吹雪「解体してもらおうかな……」


1 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:21:10.41 ID:6Y634FX/o
提督「また大破で帰還か、吹雪。相変わらず戦果が芳しくないようだな」

吹雪「す、すみません。次は頑張ります!」

提督「頑張ります、ねぇ。それを聞くのも何度目だろうな」

吹雪「…………」

提督「お前がこの鎮守府に配属されてから、どれだけ経った?」

吹雪「えっと……2年とちょっと、です」

提督「その間、一度でもMVPを取ったことがあったか?」

吹雪「い、いえ……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1433064060


ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433064060/


2 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:22:30.70 ID:6Y634FX/o
提督「ほとんど大破、よくて中破。お前のために道中で引き返したのも一度や二度じゃない」

吹雪「……すみません」

提督「私もMVP、つまり特別なことをしろとは言わん」

吹雪「…………」

提督「ただ、他の駆逐艦にできることくらいはできないものか。それすらも期待しすぎだと?」

吹雪「い、いえ! 次こそは必ず!」

提督「まあ、いつも返事だけはいいがな」

吹雪「…………」


3 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:25:56.30 ID:6Y634FX/o
吹雪「——はぁぁ。また怒られちゃった……」

加賀「ひどい溜息ね」

吹雪「あっ、加賀さん……」

加賀「落ち込むなら自室でやりなさい。公の場で悲観的な姿勢を見せるのは感心しないわ」

吹雪「ご、ごめんなさい」

吹雪(加賀さんにも叱られた……私、何やってるんだろ……)


4 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:27:36.51 ID:6Y634FX/o
吹雪(精神的に参った時……加賀さんならどうしてるのかなぁ)

吹雪「あっ、あの! 加賀さんに、ちょっと聞きたいことがあって!」

加賀「……なに?」

吹雪「わ、私……また全然活躍できなくて、司令官に怒られて……」

加賀「そのようね。その様子から容易に想像がつくわ」

吹雪「でも、どんなに頑張っても空回りするだけで、私もう、くじけそうで」

加賀「……何が言いたいの?」

吹雪「え、えっと……加賀さんはくじけそうな時、何を支えに頑張ってるのかなって」

加賀「支え? 愚問ね」


5 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:28:18.67 ID:6Y634FX/o
加賀「国のために戦うという志。それ以外に何があるのかしら」

吹雪「国のため……」

加賀「私たち艦娘は、この身に類稀なる能力を授かった。深海棲艦と戦えるだけの力を」

吹雪「……はい」

加賀「その力を以て、身を削ってでも深海棲艦と戦う。それが私たちの存在意義でしょう?」

吹雪「そ、それは分かってます。でも……」

加賀「その意志があれば、どんな苦境でも『くじける』なんてとても言えないと思うけれど」

吹雪「…………」


6 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:30:19.58 ID:6Y634FX/o
加賀「あなたは嬉しくないのかしら。自ら国に貢献できることが」

吹雪「……嬉しい、はずなんですけど」

加賀「はず? 曖昧な答えね」

吹雪「大破して、怒られての繰り返しで……何のために生きてるのか、もうわからなくて」

加賀「個の心情は関係なく、生きる理由は国のため。そう言ったつもりだけど」

吹雪「私たちは、国のためにしか生きちゃいけない……」

加賀「当然のことでしょう」

吹雪「…………」


7 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:31:35.06 ID:6Y634FX/o
~ 防波堤 ~

吹雪「……艦娘は、国のためにしか生きられない」

吹雪「じゃあ何の力にもなれない、弱い私は存在する意味すら無いんじゃ……」

吹雪「弱いから提督にはしょっちゅう怒られるし、お陰ですっかり謝り癖がついちゃったし」

吹雪「凹んだ時もこうして膝を抱え込むだけで、大破したからって特訓する気も湧いてこない」

吹雪「なんだかなあ。私、なんで艦娘に生まれちゃったんだろう……」

赤城「……あら? 吹雪さん、こんにちは」

吹雪「えっ、赤城さん? なんでここに……」

赤城「私だって、たまには散歩くらいしますから」

吹雪(……赤城さんも、やっぱり加賀さんと同じように考えてるのかな)


8 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:33:47.54 ID:6Y634FX/o
吹雪「——というわけで、なんだか最近ずっとモヤモヤしてて」

赤城「『艦娘は国のためにしか生きてはいけない。だから弱い自分は必要ない』ですか」

吹雪「はい……」

赤城「吹雪さん。あなたは、少し勘違いをしているのかもしれませんね」

吹雪「勘違い、ですか?」

赤城「私達が国のために生きるのは当然のこと。艦娘の生まれた理由そのものなのですから」

吹雪「それは分かりますけど」

赤城「でも、加賀さんがこの艦隊に吹雪さんは不要だ……と考えているとは思いません」

吹雪「え?」


9 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:35:13.94 ID:6Y634FX/o
赤城「最初は誰だって弱いんです。だから、弱いからいらない、なんて誰も言えません」

吹雪「でも、加賀さんは……」

赤城「加賀さんは自分にも周りにも厳しい方ですので、誤解されやすいだけなんです」

吹雪「…………」

赤城「本当はあなたが強く成長するのを期待していると思います。きっと提督もそうですよ」

吹雪「でも私……ホントに成長するんでしょうか。こんなんじゃMVPなんて一生無理じゃ……」

赤城「……吹雪さん、あなたにいいことを教えてあげますね」

吹雪「いいこと?」

赤城「『無理』というのは、嘘つきの言葉なんです」


10 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:36:32.75 ID:6Y634FX/o
吹雪「ど……どういうことですか?」

赤城「途中で諦めるから無理になるんです。諦めなければ無理ではなくなります」

吹雪「え、え? じゅ、順序が逆じゃ……普通は『無理だから諦める』ですよね?」

赤城「でも何度大破しようと戦い続ければ、一ヶ月後か一年後か、MVPを取ることはできます」

吹雪「まあ、きっといつかは……」

赤城「つまり、無理ではなかったんです。MVPが取れたのだから『無理』という言葉は嘘だった」

吹雪「それは……そうかもしれませんけど」

赤城「一度できたのですから、次からはもう『無理』だなんて言葉は言えませんよね?」

吹雪「は……はい……」

吹雪(あ、赤城さん……怖い……)


11 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:38:38.26 ID:6Y634FX/o
~ 吹雪の自室 ~

吹雪「……加賀さんは、国のために身を粉にして戦えって言ってた」

吹雪「赤城さんも口調は優しかったけど、弱音を吐くのは許さないって感じだったし」

吹雪「どうしよう……私、やっぱりもう……」

吹雪「…………」

吹雪「解体、してもらおうかな……」


12 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:41:14.38 ID:6Y634FX/o
~ 司令室 ~

吹雪「失礼します」

提督「吹雪か。帰還報告なら先ほど聞いたが、他に何かあるのか?」

吹雪「実は司令官に、これを受け取ってもらいたくて」

提督「これは……解体届か。自分で書いて持ってくるとはな」

吹雪「はい。もう私、この鎮守府でやっていける自信がありません……」

吹雪(……これでいいんだ。艦隊のお荷物になるくらいなら、解体された方がマシなんだから)


14 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:43:11.41 ID:6Y634FX/o
提督「そうか。では明日付けで駆逐艦『吹雪』は解体する。これは決定事項だ」

吹雪「あ、あれ……? ず、ずいぶんあっさり……」

提督「私は100隻以上の艦娘を抱えている。軟弱者をいちいち説得している暇は無い」

吹雪「…………」

提督「長門」

長門「ええ、『次』を用意しておきます」

吹雪「次……って、私の代わりの艦娘ってことですか?」

長門「ああ。国のためならと、最前線への着任を希望する艦娘はいくらでもいるからな」


15 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:45:19.41 ID:6Y634FX/o
提督「では明日、解体準備が完了したら呼び出す。それまでは自室待機だ、荷物もまとめておけ」

吹雪「はい。失礼しました」

 ガチャッ バタン

提督「……とは言ったものの。成長を見込んで2年も運用していたから、解体するのはな」

長門「解体しても、駆逐艦では大した資源にもなりません。近代化改修の素材に回しては?」

提督「いや……待てよ。そういえば次に攻める海域は、ボスがあまり強くないはず」

長門「ええ、ですから道中さえ突破できれば制圧は容易かと。それが何か?」

提督「私にいい考えがある」


17 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:48:30.70 ID:6Y634FX/o
翌日——

吹雪「司令官! 今日の任務、私も出撃するんですか?」

提督「そうだ」

吹雪「もう解体待ちの身なのに、出撃しても……」

提督「状況が変わったのだ。解体するまで私の部下であることに違いはない、指示には従え」

吹雪「は、はいっ」

長門「今回は私が旗艦を務める。編成はこの通りだ、各艦はすぐ出撃準備に入れ!」

 長門改  Lv95
 赤城改  Lv92
 加賀改  Lv90
 那智改二 Lv87
 川内改二 Lv85
 吹雪   Lv7

吹雪「なんだか、また私が足を引っ張りそうな編成だなぁ……でも最後だし、がんばろっと!」


21 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:52:00.27 ID:6Y634FX/o
那智「吹雪!」

川内「良かった、出撃前に見つかって」

吹雪「那智さん、川内さん。どうしたんですか?」

那智「その……今回の出撃、取りやめる気はないか?」

吹雪「えっ? どうしてですか?」

川内「……今の時点じゃなんとも言えないけど、嫌な予感がする」

那智「ああ。お前はまだ練度も低い、無理をしなくてもいいだろう?」

吹雪「ありがとうございます。でも私、これが最後なので。一度くらい活躍してみせたいんです!」

那智「…………」

吹雪「すみません、まだ出撃準備が終わってなくて。また後で!」タタタッ

那智「……よりによって、最後の出撃でか」

川内「酷いよ、こんなの……」


23 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:54:48.66 ID:6Y634FX/o
戦闘海域 道中——

長門「ビッグ7の力、侮るなよ!」

 ドゴォォン!!

重巡ネ級「グオオォォォォ……」

長門「今ので最後のようだな。赤城、被害報告を」

赤城「3戦闘を終えて、吹雪さんが大破。他の艦は軽微な損傷で済んでいます」

吹雪「す、すみません……」

長門「ふむ。では、次のボス海域までこのまま進軍する」

吹雪「…………えっ」


25 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:57:30.63 ID:6Y634FX/o
吹雪「そ、そんな! このまま進軍したら、私……」

長門「轟沈するかもしれんな。しかし、それが提督の命令だ」

吹雪「司令官の!?」

赤城「やはり、吹雪さんは捨て艦でしたか」

吹雪「す……捨て艦……?」

加賀「つまり、沈んでも良い艦ということ。弾散らし用に、練度の低い艦をあえて入れているのよ」

赤城「ボスが強くなければ、5隻以下で十分勝利できる。海域突破には有効な戦術とされています」

吹雪「じゃ、じゃあ私は、最初から沈む前提で出撃を……?」

長門「そういうことだ」

吹雪「……っ!!」


26 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 18:59:06.60 ID:6Y634FX/o
吹雪「だからさっき、那智さん達が……」

那智「……確証は無かった。あったところで私ごときの権限では止められないが」

川内「捨て艦戦法が指示されてるのなら、もう運良く生き残れることを祈るしかない……」

吹雪「そ、そんなの無理ですよ! 大破でボスに挑んで、生き残れるわけ……」

赤城「また無理と言いましたね。諦めなければ無理ではない。そう教えたはずですよ」

吹雪「あ、赤城さんまで……」

長門「さあ、グズグズするな。時間が経てば近海から敵の増援が来る可能性もある」

加賀「弱い弱いと嘆いていたあなたが、形はどうあれ国に貢献できるのよ。本望でしょう」

吹雪「う、ううっ……!」


27 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:01:47.71 ID:6Y634FX/o
ボス海域——

空母ヲ級「ヲヲ……!」

 ドゴォォォォ!!

加賀「やりました」

赤城「さすがは加賀さん、敵空母を一蹴とは」

長門「ボスにしては攻撃の質も量も、道中とさほど変わらない。想定通りだな」

赤城「長門さん、慢心は……」

 ブゥゥゥ….ン

赤城「この音は……艦載機? 撃墜した敵空母の艦載機がまだ……」

加賀「! 長門さん、直上です!」

長門「なに!?」

 ズドォォォォ……!


29 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:05:11.27 ID:6Y634FX/o
吹雪「あ……ぅ……」

長門「吹雪!?」

赤城「な、長門さんを庇うなんて!」

加賀「大破の身でそのようなことをすれば……」

吹雪(なんでだろう。こんなに酷い扱いをされてるのに、自然と体が動いた)

吹雪(きっと、私が……艦娘、だから)

 バシャァァァン…

吹雪(……力が、入らない……沈む……暗い暗い、海の底に)

吹雪(でも……私なんかでも、長門さんを、助けられた……)

吹雪(これで、本当の……最後の最後、に……役に、立っ——)

吹雪「………………」


30 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:07:46.43 ID:6Y634FX/o
数時間後 鎮守府——

長門「——はい。予定通り海域を突破。海域の制圧に成功しました」

提督「うむ。それで……」

長門「吹雪についても、予定通り轟沈しました」

提督「弾除けくらいにはなったのか?」

長門「…………はい」

提督「そうか、最後は役に立ったか。よくやったな」

長門「ありがとうございます」

提督「それで、次の艦にはこの島風と雪風というのが——」


31 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:10:04.67 ID:6Y634FX/o
赤城「命令とはいえ……捨て艦は何度見ても、気分の良いものではありませんね」

加賀「結局あの子は、その成長を待たずして終わってしまった」

那智「しかし文字通り身を削って、国のために戦ったのだ。私は立派だと思う」

川内「うん……あの子、最後は満足そうだった」

赤城「大破、叱責、落胆の繰り返しで、毎日楽しいことも無かったでしょうから」

加賀「その身を国に捧げられたことを誇りに思っているといいのだけど」

赤城「きっと思っていますよ。吹雪さんは、艦娘の本懐を遂げたのですから」

加賀「……そうですね」


32 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:12:58.74 ID:6Y634FX/o
3年後 某所——

吹雪「あっさりー、しっじみー、はっまぐっりさーんっと」ザクザク

リ級「おつかれさま」

ヲ級「調子はどう」

吹雪「あっ、今日の分はもう採り終わりました!」

ヲ級「ん。じゃあ帰ろう」

吹雪「そうですね。まだ日は高いですけど、あまり働くと姫様に怒られちゃうし」

リ級「分かってるね。明日やればいいことは明日やる、これ大事だよ」

吹雪「えへへ。そうだ、帰ったらまた言葉を教えてください。うまく喋れないところがあって」

ヲ級「もう十分、流暢に喋れていると思う」

リ級「駆逐艦たちよりよっぽど上手いよ。で、まだ昔のことは思い出せそうにない?」

吹雪「そっちは全然……私って、どこから来たんでしょうねー」

ヲ級「…………」


33 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:17:00.19 ID:6Y634FX/o
リ級「そういえば、来週は初出撃だって聞いたけど」

吹雪「そうなんです。あの『ナガト』や『アカギ』の鎮守府が相手らしいので、不安ですけど」

ヲ級「大丈夫、3年も訓練を積んだのだから。Lv90ならその辺の艦娘には負けない」

吹雪「3年か……もうそんなに経つんですね」

リ級「手足をもがれて瀕死のあなたを見つけた時は、絶対助からないと思ったよ」

ヲ級「私たちの部品を継ぎ接ぎして修復したけど、蘇るかは一か八かの賭けだった」

吹雪「本当に感謝してます! 私、粉骨砕身の覚悟でがんばりますから!」

ヲ級「粉骨砕身……は、困る」

吹雪「えっ?」

ヲ級「自分を犠牲にする必要はない。私たちは組織の奴隷ではないのだから」


34 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:19:05.87 ID:6Y634FX/o
吹雪「でも私って弱いので、きっと必死に戦うことくらいしかできませんし……」

リ級「Lv90は弱いとは言わないけどね」

ヲ級「強さは関係ない。誰かを沈めて得られる勝利に価値はない、それだけのこと」

リ級「だいたい、個を重んじない組織が、全として成立するとは思えないよ」

吹雪「な、なるほど……」

ヲ級「それに、戦うだけが能ではない。先程のように資源を集めるのも大事な仕事」

吹雪「……確かにそうですよね。なんだか、国のために自分を犠牲にしなきゃって思っちゃって」

ヲ級「それは気の迷い。お風呂に入って忘れよう」

吹雪「はい、そうします!」


37 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:22:05.77 ID:6Y634FX/o
~ 某拠点 ~

吹雪「ただいま戻りましたー」

ネ級「おかえり。お風呂湧いてるから入ってきなさい」

吹雪「はぁーい!」

ネ級「……すっかり馴染んだわね、あの子も」

ヲ級「それも、来週の出撃で終わり」

ネ級「3年前、あの戦いで撃墜した駆逐艦『吹雪』……やっぱり、敵の元に返すのね」

ヲ級「あの子は眩しすぎる。この暗い海の底に留めて良いものではない」

リ級「鎮守府にいれば記憶も戻るはず。その方があの子も、きっと幸せになれるよ」

ネ級「……そうね。少し寂しいけど、しょうがないわね」


41 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:25:59.85 ID:6Y634FX/o
吹雪「ふぅ~、いいお湯だなぁ」

吹雪「こうして湯船に浸かってると、大破する度に入ってたのを思い出——」

吹雪「……ん? あれっ、それっていつの話だっけ?」

吹雪「おかしいよね、大破なんて。私、出撃したことなんてないのに……」

吹雪「ま、いっか。よーし、来週は『ナガト』や『アカギ』を倒せるように頑張るぞー!」

レ級「相変わらず独り言のうるさい奴だな」

吹雪「うわぁ、いたんですか!? すみません!」

レ級「……それももうすぐ聞けなくなるのか。ふん……」

吹雪「??」

この後吹雪は、長門や赤城、加賀といった旧知の仲間達と戦場にて再会し、
戦いの最中でかつての記憶を取り戻す。

己を犠牲に使命を果たす道か、個としての安寧を掴む道か……
2つの道を知った吹雪がどちらを選ぶのかは、まだ誰にも分からない。

おわり

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