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1 : 2015/09/17(木) 15:57:29.82 -
このスレは続き物です。初めから読む場合は以下のURLを辿って下さい。
利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416837049/SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442473049
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442473049/
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3 : 2015/09/17(木) 19:34:09.41 ID:Za/RjdJAO -
立て乙
ちな1レスしかないと立て逃げ扱いでHTML化される可能性あるぞ -
4 : 2015/09/17(木) 20:20:13.69 -
>>3
なんという……。それでは少しだけ投下。
前スレの1000の通りに全員吊るすという世界線のお話を。提督「…………」
響「吊るすロープとフックが足りなくなったね」ブラーン
提督「……確かに全員帰ってきたのは良い事だ。だが、危険すぎる賭けに出るのは感心しない」
加賀「私が一番、敵を沈りました」ブラーン
提督「反省の色が見えないな。加賀、お前は最後の最後まで吊るそう」
加賀「なっ!?」
瑞鶴「というかさ、なんで金剛さんは後回しに吊るすような感じになってるのよ」ブラーン
金剛「…………」ヂー
提督「単純に吊るす場所が無いからだ」
瑞鶴(……単純に吊るしたくないだけだったりして)
提督「瑞鶴、お前も加賀と一緒に最後まで吊るしてやろう」
瑞鶴「ピィッ──!?」
利根「まったく……こやつらときたら……」ブラーン
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14 : 2015/09/20(日) 15:30:33.15 ID:PmGMEjJGO -
吊るだけじゃ罰として足りん
目隠しして尻叩き100回くらいが妥当というものだろう -
16 : 2015/09/25(金) 18:47:53.69 -
提督「──現状の再確認をするぞ。艦娘は全員、この湾から出ない事を前提とした行動を取る。兵装や資材等は出し惜しみせずに使い尽くす気で使う許可を与える。援軍が来た際は前に出過ぎない事と危険を感じたら即時撤退を必ず実行する事」
大淀「艦娘は錬度が低い子達や軽空母や正規空母、潜水艦の方々に加え、明石さんや私は母港にて後方支援に徹する事。また、天龍さんと龍田さんは例外的に母港付近にて照明弾を使った後方支援を担当。撤退して修理を終えた艦娘は、疲れが大きく残っている状態では再出撃させずに疲労を抜く事」
提督「防衛線は敵一隻すら通さないように広範囲に展開。また、この激戦の中で潜水艦は敵味方共に運用が非常に難しいと言える事から、対潜哨戒は最後方の安全域にて行う事とする。航空戦に関しては艦上戦闘機を主に使って制空権の奪取に勤める事。夜目が利き辛いので、同士討ちや衝突には充分に注意。──そして、私の傍には常に最低一人の艦娘を置いておく事」チラ
利根「我輩の事じゃな?」
大淀「はい。私は基本的に事務仕事ばかりをしていて不安ですので、利根さんがお願いしますね」
利根「うむ! 我輩に任せると良いぞ! 提督は我輩が護りきってみせよう!」
提督「利根には母港のいかなる場所での兵装使用許可を与える。万が一、敵が侵入してきた際は頼むぞ」
利根「うむ。我輩も最近は戦線に向かっておらなんだからの。大破撤退が以前よりも多くて心苦しかったのじゃ」
大淀「利根さんは所謂、最終防衛線です。提督をしっかりと護って下さいね?」
利根「任せておれ! 我輩は提督の剣となり盾となろうぞ!」
提督(……大淀から『護衛は最低でも一人付ける事』を絶対に譲れないと言われたが、本当に必要だろうか。ここに敵が来るという事は、前線が崩壊して敵が雪崩れ込むという事なのだが)
利根「念の為じゃ。保険は掛けておくものなのじゃろう?」
提督「……流石に私の考えている事が分かるようになっているか」
利根「当たり前じゃ。いったい何年もの間を傍らで暮らしてきたと思うておる」
提督「そうだな。ならば、次に私が言う事も分かっているな?」
利根「む? ……気を張り詰めておけ、かの?」
提督「いいや。──剣となって盾となるのは仕方が無い事だが、無理だけは絶対にしてくれるなよ」
利根「……くくっ、勿論じゃ。提督の嫌う行動など分かっておる。我輩は沈まぬし死なぬ。それに、我輩の回復力を知っておろう?」
提督「だから無理をするなと言っているんだ。過信と慢心は死を生むぞ」コツッ
利根「むう……分かったのじゃ」
大淀(……これで相思相愛ではないという話なのですから不思議ですよねぇ)
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17 : 2015/09/25(金) 18:48:24.89 -
提督「…………」
大淀「…………」
利根「?」
提督「……順調だな」
大淀「ええ、順調に殲滅が終わりそうですね……」
利根「……順調なのに、どうしてそんなに難しい顔をしているのじゃ?」
提督「恐ろしく順調なのが逆に怪しいという事だ。相手の思惑通りになっているとしか思えん」
大淀「はい。ですが……何を考えて今の状況にしているのかも見当すらつきません。予想していた通り、敵の援軍は後方で控えていました。ですけれど……その援軍のタイミングもおかしいです」
利根「ぬ?」
提督「簡単に言えば、援軍を有効活用していないという事だ。初めは何を考えているのか予測しにくい不気味さがあったというのに、援軍が来てからは単純かつ愚かに物量で攻め落とそうとしか感じられん」
利根「……それは妙じゃのう。戦闘に乗じて侵入でもしてくる気かの?」
提督「その可能性は充分にある。故に侵入されないよう全面に展開させている」
利根「……では、その薄く広がった所を一点突破してくるとか、かの」
大淀「後方待機の方々が居ます。一点突破してこようものならば最前線は後ろの味方と合流して迎撃に出るようにしています」
利根「そこで我輩達の目を盗んで入り込んでくるのかのう……」
提督「その可能性も考えて潜水艦の四人は母港で待機させている。問題なのは、敵にそういった事が一切無くてただ我武者羅に突っ込んできているだけという点だ」スッ
利根「……うーむ。訳が分からんのう……。何がしたいのじゃ、深海棲艦は。──ここからも戦火が見えるのう。敵のものであっても、嫌なものじゃ」スッ
大淀「本当、不気味ですよね……」
提督「警戒はするに越した事はない。他にも考えられる可能性を……──ッ!?」ゾクッ
レ級「…………」ニィ
提督「逃げろ!! 走れ!! 眼下に敵だ!!」グイッ
大淀「え──!?」
利根「なんじゃと!?」
レ級「アッハハハハハァッ!!」
ドォン──ッ!!
…………………………………………。
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18 : 2015/09/25(金) 18:49:01.28 -
金剛「──え?」
榛名「金剛お姉様! 敵を前にして余所見──……は……」
霧島「全門斉射ぁー!!」ドォンッ
比叡「……この付近の敵の殲滅を確認しました。金剛お姉様、榛名、どうし……ま……?」
霧島「? どうかしたのですか? 鎮守府の方を……見……」
榛名「鎮守府が……」
比叡「な……なんで……!? なんで鎮守府が燃えてるんですか!? 司令は敵を通さないようにって何重も防衛線を張っていたのに!!」
金剛「っ──!!」ザァッ
榛名「あっ……! わ、私も行きます!」ザァッ
比叡「どうして……どうして……!!」ザァッ
霧島「くっ……。付近の艦娘に告げます!! 敵との戦闘が終わり次第、鎮守府へ全速で戻って下さい!!」
霧島「……何がどうなっているんですか、これは」ザァッ
金剛「テートク……テートク……!」
榛名「は、はや……!」
榛名(活動停止して浮き舟になった深海棲艦の群れで動き辛いはずですのに、どうして着任して間も無い金剛お姉様が榛名達よりも速く動けるのですか……? ──この身のこなしは明らかに熟練されています。少なくとも、一年や二年の経験とは思えません)
榛名「っ……! 残骸が邪魔で……!」ザゥッ
榛名「────…………」
比叡「わっとと……! 危な……? …………榛名、どうしたの?」
榛名「……いえ。金剛お姉様が、とても速いと思いまして」
比叡「…………」
榛名「まるで数々の戦場を乗り越えてきた古強者みたいに、こんな動きにくい場所を物ともせず進んで行きました」
比叡「……………………」
榛名「今回、一緒に戦っている時に何度も感じました。……あの金剛お姉様は、もう居ないはずの『金剛お姉様』に匹敵する錬度を持っているって」
比叡「……行くわよ。鎮守府が燃えてるんだから、急いで救援に行かないと」ザァ
榛名「…………はい」ザァ
比叡(……隠し通すのは難しそうですよ、司令。どうするんですか……?)
…………………………………………。
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19 : 2015/09/25(金) 18:49:28.39 -
レ級「……あー、火力調整は面倒臭いねぇ。ついつい派手にやっちゃった。生きてるかなぁ? 生きててくれよぉ?」キョロキョロ
レ級「おっ! 居た居た発見発見!」グイッ
提督「…………」
レ級「もしもーし。生きてるかーい? ……よしよし。返事は無いけど息はしてるしてる! 良かった良かった」
利根「ゲホッ、ゴホッ!」ガラッ
大淀「う、うぅ……」ヨロッ
レ級「うん? この人間と一緒に居た艦娘かなぁ?」
利根「!! 提督!」ダッ
レ級「おっとぉ! それ以上は近付かないようにねぇ!」ジャキッ
大淀「っ……!」
利根「ひ、人質か!? 卑怯じゃぞ!!」
レ級「なんとでも言えば良いんじゃないの? どんな手を使ってでも勝ちは勝ちなんだからさぁ?」
利根「くぅ……!」
瑞鶴「──何が起きたの!?」ザッ
加賀「…………っ!」ギリッ
飛龍「これ、は……?」
蒼龍「ひどい……」
赤城「深海棲艦……!?」グッ
翔鶴「赤城さん待って下さい! 提督が!!」
赤城「…………!」
レ級「うぅーん。良い感じに集まってきた。……だけど、もうちょっとだけ待っていようねぇ! 出来ればこの鎮守府のメンバー全員が来て、この人間の目が覚めるくらいまでさぁ!」
加賀「──何が目的ですか」
レ級「そいつも待った! 二回も三回も説明するのとか面倒だしさ、全員が集まったら言うよ。ブチ切れて一周回って冷静になってるようだし、従わなかったらどうなるか分かるよねぇ?」ジャキン
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20 : 2015/09/25(金) 18:50:02.83 -
加賀「……そうね。今すぐ皆を呼び戻すわ」パヒュッ
レ級「おっ! この暗い夜に躊躇無く艦載機を発艦! という事は、お前が艦娘でも夜目の利く空母って事かな!?」
加賀「目聡いわね。どこで見ていたのかは知りませんが、合っていますよ。──で、私達はさっさと艤装を外せば良いのかしら」
レ級「話の早い艦娘だねぇ。お姉さん感激しちゃいそう。……まあ、武装解除は基本中の基本だし、さっさと外しちゃってね」
飛龍「……加賀さん」チラッ
加賀「……全員、艤装を外して。これは命令よ」
全員「……………………」
ガチャッ──ガチャガチャッ
レ級(……ほう。命令一つで全員が即座に行動をすると。よっぽどこの人間が大事なようだ。──だからこそ利用価値がある)
加賀「望み通りにしたわ。出来れば、私のお願いも聞いて欲しいくらいね」
レ級「そうだねぇ。お姉さん、今すっごく機嫌が良いから聞いちゃいそう」
加賀「提督を解放してくれるかしら」
レ級「そりゃ無理だ! 残念だけど」
加賀「そう」
レ級「まあそう焦らない焦らない。状況次第じゃ、ちゃーんと返してあげるからさ」
瑞鶴「……こんな事をしているんだから信用なんて出来そうにないわね」ジッ
レ級「そんな睨まなくても良いじゃん? 私はある目的の為に来ただけ。それさえ終わったら大人しく帰るって約束しちゃうよ」
瑞鶴「……………………」
レ級「良い感じに怒りと憎しみが篭もってるねぇ。ぶるっちゃいそう。──まあ、気長に待とうねー。全員が集まったら話を進めるから」
空母棲姫(……………………)
ヲ級(……姫)コソッ
空母棲姫(……工廠へ行くわよ。大回りをして、見付からないようにひっそりと)ヒソッ
ヲ級「…………」コクン
…………………………………………。
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21 : 2015/09/25(金) 18:54:40.49 -
今回はここまでです。また一週間後くらいにくると思います。
>>14
そんな事をしたら、たぶん罰を受けている本人も含めて全艦娘が提督の心配をしそう。
仕事をしすぎて疲れているのか、それとも自分達は提督からもっとお仕事を取る勢いで執務をしないといけないのか、それとも明石か夕張辺りが七色に光り輝く薬でも作って提督がそれを飲んでしまったのか、とか。 -
22 : 2015/09/25(金) 18:58:31.74 - ……なんで上げなかったんだろ私。ごめんよ。
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33 : 2015/10/02(金) 20:05:36.46 -
加賀「……これで全員よ」
レ級「へぇ。思ったより少ないもんだね。六、七十隻くらいかな? 百隻近く居るんじゃないかなーと思ってたんだけど」
提督「……なんだこの状況は」
金剛「────! テートク!」
レ級「おっ! 丁度良いねぇ! 起こす手間が省けたよ! ……で、これが何か分かる?」ジャキッ
提督「……なるほど。私は人質という訳か」
レ級「アハハハハァ! 理解が早いねぇ! まさしくその通り! 大正解! ご褒美に君達が気になってる侵入経路を教えちゃおう!」
提督「……………………」
レ級「別にさ、深海棲艦って海の上じゃないとダメって事はないんだよねー。そこは艦娘と同じ! だから陸を突っ切っただけだよん」
提督「……そういう事か。この暗い中、よくそんな事が出来たものだ」
レ級「海岸線がギリギリ見えるくらいの位置ならやろうと思えば出来るって。ちょーっと時間が掛かったけどね」
提督「それで、何が目的だ。多くの同族を犠牲にし、人質を取るくらいだ。それなりの理由があるんだろう」
レ級「あ、もう本題に入っちゃう? お姉さんとしては嬉しい限りだよ」
レ級「んでも、まあ薄々気付いてるんじゃない? ここで匿ってる深海棲艦……安っぽい言い方だけど、そいつには消えてもらわなきゃいけない」
川内「はぁ……? 深海棲艦を匿ってる?」
那智「意味が分からんぞ。どうして私達が敵を匿わなければならない」
レ級「いやいや! これが居るんだよ! そうだよねぇ……テイトクさん?」
提督「……ああ。居る」
神通「…………!」
羽黒「そ、そんな……! ど、どうしてですか司令官さん!? て、敵ですよね!?」
提督「もう少し後になってから知らせるつもりだった。すまない。……その深海棲艦だが、私達の敵ではない。その二人のおかげで私は提督として復帰できた。そして命の恩人でもある」
レ級「まあ、そういう事! んでもって私がその二人を消しに来たって訳。人間や艦娘と仲良く暮らしてる同族なんて見過ごせる訳ないじゃない? しかもそいつらは楽しそうにしているときた。情報を漏らす可能性もあるし、こっちにとっては邪魔者以外の何者でもない。そいつらを殺したら大人しく帰るから、ちゃっちゃと出してくれないかな?」
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34 : 2015/10/02(金) 20:06:16.72 -
響「……理由は分かったけど、まだ分からない事があるかな」
レ級「あらら。説明不足だったかな?」
響「そうだね。君が目的を達成した後の説明が足りない」
レ級「……んー?」
響「仮に匿ってる深海棲艦を沈めたとするよ。そうなったら君は大人しく帰るって言った。──けど、司令官をどうする気だい。生きて帰る為には司令官を人質にし続けなければならない。どこまで司令官を連れて行くつもりなの?」
レ級「ああ、そういう事か。ちょーっと沖に出てもらうだけかな? 受取人として二人くらいまでならついてきて良いけど、なんだったら泳いで帰って貰おうか?」
響「……戦艦が二人でも良いって事だね?」
レ級「全然良いよぉ。もうオールオッケー。それくらいじゃあ私も沈まないだろうし、こっちとしても沈めるのは難しいから丁度良い感じなんじゃない?」
響「そっか」
響(……でも、司令官はこの交渉を受けそうにない気がする)チラ
提督「……………………」
響(司令官は、味方を見捨てたりしない人のはずだから。……どうするんだい、司令官)
レ級「ま、お前達にとって敵である深海棲艦を二人差し出すだけでテイトクさんの命を拾えるんだ。悪くない話だと思うけど」
全員「……………………」
レ級「んー? 分からないかな? 深海棲艦も倒せる。テイトクさんも助けられる。お前達にとってはメリットしかない。ほら、テイトクさんの指示なんか待たないでさっさと匿っている深海棲艦を出しちゃいなって」
提督「下らん」
レ級「……あ?」
提督「下らんと言ったんだ。多くの鎮守府にこれだけの被害を出したお前を、私が逃がすとでも思ったか?」
レ級「んー? じゃあ、この状況をどうするのかなぁ? お前はこうして私に拘束されている訳だけど」ジャキン
提督「簡単な事だ。──全員に言い渡す。私ごとこのレ級を撃ち抜け。必ず沈めろ」
金剛・瑞鶴「なっ──!?」
響「!!」
レ級「……ほう」
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35 : 2015/10/02(金) 20:07:08.02 -
瑞鶴「馬鹿言わないでよ!! どうしてそんな命令が出来るの!? 自分ごと撃てって……そんなの出来る訳がないじゃないのよ!!」
全員「……………………」
瑞鶴「私達はそんな事、絶対に出来ない!! 提督さんを殺すなんて選択、する訳がないじゃない!!」
飛龍「……そうですよね」スッ
加賀「ここで殺しておかなければ、いけませんね」スッ
瑞鶴「────────────え?」
長門「何……?」
ガチャ……ガキンッ──ジャキッ
瑞鶴「え……え……?」キョロキョロ
ゴソ……ガチッカコン──
響(これは……予想外だ)
瑞鶴「う、嘘……でしょ……?」
長門「馬鹿な……お前達は自分達の提督を殺せるだと……?」
利根「……仕方が無いからの。……まあ、予想はしておったぞ」ジャキッ
瑞鶴「利根さんまで……!? ど、どうしてよ!? どうして皆そんな命令が聞けるのよ!?」
利根「……簡単じゃ。今回の戦い、あのレ級は非常に脅威であった。ここで倒しておかなければ後でどうなるか分からぬ」
瑞鶴「だからってそんな!!」
加賀「……もし逃がしてしまえば、今回みたいに多くの鎮守府が危険に晒されるわ。……必要な犠牲、ですよね……提督」
提督「そういう事だ。……すまないが、この母港で匿っている空母棲姫とヲ級の二人は逃がしてやってくれ。可能ならば面倒も見てやって欲しいが、無理だったら構わん。後は静かに暮らして人に脅威を与えないだろう。私の軍服を持っているから分かるはずだ」
提督「それと二人に伝えてくれ。すまなかった、と」
金剛「……………………」ガチャン
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36 : 2015/10/02(金) 20:07:55.42 -
加賀「分かりました。──ソナーと爆雷を持っている子は、レ級が海の中へ逃げた時に追って確実に撃破する事。……第一手は、私がやります」
利根「譲らぬぞ。提督の介錯は我輩のものじゃ。そもそも、艦載機と砲撃では攻撃の速度が違うじゃろ」
加賀「……そうね。お願いするわ」
レ級「よく訓練された艦娘だ。まさか、自らの手で主を殺す事が出来るまで教育しているとはな」
金剛「…………」スッ
レ級「──だが、そうでない者も居るようだな?」ニヤァ
金剛「…………」ジャキッ
榛名「金剛お姉様!? ど、どうしたのですか!?」
霧島「どうして……」
比叡「……………………」
提督(こうなるか……)
金剛「……ソーリィ。私は、テートクを失いたくありまセン。……どうしてもテートクをキルしたいのでしタラ、私をキルしてからにして下サイ」
レ級「アハハハハハァ!! やっぱり新人クンは教育が完全じゃないみたいだ!」
加賀「厄介な……」ギリッ
提督「……金剛、自分が何をしようとしているのか分かっているのか?」
金剛「……ごめんなサイ。残されるのは、もう嫌なんデス。──でも、一緒に逝くのは……悪くないかもしれまセン」
提督「っ──そう、か……。仕方が無い事、だな……」
レ級「あ、そうなんだぁ……。艦娘同士の殺し合いが見れると思ったんだけど、残念だなぁ」
加賀「提督……」
提督「……………………」
レ級「まあ、どうするのかなテイトクさん? このまま私に殺されるも良し。あの二人を出して安寧を得る。あ、別の方法でも良いよ! 私としては面白かったらなんでも良いやぁ!」
提督(あの二人を取るか、金剛を取るか……。出来れば第三の選択肢があれば良いのだが、この状況では……)
提督(…………ん?)
空母棲姫「…………」ググッ
提督(屋上から空母棲姫が弓を?)
空母棲姫「…………」ジッ
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37 : 2015/10/02(金) 20:08:43.26 -
提督(……なるほど、賭けに出たか。──やれ)コクリ
空母棲姫「…………」コクン
レ級「──あん?」
パヒュッ──!!
ドズンッ──!
レ級「があぁッッ!!? 目を……!?」
提督「金剛!!」ドンッ
金剛「! ハイッ!!」ジャキン
レ級「────!」フラッ
金剛「全砲門──ファイアー!!」
ドォン──ッ!!
提督「残っている弾薬を全て使い切るまで撃て! そこまですれば流石の奴もくたばるはずだ!!」
金剛「ハイッ!」
ドォン──! ドンドォン──!!
空母棲姫「……やりました」
ヲ級「姫、かっこよかった!」キラキラ
空母棲姫「一番の功績者は、私の頼みを聞いてくれた妖精達だ。ありがたかった」
艦爆妖精「馬鹿言ってんじゃねぇ。あれはお前さんの技術があってこそだ。誇りに思いな」
艦攻妖精「我々は艦娘用の弓と矢を貸し与えただけ……。デストロイ出来るかどうかまでの関与は不可能です」
艦戦妖精「最初はビックリしたけど、提督さんの匂いがついた服を羽織ってたから味方だと思ったのー」
空母棲姫「……まったく。あの方の鎮守府は妖精までもがお人好しですか」
艦爆妖精「そんな嬉しそうに言っても褒め言葉にしか聞こえないぜ?」
空母棲姫「……その頬を抓られたいのかしら」スッ
艦爆妖精「おっと! 俺は用事を思い出した! またな!」サッ
艦攻妖精「私も鎮守府の再建準備の道具を手入れするとしよう」
艦戦妖精「またなのー」
空母棲姫「逃げ足の速い……」
ヲ級「姫! 私達も、皆のとこ、行こ?」
空母棲姫「……まあ、もうバレているでしょうしね。怖がらせないように注意だけはするわよ」
ヲ級「うん!」
…………………………………………。
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38 : 2015/10/02(金) 20:09:20.26 -
金剛「……全弾、撃ち終わりまシタ」
提督「よくやった。──だが、後で説教だ。自分から殺されにいこうとするのは何事だ」
金剛「テートク、それは人の事を言えないデスよ?」
提督「お前の場合は完全に巻き添えを貰いにいこうとしただけだろう。拾える命は大事にしろ」
金剛「ぅー……。納得できないデース……」
提督「……あと、礼を言わなければならないな。二人とも、顔を出しても良いぞ」
空母棲姫「はい」スッ
ヲ級「うん!」ヒョコッ
電「く、空母棲姫……なのです……」ビクビク
雷「もう一人はヲ級だけど……あれ絶対に改装されたヲ級よね……」ビクビク
暁「レ、レレディなら、怖がったりしないわ……!」ビクビクビク
響(ああ……やっぱり何も知らなかったら怖いんだね……)
グラッ……
ヲ級「わっ、と」
ズゥン──……
提督「……ボロボロだな。柱が倒れるとは」
ヲ級「ご、ごめんなさい……」オロオロ
提督「いや、どうせ鎮守府を建て直すまでには倒れていただろう。むしろ、今倒れたからこそ怪我人が出なかったかもしれん。気にするな」
ヲ級「ほっ……」
雷「……なんだか今までのイメージと全然違うわ」
電「とっても普通なのです……」
空母棲姫「その深海棲艦の上に倒れてくれたら良かったのだがな。あと数センチ違えば……」
提督「……後始末が大変そうだ」
空母棲姫「それもそうですね」
暁(……あれ? この空母棲姫ってどっちが素の口調なのかしら……?)
提督「さて、一先ずだが私はレ級の後始末をしよう。各員は入渠後、安全な区画で疲れを取ってくれ。金剛への説教は陽が昇ってからだ」
全員「はいっ!」
利根「では、我輩も提督の手伝いをするとしようかのう」
提督「そうか。手伝ってくれるとありがたい」
レ級「……………………」
ガギッ──!!
提督「!!」
レ級「……やっぱりさ、やるもんじゃないね。慣れない事は」
利根「な、なんじゃぁ!? 柱に手を突っ込んだぞ!?」
金剛「あんな状態でも動きマスか……!」
ブンッ──ズゥンンッ!!
提督「鉄筋コンクリートだぞ……! 化け物か……!!」
レ級「これだから面倒なんだ。こいつらみたいな奴は……」
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39 : 2015/10/02(金) 20:11:10.60 -
今回はここまでです。また一週間後……に来れるかどうか怪しいですが、いつものように目安と思って下さいませ。
終わりが見えてきた。やっと終わりが見えてきた。私、頑張ります。
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46 : 2015/10/03(土) 01:49:08.89 -
ちょっとした告知を。
夏コミで委託させて頂いた金剛飛龍本についてですが、倉庫委託に変更しました。そして委託店舗様に物が到着しましたようです。恐らく増刷はしませんので、売切れてしまった場合はすみません。スレしか見ていない方も居られると思いますので、こちらでも告知させて頂きました。
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50 : 2015/10/12(月) 06:35:37.81 -
空母棲姫「っ!」パヒュッ
レ級「────」パシンッ
空母棲姫(やはり、見えていたら対処されますか! ならば……)ダッ
ヲ級「姫!」タッ
空母棲姫(私が囮になって、倒してもら──)チラ
ドォン!
金剛「く、っぅ……! テートクは……無事ですね」
空母棲姫「────な……」
空母棲姫(狙いを、あの方へ変えた……?)
提督「!! 金剛、退けッ! 私も下がる!」ザッ
利根「!」タッ
レ級「外したか」カコン
利根「何をしておるんじゃ!! 最前列! 撃たぬかぁ!!」ドンッ
加賀「っ!」グッ
長門「くっ……」ガチンッ
レ級「…………」
金剛「!!」
利根「金剛よ、どけぇえええ!!!」ドン
ドォン!!
利根「かはっ……く、ぅ……!!」
提督「利根……! ──総員、鎮守府はもう気にするな!! 味方への誤射をしないようにするだけで構わん! レ級へ集中砲火せよ!! 被弾した者は必ず下がれ!! そして絶対に奴へ近付くな!!」
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51 : 2015/10/12(月) 06:36:04.42 -
レ級「…………」ダンッ
提督「!!」
金剛「な……! こっちへ……!?」
長門「撃てぇええええ!!! 提督たちへ近付けさせるなぁ!!」ドォンッ
レ級「カハッ……! ち……!」チャコンッ
比叡「なっ! くっ……!」
瑞鶴「!!」サッ
バァンッ!
比叡「!? 瑞鶴さん!?」
瑞鶴「いったた……。良し……被弾は私だけ、ね。──ケホッ」
比叡「な……何やっているんですか!? あんな滅茶苦茶な庇い方なん──」
瑞鶴「そんな事は良いから撃ちなさい!! なんの為に庇ったと思っているのよ!!」
比叡「────!! は、はい!」ドンッ
ガァンッ!!
レ級「ガッ……! だが……少し、遅かったな」
飛龍「…………! ダメです……! これ以上は三人を巻き込んでしまいます!」ギリッ
加賀(ここまで来ると、流石に私では……)
レ級「────ッ!」グン
提督(ぐっ……! その柱は流石に……!!)
利根「あああぁぁァアぁぁアああアアアッッ──!!!」バッ
提督「な──!? やめろ利根!!」
ゴシャッ──!!
金剛「ひっ……!」
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52 : 2015/10/12(月) 06:37:24.19 -
レ級「…………これを止めるか」
利根「ハハ……ハ……。お主、も……そんな身体で、よく、動くのう……?」ググッ
響「っ……!」ダッ
暁「響!?」
レ級「!!」グッ
利根「させぬ!!」グッ
レ級(! ……逃げられん)
響「…………っ!」ザッ
レ級「──……そう、か」
響「────」ガッ
利根「なるほど……口、の中か」
レ級(これが、人間と艦娘、そしてアイツらの)
響「──堕ちろ」
レ級(可能性か──)
ダァンッ──……!
レ級「────……………………」
ドチャッ……
-
53 : 2015/10/12(月) 06:38:59.95 -
雷「…………!! う、ぇ……!」
提督「……見ない方が良い。いや、見るな」
バサッ……
提督(…………流石にほぼ全員が顔を逸らしたな)スッ
提督「……動ける者は、動けない者を運んで入渠と補給を済ませておけ。……今度こそ終わった」
提督(……やはり、動ける者は少ないか。いや、吐き気を堪えるだけで精一杯なのも無理はない。いくら艦娘といえど、こんなモノへの耐性などあるはずがないのだから……)
響「…………」ペタン
利根「提督よ……服、汚れてしまうぞ」フラッ
提督「野晒しにするよりはマシだ。……金剛、動けるか」
金剛「なんと、か……」
提督「無理は承知している。……すまないが、利根をドッグへ運んでくれるか。最優先で利根を修復させてやってくれ。救護妖精も呼ぶ。異常が無いか確認して貰う」
金剛「ハイ。……利根、肩を貸して下サイ」スッ
利根「すまぬの……。はー……死ぬかと思うたぞ……」ヨロッ
提督「…………」ポン
利根「?」
提督「…………」ワシャワシャ
利根「……髪がボサボサになってしまうではないか」
提督「……待っているぞ」
利根「うむ……待っておれ。すぐに向かうからの」
フラ……フラ……
提督「……響」
響「……………………」
提督「響?」
-
54 : 2015/10/12(月) 06:39:44.24 -
響「……司令官」
提督「どうした」
響「……落ち着かせて。いつもみたいに、足の間に」
提督「……ああ」スッ
響「…………」フラ
提督(……いつもと言いつつ、向かい合わせなんだな)ソッ
響「……司令官の匂いだ」ギュゥ
提督「…………」ナデナデ
救護妖精「──派手にやったね」
提督「! 近くに居たのか」
救護妖精「あんだけドンパチしてりゃねぇ。……あー、こりゃ確かに見ない方が良いね。何人も吐く訳だよ」ピラッ
提督「そうだな。心の傷になりかねん」ナデナデ
響「…………」スリ
救護妖精「で、あたしはどっちをすれば良いんだい? 死体処理? 傷の手当て?」
提督「後者だ。ドッグで利根を最優先に、その次は入渠前の者を診てくれ」
救護妖精「あいよ」
救護妖精(……流石に内部から撃たれたら人間と同じようになるみたいだね。理論上そうなるのは知ってたけど、実物を見るのは初めてだよ)
救護妖精(──まあ、もう私には関係の無い事だね)スッ
ヲ級「うわ……」トコトコ
空母棲姫「……終わりましたね」スタスタ
提督「ああ。あの時、お前が機転を利かしてくれて助かった。ありがとう」
空母棲姫「上手くいって良かったです」
提督「懐かしいか?」
空母棲姫「? 何がでしょうか」
提督「弓を──いや、加賀の弓を握るのが」
-
55 : 2015/10/12(月) 06:40:11.54 -
空母棲姫「……気付いていたのね」
提督「あまりにも似ているからな。加賀もそう思っているだろう」
空母棲姫「まあ、純粋という訳ではありませんが。……私も、この子のように混ざってはいます」
ヲ級「?」
提督「混ざる、か……。なるほどな」
空母棲姫「そんな話よりも、私も何か手伝いたいわ」
提督「そうか。ならば、ヲ級と一緒にドッグへ行って応急処置をしてやっていってくれ」
ヲ級「はーい!」
空母棲姫「……まだ早いのではなくて?」
提督「誰の艦娘たちだと思っている?」
空母棲姫「はぁ……。それもそうでした……。問題が無さそうで怖いです」
提督「良い事だ」
空母棲姫「まったく……」
ヲ級「姫、今日は、よく、笑うね」
空母棲姫「……後で頬を抓るわよ」
ヲ級「可愛いのに……」
空母棲姫「…………」
提督「変わったな」
空母棲姫「……そうね。本当、色々と変わったわ」
空母棲姫(誰かさんのおかげで、ね)
……………………
…………
…… -
56 : 2015/10/12(月) 06:42:46.64 -
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
途中で書いたデータが三回吹き飛んだ。ブルースクリーン怖い。PS3コントローラのデバイス怖い。
ちなみに、外出先で書いた仕事のデータも一回吹き飛んだ。初代ノートPCさんももう限界かな……。 -
63 : 2015/10/22(木) 02:15:55.64 -
響「──どうしても?」
提督「すまん。後で迎えに行くから、今は皆の所へ行ってくれないか」
響「……約束だよ」
提督「約束だ」
響「分かった。……なるべく早くね」タタッ
提督「ああ」
救護妖精(あー……こりゃ、あの惨状を間近で見てトラウマ背負っちゃったかねぇ……)
提督「さて、こんな真夜中に二人で話とは珍しいな。どうした」
救護妖精「皆のチェックの報告だよ。誰もが聞ける場所で話す事じゃないでしょ?」
提督「…………そうだな。報告を頼む」
救護妖精(察しちゃったかね、これは……)
救護妖精「んじゃ、まず一件目。金剛と瑞鶴は深い傷だったから、少しの間は肉体的に負担の掛かる事はさせてあげないようにしてあげてね。レ級は流石の火力というかなんというか。ありゃ本当に脅威だよ」
提督「なるほど、分かった。二人には鎮守府復旧の間、裏方をお願いして貰おう」
救護妖精「ん。そんで二件目。入渠を終わらせた子は全員、健康だよ。疲労とトラウマは除くけどね」
提督「……響のメンタルケアは私にしか出来そうにないな」
救護妖精「だね。他の子はあたしと提督が時間を掛けてゆっくりとすれば良いけど、知っての通りあの子は心に少し根強く傷を負ってる。響が一番落ち着く事をすると良いさね。あと、しばらくの間は戦いから遠ざけておいてあげてね」
提督「ああ、そうしよう。──では、本題に入ろうか」
救護妖精「……………………」
提督「…………」
救護妖精「……単刀直入に言うと、身体の何もかもがおかしくなってた。艤装も、骨も、筋肉も、神経も、内臓も……心の方もね。治そうと……いや、直そうとするくらいならば新しく作り直した方が良いくらいに」
提督「────────」
救護妖精「一応だけど本人には言ってないよ。とりあえず絶対安静だって指示を出してる」
提督「……あの鉄筋コンクリートを受け止めたのがマズかったか」
救護妖精「原因の一つがそれだね。骨の状態を見てみると、原因は受け止めた事とその後の無理な力を入れた事の二つ。骨が砕けたくらいだったらまだマシだよ。その後で大きな負担の掛かる力の使い方をしたから余計に酷くなった。よく言われている事だけど、バイクで転んで鎖骨を折っちゃった時、バイクを起こした事で入院が三ヶ月伸びたっていうのと同じさ」
-
64 : 2015/10/22(木) 02:16:33.97 -
提督「治そうとしたらどれくらいの時間が掛かるか分かるか?」
救護妖精「最低で一年。いくら艦娘でも、人間だったら文句無しで死んでるくらいの重体なんだよ。今のあの子は満身創痍の状態。……正直さ、なんで生きてるのかよく分からないんだよね」
提督「……そうか」
救護妖精「執念か何かなのかねぇ……。身体に特別なにかある訳でもないようだし、それくらいしか思い付かないよ。まあ、生きている以上は良い方に向かうだろうね」
救護妖精(身体の内部からくる痛みの数々を耐えられたら、だけど……)
提督「……後遺症は出てくるのか?」
救護妖精「出ない方がおかしいと思うよ。もう艦娘として戦って貰うのは諦めた方が良いかもね」
提督「……………………」
救護妖精「……利根が荒れそうだったら、しっかりと受け止めてあげなよ?」
提督「いや、それは無い」
救護妖精「ん?」
提督「あいつならば……そうだな、まずよく分かっていない顔をする。そんな訳があるのか、とな。その後、時間が経ってからソレを感じて落ち込むだろう」
救護妖精(……ふぅん。確かに言われてみればそうなりそうだね)
救護妖精「ま、利根のケアも提督に任せるよ」
提督「ああ。──他に話してくれる事はあるか?」
救護妖精「いや、今ので全部だよ」
提督「そうか。ならば聞きたい。利根はもう寝てしまったか?」
救護妖精「ん。鎮静剤を打ったら寝たよ」
提督「確か金剛と瑞鶴も救護室で寝ているはずだが、ベッドは空いているか?」
救護妖精「うん? ……ああ、響辺りでも寝かせるのかね。空いてるよ」
提督「助かる。──では、後ほど救護室に向かう」
救護妖精「あいよ」
…………………………………………。
-
65 : 2015/10/22(木) 02:17:01.47 -
提督(……さて、第六駆逐隊たちはここの部屋へ割り振ったはずだ。……他の子たちは、もう寝てしまっただろうか)スッ
コツッコツッ──
ガチャッ──
提督(む、早い)
響「!」ギュゥ
提督「っとと。待たせたな」
響「ん……」スリ
提督「夜遅くにすまない。……しかし、全員起きていたんだな」
暁・雷・電「…………」コクコク
提督(三人がしがみ付き合っているのを見るに、ああやって安心しようとしているのだろうか)
川内「まあ……あんなのを見た後じゃ中々ね……」グッタリ
神通「姉さん、提督の前ですよ」
川内「ごめん提督……今夜だけはこのままで居させて……」
提督「構わん。楽にしておけ」
川内「ありがと……」
那珂「川内ちゃんは、ああいうのがダメだからねー……」サスサス
川内「むしろ普通にしている二人がおかしいと思うんだけど……。背中、ありがと……」
神通「そうでもありませんよ。私も少し、気分が良くありません……」
那珂「那珂ちゃんは川内ちゃんと暁ちゃん達のこの状態を見たら、なんかねー」サスサス
川内「うぅ……姉の威厳が……」
提督「どうしても抱え切れなくなったら、いつでも私の所へ来い。頭くらいならば撫でてやれる」
川内「ごめん……今お願い……」
提督「そうか」スタスタ
響「…………」トコトコ
-
66 : 2015/10/22(木) 02:17:48.47 -
提督「しかし、思ったよりも繊細なんだな」ナデナデ
川内「これが普通だってば……。第六駆逐隊の四人も、他の子達もそうじゃん……」
響「…………」ギュゥ
川内「……あー。ねえ提督、抱き付いて良い……?」ウトウト
神通「あら……」
那珂(わー、大胆……)
提督「いきなりどうした……」ナデナデ
川内「んー……第六駆逐隊の子達みたいにー、人肌を感じたら落ち着くのかなーって……」ウトウト
提督「……………………」
提督「……撫でるだけで我慢してくれ」ナデナデ
川内「えー! なんでー!!」ガバッ
那珂「川内ちゃん元気じゃん!?」
川内「……あれ?」キョトン
神通「あ、あはは……」
提督「…………」
川内「……んー…………でも、気分があんまり良くない……なぁ。割とマシになったけどさ」
響「川内さんも私の気持ちが分かるみたいだね」
川内「いやー、たぶん響ちゃんまではいってないとは思うけど……。──あ、そうだ! 今日は皆で一緒に寝ない? こう、一つの布団で寄ってさぁ!」
暁・雷・電「…………!」コクコク
川内「よっし! じゃあ床に布団引こう布団! しばらくはこのままで良いかもしれないね!」
提督(……人肌は落ち着かせる、か。響も、川内のようにいつもの調子に戻ってくれると嬉しいのだが)
提督「では、私たちはそろそろ向かう。何かあったら救護室へ来てくれ」
神通「はい。響ちゃんをよろしくお願いします」
那珂「元気になってねー?」
暁「……響」
響「ん」
暁「…………響はよくやってくれたわ。響が居なかったら、どうなってたか分からない……。だから、えっと……司令官を、皆を守ってくれて、ありがとう」
響「……うん。そう言ってくれると嬉しいよ。大丈夫。不死鳥は今、休んでいるだけだから」ギュゥ
響「少しの間だけ……。だがら、すぐに戻ってくるよ」
暁「分かったわ。……私達も、響には負けないから」
響「うん、勝負だよ」
提督「……朝も近付いている。集合は昼からだが、寝過ごさないようにしておくように」
神通「はい、分かりました。提督、響ちゃん、おやすみなさいませ」
…………………………………………。
-
67 : 2015/10/22(木) 02:19:43.10 -
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
登っていく階段も残りあと僅か。さて、どんな結末が待っているか。
-
73 : 2015/10/29(木) 21:54:29.49 -
響「ヤダ」
金剛・瑞鶴「……………………」
救護妖精(あー……言うと思ったよ)
提督「なぜだ……」
響「司令官も一緒に寝てくれないとヤダ」
提督「しかしだな……」
響「…………」ヂー
提督(これは困った……)
瑞鶴「……まあ、分からないでもないけどさ」
金剛「分かるのデスか」
瑞鶴「なんか落ち着くしね。お父さんみたいで」
金剛「では、響にとってはダッドよりもダディという感覚なのでショウかね?」
瑞鶴「ごめん金剛さん、その例え分かんない」
金剛「んー……日本語で言うならば『父さん』と『パパ』の違いみたいなものデス」
瑞鶴「あー、なるほど。なんとなく分かったわ。父親に甘えるみたいなものなのね」
響「むしろ、どうしてダメなんだい?」
提督「風紀の問題が一番だ。あの島ならばともかく、ここは大勢の目がある鎮守府だ。風紀の乱れは指揮の乱れにも繋がりかねん。なんでもかんでも規制するという訳ではないが、自由過ぎるのも問題があるだろう?」
響「…………」
提督「そう落ち込んでくれるな。寝るまでは膝の上でも脚の間でも構わん。それで手を打ってくれないか」
-
74 : 2015/10/29(木) 21:55:03.32 -
響「……膝の上が良い」
提督「分かった」ギシッ
響「ん、しょ……」チョコン
提督「…………」
金剛・瑞鶴(……向かい合って?)
響「……座りにくい」
提督「それはそうだ。ソファに背もたれがあるのは当然だろう? 私と同じ向きに座れば楽だぞ」
響「じゃあ、後ろから抱いてくれる?」モゾ
提督「どうしてそうなる……暁たちから何か変な知識でも貰ったのか?」
響「違うよ。ただ単純に、司令官の体温を感じたいんだ」
提督「……そうか」
響「うん。そうだよ。司令官は柔らかい温かさがある。抱き締められると、凄く落ち着くんだ。……なんて言えば良いのかな。守ってくれてる? そんな感じだよ」
提督「……………………」
救護妖精「まあ、それくらいなら良いんじゃないの? 治療と思いなって」
金剛・瑞鶴「?」
瑞鶴(なんだろ。何か違和感が……)
金剛(『それくらいなら』って、どういう意味が含まれているのデスかね……?)
提督「…………」チラ
金剛「?」
提督「…………」フイッ
金剛「…………?」
-
75 : 2015/10/29(木) 21:55:43.89 -
提督「分かった。響にとって落ち着くのならばやろう」
金剛(あ……)
響「うん、お願い司令官」
提督「ほれ」ソッ
響「……うん。これは良いものだ」ホゥ
提督「そうか」
金剛(なんとなくデスが分かったような気がしマス。きっと、テートクは本当の『金剛』の事を……)
金剛「……………………」ズキッ
金剛(? 傷が痛んだのでショウか)ソッ
救護妖精「ん? どうしたんだい金剛」
金剛「あ、いえ。少しデスが胸が痛みまシテ」
救護妖精「傷口でも開いたのかねぇ……ちょっと診察するから奥に来な」トコトコ
金剛「ありがとうございマス」スッ
瑞鶴「無理はしないでよ、金剛さん」
金剛「イエス。何かおかしいと思ったらすぐに伝えるデス。無論、瑞鶴も同じデスよね?」
瑞鶴「うん。私も変な我慢なんてする気は無いわ」
響「二人とも、身体は大事にしてね」
金剛「響もしっかりと休んで下サイね?」
響「勿論だよ。──ところで司令官。今日は一緒に寝てくれるかい?」
提督「寝るまで傍に居てやるから、それで勘弁してくれ……」
響「……うん」
提督「私も今夜はここで寝る予定だ。このソファで寝ているから安心しろ」ナデナデ
響「……ソファだと疲れが取れないよ。だから一緒に寝よう」
提督「そういう訳にもいかん。こればかりは譲らんぞ」
響「……分かった。諦める……」シュン
提督(……心が痛むな、これは)
…………………………………………。
-
76 : 2015/10/29(木) 21:56:16.19 -
金剛「すぅ……」
瑞鶴「くー……くー……」
響「すー……」
利根「…………」モゾッ
利根(……寒い……痛い…………)ボー
フラフラ……
利根「…………」
提督「…………」
利根「…………」ギシッ
提督(──む?)
利根(あったかい……)ソッ
利根「…………くー……」
提督(……まったく。寝惚けてここへ来たのか。そのままだと風邪を引いてしまうだろうに……。よっと……膝枕だが我慢してくれよ)モゾッ
利根「ん……………………くー……」
提督(…………利根……)
提督「……………………」ギュゥ
……………………
…………
…… -
77 : 2015/10/29(木) 21:56:43.65 -
提督「……………………」
利根「くー……くー……」
響「すー……」
提督(結局、響も来てしまった……。肩に寄り添うだけで良いとは言っていたが、この状態で寝ても疲れるだけだぞ)
ガチャ──パタン
提督(む)
救護妖精「……………………」
提督「…………」
救護妖精「……どうしてそうなってるんだい?」
提督「分からん」
救護妖精「はぁ……。提督もらしくないねぇ。何があったのさ?」
提督「……ん?」
救護妖精「提督だったら利根をベッドに戻していそうじゃないか。身体に悪いからーってさ」
提督「……言われてみればそうだな。絶対安静という指示を出すくらいだ。身体に障りそうな、こんな体勢をなぜ……」
救護妖精「…………」
救護妖精(これは……提督も重症なのかね……?)
救護妖精「……提督」
提督「どうした」
救護妖精「診察を受けな。これは医者としての命令だよ」
提督「……そんなに深刻か」
救護妖精「そうだねぇ。放っておけば深刻な問題になるかもね」
-
78 : 2015/10/29(木) 21:57:12.74 -
提督「分かった。昼過ぎに時間を空けておく。その時に──」
救護妖精「今すぐだよ。事は急を要する。まだ誰も起きていないんだから仕事には一番支障が出ないはずでしょ?」
提督「今すぐか……。二人を起こさないようにしなければな」ソッ
響「すー……」
利根「……くー…………」
救護妖精「見事な手際だね。──じゃあ、隣の部屋で診察するよ」トコトコ
提督「ああ」ツカツカ
利根「……………………」
ガチャ──パタン
救護妖精「さてと……。提督、まずはアタシの質問に正直に答えてね」
提督「診察じゃなかったのか?」
救護妖精「診察っていうよりもカウンセリングだよ。──単刀直入に言うと、提督は精神が弱っている可能性が高い」
提督「私が? まさか」
救護妖精「昨日の夜、利根があの三人のようになるんじゃないかって思わなかったかい」
提督「……ああ。確かに思った」
救護妖精「そして、利根がベッドから抜け出して提督の寝ているソファに来た時、提督は起きなかったかい?」
提督「起きたな」
救護妖精「妙な不安とかあったんじゃない?」
提督「……否定しない」
救護妖精(……踏み込むのはここまでかねぇ)
救護妖精「不安に感じたら周りに頼っても良いんだよ。提督って立場は誰にも頼る事が許されないなんて事はない。提督だって一人の人間なんだからね」
提督「……だが、示しが付かなくないか?」
救護妖精「私の知っている限りじゃ提督は艦娘から心底信用されている。それに、どっかの誰かさんとそっくりでお人好しだからねぇ。弱い部分を見せても逆に嬉しく思うんじゃないかね。頼ってくれたーってさ」
提督「…………」
救護妖精「まあ、そういう事さね。悩みがあったら何でも言ってきな。──深海棲艦の二人もそうだけど、隣で寝ている新人三人の事もね」
提督「なんの事だ?」
救護妖精「過去の行いから、私は視ると分かるんだよねぇ。あの三人が訳有りだっていうのが」
提督「……なるほど。お前も訳有りという事か」
救護妖精「そういう事さね。ただ、こんな事を言ったのは提督が初めてだよ。バレたら大問題だかんね」
提督「ならばなぜ言った?」
救護妖精「私だけが一方的に秘密を知っているのはフェアじゃないからねぇ。あと、提督の事を信頼しているからだよ」
提督「…………」
救護妖精「あの三人の事に関しては私の方からも手を回しておくから安心しておきな。不審に思う子は居るはずだかんね」
提督「……そうか」
救護妖精「あと、勿論だけど私の事も秘密にしてね」
提督「お前が黙っていてくれる限り、私も秘密にしておこう」
救護妖精「オッケー。──じゃあ、後で誰かに頼ってきな。提督は艦娘だけじゃなくてアタシにとっても大切なんだよ」
提督「……そうだな。のんびりとやるとしよう」
救護妖精「そうさね。こういうのは気長にのんびりやるのが一番さ」
…………………………………………。
-
79 : 2015/10/29(木) 21:58:40.45 -
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
これ三本のルートが今年中に終わるのか怪しい。どうしよ。
-
88 : 2015/11/07(土) 08:39:49.83 -
提督「──では内容を簡潔に繰り返す。戦艦・正規空母は瓦礫の撤去。重巡・軽巡・軽空母は再利用可能な物資の判別と整理。駆逐・潜水艦は掃除と入渠の終わっていない者や入渠では治らない傷を負っている者への応急手当だ。なお、これらとは別の指示を与えられている者はその指示に従うように」
提督「また、鎮守府の砲撃を受けた壁は非常に崩れやすく危険だ。装甲の薄い者は特に近付くな。以上だ。判断に困った事があれば私へ訊きに来い。私は臨時司令部室で事務作業をしている」
全員「はい!!」
提督「では、休憩の際は放送で知らせる。無論、無理はしないようにし、少しでも異常を感じた場合はすぐに救護班から手当てを受けろ。──この場の事は任せたぞ、加賀、大淀。大まかな処理の優先順位は渡した紙面通りだ。後は状況に応じて指示を変えてくれ」
加賀「分かりました。こちらはお任せ下さい」
大淀「提督もご無理はなさらないで下さいね」
提督「ああ」スタスタ
加賀「──さて、大淀さん。初期の指示は駆逐艦、潜水艦の子達の管理をお願いしても良いかしら。私はそれ以外の方々に指示を出します」
大淀「はい、分かりました。──朝潮型の皆さんは、まず用意されているテントを組み立てて下さい。陽炎型の皆さんはドックで入渠待ちの方々と入渠では治りそうにない方を判別し、後者の方を設置したテントで応急処置をお願いします。それ以外の駆逐艦、潜水艦の方は、瓦礫の無い工廠方面と食堂方面から掃除をお願いします」
加賀「戦艦・空母の方はこの転がっている鉄筋コンクリートから撤去をお願いします。その後の指示は後を追って説明します。重巡・軽巡の方は辺りに補給用として設置した弾薬や燃料を、軽空母の方は艦載機やその他資材を工廠へ運んで下さい」
加賀「以上です。何か質問や分からない点はありますか?」
全員「ありません!」
加賀「良い返事です。それでは、作業に移って下さい」
長門「──さて、まずはあのレ級が振り回していたこの柱からだな」
比叡「こんなもの……どうやって振り回していたんでしょうか……」
飛龍「実は普通に持てるとか? よっこい……しょっ──!」グッ
蒼龍「……どうなの、飛龍?」
飛龍「む……無理……!」プルプル
蒼龍「だよねー……。動きすらしないのが普通よねー……」
長門「まったく、本当にアレは化け物だな」
榛名「……これを受け止めた利根さんも凄いと思います」
長門「肩と腕で受け止めていたな。……恐らく、肉が潰れて骨が砕けただろう。身体の表面ではなく内部も含めた全体に激痛が走ったに違いない」
蒼龍「や、やだやだやだ! そんな痛そうな事言わないでよぉ!」
長門「む……すまない」
-
89 : 2015/11/07(土) 08:40:53.17 -
赤城「さあ、お喋りはここまでにして運びましょう。私たちが動かなければ他の方々も動き辛いはずです」
長門「そうだな。では、私は根元を持とう」グッ
霧島「では、ご一緒しますね」ガッ
飛龍・蒼龍「…………」グッ
赤城「翔鶴さんはこちらをお願いします」グッ
翔鶴「はい。畏まりました」ソッ
榛名「私達も準備はオーケーです」ソッ
比叡「では、いきますよー! それー!!」グッ
ググッ……!
長門「む、ぅ……! これは……相当キツいな……!!」フラ
ドズン……
霧島「……いっその事、バラバラに壊してしまうのも手かもしれませんね」
長門「そうだが、今は工廠も忙しいだろう。道具を借りられれば良いのだが……」
赤城「困りましたね……」
ヲ級「──ね!」ヒョコッ
比叡「うひゃぁ!?」ビクン
長門「む……貴様か。どうした?」
ヲ級「私達も、手伝う!」
蒼龍「達って事は」キョロ
空母棲姫「……これだな」トコトコ
飛龍「え、あ……はい。かなり重いので、気を付けて下さいね」
空母棲姫「ああ」グイッ
ヲ級「えーい!」グイッ
長門「なっ……!」
赤城「…………!!」
翔鶴「たった二人で……」
霧島「なんて事……」
比叡「ひえー……」
榛名「…………」パチクリ
飛龍・蒼龍「…………」ポカーン
-
90 : 2015/11/07(土) 08:41:29.05 -
空母棲姫「案外いけるな。これをどこへ運べば良い?」
長門「あ、ああ……。工廠の横に廃材置き場がある。その隣に置いてくれ」
空母棲姫「あの場所か。分かった」スッ
ヲ級「行ってきます!」
長門「……酷く負けた気分だ」
霧島「ず、頭脳ならば負けませんよ……!」
比叡(……頭脳……頭…………頭突き?)
霧島「……比叡お姉様、何か失礼な事を考えていませんか?」ジッ
比叡「そ、そんな事ないわよ!?」ドキッ
霧島「…………そういう事にしておきましょうか」
比叡(ほっ……)
飛龍「……………………」ヂー
蒼龍「? 飛龍、空母棲姫さん達がどうかしたの?」
飛龍「えーっと……提督の軍服と帽子、まだ着けてるんだなーって思って」フイッ
蒼龍「じゃないと敵と間違えられちゃうかもしれないじゃない」
飛龍「……まあ、そうだよね。うん、そう……」
蒼龍(あ、これ絶対に嫉妬してる)
飛龍「…………」チラッ
蒼龍「もー、可愛いなぁ飛龍めぇ!」ギュー
飛龍「わっわわっ!? い、いきなりどうしたのよ?」
蒼龍「いやいや、なんかこう、ね?」ナデナデ
飛龍「もう……」
長門「遊んでいるとあの方に吊るされるぞ」
飛龍・蒼龍「ご、ごめんなさい!」ピシッ
長門「うむ。──では、あの崩れて山となってた瓦礫を片付けるとしようか」
長門(……ここの鎮守府は、こんな状況でも温かいのだな。……調べた鎮守府異動の件……本当にやってみても良いかもしれないな。出来れば、希望者をこちらへ全員異動させたい)
長門(…………あの愚か者がくたばっているのであれば、その異動も楽に行えるのだが……どうなっているのやら)
…………………………………………。
-
91 : 2015/11/07(土) 08:42:06.91 -
ヲ級「ね、ね、姫」
空母棲姫「どうしたのかしら」
ヲ級「私達、どうして、見られてるの?」
睦月・如月・初霜「…………」ジー
望月・弥生「!」ビクッ
空母棲姫「……そうなるのも無理はないわ。そっとしてあげなさ──」
ヲ級「え?」ブンブン
空母棲姫「……どうして手を振っているのかしら」
ヲ級「なんとなく?」ブンブン
空母棲姫「止めてあげなさい……困っているでしょう」
ヲ級「はーい……」スッ
空母棲姫「……仲良くなったら、いくらでも手を振って良いから。今は少しだけ我慢しておきなさい? きっと、いつか仲良くなれると思うわ」ナデ
ヲ級「うん!」ニパッ
初霜「……なんだか、普通ですね」ヒソ
睦月「本当……怖くないのです。むしろ……」ヒソ
弥生「方や無邪気で、方や丸くなった加賀さん、です……」ヒソ
如月「じゃあ、手を振ってみましょうかしら」フリフリ
ヲ級「!」ブンブンブン
望月「うわ……めっちゃ手ぇ振ってる……」
初霜「喜んでる……のかしら?」
睦月「あ、空母棲姫さんがヲ級ちゃんと何か話していますよ」
空母棲姫「…………」スッ
ヲ級「!」ピシッ
弥生「敬礼……なんで?」
望月「さあ……」
-
92 : 2015/11/07(土) 08:42:49.99 -
初霜「ただの挨拶かもしれない……のかしら……?」
如月「そうだったら、如月たちも……ちゃーんとお返事をしなくちゃいけないわね」ピシッ
四人「……………………」
四人「…………」ピシッ
弥生「……行きましたね」
初霜「本当に普通なのね……」
睦月「……こんな事を言うのは変かもしれませんが……睦月、空母棲姫さんやヲ級ちゃんと仲良くなれそうと思っちゃったのです」
望月「仲良く、ねぇ……」
弥生「…………」
如月「まぁまぁ。仲良くなれそうだったら良い事よ? ねっ?」
初霜「……それもそうですよね。今度、何か話してみるわ」
睦月「初霜ちゃんが行くのならば、私も行くのですよ!」
如月「私も、何か話題を探しておきましょうっと」
望月「……あたしは、もうちょっと様子を見るわ」
弥生「弥生も、です」
暁「こらー! そこ、サボらないの!」ガンッ
響「あ」
五人「は、はーい!」タタッ
-
93 : 2015/11/07(土) 08:43:37.64 -
暁「まったく。困っちゃうわ──って、あぁーっ!? なんで集めたゴミが引っくり返ってるの!?」
響「暁がさっき箒を当てたからだよ」サッサッ
暁「そ、そんなぁ!?」
雷「もう。暁ったら」サッサッ
電「で、でも、今日は風が弱いから飛んでいってはいないのです」
響「うん。それが幸いだね」
暁「うぅ……」
響「さ、今度は向こうだよ」トコトコ
暁「……うん」
響「? どうしたんだい。さっきの事はそんなに気にしなくても良いんじゃないかな」
暁「違うわよ。……響、あなた司令官と一緒じゃなくても平気なの?」
響「ん。大丈夫だよ。怖いのは夜だけさ。暗い中で赤色を見るのも……だけど。明るかったり一人じゃなかったら大丈夫さ」
暁「そっか……」
響「それに、今は皆が居るから何も問題無いさ」
雷「あら、もーっと私を頼っても良いのよ!」
響「その時はお願いするよ」
電「あ、あの! 私もお手伝いするのです!」
響「うん。ありがとう電」
暁「もう! 私が一番お姉さんなのよ! 頼るのなら私に頼りなさい!」
響「暁がいっぱいいっぱいになりそうだから、それは止めておくね」
暁「どうしてよーッ!!?」
響「冗談さ。お願いね、暁」
暁「ふん! まあ、レディはこのくらいの事で怒ったりはしないわ。懐は大きく、よ」
響「じゃあ、お姉さんの暁、次はどこを掃除する?」
暁「あっちよ! まだ誰も手を付けていないもの!」
響「了解した。さ、行こうか」
雷「はーい! 行っきますよー!」
電「なのです!」
響(……うん、やっぱり姉妹だ。こうしていると、とても落ち着く。……向こうではまともに話した事が無かったから、かな。今まで姉妹だけど姉妹じゃない感覚だったけど、今はとても……とても嬉しくて、姉妹だって感じる)
響(ここに来て、本当に良かった)ニコッ
…………………………………………。
-
94 : 2015/11/07(土) 08:46:01.89 -
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
平和な世界。やっとほのぼのが帰ってきた。このルートももうすぐ終わりです。ゴールがハッキリと見えてきた。
-
98 : 2015/11/07(土) 16:27:04.59 ID:7h1bLFLg0 -
>>丸くなった加賀さん
ナチュラルにデスられてるな -
99 : 2015/11/07(土) 17:54:19.27 -
>>98
不意の『デスられてる』でお茶吹きそうになったぞ、危ねぇ! 加賀さんは死んでないわ!小さい子達にとっての加賀さんは厳しくて少し怖く、たまにジョークを言ったらほんきで受け止められて更に怖がられるという問題がこの鎮守府では起きたのかもしれない。
前作である瑞鶴SSだと瑞鶴にジョークを言ったら本気で受け取られてしまって落ち込んだ加賀さんのエピソードがあります。きっとそれと似たような事が……。
そんな加賀さんの印章を持っている子達にとっては優しくなったというよりも、表面上はクールでツンツンとしていそうな加賀さんを丸くしたような感じに受け取れたんだと思います。 -
103 : 2015/11/13(金) 17:08:57.29 -
提督「…………」サラサラ
利根「…………」カリカリ
金剛「…………」サラサラ
瑞鶴「…………」カキカキ
提督「……さて、一先ず早急に送る資料は今日中に作成できそうだ。これから電話口から報告をせねばならん。その間は引き続き今やっている仕事を頼む」スッ
利根「分かったのじゃ」カリカリ
金剛「了解デース」サラサラ
瑞鶴「……提督さん、お仕事すっごく早い」カキカキ
提督「これも慣れだ。それよりも、三人とも無理はしてくれるなよ? 疲れたりしたら休んでも構わないからな。特に利根。お前は本来安静にしておかなければならんのだからな」
利根「うむ。少しでも体調が悪いと感じれば、すぐに提督と救護妖精に伝えるぞ」
提督「ああ。──では、少しの間ここを頼む」
ガチャ──パタン
瑞鶴「……なんだろ。提督さん、なんかちょっと変わった気がする。なんだか急に心配性になったような……」
利根「うむ。良い事じゃ」カリカリ
金剛「…………?」サラ
瑞鶴「え? どういう事?」
利根「あれが提督の素じゃよ。言葉は悪いが案外、臆病なのじゃ」カリカリ
瑞鶴「臆病……? あの提督さんが?」
金剛「全くそうは見えまセン……」サラ
利根「単純に隠しておるだけじゃ。他人にのみじゃが、多少は無理をしても良い所でも引く。どうしても無茶をせねばならぬ時でも必ず逃げの道を作らせる」カリ
瑞鶴「でも、あのレ級の時なんて無理無茶無謀な事をしてたじゃない」
利根「あれは自分にだけであろう?」
金剛「……確かに」サラ
利根「どこか壊れてしまったんじゃろうなぁ……。自分の事は蔑ろにしがちではあるが、他人の事になると途端に安全策しか取らぬ」カリ
瑞鶴「……そう言われてみるとそうよね」
金剛「なんだか……寂しいデス」サラサラ
利根「あればっかりは許してやってくれぬか。過去にあった事があった事じゃ。そうなってしまってもおかしくない」カキ
瑞鶴「まあ……そうよね……」カキ
-
104 : 2015/11/13(金) 17:09:27.21 -
金剛「…………」ジー
利根「! ──ん? どうしたのじゃ金剛?」カリカリ
金剛「腕を伸ばして貰っても良いデスか?」
利根「……むぅ。どうしてじゃ?」カリカリ
金剛「利根も無理をする所はテートクと変わらないデス」
瑞鶴「え?」
利根「……むむぅ」
金剛「ホラ、テートクのインストラクション、デスよ?」ソッ
利根「……仕方が無いのう」スッ
瑞鶴(あ、そっか……身体、痛いんだよね……)
トコトコ──
利根「それにしても……ここの簡易ベッドはやけに柔らかいよの」ギシッ
金剛「きっと、利根の為に用意したのだと思うネ」ナデナデ
利根「ぬ? どうして頭を撫でるのじゃ?」
金剛「なんとなく、デス」ナデナデ
利根「…………」
金剛「…………」ナデナデ
利根(──ああ……そういう事かの? 我輩が少しでも落ち着けるようにと、こうしてくれておるのか……)
金剛「…………」ナデナデ
利根(提督がよく頭を撫でる姿を見ておるから、それに倣って……といった所じゃろう)
利根「ありがたいぞ」ニコ
金剛「いえいえ」ナデナデ
瑞鶴(……私も頑張らなきゃ)カキカキカキ
…………………………………………。
-
105 : 2015/11/13(金) 17:09:56.32 -
コンコンコン──
金剛「! ハイ、どうぞ」
ガチャ──パタン
提督「今戻った」
金剛「おかえりなさいデース」
瑞鶴「提督さん、おかえりなさい」
金剛(……あれ?)
提督「……ん? 利根は寝てしまったのか?」
金剛「イエス。少し無理をしようとしていまシタ」
提督「なるほどな。後で説教だ。すま──……いや、ありがとう、二人とも」
瑞鶴「気付いてくれたのも、横になるように促したのも金剛さんよ。……ごめんね、提督さん」
提督「……なぜ謝ったのかは分からんが、こういうモノは誰もが気付けるという訳ではない。そう思ってくれるだけで充分だ」
瑞鶴「あ」
提督「ん?」
瑞鶴(……そうだった。あの人の常識とここの常識は違うんだった。……やだなぁ、染み付いちゃってる)
提督「…………」ポン
瑞鶴「?」
提督「少しずつで構わない」
瑞鶴「……うん!」
金剛「……ところでテートク。何か良くない事でもありまシタか?」
提督「…………」
瑞鶴「……提督さん?」
-
106 : 2015/11/13(金) 17:14:44.98 -
提督「……無かったといえば嘘になる」
金剛「…………伺ってもよろしいデスか?」
提督「……………………」
瑞鶴「えっと……もしかして私達に関係する事?」
提督「ああ……」
金剛(……なんとなくデスが、予想が付きマスね)
瑞鶴「提督さん、私……知りたい」
提督「……………………」
金剛「…………」
提督「……長門が居る時に話そう」
金剛「分かりました……」
瑞鶴(それって……そういう事よね)
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
金剛・瑞鶴「!」
長門「提督、質問があってやって来た」
提督「どうした?」
長門「空母棲姫とヲ級の二人が手伝ってくれたおかげで、瓦礫の撤去はそろそろ終わりそうだ。戦艦と空母は次、何をすれば良いだろうか?」
提督「そうか。明石、建造妖精、開発妖精が鎮守府の建て直しをするはずだ。その際に必要な資材の運搬や手伝いをしてくれるか」
長門「ああ、分かった。……それと、もう一つ質問したい事が出来た」
-
107 : 2015/11/13(金) 17:15:13.98 -
提督「なんだ」
長門「……二人の様子がおかしいが、何かあったのか?」
金剛・瑞鶴「……………………」
提督「……そうだな。丁度良い。長門、今夜みんなが寝静まった後、救護室へ足を運んでくれ。そこで話す事がある」
長門「了解した。……まさかとは思うが、その時にいつぞやに言っていた吊るすという罰を与えるのか?」
提督「それは現状が落ち着いてからだ。楽しみにしておけ。下田鎮守府の事で話がある」
長門「……なるほど、その話か。二人にはもう話したのか?」
提督「いや、まだだ。三人が揃っている時に話そうと決めた所だ」
金剛・瑞鶴「…………」
提督「……以上だ。戻って良し」
長門「はっ」ピシッ
ガチャ──パタン
瑞鶴「……あの、提督さん」
提督「どうした?」
瑞鶴「……大丈夫、よね?」
提督「……それについては夜に話そう。この場では誰が聞いているか分からん」
瑞鶴「うん……ごめんなさい……」
提督「…………」ナデナデ
瑞鶴「……えへ」ニコ
金剛(……少し無理して笑っているのが分かるネ)
提督(これだと、話すのが少し怖いな……。だが、隠すのも為にはならない、か……)
…………………………………………。
-
108 : 2015/11/13(金) 17:17:00.44 -
今回はここまでです。また一週間後……はちょっと怪しいですが、その辺りに来ると思います。
あとちょっと。あとちょっとや。
このルートが終わったら、どっちのルートからやろうかな。 -
113 : 2015/11/19(木) 11:42:43.31 -
提督(……さて、時刻は二十時……そろそろ来る頃だろうか)
利根「くー……」
提督「……………………」ナデナデ
コンコンコン──ガチャ──パタン
長門「失礼する」
提督「来たか。……すまんが、少しの間だけ待っていてくれるか。それと、利根は寝ているからソファの方へ行こう」スッ
長門「了解した。しかし、何かあったのか?」
提督「見ての通り、金剛と瑞鶴、響がまだ来ていない。三人とも、今は姉妹艦と一緒だろう」
長門「なるほど。姉妹の交流という事か」
提督「私が言うのも変だが、堅苦しい言い方だな。ただ単なるお喋りでも良いだろうに」
長門「……私のキャラではない。むしろ『お喋り』という単語は悪い意味にしか聞こえん」
提督「難儀な性格だ。だが、それもここで長く暮らすと認識が変わるだろう」
長門「ほう?」
提督「下田鎮守府の事は多少耳にしていたが、今回は少し詳しく調べさせて貰った。率直に言うと、あれは独裁であり監獄だな」
長門「そうだな。否定のしようがない。だが、突き詰めると私達は消耗品にしか過ぎん。そうなる鎮守府も在るには在るだろう」
提督「違いない。しかし、消耗品と言ってしまえば私も艦娘と変わらんよ」
長門「……うん? どういう意味なんだ?」
提督「所詮、人も消耗品でしかないという事だ。艦娘の提督になる為には特別な何かが必要だというのは分かっているが、この国に蔓延っている鎮守府の数を考えれば極端に珍しい訳でもない。今は人手が足りないらしく、こんな私でもまた提督としてやれているが……前はもっと多くの提督が居たぞ」
長門「……なるほど。総司令部という観点から言えば、提督という存在もまた駒の一つにしか過ぎないのか」
提督「そういう事だ。死んでしまえば補充すれば良い話だからな。もっと大きく言ってしまえば、総司令部もこの国という枠組みの中では駒の一つでしかない。壊滅すれば新しく作り上げられる。そうなると形在るモノは全て消耗品だ」
長門「悔しいが反論のしようが無い。結局の所、どう意識するかで何もかも違って見えるという事か」
提督「頭がよく回るようで助かる。つまりはそういう事だ。──そして、私に付き従ってくれる艦娘に自分が消耗品だと思って暮らしている艦娘は居るように見えるか?」
長門「見えない。本当に普通だ。今を生き、明日を目指し、戦いという使命を除けば自由に暮らしている」
-
114 : 2015/11/19(木) 11:43:20.66 -
提督「私としては鎮守府の外にも目を向けて欲しいのだが、どうしてか全員が興味を持とうとしなくて困っているくらいだ」
長門「それはもう、そういうものだと諦めておく方が良いと思うぞ。私たち艦娘にとって、提督と鎮守府が全てだ」
提督「例外は目の前に居るようだが?」
長門「……意地の悪い人だ。貴方も提督であり、ここは鎮守府。それで良いだろう?」
提督「くっくっ。そうだな」
長門「……………………」
提督「どうした」
長門「いや……そういう笑い方もするのだなと思ってな」
提督「……似合わないとかは言うな」
長門「では、この言葉は呑み込んでおこう」
提督「そうしてくれると助かる。──さて、来たようだぞ」
…………コンコンコン──ガチャ──パタン
金剛「ソーリィ。遅くなってしまいまシタ」
瑞鶴「ごめんね。金剛さんと同じで話し込んじゃった」
響「イズヴィニーチェ……」トトト
響「…………」ギュゥ
提督「構わん。今はまだそういう時であってもおかしくない。むしろ、姉妹と話していて楽しかったかどうかを聞きたいくらいだ」
響「楽しいよ。本当、時間を忘れてしまいそうになるくらいにね」
金剛・瑞鶴「……………………」
提督「金剛、瑞鶴、どうした?」
瑞鶴「あの、さ……怒らない……?」
提督「何の事かは分からんが、言ってみろ。怒るかどうかなど聞く前からは分からんよ」
瑞鶴「えっと……心配してくれる翔鶴姉ぇと何気ない話とかしているのは、楽しいって思ったと同時に……ちょっと辛かったかも」
金剛「私もデス……」
響「…………?」
提督(……そういえば、長門はさっき『姉妹の交流』と言っていたな。という事は、向こうでは姉妹の交流をするのは珍しかったのか? その珍しい中にあったのが金剛と瑞鶴だったのかもしれん)
-
115 : 2015/11/19(木) 11:43:55.53 -
提督「そうか……」
四人「……………………」
金剛「……テートク……下田鎮守府はどうなりまシタか?」
瑞鶴「なんとなくは想像できるけど……それでも知りたいの」
提督「……………………」
四人「…………」
提督「……結論から言おう。下田鎮守府は壊滅した」
金剛「やっぱり……ですか」
提督「下田の提督は即死だったそうだ。敵の砲撃は司令部室に直撃したらしい。提督が居ない状態でも錬度の高い彼女たちは奮闘し、生き残った艦娘は数多く居たとの事だ」
瑞鶴「全員が沈まなかっただけマシなのかしら……」
金剛・長門「…………」
響「……金剛さん、長門さん」チラ
長門「今はどれくらい残っているんだ?」
提督「ゼロだ」
瑞鶴「────え?」
長門「……そう、か」
金剛(やっぱり、デスか……)
瑞鶴「え……? どういう、事? だって、さっき生き残った艦娘は一杯居るって……」
提督「提督の居ない艦娘だぞ。どうなるかは予想が付くだろう」
瑞鶴「……解体?」
提督「そうだ。全員、解体された」
瑞鶴「それって……もう、私たちと会えないって事?」
提督「そうなる。解体をした艦娘と会ったという話は聞いた事が無い。艦娘時代の記憶を失っているのか、それとも機密保持の為に監禁されているのか、それとも処理されてしまったのかは分からない。ただ言える事は、会う事は絶望的だという事だ」
瑞鶴「ちょ……処理って……」
提督「……あくまでも可能性だが、そういう事だ。同じ人間が何人も居る事はおかしい話だからな」
瑞鶴「…………」
長門「酷かもしれんが、諦めておく方が良いかもしれん」
金剛「……ハイ」
瑞鶴「……………………」
-
116 : 2015/11/19(木) 11:44:28.19 -
響「……話の延長になるんだけど、長門さんの扱いはどうなるの? 確か、教育の為にここに居させているんだよね」
提督「それに関してだが、長門は私が引き取る事となった。報告書を読む限りでは何も問題なく運用できていると判断されたらしく、解体か引き取りかを選べと言われたのでな」
長門「では、正式に貴方の艦娘となる訳か」
提督「そういう事だ。これからもよろしくだ、長門」
長門「ああ……。こちらこそよろしくだ」
提督「そして……金剛、瑞鶴」
金剛「……ハイ」
瑞鶴「…………」
提督「明日は自由にして良い。せめて、それで心を落ち着かせてくれ」
金剛・瑞鶴「…………」コクン
提督「……以上だ。では、これからは自由時間とする」
金剛「…………テートク」
提督「……どうした」
金剛「……今夜だけは、我侭を言っても構いまセンか」
提督「どんな我侭だ?」
金剛「傍に……傍に、居て下サイ。テートクは消えないと……安心させて下サイ……」
提督「……隣に座っておけ」
金剛「ありがとうございマス……」ソッ
響「……………………」
響(……金剛さん、本当に悲しんでるみたいだ。元司令官の事が好きなのは思い込んでいるだけだって思ってたけど……まさか、本当にあんな人が好きだったのかな)
響(そういう私も、前はあの人の事を……)
響「…………」
-
117 : 2015/11/19(木) 11:44:55.36 -
瑞鶴「……私は翔鶴姉ぇの所に行ってくる」スッ
提督「ああ。救護妖精には私が許可したと言っておく」
瑞鶴「ありがと、提督さん……」トボトボ
ガチャ──パタン
長門「……瑞鶴の気持ちも分からんでもないな。交流が深かったとは言えないが、私も陸奥や酒匂たちが少し気になっていたくらいだ」
響「…………」
提督「どうした、響」
響「ん、なんでもないよ。少し海を見てきても良いかい?」
提督「構わんが、私もついていった方が良いか?」
響「いや、今日は一人が良い。気遣ってくれてありがとう、司令官」スッ
響「……………………」トコトコ
ガチャ──パタン
長門「……大丈夫なのだろうか、響は」
提督「判断が難しいな……。少し無理にでも一緒になった方が良かったかもしれんが……」
金剛「……テートク、私は少し心配デス」
提督「今は自分の事だけを考えて良いんだぞ、金剛。──長門、すまんが響の様子を見てきてやってくれないか」
長門「ああ、分かった」スッ
利根「──いや、それは我輩に任せてくれぬか」トコトコ
提督「む、起こしてしまったか」
利根「少し前に自然と起きたのじゃ。寝ておくと少しマシになったのう」
提督「そうか。……しかし、お前こそ自分の身体を大事にしておかなければならんだろう。許可は出さんぞ」
利根「すまぬが行かせてくれ。響の問題は、恐らく我輩でないと解決できぬぞ」
-
118 : 2015/11/19(木) 11:45:22.59 -
提督「響の問題? それはこの間のレ級の事ではなくか?」
利根「そうじゃ。じゃが、もし我輩だけでは無理じゃと思うたら……その時は提督を呼ぶぞ」
提督「……………………」ジッ
利根「……………………」
提督「……ああ。頼んだぞ、利根」
利根「うむ! 任された!」
提督「だが、身体に大きな負担は掛けない事。これだけは約束してくれ」
利根「分かっておる。我輩も早く元気になりたいからのう。──ああそうじゃ、金剛よ」ヂー
金剛「ハ、ハイ」
利根「……今夜だけじゃからな。じっくり堪能しておくと良い。普段ならば押し退けてやるからの」
金剛「──ハイ」
利根「うむ! では、行ってくるぞ!」ガチャ
パタン──
金剛「……利根にしか解決できない問題とは何でショウか」
提督「それは分からん。ただ言える事は、私は利根を信じるという事だ」
長門「信頼しているのだな」
提督「当然だ。こんなにも私の事を信用し、信頼し、尽くそうとしてくれる子達を信頼するなと言う方が難しい」
長門「だが、そうだと言って無条件に信頼するのか?」
提督「無論違う。いつもの利根であれば私は止めていただろう」
長門「ほう」
提督「あの目は何かを確信している目だった。私の気付いていない響の何かを、利根は感じ取っているのだろう」
金剛「何かを……」
金剛(……何を感じたのでショウか。私には、急に響が落ち込んだようにしか見えなかったデス……。一体、何があったのデスか……?)
金剛「……………………」
提督「…………」ポン
金剛「?」
提督「利根に任せておけ。さっきも言ったが、今は自分の事を一番大事にして良いんだ」
金剛「……ハイ」ソッ
提督(む? 肩へ寄り掛かってきた?)
金剛(ごめんなサイ利根……そして、ありがとうございマス。今夜だけ……この夜だけデスから、許して下サイ……)
提督(……こういう時、あいつはこうしろと言うんだろうな)ナデナデ
金剛「!」
金剛(──ああ……あのアイレットでテートクに抱き締められて……頭を撫でて下さった時の事を思い出しマス……)
金剛(温かくて、優しくて、落ち着けて……私が『テートク』に望んでいたモノ……)ジワ
金剛(今夜だけ……お二人のご好意に甘えてしまいまショウ……)
…………………………………………。
-
119 : 2015/11/19(木) 11:50:07.50 -
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
心情をちょっとでも書くと文章量が増える増える。やっぱり私はこういうスタイル。
-
120 : 2015/11/19(木) 12:17:11.67 ID:ktI6LwFLo -
乙
なんというかシリアス一辺倒になったな
1スレ目の最初の方ののんびりした感じも好きなんだけどなぁ -
125 : 2015/11/27(金) 20:22:21.93 -
響「…………」
響(私は……おかしいのかな。なんだかんだで好きだと思っていた、あの人……。それは、私が無知だったからってものだった。けど、その人が死んだっていうのに悲しんでない……。むしろ、そうなって当然の事を今までやってきたんだからとさえ思ってる)
響(あの人だけじゃない。あまり会話とかもした事がなかった皆も沈んだか解体されたっていうのに、私は大して辛いって思ってない。ほとんど他人だったから……。なのに、長門さんは瑞鶴さんの気持ちが分からない事もないって言ってた。私には……正直それが分からなかった)
響「私は……冷たいのかな」
利根「それはどうかのう」トコトコ
響「! ……利根さん、動いて良いの?」
利根「あまり良くないらしいが、どうしても響が気になってのう」
響「……………………」
利根「外には出なかったのじゃな」
響「……夜の外は、怖いから……思い出しそうになるから」
利根「それも当然じゃろうな。あれは響には強過ぎる刺激じゃ」
響「……利根さん。利根さんは、どうして私を見に来たの?」
利根「うん?」
響「だって、利根さんって本当は絶対安静なんでしょ? それなのにどうして私を?」
利根「……まあ、なんとなく何を悩んでいるかが予想できたからのう」
響「予想?」
利根「うむ。大方、自分は心が冷たいとか思うておるんじゃないか、とな」
響「!!」
利根「やっぱりのう」
響「…………なんで分かったの?」
利根「まあ、似ておるからの。我輩と響は」
響「……あの島で確か言ってたね」
-
126 : 2015/11/27(金) 20:23:00.63 -
利根「うむ。どことなく似ているとな。──それで、過去の味方をどうとも思っておらん事じゃが、実は我輩もそうなのじゃよ」
響「……………………」
利根「あ、信用しておらぬな?」
響「そりゃね。どうでも良いって思ってるのなら、私を追い駆けたりしないよ」
利根「うむ、そうじゃ。ならば、どうして追い駆けたか考えてみぬか?}」
響「…………私の事を、どうでも良いって思ってないから?」
利根「正解じゃ。我輩はお主の事を放っておけぬからここへ来た。そして、そうならば更に疑問が生まれるじゃろう」
響「どうして放っておけないか──だよね」
利根「うむ。どうしてじゃと思う?」
響「…………………………………………」
響「…………」フルフル
利根「ぬ、分からぬか」
響「分からない。どうしてなんだい?」
利根「簡単じゃ。我輩は響を有象無象の一人と思うておらん」
響「…………?」
利根「簡単な話、我輩は深く接した者以外には淡白なのじゃよ。この鎮守府には数十人の艦娘が暮らし、助け合い、笑い会っておる。が、それだけの数ともなれば不仲も起きるじゃろう。そもそもとしてほとんど会話せん者も居る。我輩にとってその会話をあまりせぬ相手は、極端な話どうなろうと気に留めないのじゃ」
利根「例えばこの鎮守府には潜水艦が何人か在籍しておるが、我輩と任務や役割が噛み合わず話した事など無い。もしかすると向こうは我輩の事を覚えておらぬ可能性もある。なんせ少ない潜水艦ではなく、数ある重巡の中の一人じゃからな。覚えておらんでも無理はない」
利根「そこでもし潜水艦の誰かが任務中に沈んでしまったとしよう。じゃが、我輩にとってはその者との思い出も無ければ会話すら無いのじゃ。多少思う所はあっても、悲しむかと言われたら首を傾げる。例え我輩が涙を流したとしても、三日もすれば元の生活に戻っておるじゃろう」
響「……なるほどね。私とはあの島で一緒に支え合ってきた。色々と話した事もある。だから放っておけない、か」
利根「そうじゃ。可能性の話じゃが、別の鎮守府では響という名前の駆逐艦が沈んでいるかもしれぬ。もしくは解体されているかもしれぬ。じゃが、それを我輩が聞いた所で何も思わぬぞ。別の鎮守府の話じゃからな。我輩と何も関わっておらぬ相手の話を聞いても、同情こそはすれど悲しむ事などせんよ。要はどれだけ意味のある共通の時間を積み重ねてきたか、じゃ」
利根「そこで質問じゃ。ありえぬ話じゃが、もし提督が金剛や瑞鶴を解体すると言ったら響はどう思うかの?」
-
127 : 2015/11/27(金) 20:23:34.13 -
響「嫌な気分になる。それと同時に抗議するね」
利根「そうじゃろう? それはあの島で共に暮らしてきているからではないか? 色々と思い出があるからじゃろう?」
響「……うん。たぶんそうかもしれない」
利根「うむ。では更に質問じゃ。そんな響は、本当に心の冷たい艦娘かの?」
響「……………………」
利根「…………」
響「……でも、姉妹艦だよ」
利根「うん?」
響「下田鎮守府では暁たち姉妹艦も居た。部屋も違ったし、話した事もほとんど無かった。けど、姉妹艦だ。それでも私は少し嫌な気分になりはしても、辛いって思わなかった。これは心が冷たいんじゃないの?」
利根「そうかのう。少しでも嫌な気分になったのならば普通じゃと我輩は思うぞ。というよりも、それは長門と何が違うのじゃ? 長門はああいうキャラじゃから少しでも弱い所を見せると印象的じゃろう。それでも、長門の感じた『思う所』と響の思うた『嫌な気分』に大きな差は無いと思うぞ?」
響「じゃあ元司令官の事はどうなの。私はあんな人でも好きだって思ってた。今の司令官に優しくしてもらって、普通の艦娘として接して貰っているから異常だったって思えるけど、かつては好きって思っていた人が死んでも何とも思わないのは──」
利根「どうしてそんなに『自分は冷たい』と決め付けたいのじゃ?」
響「──え?」
利根「我輩にはそういう風に見えるぞ? 自分は冷たい艦娘じゃーって決め付けようとアレコレ言っているようにしか聞こえぬ」
響「……………………」
利根「何か理由はあるのじゃと思うが、そんなに自分を卑下せんでも良かろう?」
響(……言われてみると、どうして私はこんなに自分を責めてるんだろ)
利根「その顔を見るに、気付いていなかったようじゃな。……原因が何かは分からぬが、ゆっくり自分と向き合ってみると良いかもしれぬぞ」
響「……うん。そうしてみる」
利根「うむうむ。さて、それでは響はこれからどうするのかの?」
響「司令官の傍で寝たい」
利根「ハハハハッ! なるほどそうきたか! うむ、それも良いじゃろうな!」
響「じゃあ、今日も利根さんと一緒だね」
利根「あー……それじゃが、今夜は我輩一人じゃ。今夜だけじゃが我輩の席は金剛に譲っておるからのう」
響「……へぇ」
響(前々から思ってたけど、利根さんって色々と強いね。私だったら嫉妬しそうだ)
響(……嫉妬?)
利根「それでは、戻るとしようかのう。悩みは少しくらい晴れたかの?」スッ
響「うん。スパスィーバ」スッ
響(ああ……そっか。私、司令官の事が──)
響(──いや、これは口にしないでおこう。ひっそり……うん、ひっそりと想うだけで良い)チラ
利根「~♪」トコトコ
響(それだけは許してね、利根さん)
…………………………………………。
-
128 : 2015/11/27(金) 20:24:01.21 -
ガチャ──パタン
金剛「!」ビクッ
利根「戻ったぞー」トコトコ
響「ただいま」トコトコ
提督「おかえり」
金剛「…………」スッ
利根「む? どうしたのじゃ金剛? さっきのままでも良いのじゃぞ?」
金剛「えっと……それは、その……」
利根「言うたではないか。今夜だけじゃ、と。我輩の事を考えてくれるのは嬉しいが、今はお主が一人でも立てるようになるべきじゃろ」
金剛「…………」ジー
利根「?」
金剛「……ありがとうございマス」ソッ
利根「うむ!」
提督(……なんだかんだで利根も成長しているものだ)ナデナデ
利根(うむうむ。提督もしっかり頭を撫でておる。今はそうするのが良いじゃろう)
コンコンコン──ガチャ──パタン
響「お疲れ様、救護妖精さん」
救護妖精「うんありがと。……ん? あれ、瑞鶴はどしたの?」
提督「今頃は翔鶴の所に居るはずだ。少し事情があってな、今日と明日はこの部屋に居ないかもしれん」
救護妖精「あー……なんとなく察しがついたよ。まあ、仕方ないかねぇ。明日になったら翔鶴の居る部屋に行ってみるよ」
提督「助かる」
救護妖精「そんじゃ利根と金剛、寝る前の検査するから隣の部屋へ来てくれるかい」
利根「うむ、良い結果が出ると良いのう」
救護妖精「どういう結果が出るのか想像するまでもないね」
利根「む。我輩とて早く良くなるよう身体は労わっておるのじゃぞ?」
救護妖精「だったら執務なんて投げ捨てて大人しく寝ていな」
利根「むむ。むむむむ……困ったぞ。反論が出来ぬ」
救護妖精「まったく……」
救護妖精(……ま、命があるだけ良かったってものかね。いつかは治るんだから)
救護妖精「さっさと治してそこら辺を走り回れるようにしなよ」
利根「うむ!」
金剛「ハイ」
…………………………………………。
-
129 : 2015/11/27(金) 20:26:38.34 -
今回はここまでです。一週間後……はちょっと無理だと思います。次は12/8くらいを目処にして下さいませ。
>>120
あとちょっとでぼのぼのになるやずやで。その後になってこのルートはゴールインや。もう少しだけ辛抱してくだせぇ。 -
136 : 2015/12/10(木) 13:48:41.34 ID:8q8Mav0To -
おイタする子はどんどんしまっちゃうよ
おつつ ところで冬コミはどうするんだい? -
137 : 2015/12/11(金) 09:47:24.28 -
一ヶ月近く設定を考えて生み出した作品の第一歩が私にとって非常に辛い始まり方となり、現在気力がほぼゼロになってしまっています。
たぶん次の更新は三日以内に投下すると思いますので、もうしばしお待ち下さい。どんな疲労でも一瞬で回復する高速修復材が欲しい。切実に。>>136
残念ながら冬コミは参加しないと思います。急遽参加する事になる可能性もあるかもしれませんが、参加が決まりましたらお知らせします。 -
140 : 2015/12/14(月) 19:29:28.09 -
提督「──ふむ。あの騒動で本部に連絡する事は粗方終わったな」サラサラ
利根「後は鎮守府の再建と金剛と響のケアだけじゃな」カリカリ
提督「お前の身体の全快を忘れるな」サラサラ
利根「忘れておらぬよ。じゃが、こればっかりはどうしようもないじゃろう?」カリカリ
提督「執務をこなさずにベッドの上で大人しくしていれば、もっと早く治るだろ」サラサラ
利根「残念ながらそれは出来ぬ相談じゃな。ずっとベッドの上では精神的に辛くて治るのが遅くなりそうではないか?」カリカリ
提督「なるほど、そう返すか」スッ
利根「ほれ、こっちも終わったぞ」スッ
提督「だいぶ早くなったな。日付が変わる前に終わるのは珍しい」
利根「ふふん。我輩も成長しておるという事じゃ。ほれ、文字を書くスピードも上がって字も綺麗になったじゃろ?」
提督「そうだな。初めの頃と比較したいくらいだ」
利根「それも良いのう。我輩がどれだけ成長したのかが分かるぞ」ゴソゴソ
提督「別の方も成長しているようだ」
利根「そうじゃろうそうじゃろう? 頑張ったのじゃ!」ゴソゴソ
提督「初めは書類の見分け方すら分からなかったお前が、今じゃしっかりとした秘書だ。嬉しいものだ」
利根「見分け方どころか書く事すら酷いものではなかったか」パラパラ
利根「ほれ、これが当時のじゃ。小さな子供が書いたかのような字じゃなぁ」スッ
提督「今でなら汚い字と言えるな」
利根「うむ。……自分で言うのもアレじゃが、よくまあここまで綺麗になったものじゃ」
提督「字をあまり書かないから汚かったのであって、綺麗な字を書く素質はあったという事か」
利根「そうだと良いのう」
提督「利根は違うと思うのか」
利根「単純に我輩は他の人の綺麗だと思うた字をちょこっと真似ただけじゃからな」
提督「そうか。だが、それでも字が上手くなる者とならない者で違いは生まれるんじゃないか?」
利根「ふーむ……そういう事にしておくかのう。──それよりも、金剛と響がそろそろ来る頃じゃな」
-
141 : 2015/12/14(月) 19:29:59.24 -
提督「ああ。今日は珍しく仕事の話をしなくても良い時間になるぞ」
利根「本当に珍しいのう。こんなのは初めてではないか?」
提督「初めてではないが、滅多に無い事だ。お前も今日はゆっくりとティータイムを楽しむと良い」
利根「ティータイムか。似合わぬのう」
提督「どうした。そんなにティータイムが嫌いか?」
利根「そんな事は微塵にも思っておらぬぞ。──さて、金剛が準備しやすいように我輩は準備の準備をしておこうかのう」スッ
提督「ふむ?」
提督(……珍しく利根の言っている意味がいまいち分からなかったな。ティータイムが似合わない……? …………まあ、そこまで深く考えなくても良いか)
コンコンコン──
提督「入れ」
ガチャ──パタン
響「こんばんは、司令官、利根さん」トコトコ
響「…………」ソッ
金剛「お疲れ様デス」
利根「うむー! 来たかー! 金剛よー、準備の準備はやっておいたぞー」
金剛「分かりまシター。……あれ? 今日の執務は終わったのデスか?」スッ
提督「ああ、ついさっきな」
金剛「利根も成長していっているのデスね」スタスタ
利根「そうじゃ。我輩も少しずつじゃが育ってきておるようじゃぞ」
響(……利根さんも変わってきてるんだね)スッ
提督「ん? 今日はくっついていなくて良いのか、響」
響「うん。ある程度は大丈夫になってきてるからね。これからは少しずつ慣れて行こうと思うよ」
提督「そうか。偉いな」ナデナデ
響「ん……」
-
142 : 2015/12/14(月) 19:30:42.29 -
コンコンコン──
提督「む? 入れ」
ガチャ──パタン
瑞鶴「やっほー提督さん、みんな」
提督「瑞鶴か。珍しいな」
瑞鶴「うん、最近は来てなかったからね。なんだか来たくなっちゃったの」
提督「そうか。──今、利根と金剛がティータイムの用意をしている。一緒に楽しむか」
瑞鶴「うん!」
響「……瑞鶴さん」
瑞鶴「? どうしたの、響ちゃん?」
響「瑞鶴さんは、もう大丈夫なの? あの鎮守府の事」
瑞鶴「あー……んー……。大丈夫って言ったら大丈夫だけど、思い出したらやっぱりちょっと……って所はあるかしらね。だけど、それくらいかしら」
響「……強いね」
瑞鶴「そういうんじゃないって。たぶん、私はちょっとドライなだけよ」
提督「ドライの割にはここへ来てくれたようだが?」
瑞鶴「……うーん。じゃあ、なんて言うのかしら」
提督「さてな。ドライではないとだけ私が保証しておこう」
瑞鶴「そっか。うん、そうしておくわ」
瑞鶴(なんというか、ホント優しいわよねー。……でも、言葉だけでも嬉しいな)
利根「──金剛よ。気になったのじゃが、どうして湯は沸騰しきらねばならんのじゃ?」
金剛「それはデスね、紅茶は少しでも温度が低いと美味しく抽出が出来ないのデス。五度違うだけで味がかなり変わってくるデース」
利根「ふむふむ、なるほどのう」
提督(今度はお茶か。……本当、色々な事を覚えようと頑張っているな)
…………………………………………。
-
143 : 2015/12/14(月) 19:31:10.88 -
瑞鶴「じゃあ、また明日ね。お茶とかお菓子とか美味しかったわ」
響「おやすみ、司令官」
金剛「グッナイ、テートク、利根」
提督「ああ。また明日も頼む」
利根「良い夢を見るのじゃぞー」
ガチャ──パタン
提督「さて、私達もそろそろ寝るとしようか」
利根「うむ、そうしようかのう」
提督「もうすっかりとここで寝るのが当たり前になったな」
利根「何年もずっと一緒に寝ておったからのう。もはやこうでなければ熟睡できぬようになったぞ」
提督「もう三年になるからな」
利根「じゃのう。随分と長いようで短いものじゃ」
提督「時間の流れなんてそんなものだ。存外に時間というものは速く流れていく」
利根「本当じゃ。我輩も随分と物事を覚えてしもうた」
提督「そうだな。そこでだ利根。お前が頑張ってきているのを私は良く知っている。希望するなら何かを与えようかと思う」
利根「なぬ? それは本当か?」
提督「ああ。何か欲しい物はあるか?」
利根「欲しいモノ……のう。あるにはあるが……」
提督「そうか。ならば言ってみろ。問題が無ければ取り寄せるぞ」
利根「ふーむ……じゃが、のう……」
提督「歯切れが悪いな。そんなに難しい物なのか?」
利根「難しいと言えば難しい。いや、とびきりに難しいやもしれぬ」
提督「ふむ。まあ、言ってみろ」
利根「……うむ。そうじゃのう。ダメ元で言ってみるかの」チラ
提督「ん? 私の手を見てどうした?」
利根「…………すぅ……はぁー……」
利根「……提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」
-
144 : 2015/12/14(月) 19:31:45.39 -
提督「……む?」
利根「えーっとじゃな。……ほれ、左手の薬指じゃ。暇そうにしておるではないか」
提督「……なるほど、そういう事か」
利根「そういう事じゃ。……のう? とびきりに難しかろう?」
提督「そうでもないな」
利根「そうじゃろう? …………む? 今なんと言った?」
提督「そうでもないと言ったが?」
利根「……いや、我輩が言うのもアレじゃが、良いのか? 我輩じゃぞ?」
提督「何が言いたいのかは分からんが、お前だから良い。一緒に風呂やベッドに入っているのはなぜだと思っていた」
利根「……なんと。なんとなんと」
提督「意外だったか?」
利根「かなりの。……しかし、思うてみれば当たり前のようにしておった風呂や就寝も、普通では一緒にせぬな」
提督「今頃になって気付いたか。よっぽどあの島で常識が失われていたらしい」
利根「みたいじゃな……。それと……少し気になった事があるぞ」
提督「なんだ?」
利根「……夫婦になったとして、何か変わるのかのう?」
提督「……………………」
利根「……………………」
提督「……変わりそうにないな」
利根「じゃな……」
提督「強いて言うならば、加賀辺りが酷く落ち込みそうだというくらいか」
利根「想像に容易いのう……」
-
145 : 2015/12/14(月) 19:32:50.61 -
提督「それと、私とお前の指に指輪が嵌められるという事だろう」
利根「指輪……」チラ
提督「どうした」
利根「いや……改めて指輪と言うと、なんだか少し気恥ずかしくなっての」
提督「ほう。ならば指輪は要らんか?」
利根「いぢわる者め。欲しくない訳がなかろう」
提督「クックッ。そうだな。欲しくない訳がない。──だったら、本部へ送る申請書を書いておこう」スッ
利根「のう、指輪は種類などあるのか?」チラ
提督「いや、一種類しかない」サラサラ
利根「なんじゃ……。選択肢など無いのじゃな」
提督「今は深海棲艦と戦争中なんだ。指輪に金属を回してくれるだけありがたいものだろう」サラサラ
利根「それもそうじゃな。最近、めっきり深海棲艦と戦うどころか普通に話しておるから麻痺しておった」
提督「……戦う事になった時に影響を出すなよ?」
利根「その点は弁えておる。安心するが良いぞ」
提督「そうか。ならば良し」サラサラ
利根「あ、そうじゃ! 我輩、結婚したら二人でピクニックに行きたいぞ!」
提督「ピクニック? 遠くへは行けんぞ」サラサラ
利根「鎮守府の目の前に山というか丘があるじゃろう? そこではダメか?」
提督「……まあ、そこならば大丈夫か」サラサラ
利根「やったぞ! 決まりじゃな!」
-
146 : 2015/12/14(月) 19:35:05.17 -
提督「随分と慎ましい新婚旅行だな」サラサラ
利根「我輩にとっては充分な旅行じゃぞ。何せ、陸で鎮守府以外の場所に行く事なぞほぼ無いからの」
提督「それもそうだな。──よし、後は本部へ送るだけだ」
利根「なんだか少しドキドキしてきたのじゃ……!」
提督「初心な奴め。散々お互いに裸も見ているだろうに」
利根「それとこれとは別なのじゃー。結婚じゃぞ、結婚」
提督「そうだな。──さて、朝に送る書類へ組み込む為にもさっさと寝るぞ」スッ
利根「うむ! 分かったのじゃ!」タタタ
利根「何をしておる提督よ、早く来ぬかー」ポンポン
提督「そんなにベッドを叩かんでも良いだろう。すぐに行く」スタスタ
利根「ふふん。楽しみじゃからなー」
提督「結婚書類を出す事に興奮して寝れなくなる姿が目に浮かぶ」ギシッ
利根「……本当にそうなりそうじゃ。じゃが、この高鳴る気分を止める事なぞ難しいぞ」モゾモゾ
提督「すぐに寝られるように頭を撫でてやるから寝ろ」ナデナデ
利根「どうせなら抱き締めてくれぬか」
提督「注文の多い嫁だ」ソッ
利根「少しだけじゃから許してくれぬか」ギュゥ
提督「このくらいならば注文がある方が嬉しいものだ」
利根「……夢みたいじゃなぁ」
提督「夢はこれから見るものだ。──さて、良い夢を見ろよ、利根」
利根「うむ! おやすみじゃ、提督よ」
提督「ああ、おやすみだ、利根──」
──── 利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 Normal End────
了
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