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1 : 2011/09/27(火) 16:13:56.23 -
今日は鈴羽の誕生日らしいね! よろしい、ならばダルクリだ
ギャグありシリアスあり鬱あり厨設定ありの長編。書き貯め済み。
SG世界線にて橋田至×牧瀬紅莉栖、岡部倫太郎×○○が成立するif話です。
ダルクリがメインというわけではありませんが、オカクリ好きには本当におすすめしません。
ソース: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1317107636/
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2 : 2011/09/27(火) 16:14:55.91 -
最初の思い。”あの3週間をともに過ごした紅莉栖のことを”
”俺は、俺だけは覚えているから。忘れないから”
”だから、これ以上は、望まない”
最初の覚悟。
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4 : 2011/09/27(火) 16:16:56.63 -
最初の欲。”せっかく封印しようとしていた、彼女への愛おしさが一気に溢れ出して”
”「なに!? 俺が守れだと!? やれやれ、勝手なことを言ってくれる!」”
”「いや、だから私はクリスティーナでも助手でもないといっとろう——……え?」”
”世界線が変わって、過去と未来が再構築されようとも、記憶には蓄積されている”
”ただ忘れているだけで、きっかけがあれば思い出すこともあるかもしれない”
”俺と君が紡いだ、想い出のことを”
”「これが『シュタインズ・ゲート』の選択だよ」”
最後の罠。
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6 : 2011/09/27(火) 16:18:57.23 -
世界線漂流を経て、ついにたどり着いた幻の世界線——シュタインズ・ゲート。
ここはあらゆるアトラクタフィールドから孤立している。
ディストピアや第三次世界大戦の心配は今のところなく、紅莉栖もまゆりも無事に生きている。最初はそれだけで十分だった。
だが平和な世界と偶然の紅莉栖との出会いは、俺に驕りと、耐え難い絶望を与えた。
そうして無限の意味を思い知った俺はlgdvg;:dssjbmngnlfscyrerrxd35:b;hjfh:l/nvo,jsmcvajrjkfvkjk
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7 : 2011/09/27(火) 16:22:58.90 -
『……おか、べ……?』『牧瀬氏? ちょ、ひっくり返ってどうしたんだお』
『そんな……岡部……うそ、でしょ……』
『おい牧瀬氏。マジでどうし……』
『いや……いや……!』
『オカ……リン……? あ、あぁぁ……!』
『いやああっぁぁぁぁぁっぁぁああああああああッッ!!』
『うわああぁっぁぁっぁぁっぁぁぁああああああッッ!!』
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8 : 2011/09/27(火) 16:25:00.86 -
SG世界線、2010年9月某日。
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9 : 2011/09/27(火) 16:27:02.83 -
僕は二次元も三次元も有機物も無機物だって愛せる、なんでもござれの博愛主義者である(キリッ
特に好きな三次元はフェイリスたん。二次元はいっぱい。数え切れない。でも、本当に夢中になれる人は、この年になっても居なかった。
それこそ会った瞬間『君に一生萌え萌え☆キュン! 結婚してくれーーーーっ!』と求婚したくなるような、
そんな一目惚れな出逢いが無いと僕は本気になれないんじゃないかなって、心の底で、自嘲と共に魔法使いの覚悟をしてた。そして、僕はオカリンを介し、彼女に出逢った。
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12 : 2011/09/27(火) 16:29:04.16 -
ダル「……オカリン、その人だr……え、もしかして牧瀬紅莉栖さん……?」
紅莉栖「あ、こんにちは。牧瀬紅莉栖と申します。この……えーと」
岡部「未来ガジェット研究所、だ助手よ。さっさと覚えてもらわねば困る!」
紅莉栖「だから助手じゃないって言ってるじゃないですか! あなた、この研究所のメンバーの方ですか?」
ダル「キ…………キターーーーーーーーーーーーーッッ!!」
紅莉栖「ひゃぁあッ!?」
ダル「来た! 2人目の女子ラボメン来た! これで勝つる!」
紅莉栖「えっ、なっ」
ダル「僕、橋田至って言います! 君に一生萌え萌え☆キュン! 結婚してくれーーーーーーーッッ!!」
紅莉栖「はぁぁあッ!?」
岡部「初対面からフルスロットル過ぎるだろ! もう少し出力を落とせHENTAIめ!」
ダル「あでっ!」
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13 : 2011/09/27(火) 16:31:09.76 -
アメリカで私は肩身の狭い思いをしていた。研究所の同僚たちは、ほとんどが私を目の敵にしていた。女性蔑視ではない、アジア人蔑視。能力のある黄色人種を彼らは煙たがった。
純粋に質の高い研究をしたいならそんなものは意識的に切り離すべきだと思うのだが、
実を結びにくい脳科学分野はドロドロとした人間関係をたやすく醸成した。対策として、私は心に防壁を作った。探求者然とした枠を己にはめ、煩わしい一切を鉄の精神で跳ねのけた。
やがて、防壁は外れなくなる。
どんな相手に対しても身構え、理論武装し、冷静に俯瞰するクセが身に着いていた。
当然、そんな私を好いてくれる人は現れるわけもなく。そして、私は岡部を介し、彼に出逢った。
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14 : 2011/09/27(火) 16:33:11.93 -
紅莉栖「岡部さん……なに、この人」
岡部「ラボメンきってのHENTAI……HENTAIの中のHENTAI。ラボメンNo.002橋田至、通称ダルだ。役職はスーパーハカー「ハッカー!」だ。
今のようにHENTAIな妄言が目立つが、まぁ仲良くしてやってくれ」紅莉栖「は、はぁ……」
ダル「妄言が目立つのはオカリンもだろうが! 厨二病に言動をとやかく言われる筋合いはないお!」
岡部「あれは厨二病ではないと何度言ったら! 凶気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の崇高なる(ry」
ダル「はいはい厨二乙厨二乙。牧瀬氏も気を付けろよ。オカリンは街中でも平気で妄言吐くからな。不用意にとなりに居ると同じ目で見られるぜ」
紅莉栖「あぁ、さっきもケータイ耳に当ててエルプサイ……なんちゃらとかやってましたね」
ダル「うへあーもう洗礼受けてたんかよ! オカリンこそフルスロットル過ぎんだろ、自重しろ自重!」
岡部「お、ま、え、が、言うな!!」
紅莉栖(……なんだか、スゴいところに来ちゃったなぁ)
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15 : 2011/09/27(火) 16:35:14.58 -
プロポーズしといてなんだけど、第一印象ははっきり言ってそれほどでもなかった。『あぁかわいい、顔かわいい、敬語かわいい、声かわいい、ツッコミかわいい』
その程度の感想だった。
そこから数日経っても、テンプレツンデレかわいいが足されたくらい。
まゆ氏への気持ちと同じくらいで、特別な気持ちは何もなかった。転機は、やはりあの日だろう。
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16 : 2011/09/27(火) 16:37:19.18 -
第一印象ははっきり言って最悪。初対面でプロポーズはあり得ない。頭のネジが飛んでるとしか思えない。
そこから数日経って、印象はさらに悪くなった。
いくらなんでもHENTAI過ぎる。補導歴が無いことに素で驚いた。
もはや絶滅危惧種になりつつあるザ・オタクな風貌で、オープンHENTAIでピザでキモオタって完璧すぎていっそ感慨を覚えた。もちろんどうとも思ってなかった。マイナス方向に振り切っていた。
転機は、やはりあの日だろう。
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17 : 2011/09/27(火) 16:39:23.11 -
紅莉栖「……」
ダル「……牧瀬氏? どしたん?」
紅莉栖「……へ、あ、いえ! なんでもないですよ、なんでも」
ダル「そんななんでもありそうなテンプレ反応返されたら逆に困るお。なんかお悩み? 恋のお悩み?
ならこの橋田至に言ってみなさい。エロゲで鍛えた1000の恋愛スキルを牧瀬氏に伝授して差し上げ」紅莉栖「橋田さんって、岡部さんと仲良いですよね?」
ダル「……おおっとぉ、メシマズの予感!」
紅莉栖「どうなんですか?」
ダル「……あいつとは高校2年からの付き合いだお。
2年からずっとツルんでたわけじゃないけど、まゆ氏に次いでよく知ってるとは思う」紅莉栖「ほんとですかっ!? じゃあ」
ダルクリ「「岡部さんのこといろいろ教えて下さい!」」
紅莉栖「……えっ、どうして……」
ダル「はぁ……オカリンのこのフラグメイカーっぷりはなんなん? マジ爆発しろ……」
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19 : 2011/09/27(火) 16:41:24.43 -
ダル「……つーわけで、女性遍歴は皆無に等しいお。まゆ氏曰く昔はかなりモテたらしいけど、厨二を発症してからはそれも鳴りを潜め。
大学では僕と魔法使いの誓いをするレヴェルになっちった」紅莉栖「魔法使いってなん……はッ!!」
ダル「んん~~? 牧瀬氏牧瀬氏ぃ、いま何を想像したのかな。ちょっと僕に教えてくれん?」
紅莉栖「い、言うかHENTAI!」
ダル「牧瀬氏ってさ、男のスラングにもけっこう通じてるよな。あれなん? ムッツリなん? エロ知識蓄えまくりなん?」
紅莉栖「ムッツリじゃないです! あんまりナメたこと言ってるとマジぶっころしょ!」
ダル「……え?」
紅莉栖「……はッ!」
ダル「今の、ブロント語……? 牧瀬氏まさかブロンティ」
紅莉栖「ち、ちがう! マジぶっ殺しますよって言おうとしたのが噛んで縮んじゃったんです! そんなことでブロンティスト認定する浅はかさは愚かしい!」
ダル「……牧瀬氏……」
紅莉栖「……orz」
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20 : 2011/09/27(火) 16:43:29.75 -
紅莉栖「そうですよー私はブロンティストですよーそれどころかねらーですよー@ちゃん無いと生きてけないレベルのガチねらーですよー」
ダル「ま、牧瀬氏そんな落ち込まんと。ネラーでもブロンティストでもいいじゃん。なんか僕、親近感湧いたし」
紅莉栖「……親近感?」
ダル「うん。やっぱ大学飛び級の才媛っていうとちょっと腰が引けてたとこがあったんだけどさ」
紅莉栖(腰が引けてる状態であれだけHENTAIを連発してたのかよ!)
ダル「庶民的なとこを見れたから安心したお。牧瀬氏も同じ人間なんだ、って」
紅莉栖(……ふん、なによ。結局それって、自分と同じ低レベルの人間だと認識したから安心できたってことでしょ。イヤな奴……。
あ、駄目よ私。しっかり壁を作って……)ダル「……牧瀬氏?」
紅莉栖「いえ、なんでも。それで、岡部さんの話に戻りますけど……」
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21 : 2011/09/27(火) 16:45:30.92 -
岡部には好意を抱いていた。
どこからともなく現れて、訳の分からないことを言いながらも父の凶刃から私を救ってくれた人。
厨二病だけど、時おり慈しむような目で私を見ていることには気付いていた。
好意より興味が勝っていたからこそ橋田に相談できたのだけれど、こんな気持ちは生まれて初めてだった。橋田には嫌悪を抱いていた。
単純にHENTAI過ぎて嫌いだったけど、さっきの一言は私の自尊心に強く爪を立ててくれた。
こういう黒い気持ちは向こうでよく感じたな……と、この時の私は思い込んでいた。好意と、嫌悪。
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22 : 2011/09/27(火) 16:47:32.20 -
ダル「だから、牧瀬氏からどんどんアプローチしてけば、オカリン程度すぐ陥落できると思うお」
紅莉栖「……なるほど、ありがとうございます橋田さん」
ダル「いえいえ。ところで牧瀬氏はどうしてオカリンが好きなん? 参考にするんでヨロ!」
紅莉栖(……何それ。岡部さんを真似ることで私に好かれたいってこと? 何言ってんのこのピザ。自重しろ)
紅莉栖「……詳しくは、色々あってちょっと言えません。ただ、岡部さんは危ないところを助けてくれたんです」
ダル「へぇー、さすがオカリンてば主人公体質。じゃああれか、るか氏と同じパターンか」
紅莉栖「漆原さん? 漆原さんも彼に助けられたんですか?」
ダル「うん。るか氏の巫女さん衣装をコスと勘違いしたカメ子がるか氏に言い寄ってて、そこをオカリンに撃退されたんだよ」
紅莉栖「ふぅーん……」
ダル「おお? 女豹の目になったお今。3次元こえー!」
紅莉栖「は、はぁ!? な、なにを言ってるんですか」
ダル「るか氏が恋敵になるかもって心配したんしょ?」
紅莉栖(な、なんなのよコイツ! ズケズケと……!)
ダル「大丈夫大丈夫。だが男だ」
紅莉栖「……は?」
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24 : 2011/09/27(火) 16:49:36.12 -
紅莉栖「……う、そ……」
ダル「マジ。るか氏男の子。正確に言えば男の娘」
紅莉栖「いやそれ口頭じゃ何言ってるか分かんないですから」
ダル「さすが牧瀬氏お見事なご指摘。ねらーの称号は伊達じゃないっすなー」
紅莉栖「う、うっさい! ……漆原さんが男……か」
ダル「信じらんないのも無理ないお。こんど確認させてもらったら?」
紅莉栖「だ、誰が確認なんてするもんですかこのHENTAI!」
ダル「あれれ~??
おっかしいな~僕は胸を触ってみればいいってつもりで言ったんだけど牧瀬氏は一体全体どんな風に取ったのかな~ね~牧瀬氏~」紅莉栖(う、UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!)
紅莉栖「む、む、胸だって男の人を触るのは抵抗ありますよ! 当然でしょ!?」
ダル「ほっほぉん。ま、そういうことにしといてやるお」
紅莉栖(こんのHENTAIキモオタピザ野郎がぁぁ……!)
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26 : 2011/09/27(火) 16:51:39.16 -
苛立ち。それを感じるということはつまり、すでに壁が壊されていたということ。
この時の私は気付けなかった。
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27 : 2011/09/27(火) 16:53:40.53 -
ある日。
岡部「おい助手」
紅莉栖「はいはい助手ですよ」
岡部「……え」
紅莉栖「え、ってなんですか」
岡部「……い、いやなんでもない」
紅莉栖「岡部さん?」
岡部「ク、クリスティーナ」
紅莉栖「だからなんですか?」
岡部「え、あ……」
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28 : 2011/09/27(火) 16:55:44.51 -
岡部「いやいいんだ。なんでもない……」
紅莉栖「はぁ、そうですか。変なの」
紅莉栖(……)
紅莉栖(ぃよし! やったぜ! 橋田さんの読み通り!)
紅莉栖『あ゛ーもー……橋田さぁん、岡部さんのあの呼び方どうにかしてもらえませんか? 私じゃからかわれるだけだから、橋田さんから言って下さいよ』
ダル『いやいや、牧瀬氏の見事なイジられっぷりも悪い。
いちいち反応してやるからオカリンが調子づいたまんまなんだお。逆にその呼び名を受け入れてやれば大ダメージ間違いなしだな』紅莉栖『……なるほど?』
紅莉栖(橋田さんGJ! ありがとう! ちょびっとだけ株を上げておくわ! ホントにちょびっとだけど!)
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29 : 2011/09/27(火) 16:57:46.84 -
ある日。
紅莉栖「どうして話してくれないんですか」
岡部「……すまんな」
紅莉栖「私は……根っからの研究者ですから。分からないことは何でも究明したいタチなんです!
岡部さんが話さなくても、私自身の力で見つけてみせますから!」岡部「あぁ……まぁ、頑張れ」
岡部(……ごめんな紅莉栖。言うわけにはいかないんだ)
岡部(SG紅莉栖には、『助手やクリスティーナと呼ばれても嫌がらない』という新たなキャラクターが発生している)
岡部(不用意にRSを喚起すれば、この世界線の彼女がどうなるか分からない……)
岡部(俺の身勝手で、今のお前を消すかもしれんような愚は犯せないんだ……)
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32 : 2011/09/27(火) 16:59:51.43 -
ある日。ラボからの帰り道。
紅莉栖「……はぁ」
ダル「最近、牧瀬氏ため息多いっすなぁ」
紅莉栖「ちょっとねー……」
ダル「オカリン絡み?」
紅莉栖「うぐ。なんで分かんのよあんた……まぁそうなんだけど。ねぇ橋田」
ダル「ん?」
紅莉栖「記憶にないことが口から飛び出しちゃったことってない?」
ダル「記憶にないこと? 例えば? デジャブ的な?」
紅莉栖「そうじゃなくて……そうね。ある人物間での不文律があるとする。
Aさんが『あ』って言ったらBさんは『うん』って返す、そういう決まり」ダル「ほむ」
紅莉栖「でも、その決まりを決めた覚えなんてないのよ。なのに、現在のAさんの『あ』にBさんは『うん』で答えた」
ダル「ん……んん? なんぞそれ、偶然Bさんはうんと答えたんじゃなくて?」
紅莉栖「違うわ。ある種の確信を持って、しっかりと受け応えた」
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33 : 2011/09/27(火) 17:02:03.26 -
ダル「イミフ。そんなこと有り得るん?」
紅莉栖「……有り得ないわよね。初めて訪れる場所に既視感を覚えることはあっても、初めての問答に流暢に応えたなんてケース、聞いたことないわ」
ダル「……それが、オカリンとあったわけか。どっちが答えたん?」
紅莉栖「私」
ダル「オカリンと昔会ったことがあって、その時の定番の問答だったってことは?」
紅莉栖「過去の面識の有無は既に調べたわ。皆無。アキバが初対面よ」
ダル「どこかで聞いていて、それが印象に残っていた可能性」
紅莉栖「伝聞での記憶のような漠然としたものではなかった。こう来たらこう返す。すらりと出て来たわ」
ダル「……ふぅむ、オカリンには?」
紅莉栖「もちろん聞いたわよ。聞いたけど教えてくれなかったの」
ダル「……最近のオカリンはなんか秘密主義だからなぁ。ラボメンバッヂも8人分あって、しかも8人目は7年後にどうこうとか」
紅莉栖「……なにそれ。詳しく聞かせて」
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34 : 2011/09/27(火) 17:04:06.75 -
紅莉栖「なんてこと……! そうよ、十分に材料はあったじゃない!
見ず知らずの私を助けた岡部! あの問答! どうしてラボメンバッヂに既に私の頭文字が刻印されていたのか! 8つの頭文字! 7年後!」紅莉栖(どうしてこの程度のことに気付かなかった!? まるで、発想そのものが何者かにシールされていたみたい……!)
ダル「オカリンに未来視の能力でもあるってか? ないない(笑) いつもの厨二病っしょ」
紅莉栖「カッコワライ言うな! そうでもなきゃ辻褄が合わないでしょ!」
ダル「いやぁ……だって、あのオカリンだぞ?」
紅莉栖「あ、あの岡部だけど。とりあえずこの材料だけ持ってもう一回話を付けてくる!」
ダル「……僕も行こかな」
紅莉栖「橋田も?」
ダル「盛り上がってる牧瀬氏見てたら僕もなんか気になってきた。行くお」
紅莉栖「……ん、分かった。着いてきなさい!」
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35 : 2011/09/27(火) 17:06:16.95 -
ラボ。
岡部「……言えない」
紅莉栖「ど、どうしてよ岡部。どうして言えないの? どうしてそんなにも頑ななの……?」
ダル「……」
岡部「すまん……言えないものは言えないんだ。すまん……!」
紅莉栖「……ッ!」
バッ! バタン!
ダル「……なぁオカリン」
岡部「……なんだ」
ダル「オカリンが黙ってるのって、もしかして牧瀬氏を守るためとか?」
岡部「ッ……そうだ。さすがは我が右腕だな。知られてしまっては……マズいんだ」
ダル「……ぉk、分かった」
キィー、バタン
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36 : 2011/09/27(火) 17:08:19.04 -
僕にとっての革新はこの時か。ラボメンとはいえ、こんなにも彼女を気にかけている理由に、僕は思い当たり始めていた。
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37 : 2011/09/27(火) 17:10:21.24 -
ダル「……牧瀬氏」
紅莉栖「……なによ」
ダル「ほい」
紅莉栖「きゃッ!? つ、冷たいわよばか! ……あ、ドクペ」
ダル「ん」
紅莉栖「……ありがと」
……コクリ
紅莉栖「ふぅ、やっぱり知的飲料はネ申ね。脳が澄んでいくのが分かるわ」
ダル「そうかお。じゃあちょうどいいな。牧瀬氏、もうオカリンにバッヂのこととか聞くのやめれ」
紅莉栖「……なんでよ。どうしてやめなきゃいけないの。ていうかどうして橋田にそんなこと」
ダル「オカリン、血が滲むほど唇噛みしめて、黙んなきゃいけない理由があるっぽい。何を隠そう、牧瀬氏のために」
紅莉栖「……私のため?」
ダル「あいつからは言えないみたいだから、とりあえず右腕であるところの僕が『牧瀬氏のための理由がある』ってことだけ伝えますた」
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40 : 2011/09/27(火) 17:12:22.72 -
紅莉栖「……ふん」
ダル「この秘密を暴かないと、牧瀬氏に何か不利益でもあるん?」
紅莉栖「私の沽券に関わる」
ダル「んじゃ今回だけは自分を曲げて、納得してやれお。オカリンのためにさ」
紅莉栖「……」
ダル「あいつに助けられた借りがあるんしょ? だから、今回のでおあいこってことにしたらいいんじゃね」
紅莉栖「……なんなの橋田。あんたって岡部の女房役だったわけ。キショクわる」
ダル「いや普通に友達だし。友達が困ってたから斟酌してやっただけだお」
紅莉栖「……ともだち」
ダル「そんなETみたいなイントネーションで返さんでも……。こういうのが友達ってもんだろ? ……まさか牧瀬氏」
紅莉栖「違うわよ? ぼっちじゃないわよ? アメリカで友達一人も居ないからネットに娯楽を求めに逃げたとか全然そんなことないから」
ダル「……牧瀬氏……」
紅莉栖「……orz」
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41 : 2011/09/27(火) 17:14:24.62 -
紅莉栖「……分からないことは、なんでもかんでも知りたがる性分なのよ。
だからこそこの年で脳科学の研究者になることが出来たし、だからこそ周囲に面倒くさく思われたのね」ダル「……」
紅莉栖「まだ納得はいってないわ。岡部の秘密を暴いてやりたい。でも……私のためなんでしょ? そんな理由、初めてよ、卑怯よ……」
ダル「なぁ、牧瀬氏」
紅莉栖「なに」
ダル「オカリンの秘密は聞きたがったけど、僕には聞かんの?」
紅莉栖「……は? 橋田? あんたもなんか秘密あんの?」
ダル「あるかもよ?」
紅莉栖「あってもどうでもいいわ。興味ない」
ダル「へぇ、それっておかしくね? なんでもかんでも興味あるんだろ?」
紅莉栖「……あ」
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42 : 2011/09/27(火) 17:16:25.46 -
研究でも対人関係でもなんでも、”なにか”を暴く時には快感がある。それが好きだった。
私が知りたがりなのはこの快感を求めてのことだ。だが、橋田には興味が湧かなかった。まゆりもだ。漆原さんもか。萌郁さんも。フェイリスさんも? 岡部だって例の秘密以外は、別に。……。
ラボメンのみんなを暴く気が、私には無かった。
何故だろう。簡単なことだった。暴きたがりなのは研究者の私だ。
向こうでは、研究者の私を脱げなかった。
脱げなかったから、誰に対しても暴きたがった。日本。
ラボに来て、私の研究者の殻は、岡部を初めとしたラボメン達の手で脱がされてしまったのだ。
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43 : 2011/09/27(火) 17:18:27.43 -
ダル「な?」
紅莉栖「……」
ダル「なんでもかんでも興味持たないと、向こうではやってけないんしょ?
えーっと? 万物に興味を持ってないとセレンディピティは得られない、とか大学の講義でやってた気がするお」紅莉栖「……」
ダル「こっちではそんな気ぃ張らなくていいんじゃね。ラボでぼーっと、まゆ氏の隣で洋書読んでればいいと思う」
紅莉栖「……」
ダル「でー、オカリンは例によって例のごとく厨二電波飛ばしまくって、僕はスルー安定でエロゲしてて」
紅莉栖「エロゲは要らない」
ダル「えぇー? 僕はラボにエロゲをしに来てると言っても過言ではないと言うのに」
紅莉栖「あはは、橋田のHENTAI」
ダル「褒め言葉です(キリッ」
紅莉栖「HENTAI。ドHENTAーI。……ありがと」
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45 : 2011/09/27(火) 17:20:36.21 -
ダル「へ? 今なにか」
紅莉栖「HENTAIも過ぎると通報するわよって言ったの。ほれ橋田、ちょっとメイクイーン付き合いなさい」
ダル「うえ? なんでメイクイーン? 牧瀬氏好きだっけ?」
紅莉栖「うるさいわね、ごちゃごちゃ言わない。いいから行くの。私の筋を曲げさせた礼をしなさい」
ダル「えぇー、い、今持ち合わせが……」
紅莉栖「じゃあそれ全部使って。はーおなか空いたー何食べようかしら」
ダル「横暴だお~……」
紅莉栖「ほーら、行くわよ!」
ダル「え、ちょ。牧瀬氏、手……」
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46 : 2011/09/27(火) 17:22:37.45 -
私にとっての革新はこの時か。ラボメンとはいえ、こんなにも私を見、気にかけてくれる彼に、私の嫌悪は裏返り始めていた。
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47 : 2011/09/27(火) 17:24:41.12 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「橋田ー、そのエロゲ何?」
ダル「へ、え? 何って抜きゲだけど」
紅莉栖「抜きゲって……たしか、男の人のソレに使う用、よね?」
ダル「ソレって何? 牧瀬氏牧瀬氏ソレって何?」
紅莉栖「ソ、ソレはソレよ! ソレでしかない! ていうか抜きゲをラボでやるな!」
ダル「いやいや、抜けない空間で抜きゲをやるってのも乙なもんなんだぜ?
このジリジリ感? 帰ってからやると何故かヤケに捗るしさ。牧瀬氏分かる? ま~わっかんないだろ~な~」紅莉栖「……分かってたまるかこのドHENTAIが!!」
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48 : 2011/09/27(火) 17:26:59.45 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「橋田は何味が好きなの?」
ダル「僕はやっぱトンコツかなー」
紅莉栖「共食い乙」
ダル「う、うっせーお。コッテリ旨いじゃん」
紅莉栖「そんなだからぷよぷよなのよー」ペチッ
ダル「おわっ!?」
紅莉栖「……あ」
ダル「ちょ、ま、牧瀬氏……? 申し訳ないけど脈絡のないボディタッチはNG(約束)。するならもうちょっと段階を踏んでから」
紅莉栖「な、なんの段階だHENTAI! へ、HENTAI……」
ダル「そ、そっちからやってきた癖にそっちがしおらしくなるのはズルいお! 僕もうお嫁に行けない! 牧瀬氏、責任とって!」
紅莉栖「と、とるかバカ!」
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49 : 2011/09/27(火) 17:29:26.10 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「はぁー……スゴいわ。あんたの電子工作の腕はやっぱり特一級ね……」
ダル「ふひひ、お褒めに与り光栄だお。興味あることにはトコトンが僕、ってね」
紅莉栖「興味あることにはトコトン……か。私と同じね」
ダル「言われてみればたしかに。あ、でも僕は論破厨だったり暴き厨だったりしないんでそこんとこは混同しないでください」
紅莉栖「悪かったな! ていうかこっちでは暴き厨じゃないでしょうが!」
ダル「なんか最近僕に色々聞いてくるじゃ~ん。あれも暴きの本領発揮じゃないの?」
紅莉栖「え……橋田、いや、だった?」
ダル「はえ? 別にいやじゃないけど?」
紅莉栖「そ、そう。それなら良かった、うん……」
ダル「ん……ん? なに牧瀬氏、僕なんかマズいこと言った? あ、もしかして混同がコンドームに聞こえたとか」
紅莉栖「死ねHENTAI!!!!」
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51 : 2011/09/27(火) 17:31:27.39 -
秘密への興味ではない。
橋田への興味があった。毎日、あいつと2人きりになる瞬間が来ると嬉しくなった。
橋田の色々が知りたかった。
でも、絶対ないと思うけど、橋田の女性遍歴とかは、知りたくないと思った。
知りたくないという思考に驚き、嬉しくなった。岡部への興味は薄れていた。
私のためとはいえ、秘密を抱えられるというのはあまりいい気がしないのは確かだったから。
岡部と2人になる時は橋田とのそれよりずっと多かったけど、あまり心は動かなかった。
感謝と好意は別物だ。
根底には結局知りたがりなところがあるんだな、と客観視して、そうして関心を外した。
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52 : 2011/09/27(火) 17:33:30.66 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「またエロゲ? ……って、その、子」
ダル「……」
紅莉栖「わ、わ、私にそっくりじゃない! 何考えてんのよアンタ!」
ダル「その反応を見たいと考えてますた!」
紅莉栖「ドHENTAIが!! 即刻プレイを終了してデータを消去しなさい!」
ダル「だが断る!」
紅莉栖「断る権利があると思うな! こんの、とりあえず洋書で再起不能にして」
ダル「ちょ、ときに落ち着け! な、なんだよ牧瀬氏。牧瀬氏に似てるからってプレイしちゃいけないん?」
紅莉栖「いけないに決まってんでしょ!」
ダル「な、なんでさ。僕この子お気に入りだから絶対攻略したいんだお!」
紅莉栖「お、お気に入りって……」
-
53 : 2011/09/27(火) 17:35:34.14 -
ダル「こ、こ、この子は、その、ま、ま……」
紅莉栖「……な、なに」
ダル「……マニア向けなんだお! 前より後ろでされる方が好きっていう子でエロシーンは全編そっちの穴オンリー!
喘ぎ声もエロかわいくてこのシリーズじゃダークホースの(ry」紅莉栖「…………」
ダル「……あれ、急に悪寒が。やけに肌寒いな。牧瀬氏、その洋書を下ろそう。両手でプルプルしながら持ってるその洋書を下ろそう」
紅莉栖「……えぇ、下ろすわよ……」
紅莉栖「アンタの頭の上に、ねッ!!」
ウボァー……
-
54 : 2011/09/27(火) 17:37:35.49 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「あれ橋田、まだ残ってやってるんだ。精が出るわね」
ダル「あ、牧瀬氏。うん、コイツをイジり終えてから帰ろかなって。あと今の精が出るわねってのを」
紅莉栖「黙れ。メドは着いてるの? そろそろ終電じゃない?」
ダル「まー……終わんなかったら泊まるし。牧瀬氏こそそろそろ帰れお。夜は危ない」
紅莉栖「あ、ありがと。言われなくとももう帰るわ。でもちょっと時間あるから、コーヒー作ってあげる」
ダル「牧瀬氏エキスたっぷりのコーシーktkr! いろいろ捗る!」
紅莉栖「お疲れさまー」
ダル「ちょ、待! 冗談です! 作ってください!」
-
55 : 2011/09/27(火) 17:39:36.63 -
紅莉栖「HENTAIを挟まないと会話できないのか己は……はいどうぞ」
ダル「ひゃっほう! 牧瀬氏エキ(ry」
紅莉栖「頭から飲むか?」
ダル「口から飲ませてくださいお……」
紅莉栖「ん。もう夜遅いんだから、ポテチとか間食は控えなさいね」
ダル「……牧瀬氏、母さんみたいだお」
紅莉栖「は!? か、か、母さんってなんで私がアンタの奥さんになんなきゃいけないのよ!? ばばば馬鹿なの!? 死ぬの!?」
ダル「えっ」
紅莉栖「……えっ?」
ダル「……母さんって、文字通り僕の母親みたい、って意味だったんだけど……」
紅莉栖「あ……な、あ……」
-
56 : 2011/09/27(火) 17:41:37.30 -
ダル「な、なんつー連想してんだお、牧瀬氏……」
紅莉栖「わ、分かり辛いこと言うアンタが悪いんじゃない……」
ダル「……」
紅莉栖「……」
ダル(な、なんでこんな時に黙ってんだお僕、何やってんだ、いつもの押せ押せはどうしたんだよ、うぅ……!)
ダル「ま、牧瀬氏!!」
紅莉栖「は、はい!!」
ダル「……終電、大丈夫かお」
紅莉栖「へ? ……あ、あああッ!! マズい時間ない急がなきゃ橋田あと頑張ってねお疲れー!」ガチャバタン!
ダル「お、乙ー……」
ダル(終電大丈夫か、だって。はぁ……)
-
57 : 2011/09/27(火) 17:43:55.83 -
ある日。2人きりのラボ。
紅莉栖「……」
ダル「牧瀬氏、スプーンなんか見つめてどしたん?」
紅莉栖「あっ……いや、なんでもないわよ……」
ダル「そのなんでもありそうなリアクションはさっさと改めるべき。で、スプーンが?」
紅莉栖「う……ね、ねぇ橋田」
ダル「ん?」
紅莉栖「あんたって……その、マ、マイフォークとか、いたことは……」
ダル「マイフォーク? マイ箸的な? いや持ってないけど……ん、『いた』ってなんぞ?」
紅莉栖「……ッ!」
ダル「マイフォークがいた? なんかの隠語かお? なに、なぞなぞかなんか?」
紅莉栖「あっ、やっ、なんでもない! なんでもないから! あんたの聞き間違いよ! これ以上の追求は禁止!」
ダル「そんなこと言われたら追求したくなっちゃうって……『いた』ってことは、たぶん人物だよな」
紅莉栖「……っ……」
-
58 : 2011/09/27(火) 17:51:10.03 -
ダル「待てよ、牧瀬氏が持ってんのはスプーンだよな?
なのにマイフォーク? ……てことは、マイスプーンて隠語ももしかしてあるのかお?」紅莉栖「ッ違う! ぜーんぜん的外れ! ひ、一人で何突っ走ってんのよ橋田!」
ダル「牧瀬氏演技下手すぐる……マイスプーン、マイフォークが隠語なのは確定、と。
で、マイフォークが居たことがあるかどうかを牧瀬氏は聞いたわけだろ……。
隠語が人物だと仮定すると、マイフォークさんは居たり居なくなったりするってことだよな?
……両親、兄弟、姉妹、親戚……が居たことがあるか……日本語が変だお、こいつらは違う。
……友達、親友、恋人……友達が居たことがあるか……親友が居たことがあるか……恋人が居たことがあるか………………、……恋人が居たことがあるか?
あ、これ一番自然………………ん?」紅莉栖(そ、そんなばかな……!)
ダル「あ……まき、せし? つ、つかぬ事をお伺いするけど、そのー、マイフォークってのはまさかー……」
紅莉栖「ちっちっ違う違うの! 違うんだってば!
マイスプーンは友達だけど、マイフォークは恋人なんかじゃない! 恋人なんかじゃ…………あ……」ダル「……また、自分で……」
紅莉栖「……うううぅ~ッ! そ、そうよ! 橋田に恋人居るかどうか気になったの!
さ、最初は絶対いないって思ってたけど、アンタけっこう良いところたくsだぁぁーッッ!!
お、同じラボメンとしてそのくらい知る権利あるでしょ!? あるの!! ほら、早く答えなさい!!」 -
59 : 2011/09/27(火) 17:53:39.84 -
ダル「え、え?」
紅莉栖「えーじゃない! 恋人! 居るの! 居ないの!」
ダル(え、あ、な、なな? なんぞこれ? 恋人いるか? え? なんで僕こんなこと聞かれてんの?
なんで牧瀬氏顔真っ赤なん? イミフ、僕の脳の処理能力を越えてるおイミフイミフマジイミフ)ダル「そ、そりゃー! もちろんいるおー!」
紅莉栖「え……あ、そう、なんだ」
ダル「う、うん! ね、ねねちゃんだろ、しおりちゃんだろー、ほのかちゃんだろー」
紅莉栖「そ、そんなに……?」
ダル「りんこちゃんにー、かいちょうにー、フラウにー」
紅莉栖「……かいちょう? ふらう? ……アンタまさか」
ダル「そ、そう! 二次元に嫁が居るっていつも言ってるっしょー! みーんな僕の嫁だおー!」
紅莉栖「……」
ダル「ひっ……ま、牧瀬氏? どうして洋書を手に持ったんだお……?」
紅莉栖「別に。手に持っただけよ」
ダル「どどどどうしてこっちに近付いてくるんだお!?」
紅莉栖「別に! 近付いてるだけよ!!」
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60 : 2011/09/27(火) 17:55:22.49 -
牧瀬氏が、僕に淡い興味を抱いてくれていることを自覚した時。僕の持ち味の積極性はどこかへ飛んでいってしまった。
今どき小学生でもしないような婉曲アピールを繰り返し、枕に顔突っ込んで足バタバタする毎日。
自他ともに認めるオープンHENTAIの僕がこの体たらく、不思議な気分だった。
彼女をホントに好きだからこうなるんだなって、思った。
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61 : 2011/09/27(火) 17:57:06.39 -
メイクイーン。
フェイリス「おーまたーせニャーンニャーン! どうぞダルニャン、オムライスニャー!」
ダル「世界がヤバイキターーーーーーーーー!! フェイリスたんの丸文字に反して僕の僕がとがりそうです!!」
紅莉栖「自重しろHENTAI!!」
フェイリス「クーニャンにはアイスコーヒーになりますニャ。ブラックでよかったかニャ?」
紅莉栖「えぇ。でも目を見て混ぜ混ぜはお願いするわ」
ダル「ブラックで混ぜ混ぜ! そういうのもあるのか!」
フェイリス「かしこりましたニャン! では失礼して……ニャ~ンニャ~ン……」
カランカランカランカラン……
フェイリス(……ニャ? ……クーニャン睨んでニャい? フェイリスのこと睨んでニャい?)
紅莉栖「………………」
フェイリス(フェイリスの頭でダルニャンからはクーニャンが見えてニャい……!
け、計算されてるニャ! 確実に睨まれてるニャ! 視殺されそうニャ! こえぇニャァ~!)ダル「ちょ、牧瀬氏裏山! こんな長い間フェイリスたんに目を見て混ぜ混ぜしてもらえるなんて……! ※か! ただし美人に限るのか!」
紅莉栖「………………」ニコリ
フェイリス(ひ、人の気も知らニャいで! 目を離したら取って喰われそうニャァ~!)
-
62 : 2011/09/27(火) 17:59:08.10 -
柳林神社。
るか「あ……橋田さんに牧瀬さん! こんにちは、お二人がうちに来られるなんて珍しいですね」
ダル「オカリンに修行を見てこいとかイミフなこと言われてね、散歩がてら来たんだお。で、牧瀬氏はるか氏に会いに来たと」
紅莉栖「岡部は今ラボで課題に追われてるわ。ガジェット製作にばかりかかずらって、学生の本分を疎かにするなんて言語道断よね」
ダル(僕も共通科目は散々だってことは黙っt)
紅莉栖「共通科目は散々などこかのピザにも重々気を付けてもらわないと。そう思わない、るか?」
るか「あ、あはは……」
ダル「委細承知ですかそうですか……」
紅莉栖「どう? 修行(笑)はどんな調子?」
るか「はっ、はい! 毎日欠かさず鍛錬してるおかげで、最近は30回は出来るようになりました!」
ダル「ほえー、先月は一桁ばっかだったよな? 30回ってかなりの進歩じゃね? 僕が今そんなやったら二の腕ブルブルしちまうお」
紅莉栖「脂肪でね。この調子ならいつか師匠(笑)を越えられるんじゃない?」
るか「ぼ、僕が岡……凶真さんをですかっ!? む、無理ですよ! そんな畏れ多い!」
ダル「お、畏れ多い?? オカリンに最も似合わない形容詞の一つだお……」
紅莉栖「むしろ岡部がるかに対して畏れ多いわよね……」
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65 : 2011/09/27(火) 18:01:11.30 -
ブラウン管工房。
萌郁「橋田君……牧瀬さん……」
綯「あ、ダルおじさんと助手のおねえちゃん! こんにちは!」
紅莉栖「綯?」
綯「……く、紅莉栖おねえちゃんこんにちは……」
ダル「いつも通りの閑古鳥すなー。こんなんで大丈夫なん?」
萌郁「……店頭販売は、おまけみたいなものだから……裕吾さんの、出張買い取りとか、業者への売買が、主な収入源……」
紅莉栖「なるほど、需要もあるところにはあるのね。橋田も売上げに貢献してあげたら?」
ダル「だが断る。僕にはREGZAたんが居ますんで」
紅莉栖「宣伝乙。どう綯、ラボは楽しい?」
綯「はい! ガジェットのお手伝いはまだ出来ないけど、回路作るのとかすっごく楽しいよ!」
ダル「綯たん結構飲み込み早くて教えがいがあるんだよ。牧瀬氏も専門のこと教えたげたら? スルスル覚えると思うお」
紅莉栖「……」
ダル(……牧瀬氏?)
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66 : 2011/09/27(火) 18:03:05.79 -
サンボ。
紅莉栖「ギ、ギブ。もうギブ。橋田あとお願い」
ダル「牧瀬氏の睡液がトッピングされた究極の牛丼ktkr! 海原雄山も失禁コピペするレヴェル!」
紅莉栖「あんた飲食店でそういうこtうぐぅ……HENTAI台詞にツッコむ気力もないわ……胃が破裂する……」
ダル「つかどうして僕と同じサイズなんか頼んだん? 牧瀬氏そんな食べないのにさ」
紅莉栖「……同じのが食べてみたかったの」
ダル「味は同じなのに? ふぅん」
紅莉栖「い、いいから食べてよ。視界に入ってるだけでもうキツい」
ダル「オーキードーキー! 牧瀬氏牛丼なら何杯でもいけちゃうお!」
紅莉栖「……」
ダル「……あの、牧瀬氏?」
紅莉栖「へ?」
ダル「そ、そうまじまじ見られると気になると言いますか……」
紅莉栖「え、あっ! ご、ごめんね……」
ダル「……いや、うん……」
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67 : 2011/09/27(火) 18:05:16.70 -
ある日。2人きりのラボ。
< ……になる長女を絞殺しようとしたとし、××県警は××県××市、会社員××××容疑者を殺人未遂容疑で……ダル「……牧瀬氏? ちょ、どしたん?」
紅莉栖「……」
ダル「牧瀬氏ってば。……おい、牧瀬氏!」
紅莉栖「はッ!? あ、は、橋田……」
ダル「どうしたんだお。なんかスゴい顔してニュース見てたけど」
紅莉栖「な、なんでもないわ。大丈夫よ」
ダル「大丈夫なわけあるか。まだ顔ひきつってるお」ギュッ
紅莉栖「大丈夫……」
ダル「んな言い聞かせるように言わんでも……。今のニュースの人が知り合いだったとk」
紅莉栖「大丈夫だって言ってるでしょ!」
ダル「っ!」
紅莉栖「あ……」
ダル「ご、ごめんお……」
紅莉栖「は、橋田は何も悪くないわ。ごめん……」
-
68 : 2011/09/27(火) 18:07:01.78 -
紅莉栖「ごめん……ごめんなさい橋田。あんたに当たったって仕方がないことなのに」
ダル「ふ、ふひひ、気にすんなお。牧瀬氏の罵倒なんてどの業界でもご褒美ですしおすし」
紅莉栖「……何言ってんだか。ありがとHENTAI」
ダル「どういたしましてー」
紅莉栖「……」
ダル「……」
紅莉栖「……今は、ごめん。言いたくない」
ダル「……ん」
紅莉栖「いつか、もう少し整理が付いたらあんたにも話すわ。……話したい」
ダル「分かった。……それまで待つお」
紅莉栖「うん……」
ダル「……」
ダルクリ((……あれ、何この空気))
-
70 : 2011/09/27(火) 18:08:55.10 -
紅莉栖「ア、アアアンタいつまで人の手引っ掴んでんのよ! いいかげん離せHENTAI!」バッ!
ダル「あっ、ご、ごめんお! い、いやぁー牧瀬氏の手があんまりプリチーだったもんで、ついつい握っちゃいましてー」
紅莉栖「お、女の子の手を気軽に握るんじゃない! 直接的なHENTAI行為はしないヤツだと思ってたのに!」
ダル「そ、それはその、あれだお、ま、真っ赤に燃えて光って唸った僕の手が牧瀬氏の手を掴めと轟き叫ん(ry」
紅莉栖「ワ、ワケわからんわこのHENTAI! 謝罪と賠償を要求する!」
ダル「ふ、震えてたもんだからあっためなきゃって思って! とっさに握っちゃったんだお! ごめん!」
紅莉栖「ッ……」
ダル(……な、何を僕は自分から誤爆してんだお……!?)
紅莉栖(あ、あああ、あっためなきゃとか、は、橋田何言って……!)
ダルクリ((……))モジモジ
ダルクリ((き、気まずい……! 誰か早く来t))
ガチャッ
まゆり「トゥットゥルー♪ まゆしぃでーす☆」
紅莉栖「まゆりぃぃぃぃぃいいいいいいいッッ!!」ダキッ!
ダル「まゆ氏ぃぃぃぃぃいいいいいいいッッ!!」ダキッ!まゆり「わわわ~!? ど、ど~したの~2人とも~」
-
71 : 2011/09/27(火) 18:10:29.00 -
僕と牧瀬氏は、気付けば一緒に行動することが多くなっていた。特別な何かがあったわけじゃない。けれど、いつも隣でバカ話に花を咲かせていたように思う。
笑った顔、怒った顔、真面目な顔、真っ赤な顔。
目まぐるしく変わる彼女の表情を独り占めしている時、僕の心はどうしようもなく浮かれた。彼女との時間がとても切なくて、愛おしかった。
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72 : 2011/09/27(火) 18:11:59.14 -
私と橋田は、気付けば一緒に行動することが多くなっていた。特別は何もなかったけど、彼との他愛ない話を楽しんでいる私が居た。
毎日の橋田との出会いに心を躍らせ、毎日の橋田との別れに甘い感傷を滲ませた。
彼との時間がとても切なくて、愛おしかった。
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74 : 2011/09/27(火) 18:13:59.96 -
そして、僕と私の運命の日。
-
75 : 2011/09/27(火) 18:16:05.46 -
2010年10月下旬。秋葉原駅前。
まゆり「紅莉栖ちゃん~……寂しいよ~……」
紅莉栖「私も寂しい……。でも、こんな長い期間こっちに居られただけでも僥倖だったのよ。年末にはまた来るから、泣かないでまゆり」
ダル「キマシタワー……」
紅莉栖「聞こえてるわよ橋田!」
フェイリス「ニャ~……クーニャン、あっちでも猫耳メイドの素晴らしさを伝えてくれニャ!」
紅莉栖「だが断る、私ゃメイクイーンの広告塔か。日本に面白いお店があったことくらいは伝えてあげるわよ。元気でね、留未穂」
るか「ふ、冬コミこそコスプレしましょうね牧瀬さん。お待ちしております!」
紅莉栖「そこはお待ちしなくていい。あんたのコスだけ見に来るわよ。それまでバイバイ、るか」
萌郁「……」カシャ
紅莉栖「そこ! 勝手に撮らない! 肖像権の侵害よ!」
萌郁「……今さら……」カシャ
紅莉栖「たしかに今さらだけど! 開き直るな! 次来るまでにデータ消しといてよ萌郁さん!」
-
76 : 2011/09/27(火) 18:17:58.60 -
綯「紅莉栖おねえちゃん……行っちゃうの……?」
紅莉栖「あーあー泣かない泣かない。12月にはまた戻ってくるから。笑顔で送ってほしいな、綯には」
店長「んじゃあな、紅莉栖嬢。また一段と別嬪さんになって帰ってくるだろうあんたを待ってるぜ」
紅莉栖「店長さん……綯が睨んでますよ?
引き続き岡部たちがご迷惑お掛けしますが、上階の鼠がバカ騒ぎしてるだけと思って、どうか追い出さないでやって下さいね」岡部「助手の分際で保護者気取りかッ!
むしろミスターブラウンには我が未来ガジェット研究所の下階に居られることを誇りに思ってもらいt」店長「家賃が5000円アップしそうな気配がするなぁ岡部。どうしてだろうなぁ、なぁ?」
岡部「ブラウン管工房あっての我らが未ガ研なのだ、不敬があってはならないぞ! いいなラボメン諸君! フゥーハハハハハ!」
まゆり「オカリン変わり身早いね~♪」
岡部「柔軟と言えまゆり!」
フェイリス「こすいニャ、キョーマ」
萌郁「……節操なし……」
岡部「柔軟なの!! 柔軟って言え!!」
ダル(……みんながオカリンに注目してる。今、この瞬間しかない。もう牧瀬氏は行ってしまう……)
ダル(ずっとずっと言えなかった……これが、最後のチャンスだ……!)
-
77 : 2011/09/27(火) 18:20:08.59 -
ダル「……ま、牧瀬氏」
紅莉栖「ん? なに橋田」
ダル「……ぼ、僕、僕……」
紅莉栖「? うん……」
-
78 : 2011/09/27(火) 18:22:02.40 -
ダル「キ、キミのことが、牧瀬氏のことが……!」
-
86 : 2011/09/27(火) 19:00:43.75 -
ダル「……す、好き……です! 大好きです……!」
-
87 : 2011/09/27(火) 19:02:17.49 -
この世に生を受けて19年。これほど勇気を振り絞ったことがあったろうか。
他のみんなはオカリンを見てて、端っこに僕と牧瀬氏が居て、見つめ合ってる。
牧瀬氏は口を半開きにしたまま固まっていた。本当に驚いたときの表情。
目を逸らしてしまいたい。いっそ抱きつくかして事態を泥沼にしてしまいたい。時間の進みが遅い。冷や汗がうざったい。10月なのに暑い。鼓動がうるさい。
永遠とも思える一瞬ののち、彼女の口がふるると震える。
何かを発しようとして。
-
89 : 2011/09/27(火) 19:04:20.63 -
紅莉栖「橋」
岡部「うおい紅莉栖! 発車時間は大丈夫なのか? 臀部に蒙古斑が無いと言うなら、大人らしく時間くらいちゃんと守れ!」
紅莉栖「田…………」
まゆり「く、紅莉栖ちゃん!? 発車4分前だよぉ~!」
紅莉栖「…………、え、4分前!?」
店長「おいおい紅莉栖嬢、時間はもっと余裕見て作んな。コイツらと名残惜しいのは分かるがよ」
紅莉栖「は、はいすみません! 間に合え私~ッ!」
ダル「あ……」
返事をもらう時間は、ない。一世一代の告白がうやむやになった気がして、僕の目線は気持ちとともに落ちていった。
牧瀬氏と僕のちょうど間に立っていたスーツケースが目に留まって、それに彼女が手を伸ばして。
そのまま、彼女の手とスーツケースは視界から滑っていくだろう。
そう、思っていた。でも牧瀬氏は。
彼女はスーツケースのタイヤを反転させた勢いで、僕の、隣に。
-
90 : 2011/09/27(火) 19:06:12.48 -
紅莉栖「また後でメールする。私も好き、橋田」
ダル「……え」
-
92 : 2011/09/27(火) 19:08:13.13 -
紅莉栖「じゃあねみんな! また12月に!」
耳をくすぐった、彼女の小さな声。
幻聴かと思ってしまいそうなほど、かすかな声。
岡部「ではなクリスティーナよ! 貴様の身柄は未ガ研が確保していることを忘れるな~!」
まゆり「またね~紅莉栖ちゃ~ん! トゥットゥル~☆」
友人たちが僕を通り越して牧瀬氏に別れの言葉を投げかける中、僕は走り去る彼女の背を見つめることしか出来なかった。
囁かれた言葉を捕まえるように、片耳を押さえる。
後でメール、好き、橋田、メール、好き、橋田、橋田。
短かいセンテンスを何度も耳のうちで反芻し、心に確かめていく。
ダル「まき……せし……」
牧瀬氏が見えなくなって、オカリンに肩を叩かれるまで、僕は彼女の幻を目と耳で追い続けていた。
-
94 : 2011/09/27(火) 19:12:16.76 -
帰り道。
ダル「…………」
綯「あの……ダルおじさん」
ダル「…………」
綯「あの、ダルおじさん? ねぇっ、ダルおじさんてば」
ダル「……え、あ、綯たん。どしたん?」
綯「さっき、紅莉栖おねえちゃんと何話してたんですか?」
ダル「……綯たん、見てたんだ」
綯「はい。なんか2人とも変な感じだったから、気になったんです」
ダル「変な感じ、か……はは、そうだったかも」
綯「?」
ダル「……綯たん、誰にも言わないって約束してくれる?」
綯「あ、嘘ついたら針千本飲ます奴ですか? いいですよ!」
ダル「うん……あっ」ブーン ブーン
-
95 : 2011/09/27(火) 19:14:04.92 -
メールの着信があって、ダルおじさんはすごい早さでケータイを取り出しました。目が上から下、上から下、って何回も往復してて、メールを何度も何度も読んでいることが分かりました。
その後、泣きそうな、でもとても幸せそうな顔で、ダルおじさんはゆっくり微笑みました。
おじさんのそんな顔はあんまり見たことがなかったので、少し驚きました。
そのままおじさんは、ラボまでずっとケータイをイジってて。たぶんメールをし合ってたんだと思います。
なんの話をしていたのかは、なんとなく分かったので、けっきょく聞きませんでした。
-
97 : 2011/09/27(火) 19:16:06.51 -
Fro:牧瀬氏
Sub:( ∵) ←あのときの私の顔
Tex:どうしてあんなギリギリで告
白したコノヤロー! これ打
ちながら2828してたら隣の人
に変な目で見られたじゃない
! ばーか! HENTAI! 向
こうに着いて時間が出来たら
すぐ電話してやるから、大丈
夫な時間を教えろ! 橋田の
気持ちもっと聞きたい。好き
って気持ちもっと言いたい!
もー! 2828が止まんない
んですけど! 気を付けろ!
私が通報されても知らんぞー
っ! そうなったらあんたの
せいなんだからな! HENTAI
橋田!
大好きっ!ヽ(///д//)ノ -
99 : 2011/09/27(火) 19:17:59.96 -
To:牧瀬氏
Sub:拝啓フヒヒwwwwww
Tex:サーセンwwwwww僕こそ28り
過ぎて通報28秒前ですぞww
wwフォカヌポウwwwwコポォw
wwwwwwwwwwwww
wwwwwwww去り際の牧
瀬氏の囁きに僕の心は鷲掴み
にされました。鳥のさえずり
のようなあなたの声がまた聞
きたいです。愛の奴隷より。
敬具。 -
101 : 2011/09/27(火) 19:20:07.43 -
Fro:牧瀬氏
Sub:なんというポエムwwwww
Tex:コポォの後にいきなりポエミー
になるなwwwwまた吹いち
ゃっただろwwwwあんたに
ギャップ萌えの素養はないか
らwwww 2828と笑いでわ
けわかんないことになってる
! 電車降りるまでメール見
ないからな! 送られても見
ないぞ! 絶対だぞ! 絶対
だからな! -
114 : 2011/09/27(火) 20:14:06.61 -
To:牧瀬氏
Sub:無題
Tex:コポォwwwwwwwww
wwwwwww -
118 : 2011/09/27(火) 20:17:59.66 -
Fro:牧瀬氏
Sub:ふざくんなwwwwwwww
Tex:コポォやめろwwwww腹筋死
ぬwwwww告白のあとなの
にどうしてこんななのよ私た
ちwwwwww -
122 : 2011/09/27(火) 20:22:01.06 -
To:牧瀬氏
Sub:んじゃ真面目に(キリッ
Tex:アメリカまでおあずけはキツ
い。牧瀬氏の声が今すぐ聞き
たい。話したい。成田着いた
らちょっと時間あるっしょ?
電話くれお。もっと好きって
言いたい。愛してる、牧瀬氏
。 -
124 : 2011/09/27(火) 20:26:10.54 -
Fro:牧瀬氏
Sub:いきなり素になるの禁止!
Tex:どきってした。もうやだ。絶
対するから。大好き。 -
126 : 2011/09/27(火) 20:30:03.57 -
成田。
紅莉栖「……」プルルル……
紅莉栖(もう押さえてられないよ、橋田、橋田……ッ)
ガチャッ
紅莉栖「は、橋田ッ!」
ダル『ままっ、まきまま、まま』
紅莉栖「あははっ、ちょっと落ち着きなさいよ。橋田大好き、愛してる! よっし私の勝ち!」
ダル『ぐぬ、先に言われたお! 牧瀬氏大好きだお、愛してる!』
紅莉栖「私だって大好き! 橋田が好き!」
ダル『僕だって! メールも電話もいっぱいするからな!』
紅莉栖「うん! 私もする! 大好きな橋田にいっぱいするから!」
ダル『僕の方がいっぱいするっての! 大好きだーーーー牧瀬氏ーーーーーーー!!』
紅莉栖「きゃぁっ!? い、いきなり大声で叫ぶんじゃないわよ! ばかーーーーーーー!! 橋田、愛してるーーーーーーーー!!」
ダル『うわぁッ!? ま、牧瀬氏こそうるせぇって!』
-
129 : 2011/09/27(火) 20:33:58.18 -
紅莉栖「あっはははははは……はは……ぐすっ……」
ダル『なんだよ牧瀬氏……うぐ、泣いてんの……?』
紅莉栖「あ、あんただって……男のくせに、情けない……」
ダル『め、目にゴミが入っただけだっつの!』
紅莉栖「ゴシュッ!」
ダル『ちょwwwwwww泣いてるときに笑わせんなおwwwwww』
紅莉栖「あはははっ! やーっぱり泣いてるんじゃない。男泣きって奴?」
ダル『そ、そうだお。牧瀬氏が、僕の彼女になってくれたなんて、嬉しくて、僕、僕……』
紅莉栖「よーしよし泣かないのー。綯じゃないんだから。私だってさ……ぐす、橋田が、好きって言ってくれたとき、もう、泣きそうで……。
みんなが居なかったら、あのままわーわー泣いちゃって電車逃してたわよ! あははは……」ダル『はは、は……あ? 何の音だこれ、や、やば、バッテリー切れそう!』ピー ピー
紅莉栖「え、えぇー!? ちゃんと充電しときなさいよー!」
ダル『ご、ごめ、マズいもう切れる! 牧瀬氏、電話ぉkの時間とかは追ってメールするから!』
紅莉栖「う、うん! またね橋田! 愛してる!」
ダル『またな! 愛してるお!』
プツッ
-
130 : 2011/09/27(火) 20:38:14.72 -
電源の切れた携帯をじっと見つめた。最後は慌ただしくなってしまったが、今も彼女の言葉は頭の中で残響している。『橋田大好き、愛してる!』 『橋田、愛してるーーーーーーーー!!』
ふつふつと、実感が湧いてくる。
大好きな女性に真っ向から好意をぶつけられたことが嬉しくて。想いが実ったことが嬉しくて。
こんなにも嬉しいことがあるなんて。もう訳が分からなくて。「……牧瀬氏っ……!」
居ても立っても、いられなくて。
「ッッ………………しゃあああっぁぁっぁっぁぁあぁあああああああッッ!!」
アキバの中心で、快哉を挙げた。
-
131 : 2011/09/27(火) 20:42:02.62 -
搭乗ゲート前のベンチに座り、私は携帯の向こうに橋田を見続けていた。
いつも元気溌剌にHENTAI台詞を言い放つあいつが、顔を赤くしてもごもごと言い淀む姿はとても新鮮で。
直後に私の耳を打った言葉はずっと焦がれていたもので。
剥き出しの愛の言葉を携帯越しに叫ばれて。
何度も何度も愛してる大好きって、気持ちを確かめ合って。「橋田……」
まだまだ大きくなる。
橋田がどんどん大きくなる。
彼の色々な表情が浮かんで浮かんで、私の中を満たしていく。今すぐにでもとんぼ返りして、ぎゅーって抱き締めてもらいたかった。愛を呟いて欲しかった。いっぱいちゅーして欲しかった。
『牧瀬氏大好きだお、愛してる!』 『大好きだーーーー牧瀬氏ーーーーーーー!!』
「私も……大好きよ……。はしだ……」
頭の中で叫ぶ彼の愛に応え続けた。
涙はまだまだ止まりそうにない。
-
134 : 2011/09/27(火) 20:46:40.01 -
翌々日。休日。
岡部(……結局、俺はこの1ヶ月をふいにしたな)
岡部(紅莉栖とは何も進展はなかった)
岡部(俺の抱えた秘密に関して問い正され、それでも黙秘を貫いたことが大きかったのだろう。
あの日から紅莉栖の態度が微妙に硬くなってしまった気がする。
俺の方も彼女に合わせるように、積極的な接触を控えるようになった)岡部(もたもたしているうちに彼女はアメリカへ帰ってしまい……次の機会は、12月)
岡部(とりあえずメールは出しておいたんだが)
岡部(……)カチカチカチ
…………
岡部「……返信、ないな」
-
136 : 2011/09/27(火) 20:49:58.18 -
綯「あっ……オカリンおじさん」
岡部「おぉ、小動物か。ベンチを借りているぞ」
綯「い、いえ、構いません。メール……待ってるんですか?」
岡部「ん? あぁ、よく分かったな。紅莉栖からのメール待ちだ」
綯「紅莉栖おねえちゃん……」
綯(さっき来る途中の喫茶店で、嬉しそうに電話してるダルおじさんを見かけたけど……たぶん相手は紅莉栖おねえちゃんだよね?)
綯(ダルおじさんとの連絡に夢中になって、紅莉栖おねえちゃんメールに気付いてないんじゃ……オカリンおじさんに伝えた方がいいのかな)
綯(ううん、駄目だ。言ったら針千本飲まされちゃう。ダルおじさんの口から直接聞いた訳じゃないけど、分かっちゃったんだから。言っちゃ駄目よ、私)
綯「メ、メールならすぐお返事来ますよ」
岡部「いや、すぐ来ないから困ってるんだが」
綯「ぁぅ」
岡部「……お前に当たっても仕方がないな。綯、今日は萌郁と店番か?」
綯「あ、はい。今日は萌郁おねえちゃんと2人です」
ゲート・キーパー
岡部「フゥーハハハ! ならば光栄に思え! この鳳凰院凶真が3人目の《店番》となってやろうではないか!」綯「あっ……結構です」
-
139 : 2011/09/27(火) 20:54:08.58 -
岡部「なに? なんだってシスターブラウン? 拒否の意を表す言葉が聞こえた気がするが? 気のせいだよなそうだよな?」
綯「ぁう……! き、気のせいです……」
綯(……やっぱりオカリンおじさんは苦手だ。こわいよ……)
??「……岡部君っ」
岡部「んん? お、指圧師ではないか。どうした珍しく眉を釣り上げて」
萌郁「……綯ちゃんを、イジめてた……」
岡部「は? おいおい人聞きの悪いことを言うなよ。ただお話していただけだよな、そうだよな綯?」
綯「はっ……! はいぃ……」
萌郁「……言わされてる……」
岡部「なぁっ!? ブ、ブラウン管シスターズめが、結託して俺を悪者にしようったってそうはイカンぞ!
この凶気のマッドサイエンティストの辞書に退転の二文字はn」萌郁「謝って」ズイッ
岡部「すみませんでした」
-
143 : 2011/09/27(火) 20:58:04.09 -
岡部「そんなに怒らなくってもいいだろー。なぁ綯?」
綯「ひっ……」
萌郁「……いちいち、綯ちゃんを怖がらせないで……」
岡部「い、いちいちって! そんなつもりは微塵もない! ただ俺が話しかける度に綯が怖がるものだから……」
萌郁「……気を付けて、話しかけて」
岡部「気を付けてったってなぁ……はぁ」
綯(……おじさんに悪気はないんだよね。わ、私も大人にならなきゃ!)
綯「……お、おじさん、それで、店番いっしょにするんですよね?」
萌郁「……」ギロッ
スペース・リパー・スティンギー・アイズ
岡部「うおぉい萌郁ウェイウェイウェイ! なんだその《視殺光線》は! 女2人で店番は心許ないだろうから男の俺が手伝ってやろうと思っただけだ!」萌郁「……ほんと?」
綯「う、うん……(そんなことまで考えてたとは思わなかったけど……)」
萌郁「……なら、いい」
-
145 : 2011/09/27(火) 21:02:07.52 -
工房。
岡部「ふぅ……へぁんぱない殺気だな萌郁よ。今のの1/10でいいから常に放っておけ。普段のお前はちとオーラが無さ過ぎる」
萌郁「……そう、かな……」
綯「そんなことないよ?」
萌郁「……そんなことないって……」
岡部「あぁそう……綯の意見が絶対的に優先なわけだな。まぁいい。なんにせよ店番は俺もさせてもらうぞ!」ブワサッ
萌郁「……白衣、邪魔……」
綯「……おじさん、他のラボメンの方々は、いつ来れるんですか?」
岡部「あいつらは……たしかまゆりとダルが4時頃に来るはずだ」
綯(あぁ、店番ってつまり暇つぶしなんだ……)
萌郁「……白衣、邪魔……」
岡部「えぇい黙れ黙れ! 俺から白衣を取ったらただのサイエンティストになってしまうではないか! 邪魔だと!? 慣れろ! 脱げ!? 断固拒否!」
綯(白衣を取るとサイエンティスト……そんな設定が……)
「じゃ、じゃあ、私が白衣を着ると、凶気のマッド小動物……?」ワクワク岡部「は? 何言ってんだお前。お前は小動物以外の何者でもないだろ。調子乗んな」
綯「」
-
149 : 2011/09/27(火) 21:06:06.94 -
萌郁「……岡部君……?」ザワザワザワ
岡部「ひぃぃッ!? き、桐生さん綺麗な御髪が勇次郎ばりにざわざわいってますよ!?
押さえて! ビークールビークール! あなたは しょうきに もどった!」綯「ぁぅぅ~……」メソメソ
萌郁「……白衣」
岡部「へ?」
萌郁「白衣……綯ちゃんに、貸してあげなさい……」
岡部「だ、だが断r」
萌郁「」ザワッ
岡部「な、綯ー! 白衣だぞー! ほのかにドクペの香る鳳凰院白衣だぞー!」
綯「あ……いいん、ですか?」
岡部「もちろん!(いいわけないだろうが!!)」
綯「じ、じゃあ、ちょっとお借りします……」
-
154 : 2011/09/27(火) 21:10:17.08 -
フアサッ
綯「わぁ~……!」
岡部「ほぉ……当然のごとく丈はズルズルだが、ふいんき(ryは中々に研究者のそれになったな」
綯「すごい……カッコいい……!」
萌郁「……気に入った……?」
綯「うん! 白衣ってなんだか怖い印象があったけど、着てみるとすごくカッコいいね!」
岡部「そうだろうそうだろう! 若い身空で中々に肥えた審美眼をしているなシスターブr」
萌郁「じゃあ、それあげる……」
綯「わぁ~い!」
岡部「」
-
156 : 2011/09/27(火) 21:14:07.06 -
岡部「あげ、あげ? なんて?」
萌郁「岡部君……いっぱい白衣、持ってるでしょ? 一着くらい……」
岡部「ぶわかやろおおおおおおお! んむおえくわあ! 誰の白衣だと思ってるう! ふざけるなあああああああ!!」
萌郁「……ふざけてない、白衣は、岡部君の……分かった上で、一着もらった……」
岡部「過去形かあああああああ! 既に綯のものなのかあああああ!!」
綯「あ、あの、おじさん……これ、やっぱり私にはまだ大きいから、お返しします……」
岡部「ほぉーら萌郁! 見さらせこの綯の品行方正っぷりを! お前もコイツを見習うんだな! 偉いぞ~綯~♪」グリグリグリ
綯「あぅ、あぅ、あぅ(痛い痛い痛いおじさん頭撫でるの下手ぁ~)」
萌郁「……チッ」
岡部「舌打ち!?」
-
158 : 2011/09/27(火) 21:18:10.11 -
岡部「しかし綯よ。お前の白衣姿は存外サマになっていたぞ。こんどまゆりにでも言ってお前用の白衣を作ってもらうか」
綯「ほっ、ほんと!? ……ですかっ!?」
岡部「あぁ本当だ。完成がいつになるかは分からんがな、wktkしつつ待っていろ」
岡部(……クックククク、綯はこのところラボに度々出入りしている。このまま傘下に入れてしまえば、ミスターブラウンはもう俺に強く出れまい)
萌郁「…………強く出れまい、なんて、考えてる……? たぶん逆効果……」
岡部「な、なにぃッ!? 貴様《高速の指圧》だけでなく読心術まで体得したというのか!?」
萌郁「……むしろ、岡部君が、サトラレ……」
岡部「なッ!?」
萌郁「……綯ちゃんを、ラボメンにしたら……裕吾さんはきっと、ラボの活動内容に、危険が無いか、見にk」
岡部「というわけだ残念だったな綯さっきの白衣話は御破算だぬか喜びさせて済まなかった全てはお前の父君が悪いエルプサイコングルゥ」
綯「え、えぇ~……?」
-
160 : 2011/09/27(火) 21:22:24.82 -
萌郁「……じゃあ、椎名さんには、私から話を付けるから……」
綯「ほ、ほんとおねえちゃん!?」
岡部「なぁにぃ!? 指圧師キサマァ綯に白衣が似合うことを発見したのはこの俺だろうが! 手柄を横取りするつもりか!
まゆりには俺から頼む! 待っていろ綯!」綯「へ……? あ、は、はい……」
萌郁(岡部君……めんどくさい……)
岡部「完成の暁には、天王寺綯よ!!」
綯「は、はい!!」
岡部「貴様をラボメン(仮)に任じよう! ラボメンカッコカリ、な!
まだ貴様は幼子だ、正式なラボメンにはなれないが、ラボメン候補生としてならウチに入れてやってもいい!」綯「……ラボメン……カッコカリ……」
萌郁(年齢制限……あるんだ……)
岡部「返事は!!」
綯「はっ、はい! よろしくお願いします!」
-
161 : 2011/09/27(火) 21:23:14.16 - 頼むわ……
-
166 : 2011/09/27(火) 21:27:15.60 -
同時刻。某喫茶店。外。
ダル「うん……うん、それじゃ。おやすみ牧瀬氏、愛してるお……」
ダル「……」パタン
ダル「……っふあー……」
ダル(幸せすぎて、死にそうだお……)
ダル(デレデレ牧瀬氏のかわいさ反則だろ常考。なんだあのかわいい生物……)
ダル(口でチュッ☆て。チュッ☆て。やっべ、マジやっべ)
ダル(うがぁ~ちゅーしてぇ~! 12月までのあと2ヶ月待たなきゃいかんとかどゆこと? 地獄? 天国へ続く地獄?)
ダル(はぁ……牧瀬氏牧瀬氏牧瀬氏……頭ん中牧瀬氏だらけだ……日常生活に支障が出そうなレヴェル……)
ダル「はぁ~……牧瀬氏~……! 君に一生萌え萌え☆キュンだお! 結婚してくれーーーーーっ!」
客(((なんだあいつ……)))
-
169 : 2011/09/27(火) 21:31:17.08 -
時差ズレて夜。アメリカ。
紅莉栖「うん……うん、じゃあね橋田、大好き、愛してる……チュッ」紅莉栖「……」パクン
紅莉栖「……えへへへへへ……」
紅莉栖「最後にチュッってしちゃったぁ~、橋田気付いてくれたかな……あいつなら気付いてくれるよね……」
紅莉栖「あぁ~私いま相当ヒドい顔してるって~……橋田橋田ぁ、んん~♪」
紅莉栖「愛してるお(キリッ。何よそれ~! 残念語尾のくせになんでそんなカッコいいのよ~!」
紅莉栖「ちゅーしたいなぁ……橋田にちゅーしてほしい……2ヶ月なんて待てないよぅ、橋田ぁ……」
紅莉栖「はぁぁあ……私今日寝れるかなぁ、橋田が一人、橋田が二人、橋田が三人、橋田が」
紅莉栖「寝れるかぁ! 目ェ冴えるわ! もぉ~寝不足で明日のゼミ遅れたらどうしてくれんのよ橋田~……」
紅莉栖「彼氏のことで頭がいっぱいで寝れませんでした、キリッ! 通るかバカ! 教授陣に張り倒されるわ!」
紅莉栖「……だめだ、寝られるテンションじゃない。そうか、逆転の発想よ、もうちょっと橋田を妄想すれば寝れるはず……」
紅莉栖「橋田……んん、ちゅーしてぇ、ちゅー、橋田にがしって肩捕まれて、ぐいって引き寄せられて、あぁ、ん……ふあ……」
紅莉栖「ってイカンイカンイカン! だから明日はゼミなんだっての! 自重しろ私! 心頭を滅却せよ!」
紅莉栖「むんむむむむぅ~……」
紅莉栖「……もぉ~! 橋田出て来過ぎ! 明日絶対文句言ってやるぅ~!」
-
172 : 2011/09/27(火) 21:35:04.53 -
日本。夜。
ダル「……寝れねー件について!」
ダル「一発抜いたのに牧瀬氏が消えてくんないお!? なんぞこれ!?」
ダル「もう一回抜けというリア充神の思し召しか……? だが眠いのは確かなんだよな、でも目を瞑ると……」
ダル「はいはいはい牧瀬氏出てきたお~わらわら出てきたお~寝れるわけねーから! 明日1限なのにぃ!」
ダル「彼女のことで頭がいっぱいで寝れませんでした、キリッ! 言えるか! 大学のオタ友から総スカン食らうお!」
ダル「はぁあ……もういっそ、牧瀬氏を極限まで妄想して……」
ダル「ラボで……上はそのまま……ストッキング巻きながら脱いで……そしたらなんと直履きで……
パンツじゃないから恥ずかしくないもん状態で……こう、壁に手を突いて、誘う感じ……」ダル「……」
ダル「……」ムラムラムラムラ
ダル「うがーだめだだめだ! 作戦失敗! 頑張れ僕、セルフ賢者タイム!」
ダル(南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華牧瀬氏経南無妙法蓮牧瀬氏華経南無妙法蓮華経牧瀬氏牧瀬氏)
ダル「ぬわーーーーーっ! 牧瀬氏自重しる! 振り向いた坊さんの顔がことごとく牧瀬氏って!」
ダル「はぁぁぁ……もうだめぽ。もっかい抜いとこ」
-
175 : 2011/09/27(火) 21:39:15.04 -
アメリカ。朝。
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」
紅莉栖(……すごい、夢、見ちゃった)
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」
-
178 : 2011/09/27(火) 21:43:12.84 -
ダル「……僕の夢?」
紅莉栖『……う、うん、……っちな、夢』
ダル「……どんな夢だったん?」
紅莉栖『あの、ね……………………で……………………が………………』
ダル(ぐ、うぐぐ! あっちは夜で自室だから大丈夫だろうけどこっちはまだ昼で大学構内なんだが!
わざとやってんのか牧瀬氏! 静まれマイサン!
電話しながらおっ立ててるとかガチ通報もんだお! 自重しろマイサン!)岡部「お、ダルじゃないか。構内で会うのは久しぶりだな、っと、すまん電話中だっ…………た……か…………?」
岡部、視線下。 橋田、もうどうしようもなくて満面の笑み。
岡部「う、うわ、うわあぁあぁぁっっぁぁああああ……。
うわあっぁっぁっぁあああああああああ!! みなさぁぁぁぁっぁぁああああん!!!!
エレクチオンしながら電話してる変態が居ますよぉぉおおおおぉぉぉっぉっぉおおおおおおお!!!!」ダル(オカリン後でマジぶっ飛ばす……!!)
紅莉栖『ちょ、は、橋田? 何かあったの? 岡部らしき人の奇声が聞こえてきたけど……』
ダル「なんでもないお、ちょっと切る。僕の健全なるキャンパスライフの為に今は襲い来る視線の数々から逃げなければならない!!」
ダッシュ!
-
182 : 2011/09/27(火) 21:47:10.83 -
紅莉栖「ご、ごめん、あんた外だもんね。不注意だったわ。でもそうなら言ってくれればよかったのに……」
ダル「……ごめん、僕も聞きたかったし、話したそうだったから、遮るのもいやだった」
紅莉栖「……橋田……」
紅莉栖「……じゃあ、さ」
ダル「ん?」
紅莉栖「今週末……土日。こっちは夜でそっちは昼は変わらないけど、どっちも家に居るよね……」
ダル「へ? うん……? ま、まさか!?」
紅莉栖「……えへへ」
ダル「牧瀬氏も……大概HENTAIだな」
紅莉栖「橋田の彼女だもん……このくらいが丁度良いでしょ?」
ダル「ふひひ、たしかに」
紅莉栖「ふふ……」
-
185 : 2011/09/27(火) 21:51:17.62 -
紅莉栖「あと、そうだ。橋田のPCにはカメラ付いてる?」
岡部「……Skypeのテレビ電話をご所望かお?」
紅莉栖「あはは、バレちゃったか。電話じゃやっぱり我慢できないもん。橋田の顔、見たいよ」
ダル「うん……僕も。声だけじゃイヤだ。それにSkypeならタダだしね」
紅莉栖「そ。テレビ電話機能はよく遠恋に使われるんだって」
ダル「……遠恋でSkypeなんて、テレビの中だけの話だと思ってた。それを僕らはやろうとしてんだな……」
紅莉栖「だって……私と橋田は、恋人同士だもん」
ダル「……牧瀬氏が、僕の彼女」
紅莉栖「実感ない? 私も、ちょっとまだ。恋人になったのに会えないからかな」
ダル「う、ごめん……僕がもっと早く告白してれば」
紅莉栖「あぁもう。それはもういいって。2ヶ月間、この歯痒い感じを楽しむしかないでしょ?」
ダル「……そうだな。彼女にそんなこと言われるなんて情けない。今から2ヶ月後が楽しみで仕方ねーお!」
紅莉栖「私も! それじゃ授業がんばってね橋田! 愛してる!」
ダル「ん! 牧瀬氏も一日お疲れさま、お休み! 愛してるお!」
-
187 : 2011/09/27(火) 21:55:04.66 -
日本時間で12時、向こうの時間で22時。それが僕らの約束の時間。
短い会話はケータイで済ませ、Skypeでは長く楽しんだ。
お互いの近況報告や、今日あったおもしろかったこと、辛かったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、色々を話した。
笑い合い励まし合い悲しみ合い怒り合い、時には2人で勢い余ってカメラ越しにえっちなことをしてみたり。
毎日12時が待ち遠しかった。
本物は遠くアメリカにいるのに、ディスプレイを通した逢瀬は、僕らの心を確実に近付けていった。
-
189 : 2011/09/27(火) 21:57:49.73 -
>岡部「……Skypeのテレビ電話をご所望かお?」
オカリンの怨念が… -
190 : 2011/09/27(火) 21:59:05.49 -
——————
————
——紅莉栖からは返信はあった。しかし毎回遅かった。
向こうでの研究生活が大変なのだろう、迷惑になっているかもしれないな、と思い、次第にメールの数は減っていった。
最近ダルが昼頃になると頻繁にラボを出て、戻ってくるととても幸せそうな顔をしている。
ツッコんでやると奴にしては珍しく慌てた様子でそんなんじゃないお、と返してきた。いいや、絶対にそんなんだ。
下手に切り込み過ぎると逆にリア充攻勢を食らいそうだったのでそれきりにした。そうしてダルの昼外出も日常となった——
ある日のこと。
-
192 : 2011/09/27(火) 22:03:16.53 -
再来週に授業参観日を控えた今日。私は放課後、先生とお話ししていました。「綯ちゃんはお父さんが来るのよね?」
「はい。お仕事休んで、絶対行くって言ってくれました!」
「そう。とっても優しいお父さんだね」
「うん!」
その帰り道、校門で、さっきの話しを聞いていた数人のクラスメートが話しかけてきました。
「なぁ綯。お前って、お母さん居ないの?」
-
193 : 2011/09/27(火) 22:07:03.01 -
「なんで? ねぇなんで?」「お前のお父さんってあのハゲチャビンだよな?」
「死んだの?」
「どんなふうに?」
「お前お父さんしか居ないんだ。かわいそうにな」
「ほんとに死んだの?」
「居なくなっちゃったり?」
「わたし知ってるよそれ。ソトニオトコヲツクッタって言うんだって。意味はよく分からないけど」
「あのハゲチャビンじゃ仕方ないよ」
「ムキムキで怖そうだもんね。綯ちゃんも気を付けなよ。絶対、お母さん殴ったり蹴ったりしてたよ」
「それで死んじゃったの?」
「さぁ、居なくなったか、死んじゃったのはたしかでしょ?」
「綯かわいそう」
「綯ちゃんかわいそう」
-
195 : 2011/09/27(火) 22:11:05.38 -
どうして母さんが居ないというだけで、こんなにヒドいことを言われるのか分かりませんでした。でも、みんなには母さんが居ないというのは、よくないことだったみたいです。
ほんとに私はかわいそうなのかな。私はかわいそうでもいいけど、でも母さんはかわいそうだ。
父さんの話では、母さんは私を生んですぐ死んじゃったみたいだから。
私のせいで母さんは死んじゃったから。
母さんはかわいそうだ。
-
197 : 2011/09/27(火) 22:15:15.39 -
ソトニオトコヲツクッテなんかない。父さんは母さんを殴ったり蹴ったりなんかしない。でも、口を開いたら涙が出てきちゃいそうで。私はぎゅって口を噛んでいました。
みんなは私が何も言わないのが気に障ったらしくて、どんどんヒドいことを言ってきました。
でも、やっぱり私は何も言えません。
ぎゅーって口を閉じて、目も閉じて、次は体も閉じて、心も閉じて、気付いたらうずくまっていました。
赤ちゃんみたいで、とても情けなかったと思います。いつもはもっとしっかり自分の意見を言えるのに。
母さんのことを考えたら、頭が凍ってしまったんです。
いきなりしゃがみ込んだ私を、みんながはやし立てていました。
早く帰ってくれればいいのに、
どこかへ行ってしまえばいいのに。
何を思っても口には出せず、亀の子のように私は縮こまっていました。
そのとき。
-
199 : 2011/09/27(火) 22:19:03.51 -
「フゥーッハハハハハハハ!! どぉーした小動物!! いつも以上に小さくなっているぞ!!
そんな様子ではこれから貴様は微生物と呼ばねばならんな!! フゥーハハハハハ!!」
-
202 : 2011/09/27(火) 22:22:18.41 -
大きな大きな、あの人の声。ばっと顔を上げると、居ました。
胸の前で腕を平行にして、白衣をぶわさーってやって、顔をちょっとナナメにして、カッコ付けたオカリンおじさん。
周りのみんなはぽかんとしています。
「このイジメっ子どもが! あんまり綯をイジメていると、こわいこわぁいタコ坊主が貴様らの頭を引っこ抜きに来るぞ!」
「イ、イジめてなんかないよ! 綯にどうしてお母さんが居ないのって聞いただけだもん!」
「いいやイジめていたな! 貴様らの意見など聞いていない! この俺が言うんだから間違いないのだよ!」
「な、なんだよそれー!」
「あの人、綯ちゃんのお父さんのお友達? やっぱり、綯ちゃんのお父さんといっしょで」
「そこのリボンしたガキンチョ! いっしょ扱いするな! 綯の父は怖い! 俺は怖くない!」
「な、なにこの人……なんかヤバいって……」
「!? そこのちょっと太ったガキンチョ! 人をヤバい呼ばわりするな! 俺は至って普通人だぞ!」
-
203 : 2011/09/27(火) 22:25:27.10 -
オカリンおじさんのペースでした。おじさんのよく分からないテンションに押されて、さっきまでの嫌な雰囲気はどこかへ飛んでいっていました。
「綯、立て」
おじさんが私の両肩を掴んで、ぐっと立たせました。私の背中を支えて、おじさんの話は続きます。
「綯のお父さんは本当に怖い。俺なんて何度チョークスリーパーでオとされそうになったことか」
「……? チョークの粉で寝ちゃったってこと?」
「阿呆! そのチョークではない! チョークスリーパーとはこうだ!」
「うわぁ! あはははは!」
「やっぱり綯のお父さんは危ない人なんだね~」
「うむ、危ない人だ! ……だがな」
-
205 : 2011/09/27(火) 22:28:08.65 -
「綯のお父さんが怖くて危ないのは、ぜんぶ綯のためなんだよ」調子が変わったおじさんに、みんなが黙りました。
「お前たちのお母さんが死んだら、お前たちはどう思う?」
「……やだ」
「……悲しい」
「お母さんは死なないもん!」
「そうだ。いやだな、悲しいな。死ぬなんて思いたくないよな。
そして、残されたお父さんも悲しい。死んだなんて思いたくない。
でもお父さんは、だからお父さんは、子供を、お前たちを愛して愛して愛しまくるんだよ」私は、おじさんを見つめていました。おじさんも、私を見ていました。
「綯のお父さんが怖かったり危ないのは、綯を愛して愛して愛しまくっているからだ。
だから、綯にいやなことをする奴には容赦しない」「死んだお母さんの分まで、子供を愛するんだ」
-
207 : 2011/09/27(火) 22:31:05.74 -
「……ん? でも……おじさんは、綯のお父さんにいっぱいイヤなことされてるんだよね?」「……フゥーハハハ! よく分かったなクソガキめ! 俺は常日頃から綯をイジメまくっているからな!
あのタコ坊主には目の敵にされているのだよ!」「えぇー!? 綯ちゃんをイジメてるの!?」
「そぉの通りだ! 貴様らのイジメを止めたのも、やり方が手ぬるすぎて見ていられなかったから!
俺もイジメに参加したかったからだ!」「イ、イジメじゃないってば!」
「ほぅ? とすると、貴様らはイジメる側ではない?」
「そうだよ!」
「すると綯の友達か?」
「そうよ!」
「ふん、つまらん! では、俺はこれから綯を一人でイジメるとしよう! 貴様らは指をくわえてそこで見ているがいい!」
「なっ、なんだよコイツ! みんなー、綯を守れー!」
-
210 : 2011/09/27(火) 22:34:16.74 -
なんだかよく分からないうちに、私を置いて取っ組み合いが始まりました。みんなオカリンおじさんに噛みついたり、殴ったり、蹴ったり、タックルしたりしていました。
終わる頃には、おじさんはもうボロボロでした。
「こ、このクソガキどもがぁぁ……!」
「ふーんだ! 思い知ったかしら!?」
「綯! 怪我はないか!?」
「あ……」
今日の放課後までお友達だった男の子が、心配してくれました。だから私は。
「……ありがとう」
心からの、お礼を言いました。彼は一瞬だけ目を見開いて、すぐ下を向いてしまいました。
-
220 : 2011/09/27(火) 22:51:38.16 -
「ちっ……今日のところは勘弁してやる! また合間見える時を待っていろクソガキーズよ!
そのときまで、せいぜい友達を必死に守ることだな……エル・プサイ・コングルゥ。
……フゥーーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」白衣をはためかせ、ちょっとびっこを引きながら、オカリンおじさんは走っていきました。
みんな、二度とくんなー、おとといきやがれー、おとといは来れないでしょ、とか口々に言っています。
後ろから肩を叩かれました。さっきの彼を含めた数人が、ごめん、って言いました。
叫んでいた子たちも、ごめん、ごめんね、って言いました。
私は今度は違う涙が出そうになりました。
「うぅん、いいよ。みんな、私の友達だもん」
親友が、一気に増えた一日でした。
-
225 : 2011/09/27(火) 22:55:29.79 -
ある日。ラボ。
綯「……オカリンおじさん……」
岡部「この時期にお前の訪問……ッ! そして左手には封筒……ッ!」
綯「は、はい。お察しの通り、家賃を」
岡部「ぐっふぅ! よ、よせ綯、近付くな! その封筒には俺の左手の封印を解く呪法が掛けられているんだ!」
綯「はぁ……」
綯(また始まった……なんだっけ、厨二病? 使い所を間違えなければすっごくカッコいいのに……)
綯「じゃあ、封筒はここに置いておきますから、お金だけ」
岡部「な、なんだと!? しまった……感染型の呪いだったか! すまん綯、おまえ自身も呪いに犯されてしまったようだ!
クッ! 俺がもっと早く気付いていれば……ッ!」綯(めんどくさい……)
綯「……何か袋に入れて投げ渡して下さ」
岡部「ぐああああ!! ひ、左手が! 封印が今にも解けてしまう! 逃げろ綯ェェェェェッッ!」
綯「……」ズカズカズカ
岡部「ちょっだから封印が、あっどうして俺の財布の場所知ってやめっ今月は堪忍して電子部品買いすぎてカツカツなのお願いだ綯やめ
イヤぁぁああああああああああ虎の子のゆきっつぁんがああああああああああ!!」 -
230 : 2011/09/27(火) 22:59:00.40 -
岡部「うぅぅ……綯に辱められた……」
綯「な、なに言ってるんですか。それじゃ確かに頂きましたから。お釣りはここに置いておきますね」
岡部「鬼ぃ……悪魔ぁ……萎えぇ……」
綯「私の名前が悪口みたいに言うのやめてくださいっ」
岡部「萎えぇぇぇぇ…………え? おい綯。白衣は?」
綯「え? あ、はい。ラボにいるときはちゃんと大切に着てますよ」
岡部「なぁにぃ……!? ラボメン(仮)ならいついかなる時も戦闘服を着ていなければならんだろうが! 何のためのラボメン(仮)だ!
なんという意識の低さ! やはり貴様はラボメン(仮)だな!」綯「か、かっこかりかっこかり連呼しないで下さい! それに、白衣着てるのなんて紅莉栖おねえちゃんとおじさんしか」
岡部「シャラァップ! 貴様と俺たちとではラボへの貢献度が違うのだよ! 同列に語ろうなど愚の骨頂! 罰として今すぐ白衣を着ろ!」
綯「え、えぇ~、あんまり汚したくないんですけど……」
岡部「汚れてこその白衣だ! 戦闘服の汚れを気にする戦闘員がどこに居る! ほれ着ろいま着ろすぐに着ろ!」
綯「わ、分かりましたよぉ……」
-
233 : 2011/09/27(火) 23:03:01.44 -
綯「こ、これでいいですか?」
岡部「うんむ!!!!」
綯(嬉しそうだなぁ……)
綯(……あ、そうか。紅莉栖おねえちゃんがアメリカに行っちゃったから、もう着る人はオカリンおじさんしか居ないんだ……)
綯「……まゆりおねえちゃんに、もう一着お願いしようかな」
岡部「む? 何か言ったか小動物」
綯「何も言ってませんし小動物じゃないです」
岡部「おいおいおいなんだそれは高度なギャグか!? お前が小動物じゃなきゃ小動物の定義が危ういぞ!?
あ、なるほど微生物と言って欲しいのかそうか。すまなかったな微生物よ!」綯(む、むかつくぅ~……!)
綯「……万年白衣厨二病ガリガリ老け顔オヤジ」ボソッ
岡部「」
綯「あっ……」
岡部「……綯。おじさん怒らないからこっち来なさい。な? こっち来なさいよ。怒らないから」
綯「ひ、ひぃぃ……! と、父さ~ん!」ダダダダ……
岡部「ちょ、おま! ミスターブラウンを頼るのは反則だろ! 待てこの腹黒小動物!」ダダダダ……
-
237 : 2011/09/27(火) 23:07:44.40 -
綯を追い、ドアを勢い良く開け放った俺が目にしたのは。
階段を降りるにしてはやけに前傾した、綯の後ろ姿。
ズダン ダン ダン
音。
重い物が、階段を滑り落ちていく音。
-
246 : 2011/09/27(火) 23:12:04.60 -
「あ……?」そこまでを見て聞いて、やっと俺の体は動いた。
「綯ッッ!!」
階段を段飛ばしで降り、一番下で不自然な体勢のまま倒れている綯を抱き上げる。
「綯、大丈夫か、綯ッ!」
体を揺すろうとして思い止まる。彼女の頭から、つう、と一筋の赤が降りた。
……頭に、怪我をしている。事態は一刻を争う。
-
248 : 2011/09/27(火) 23:16:01.48 -
彼女を静かに抱きかかえたまま工房へ飛び込み、天王寺を呼ぶ。「ミスターブラウンッ! 綯がッッ!!」
「あぁん? 綯がどうし…………おい綯、どうした、綯!! 綯ッ!!」
不用意に触れようとする天王寺を制し、救急車を呼んでもらう。
綯を工房前のベンチに寝かせ、今一度、容態をよく見る。体のあちこちに痣があった。内出血。切り傷も。
工房奥の天王寺へ状況を叫んで伝え、俺はラボへ走る。
清潔なタオルとバケツいっぱいの水を持ち、出血の激しい頭部を中心に当てていく。大汗をかき、青黒くなった綯の顔。ぎりりと拳に力が入った。
(俺が、ふざけていたばっかりに、綯をこんな目に……ッ!)
「綯……踏ん張れよ、すぐに救急車が来るからな……!」
-
251 : 2011/09/27(火) 23:20:02.17 -
3週間後。
-
253 : 2011/09/27(火) 23:24:11.88 -
綯はいまだベッドに体を横たえていた。
子供持ち前の回復力で外傷は全て癒えているのだが、意識だけはいつまで経っても戻らないのだ。自責の念が俺を苛む。
どうして俺はこうも悪ふざけが過ぎるんだ。世界線漂流をする前と何ら変わっちゃいない。勢いで馬鹿やって、後になって後悔する。これで綯が目を覚まさないようなら……俺は、再びタイムトラベル理論を……!
そこまで思い至って、頭を振る。
それだけは駄目だ。俺はもう理論を捨てると決めた。
やってしまった過去は絶対だ。それを受け入れて、前に進まねばならない。
未来だ。綯をこんな目に遭わせた過去を記憶に刻んで、これから先何をするのかが重要だ。気持ちを新たにして、俺は彼女の華奢な手を握る。3週間前より心なしか縮んだ気がする。ミスターブラウンの言っていた通りだ。
最近のミスターブラウンは見ていられない。背を丸め、覇気もなく憔悴しきった彼の様子は、俺の心をきりきりと締め付ける。
彼は妻を亡くしている。このうえ娘に何かあったとなれば、彼がどんな暴挙に出るかは……他世界線から鑑みて、想像に難くない。
いやな想像をむりやりに振り払う。どうも弱気になっていていけない。戦っているのは綯だというのに、五体満足な俺がこんな調子でどうするんだ。
弱い気に魅入られないよう、まるで彼女に縋るように、握った手をさらに強く握り込む。
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257 : 2011/09/27(火) 23:28:13.16 -
……押し返される、感触があった。
-
261 : 2011/09/27(火) 23:31:58.09 -
「……綯……?」彼女の顔を見る。……うっすらと、瞳が開いていた。
「あぁ、あ……!」
顔を覗き込むと、まだ意識ははっきりとしていないようだが、天井に焦点を合わせていることが見て取れた。
「綯……!」
良かった。良かった。加減も忘れて彼女の手を握り、そこでやっと気付く。
「待ってろ、すぐに先生を呼んでくる!」
ナースコールを押し、しかし待っていられず病室を飛び出した。
ちょうど居合わせた看護師に綯が意識を取り戻したことを伝える。
すぐに、いつも世話になっている先生が現れて綯の精密検査を開始した。病室の外で待たされていた俺は、この吉報を皆に届ける。
皆それぞれ用事があるだろうに、そんなもの、と放り出して、次々に病院に駆けつけてきた。「綯……みんな、みんなお前を心配してたんだぞ。良かったな、綯……!」
嬉しくて……赦された気がして。
俺はみんなの前で、隠そうともせず泣いた。
-
263 : 2011/09/27(火) 23:35:22.35 ID:zJbC3ZQ70 -
気が付けば執念オカリンのSSが落ちてた…
なんてこったい…。 -
265 : 2011/09/27(火) 23:36:05.73 -
先生の話では、後遺症も跡になる傷も特になし、入院中の3週間の記憶はぽっかり抜けているが、混濁は見られない。
何も問題はない、全くの健康状態である、とのことだった。ミスターブラウンと抱き合って喜び合った。直後ぶん殴られた。
病室の外に、俺、ミスターブラウン、まゆり、ダル、ルカ子、フェイリス、萌郁、綯の学校の友達、ミスターブラウンの友人が一斉に押し掛けた。
看護師に咎められ、3人ずつで見舞う。ミスターブラウンと萌郁と共に覗いた綯の表情は、なんだか困惑顔だった。
「あはは……な、なんだか、申し訳ない、です」
綯の感覚では、彼女は3週間をずっと、不思議な夢の中にいたようだ。
大けがをしたなんて意識はないのに、突然ちやほやされて居心地が悪いらしい。受け答えは明瞭。血色も良い。3週間前と変わらぬ綯の元気な姿がそこにあった。
とはいえ彼女は病み上がりには違いない。あまり疲れさせないよう、見舞いは手短に済ませ、俺たちは病院を後にした。
それから1週間……経過を見つつ綯はリハビリに励み、先生に太鼓判を押され。無事に退院した。
-
272 : 2011/09/27(火) 23:40:06.95 -
>>263
78 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2011/09/27(火) 22:50:07.79 ID:zU0gtxkv0
ラウンダーC「畜生!!何処だ!ブッ殺してやるッ!!」パラララララッ!
岡部「がはァッ!!クソッ・・・!」 ズズズッ
ガシッ!
岡部「!?」
ラウンダーB「見つけたぜぇ?子猫ちゃんよぉ?遊びは終わりだな」 ゴリッ
岡部「飛べ・・・ッよぉ・・・ッ!」 スッ
パララッ
岡部「」 カタッ
まゆり「オカ・・・リン・・・」
ギューーーーーーーーーーーンッ!!!!
-
273 : 2011/09/27(火) 23:40:08.26 -
「ふあぁー……!」エントランスを出てすぐ、秋の空っ風が横なぎに吹きすさんだ。綯は体を大きく大の字に開き、全身で久しぶりの風を楽しんでいる。
俺とミスターブラウンがいちいち世話を焼きながら、自宅へと戻る。
綯の足取りは、俺たちの補助が不要なほどにしっかりとしていた。退院したてとは思えない。子供とは凄まじいものだ。翌々日には学校へも行き始め、その日の帰り。
「3週間ぶりのラボになるんですよね? そんな感じはしないけど……あ」
3週越しにラボへ来た綯は、窓際で風に揺れる小さな白衣に目を留める。
つま先立ちになって無理に取ろうとするので、俺はすぐさま駆け寄って代わりに取ってやる。やはり綯には自覚が足りていない。恥ずかしそうにもごもごと礼を言い、綯は白衣を着た。
似合っていた。丈も袖も綯にピッタリのそれは、もともと綯の体の一部であるかのようだ。
一気に彼女の雰囲気が締まったように思えて、赤い髪の女が脳裏にちらつく。
綯が俺を見ていた。俺の白衣と、自分の白衣を交互に。
どうした、と首を傾げると、彼女は突然。「ごめんなさい、オカリンおじさん」
俺の足に縋り付き、泣き始めた。俺は何も反応できず、ただ突っ立っていることしか出来ない。
そんな俺に構わず、彼女はずっと泣き続けていた。わけはわからないが、彼女は俺のために泣いている、そう感じた。
小さな綯の頭を撫でてやる。しゃくりあげる声が少し止まる。そのままずっと撫でていた。密やかで、優しい時間が流れた。
-
277 : 2011/09/27(火) 23:44:01.27 -
——————
————
——2ヶ月は短かった。
電脳デートを毎日楽しみ、迫りくる12月に胸を高鳴らせた。
ディスプレイ越しには分からない、本物の橋田のふいんき(ryやあたたかみやにおいを、早く感じたかった。
想像の中にしかない、彼に抱きすくめられる感触を想い心を震わせた。
早く会いたい。彼に会いたい。橋田に、会いたい。
-
279 : 2011/09/27(火) 23:47:59.74 -
ダル「……しあさってだな」
紅莉栖「うん……今日が最後のSkypeになるわね。と言っても2週間そっちに滞在したらまたすぐ戻ってくるんだけどさ」
ダル「2週間、めいっぱい楽しもうず」
紅莉栖「うん。橋田に会ったら、まずぎゅってしたい」
ダル「だめだお。僕がする」
紅莉栖「ふふ、分かった。ちゅーもしてね?」
ダル「うん、僕からする。あわよくばその先にも行く」
紅莉栖「ぶっ。……ほんとストレートよね、あんたって奴は」
ダル「だってしたいお。牧瀬氏と」
紅莉栖「……うん、私も」
-
281 : 2011/09/27(火) 23:51:58.57 -
紅莉栖「……そう、綯は無事なのね」
ダル「うん、骨折もなかったし、後遺症が残るようなこともないって。術後の経過もぉk。今は至って普通に生活してる」
紅莉栖「そっか……良かった……」
ダル「オカリンが近くに居て良かったよホント。頭打ってたから、早期に処置できてなければヤバかったって」
紅莉栖「今回ばかりは岡部GJだわ。リーダーの面目躍如ね」
ダル「入院中も付きっきりで看病してたしな……。やっぱあいつは、ラボのリーダーだよ」
紅莉栖「そうね……岡部のおかげで私たちの関係もあるんだし。帰ったら労ってあげようかな」
ダル「あ、僕にもお願いします! オカリンが居ない間ラボの留守を守ってました!」
紅莉栖「はいはい。あんたは別口でちゃんと労ってあげるわよ」
-
283 : 2011/09/27(火) 23:55:58.23 -
紅莉栖「みんなに会うの、楽しみだなぁ……楽しみだけど、今年最後のこのSkypeも切りたくないわ」
ダル「名残惜しい感じがするよな……。僕、牧瀬氏の顔が画面から消える瞬間が毎回嫌いなんだよね」
紅莉栖「私も。味も素っ気もなく橋田が消えちゃうんだもん。こう、消えていく感じとかさぁ、もっと欲しいわよね」
ダル「そういうナマの感覚はやっぱ3日後のお楽しみかな。……はっ!」
紅莉栖「言わないわよHENTAI」
ダル「えぇー今更じゃんか。言ってくれおー」
紅莉栖「3日後を楽しみにしてなさい」
ダル「ちぇ、分かった」
紅莉栖「ふふ、じゃあまた。ばいばい橋田」
ダル「うん、牧瀬氏をぎゅって出来るの楽しみにしてるお。じゃね牧瀬氏」
-
285 : 2011/09/27(火) 23:59:58.38 -
お決まりのカメラ越しのキスをして、私と僕は、Skypeを同時に切った。
そして、あっと言う間に2日は過ぎ、私と僕が再会する日。
-
286 : 2011/09/28(水) 00:02:11.61 -
2010年12月27日。秋葉原駅。
まゆり「紅~~莉~~栖~~ちゃ~~~~~ん!!」紅莉栖「ま~~~ゆ~~~り~~~!!」
ダキッ!
まゆり「紅莉栖ちゃん久しぶりぃ~! ちょっと背大きくなった?」
紅莉栖「なるか! もうほぼ成長止まってるわよ!」
ダル「……」
紅莉栖「そこのHENTAIどこ見てんだコラ!」
岡部「よくぞ帰ったクリスティィ~ンナッ! 貴様の居ないあいだ我がラボは激しい戦力ダウンに喘いでいたぞ! お前の終生の地は未ガ研にあると知れ!!」
紅莉栖「はいはい久しぶりの岡部節は聞き応えあるわね。心配しなくても、ラボは私の第二の故郷よ」
岡部「嬉しいこと言ってくれるじゃないの……ラボに来てうーぱクッションをファックしていいぞ」
紅莉栖「死ねHENTAI!! 綯を面倒みてあげたって言うからちょっと見直してたのに……あ、綯!」
綯「紅莉栖おねえちゃん!」
紅莉栖「ごふ! ふ、腹部にタックルはよしなさいタックルは。体にも障るわよ?」
綯「むぅ、みんなそうやっていつまでも心配する。私もう大丈夫ですよ?」
紅莉栖「ふふ、我慢なさい。みんなあんたが大好きなのよ。心配し過ぎなくらいが丁度いいの」
-
287 : 2011/09/28(水) 00:05:58.84 -
るか「お帰りなさい、牧瀬さん」
紅莉栖「相変わらず綺麗ねあんたは……ただいま、るか。あれから素振り「修行だ愚か者!」はどう?」
るか「はい……60回は出来るようになりました」
紅莉栖「……岡部、あんた今度るかと腕相撲してみなさい」
岡部「フッ、なな何をばばばかなことを。師匠より優れた弟子など存在しない!!」
紅莉栖「その論が真なら人類は衰退していく一方じゃないアホか。そして萌郁さん! シャッター音うるさい!」
萌郁「……2ヶ月前と、ポーズ、一緒……」
紅莉栖「う、うっさい! どうせ消してないでしょうから今この場で2ヶ月前含めデータを消させてもらうわ!」
店長「そこら辺にしとけ萌郁。紅莉栖嬢をからかうな」ヒョイ
萌郁「あぁ~……携帯が……」
店長「嬢ちゃんもいつまでも面白リアクション取ってねーで学習しな。さてはいじめられっこ体質か」
紅莉栖「!? き、禁句!! それ以上の指摘は店長さんと言えど許しませんよ! 人の過去を窺うの禁止!」
店長「お、おぅ、すまんかった……」
-
290 : 2011/09/28(水) 00:10:00.33 -
フェイリス「必死すぎワロニャ」
紅莉栖「留未穂ひさしぶり! 今なんか言った!? 猫耳引っこ抜くわよ!」
フェイリス「やめるニャ! フェイリスの猫耳を外したらアキバに闇の障気が溢れて途端に死のまt」
紅莉栖「しっかし寒い! 日本寒すぎ、夏は蒸し暑くて冬は乾いてて寒いとか誰得よ!」
フェイリス「無視すんニャー!」
岡部「だからこそ四季を感じられるのだよ。メリケン処女には山紫水明は理解できんかな?」
紅莉栖「コンクリジャングルのアキバで白衣男がぶるぶる震えながら何か言ってます本当に(ry」
まゆり「オカリンは骨皮筋えもんさんだから、寒さや暑さをダイレクトに感じちゃうんだよね~。もっとダルくんみたいにお肉付けなきゃだめなんだよ?」
萌郁「……橋田君は……付けすぎ……」
紅莉栖「言えてる。岡部も橋田も両極端よ。あとデブだからって寒さに強いと思うなよって私じゃなくて橋田が言いなs」
ダル「サムイ」
紅莉栖「はっ、橋田ァァーッ!? く、くちびる紫ワロエナイ! どどどどっかカフェ入ってあったまりましょ!」
-
296 : 2011/09/28(水) 00:22:14.74 -
紅莉栖「橋田ぁ~っ!」
ダル「牧瀬氏ぃ~っ!」
紅莉栖「橋田ぁ……待ちに待った橋田の感触ktkr……あぁ、あったかい……思ってた以上に柔らかい……」
ダル「よ、予想以上にピザで悪かったな! 牧瀬氏こそ柔らかいっての!」
紅莉栖「え!? ふ、太ってはないはずなんだけど」
ダル「オパーイが」
紅莉栖「HENTAI! ……もう。うりゃ、もっと味わえ」
ダル「ちょ、そ、そんな押し付けられたら柔らかいところが固くなってしまいますお!」
紅莉栖「重ね重ねHENTAI! ふーんだ、固くなっちゃえ、うりうり」
ダル「ちょちょ、ちょちょちょ!」
-
298 : 2011/09/28(水) 00:25:59.67 -
紅莉栖「テ、テレビ電話でいろいろしたんだから今さらじゃない。何を恥ずかしがることがある!」
ダル「お、男らしー! ……牧瀬氏がそのつもりならこっちも!」
紅莉栖「ひゃん! い、いきなり胸は、やぁ、ん……」
ダル「うひょー! ままま牧瀬氏の胸やらかすぎワロタ……」
紅莉栖「も、揉みながら奇声を上げるなばか……あぁん、はしだぁ……」
ダル「……ま、牧瀬氏……」
紅莉栖「え、ちょ、ほ、ほんと? し、しちゃうの……?」
ダル「……」
紅莉栖「あ、まってよはしだ……心の準備が、ぁん、ふあ……」
ダル「……」
-
302 : 2011/09/28(水) 00:29:58.20 -
ダル「……ッス、ストップ! っし耐えた! 僕よく耐えた! おぱいの誘惑に耐えてよく頑張った感動した!」
紅莉栖「は、んん……あ、あれ、しないの……?」
ダル「まずちゅっちゅだお!」
紅莉栖「……あはは、そういえばそんなこと約束したわね。流されちゃってたわ」
ダル「このままえっちに雪崩込んでももちろんアリだったけど……やっぱまずちゅーしたい」
紅莉栖「あんたも根っこは純情よねぇ……。……分かった」
ダル「……」ガシッ
紅莉栖「ん……」
ダル「……牧瀬氏、愛してるお」
紅莉栖「私も……橋田、愛してる」
-
306 : 2011/09/28(水) 00:34:02.26 -
莉栖「…………ちゅ」
ダル「……」
紅莉栖「んちゅ、……ふぅ、……ん」
ダル「ん…………ふ……」
紅莉栖「ふあ…………はぁぁ……、はしだぁ……」
ダル「キ、キスって、すごいな……」
紅莉栖「うん……」
ダル「……牧瀬氏……」
紅莉栖「もっと……したいように、してもいいんだよ? はしだ……」
ダル「……オ、オーキードーキー。え、遠慮なしでやっちまうお?」
紅莉栖「うん……来て……」
-
310 : 2011/09/28(水) 00:38:02.87 -
……大檜山ビル前。岡部倫太郎が、階段を上がっていく。トン トン トン
岡部「しまったしまった、この俺としたことが定期を忘れてしまうとは。なんたる不覚」
トン トン トン
岡部「改札前でもたつく恥ずかしさは異常。照れ隠しについ定時連絡をしてしまったぞ。フゥーハハハ。これもシュタインズ・ゲートの選択か……」
トン トン トン
ガチャ
岡部「ん? 鍵が開いている?」
岡部「誰か居るのかー……?」
-
407 : 2011/09/28(水) 02:14:30.63 -
オカリンマジキチに見えるが
・勝手に刺されてオカリンに目撃される
・ラボに自ら出向く
・αで手を差し伸べる(オカリンが助けを乞うたのは後)
・βで「忘れないで」、「たまには思い出して」、「相対性理論(ry」発言
・完全に別な人生を歩もうとオカリンが覚悟しる中で秋葉徘徊恋愛方面で呪いかけてんのクリスだよなどう考えても
-
598 : 2011/09/28(水) 04:31:58.41 -
綯「こ、これでいいですか?」
岡部「うんむ!!!!」
綯(嬉しそうだなぁ……)
綯(……あ、そうか。紅莉栖おねえちゃんがアメリカに行っちゃったから、もう着る人はオカリンおじさんしか居ないんだ……)
綯「……まゆりおねえちゃんに、もう一着お願いしようかな」
岡部「む? 何か言ったか小動物」
綯「何も言ってませんし小動物じゃないです」
岡部「おいおいおいなんだそれは高度なギャグか!? お前が小動物じゃなきゃ小動物の定義が危ういぞ!?
あ、なるほど微生物と言って欲しいのかそうか。すまなかったな微生物よ!」綯(む、むかつくぅ~……!)
綯「……万年白衣厨二病ガリガリ老け顔オヤジ」
岡部「……」
綯「あっ……」
岡部「……綯。おじさん怒らないからこっち来なさい。な? こっち来なさいよ。怒らないから」
綯「ひ、ひぃぃ……! と、父さ~ん!」ダダダダ……
岡部「ちょ、おま! ミスターブラウンを頼るのは反則だろ! 待てこの腹黒小動物!」ダダダダ……
-
782 : 2011/09/28(水) 09:04:32.24 -
紅莉栖「と……もうこんな時間か。至、ちょっとコーヒーブレイクしましょ」
ダル「んー、紅莉栖は休んでてくれお。僕はもうちょっとキリのいいとこまで……」カタカタカタ
紅莉栖「そんなこと言って、昼からずっとソースコードと睨めっこしてるじゃない」ムギュー
ダル「んー……」カタカタカタ
紅莉栖「む」
ダル「おわ。ちょ、紅莉栖抱きつくなお。前が見えな」
紅莉栖「少しは休めって言ってんのー、ていうか構えこの」ギュゥー
ダル「いでで、分かった分かった。休みますから一回離れろって」
紅莉栖「だーめ、あんたも抱き返してくんなきゃ離れませんー」
ダル「はぁ、世話の焼ける嫁だお……」ギュー
紅莉栖「えへへ、もっともっと。もっとぎゅーってしてくんなきゃヤd」
綯「お前らその辺にしとけ」
ダルクリ「「!!?」」
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786 : 2011/09/28(水) 09:07:56.67 -
綯「開発室のカーテン閉まってるから別にイチャついてもいいやとか思ってました? 丸聞こえだよコノヤロウ。
ラボは共用空間なんですから。隠れてイチャつくなんて卑猥なマネはよして下さい」
ダルクリ「「すみませんでした……(卑猥て……)」」
綯「ほら、倫太郎さんもあのとおり鬱陶しくなっちゃってるし」
岡部「あ、もしもしダル殴り代行ですか? はい、はい、主に下半身を。ええ、星屑の握撃もセットで」
紅莉栖「新次元の厨二病に罹かっている……」
ダル「ダル殴り代行てなんぞ……つかオカリンも綯たんとイチャイチャすりゃいいんじゃねーの?」
岡部「ははは、お前分かってて言ってるだろ?(笑顔)」
ダル「ふふふ、もちろんだお(笑顔) イチャついた瞬間タイーホ乙! 性犯罪者乙! ペド乙! 凶気のマッドロリコンティスト乙!」
岡部「人が気にしてることを余すことなく言いやがったなスパハカぁぁぁあッッ!!
代行を待つまでもない、この俺自ら目標を駆逐するッッ!!」ギャー! ギャー! ……!
紅莉栖「疲れてるだろうに、どうして岡部とああいう馬鹿やる元気はあるのかしら。やっぱり男同士だからかなぁ」
綯「いくつになっても男は子供、って言いますし。父さんも昔の友人と話すときは可愛らしい少年のような表情ですよ」
紅莉栖(小6が実父に対してその発言はどうなんだ……)
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790 : 2011/09/28(水) 09:11:13.24 -
ダル「ちょ、オオオオカリン、ギブ、まじギブ、死ぬ、このままじゃオチ、オチ……オ……」カックリ
岡部「ミスターブラウン直伝チョークスリーパーの前に敵はない……!」
綯「倫太郎さんの勝ちー」
紅莉栖「至もこれでやっと休めるわね。岡部、足持ってやってくれる? ソファに寝かせてあげたいから」
岡部「ん、いいだろう」
紅莉栖「よしっと……ありがと岡部」
岡部「ん? お前もソファに座るのか? というか座れるか? ダルの巨体が端から端まで占拠してoh…」
綯「oh…膝枕ですか……」
紅莉栖「あはは、こいつこうやって寝るのが好きなのよ。起きてる時にやるとすぐHENTAI行為に走るから、寝てる時くらいは……ね」
ダル「すぅ……すぅ……んご、紅莉栖……」
紅莉栖「はいはい、私はここに居るわよ。ほら、帽子も脱いで」
岡部(なんだこのリア充オブリア充……叩き起こしてぇ……)
綯「なんだかお母さんみたいですね、紅莉栖おねえちゃん」
紅莉栖「お、お母さん? 至の奥さんみたいってこと? ほんとに? えへへ、もっと言って綯ー♪」
綯「はいはい紅莉栖おかあさん紅莉栖おかあさん」
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799 : 2011/09/28(水) 09:14:17.50 -
岡部「紅莉栖、ロシアの件以来おまえ少々ダルを甘やかし過ぎではないか? あまり調子に乗らせるとコイツのことだから際限無く」
紅莉栖「別に私は際限なくなってもいいのに、最近はむしろ至の方が引き気味なのよ。ちょっと押し過ぎなのかな……」
岡部「」
綯「なんというデレデレ。ツン成分はどこ行った。これは明らかにダルおじさんの影響」
紅莉栖「そうかなぁ。実感はないけど、私そんなに変わった?」
岡部「……あぁ、変わったな。もう昔のツンっぷりは見る影もない」
紅莉栖「そう……変わったか。至に変えられちゃったんだ。そっか……」
綯「うわぁ嬉しそう。ダルおじさんホント愛されてるなぁ……」
岡部「ダル殴り代行ですか? えぇ、今邪魔するのはアレなんで、自宅にいる無防備なとこを狙って(ry」
紅莉栖「ねえ至聞いた? 私、あんた色に染まっちゃったってさ。ふふ……」
綯「ダルおじさん殴り代行ですか? えぇ、今邪魔するのはアレなんで、一人になった時を見計らって(ry」
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803 : 2011/09/28(水) 09:18:24.60 -
ダル「んん、紅莉栖……」ゴロリ
紅莉栖「ひゃっ、おなかに顔押しつけるなっ……! ……もう、今だけよ?」
綯「ウボァー……いよいよ固有結界を張り始めたよ。お邪魔みたいだし、下行く?」
岡部「断る!! リア充にわざわざ気を使うほど俺は人間出来ちゃいない!!」
綯「器ちっさー。下行ったら私が膝枕してあげるからさ」
岡部「はぁん? そのほそっこい足で? 膝枕? まだまだ肉付きの足りてない小房が? 俺に? 膝枕?」
綯「……へぇ、わざわざそっちの方向で喧嘩売ってくるんだ、へぇ~」
岡部(……しまった)
綯「本当に肉付きが足りてないか……確かめてみる? 倫太郎さん……」
岡部(ぐううっ!? あ、相変わらず小学生のする目じゃない!)
綯「ねぇ……ほら、ここ、触ってみなよ。ちょっと撫でるだけ、指を滑らせるだけでいいから……」
岡部(中の人はおばさん中の人はおばさん中の人はおばさん中の人はおばさん中の人はおばさん」
綯「途中から口に出てるぞコラ」
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810 : 2011/09/28(水) 09:22:14.18 -
ラボを出て。ブラウン管工房。
綯「別に中の人おばさんじゃないってば。そりゃ倫太郎さんよりは年上だけど」
岡部「で、ほんとは何歳なんだ?」
綯「女性に年を聞くんじゃありません」
岡部「ほら、教えてくれないじゃないか。おばさんかもしれんだろ」
綯「だから違うといっとろーが……」
岡部「というよりな、お前を脳内でおばさん扱いしていないと、タイーホ的な意味で俺の危険が危ないんだ」
綯「……ほう? 色仕掛けはそれなりに効果あるわけね? ほうほう」
岡部「ぐっ……! ……冗談でもああいうのはやめろ。
俺にロリコンのケは無いが、外と中のギャップでお前かなり凄まじい事になってるから」綯「それってもうちょっとでオチそうですーっていう自供?」
岡部「そ、そんなわけあるかそんなわけあるかそんなわけあるか!」
綯「必死すぎワロタ。……ま、”本気”はまだ出さないでおいてあげるわよ」
岡部「ゾクッ……い、今なにか言ったか綯。背筋が凍えたんだが……」
綯「気のせいじゃなーい?」
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816 : 2011/09/28(水) 09:25:16.69 -
岡部「……それで、綯」
綯「お? 久々のマジ声」
岡部「茶化すな。あれから夢はどうだ」
綯「相も変わらず。ま、仕方ないよ。これが私に課せられたリスクってことでしょ」
岡部「……目元のクマも、その内メイク程度では隠せなくなるんじゃないか」
綯「そうなったらそうなったで、ガリ勉キャラを装えばいい話。
それに倫太郎さんの言うことが本当なら、私ってすごく魅力的な女の子なんでしょ?
ならクマっていうマイナスがあった方が、変な男も寄りつかなくてs」岡部「綯!」
綯「……」
岡部「……俺は本気で心配してるんだ。頼むから、茶化さないでくれ……」
綯「……」
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845 : 2011/09/28(水) 09:54:49.39 -
「これが、俺たちの」 「これが、私たちの」
「「選択だよ」」
—— Never End ——
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