波平「母さーん!飯はまだかー?」フネ「さっき食べたでしょ」


1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 12:41:16.36 ID:seRCa99z0
波平「….そうか..そうだったか….」
タマ「にゃーんw」


ソース: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1319341276/


10 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:21:58.85 ID:iKKfsr9PO
波平「かあさんは忘れとるのかもしれん、サザエー」

サザエ「はーい、なぁにとうさん」

波平「飯はまだか?」

サザエ「やぁねぇ、食べたじゃない!」

波平「お!?そうか…」

サザエ「もーとうさんったらぼけてきちゃったんじゃない?」

波平「ばっかもん!そういう事を簡単に言うな!ワシはぼけとらん!」

サザエ「いっけない、てへへ」


12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:25:28.65 ID:iKKfsr9PO
波平「おかしいな…ワシが忘れとるのか?タラちゃーん」

タラ「はーい、おじいちゃん、なんですかぁ?」

波平「その…タラちゃんはお腹すいてないか?」

タラ「お腹ですかぁ?」

波平「ごはん、食べたくないか?」

タラ「いらないですー、さっき食べたです」

波平「そうか…だよなぁ」

タラ「おじいちゃんおかしいですー」


15 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:31:09.58 ID:iKKfsr9PO
波平「…おかしい、ワシが忘れとるようだ…」

カツオ「とうさん、かあさんが食後のお茶はいかが?って」

波平「うむ…いただこうか」

カツオ「わかった、言ってくるね」

スー パタン

サザエ「どうだった?」

カツオ「とうさんすっかり信じてるよ姉さん」

タラ「おじいちゃん信じてるですかー」

カツオ「タラちゃんの名演技もあったからね」

サザエ「サプライズパーティーは成功しそうね」


16 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:35:15.02 ID:iKKfsr9PO
タラ「おじいちゃんびっくりするですー」

サザエ「とうさん自分の誕生日も忘れてるんだから」

カツオ「ふふふ、とうさんはうっかり屋だなぁ」

ワカメ「お姉ちゃん、ケーキ受け取ってきたよ」

カツオ「ワカメ、勝手口から入ってくるとは気が利くじゃないか」

ワカメ「だってサプライズだもん、おかあさんは?」

サザエ「洗濯物干してるわ、まあーおいしそうなケーキ」

カツオ「姉さんのじゃないよ」

サザエ「わかってるわよ!」


17 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:38:36.67 ID:iKKfsr9PO
タマ「にゃーん」

サザエ「あらタマ、そのお花…」

タラ「おじいちゃんへのプレゼントですかー」

タマ「にゃーん」

ワカメ「えらいわタマ」

タラ「いいこですー」

カツオ「姉さんよりえらいや」

サザエ「カツオ!」

カツオ「えへへ」

フネ「どうしたんです、騒々しい」


18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:42:42.50 ID:iKKfsr9PO
サザエ「あ、かあさん、見て、ワカメがケーキ受け取ってきてくれたの」

タラ「タマもお花持ってきたですー」

カツオ「とうさんすっかり信じてるよ、かあさん」

ワカメ「サプライズパーティーきっと大成功よ」

フネ「ケーキ?お花?パーティー?なんですか?」

サザエ「もー、かあさんまで知らない振りしなくていいのよ」

フネ「わたし知りませんよ、なんですか、今日に限って」

カツオ「とうさんの誕生日だからでしょ」

フネ「おとうさんの…?」


19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:45:53.29 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「おかあさん?どうしたの?」

フネ「なにがです?」

サザエ「…今日とうさんのサプライズパーティーしようって言ってたじゃない」

フネ「…?」

カツオ「かあさん…」

タラ「おばあちゃん忘れちゃったですかー」

カツオ「タラちゃん!」

サザエ「しっかりしてよかあさん!」

フネ「えぇ…サプライズ…パーティーですか…」

タラ「おばあちゃんうっかりしてますー」

カツオ「タラちゃん!」


21 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:49:37.32 ID:iKKfsr9PO
波平「なんだ騒がしい」

サザエ「とうさん…」

タラ「おばあちゃんがぼけちゃったですー」

カツオ「タラちゃん!いい加減にしなよ!」

タラ「カツオお兄ちゃんこわいですー」

波平「なんじゃと?かあさん、大丈夫か?」

フネ「…えぇ…」

ワカメ「今日とうさんのサプライズパーティーするつもりだったの」

サザエ「でもかあさんすっかり忘れてて…」


23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:54:45.53 ID:iKKfsr9PO
波平「なんじゃ、それくらい」

サザエ「えっ?」

波平「それくらい誰にでもある、かあさんも疲れとるんじゃろう」

フネ「えぇ…そうですよね、おとうさん…」ホッ

波平「疲れとる時は寝るのが一番じゃ、ワカメ、かあさんを寝かしてあげなさい」

ワカメ「はぁい、おかあさん行こう、お布団ひいてあげる」

フネ「いえ、でも…」

波平「ゆっくり休みなさいかあさん、心配しなくていい」

フネ「…では、お言葉に甘えて…」


25 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 13:58:23.87 ID:iKKfsr9PO
波平「うむ、カツオはタラちゃんと向こうでケーキでも食べなさい」

サザエ「これはとうさんのよ」

波平「どっちみちパーティーはできんじゃろう、また買い直せばいい」

カツオ「でも…」

タラ「わーい、ケーキ食べるですー」

波平「カツオ、行きなさい」

タラ「カツオお兄ちゃん、早く食べるですー」

カツオ「タラちゃん先に食べといで」

タラ「はーいですー」

サザエ「いいの?とうさん」


27 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 14:02:13.63 ID:iKKfsr9PO
波平「いいんじゃ」

タラ「うわーい、食べてくるですー」

カツオ「さすがとうさんだね、安心したよ」

サザエ「そうよ、私びっくりしちゃって、余計かあさんを不安にさせちゃったわ」

波平「サザエ」

カツオ「かあさん、そんなに疲れてるなんてなぁ」

サザエ「あんたがイタズラばかりするからよ!」

波平「サザエ、明日かあさんを病院に連れていけ」

サザエ「…え?」
カツオ「…え?」

波平「こういうのは早い方がいい」


31 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 14:09:25.34 ID:iKKfsr9PO
カツオ「かあさんは疲れてるんじゃないの、とうさん」

波平「その可能性もある、かあさんを不安にさせる訳にはいかんじゃろう」

サザエ「そんな…でも大丈夫よね?とうさん」

波平「わからん、はっきりさせるために明日病院へ連れていけ」

サザエ「…わかったわ」

カツオ「でも、とうさんの誕生日忘れたからって、すぐには…」

波平「ばかもん、かあさんが…ワシの誕生日を簡単に忘れる訳なかろう」

サザエ「とうさん…」


33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 14:14:27.78 ID:iKKfsr9PO
波平「よっぽどのことでもない限り、そうそう忘れんわい、かあさんはそういう人だ」

カツオ「とうさん」

波平「ん、こほん、まぁそういうことだ、サザエ明日頼むぞ」

サザエ「わかったわとうさん」

カツオ「なんだ、とうさんののろけじゃないか」

波平「!ばっかもーん!!」

サザエ「いいじゃないのとうさん、そんな照れなくても」

カツオ「いやぁ、両親がラブラブで嬉しいような照れるような」

波平「こら!!サザエ!カツオ!」

サザエ&カツオ「ウッフフフ、ごめんなさーいw」


47 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:14:57.47 ID:iKKfsr9PO
フネ「大げさなんですよ、おとうさんは」

サザエ「かあさんを心配してるのよ」

フネ「なにもこんな病院まで…」

サザエ「検査したらすっきりするじゃない、大丈夫よ」

フネ「そうかねぇ…」

サザエ「大丈夫だから、ほら、かあさん行ってらっしゃい」

フネ「じゃあ…行ってきます」

サザエ「待合室で待ってるからー」

フネ「はいはい」

サザエ「かあさん…大丈夫よね、きっとなんでもないわ…」


48 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:19:53.95 ID:iKKfsr9PO
フネ「…ふぅ」

サザエ「かあさん、お疲れ」

フネ「えぇ、サザエ、なんだか疲れたわ」

サザエ「検査なんてなれてないものね」

フネ「そうですよ、サザエお医者さまに聞いといてちょうだい、私休んでますから」

サザエ「わかったわかあさん」

看護婦「磯野さーん」

サザエ「はーい、じゃあかあさん、ちょっと言ってくるわね」

フネ「えぇ、頼みましたよ」

パタパタ

サザエ「…かあさんには聞かれずにすみそうね」


50 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:25:43.48 ID:iKKfsr9PO
医者「…少し脳が萎縮してますね…」

サザエ「えっ…」

医者「うーん、年のせいもありますが…」

サザエ「先生、あの、母は…」

医者「認知症、ですね、今はまだ軽いですが…」

サザエ「そんな…」

医者「できる限りのことをしていきましょう、認知症はご家族の協力が一番大事です」

サザエ「…はい」

医者「そう気を落とさないで」


51 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:30:19.81 ID:iKKfsr9PO
サザエ「…はい」

医者「認知症になる方は、今はけっこういらっしゃいますから」

サザエ「…けっこういる…」

医者「昔に比べて、サポートの施設も団体も多いですよ」

サザエ「…でも、認知症の人がいっぱいいても…かあさんは1人だけよ…」

医者「…」

サザエ「私たちのかあさん…」

医者「…そうですよね、失礼いたしました」

サザエ「先生、かあさんはいつか全部忘れちゃうんですよね?」

医者「今はなんとも言えませんが…おそらく」


53 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:36:10.45 ID:iKKfsr9PO
サザエ「…とうさんに相談しなくちゃ…先生、ありがとうございました」

医者「はい、また…」

サザエ「…かあさん…」

パタパタ

フネ「サザエ、お医者さまはなんて?」

サザエ「…たぶん、疲れだろうって」

フネ「そう、やっぱり、おとうさんが大げさだったわねぇ」

サザエ「かあさんが大事なのよ、とうさんは」

フネ「まぁサザエ、からかうんじゃありません」

サザエ「ウフフw(…かあさん…)」


55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:40:59.31 ID:iKKfsr9PO
ガラッ

波平「ただいまー」

フネ「おかえりなさい、おとうさん」

波平「かあさん、今日はどうだったんじゃ?」

フネ「疲れですよ、疲れ」

波平「なぁんじゃ、そうだったのか」

サザエ「とうさん、お風呂わいてるわよ」

カツオ「とうさんおかえり!」

ワカメ「おとうさん、おかあさん大丈夫ってお姉ちゃんが」

フネ「みんなに心配かけたわねぇ」


56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:46:29.38 ID:iKKfsr9PO
マスオ「おかえりなさいおとうさん」

タラ「おばあちゃんぼけてなかったですー」

カツオ「タラちゃん!」

タラ「冗談でーす」

波平「みんなかあさんを心配しとったしなぁ」

フネ「えぇ、なんでもなくて良かったですわ」

サザエ「とうさん!お風呂わいてるわよってば」

波平「なんじゃサザエ、わかっとるわ」

サザエ「早く来てよ」


59 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:52:37.67 ID:iKKfsr9PO
波平「サザエ、せかすんじゃない」

サザエ「とうさん…」

波平「サザエ…もしかして、かあさんは…」

サザエ「うん、認知症って…今はまだ軽いみたいだけど…先生が…」

波平「…なんじゃと…かあさんが…ばかな」

サザエ「とうさん、私たちどうしたらいいの?かあさんはいつか…」

波平「…今々、どうこう言えんな…かあさんを1人にせんことだ…」

サザエ「でも、それだけじゃ」

波平「また病院にも行って、先生に指導してもらわんことには…ワシにはわからん」


61 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 15:57:29.35 ID:H3LWA5YO0
波平「カツオ!カツオはどこに行った!!」
フネ「おとうさん、カツオならさっき食べたでしょ」
波平「おぉ・・・そうじゃった・・・・・」

62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:00:57.33 ID:iKKfsr9PO
サザエ「…かあさん…」

波平「サザエ、泣くんじゃない」

サザエ「でも…」

波平「かあさんはまだ元気だ、しっかりしてる、これからを大事にしてやらにゃいかん」

サザエ「とうさん」

波平「かあさんは大丈夫だ、今までかあさんはずっと穏やかじゃったろう」

サザエ「うん」

波平「かあさんは変わらん、かあさんはかあさんのままだ、お前のかあさんであり、ワシの妻だ」


64 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:03:45.98 ID:iKKfsr9PO
サザエ「とうさん…」

波平「心配するな、かあさんはワシが守る」

サザエ「…とうさん、かっこいい」

波平「んん?親をからかうんじゃない…」

サザエ「はい…ふふふ」

フネ「サザエ、おとうさん、ご飯ですよ」

波平「ほれ、行くぞ」

サザエ「うん、はーいかあさん、今手伝うわ」

パタパタ

波平「…さて、どうしたものか…」


68 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:09:28.42 ID:iKKfsr9PO
タラ「すぅーすぅーですー」

マスオ「タラちゃんぐっすり寝てるね」

サザエ「マスオさん」

マスオ「ん?どうしたんだい?サザエ」

サザエ「あの、かあさんのことなんだけど…実は先生に、認知症、って…」

マスオ「えぇーっ!?ほんとかい!?」

サザエ「えぇ、まだ、軽いみたいだけど…」

マスオ「おかあさんが…認知症…そんな…」

サザエ「ねぇ、マスオさん、私、どうしたらいいの?」


70 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:15:29.78 ID:iKKfsr9PO
マスオ「サザエ…」

サザエ「私、いやよ、ちょっと想像しただけで、耐えられない…」

サザエ「かあさんがいつか…全部忘れちゃうなんて…私のことも、ワカメもカツオも」

マスオ「…」

サザエ「いやよ、どうしたらいいの?とうさんは守るって言うけど、どう守るの…」

マスオ「…おとうさんが言ったことは信じようよ、サザエ」

マスオ「おとうさんはおとうさんにしかできないことをするんだ、」

マスオ「だから僕たちも、僕たちにしかできないことを…」

サザエ「だって…記憶は守れないでしょう!?何かに残しておいても…」

サザエ「かあさんがそれを思い出せなかったら、なにもなかったのと同じよ…」


72 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:20:50.65 ID:iKKfsr9PO
タラ「むにゃむにゃ…」

サザエ「タラちゃん、起きちゃったのね」

タラ「ママー、なんで泣いてるですかー?」

サザエ「泣いてないわよ、あくびよタラちゃん」

タラ「パパが泣かしたですかー?」

マスオ「ちがうよタラちゃん」

タラ「パパ許さないですー」

サザエ「大丈夫よタラちゃん、寝なさい」

タラ「パパもぼけちゃったですかー?」

サザエ「タラちゃん!」

タラ「おやすみなさいですー」


75 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:25:02.64 ID:iKKfsr9PO
波平「…かあさんや、起きてるか?」

フネ「ふふ、はい、起きてますよ、どうしたんですか?」

波平「いや…検査のことじゃが…」

フネ「あぁ、疲れでしたよ、おとうさん」

波平「そうか…」

フネ「おとうさんが私を心配してるって、みんなが言うんですよ、からかって」

波平「まったく、しょうがない奴らじゃ」

フネ「うふふ、でも私は嬉しかったですよ、おとうさん」

波平「んん?なんじゃ、かあさんまで…」

フネ「うふふ、はいはい」


80 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:29:20.01 ID:iKKfsr9PO
波平「…もう寝ようかあさん」

フネ「うふふ、はい」

波平「明日からは、ちょっと、ゆっくりしときなさい」

フネ「はい」

波平「おやすみ、かあさん」

フネ「おやすみなさい、おとうさん」

波平「…」

フネ「すー…すー…」

波平「かあさん…ワシは…」

波平「かあさんになにを、してあげられとったかなぁ…」

波平「なぁ、かあさん…」


88 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:46:41.43 ID:iKKfsr9PO
□月◇日

とうさんが、そろそろ、カツオたちに話そうって言ってきた。

そろそろ…っていうのが、悲しくて、こわい。覚悟を決めさせるってこと…?

カツオたちに、なんて伝えたらいいのかしら。カツオたちは疑ってもない。

「かあさん」「おかあさん」「おばあちゃん」って、今まで通りなのに。

カツオなんてまだまだイタズラをして、かあさんに怒られてる。

カツオがイタズラしても、かあさんが怒らない日が、いつかやってくる。

かあさん、まだ叱っててよ。私やとうさんじゃ足りないのよ。

かあさんが、優しく強く叱ってくれてたから…かあさん。かあさん。


92 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 16:52:55.79 ID:iKKfsr9PO
□月×日

今日、とうさんが、仕事帰りにかあさんへ花束を買って帰ってきた。

かあさんは「まぁおとうさん、ありがとうございます」って、

にこにこ、ずーっとお花を見てにこにこしてて、嬉しそうだった。

「おとうさん、どうしたんですか突然」なんて言ってても、にこにこ。

かあさん照れて、顔赤くなっちゃって。私も嬉しかったわよ、かあさん。

かあさん、良かったね。とうさんからの、本当に気持ちのこもった花束よ。

みんな、知らないから、みんなにこにこ。みんな、かあさんの分まで覚えてようね。

明日、カツオたちに話すことに決まった。


100 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:09:05.74 ID:iKKfsr9PO
カツオ「…え?」

ワカメ「どういうこと…なの?おとうさん…」

サザエ「…」

カツオ「とうさん」

波平「かあさんは…認知症、というやつになったんじゃ」

カツオ「かあさんが…」

タラ「おばあちゃんぼけちゃうです…」

ワカメ「本当なの?お姉ちゃん」

サザエ「…本当よ」

カツオ「やだよ…とうさん、治らないの?ねぇ」


104 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:14:13.52 ID:iKKfsr9PO
波平「治ることは…ない、ただ、進行をゆっくりとすることはできるらしい」

カツオ「ゆっくりじゃだめだよ、治らなきゃ!」

サザエ「カツオ…」

カツオ「姉さんもとうさんも、かあさんのこと諦めてるの!?」

波平「そうではない」

カツオ「じゃあとうさん、なんとかしてよ!なんとかしてよ!」

サザエ「カツオ…」

ワカメ「おとうさんおかあさんを助けて、お願いおとうさん」

タラ「おばあちゃん僕たちを忘れちゃうですー」

カツオ「とうさん!」


106 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:23:12.99 ID:iKKfsr9PO
波平「諦めてなどおらん…当然じゃ、大事なかあさんじゃないか」

カツオ「だったら…」

波平「でもな、カツオ、止められないんじゃ」

カツオ「とうさん」

波平「かあさんを、いっぱい、笑顔にしよう、カツオ」

ワカメ「…おかあさんー」

波平「ワカメ、かあさんに、料理のことでもなんでも聞きなさい」

カツオ「…かあさん…」

波平「サザエ、カツオ、ワカメ」

波平「かあさんに、いっぱい、いっぱい、甘えなさい」


109 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:30:06.69 ID:iKKfsr9PO
カツオ「とうさん…僕、やっぱりいやだよ…」

ワカメ「私も…悲しいわ、やだ、おかあさん…」

波平「左様、お前たちに納得してほしいなど思っとらん」

サザエ「とうさん」

波平「ワシは、お前たちに、かあさんと思い出をもっと作って欲しいんじゃ」

カツオ「でも、かあさんは忘れちゃう…そんなの、覚えてる僕たちが悲しいだけじゃないか」

波平「ばかもん!かあさんの分までお前たちが覚えておくんじゃ!」

ワカメ「私たちが?」

波平「なんでもないことでも、思い出そのものがかあさんなんじゃ、わかるか?」


111 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:34:32.77 ID:iKKfsr9PO
波平「かあさんは…お前たちのことが本当に大切で大好きなのじゃ」

ワカメ「ひっく…」

波平「それはわかるじゃろう?」

カツオ「わかるよ…それくらい僕にだって」

波平「じゃから、かあさんとの思い出をいつまでも覚えておくということは」

波平「いつまでももかあさんの愛を覚えておける、思い出せるということなんじゃ」

サザエ「とうさん…」

波平「いいか、磯野家団結の時じゃ」

波平「かあさんを目一杯笑顔にするんじゃ、みんなでな」


117 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:40:57.85 ID:iKKfsr9PO
×月○日

今日、とうさんがみんなに話した。ワカメもカツオも、泣いていた。

あの子たち、まだ幼いのに、それでも、一生懸命受け止めようとしていた。

もっと、もっと、かあさんに甘えて過ごしたらいいわ。

カツオもワカメもまだ小学生。中学高校って、かあさんに見せたかった。

かあさん、かあさん。お袋の味教えてね、かあさん。

かあさん。もっと「サザエ」って呼んでね、かあさん。

私の声、私のこと、いつまでも忘れないで欲しいよ、かあさん


125 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 17:58:46.21 ID:iKKfsr9PO
フネ「今日はみんな、静かですねぇ、おとうさん」

波平「宿題でもしとるのだろう、いいことだ」

フネ「あら、カツオもですかねぇ、ふふ」

波平「…なぁ、かあさんや」

フネ「はい?なんです、おとうさん」

波平「ワシは、かあさんに、いろいろ苦労をかけてきた」

フネ「なんですか、いきなり」

波平「かあさん、かあさんはワシと結婚して、一番嬉しかったことはなんだ?」

フネ「どうしたんですか、おとうさんったら、ふふ」


127 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 18:03:04.56 ID:iKKfsr9PO
波平「…そうだな、すまん、聞くようなことじゃないな、こりゃ」

フネ「うふふ、おとうさん」

波平「ん?なんだ」

フネ「わたしは全部、嬉しかったですよ」

波平「かあさん…」

フネ「一番なんてありません、全部ですよ、おとうさん」

波平「そうか…かあさん、そうか…」

フネ「いやですよおとうさん、改まって聞くんですから」

波平「いや…かあさん、ありがとう…ありがとう」

波平「ワシと結婚してくれて…本当にありがとう」

フネ「わたしこそですよ、おとうさん、もらってくれてありがとうございます、うふふ」


138 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 18:22:28.93 ID:iKKfsr9PO
フネ「サザエ、サザエ」

サザエ「はーい、どうしたの?かあさん」

フネ「このお料理は…どうやって作るんだったけねぇ…」

サザエ「かあさん…」

フネ「いやね、忘れちゃって、恥ずかしい」

サザエ「かあさん、うっかりくらい誰でもするわよ、一緒に作りましょう」

フネ「悪いわねぇ、サザエ」

サザエ「そんなのいいのよかあさん、気にしないで」

フネ「ありがとうね、サザエ」


140 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 18:26:59.25 ID:iKKfsr9PO
フネ「ワカメ」

ワカメ「なぁにおかあさん」

フネ「…あら、なんだったかしら」

ワカメ「おかあさん忘れちゃったの?」

フネ「そうみたい、ふふ、恥ずかしいわ」

ワカメ「おかあさんったら、ふふ」

フネ「思い出したら言いますからね」

ワカメ「はぁい、おかあさん」

フネ「ん?」

ワカメ「おかあさん…おみそ汁、今日一緒に作りたい」

フネ「あら、まぁ、じゃあ一緒に作りましょう、ワカメ」


142 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 18:31:06.79 ID:iKKfsr9PO
フネ「カツオー、カツオ」

カツオ「はぁい、呼んだ?かあさん」

フネ「中嶋くんが来てますよ」

カツオ「あ、いっけね」

フネ「野球に行くの?気をつけて行ってらっしゃい」

カツオ「はい、かあさん」

フネ「ふふふ」

カツオ「かあさん、帰ったら宿題ちゃんとするからね」

フネ「はいはい、わかりました」

カツオ「えへへ」

フネ「じゃあ、サッカー楽しんでいらっしゃいな、カツオ」

カツオ「…うん、行ってきます、かあさん」


156 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 18:57:31.26 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「おかあさーん」

フネ「あぁ、サザエ」

ワカメ「えっ…とあの…」

フネ「?サザエ?」

ワカメ「わたし…ワカメよ…」

フネ「あら、ワカメごめんね、名前間違えちゃうなんてね」

ワカメ「ううん、いいの」

フネ「やだわ、ほんと…ごめんね、サザエ」

ワカメ「えと、おかあさん、電話よ」

フネ「あぁ、はいはい」

ワカメ「おかあさん…」

サザエ「ワカメ、大丈夫?」

ワカメ「お姉ちゃん…ぐす…」


166 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 19:14:14.63 ID:iKKfsr9PO
ガラッ

マスオ「ただいまー」

サザエ「おかえりなさい、マスオさん」

マスオ「かあさんの様子は…?」

サザエ「うん…あんまり…」

フネ「サザエ…?」

サザエ「あ、かあさん」

フネ「…?」

サザエ「えっ…」

マスオ「ただいまです、おかあさん」

フネ「あっ、おかえりなさい、マスオさん」

サザエ「…かあさん」


168 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 19:23:32.38 ID:iKKfsr9PO
フネ「おとうさん、お茶はいかがですか」

波平「うむ、もらおうか」

フネ「はい」

波平「ありがとう、かあさん」

フネ「ふふふ」

波平「ん?なんだかあさん」

フネ「サザエにもワカメにもいい人が見つかるといいですねぇ」

波平「…そうだな」

フネ「ふふふ」

波平「かあさん、お茶、うまいな」

フネ「ふふ、ありがとうございます」


174 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 19:45:33.18 ID:iKKfsr9PO
フネ「カツオーカツオー」

波平「かあさん!」

フネ「カツオーー」

サザエ「どうしたのかあさん!」

フネ「カツオーカツオーー」

カツオ「かあさん、僕ここにいるよ!かあさん!」

フネ「カツオー」

カツオ「かあさん!僕だよ!かあさん!かあさん!」

フネ「カツオ…」

カツオ「僕だよ、かあさんの息子、カツオだよ、ねぇかあさん…」

フネ「カツオ…ごめんね…かあさん、どうしちゃったのかしらねぇ…」


178 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 19:56:29.06 ID:iKKfsr9PO
フネ「サザエ…」

サザエ「かあさん」

フネ「最近…わたし…変じゃないかねぇ…」

サザエ「えっ…」

フネ「もう、年だからねぇ…仕方ないのかね…」

サザエ「そんな…かあさん…」

フネ「ごめんねぇサザエ…」

サザエ「かあさん…」

フネ「サザエやみんなに苦労かけて…」

フネ「わたし、なにやってるのかしらね…」

フネ「ごめんねぇサザエ…ごめんね…」

サザエ「かあさん、苦労なんて…したことないわよ、かあさん…」


191 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 20:15:09.44 ID:iKKfsr9PO
トントン

波平「ん、誰だ」

カツオ「とうさん…」

波平「カツオ…どうした」

カツオ「あのさ、とうさん、かあさんは…だんだん忘れてきてるよね」

波平「…だんだんとな」

カツオ「いつか、僕たちのこと、全部忘れちゃうんだよね」

波平「うむ…」

カツオ「ねぇとうさん、記憶って、なくなったらそれっきりなの?」

カツオ「もう思い出せないの?消えちゃうってこと?」


199 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 20:22:39.51 ID:iKKfsr9PO
波平「ワシにもわからん…忘れていくということだけだ」

カツオ「…とうさん、人は死ぬとき、走馬灯を見るんでしょ」

波平「まぁ…事故の時などみると言うな」

カツオ「それってその人の人生の走馬灯なんでしょ?じゃあ、かあさんは?」

波平「…かあさん?」

カツオ「かあさんは、何を思い出して死んでいくの?」

波平「カツオ…」

カツオ「記憶がなくなるってことは、死ぬとき走馬灯もみれないの?」

カツオ「かあさんは死ぬとき、自分の人生をなにも思い出せないの?」


204 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 20:39:35.78 ID:iKKfsr9PO
波平「カツオ…」

カツオ「かあさんはかあさんじゃなくなっちゃうの…?」

波平「…いや、かあさんはかあさんのままだ…」

カツオ「僕たちを忘れちゃっても?」

波平「左様、かあさんはかあさんだ」

カツオ「…じゃあ、かあさんは何か考えてるの?」

波平「どうだろうな…」

カツオ「忘れていくって、なんなんだろうね、とうさん」

波平「記憶をなくしても、かあさんの愛や優しさはかわらんよカツオ」

カツオ「…僕が知らない男の子になっても?」


208 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 20:56:19.08 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「…お兄ちゃん起きてる?」

カツオ「…起きてるよ」

ワカメ「お兄ちゃん、おかあさん、もうすぐなのかな」

カツオ「…なにが」

ワカメ「おかあさん…もうすぐ…いろんなこと…ぐす…」

カツオ「ワカメ…」

ワカメ「おかあさん、本当に私たちのこと忘れちゃうのかな…本当に?」

カツオ「僕も、忘れてほしくないよ…」

ワカメ「本当になの?私、まだ信じられないよ…おかあさん…」

カツオ「うん、かあさんまだ、覚えてくれてるしね…」


210 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:01:02.57 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「なんかね、お兄ちゃん、私、いろいろと不思議」

カツオ「不思議って?」

ワカメ「私にとってお兄ちゃんはお兄ちゃん、おかあさんはおかあさん」

ワカメ「それを思い出せなくなるなんて、想像できなくて…不思議」

カツオ「そうだね」

ワカメ「おかあさん…おとうさんのことも忘れていって…さみしくないしら…」

カツオ「僕たちが一緒にいるから、きっと大丈夫だよ」

ワカメ「でも、おかあさんの中では、誰もわからないんだよ?おにいちゃん」

ワカメ「誰もわからないなら、自分のこともわからないんじゃないかしら…」


214 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:13:51.55 ID:iKKfsr9PO
カツオ「そうかもしれないけど、だから、僕らが一緒にいるんだよ」

ワカメ「…おかあさんはおかあさんじゃなくなって、誰になるのかしら」

カツオ「かあさんはかあさんだよ、とうさんも言ってたろ」

ワカメ「でも…かあさん…私をサザエって呼んだりしたわ…」

ワカメ「そのうち…私をワカメともサザエとも呼ばなくなって」

カツオ「ワカメ…」

ワカメ「おかあさん、私に買ってくれた洋服とかも、全部忘れちゃうのね」

カツオ「でも、忘れても、たぶんかあさんはまた買うよ、かあさんの優しさだから」


217 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:20:38.16 ID:iKKfsr9PO
カツオ「僕のことがわからなくなっても、僕がケガしたら介抱してくれるし」

カツオ「僕が泣いてたら慰めてくれるし、お腹すいたら食べさせてくれる」

カツオ「そういうのは変わらないんだよ、ワカメ」

ワカメ「でも…さびしい…」

カツオ「さびしくてもだよ、ワカメ、僕たちが覚えているんだよ」

カツオ「記憶と絆はイコールじゃないだろ、絆はそのまんまだ、家族なんだから」

カツオ「ただちょっと…忘れちゃっただけなんだよ…かあさんは…」

ワカメ「おかあさん…」

カツオ「ちょっと…忘れちゃうから…僕たちがかあさんの頭のかわりなんだ…」

カツオ「それだけだよ、ワカメ、な?」


222 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:27:14.33 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「…うん、お兄ちゃん、ありがとう…」

カツオ「もう寝ようワカメ」

ワカメ「うん…おやすみ、お兄ちゃん」

カツオ「おやすみ」

カツオ「(かあさん…)」

カツオ「(かあさん、僕も本当は…さみしいよ、かあさん…)」

カツオ「かあさん…」

ワカメ「…?おにいちゃん…?」

カツオ「かあさん…う…かあ、さん…」

ワカメ「お、おにいちゃん…う…ひっく…」

カツオ「かあさん、かあさぁん…うあ…かあさぁあん」

ワカメ「お、おかあさぁん…おかあさぁあん…ひっく…」


224 : 忍法帖【Lv=30,xxxPT】 2011/10/23(日) 21:32:48.34 ID:syrRbKpS0
波平「母さーん!飯はまだかー?」
フネ 「一昨日食べたでしょ」

226 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:36:03.00 ID:iKKfsr9PO
フネ「サザエーカツオーワカメー」

サザエ「かあさん、どうしたの、夜中よ…」

フネ「…サザエー」

波平「何事だ…!?」

サザエ「とうさん、かあさんが…」

波平「どうしたかあさん、ワシじゃよ」

フネ「…?」

サザエ「かあさん…」

フネ「…カツオー」

波平「かあさん…かあさん…!」

フネ「…?…」

サザエ「かあさんっ…ひっく…」


230 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:49:27.05 ID:iKKfsr9PO
ワカメ「…おかあさん…」

フネ「あらあら、こんにちわ」

ワカメ「…こんにちわ」

フネ「どうかしたの?」

ワカメ「あの、ね、テストで100点とれたの…」

フネ「まぁ、すごいわねぇ」

ワカメ「うん…あの、頭なでなでして?」

フネ「あら、うふふ、こんなおばあちゃんでいいの?」

ワカメ「うん…お願い」

フネ「はいはい」

ワカメ「…ありがとう…(おかあさん…)」


240 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 21:56:44.19 ID:iKKfsr9PO
サザエ「入るわよー」

フネ「あら…」

サザエ「うふふ、ご飯よ」

フネ「まぁ…すみませんねぇ、ありがとうございます」

サザエ「まぁいいのいいの、さ、どうぞ」

フネ「本当においしそうだこと」

サザエ「…かあさんの好きなものよ…」

フネ「なにかおっしゃった?」

サザエ「いいえ…さぁ、たーんと食べて」

フネ「いただきます…まぁ、おいしいわ、ふふ」

サザエ「良かった…」


243 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:01:31.48 ID:iKKfsr9PO
フネ「うふふ…」

サザエ「…かあさん…」

フネ「いつも悪いねぇ、サザエ」

サザエ「!…かあさん…?」

フネ「…?」

サザエ「かあさん…かあさん!」

フネ「あら…どうかしたの…?」

サザエ「かあさんっ…かえってきて…かえってきてよ、かあさん!」

フネ「かあさん…わたし…?」

サザエ「かあさん!サザエよ、かあさん!」

フネ「…まぁ…」

サザエ「かあさぁん…かあさん…私のかあさんよ…ひっく…」

フネ「あらあら…」 なでなで


252 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:19:01.46 ID:iKKfsr9PO
カツオ「かあさん…」

フネ「すー…すー…」

カツオ「…かあさん、寝てる」

フネ「すー…すー…」

カツオ「…かあさんの手…柔らかいなぁ、しわしわだけど…」

カツオ「…かあさん…」

フネ「…ん…」

カツオ「あ、かあさん…」

フネ「あら…?僕、どこの子…?」

カツオ「えと…あ、遊びに来たんだ」

フネ「そう、ふふふ、ここにはおばあちゃんしかいないわよ」

カツオ「えへへ…あ、あのさ、僕とお話をしようよ」

フネ「えぇ」


258 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:26:13.21 ID:iKKfsr9PO
カツオ「あ、あのね…僕くらいの年でおかあさん大好きって…変かなぁ」

フネ「いえいえ、まさか、ちっとも変じゃないですよ」

カツオ「そ、そうだよね!」

フネ「えぇ、もちろん、僕のおかあさんも嬉しいはずよ」

カツオ「…うん、あの、僕カツオって言うんです」

フネ「そう、カツオくんていうの、いい息子さんね」

カツオ「僕…もっといい子になりたいんだ、もっと、もっと」

フネ「もうカツオくんは十分いい子ですよ、まっすぐにおかあさん大好きって言うんですから」

カツオ「…ありがとう(…かあさん)」


265 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:33:08.05 ID:iKKfsr9PO
マスオ「タラちゃん」

タラ「なんですかパパー」

マスオ「タラちゃんは…おばあちゃんと…その…さみしくないかい?」

タラ「さみしくないかいでーす」

マスオ「た、タラちゃん!?」

タラ「おじいちゃん言ってたですー、僕たちが覚えてたら大丈夫って」

タラ「僕たちが覚えてたら、いつでもおばあちゃんに会えるですー」

タラ「だから、おばあちゃんと僕はずーっと一緒ですー」

マスオ「タラちゃん…」

タラ「どうしてパパが泣くですかー?」

マスオ「いやタラちゃん…、その通りだね、ずっとおばあちゃんとみんなは一緒だね…」

タラ「当然でーす」


269 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:40:19.44 ID:iKKfsr9PO
波平「よっこいしょ…」

フネ「あら…」

波平「…かあさんや…」

フネ「…?」

波平「…いや、なんでもないですよ」

フネ「そうですか、ふふ」

波平「綺麗な月ですなぁ」

フネ「ほんと、綺麗ですねぇ」

波平「あなたと見るからでしょうなぁ」

フネ「いやですわ、そんな…」

波平「いやいや、本当です」

フネ「まぁ、もう…ふふ」


279 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:48:15.66 ID:iKKfsr9PO
波平「昔の話なんですがね、気立てのいい女性がいて、すぐ好きになりましてね」

フネ「まぁ、そうなんですか」

波平「その女性とも、よく、こうして月を見とったんですわ」

フネ「あらあら、ふふ」

波平「贅沢させてもやれんのに、飽きることなく月をにこにこ眺めてってですな」

フネ「うふふ」

波平「その横顔が綺麗でなぁ、私は飽きることなくその横顔を眺めとったのです」

フネ「まぁ、ロマンチックですね、ふふ」

波平「お恥ずかしい」

フネ「素敵なお二人ですね」


285 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 22:53:28.13 ID:iKKfsr9PO
波平「ワシはどうだったか知りませんが、あれは素敵な女性だったんですわ」

フネ「あなたも素敵ですよ、そんなロマンチックなお話を聞かせてくれたんですもの」

波平「…かあさん…」

フネ「はい?なにか?」

波平「いえ…それにしても綺麗ですなぁ」

フネ「そうですねぇ」

波平「あなたと見るから綺麗なんですな」

フネ「あら、またおっしゃって…ふふ」

波平「ワシも、全部全部嬉しかったんですわ」

波平「一番なんてない、全部嬉しかったんです」

波平「一番があるとしたら、かあさんだけじゃった」

フネ「ふふ、そうなんですねぇ、うふふ」


290 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:04:16.25 ID:iKKfsr9PO
サザエ「もしもーし」

フネ「あら…」

サザエ「お外で写真とりましょう」

フネ「写真…?」

ワカメ「うん、写真!お願い、一緒にとりたいの」

フネ「まぁ、わたしと?」

カツオ「かあさ…うん、是非一緒にとりたいんだ」

波平「ワシからもお願いします」

フネ「えぇ…こんなおばあちゃんとでいいなら…ふふ」

ワカメ「やったぁ!」

カツオ「やったね!一緒に外に行こうよ」

ワカメ「あ、ずるいおにいちゃん、私も手つなぐ!」


291 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:05:50.86 ID:u48cbJUE0
フネ「ふぇぇ・・・」
に見えた

292 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:07:55.73 ID:iKKfsr9PO
フネ「はいはい…うふふ」

サザエ「…とうさん」

波平「ん?なんだサザエ」

サザエ「…ここ最近、かあさんはもう、チラッとも私たちを思い出さないわ」

波平「そうか…」

サザエ「今までの、時々戻る瞬間が奇跡だったのね」

波平「左様…変わらんのになぁ」

サザエ「なにが?」

波平「かあさんだよ、ほら、見なさい」

波平「笑う顔も声も、やっぱりかあさんだなぁ」


295 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:12:53.00 ID:iKKfsr9PO
カツオ「姉さん早くー」

ワカメ「そうよ、早くー」

サザエ「わかったわよー」

波平「まったく…」

サザエ「はーい、みんな寄ってー」

フネ「ふふふ」

サザエ「あと、みんな笑うのよ~、いい笑顔でね!」

カツオ「…えへへ」

ワカメ「…えへ」

波平「うむ…」

サザエ「とうさんちゃんと笑って」


297 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:17:50.26 ID:iKKfsr9PO
波平「そうは言ってもだな…慣れてないものは…」

フネ「うふふ」

サザエ「あ、そうよー、かあさん良い笑顔よー」

サザエ「(あっ)」

カツオ「(かあさん…)ぐす」

ワカメ「(おかあさん…)ひく…」

波平「(カツオ…ワカメ…)」

サザエ「ちょっとー何て顔してるのよ、ワカメとカツオ」

サザエ「もっと…ちゃんと笑いなさいよ…ひく」

波平「ばかもん、泣く奴があるか、ちゃんと…」

フネ「そうですよ、サザエ」


309 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:25:11.69 ID:iKKfsr9PO
サザエ「!!!!!かあさん!!?」

フネ「しっかりしなさい、サザエ、あなたが家を守るんですよ」

カツオ「かあさん!!!??」

ワカメ「おかあさん!!!??」

フネ「カツオ、のびのびと生きなさい、ワカメもやりたいことをしなさい」

波平「か…かあさん…!!!??」

フネ「おとうさん…幸せを教えてくれてありがとうございます」

波平「かあさん…!!!」

フネ「みんなの気持ちは届いてますよ、本当にありがとうね」

サザエ「かあさぁあん!」

カツオ「かぁさん!」

ワカメ「おかあさぁん!」


318 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:30:50.43 ID:iKKfsr9PO
フネ「あらあら…ふふ…」ぎゅっ…

波平「かあさん…ワシは…ワシは…」

フネ「…」

フネ「あら、どうかされたんですか?」

波平「…かあさん…」

サザエ「え…かあさん?」

フネ「まぁ、みんな泣いて…どうしたんです?」

カツオ「…もう、終わり…?」

フネ「…?」

ワカメ「ひっく…おかあさん…」

波平「かあさん…」ぎゅっ

フネ「えっ、あ、あの…」オロオロ


325 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:37:05.32 ID:iKKfsr9PO
カツオ「あっとうさん…だめだ」

サザエ「しっ、いいのよ」

フネ「あ、あの…」

波平「かあさん、届いとるぞ!ワシらにもちゃんと!」

波平「かあさんの気持ち、ちゃんと届いとるぞ!だから安心しなさい!」

フネ「…」

波平「だから…だから…」

フネ「あら…まぁ、どうしましょう、皆さんのがうつってしまったみたい」

フネ「ふふ、なんでかしらね、こんなおばあちゃんが泣くなんて、変よね、ふふ」

カツオ「…全然変じゃないよ…かあさん…」

フネ「うふふ…おかしいわねぇ」


338 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/23(日) 23:45:21.40 ID:iKKfsr9PO
…ふわふわする。どうしてかしら。

いつもにこにこしてくれて、一緒にいてくれる人達がいて…

とっても優しくしてくれて、うふふ、とってもふわふわする。

あったかいわ、なんだかとっても、あったかい気持ち。

そう、お月さまを見てるみたいな。

誰かしら。優しい人達。教えてもらった気がする。

あぁ、そう、愛と幸せと…家族……

かぞく………

フネ「うふふ」

終わり

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