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1 : 2015/11/29(日) 22:16:36.38 -
翔鶴「——提督、司令部からお荷物が届いてます」
提督「ああ、ありがとう」
翔鶴「物資ですか?」
提督「任務報酬だな。少し前にやった、ケッコンカッコカリ関連の」
翔鶴「え……」
提督「えーと、うちで練度99の子は——鳳翔と、一、二、五航戦の子だな」
翔鶴(どきどき)
提督「……うん。まあ、焦って渡すこともないか」
翔鶴「へ?」
提督「お疲れさま。これから午後の演習を頼むよ」
翔鶴「は、はい。お疲れさまでした……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448802996
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448802996/
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2 : 2015/11/29(日) 22:18:07.96 -
ただのラブコメです。空母艦娘どうしの呼び方(鳳翔へのお母さん呼び)などに独自設定を含みます。
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3 : 2015/11/29(日) 22:19:26.98 -
飛龍「あ、翔鶴ー! 今日はよろしく——って、どしたの?」翔鶴「えっ!? 何ですか、飛龍先輩!」
飛龍「いや、なんか落ち込んでるように見えたからさ」
翔鶴(そんなに顔に出てたかしら?)
飛龍「調子悪いなら、提督に言ってこようか。私が旗艦、代わってもいいし」
翔鶴「いいえ、心配ありませんよ! 私はいつも通りですから」
飛龍「そう? ならいいんだけど」
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4 : 2015/11/29(日) 22:22:31.85 -
◇
翔鶴「よしっ、制空権確保——飛龍先輩!!」
飛龍「了解! 友永隊、頼んだわよ!」
翔鶴(うん、いい感じ……このまま行けばS勝利ね)
翔鶴(いつも通り、いつも通り)
飛龍「——っ!! 翔鶴、10時方向!!」
翔鶴「え——」
翔鶴(ぎ、魚雷!? もう間に合わな……)
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5 : 2015/11/29(日) 22:23:16.23 -
翔鶴「きゃああっ!!」飛龍「翔鶴!! 一旦下がろう!!」
翔鶴「で、でも、もう少しで……」
飛龍「演習は実戦のためにあるってこと、忘れちゃだめだよ。本来なら、もう大破に近いんだからね」
翔鶴「……はい。陣形維持のまま後退します、指揮は飛龍先輩に」
飛龍「うん、了解」
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6 : 2015/11/29(日) 22:24:52.65 -
飛龍「まさか、雷撃距離以遠からのが当たるとはねぇ」
翔鶴「A勝利、かあ」
飛龍「しょうがないよ、あんなの予測できないもん」
翔鶴「でも、もう少し気を配ってれば避けられたかも」
飛龍「戦場は何が起こるかわからないから……臨機応変な対処も、演習で学べてよかったじゃない?」
翔鶴「はい……」
飛龍「ほら、もう気にしないでさ。夕飯食べにいこう!」
翔鶴「そ、そうですね。——あ、先に報告してきますね」
飛龍「うん。じゃ、席取っておくね」
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7 : 2015/11/29(日) 22:25:59.15 -
翔鶴「——戦果は、大破判定4。A勝利です」
提督「うん」
翔鶴「こちらの損害は……旗艦大破。魚雷、直撃1」
提督「雷撃を食らう状況ではなかったと思うけど」
翔鶴「相手方の詳報と照らし合わせました。誘爆を防ぐために、投棄した魚雷が流れたようです」
提督「狙ったわけじゃなかったか。災難だったね」
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8 : 2015/11/29(日) 22:27:34.51 -
翔鶴「あ、あの、申し訳ありませんでした。私の不注意でS勝利が」提督「謝ることなんかないよ、君の指揮は全く問題ない。ちょっと運が悪かっただけだ」
翔鶴(運……)
提督「しかも、相手の戦艦は全部大破させてる。艦載機の練度も上がってるようで、頼もしいよ」
翔鶴「…………」
提督「気にしてるのか?」
翔鶴「だって、あれが無ければS勝利で」
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9 : 2015/11/29(日) 22:28:32.00 -
提督「そういう不慮の事態への対処も、旗艦の資質が出るけど。君はその点、何の問題もない」翔鶴「えっ?」
提督「最善だったよ。撤退のタイミングも、無理せず指揮権を飛龍に移したこともね」
翔鶴「……ありがとうございます」
提督「うん。じゃあ、今日は上がってくれ」
翔鶴「はい、お疲れさまでした」
翔鶴(提督はこういう時怒ったりしない、優しい人だけど……)
翔鶴(でも、やっぱり)
翔鶴(提督も、運の良い子が好きなのかな?)
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10 : 2015/11/29(日) 22:30:05.58 -
◇
翔鶴「こんばんはー」
鳳翔「こんばんは。遅かったのね、貴女で最後ですよ」
翔鶴「ちょっと演習で遅れて……私の分、お願いします」
鳳翔「はいはい——あら」
翔鶴「どうしました?」
鳳翔「ご、ごめんなさい。デザートのプリンがひとつ、足りないみたい」
翔鶴「え?」
鳳翔「外注したんだけど、確かに人数分頼んだのに……業者さんのミスかしら」
翔鶴「そうですか、それじゃ仕方ないですね」
鳳翔「本当、ごめんなさいね。今度なにかで埋め合わせするから」
翔鶴「そんな、お母さんのせいじゃないですよ」
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11 : 2015/11/29(日) 22:34:00.86 -
蒼龍「——あ、おーい翔鶴! こっちこっち」翔鶴「お疲れ様です、先輩」
飛龍「ごめんねー、先に食べちゃってて」
翔鶴「ああ、いえ。さめちゃいますからね」
蒼龍「結構頑張って待ってたんだけどね? 目の前でお腹がずーっと鳴ってて」
赤城「誰のことですか誰の!!」
加賀「飲み込んでから喋りましょう——あと赤城さん、ご飯つぶ」
瑞鶴「すましてるけど、加賀さんもついてるからね」
加賀「…………」
瑞鶴「……いや、なんで睨まれなきゃなんないの」
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12 : 2015/11/29(日) 22:38:26.58 -
蒼龍「翔鶴も、早くすわって食べなよ」翔鶴「あ、はい。いただきまーす」
翔鶴(先輩たちも、運は大して変わらないのに。私と何が違うんだろう)
瑞鶴「翔鶴姉、お茶飲む?」
翔鶴「あ、ええ。ありがとう」
瑞鶴「さて私も——お、茶柱」
飛龍「——あ、黄身が2つ入ってる。ラッキー」
翔鶴「…………」
翔鶴(あの2人は別格、あの2人は別格……)
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14 : 2015/11/29(日) 22:44:40.10 -
飛龍「——あれ翔鶴、プリンは?」翔鶴「何かの手違いで、足りなくなっちゃったみたいで」
瑞鶴「そうなんだ、残念ね」
赤城「…………」
赤城「しょ、翔鶴……良かったら、私の、プリンを……」プルプル
翔鶴「だ、大丈夫ですよ赤城先輩。気にしないで食べてください」
赤城「!!」パァァッ
加賀「自分のをあげようとは……成長したわね赤城さん」
蒼龍「あとひと口しかないのに、後輩にあげるとはこれ如何に」
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15 : 2015/11/29(日) 22:45:22.06 -
飛龍「あ、翔鶴。提督はなんだって?」翔鶴「いつも通り……褒めてくれました」
飛龍「そう、良かったね。心配いらなかったでしょ」
翔鶴「S勝利じゃなかったのに、ですよ?」
飛龍「なんだ、まだ気にしてたの? あんなのそうそう起こらないって」
翔鶴「だからですよ……それが起きたって、相当な運の悪さじゃないですか」
飛龍(うーん、参ったな。元気づけてあげたいけど、私こういう経験ないからなあ……)
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16 : 2015/11/29(日) 22:46:50.91 -
飛龍「1人で悩んでも、もやもやが解消しない……こういう時は、誰かに頼ればいいのよ」翔鶴「頼る……でも、愚痴みたいになっちゃいますけど」
飛龍「そういうのを言い合えるのが戦友ってもんよ。お酒の力でも借りて、全部吐き出しちゃいなさい」
翔鶴「は、はい。そうします」
飛龍「私たちの誰かでもいいけど、こういう時は」
翔鶴「——やっぱり、お母さんかな?」
飛龍「うん。今日はお店開けるらしいから、行っておいで」
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17 : 2015/11/29(日) 22:48:42.38 -
一旦区切らせていただきます。続きは明日になります、またよろしくお願いいたします。
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24 : 2015/12/01(火) 02:52:40.31 -
遅くなりましたが、本日分投下していきます。運についてと、演習については独自設定になりますのでご注意ください。
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25 : 2015/12/01(火) 02:55:40.42 -
◇
鳳翔「——ふむふむ。悪いことは重なるものですね」
翔鶴「なんだか今日は、どっと疲れがたまっちゃって……」
鳳翔「ごめんなさいね。演習でそんなことがあったなら、せめて甘味くらいは食べさせてあげたかったわ」
翔鶴「プリンを食べてた赤城先輩の、おいしそうな笑顔でお腹いっぱいですよ」
鳳翔「優しい子ですね、貴女は……」
翔鶴「とりあえずお酒、頂いていいですか?」
鳳翔「そうね。もう結構遅いから、一本くらいにしておきなさい」
翔鶴「はい、そうします」
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26 : 2015/12/01(火) 02:56:47.18 -
酉失敗してしまった……再投下します
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27 : 2015/12/01(火) 02:57:18.01 -
◇
鳳翔「——ふむふむ。悪いことは重なるものですね」
翔鶴「なんだか今日は、どっと疲れがたまっちゃって……」
鳳翔「ごめんなさいね。演習でそんなことがあったなら、せめて甘味くらいは食べさせてあげたかったわ」
翔鶴「プリンを食べてた赤城先輩の、おいしそうな笑顔でお腹いっぱいですよ」
鳳翔「優しい子ですね、貴女は……」
翔鶴「とりあえずお酒、頂いていいですか?」
鳳翔「そうね。もう結構遅いから、一本くらいにしておきなさい」
翔鶴「はい、そうします」
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28 : 2015/12/01(火) 02:58:05.79 -
鳳翔「さて……私の考えは、そういう日もある、ということかしらね」翔鶴「そう、でしょうか」
鳳翔「人間万事、塞翁が馬。禍福は、糾える縄の如し」
翔鶴「確かにそれはわかるんですが」
鳳翔「それから、心がけの問題も」
翔鶴「心がけ?」
鳳翔「気を明るく持てば、ものごとのとらえ方も明るくなりますし。考え方によっては、そう悪いことでもなくなったりね」
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29 : 2015/12/01(火) 03:00:01.98 -
翔鶴「でも私の場合は、そういうのとは違う気がするんです」鳳翔「ここに来た時と比べて、貴女の運の値は……」
翔鶴「はい、改造でずいぶん上がりました。お母さんの言う通り、たまたま悪いことが重なった日だったのかもしれません」
翔鶴「でももし、今日の演習のことが」
翔鶴「私自身の、船の魂からくる運の悪さだとしたら?」
鳳翔「…………」
翔鶴「鍛錬でおぎなえることなら、努力は怠りません」
翔鶴「でも、それではどうすることもできないことだったら?」
翔鶴「今日の演習だって、まず起こらないようなことが起こったりして——演習だからよかった、とも言えますが」
翔鶴「もし、実戦でも起こったら? それが原因で、みんなを危険にさらすようなことになったら?」
翔鶴「敵は、まだまだ強くなるのに——そんな風に考えちゃって」
翔鶴「なんだか今日は、少し怖かったんです」
鳳翔「……ううん、そうね」
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30 : 2015/12/01(火) 03:01:30.05 -
鳳翔「それを聞いて、言いたいことは3つあります」鳳翔「まず1つ目は、その悩み、貴女だけが抱えているわけじゃないこと」
翔鶴「あの、それは」
鳳翔「ああ、ごめんなさい。貴女はわかっていることだと思うけど、改めてね」
鳳翔「私たち艦娘は、あの戦争の記憶を残していますが……運の良し悪しは、艦船だけでは決まらないことです」
鳳翔「その時戦っていた人が、死力を尽くした結果ですから。誰もそれを否定できないと思います」
鳳翔「ふたたび戦うことになった私たちが、艦の記憶をどう受け入れ、新しい命をどう生きていくのか」
鳳翔「——簡単に、答えのでることじゃありませんよね」
鳳翔「だからみんな、考えながら生きていくんだと思うわ。私もね」
翔鶴「……はい」
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31 : 2015/12/01(火) 03:03:14.32 -
鳳翔「2つ目。もう少し自分に自信を持つこと」翔鶴「え?」
鳳翔「演習の取り決めで、提督が直接、指揮を執らない理由は知っていますね?」
翔鶴「はい。ええと、提督が負傷などの有事の際、艦娘が代われるように経験を積むため……ですよね」
鳳翔「ええ。つまり提督は、貴女には指揮を任せられると思ってるのよね」
翔鶴「あっ……」
鳳翔「それくらいには、信頼を置かれていると思っていいんじゃないかしら」
翔鶴「提督が、私を頼りに?」
鳳翔「私の経験ですけどね。少なくとも、誰だって旗艦になれるわけじゃないわ」
鳳翔「貴女が頑張っていることは、ちゃんと知っています」
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32 : 2015/12/01(火) 03:05:07.32 -
鳳翔「貴女の先輩たちのほうが、わかりやすいかもね」翔鶴「先輩たちですか? すごく良くしてくださってますが」
鳳翔「ええ。でも、鎮守府に来てすぐの頃は大変だったでしょう」
翔鶴「あ、えーと……あはは」
鳳翔「加賀ちゃんに、なんて呼ばれてた?」
翔鶴「……ご……五航戦のまだまともなほう……」
鳳翔「……聞いておいてなんですけど、今は仲良くやれてますよね?」
翔鶴「い、今はちゃんと名前で呼んでくれます! 改になったあたりから、よく褒めてくれますし!」
鳳翔「ならよろしい。先輩も後輩も仲良くね」
鳳翔「つらい時は誰かに頼る。これが3つ目よ」
翔鶴「はい……飛龍先輩にも、同じことを言われました」
鳳翔「そう。同じ空母の子でも、私でも、なんでも話してくれればいいわ」
鳳翔「……せっかくみんな、揃ってるんですから。あの時と違って」
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33 : 2015/12/01(火) 03:06:25.86 -
鳳翔「ところで、どうしてそこまで、運を気にし始めたの?」翔鶴「気にするというか。運が悪い子より良い子のほうが、提督だって——」
鳳翔「提督?」
翔鶴「あっ、いえ、あの。提督だって、運が良いほうが作戦を立てやすいはずです」
鳳翔「——好きなの? あの人のこと」
翔鶴「はい……」
翔鶴「ん? ——っっ!!」
鳳翔「ふふ、慌てなくてもいいわ。みんなわかってますから」
翔鶴「わかってるんですか!? 先輩たちも!?」
鳳翔「ええ、多分ね」
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34 : 2015/12/01(火) 03:09:07.18 -
翔鶴「ど、どうしてわかったんですか」鳳翔「——まあ、それは置いておいて。そろそろ日を跨いじゃうわね、寝不足はいけませんよ」
翔鶴「流された……結構大事なことなんですけど」
鳳翔「寝るときは深く考えずに、疲れを残さないようにするんですよ?」
翔鶴「ちょっと納得いきませんけど……はい」
翔鶴「今日はありがとうございました。なんだか楽になった気がします」
鳳翔「ええ。じゃあ、そろそろお開きにしましょう」
翔鶴「はい、それじゃ、おやすみなさ——」
—— ドザアアアアア……
翔鶴「…………」
鳳翔「あらあら。さっきまであんなに晴れてたのに」
翔鶴「なんで降ってほしくない時だけ降るのぉ……」シクシク
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35 : 2015/12/01(火) 03:10:04.28 -
鳳翔「困ったわね、置き傘は用意してないんですよ」翔鶴「傘、持ってきてないし……濡れて帰るしかないですね」
鳳翔「……ふむ」
鳳翔「ちょっとそこで待ってなさい、ね?」
翔鶴「え、ええ。でも、待ってても止みそうにないですけど」
鳳翔「ふふ、言ったでしょ。塞翁が馬ですよ」
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36 : 2015/12/01(火) 03:10:59.06 -
鳳翔「——もしもし、提督? 私です、鳳翔です」提督『ああ、どうした鳳翔』
鳳翔「お忙しいところ恐縮ですが、今から私のお店まで来てください。傘を一本持って」
提督『行くのは構わないけど……どうして?』
鳳翔「この大雨で、翔鶴ちゃんが寮まで帰れずに困ってます。迎えに来てあげてください」
提督『そうか、そういうことなら。すぐ行くよ』
鳳翔「いいですか、傘は自分で差すのも含めて一本ですよ。一本だけですからね!」
提督『え? あ、ああ。わかった』
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37 : 2015/12/01(火) 03:13:16.67 -
本日はここまでです。
コメディ薄めになっちゃいましたが、シリアスにはなりませんので……今週中には完結させたいです。では、またよろしくお願いいたします。
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