシに、言ってるの…?」
九頭龍「他に誰がいるんだ。」
小泉「ううっ…」
小泉(嘘じゃない。ハッタリじゃない。本心のままに九頭龍が発言しているというのは、顔を見ればわかる。)
小泉(つまりアタシが逃げようものなら、本当にアタシを、問答無用で…!!)
小泉(こ、怖いよ…。怖くて、怖くて、頭が、真っ白に…!!)
小泉(ダメだ!!落着けアタシ!!いくら相手が九頭龍でも、いきなりアタシに襲い掛かったりはしないはず!!)
小泉(と、とにかく、相手を下手に刺激しないように…穏便に、冷静に対処しよう!!)
小泉(落ち着いて、客観的に…相手の意図を、引き出していこう。)
小泉(九頭龍が、アタシに会いに来た理由を…)
-
40 : 2014/12/27(土) 23:10:37.28 -
小泉「じゃ、じゃあアンタは、アタシに何か、用があるってこと…?」
小泉「用件は何かな?お、教えてくれないかな…?」
九頭龍「しらばっくれんな!!!!」
小泉「ひゃあっ!!!?」
九頭龍「テメ—にはわかってんだろ…?だからずっと、オレに対してあんな態度をとってたんだろ?」
小泉「そ、そんな大きい声を、出さなくてもいいじゃない。も、もっとマイルドに、話をしようよ。」
小泉「男子が女子を、脅すものじゃないよ…?」
九頭龍「ああ?」
小泉「こ、怖いの。アンタの声が。身振りが。表情が。本当に、怖いの。」
小泉「ア、アンタは、自分が極道だっていう自覚があるの?」
-
41 : 2014/12/27(土) 23:12:07.07 -
九頭龍「…それだよ。それが不自然なんだ。」
小泉「え…?」
九頭龍「第一印象で、オレの容姿を怖がる奴なんてまずいねぇ。むしろなめてかかる奴が大半なんだ。」
九頭龍「西園寺の奴みたいにな。」
小泉「日寄子ちゃん…?そういえば、日寄子ちゃんは…?ここに、いたはずよ…?」
九頭龍「アイツは邪魔だったからな。今はクロ—ゼットで居眠りだ。」
小泉「…!!」
小泉(つまりコイツは、アタシと日寄子ちゃんがビ—チハウスに集合することを知っていて…!!)
小泉(ロケットパンチマ—ケットでの話を、聞かれていたのか!!九頭龍か、ペコちゃんかはわからないけど…。)
九頭龍「それで。怖がる奴がいたとしても、それはオレに対してじゃねぇ。」
九頭龍「オレが背負っている、九頭龍組に対してなんだ。」
九頭龍「だから外の世界から隔離されたこの島じゃあ、オレはただの人間に過ぎない。」
九頭龍「にもかかわらず、テメ—はオレを避ける。テメ—みてぇな気の強い女がだぞ!?」
九頭龍「最初は、そういう奴もいるんだろうって思った。オレも極道だからな。」
-
42 : 2014/12/27(土) 23:13:23.40 -
九頭龍「しかしだ。テメ—がオレに向ける感情を、西園寺は怯えと称していたが…どうも違うんだ。」
小泉「ち、違わないよ。アンタは極道で、アタシは一般人。怖がられて当然でしょ…?」
九頭龍「テメ—は、怯えの中に…オレに対する、明確な敵意を持っているんだ!!」
小泉「て、敵意…?」
九頭龍「いや…そんな生ぬるいものじゃねぇ。」
九頭龍「殺意にも近い意思だ。テメ—はどうやら、オレに死んでほしいと切に願っている。」
九頭龍「そういう負の感情を、テメ—は絶えずオレにぶつけてきてるんだよ!!」
九頭龍「テメ—がそれに気づいてるかは知らねぇがな!!」
小泉「うっ…!!」
-
43 : 2014/12/27(土) 23:14:39.22 -
九頭龍「テメ—がオレに対してそういう態度をとる理由は1つしかねぇ。」
九頭龍「テメ—にとって、オレが初対面じゃないからだ。」
小泉「!!」
九頭龍「お前がオレを敵視している理由は…」
九頭龍「オレが、サトウって奴を殺したからなのか?」
小泉「えっ…!?」
九頭龍「親友を殺した人間がオレだからこそお前は、オレを毛嫌いしていたって事なのか?」
九頭龍「そうだとしたら…すべてのつじつまがあっちまうじゃねぇか!!」
九頭龍「この写真が、真実だってことのな!!」
そう吐き捨てた九頭龍が、アタシに見せつけて来たのは…
-
44 : 2014/12/27(土) 23:15:55.45 -
小泉「えっ…!?」
小泉(これは、間違いなく…トワイライトシンドロ—ム殺人事件の特典だ。)
小泉(なんで…なんで?なんで?)
九頭龍「顔の色が変わったな…。やっぱりテメ—は、知ってんだな!?」
九頭龍「その写真の真相を!!」
小泉「ちょ、ちょっと待ってよ!!ア、アンタ、どこでこの写真を…!!」
九頭龍「んなこたぁどうだっていいだろ!!!?」
小泉「キャアッ!!!!」
九頭龍「答えろ!!テメ—はこの写真の真相を知ってんのかよ!!!?」
九頭龍「ア、アイツは、本当に死んだのかよっ!!?」
九頭龍「お前達が、オレの妹を殺したのかよっ!!!?」
九頭龍「答えやがれ!!!!返答次第じゃあ、容赦しねぇぞ!!!!」
小泉「はぁっはぁっはぁっはぁっ…!!!!」
-
45 : 2014/12/27(土) 23:17:16.63 -
小泉(どうする…どうする、どうする…!!!?)
小泉(な、なんでコイツ、こんな時に限って妙に鋭いの…?)
小泉(この状況で、知らないなんて言えるはずがない。コイツの推理は、ほとんど正しいからだ。)
小泉(下手に嘘をついてしまえば、九頭龍の気分を逆撫でしてしまうだろう。)
小泉(ただでさえ気がたっている状態のコイツを、さらに怒らせてしまえば…!!)
九頭龍「…だんまりか?答える気がね—のなら、無理やりにでも吐かせてやろうか…!!」
小泉「あっ…。ま、待って…。」
小泉「か、考える時間…。頭を整理する時間を、ちょうだい…。」
小泉「あわてて変なこと言って、気を悪くさせちゃ、いけないでしょ…?」
九頭龍「…」
小泉「はっ、はっ、はっ、はっ…」
-
46 : 2014/12/27(土) 23:19:15.19 -
たとえ嘘をつかなくても…この先の言葉を一語一句でも誤れば、アタシは殺される。
アタシにはわかる。コイツの精神状態は、人殺しの1歩手前だ。
滝のように溢れ出す殺意を、ボロ板みたいな脆い理性で危うくもせき止めて、なんとか自我を保っているような状態だ。
その理性は、アタシを殺したくないっていう理性じゃない。
『アタシを殺せば真相を暴けない』っていうのが、今コイツの狂気を止めている唯一の理性だ。
つまりコイツは…アタシを殺すのには、一切のためらいを持たないってことだ。
だから…少しでもマイナスの刺激をコイツに与えてしまったら…!!
記憶を持たないアタシだったら、恐らくそれに気付けなかった。
コイツの状態に気付かずに、無闇に反論しただろう。
その反論が正しいか正しくないかは抜きにして、アイツはそれに憤慨して…!!
そうだ。今のアタシは、どちらが正しいかを議論したいわけじゃないでしょ?
最優先事項は…コイツをなだめて、アタシに対する殺意を何とか抑えてもらうこと。
九頭龍とは違ってアタシは、記憶を持っているんだ。いわば、アドバンテ—ジだ。
アタシが、1歩大人になってあげないといけないんだ…!!
だから、アタシは…
-
47 : 2014/12/27(土) 23:20:46.34 -
小泉「事実、よ。」
九頭龍「ああっ!?」
小泉「だから…事実なの。その、写真は。」
小泉「アタシが九頭龍の妹にいじめられていたのも。」
小泉「E子ちゃんがアタシのために、妹さんを殺したのも。」
小泉「その証拠を、アタシが処分したのも。」
小泉「E子ちゃんが、殺されたのも…。」
小泉「全部、事実よ。」
九頭龍「な、にぃ…!!!!」
小泉「…!!」
真相を暴露したアタシは、九頭龍が怒りを爆発させる前に…
-
48 : 2014/12/27(土) 23:22:05.09 -
ひざまずいて、頭を下げた。
九頭龍「なっ…。」
小泉「本当に謝意を表する意思のある人間は、頭が高くない。確か九頭龍の世界では、そうだったはずよね?」
小泉「だ、だから…」
小泉「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい…。」
小泉「こ、こんな半端な詫びで、赦されるとは思えないけど…」
小泉「せ、せめてアタシが九頭龍に対して、償いたいと思っていることは、知っていてほしい…。」
九頭龍「…」
い、言えた…!!アタシ、九頭龍に対して、謝ることができた…!!
こ、これなら九頭龍だって…!!
-
49 : 2014/12/27(土) 23:22:45.51 -
九頭龍「…」
九頭龍「なんで…」
九頭龍「なんで、そんなことを言っちまうんだよぉ…。」
小泉「…」
小泉「え?」
-
50 : 2014/12/27(土) 23:23:49.09 -
今日はここまで。
足は見えてないような気が…。手は確かに細…長いような気がしますな。
-
52 : 2014/12/28(日) 02:08:27.79 -
手足を微妙に修正。そして全身。うまく修正できてんのか?実は改悪されてんじゃ?他にもなんか違和感が…?
とにかく、なんでも許せる人は見てね。
http://i.imgur.com/V8YtDqm.png
-
56 : 2015/01/02(金) 00:12:30.41 -
1日遅いような気がするけど。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
最近全然更新できてないのはリアルが忙しいからです。
春くらいになれば少しくらいはぺ—スが上がると思いますが、1週目ほどのスピ—ドは無理だと思います。
-
57 : 2015/01/02(金) 00:13:12.09 -
九頭龍「なんでそんなことを言っちまうんだ、お前は…。」
小泉「九頭龍?ど、どうしたの?」
小泉「もしかして、泣いてるの…?」
小泉「ア、アタシ、何か変な事を言っちゃった?」
小泉「何か、九頭龍の気に障ることを言っちゃったかな?」
小泉「そうだとしたら、謝る。妹さんの件も含めて、重ねてお詫びしておくから…。」
九頭龍「謝る…?」
九頭龍「ふざけるなよ…。」
小泉「え?」
小泉「え…?えっ?」
小泉「ふ、ふざけてなんか、ない。ホ、ホントに、誠心誠意、謝ってるの。心の底から、反省してる。」
小泉「ほ、ほら、だってアタシ…ど、土下座してまで、謝って…」
-
58 : 2015/01/02(金) 00:15:37.34 -
九頭龍「オレはお前に、謝ってほしかったわけじゃねぇ!!!!」
小泉「えっ…!?」
九頭龍「あんな写真なんて偽物だって、ただ確認して欲しかっただけなんだ!!」
九頭龍「トワイライトシンドロ—ム殺人事件なんてねつ造だって、言って欲しかったんだ!!」
九頭龍「アイツが殺されたなんて嘘で…」
九頭龍「今もアイツが、オレの帰りを笑顔で待ってるって…証明して欲しかったんだ…。」
小泉「そ、そんなこと、言われても…」
九頭龍「なのに…なのに…お前にそんなことを言われたら…。」
九頭龍「謝られたりなんか、したら…」
九頭龍「嫌でも、認めなくちゃいけねぇじゃねぇか…。」
九頭龍「アイツが、死んだって…。」
九頭龍「もう2度と、逢えないって。」
九頭龍「声を、聴けないって。」
九頭龍「笑顔を、見れないって…。」
九頭龍「チクショウ、チクショウ…」
小泉「く、くず、りゅう…?」
九頭龍は放心したかのようにだらん、と頭を垂れる。
全身から力が抜け、上半身のバランスを保てなくなった体は、ヨロッと不気味な軌跡を描く。
不安定な足取りで、今にも倒れこみそうな九頭龍は、その状態のまましばらく何の反応も示さなかった。
-
59 : 2015/01/02(金) 00:16:54.09 -
九頭龍「…」
小泉「はぁ…。はぁ…。」
どれくらいの時間が経っただろうか。
アタシにはよくわからない。
1分にも満たない時間か、何時間にも及ぶ時間か。
とにかくアタシは待った。永遠とも思える長い時間。
次に九頭龍が動く時を、固唾を呑んで見守った。
そうすることが今のところ最善策だと、本能が伝えている。
小泉(お願い…どうか九頭龍、アタシを見逃して…。)
小泉(そうだ。そもそも九頭龍は前回、身を挺してアタシを守ってくれたじゃない。)
小泉(アタシが罵詈雑言を並べたてても冷静に、ペコちゃんを止めてくれたじゃない。)
小泉(だからきっと九頭龍は、話せばわかってくれる奴だとアタシは…)
-
60 : 2015/01/02(金) 00:17:43.71 -
小泉「ひっ!!!」
突如九頭龍の体がブルッと動いた。
そして、完全に生気を失ったかのような顔をヌッとこちらへ向ける。
さっきまでの不安定な身動きを一変させて、九頭龍は一貫して、地べたに這いつくばるアタシを見下している。
その眼差しがアタシを射止めて、逃がしてくれない。
あの時の眼だ。
あの時アタシに、トラウマを植え付けた眼だ。
あの時の…ゴミ虫を見ているような眼…!!!!
それは…アタシの淡い希望をぞんざいにあしらうには、あまりにも十分すぎた。
-
61 : 2015/01/02(金) 00:19:43.66 -
九頭龍「なぁ、小泉…。」
小泉「あ…あ…。」
九頭龍「なんでお前、生きてるんだ?」
小泉「ひぃっ…!!!?」
九頭龍「オレのかわいい妹が、お前なんかのせいで、死んじまったってのによ…。」
小泉「ま、待ってよ。だからアタシ、必死に謝って…」
九頭龍「謝ったら、アイツは帰ってくるのかよ?」
小泉「…!!」
今までのアタシは、なんてバカだったんだ。
コイツが謝って赦してくれる奴なら…
アタシは絶望のカリスマに堕ちてなんかないし、アタシが九頭龍を避ける必要もなかったじゃないか。
復讐者が相手に望むのは、償いなんかじゃない。
ただ、相手が凄惨に死ぬこと。復讐者の頭を占めるのは、それだけだ。
そんなこと、わかりきっていたじゃないか。
アタシはどうしてこんなに、楽観的だったの?
-
62 : 2015/01/02(金) 00:21:09.70 -
九頭龍「アイツが死んだ原因を作った奴が目の前に居るのなら、オレは…」
小泉「ま、待って。アンタの言ってることは、少し違うと思うよ?」
九頭龍「…あ?」
小泉「ア、アタシが謝って、アンタが赦してくれるのなら。言わないでおこうって思ってたけど。」
小泉「アンタがアタシを一方的に責めるのなら、ア、アタシにも言わせて欲しい。」
九頭龍「今度は開き直って弁解か?次から次へと言葉が出る、口だけは達者な奴だ。」
小泉「ち、違う。開き直ってるわけじゃ、ないの。」
小泉「で、でも…アタシにだって、言い分くらい、あってもいいでしょ…?」
九頭龍「…」
-
63 : 2015/01/02(金) 00:22:10.68 -
小泉「ア、アンタは、アタシが妹ちゃんを死なせたとか言ってるけど。」
小泉「アタシはE子ちゃんの犯行を隠ぺいしただけだから、妹ちゃんの死には直接関与してないのよ?」
九頭龍「…何が言いたいんだよ?」
小泉「ア、アタシにも非があるのは認めるよ。」
小泉「事件を隠ぺいした共犯者としての罪は、認める。そこは責められても文句は言わない。」
小泉「でも、妹ちゃんの死の原因を作ったのはアタシ…っていうのは、飛躍しすぎじゃない?」
小泉「だ、だって、アタシの行動と妹ちゃんの死は、関係してないんだから。」
九頭龍「何を言ってるんだ、テメ—。」
小泉「え?だ、だから…」
-
64 : 2015/01/02(金) 00:24:10.61 -
九頭龍「どこからそんな話が出て来たんだよ。」
九頭龍「人殺しの共犯者とか、そんなことに誰が論点を置いたんだ。」
小泉「は…?」
九頭龍「そんなややこしい所じゃねぇ。もっと根本的な問題だ。」
九頭龍「サトウって奴がオレの妹を殺した理由は、テメ—を守るためだったんだろ?」
九頭龍「なら、テメ—が原因じゃねぇか。」
小泉「な、なに、言ってるの?確かにそれは原因かもしれないけど、そこにアタシの非はないでしょ…?」
小泉「そもそもアタシは妹ちゃんにいじめられていたんだから。」
小泉「その部分はむしろ、アンタが復讐されてもおかしくないのよ?」
小泉「そこだけじゃない。アタシは、親友を殺されてるのよ?」
小泉「アンタにだってわかってるでしょ?九頭龍が妹ちゃんを想うように、アタシだってE子ちゃんを想っていたって。」
小泉「アタシが九頭龍を避けてる原因を九頭龍は、九頭龍がE子ちゃんを殺したからだと思っていたわけだし。」
小泉「だ、だから、E子ちゃんを殺されたアタシは、本来ならアンタと同様に憤慨していてもおかしくないの。」
小泉「それでもアタシは、九頭龍に償いたいと思ってる。」
-
65 : 2015/01/02(金) 00:26:15.18 -
小泉「だ、だから…」
九頭龍「…」
小泉「そ、その眼を、やめてよ…!!!!」
小泉「ホ、ホントに、怖いんだってば…!!!!」
九頭龍「…………」
アタシは、勘違いしていたの?
アタシはずっと、思い違いをしていたのか?
確かにそうだ。
記憶を思い返してみれば、九頭龍がアタシを、共犯者の件で責めたことは1度もない。
九頭龍はもっと、本質的な部分について責めているんだ。
妹ちゃんの死の原因を作ったのがアタシだから、アタシを責めているんだ。
つまり、アタシの罪を数えるのなら…それは、『アタシの存在そのもの』ということになる。
アタシはそれを理解していなかった。
アタシが償いたいと思っている部分と、九頭龍がアタシを責めている部分が、
見事にすれ違っていることに全然気づいていなかった。
だから…いくらアタシが謝っても、赦してもらえるわけがないじゃないか。
アイツにとっては、何に関して謝っているのかさえ理解できないのだから。
-
66 : 2015/01/02(金) 00:27:34.17 -
九頭龍「正直言って、オレの行動が正しいかどうかなんて、大した問題じゃねぇんだよ。」
小泉「えっ…。」
九頭龍「そもそも復讐に正当性なんて、あるわけがねぇ。んなことはわかってる。」
小泉「じゃ、じゃあもうこんな事、やめ…」
九頭龍「だけど、どうして…!!」
九頭龍「こんな奴のせいで、あんないい女が無理やり命を終わらせられないといけねぇんだよ…!!!!」
九頭龍「こんなのおかしいだろ。理不尽だ。」
九頭龍「天国に居るアイツはきっと、今も悔しがっている。」
九頭龍「自分を死に至らしめた憎き相手が、今ものうのうと生きて、堂々と息を吸ってるんだからな。」
小泉「そ、そんな言い方、ないよ。ア、アタシはずっと、妹ちゃんに償いたくて…」
-
67 : 2015/01/02(金) 00:29:33.24 -
九頭龍「今のお前には、この世界がどう映る?」
九頭龍「極道者は、死んでも悼まれない。ざまぁみやがれと後ろ指をさされるのが関の山だ。」
九頭龍「お前がいなくなっても、世界は平気な顔をして回ってる。誰も、お前の死を弔ってくれねぇんだぞ?」
九頭龍「辛いだろう…?寂しいだろう…?虚しいだろう…?」
小泉「く、九頭龍…お、落ち着いてよ!!な、なに言ってんのか、さっぱりわかんないよ!?」
九頭龍「だからせめてオレくらいは、哀しんでやらないとダメだろ…?」
九頭龍「お前の死にオレが怒り狂ってやらないと、誰がお前の無念を晴らしてやれるんだ?」
九頭龍「そうだ。お前が望むことなら、オレにはなんでもわかってやれる。」
九頭龍「罪を、清算して欲しいよな?コイツを、裁いて欲しいよな?」
九頭龍「小泉を、殺してほしいよなぁ…!!!!」
小泉「えっ。あ…」
小泉「ダ、ダメ…そ、それは、ダメだって…」
-
68 : 2015/01/02(金) 00:31:51.24 -
小泉「がっ!!?」
突然、九頭龍の両手がアタシの首に絡まる。
そして九頭龍の手からアタシの首に、尋常じゃない力が加えられる。
あわてて抵抗しようとするけど、女の力じゃあ勝てっこない。
アタシはそのまま首を絞め続けられて、意識が飛びそうになる。
目の前にあるはずの九頭龍の顔も、今はぼやけて全く把握できない。
-
69 : 2015/01/02(金) 00:32:29.93 -
小泉「あ…!!あぁ…!!!!」
九頭龍「はぁっ、はぁっ…。」
ギチ…ギチ…
聞いたことのない様な生々しい音が聞こえる。
その音も、だんだん遠くなっている。
何とか九頭龍の手を振りほどくために、自分の手を首に向かわすけど…
どれだけ頑張っても、九頭龍の手首に手を添える程度で限界だった。
-
70 : 2015/01/02(金) 00:33:03.01 -
九頭龍「待ってろよ…。今、兄貴が…兄貴が、仇を取ってやるからな!!!!」
小泉「あ、あが…あが……」
息が、できない。
く、苦しい…。
体に力が、入らない…
やばい。
コレ、ホントに、まずいって…
ほ、本当に、死…
-
71 : 2015/01/02(金) 00:33:37.69 -
「お待ちください坊ちゃん!!!!」
-
72 : 2015/01/02(金) 00:34:14.06 -
今日はここまで。
-
79 : 2015/01/05(月) 23:37:14.89 -
どこからか、誰かの声が響いたらしい。
それによって首の締め付けが緩み、遠くなっていた世界が戻ってくる。
小泉「がっ…ケホッ、ゲホッ…はぁ、はぁ、ぜぇ…」
一息一息、空気をかみしめる。
生まれてこの方、こんなにも酸素がありがたかったのは初めてだろう。
ただ、現状はあまり良くない。
九頭龍は一旦手を緩めただけで、依然としてアタシの首を捕まえている。
その気になれば、さっきの続きを開始するのは造作もないだろう。
アタシの命がコイツに握られているという事実に変わりはないのだ。
相手が油断した隙を狙う手もあったけど。
さっきまで呼吸をしていなかった体は思うように動かなくて、とにかく大気を欲している。
-
80 : 2015/01/05(月) 23:38:53.56 -
小泉「はぁっ、はぁっ、はぁっ、うっ…」
小泉「は、はぁっ、はぁっ、ひゅう、ひゅう…」
九頭龍「…ああ、いたのかペコ。」
辺古山「…」
小泉「ペコ…ちゃん…。」
もしかしてペコちゃんは、アタシを助けに来てくれた…?
と思ったのは一瞬だった。
なぜなら、ペコちゃんの右手には金属バットが握られているからだ。
残酷に研ぎ澄まされた、狂気的で無機質な瞳。
ペコちゃんの意図は、アタシにはなんとなくわかる。
釣ったばかりの鯛をそのまま食べようとした九頭龍に、おいしい食べ方を教えに来たのか。
まな板の上で捌かれるのを待つしかないアタシは、ただ怯えるだけだった。
-
81 : 2015/01/05(月) 23:40:40.95 -
辺古山「いけません、坊ちゃん。今貴方がここで彼女を殺しては。」
辺古山「わかっているのですか、坊ちゃん。ここで人を殺した人間は…」
九頭龍「ああ、そうだな。学級裁判って奴で、皆を欺かなきゃあ処刑されちまう。」
九頭龍「だから生き延びたかったら、それなりのトリックを考えなきゃいけない。」
九頭龍「バットで殺すっていう手もあるが、どうやらそれは復讐としては不適切らしい。」
九頭龍「アイツは、首を絞められた後に殺されたらしいからな。」
九頭龍「アイツと同じ苦痛を、コイツにも与えて殺してやる。」
九頭龍「で、コイツの首に残っちまう手の跡…。」
九頭龍「それが動かぬ証拠になる。オレが小泉を殺したっていうな。」
九頭龍「だからオレがコイツを殺したら、間違いなくオレも死ぬ。」
九頭龍「だが、それでいい。復讐の代償だ。」
九頭龍「それにオレは外の世界で、サトウっていう人間を殺してるみて—だからな。」
九頭龍「裏の世界の人間がカタギの人間を殺すなんて、言語道断だ。こんな奴極道失格だ。」
九頭龍「生きようが死のうが、どちらにせよオレはもう極道としては生きていけね—んだよ。」
九頭龍「だからせめて最期くらい、オレは…人の兄として、一生を終えてぇんだよ。」
九頭龍「テメ—にとっても好都合だろ?親友を殺した相手を道連れにできるんだからな。」
九頭龍「“超高校級の極道”と一緒に地獄へ堕ちれるんだ。殺されて、テメ—も本望だろう。」
小泉「ア、アタシはそんな事望んでない。アンタに復讐したいとか、ましてや殺されたいなんてあるわけない。」
小泉「だ、だから、もっと別の方法を考えようよ。」
小泉「お、落ち着いて話し合えばきっと、皆が笑って生き延びられる方法が…」
-
82 : 2015/01/05(月) 23:42:19.03 -
辺古山「ですが坊ちゃん、それでは…」
九頭龍「ああ、アレか?」
九頭龍「眠らせた西園寺にオレの罪を被せるって計画のことか?」
九頭龍「オレにしちゃあ、良く考えたトリックだったなぁ。」
小泉(えっ…?)
小泉(今回の殺人を計画したのは、九頭龍なの?)
小泉(おかしい…前回殺人を計画したのは、ペコちゃんだったはずだ。)
小泉(手紙を偽装してアタシと九頭龍をあわせたり、アタシに脅迫状を出したのもペコちゃんだったよね?)
小泉(なのに何で今回は、九頭龍が…?)
小泉(いや、おかしいのはそこだけじゃない。前回九頭龍は、ここまで話のできない奴じゃなかった。)
小泉(むしろ、正気を失ったアタシや暴走したペコちゃんを止める立場だったはず。)
小泉(な、なんでアタシの記憶通りにいかないの…?)
-
83 : 2015/01/05(月) 23:43:25.52 -
九頭龍「あの計画はもうナシだ。オレの目的はそもそも生き延びることじゃねぇ。」
九頭龍「生き延びたところで…アイツとはもう2度と、逢えないんだからな。」
九頭龍「それに、オレが生き延びるということは、他の連中を犠牲にするって意味だ。」
九頭龍「オレらの勝手な都合で、カタギのあいつらを巻き込むなんて気が引けるだろ?」
九頭龍「特に西園寺…あの計画で罪を被せられるアイツには、言葉にできないほどの苦痛を与えてしまう。」
九頭龍「オレはそんなことを望んじゃいねぇ。無闇に誰かを傷つけてどうする?」
九頭龍「オレの標的は最初っからただ1人だったんだよ。」
九頭龍「オレの狙いは、目の前にいるコイツを殺すこと…ただ、それだけだ。」
小泉「ひぃいいっ、ひぃいいい…!!!!」
九頭龍「ペコ、西園寺によろしく言っておいてくれ。迷惑かけて悪かったってな。」
九頭龍「西園寺から親友を奪うことになっちまうが、オレは早々に消え失せるから、何とか許してくれ…ってな。」
辺古山「…」
-
84 : 2015/01/05(月) 23:46:36.18 -
九頭龍「もういいだろ、ペコ?お前は下がっていろ。」
九頭龍「今からオレが、小泉を殺すんだからよ…。」
小泉「ま、待って、やめて…。お願い、殺さないで…」
小泉「いや、嫌、死にたくない…!!!!」
九頭龍「死にたくない、だと…?」
九頭龍「テメ—、どの口がそんな妄言を抜かすんだゴラァ!!!!」
小泉「ひぃっ!!!!」
九頭龍「お前のせいで死んだアイツだってそうだったに決まってる…。」
九頭龍「アイツだって間違いなくそう思ってた。殺される間際にも、死にたくないって懇願してたはずなんだ。」
九頭龍「なのにアイツは、殺されたじゃないかっ!!!!」
九頭龍「アイツがする命乞いにお前達は、耳も傾けなかったんだろ!!?」
九頭龍「それかお前達は、助けを求める余裕すらアイツに与えず殺したんじゃねぇのか!!!?」
小泉「違う、違う、殺したのは、アタシじゃないよぉ…。」
九頭龍「お前達はアイツを殺したのに、どうしてオレが殺しを思いとどまらなきゃいけねぇんだ…。」
九頭龍「ここでお前を赦しちまったら、殺されたアイツはオレを許してくれねぇ。」
九頭龍「どうして仇を討ってくれないんだって、恨み言を言われるに決まってる。」
九頭龍「だからテメ—を殺さないと、天国にいるアイツに顔向けできねぇだろ…?」
九頭龍「なのにテメ—を殺さねぇ道理があんのか!!?あぁ!!!?言ってみろ!!!!」
小泉「ひぃ、ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
小泉「赦して、赦して、赦してぇ…」
-
85 : 2015/01/05(月) 23:49:15.73 -
辺古山「いけません、坊ちゃん。貴方はこんなところで死んでいい人間ではありません。」
辺古山「ましてやそのようなドブネズミと道連れなど、あってはならない。」
小泉「ド、ドブネズミ?ア、アタシが…?」
辺古山「坊ちゃんが死んでしまえば、貴方の所有物である私は、存在価値を失ってしまう。」
辺古山「貴方の死は、私にとっては世界の崩壊と等しいのです。」
九頭龍「ちっ。テメ—、まだそんなこと言ってんのかよ。」
九頭龍「道具だの所有物だの、そんな話にオレはもう辟易してんだ。」
九頭龍「コレもいい機会だ。オレとの死別を機に、お前はオレから独立しやがれ。」
九頭龍「オレのことなんかきれいさっぱり忘れて、お前はお前の人生を生きりゃあいいんだよ。」
辺古山「そういうわけにもいきません。私は道具なのですから。」
辺古山「だから私は、道具としての役割をまっとうするだけです。」
小泉「ペコちゃん…?」
そう言ってペコちゃんはアタシの方に近づいて、右手に持ったバットをゆらりと持ち上げる。
-
86 : 2015/01/05(月) 23:50:12.21 -
小泉「ひっ…。」
九頭龍「…おい、ペコ。テメ—、何しようとしてやがる。」
辺古山「坊ちゃん。貴方の死など、妹さんは望んでいらっしゃらない。」
辺古山「貴方が死んでしまえば…妹さんの遺志が、誰からも忘れられてしまうからです。」
九頭龍「何だと…?」
辺古山「貴方が死んでしまえば、誰が妹さんのことを覚えてあげられるのです?」
辺古山「誰が、妹さんの墓参りに行けるのです?」
九頭龍「そ、それは…」
辺古山「坊ちゃん。貴方は生きなくてはなりません。生きて、この島から脱出しないといけません。」
辺古山「だから私がここから出して見せます。そのためにも、坊ちゃんが直接その女を殺してはいけません。」
九頭龍「な、何言ってやがる。そんなこと、どうやって…」
-
87 : 2015/01/05(月) 23:51:34.03 -
辺古山「私に、その女を殺させるのです。」
九頭龍「なっ…!!!!」
小泉「…!!」
小泉(ペコちゃんの目的は、やっぱりそれか…!!)
小泉(九頭龍がアタシを殺せば九頭龍が死んでしまう。だから代わりにアタシを殺そうっていう考えだ。)
小泉(本当は九頭龍をなだめてほしいのに。九頭龍の配下であるペコちゃんは九頭龍と対等に話せない。)
小泉(常に、九頭龍の意思通りに行動をとるんだ。)
小泉(九頭龍がアタシを殺したいと欲するから…ペコちゃんは、アタシを殺しにかかるんだ。)
小泉(だから、ペコちゃんは…アタシの味方に付いてくれることはないんだ。)
小泉(この島でアタシが、たとえどれだけペコちゃんと交流をしても…)
小泉(ペコちゃんが助けに来てくれたなんて、一瞬でも思ってしまったアタシが、バカみたいに思えてしまうな…。)
小泉(いや…そんなことを考えてる場合じゃない。何とか、ペコちゃんを説得しないと。)
-
88 : 2015/01/05(月) 23:52:52.82 -
小泉「ま、待ってよペコちゃん。なんでペコちゃんが、アタシを殺さないといけないの…?」
小泉「ペ、ペコちゃんに、アタシを殺す動機なんてないでしょ?」
小泉「ね?だ、だから冗談でも、そんな物騒なこと、言っちゃダメだよ。ペコちゃんは、女の子なんだから。」
辺古山「私が彼女を殺せば、きっと皆は私が犯人だと思うでしょう。」
辺古山「だから皆は気付けない。小泉真昼を殺した真犯人である九頭龍冬彦に。」
辺古山「真犯人の坊ちゃんにたどり着くことは出来ず、ただ殺人に使われた凶器である私を犯人として指名してしまう。」
辺古山「これなら、私たちの関係に気付いていない皆の眼を欺くことが可能です。」
辺古山「ひいては、坊ちゃんがこの島から脱出できるのです。」
小泉「…?」
小泉(あ、あれ…?ペコちゃん、アタシの話に返事すらしてくれない。)
小泉(アタシの声が、聞こえなかったのかな…?)
-
89 : 2015/01/05(月) 23:54:55.38 -
九頭龍「ま、待て。そんなことをしたら、テメ—は…」
辺古山「坊ちゃん。妹さんのことを思ってください。」
辺古山「私たちがこうしている間にも、妹さんはきっと苦しみ続けています。」
辺古山「貴方が一向に、彼女の死を悼んであげないからです。」
九頭龍「うっ…!!!!」
小泉「ペ、ペコちゃん?ア、アタシの声が聞こえる?」
小泉「聞こえたのなら、せめて返事くらいはしてくれないかな?」
小泉「ほ、ほら、無視されたら、さすがのアタシも傷ついちゃうって…。」
辺古山「…」
小泉「ペ、ペコ、ちゃん…?」
ペコちゃんは、アタシには何の反応も示さない。
まるで壊れた機械のように。
そしてペコちゃんは、感情を持たない物質かのように、事務的に言葉を発する。
辺古山「貴方は一刻も早く、彼女を弔ってあげないといけません。」
辺古山「彼女に、魂の休息を与えてやってください。」
九頭龍「そ、そう、だよな。オレは、生きなくちゃいけねぇ…。」
九頭龍「生きて、アイツを弔ってやんねぇと…」
辺古山「だから坊ちゃんは、ただ一言私に命令するだけでいいのです。」
辺古山「辺古山ペコに『小泉真昼を殺せ』、と。」
九頭龍「…」
-
90 : 2015/01/05(月) 23:57:02.47 -
小泉「ま、待ってよ、ペコちゃん!!九頭龍!!お、お願いだから、アタシの話を聞いてよ!!」
小泉「後生だから…せめてアタシの言い分に、耳を傾けるくらいはしてよぉ…。」
小泉「ア、アタシにだって、生きたいっていう意思くらいはあるんだから…。」
辺古山「…」
ペコちゃんは、アタシの方なんか見てない。
ペコちゃんはさっきからずっと、九頭龍とだけ目を合わせ、九頭龍とだけ会話をしている。
まるでここにいるアタシが、傀儡かなにかと勘違いをしているかのように。
小泉(な、なによ、この2人…。アタシの話、全然聞いてくれてない。)
小泉(アタシの命を、学級裁判を乗り越えるための駒くらいにしか考えてないじゃない。)
小泉(ひ、人の命を、何だと思ってんのよ…!?)
その時アタシは気付いた。いや…思い出したというべきか。
今、アタシの目の前にいる人間が、どういう人間なのかを。
-
91 : 2015/01/05(月) 23:58:02.51 -
相手は、極道なのよ?
常識とか、良心からはかけ離れた存在なのよ?
そんな相手に対して、まともな意見が通用するわけがないじゃないか。
アタシは2人と、対等な立場で話し合おうとしていた。
でも相手にとってはアタシなんて、海に浮かぶ1匹のプランクトンと同じような存在なんだ。
そもそもアタシと同じ土俵で話し合おうなんていう考えすら、思い浮かばないんだ。
だから…アタシの話なんて、真剣に聞いてくれるはずがないじゃないか。
相手は、アタシの命なんて何とも思っていないんだから。
こんな風に自分の命を軽く扱われるのが、絶望のカリスマだったアタシへの報いなのか?
-
92 : 2015/01/05(月) 23:59:19.72 -
九頭龍「…」
辺古山「沈黙は、承認ととります。」
九頭龍「あっ。ま、待て…。」
小泉「っ!?」
アタシはペコちゃんに襟元から体を引っ張られ、九頭龍から引き剥がされた。
そしてアタシは床に投げるようにされて、ドサッと突っ伏すように倒れてしまう。
体のあちこちを擦ったけど、今は痛がっている状況じゃない。
ペコちゃんがアタシを九頭龍のそばから離したのは、九頭龍に“証拠”を付着させないためだ。
返り血という名の証拠。
つまり、これからペコちゃんがとる行動は…!!!!
這ってでも逃げようかと思ったけど、思うように体が動かない。
顔だけで後ろを振り向いて、今にもバットを振り下ろしそうなペコちゃんを見つめた。
小泉「い、いや…。」
小泉「お願い、ペコちゃん…。や、やめて…。」
辺古山「…」
相変わらずペコちゃんには、アタシの命乞いを聞きいれる気配はない。
その様は本当に、一切の感情を持たない殺人兵器だと疑ってしまう位だった。
-
93 : 2015/01/06(火) 00:00:48.21 -
小泉「…おかしいよ。」
小泉「こんなの、おかしいよ…。」
小泉「アタシが、何をしたっていうのよ…。」
小泉「な、なんでアタシが、こんな目に遭わなきゃいけないのよぉ…。」
小泉「妹ちゃんからはいじめられて、その上E子ちゃんを殺させられて…」
小泉「それに関して誰にも怒りをぶつけることができない。」
小泉「それどころか、アタシばっかり一方的に糾弾される。」
小泉「それも、アタシが予想もしていなかった点で。」
小泉「な、なんでアタシが、妹ちゃんにいじめられていたことが理由で殺されないといけないのよ…。」
小泉「こ、こんなの、絶対におかしいよぉ…。」
辺古山「…個人的には、貴様に恨みはない。」
辺古山「だが、坊ちゃんが貴様の死を望んでいるのだ。だから道具である私は、それに従うまでだ。」
九頭龍「ぐっ…。」
-
94 : 2015/01/06(火) 00:01:46.71 -
辺古山「それに、貴様は所詮…」
辺古山「人殺しの共犯者だろう。」
小泉「…!!」
小泉「そ、そんな…。酷いよ…。」
小泉「だからアタシは、あんなに謝ったのに…。償いたいって、思ってたのに…。」
小泉「アタシが思ってきたことは、全部間違いだったの?」
九頭龍「…」
-
95 : 2015/01/06(火) 00:02:32.10 -
小泉「ねぇ、ペコちゃん。」
辺古山「…?」
小泉「アタシさ、今日の水泳大会をすっごい楽しみにしてたんだ。」
小泉「実は今も、服の下に水着を着ててね。しかも、かなり過激なさ。ちょっと冒険しすぎたかなって思う位の。」
辺古山「…」
小泉「それでね。今日は皆ではしゃいで、皆と仲良く過ごそうと思ってたの。もちろん、ペコちゃんとも。」
小泉「ペコちゃんと交流して、どういう人間なのかとか、どういう生き方をしてきたのかとか、知りたかった。」
辺古山「…」
小泉「それでそれで。ペコちゃんは普段あんまり笑わないから、特別にアタシが頑張っちゃおうって計画してたの。」
小泉「ペコちゃんをどうにか笑顔にするためのね。」
小泉「で。その笑顔を、アタシのファインダ—に収めるの。」
小泉「ははっ…。ペコちゃんに、見せてあげたかったな。ペコちゃんの、笑顔…。」
小泉「もう1回アタシ、ペコちゃんと笑いあいたかったなぁ…。」
小泉「ふふ、うふふふふふふ……」
辺古山「…」
辺古山「…私、は」
-
96 : 2015/01/06(火) 00:03:04.50 -
「それは違うぞ!!」
-
97 : 2015/01/06(火) 00:03:35.50 -
今日はここまで。
-
101 : 2015/01/07(水) 00:04:41.82 -
17日目
ピンポンパンポン
映像の中のモノクマ『オマエラ、グッモ—ニン!!朝です、7時になりました!!』
—小泉のコテ—ジ—
小泉「…」
-
102 : 2015/01/07(水) 00:05:22.38 -
あの後、駆け付けてきた日向達によってアタシは保護された。
アタシ、九頭龍、ペコちゃん…。
3人ともそれぞれ、思うことがあったようだが。
何はともあれ、豚神の案でアタシと2人はひとまず距離を置くことになった。
何をするにしても、冷静さを失っていてはいけないから、一晩かけて頭を冷やせ…という事らしい。
小泉「…」
小泉「とりあえず…レストランに、行かなきゃ。」
寝起きのだるい体を起こし、アタシはコテ—ジのドアを開ける。
-
103 : 2015/01/07(水) 00:06:09.29 -
—小泉のコテ—ジ前—
西園寺「小泉おねぇ!!」
小泉「あ、日寄子ちゃん。」
西園寺「あははっ、一緒にレストランに行こう!!」
小泉「…うん、そうだね。」
小泉(日寄子ちゃん…。アタシを気遣ってくれてるのかな?)
小泉(ふふっ、うれしいな。気持ちが沈んでいる時に、支えてくれる人がいるなんて。)
-
104 : 2015/01/07(水) 00:07:27.01 -
—ホテル前—
辺古山「あっ…。」
小泉「…」
西園寺「辺古山…!!」
西園寺「アンタ…どの面さげて、わたしたちの前に…!!」
辺古山「…」
-
105 : 2015/01/07(水) 00:07:56.84 -
小泉「おはよっ、ペコちゃん。」
辺古山「えっ…。」
辺古山「あ、ああ。」
小泉「ペコちゃんも、レストランに行くんだよね?」
小泉「一緒に行く?」
辺古山「…いや、1人で行かせてもらう。」
辺古山「すまない。」
ペコちゃんは、伏し目がちに早足でレストランにかけていった。
-
106 : 2015/01/07(水) 00:09:26.35 -
西園寺「…」
小泉「日寄子ちゃん…。怒ってるの?」
西園寺「…なんの話?」
小泉「ほら…だって日寄子ちゃん、ずっとペコちゃんをにらんでたでしょ?」
小泉「ペコちゃん達が日寄子ちゃんを陥れようとしたことに、怒ってるのかな…って。」
小泉「それも仕方ないか。日寄子ちゃん、ビ—チハウスで無理やり眠らされたんだもんね。」
西園寺「…」
西園寺「わたしのことはいい。それよりも気になるのは、小泉おねぇの方。」
西園寺「…今の小泉おねぇ、ちょっと怖いもん。」
小泉「え?」
西園寺「なんでもない。行こっ、小泉おねぇ。」
小泉「…」
-
107 : 2015/01/07(水) 00:11:05.45 -
—レストラン—
日向「おう、小泉。」
小泉「あ、日向…。昨日は助けてくれてサンキュ—ね。」
日向「ははっ。礼なら左右田に言ってくれ。左右田がいなければ、今頃…」
弐大「そうじゃのう。左右田がワシらを呼んでこなければ、事件が起きとることにすら気付けんかったわい。」
罪木「小泉さんの傷がすり傷程度で済んだのも、奇跡ですよぉ。」
小泉「そうなの?じゃあ左右田は、アタシの命の恩人ってことか…。」
左右田「はは…そんな大げさなもんじゃねぇよ。」
澪田「和一ちゃんはただ、女の子達の水着姿を見たかっただけらしいっす!!」
ソニア「で、チャンドラビ—チへ1人果敢に攻めて行ったところ、偶然辺古山さんを見つけたということですか。」
狛枝「ははっ。やっぱり幸運なんだね、小泉さんは…。」
花村「水泳大会がおじゃんになっちゃったのは、不運だけどね…。」
田中「まあ、仕方あるまい。あのような事件が発生したのだからな。」
-
108 : 2015/01/07(水) 00:13:00.21 -
左右田「でもオレは…辺古山が妙なお面を用意してるのを見て、どうしようもなく怖くなってよ。」
左右田「間違いなく事件が起きるってのが、わかってたのに…オレは小泉を直接助けに行かなかったんだぜ?」
西園寺「ははっ!!左右田おにぃ、ビビリだね—!!女相手に逃げ出すなんてさ!!」
終里「つっても辺古山は相当できる奴だからな。左右田程度の戦闘力なら汚ねぇ花火になるのがオチだぜ。」
七海「だから、1人で小泉さんを無闇に助けようとせず、応援を呼んだのはナイス判断だった…と思うよ。」
小泉「そうね。だから左右田、自信を持って。アンタの勇気は皆が称賛してるよ。」
小泉「ふふっ。今回の件でひとつ、左右田にポイントつけといてあげるね。」
小泉「たまには頼りになる左右田くん…ってとこかな?」
左右田「命の恩人なのにその程度なのかよ!?」
日向「まあ小泉は基本、厳しめだからな…。」
-
109 : 2015/01/07(水) 00:15:09.37 -
豚神「しかし今回の件…。落ち度は俺にある。本来ならこの事件は、未然に防げたはずだった。」
花村「え…?そんな事無いんじゃないのかな?だって豚神くん、動機のゲ—ムを管理してたから…」
豚神「そうだ。それこそが、モノクマの罠だったのだ。」
花村「え?」
田中「確かにな。あの動機に我らは、必要以上に囚われていた。」
七海「その結果、リ—ダ—である豚神くんの身動きを封じられてしまった…。」
澪田「白夜ちゃん、ずっとジャバウォック公園に居座ってたもんね。一緒に遊んでくれなくて、唯吹寂しいっす!!」
ソニア「だから気付けなかったんですよね。いつの間にかモノクマさんから九頭龍さんに動機が渡されていたなんて…。」
終里「ちっ…汚い事しやがるぜ。こそこそと隠れて動機を渡すなんてよ。」
小泉(いや…アタシになら本来は、これは予測できたはずなんだ。)
小泉(だってこの手法…。前回、花村に動機を渡した方法と全く同じだったんだから…。)
-
110 : 2015/01/07(水) 00:16:40.26 -
豚神「優先事項を間違えたんだ。」
豚神「本来なら俺はあのゲ—ムを管理するよりも先に、単独行動をとりがちだった九頭龍を監視するべきだったんだ。」
西園寺「2人以上で行動していたら…動機をこっそり与えるとか、モノクマにはできなくなるもんね—。」
田中「互いが互いを諌めあうことができるからな。」
豚神「そういう事だ。俺がもっと、配慮していれば…」
罪木「そ、そんなに思い詰めなくてもいいような気がしますけど…。結局、事件は止められたんですし。」
弐大「そうじゃのう。そもそもワシらは、九頭龍の監視を辺古山に任せていた節がある。」
日向「九頭龍に動機を渡されても、辺古山が諌めてくれれば最善だったんだが…」
田中「まさか両者につながりがあるとは夢にも思わなんだか。」
花村「それも自分の命を投げ打ってまで、片方の共犯者になろうとする関係だなんて…。」
-
111 : 2015/01/07(水) 00:17:42.35 -
西園寺「2人がどういう関係かは知らないけどさ。だからと言って、他人を殺していいわけじゃないんだよ。」
西園寺「そうだよね、辺古山。」
辺古山「…」
狛枝「ふ~ん…。反省会はもう終了かな?じゃあここからは、本題に入るのかな?」
狛枝「ね、九頭龍クン。辺古山さん。」
九頭龍「…」
辺古山「…」
左右田「これだけ人がいるんだ。お前らがどうあがいても、小泉を殺すことはもうできねぇぞ!!」
西園寺「小泉おねぇ、気を付けて。こいつら、いつ小泉おねぇを殺しにかかるかわかんないんだからさ。」
九頭龍「…」
-
112 : 2015/01/07(水) 00:19:50.80 -
九頭龍「違う。オレは、もう…」
西園寺「もう小泉おねぇを殺そうとはしないって?そんな言葉、誰が信用すると思う?」
ソニア「さ、西園寺さん。そんな辛辣に当たらなくても…」
弐大「しかし、西園寺の態度も仕方なかろう。人を、殺そうとしたんじゃからな。」
豚神「一応昨日に、2人の動機は尋問したのだが。」
終里「納得いく動機なんて、本当にあったのかよ?どんな事情があろうと、人を殺していい理由にはならねぇだろ?」
日向「まぁ…わからなくもないし、同情の余地があるのかもしれないけど…」
田中「それで加害者の肩を持てば、被害者に失礼だ。」
西園寺「そうだよ。だからこいつらを許すわけにはいかないよ。」
西園寺「じゃないと、小泉おねぇが可哀そうだもん。」
小泉「…」
-
113 : 2015/01/07(水) 00:20:56.02 -
狛枝「しかし結局、被害者も加害者も死なずに済んで、この先も3人は共同生活を続けなくちゃいけない。」
狛枝「だからこのまま、何の踏ん切りもつけずにあやふやで終わらせるわけにもいかない…よね?」
澪田「凪斗ちゃんに言われなくてもわかってんすよ!!だから唯吹たちが仲介して、仲直りさせようと思ってるんす!!」
豚神「そうだな。だから九頭龍。貴様は今、どう思っている?」
罪木「どう思っているっていうのは…?」
狛枝「九頭龍クンが今も小泉さんを殺そうとしているのなら…仲直りなんて夢のまた夢だよね。」
花村「えぇっ!?そんなことって…!!」
七海「確かに、無いと信じたいね。だからこそ、九頭龍くんの口から直接確認したいんだよ。」
九頭龍「…」
-
114 : 2015/01/07(水) 00:23:30.08 -
九頭龍「オレは…妹の復讐のためなら、自分の命を引き換えにしてでも小泉を殺してやろうと思ってた。」
九頭龍「小泉を殺して、オレも死ぬ。それで事件が完結すればいいと思ってたんだ。」
九頭龍「でも…違うんだ。オレが復讐をしようとしたら、問題はオレだけにとどまらない。」
九頭龍「現にオレは今、ここにいる全員に迷惑をかけている。特に、ビ—チハウスに眠らせた西園寺にはな。」
九頭龍「そして何よりもペコが…オレのために非行に走ってしまう。」
九頭龍「オレの代わりに殺人を犯すとか…自分は道具だとか…わけのわかんねぇことを言い出しちまうんだ。」
九頭龍「オレはそんなことを望んじゃいねぇ。ここの全員を犠牲にしてまで、この島から脱出したいとは思わない。」
九頭龍「オレはもっと別の方法で生き延びて…妹の墓参りに行ってやらなきゃならねぇ。」
九頭龍「だからオレはもう…小泉を殺すわけにはいかねぇんだよ。」
西園寺「…なんだよ、そのふざけた理屈は。」
西園寺「それって…殺人を犯したら自分にも被害が来るから、小泉おねぇを殺さないってだけじゃん!!」
西園寺「つまり自分にデメリットがなくなったら、平気で小泉おねぇを殺すってことでしょ!?」
西園寺「アンタ、小泉おねぇを殺そうとしたことには何の反省もしてないの!?」
九頭龍「…」
-
115 : 2015/01/07(水) 00:24:21.57 -
今日はここまで。
-
122 : 2015/01/09(金) 00:39:06.57 -
西園寺「何とか言えよ、この人殺しクソヤクザ!!」
左右田「お、おいおい…それはちょっと言いすぎなんじゃねぇのか?」
西園寺「ふん、言い過ぎなもんか。小泉おねぇを殺そうとしておいて、反省の色も見えないじゃん。」
西園寺「きっとコイツ、小泉おねぇの命のことなんて、屁とも思ってないんだよ。」
罪木「そ、そんなことないと思いますけど…。反省しているからこそ、今日このレストランに集まったんでしょうし…」
七海「反省してないのなら、いつものようにまた単独行動をとっていただろうしね。」
日向「まぁまともに話し合おうと思うようになっただけ、九頭龍は進歩してるのかもな。」
西園寺「…どうにもここには、九頭龍の肩を持ちたがる奴が多いんだね。事なかれ主義なのかな?」
西園寺「被害者の気持ちもそっちのけでさ。小泉おねぇのことを何だと思ってんだ。」
ソニア「そ、それは違いますよ西園寺さん。わたくしたちは小泉さんを軽んじたりはしていません。」
弐大「あくまで客観的に物事を判断しとるだけじゃあ。」
西園寺「客観的に…?はっ。何もわかってないボンクラ共が、何偉そうな口を抜かしちゃってるのかな—?」
澪田「何もわかってないって…日寄子ちゃんも同じようなもんっしょ?」
西園寺「それはどうかな?わたし、知ってんだよ?九頭龍の過去を。」
終里「九頭龍の過去って…なんだよ?」
-
123 : 2015/01/09(金) 00:40:09.89 -
西園寺「コイツさぁ。学園時代に、小泉おねぇの親友を殺してるんだってさ。」
田中「何だと?」
花村「そ、それ、本当なの?」
九頭龍「…モノクマの情報によると、そうらしい。」
西園寺「しかもその理由がくだらなくってさ。妹を殺された恨みなんだって。」
花村「え…?妹さんを殺したのって、小泉さんじゃなかったの?」
狛枝「確か九頭龍クンの妹を殺したのは、小泉さんの親友…サトウって人だったよね。」
弐大「んん…?じゃあなんで、九頭龍は小泉を…?妹の死に小泉が関係しとらんじゃないか。」
豚神「小泉が、妹を殺したサトウの共犯者だったかららしい。」
小泉(…アタシもずっと、そう思ってたんだけどね。)
-
124 : 2015/01/09(金) 00:41:04.65 -
左右田「ちょっと待てよ。確かサトウってのは、九頭龍に殺されてんだろ?なら、サトウの共犯者もクソもねぇだろ。」
西園寺「そうだよ。わたしに言わせてみれば、責められるべき点なんて小泉おねぇにはカケラもない。」
西園寺「むしろ小泉おねぇの親友を殺した九頭龍こそ復讐されて死ねばよかったのに。」
罪木「そ、そんな、縁起でもない…。少し落ち着いてください、西園寺さん。」
西園寺「これが落ち着いていられるか、有機ダッチワイフ!!!!」
罪木「有機ダッチワイフ!!?」
西園寺「自分が犯した殺人は棚にあげて、小泉おねぇの非でもない非だけを一方的に責めるとか、アンタ何様だよ!!」
西園寺「図々しいっていうか、ふてぶてしいっていうか、厚かましいっていうか…」
西園寺「自分のことばっかり考えて、小泉おねぇの権利とか主張を一切無視してんじゃん!!」
西園寺「こんな奴に同情してやる価値なんて微塵もない!!畜生以下の生ゴミだよ、コイツは!!」
九頭龍「…」
-
125 : 2015/01/09(金) 00:41:52.44 -
豚神「まぁ…冷静に分析すれば、そういう話になるんだろうが。」
日向「いきなり妹の死体を見せつけられて、落ち着いて判断できるかっていうと、また話は違うからな…。」
西園寺「ふん。何が妹だ。九頭龍の妹ってぐらいだから、どうせ兄と同様人間のクズだったんでしょ?」
九頭龍「…」
西園寺「小泉おねぇに嫌がらせしてたらしいしさ。殺されても自業自得だよ。」
西園寺「サトウって奴、ついでに九頭龍も殺してくれればちょうど良かったのに。」
西園寺「小泉おねぇも、そう思うでしょ?」
小泉「…」
-
126 : 2015/01/09(金) 00:42:42.85 -
パンッ
アタシは、日寄子ちゃんの頬をひっぱたいた。
レストランに鳴り響いた音が、空気を一瞬だけ凍らせた。
西園寺「え…」
小泉「日寄子ちゃん。言って良いことと悪いことがあるよ。」
西園寺「で、でも小泉おねぇ、九頭龍は…」
-
127 : 2015/01/09(金) 00:43:32.54 -
小泉「妹ちゃんを、悪く言わないで。」
西園寺「…」
終里「おい…なんか、不穏じゃねぇか…?」
弐大「うむぅ…気のせいならいいのだが…」
田中「なかなか含みのある発言だったな。悪魔の隠喩、とでもいうべきか。」
九頭龍「…」
西園寺「小泉おねぇ…。」
豚神「…とにかく。九頭龍、何か言う事はあるか。」
九頭龍「…」
-
128 : 2015/01/09(金) 00:44:36.35 -
九頭龍「ねぇよ。」
澪田「え?」
狛枝「あれだけ好き放題言われたのに、何の反論もしないの?」
花村「もしかして九頭龍くん、マゾっ気がある?今度ぼくが、真性に開発してあげよっか?」
九頭龍「西園寺の発言を…否定するつもりはねぇ。」
九頭龍「そもそもオレには…そんな権利、ないからな。」
九頭龍「それでも、オレは…」
九頭龍「…」
-
129 : 2015/01/09(金) 00:45:27.68 -
狛枝「なるほどねぇ。」
狛枝「九頭龍クンは妹さんを溺愛していたからこそ、理屈抜きでなりふり構わず復讐に走ったってことだね。」
西園寺「ふん。『妹を失った悲劇の主人公なオレ』に酔ってるだけじゃん。ガキみたいな思考回路だよ。」
狛枝「じゃあ今度は、辺古山さんに話を聞いてみようか。」
辺古山「…」
ソニア「そ、そうですね。今までの話だと、辺古山さんがどのように関連するのかさっぱり塩ラ—メンです。」
左右田「ソニアさん?ソニアさんの言ってることがさっぱりわけわかめですよ。」
澪田「今は真剣に話してるんす!!くだらないシャレはやめなシャレ!!なんちって!!」
豚神「黙れ…。」
澪田「くぴ—っ!!眼が怖いよ—!!」
-
130 : 2015/01/09(金) 00:47:37.74 -
辺古山「私は…小泉には、悪いことをしたと思っている。」
辺古山「乱暴に扱ったり、ケガをさせたりしてしまったからな。」
罪木「体中のすり傷は、辺古山さんにつけられた傷だったんですね。」
辺古山「それだけじゃない。私は、小泉に辛くあたってしまった。」
七海「辛くあたった?」
辺古山「小泉の呼びかけを無視したり、罵声を浴びせたりした。」
辺古山「人殺しの共犯者…などと言ってな。」
西園寺「なにそれ。小泉おねぇの尊厳をどれだけ汚せば気が済むんだよ、ブスババア。」
辺古山「私は、小泉を殺そうとしていたんだ。だから、ああするしかなかったのだ。」
辺古山「ああいう態度をとっていないと、情が移るかもしれなかったから…」
辺古山「私は坊ちゃんの道具。坊ちゃんの望みを遂行するには、情は不要なのだ。」
辺古山「だから私は、常に冷酷で通さねばならなかった。」
-
131 : 2015/01/09(金) 00:49:33.43 -
弐大「言っとることがよくわからんのう。どうしてそんなに、小泉を殺すことに固執したんじゃあ?」
終里「辺古山自体は動機と関係してね—のによ。」
小泉「…九頭龍がそう望んだからよ。」
ソニア「え…?どういうことですか?」
辺古山「私は道具だ。物心ついた時から、坊ちゃんの所有物として生きてきた。」
七海「坊ちゃんっていうのは、九頭龍くんのことだよね?」
辺古山「ああ。私は幼少のころに九頭龍組に拾われ、その恩を返すためにずっと坊ちゃんに仕えてきた。」
辺古山「坊ちゃんのために尽くすことこそが使命であり、生きる理由だったんだ。」
辺古山「だから私は…坊ちゃんが殺意を抱けば、剣となって対象を殺すまでだ。」
日向「だから…小泉を殺そうとしたってのか。」
罪木「小泉さんの呼びかけに一切応じずに、ですよね…。」
狛枝「この場合『呼びかけ』ってのは、多分命乞いのことだよね。」
西園寺「命乞いをする相手に対して容赦なく殺しにかかるなんて…人間の皮を被った、本物の悪魔だよ。」
辺古山「…すまない。本当に、悪いことをしたと思ってる。」
西園寺「…」
-
132 : 2015/01/09(金) 00:51:22.86 -
西園寺「嘘でしょ。」
辺古山「なんだと…?」
西園寺「アンタは、自分のしたことを悪いとなんてこれっぽっちも思ってない。アンタの眼を見ればわかるよ。」
ソニア「さ、西園寺さん。相手が素直に謝っているのですから…」
西園寺「だからさぁ。コイツは皆から責められるのが嫌で、その場しのぎのデマカセを言ってんだよ。」
左右田「デマカセって…どうしてそんなのがわかるんだよ。」
西園寺「だってコイツは九頭龍の道具なんでしょ?」
弐大「その道具っちゅうのも良くわからんわい。辺古山は人間じゃろうが。」
小泉「まぁ、弐大にはわからなくてもしょうがないわね。人の価値観って、あまりにも多種多様過ぎるから。」
西園寺「つまりさ。九頭龍が小泉おねぇをもう1度殺そうとしたら、辺古山は小泉おねぇを殺すってことでしょ?」
西園寺「昨日みたいに、残酷な方法でさ。」
西園寺「そんな奴が『反省しました』なんて言って、誰が納得するの?」
澪田「う~ん。どうなんっすかねぇ?」
辺古山「…昨日は坊ちゃんが殺意を抱いたから私は動いた。」
辺古山「だが今は…坊ちゃんに小泉を殺す気はない。だから私は動かない。」
七海「そうだよ。九頭龍くんにはもう殺意はないみたいだし、辺古山さんも2度とあんなことはしないはずだよ。」
西園寺「…」
-
133 : 2015/01/09(金) 00:53:02.69 -
西園寺「逃げんなよ、辺古山。」
辺古山「何…?」
西園寺「アンタ、自分が道具だとか言ってるけど…」
西園寺「本当はただ、人殺しの罪を九頭龍に押し付けてるだけなんじゃないの?」
辺古山「なっ…!?」
西園寺「アンタは自分の罪から逃げてんだよ。」
西園寺「自分は道具だからってのを言い訳にして、小泉おねぇを殺そうとした罪をうやむやにしようとしてる。」
狛枝「ははっ。確かにそうだね。実際今も、九頭龍クンと辺古山さん、どっちに罪があるのかあやふやだもんね。」
西園寺「でもね。小泉おねぇからしたら、アンタが道具だろうが人間だろうが大した問題じゃないんだよ。」
西園寺「小泉おねぇを殺そうとしたのは、他でもないアンタなんだから。」
西園寺「小泉おねぇを昨日見た時、わたしビックリしたもん。」
西園寺「首にはあざがあるし、手当ての跡も痛々しくて…。」
九頭龍「…」
-
134 : 2015/01/09(金) 00:55:11.15 -
西園寺「でも、本当にびっくりしたのは物理的な問題じゃない。」
西園寺「小泉おねぇ、酷い顔してた。精神的に追い詰められたような顔。」
西園寺「きっと、わたし達じゃ想像もできないような酷いことをされて、心無い悪口を言われたんだ。」
西園寺「もしかしたら…永遠のトラウマになるんじゃないかってくらい。」
罪木「さ、西園寺さんがそれを言うんですか…。」
西園寺「小泉おねぇにあんな酷い仕打ちをしておいて…あそこまで追いつめておいて…」
西園寺「なんで辺古山、まるで無関係かのように振る舞ってんの?」
辺古山「…」
西園寺「辺古山…アンタは間違いなく、小泉おねぇを傷つけた人間の1人なんだよ。」
西園寺「アンタは中立じゃない。道具なんてのを口実にして、第三者面してんじゃねぇよ!!」
西園寺「アンタのくだらない言葉遊びで…小泉おねぇを傷つけたり、ましてや殺す事の免罪符になるわけがないだろ!!」
西園寺「人の命は…アンタらが思ってるほど軽くないよ!!」
西園寺「辺古山…アンタは小泉おねぇを殺そうとした、れっきとした人殺しなんだよ!!」
辺古山「…」
-
135 : 2015/01/09(金) 00:55:40.68 -
小泉「それは違うよ、日寄子ちゃん。」
西園寺「え?」
小泉「日寄子ちゃんの考え方は、所詮1つの価値観でしかない。それは、ペコちゃんの価値観に当てはまらないの。」
小泉「自分の価値観を人に押し付けるのは、良くないよ?」
西園寺「小泉おねぇ…。」
-
136 : 2015/01/09(金) 00:56:45.27 -
小泉「ペコちゃんに罪はないよ。」
小泉「だって、ペコちゃんがアタシを殺そうとした理由って、九頭龍のためなんでしょ?」
小泉「本来なら、ペコちゃんはアタシに殺意もなければ敵意もないわけだし。」
小泉「アタシはペコちゃんを責める気なんてないよ。そもそも、何を責めればいいのかもわからないし。」
小泉「ね?だからペコちゃん。そんなかしこまらなくてもいいって。自然体で、これからもアタシと接してね?」
辺古山「…」
左右田「なんだよ、小泉…。殺されかけたってのに、やけに辺古山には優しいな?」
弐大「まぁ小泉は、女子には基本甘いからのう。」
澪田「うっひょ—!!まるで天使のような包容力っすね!!」
-
137 : 2015/01/09(金) 00:57:14.25 -
日向「…何言ってんだ、お前ら。」
弐大「ん?」
日向「小泉の言ってる内容が、どれだけ残酷な事か…わからないのか?」
澪田「え…?」
-
138 : 2015/01/09(金) 00:57:39.54 -
今日はここまで。
-
144 : 2015/01/10(土) 01:09:38.21 -
何だろうこの「好きの反対は無関心」な感じ。
絶望オカン復活フラグー? -
145 : 2015/01/13(火) 22:08:58.86 -
七海「…とにかく、小泉さんは辺古山さんの罪を許してくれる…ってことでいいんだよね?」
小泉「ん~。罪を許すっていうか…そもそもアタシは、ペコちゃんに罪があるなんて思ってないし…」
小泉「罪があるとするなら、むしろ…アタシの方なんだよ。」
田中「人殺しの共犯者という点のことか?」
西園寺「大した罪でもないでしょ。九頭龍のサトウ殺しとか、今回の件に比べたらさ。」
小泉「でも、九頭龍はそう思ってないでしょ?」
罪木「え…?」
狛枝「まぁ…そうだろうね。九頭龍くんは、小泉さんに非があると思ったからこそ…」
狛枝「殺されてもおかしくないほど大きい罪を小泉さんが抱えていると思ったからこそ、復讐に走ったわけだからね。」
澪田「そ、それはいくらなんでも大げさじゃあ…」
弐大「しかし、そうでもなきゃあ殺そうなどとは思わんじゃろう。」
-
146 : 2015/01/13(火) 22:09:33.14 -
ソニア「といってもですね。今はもう九頭龍さんは考えを改め、殺人を思いとどまっているのです。」
ソニア「これはつまり九頭龍さんは、既に小泉さんを赦していると考えることができるのではないでしょうか。」
左右田「確かにな。じゃあ九頭龍も、過去のことは水に流して、小泉と仲直りしたいって思ってんだな!!」
終里「そもそも今の九頭龍が、小泉を責めることができる立場かよ?」
花村「小泉さんを殺そうとしたんだもんね…。むしろ小泉さんが九頭龍くんを許すかどうかが問題じゃないかな?」
日向「どうなんだよ、小泉。お前は、九頭龍を許せるのか?」
小泉「…」
-
147 : 2015/01/13(火) 22:10:36.24 -
小泉「それ…聞く相手が違うんじゃない?」
日向「え?」
小泉「だって…罪があるのは、アタシの方なんだから。」
ソニア「だ、だからですね。九頭龍さんは既に、小泉さんの罪を赦して…」
小泉「九頭龍が、1度でもそう言った?」
花村「え…?」
小泉「九頭龍が、自分の口で…アタシの罪を赦してくれるなんて、1度でも言った事がある?」
罪木「そ、そんなの、言葉にしなくたって…」
豚神「…ないな。」
澪田「なっ!?ちょ、白夜ちゃん!!変な事言ったらダメっすよ!!」
豚神「態度で示す…というのもわからなくはないが。それでは納得できない人間もいるんだ。」
七海「そうだね…。九頭龍くんに赦してもらうことは、小泉さんにとっては確かに大事な事みたいだから。」
弐大「容赦の意を言葉として顕在化させ、ハッキリさせときたいんじゃのう。」
狛枝「で?どうなの九頭龍クン。キミは、小泉さんを赦せるの?そうじゃないの?」
九頭龍「何言ってやがる。赦すも何も…」
-
148 : 2015/01/13(火) 22:11:59.34 -
小泉「そうだよね。九頭龍がアタシなんかを、赦してくれるわけがないよね。」
九頭龍「えっ…。」
日向「お、おい小泉。なんでお前、突然割って入って…」
小泉「考えてもみなよ。良し悪しは置いといて、アタシは九頭龍の妹さんが死ぬ原因をつくった存在なのよ?」
小泉「九頭龍は、妹ちゃんを溺愛してた。それなのに、アタシを赦してくれると思う?」
小泉「いや…赦していいと思う?九頭龍にとって妹ちゃんは、世界にたった1人しかいない妹なんでしょ?」
九頭龍「それは…」
小泉「赦せるわけないよね。わかってるよ。だって九頭龍は、そういう人間なんだから。」
弐大「そ、そんなのただの決めつけじゃろうが…。」
罪木「九頭龍さんだって、そこまで非道な人じゃないと思います。きっと、小泉さんのことを赦して…」
小泉「じゃあなんで、アタシは殺されかけたのよ?」
九頭龍「ぐっ…。」
-
149 : 2015/01/13(火) 22:12:50.18 -
小泉「アタシだって、九頭龍ならアタシを赦してくれると思ってたよ。」
小泉「昨日…九頭龍に、バットで殴り殺されかけるまではね。」
辺古山「ん…?待て。それは、坊ちゃんではなかろう。バットを使ったのは、私じゃないか。」
小泉「本当にバカだよね、アタシ。」
小泉「昨日九頭龍に殺されかけるまで…謝れば赦してもらえるなんて、本気で思ってたんだもん。」
小泉「本気で、九頭龍と仲直りできるかも…なんて、淡い期待で胸を膨らましてたんだもん。」
田中「なんだと…?貴様、それはつまり…」
七海「九頭龍くんと仲直りする気はない…ってこと?」
西園寺「小泉おねぇ…。」
-
150 : 2015/01/13(火) 22:13:54.60 -
小泉「仲直りする気があるかないかじゃないよ。そもそもできないのよ、そんなこと。」
小泉「今思えば、“期待”なんて言葉を使うのも恥ずかしいよ。」
小泉「例えるなら…宝くじを1枚買って、1等が当たることを“期待”してたようなものだから。」
小泉「確かにアタシは、簡単には九頭龍は赦してくれないだろうなって予想してたけど…」
小泉「まさか、アタシの謝罪が…完全に無視されるとは、夢にも思ってもなかったわ。」
小泉「話も聞いてもらえずに、問答無用で殺されかけて…」
九頭龍「…」
-
151 : 2015/01/13(火) 22:15:16.02 -
小泉「アタシは謝った。必死に謝った。土下座して、涙ながらに赦しを懇願したよ。」
小泉「でも…九頭龍は、アタシを赦してくれなかった。」
小泉「いや…違うわ。そんな次元の話じゃない。」
小泉「そもそも九頭龍は…アタシの謝罪なんて、最初っから聞き入れる気なんてなかったのよ。」
九頭龍「そういうわけじゃあ…。」
九頭龍「あの時のオレは、そこまで気が回らなくて…」
小泉「九頭龍も言ってたよね?」
小泉「オレはお前に謝ってほしかったわけじゃない。妹の死が嘘だと言って欲しかった…って。」
小泉「もしあの時アタシが、トワイライトなんて嘘だ…って言ってたら、多分アタシは殺されずに済んだんだよね?」
小泉「つまり九頭龍にとって大事だったのは、トワイライトの真偽だけだったのよ。」
小泉「アタシが償いたいって思っていることなんて、2の次でね。」
小泉「だから…トワイライトが本当だった時点で、九頭龍がアタシを殺そうとするのは決定事項だった…。」
小泉「そういう事よ。」
九頭龍「ま、待てよ小泉。オレはあの時、気が動転してて…」
-
152 : 2015/01/13(火) 22:16:26.67 -
小泉「近寄らないでよ、人殺し!!!!!」
九頭龍「っ…!!」
終里「お、おいおい…どうしちまったんだよ?」
西園寺「小泉おねぇ…。」
西園寺「らしく、ないよ…。」
-
153 : 2015/01/13(火) 22:17:38.89 -
小泉「…仲直りできない理由は、1つじゃないの。」
小泉「アタシね。実は今も、怖いの。」
花村「な、なんの話?」
小泉「怖いのよ、九頭龍が。視界に入るだけで、声を聴くだけで、体が震えだす。」
小泉「九頭龍が今にもアタシに殺しにかかるんじゃないか、って思えてしまってね。」
九頭龍「だ、だから、オレはもう…!!」
小泉「昨日殺されかけたのもあるけど…もともとアタシ、九頭龍が苦手だったしさ。」
小泉「多分アタシ、1対1じゃあ九頭龍と話せないし、近くに寄られると立っている事さえできないよ。」
小泉「ホンット、笑い話だよね。こんな相手と、和解しようと思ってたなんて。」
小泉「人との距離感をうまくつかめてなかったから、手痛いしっぺ返しを喰らうことになっちゃった。」
小泉「ちゃんと話し合えば、きっと赦してくれるなんて…もしかしたら、分かり合えるかもなんて…」
小泉「そんな幻想を、少しでも抱いてしまったのが…すべての間違いだったのよ。」
辺古山「じゃあ、小泉は…坊ちゃんを許しては、くれないのか…?」
-
154 : 2015/01/13(火) 22:19:21.67 -
小泉「許す、許さないの問題じゃない。アタシと九頭龍は分かり合えないの。」
小泉「絶対に、相容れないの。」
小泉「永遠に。」
小泉「それも当然よね。アタシはただの一般市民で、相手は極道なんだから。」
小泉「そもそもヤクザなんかと交わろうなんてのが、浅はかだわ。」
小泉「極道の九頭龍が…一般人のアタシを、対等な人間として扱ってくれるわけがないじゃない。」
小泉「ははっ…。こんなこと、ずっと前からわかっていたはずなのに。」
小泉「どうして昨日のアタシは、あんなに楽観的だったのかな?」
小泉「おかげで、死にかけちゃったのにさ。」
小泉「アタシと九頭龍は仲直りなんて出来っこない。」
小泉「たとえここでうわべだけ繕っても…皆に気付かれないところで、また九頭龍に酷い事されるに決まってる。」
小泉「だからアタシは…九頭龍とはもう2度と関わらない。会話するのも、これで最後よ。」
小泉「九頭龍もそれでいいでしょ?妹を死に至らしめた憎い相手と交流なんて、したくないでしょ?」
九頭龍「…クソッ。」
-
155 : 2015/01/13(火) 22:21:19.76 -
辺古山「待ってくれ、小泉!!頼む、坊ちゃんを許してやって欲しい…!!」
西園寺「辺古山…。」
小泉「何を言ってるの、ペコちゃん?アタシは許す側じゃない。」
小泉「むしろ、赦しを請う立場なのよ…?」
辺古山「だとしてもだ。小泉は、明確な敵意を持っているだろう?」
辺古山「坊ちゃんを恨んでいるだろう…?」
小泉「…」
小泉「まぁ…憎くないと言えば、嘘になるけど。」
小泉「多分これって、アタシのただの逆恨みだからさ。」
小泉「どれだけ謝っても赦してくれない、九頭龍に対する…歪んだ恨み。」
九頭龍「…」
小泉「アタシは九頭龍の復讐を否定するつもりはないし、アタシの罪を否定する気もない。」
小泉「でも、何をしようが赦してもらえないのなら。」
小泉「このドロドロしたどす黒い感情を清算することなんて、できないでしょ?」
小泉「だからもう九頭龍とアタシは、仲直りなんてできないって言ってるの。」
九頭龍「待てよ、小泉…。オレはもう、お前を…」
-
156 : 2015/01/13(火) 22:23:10.80 -
小泉「…やめてよ、そんな心にもないことを言うのは。」
九頭龍「はぁ…?」
小泉「アンタがここでなんと言おうと、説得力がないわ。」
小泉「たとえアンタが今、赦しの言葉を発したところで…それが九頭龍の本意だなんて、思えるわけがないじゃない。」
小泉「だってアタシ、下手したら昨日死んでたんだから。」
小泉「アタシが死んだらね。アタシは赦しを請うこともできないし、アンタがアタシを赦すこともできないの。」
小泉「殺すっていうのは、そういう意味。」
小泉「アタシに赦しを請う機会を奪って、九頭龍がアタシを赦すことを放棄する…ってことなのよ。」
小泉「だからさ…アタシを殺そうとしておいて、今更アタシを赦すなんて…」
小泉「そんな権利が、アンタにあると思う?」
九頭龍「うぅ…!!!!」
-
157 : 2015/01/13(火) 22:23:59.96 -
田中「赦すことにも、権利が要るというのか…。」
七海「九頭龍くんが赦すことを小泉さんは許さない…なんてややこしいんだろうね。」
豚神「つまり小泉が九頭龍を責めている点は、殺されそうになったことではなく…」
狛枝「九頭龍クンが小泉さんから赦しを請う機会を奪ったこと…だね。」
罪木「だからこそ、九頭龍さんからも赦しを与える機会を奪おうってことですか…?」
ソニア「そんなの…哀し過ぎますよ!!」
ソニア「だってそれはつまり…小泉さんと九頭龍さんは、永遠に和解できないってことじゃないですか!!」
小泉「…哀しいも何も、それが事実で、最善なんだよ。」
小泉「アタシと九頭龍は、互いに全く異なった価値観を持つ人間なんだから。」
小泉「無理に理解し合おうとする方が、悲惨な結果になるの。」
小泉「昨日アタシが、殺されかけたようにね。」
九頭龍「クソ、がぁ…。」
-
158 : 2015/01/13(火) 22:25:08.24 -
辺古山「待て、小泉!!最終的にお前を殺そうとしたのは私だ。だから、坊ちゃんを恨まないでくれ。」
辺古山「恨むなら…私だけにしてくれ。」
小泉「え…?どうしてそうなるの?」
辺古山「私は坊ちゃんの代わりにお前を殺そうとしたんだ。」
辺古山「ならば小泉を殺そうとしたのは、坊ちゃんではなく私だということになるんじゃないか?」
西園寺「そ、そうだよ小泉おねぇ。九頭龍の非がなくなるかはともかくさ。」
西園寺「辺古山も小泉おねぇを殺そうとしたんだから、小泉おねぇは辺古山も責めるべきだよ…。」
-
159 : 2015/01/13(火) 22:26:03.64 -
小泉「あのね、ペコちゃん。例えばアタシが、九頭龍にナイフで刺されたとしよっか。」
辺古山「なっ…?何の、話だ?」
小泉「それでね。ナイフで刺された被害者であるアタシが…」
小泉「ナイフを恨むと思う?」
辺古山「…!!!!」
-
160 : 2015/01/13(火) 22:27:01.87 -
小泉「凶器がなんだったかなんて、まったく問題じゃないでしょ?論外でしょ?」
小泉「どんな方法で殺されようが…恨む対象は、アタシを殺してきた張本人だけよ。」
小泉「だから、アタシが…ペコちゃんを恨むわけがないじゃない。」
小泉「だってペコちゃんは所詮、九頭龍に使われた…ただの凶器に過ぎないんだから。」
左右田「おいおいおいおい…なんだよ、それ?」
日向「小泉、お前…自分の言ってることがどういう意味か、分かってるのかよ!?」
田中「辺古山など眼中にないということか!?」
狛枝「違うね。辺古山さんに対して、『お前は人間じゃない』って言ってるのと同じだよ。」
花村「そ、そんなのって…!!!」
-
161 : 2015/01/13(火) 22:27:54.16 -
小泉「いくら殺されかけても…殺してきた相手が人間じゃないなら、恨みようがないからね。」
小泉「だからアタシは安心して、九頭龍とだけ話ができるんだよ。」
小泉「ペコちゃんに殺されかけても…九頭龍に殺されかけたと解釈することができるんだよ。」
西園寺「小泉おねぇは、辺古山を人間扱いしてあげないってこと…?」
豚神「なんだそれは…!!?貴様の考え方には、狂気すら感じるぞ!?」
弐大「その意味では、あくまで“人間としての”辺古山を叱責していた西園寺の方が、100倍良心的じゃあ…。」
西園寺「…恨むっていうのは本来、相手が“対等な人間”じゃないとできないことなんだよ。」
罪木「じゃあ…最初っから、辺古山さんを恨む気がなかった小泉さんは、辺古山さんのことを…」
澪田「い、いくらなんでも、残酷すぎるっすよぉ!!!!」
-
162 : 2015/01/13(火) 22:29:24.69 -
小泉「え…?アタシ、何か変なことを言ってる?」
小泉「だって自分は道具だって言ったのは、ペコちゃんでしょ?」
七海「それは、そうだけど…」
花村「だからって、小泉さんがそれを認めちゃダメじゃないかな…?」
小泉「それは違うと思うよ?だってペコちゃんは、生まれてからずっと、九頭龍の道具として生きて来たんでしょ?」
小泉「なのにそれを全然理解してないアタシ達が、突然ペコちゃんを人間扱いしちゃったらさ…」
小泉「今までのペコちゃんの人生すべてを否定することになるのよ?」
辺古山「…」
小泉「自分は道具でいたくないとか、本当は人間でありたいとかペコちゃんが言い出したら、話は別なんだろうけど。」
小泉(皆は知らないよね。学園時代も絶望時代も、ペコちゃんはずっと九頭龍の道具として生きてきたことを。)
小泉「アタシはペコちゃんの価値観を否定したくない。」
小泉「自分は道具だっていうペコちゃんの主張も尊重するべきだと思うんだ。」
小泉「だからペコちゃんが何と言おうと、アタシはペコちゃんを恨む気はないし…」
小泉「皆が何と言おうと…アタシは九頭龍と仲直りなんて、する気はないわ。」
-
163 : 2015/01/13(火) 22:30:35.32 -
九頭龍「…ペコは、道具なんかじゃない。」
小泉「え?」
九頭龍「オレを恨むのは構わない。でもよ…。」
九頭龍「頼む。ペコのことは許してくれ。」
九頭龍「ペコを…人間扱いしてやってくれ。」
辺古山「坊ちゃん…。」
小泉「…」
-
164 : 2015/01/13(火) 22:31:23.09 -
小泉「アタシさ…。これでも今まで、ペコちゃんとは積極的に交流してきたつもりなんだよ?」
辺古山「何…?」
小泉「ペコちゃんがうまく笑えなくて悩んでいることも教えてもらったし。」
小泉「実はモフモフした動物が好きだってことも知ってるよ?」
小泉「昨日の水泳大会だって、ペコちゃんとの絆を深めるのにはうってつけだったのにな。」
-
165 : 2015/01/13(火) 22:32:14.86 -
小泉「別に…貸しを作ろうとか、恩を売ろうとか、そういう意味じゃないんだけどさ。」
小泉「ペコちゃんが本当に人間なら、あそこまで冷酷にアタシを殺そうとするのかな?」
小泉「ペコちゃんが本当に人間なら、今までアタシと過ごしてきた日々を思い出してくれるんじゃないかな?」
小泉「アタシとの絆を思い出して…アタシに、少しくらいは温情を見せてくれても良かったんじゃないかな…?」
辺古山「それは…」
小泉「だからアタシは、ペコちゃんを道具だと思う方が気が楽なんだ。」
小泉「だってさ…もしペコちゃんが、本当に人間ならさ…」
小泉「アタシとペコちゃんが今まで培ってきた絆って…九頭龍の一時的な感情にすら負けてしまうってことになるから。」
辺古山「うっ…!!!!」
-
166 : 2015/01/13(火) 22:33:07.05 -
小泉「哀しいな。本当に、哀しいよ…。ペコちゃんが、どうしようもなく遠いんだもん。」
小泉「人間としてのペコちゃんに手が届かないのなら、いっその事ペコちゃんを道具だと思った方が…」
辺古山「待ってくれ!!こんなことを言っても、小泉は信じてくれないかもしれないが。」
辺古山「昨日日向達が来る直前…私は、小泉の言葉に揺り動かされて…」
-
167 : 2015/01/13(火) 22:34:27.23 -
小泉「殺しを思いとどまろうとしてた…なんて、寒いこと言わないでよ?」
辺古山「…!!」
小泉「アタシがペコちゃんを恨まないでいられるのは…」
小泉「ペコちゃんがただの人殺しの道具でしかないから…なんだよ?」
小泉「本当は殺したくなかった。自分は本当は道具なんかじゃないんだ…なんて言われたらさ…」
小泉「じゃあどうしてアタシがペコちゃんに殺されかけたのか、わけわかんなくなっちゃうじゃん。」
小泉「何の理由もなく殺されて、相手を許せるほど…アタシはお人好しじゃない。」
小泉「そんなことになったら、アタシ…ペコちゃんのこと、本当に許せなくなっちゃうよ…。」
辺古山「…」
-
168 : 2015/01/13(火) 22:35:12.43 -
九頭龍「小泉は…ペコに、人間として生きる機会も与えてくれねぇのか…?」
小泉「…先にアタシから機会を奪ったのは、2人の方じゃない。」
小泉「九頭龍に赦しを請う機会も、ペコちゃんを人間だと思う機会も…。」
九頭龍「…」
小泉「で?これくらいでいいかな?今回の事件について話し合うのはさ。」
小泉「じゃ、今日はもう解散しようよ。事件も片付いたんだし。これにて一件落着ってことで。」
豚神「おい、待て!!まだ、話は…!!」
-
169 : 2015/01/13(火) 22:36:05.43 -
…
田中「行ってしまったか…。」
澪田「なんか…取りつく島もないって感じだったっすね…。」
終里「納得いかねぇよな…。こんなに中途半端で、終わらせるなんてよ。」
左右田「ああ…心の中のモヤモヤしたわだかまりが、全然晴れねぇっつ—か…。」
ソニア「腑に落ちませんよ。虚しいですよ。こんなすれ違い…。」
-
170 : 2015/01/13(火) 22:36:43.91 -
西園寺「でも…小泉おねぇは悪くない。」
花村「え?」
日向「まぁ…そうだよな。問答無用に殺されかけて…そんな簡単に、2人を許せるわけないよな…。」
ソニア「で、でも、このまま和解もできずに話を終えるなんて、あんまりです…!!」
豚神「仕方なかろう。肝心の小泉に、和解する気がないのなら。」
罪木「そ、そうは言ってもですね…。」
弐大「まぁ…そのうち考えを変えて、アッサリ歩み寄ってくるかもしれん。」
七海「そうだね。きっと、時間が解決してくれる…かもしれない。」
左右田「オレらはただ…待つことしかできねぇってことかよ。」
九頭龍「…」
-
171 : 2015/01/13(火) 22:37:56.50 -
狛枝「あははっ、これは予想以上に絶望的な展開だね。」
狛枝「ちょっとボクが、九頭龍クンを煽りすぎちゃったのかな?」
日向「は?」
狛枝「実は昨日にさ。モノクマから写真を受け取っていた九頭龍クンを目撃していてさ。」
田中「なに…!?ならば貴様は、九頭龍に動機が渡されていたことをハナから知っていたのか!?」
左右田「わかってたのなら止めろよ!!」
狛枝「なに言ってんの。せっかくボクが小泉さんを試すチャンスだったのに、みすみすその機会を潰すわけないじゃん。」
豚神「小泉を試すだと…?」
狛枝「殺し合いなんて起こさせない。誰も死なないことこそが希望…なんて言ってたからさ。」
狛枝「それに見合うだけの希望を小泉さんが本当に持っているのか、試してみたくなってね。」
狛枝「小泉さんの希望が本物なら、こんな事件なんかで死んだりしないはずだもんね?」
終里「わけのわかんねぇことを言ってんじゃねぇぞ…!!」
狛枝「だからボクは、九頭龍クンにあることないこと吹き込んでみたんだ!!」
ソニア「あることないことですか!?」
九頭龍「…」
-
172 : 2015/01/13(火) 22:39:19.99 -
~回想~
九頭龍「クソッ…何なんだよこの写真…オレの妹が…!?」
狛枝「あるぇ?九頭龍クン、こんなところで何やってるの?」
九頭龍「ああ!?テメェ、いつの間にそこに…。お前には関係ね—だろ!!どっか行きやがれ!!」
狛枝「あはは。ボク、そこで立ち聞きしちゃってたんだ。確か、妹さんが小泉さんに殺されたんだっけ?」
九頭龍「…ああっ!!?んなわけね—だろ!!?アイツが、そんな簡単に死ぬわけが…!!!」
狛枝「そういえば小泉さん、こんなこと言ってたな。」
狛枝「九頭龍クンを避ける理由は、親友を殺した相手が憎いからだとか…」
狛枝「妹が死んだのはスカッとしたけど、妹のついでにアイツもサトウに殺してもらった方が良かったな…」
狛枝「なんてさ。」
九頭龍「なん、だとぉ…!?」
~回想終了~
-
173 : 2015/01/13(火) 22:40:43.18 -
終里「そんな言葉を、信じたってのかよ!?」
弐大「どう考えてもデマカセじゃろうがぁ!!情報源が狛枝じゃろうがい!!」
九頭龍「すまねぇ。あの時のオレは興奮してて、ロクに分別もつかなくてよ…。」
日向「謝る相手が違うだろ…。小泉に言ってやれ。今からでも遅くないかもしれないぞ?」
九頭龍「でもよ…。どう言えば良いんだよ。そもそもオレに、そんな権利があんのかよ…?」
澪田「まったくもう!!どいつもこいつもジメジメした考え方ばっかりして!!」
田中「しかし今の小泉には、何を言っても火に油だろう…。」
花村「確かに、そんな感じだったよね…。」
-
174 : 2015/01/13(火) 22:41:38.12 -
狛枝「ホントだよ。今の小泉さん、絶望的だよね。九頭龍クンとのいざござと立ち向かわず、逃げ出すなんてさ。」
狛枝「確かに死んじゃうようなことはなかったけど…これじゃあ“絶対的な希望”にはほど遠いよね。」
狛枝「ま…この絶望をこれから、小泉さんがどう乗り越えていくのかを、ボクは楽しみにしているよ。」
日向「ふざけるな!!事の発端のくせに、高みの見物を決め込んで…!!!!」
狛枝「それは違うよ。ボクが事件に干渉したのなんて、微々たるものだよ。」
狛枝「事件は小泉さんと九頭龍クン…2人の間だけで起きた物なんだから。」
九頭龍「…さり気なく、ペコを抜くなよ。」
-
175 : 2015/01/13(火) 22:42:37.26 -
狛枝「それはそうとさ。ボクは九頭龍クンにも聞いておきたいんだよ。」
狛枝「九頭龍クンは、目の前にある絶望に立ち向かう気はあるの?」
九頭龍「…なんだよ、それ。」
狛枝「敵意むき出しの小泉さんと、和解する気はあるの?」
九頭龍「…」
九頭龍「今のオレには…そう思うことすら、許されねぇ。」
九頭龍「そう思う権利すら…与えてもらえねぇんだよ。」
日向「九頭龍…。」
-
176 : 2015/01/13(火) 22:43:45.98 -
西園寺「これでわかったでしょ、九頭龍?アンタがしでかしたことが、どれだけ深刻なのか。」
九頭龍「…」
西園寺「殺すっていう行為は、重いんだよ。」
西園寺「取り返しがつかなくなるほど、とてつもなく重い…。」
西園寺「実際に死人が出なくても…人の心を、簡単に破壊しちゃうんだから。」
西園寺「アンタの一時的な思いつきで…殺人に走るなんて、あっちゃいけないんだよ。」
西園寺「自分の罪の重さ…嫌というほど噛みしめろ、クソヤクザ。」
九頭龍「…」
-
177 : 2015/01/13(火) 22:44:37.71 -
…
—ホテル前—
小泉「…」
小泉「洗濯物…。皆の服が、干してある…。」
小泉「全員の、服…。」
小泉「…」
-
178 : 2015/01/13(火) 22:46:10.60 -
おもむろにアタシは、洗濯ものに近寄る。
そして、干してあった九頭龍の服をガシッとつかんで…
小泉「…あああああああああ!!!!!」
物干しざおから引きちぎる。
小泉「あああああああああああ!!!!うぁああああああああああああああぁああああ!!!!!」
そのままそれを地面に投げつけて、何回も踏んづける。
何回も、何回も…
そうしているうちに、いつの間にかそこに落ちている物体は、ボロボロの布きれになっていた。
小泉「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
-
179 : 2015/01/13(火) 22:46:48.75 -
本当は、こんな結末にするべきじゃなかったのだろう。
本来なら…自分の主張を押し殺して、九頭龍達と表面的にでも和解したほうが良かったのだろう。
でも…どうしてもアタシは、その最善の策をとりたくなかった。
どうしてかはよくわからない。
ただ、理由をつけるとするなら。
それはアタシの過去と、今回の事件を重ねてしまったから…なのかもしれない。
-
180 : 2015/01/13(火) 22:47:21.93 -
“絶望のカリスマ”だったアタシ。
世界中の人間が持つ多種多様な価値観を、アタシは1つの価値観で染めようとしていた。
いくつもある価値観の全てを否定して、アタシの理念に賛同させようとしてたんだ。
そんな過去を持っているからこそアタシは、誰かの価値観を否定することに臆病になるんだ。
ペコちゃんの道具理論も、1つの価値観だから…。アタシは、否定できなかったんだ。
-
181 : 2015/01/13(火) 22:49:08.14 -
未来機関は今も、“絶望のカリスマ”を恨んでる。
大事な人が死ぬ原因を作ったアタシを。
規模は全然違うけど、状況は九頭龍の件と変わらない。
だからアタシは…九頭龍との件を曖昧に終わらせたくなかった。
九頭龍との件を曖昧に終わらせる事は、間接的に絶望のカリスマとしての罪から目をそらすことになりそうだったから。
九頭龍と真剣に向き合って…その結果がアレだ。
小泉「はは…バカみたい。」
小泉「そもそもアタシ、ビ—チハウスで九頭龍と会うまでは、ロクに九頭龍と話し合おうとすらしてなかったのに。」
小泉「自分の過去の罪から、眼を逸らし続けていたのに…。」
小泉「いきなりとってつけたように謝って…赦してもらえるわけがないじゃん。」
小泉「アタシってば、なんて愚かな期待をしてたのよ…。」
-
182 : 2015/01/13(火) 22:49:46.70 -
過去に犯した罪は、取り戻せないんだ。
絶望のカリスマだった罪は、どうやっても償えないんだ…。
こんなこと、わかっていたのに。
その事実を再確認させられたアタシは…絶望しているのだろうか?
その事実を再確認させてきた九頭龍に、アタシは…逆恨みしてるんだろうか?
アタシにもよくわからない。
-
183 : 2015/01/13(火) 22:51:08.38 -
とにかく、アタシが選択した結論は、九頭龍との絶縁だった。
人間生きていれば、価値観が全く合わない人間だっているに決まってる。
アタシにとってはそれが、九頭龍だったってだけだ。
理解できない人間との距離を測り間違えれば、アタシは自滅してしまう。
分かり合えない人間と、無理に分かり合おうとする必要なんてない。
そんな人間とは、一定の距離をとる。
この世には、そういう関係だってあるはずだ。
仲間とのそういう在り方だって、あるということだ。
結局、アタシと九頭龍の間にあった亀裂は埋まることはなく…
それどころか明確な“確執”として具現化し、アタシの前に立ちはだかってしまった。
CHAPTER2+ 人との距離の測り方 END
生き残り 16人
日向 狛枝 豚神 田中 左右田 花村 弐大 九頭龍
終里 七海 ソニア 西園寺 小泉 罪木 澪田 辺古山TO BE CONTINUED….
最近のコメント