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1 : 2015/04/29(水) 23:48:29.10 -
提督「・・・・・・」
島風「・・・・・・」
提督「島風、今日は良い天気だぞ」
提督「いきなり気温が高くなってな」
提督「最近は水分を多く取るようにしているよ」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430318899
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430318899/
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2 : 2015/04/29(水) 23:50:24.01 -
提督「(島風は特殊な例なのだろうか)」
提督「(脳死と判定されてから、もう半年になる)」
提督「(通常は1~2週間で死亡するはずだが)」
提督「(島風の心臓はまだ動いている)」
提督「(生きているんだ、島風は)」
提督「(・・・・・・)」
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3 : 2015/04/29(水) 23:53:59.31 -
提督「(半年前の、あの日の出撃で)」
提督「(島風は敵艦隊の砲撃を食らい)」
提督「(頭部に非常に強い衝撃を受けた)」
提督「(何とか鎮守府に戻ってはこれたものの)」
提督「(そのまま意識は戻らなかった)」
提督「(入渠でも直らず、今に至る)」
提督「(そしてついに、脳死と判定されてしまった)」
提督「・・・・・・」
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4 : 2015/04/29(水) 23:56:13.98 -
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
島風『提督おっそーい!』
島風『びゅーん! びゅーん!』
島風『えへへ! 私って速いでしょー!』
島風『提督ぅー! 一緒に遊ぼう!』
提督「・・・・・・」
提督「(島風・・・)」
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5 : 2015/04/29(水) 23:59:41.20 -
提督「(どうしてこんなことに・・・)」
提督「なぁ、島風、あんなに元気だったじゃないか」
提督「あんなに速く走っていたじゃないか」
提督「本当は起きているんだろう? もうおふざけは止してくれ」
提督「なぁ、頼むよ島風」
提督「もう一度、俺に笑顔を見せてくれよ」
提督「島風・・・!」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
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6 : 2015/04/30(木) 00:01:44.84 -
提督「うっ・・・」ウル
提督「ぐすっ・・・はぁーーーーーー・・・・・・」
提督「・・・・・・」
提督「・・・すまない、少し部屋を出るよ」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
提督「」スッ
提督「」トボトボ
バタン
島風「・・・・・・」
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7 : 2015/04/30(木) 00:03:10.13 -
提督「・・・・・・」
天津風「あなた・・・」
提督「天津風か、どうした?」
天津風「大丈夫?」
提督「あぁ・・・」
天津風「そう・・・」
提督「・・・・・・」
天津風「・・・・・・」
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8 : 2015/04/30(木) 00:06:31.55 -
提督「(島風はもう、話すことも)」
提督「(動くことも、食べることもできない)」
提督「(でも、確かにそこに存在はしている)」
提督「(元気だった頃の、姿形はそのままで)」
提督「(でも、もう俺に微笑みかけてくれることはない)」
提督「(それが残酷で・・・残酷で・・・)」
提督「(・・・・・・)」
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9 : 2015/04/30(木) 00:08:12.44 -
提督「(脳死というのは、脳だけが死んで)」
提督「(身体の他の部分は生きているという、極めて特殊な状態だ)」
提督「(生きた身体に死んだ脳、脈の触れる死体・・・なのだろうか)」
提督「(脳機能の不可逆的停止というのが、脳死という言葉の定義だ)」
提督「(脳死と診断された場合、脳全体の機能が失われていて)」
提督「(もう元には戻らない)」
提督「(この状態では、島風が自力で呼吸することは不可能だ)」
提督「(自発呼吸は、脳幹がコントロールしているからだ)」
提督「(そのため、脳死状態には呼吸を機能的に維持する人工呼吸器が必要となる)」
提督「(そこが、植物状態との根本的な違いだ)」
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10 : 2015/04/30(木) 00:10:10.79 -
提督「」パチ パチ
島風「・・・・・・」
提督「島風、爪伸びてきたな」
提督「あと髪も伸びてきたな」
提督「今度切ってやるからな」
提督「」パチ パチ
島風「・・・・・・」
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11 : 2015/04/30(木) 00:14:51.71 -
提督「(艦娘の脳死・・・史上初の例だ)」
提督「(人権もない艦娘に対して、どのような処置を下せば良いのか)」
提督「(俺は延命処置をすることにした)」
提督「(最初の頃の俺は、何が何だかわからなくなっている状態・・・)」
提督「(つまりパニックになっていた)」
提督「(後のことなども考えず、ただ島風に生きていてほしいと思うだけで)」
提督「(こうなってしまった)」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
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12 : 2015/04/30(木) 00:17:20.88 -
提督「(どの時点を死とするのだろうか)」
提督「(死の定義には、潜在的な救命能力が確かにあるとは思う)」
提督「(どのレベルで死と呼ぶことにしたとしても)」
提督「(それは恣意的な決定だと思う)」
提督「(心臓の死だろうか)」
提督「(毛はまだ成長する)」
提督「(脳の死だろうか)」
提督「(心臓はまだ動いている)」
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13 : 2015/04/30(木) 00:18:27.84 -
提督「(人間が任意に決められる状態、ということなのだろうか?)」
提督「(人間、そして艦娘の生から死への移り行きは)」
提督「(丁度昼から夜への移り変わりのように、連続的に変わっていく)」
提督「(その連続的な変化のどこかに、死というはっきりした切れ目があるわけではない)」
提督「(死は一時点での出来事ではなく、一定の時間の幅のある過程なのだろうか)」
提督「(太陽の上縁が、水平線に隠れる時を日没の時刻とするのと同じように)」
提督「(人間が決めたものに過ぎない)」
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14 : 2015/04/30(木) 00:20:11.25 -
提督「(そうした人間の定義とは独立に)」
提督「(死の時点が客観的に決まっているわけではない)」
提督「(と言っても、生物学的な事実を完全に無視できるということではない)」
提督「(生物学的事実を離れて、死を勝手に決めるとおかしくなる)」
提督「(それだけではない)」
提督「(さらに、人間社会の側の受け止め方や考え方が大きな役割を果たす)」
提督「(死の時点の決定には、誰もが死として納得できることが重要となる)」
提督「(今の島風の状態では、賛否を一刀両断にできるような客観的基準はない)」
提督「(見えない死・・・? バカな)」
提督「(島風はまだ生きている)」
提督「・・・・・・」
島風「・・・・・・」
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15 : 2015/04/30(木) 00:21:42.11 -
提督「島風、体拭いてやるからな」
島風「・・・・・・」
提督「よいしょ」スッ
提督「」フキフキ
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」フキフキ
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16 : 2015/04/30(木) 00:25:53.34 -
提督「(俺はもしかしたら、自分のことしか考えていなかったのかもしれない)」
提督「(今の状況になって、酷く残酷に思えて仕方がないのだ)」
提督「(俺は島風に生きてほしいと願った)」
提督「(だが、島風はどうなのだろうか・・・?)」
提督「(意識がなく、自分から行動することもできず)」
提督「(また、今自分がどういう状態にあるのかも把握できず)」
提督「(俺が島風に対して何をしているかも・・・)」
提督「(・・・・・・)」
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17 : 2015/04/30(木) 00:27:27.26 -
提督「(判断能力のない者の治療方針は誰が決めるのか)」
提督「(他者が命の決定を代わりにするしかないのか)」
提督「(今の島風にはコンピテンスがない・・・)」
提督「(つまり、艦娘としての本来の意味での権利を失っている)」
提督「(自立尊重、仁恵、無危害・・・相容れない原則同士の衝突が発生している)」
提督「(俺は一体どうすれば良いのだろうか・・・)」
提督「(・・・・・・)」
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18 : 2015/04/30(木) 00:29:36.59 -
島風「・・・・・・」
提督「島風、今日はもう仕事が終わったよ」
提督「まぁ、もう夜だがな」
提督「・・・・・・」
提督「・・・おやすみ、島風」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
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19 : 2015/04/30(木) 00:32:26.74 -
提督「(自然死は広い意味での安楽死に含まれる)」
提督「(安楽死とは、助かる見込みがない者を苦痛から解放する目的で)」
提督「(延命のための処置を中止したり、死期を早める処置をとること)」
提督「(このうち、延命処置の中止は、毒薬の投与などによって)」
提督「(人間をじかに殺す積極的安楽死と区別して、消極的安楽死に分類される)」
提督「(積極的安楽死が慈悲による殺人と呼ばれるのに対して)」
提督「(消極的安楽死は治療停止、死ぬに任せることと呼ばれ、殺人とは区別されてきた)」
提督「(それをする者と、される者との間に成り立つ1つの行為である)」
提督「(死ぬ権利という言い方では、双方の関係が捻じれてしまう)」
提督「(安楽死・・・奇妙な響きだ・・・)」
提督「(気持ち悪くなってきた・・・少し休もう・・・)」
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20 : 2015/04/30(木) 00:34:02.88 -
島風「・・・・・・」
提督「島風、今日も暑いな」
提督「あんなに雨ばっかり降って、気温もまだまだ低かったのに」
提督「おかしいよな、本当に」
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
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21 : 2015/04/30(木) 00:36:56.70 -
提督「(最近、考えがまとまらなくなってきた)」
提督「(何が正しいのか)」
提督「(俺はどうすれば良かったのか)」
提督「(島風は何を望んでいるのか)」
提督「(もし、俺があの日島風を出撃させなかったら)」
提督「(・・・・・・)」
提督「(自分が・・・わからなくなってきた・・・)」
提督「・・・・・・」
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22 : 2015/04/30(木) 00:38:08.83 -
提督「(そして俺は、ある日夢を見た)」
提督「(いつもの部屋、島風が寝ているベッドがあって・・・)」
提督「(でも、島風は起きていた)」
提督「(しっかりと目を開けていて、俺を見ると微笑んだ)」
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23 : 2015/04/30(木) 00:39:11.24 -
島風「提督、来てくれてありがとう」
提督「島風・・・?」
島風「まぁ、色々言いたいことはあると思うけど・・・」
島風「今は私の話を聞いてくれるかな?」
提督「あ、あぁ・・・」
提督「(島風が話している)」
提督「(懐かしいな・・・涙が出てくる)」
提督「(そうか、これは夢なのか・・・)」
提督「(しっかり島風の話を聞いてあげなくては)」
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24 : 2015/04/30(木) 00:40:11.10 -
島風「提督・・・」
提督「なんだ? 島風」
島風「その、ね? 私さ、今こんな状態でしょ?」
提督「・・・・・・」
島風「そろそろお終いにしてよ」
提督「お、おいおい、それはどういう意味だよ・・・」
提督「・・・・・・」
島風「提督ならわかるでしょ? 私、もう苦しいんだ」
提督「・・・ダメだ」
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25 : 2015/04/30(木) 00:41:25.62 -
島風「私はもう意識が戻らないんだよ?」
島風「何処へでも良いから、逝ってしまいたい」
島風「こんな状況でこの世にしがみついているのは御免なの」
提督「島風・・・」
島風「あと私は何日我慢すれば良いの?」
島風「2、3日? それとも2、3週間?」
島風「こんなに管をたくさんつけられて、実験動物みたいに縛り付けられているのは嫌だよ」
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26 : 2015/04/30(木) 00:42:22.53 -
島風「このまま死ぬしかないんだから、早く逝かせて・・・お願い・・・」
島風「何とかして・・・もう辛いの・・・」
提督「・・・・・・」
島風「私の命だから、私の好きなようにさせて・・・」
島風「私は元々わがままな艦娘だったけど」
島風「これが最期のわがまま」
島風「お願い、提督・・・」
島風「私を殺して・・・・・・」ポロポロ
提督「・・・・・・」
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27 : 2015/04/30(木) 00:44:09.92 -
提督「うわぁっ!?」ガバッ
提督「はぁーっ・・・! はぁーっ・・・!」
提督「・・・・・・」
提督「嫌な・・・夢だ・・・」ダラダラ
提督「・・・・・・」
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28 : 2015/04/30(木) 00:47:57.70 -
提督「(だが、その夢は何度も続いた)」
島風『提督、もう私のことは忘れて』
島風『まるで自分じゃないみたいな感じなの』
島風『私は提督に、もうこれ以上迷惑をかけたくない』
島風『辛いのは私だけじゃなくて、提督もだと思う』
島風『殺して・・・殺して・・・』
島風『私を』
島風『殺して・・・・・・』
提督「・・・・・・」
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29 : 2015/04/30(木) 00:50:01.42 -
島風「・・・・・・」
提督「・・・・・・」
提督「・・・なぁ、島風」
提督「夢の中に出てくるお前は、本当に島風なのか?」
提督「やっぱり・・・辛いのか・・・」
提督「・・・・・・」
提督「」ナデナデ
島風「・・・・・・」
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34 : 2015/04/30(木) 01:11:52.51 -
提督「(島風の髪、柔らかいな・・・)」
提督「(・・・・・・)」
提督「(・・・島風からすれば、スパゲッティ症候群と呼ばれるような状態で)」
提督「(無理矢理最新の機械を使って、命をながらえさせられるのはかなわないんだな)」
提督「(・・・・・・)
提督「(尊厳死・・・)」
提督「(・・・・・・)」
島風「・・・・・・」
提督「・・・島風」
提督「ゴメン・・・・・・」
提督「・・・・・・」
提督「・・・・・・・・・」
スッ・・・・・・
島風「(提督)」
島風「(ありがとう・・・・・・)」
終わり
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