-
1 : 2016/02/26(金) 18:55:42.61 -
Where there is light, shadows lurk
光あるところに、漆黒の闇ありき。and fear reigns.
古の時代より、人類は闇を恐れた。Yet by the blade of Knights,
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、mankind was given hope.
人類は希望の光を得たのだ。SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456480542
ソース: http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456480542/
-
2 : 2016/02/26(金) 18:57:17.62 -
,,,,-‐,,──,,‐-,,,,,
/⌒ヽ/ <,,,-/ ヽ-,,,>ヽ ヽ/⌒ゝ,
´.l / iゝフ、ニj iニ,,> i i〈 i ヽヽ´
// ヽ i ヽヽ i i // / i i .iヽヽ
/ / i .ヽ 、 '´/ i i ヾ / // i i ヽ ヽ
/ ヽ .i ヽ ヽヽヽi i// i / < i/// j/ .ヽ
/ ヽ / i''' ゝ/ヽ‐''、 ヽ_ヽ/ //i
i ヽ ヽ` 二ヽ゛-' .i i ゛-''/_/ / /i
i ヽ ヽ i、.ヽ二ゝ/ ヽく 二/ ///__i
ヽ/ヽ ゝ‐'' // i ヽ ヽ ─' / iく
i .i ` ヽ__i- 〈 / ii ヽ 〉 ‐i_‐-/ ヽj .i
i〉ヽヽ 、 ヽ / i`´`´ヽヽヽ/ / /.i i
jヾヾヽ ヽ / i i''i'''i'''i''i''i''i,,i〉 ヽ / / /i
i i i i i i /iヽ .ヽ'i''i''i''iフ/iヽ、 i i i /j
iヽi j i i />ヽ ヽニ二ニ/ / /ヽ/i i i/-.j
i ヽi / ゝ、,,,,-‐-,,,,/ヽ ヽ j ii/ j.i
ヽ,,,i i_ヽ/ /ヽ,-i i-、ヽ ヽ ゝ',,、i //
`´ \/ / i .i ヽ ヽヽ/´ `´
\/__.i i__ヽ /
\ i i /
.`´『…太古の昔よりホラーは人の陰我、心の闇を拠り所に魔界より現れ、人間を喰らってきた』
『ホラーの脅威から人々を守るため、鎧を纏って剣を振るう魔戒騎士が生まれ、今に至るまで戦ってきた』
『だが…何事にも、例外は付き物だ』
『人間とホラーが手を取り合い、共に暮らす…この世界ではあり得ない話だとしても、例えば他の世界なら?』
『例えば…それが、より強大な力に立ち向かうためだとしたら』
『最初に断っておくが、このSSでは『牙狼−GARO−』、そして『艦隊これくしょん−艦これ−』双方の世界観や設定に対してかなり独自の解釈、アレンジを加えてある』
『また、牙狼に関して>>1暗黒騎士編とMAKAISENKIと、それまでに公開された映画しか観ていない。零や雷牙の活躍はDVD1巻までしか観ていないから、その辺の設定と矛盾するかもしれない』
『そうだ、オリキャラみたいなヤツも出てくるな』
『ここまでで嫌な予感がした奴。そいつは正しいぜ。迷わずブラウザバックだ。無理して読んで粗探しなんかをする心にも、ホラーは潜んでいるんだぜ』
『…さて、前置きはこのくらいにして、そろそろ始めようか』
『黄金騎士牙狼…冴島鋼牙…その、本当に最後の戦いを!』
…
-
3 : 2016/02/26(金) 18:59:00.69 -
…
ザザーン…ザザーン…
秋雲「…」カリカリ
ザザーン…ザザーン…
秋雲「…」カリカリ
ザッ ザッ ザッ
朧「…秋雲」
秋雲「…うん?」カリカリ
朧「まだ、描いてるんだ」
秋雲「…」ガリッ
秋雲「…まあね」
朧「ねえ…もう、帰ろう。いくら待っても、その絵は現実にはならない…」
ザザーン…
朧「…提督は、戻ってこないんだよ」
ザザーン…
秋雲「…」ジッ
ザザーン…
朧「秋雲…ねえ、皆心配してるから、早く」
ザバァッ バシャッ バシャッ
秋雲「…悪いけど、秋雲は」
ザザッ
??「がはぁっ! …げほっ、げほっ…」
秋雲・朧「!!?」ビクッ
-
4 : 2016/02/26(金) 18:59:41.11 -
??「はぁ…はぁ…こ、ここは…」ヨロ…ヨロ…
秋雲「あ、あんた!」スクッ ザッザッザッザッ…
朧「待って! 深海棲艦かも…」
??「魔戒剣…魔法衣…ある…ザルバ…も、いる…」
秋雲「あんた、大丈夫……っ!!」
朧「敵じゃない? この人は……えっ!?」
朧「嘘…貴方は」
朧「提督!?」
秋雲「パパ!!」
??「…てい、と…く……パパ…?」フラッ
鋼牙「」ドサッ
-
5 : 2016/02/26(金) 19:00:23.02 -
…
鋼牙「」ピクッ
鳳翔「! 気が付かれましたか」
鋼牙「…うぅっ」ムクッ
鋼牙「! 剣が」ガタッ
鳳翔「お、落ち着いてください!」
鋼牙「…」ジッ
鋼牙「…敵じゃない、か」ホッ
鋼牙「ここは…俺は、いつの間にベッドに」
鳳翔「順を追ってお話しします。まずここは、海軍の基地です」
鋼牙「海軍? ここが?」チラッ
ザルバ『…っああ、酷い目にあったぜ』カチカチ
鳳翔「おや、そちらの方も気が付かれたようですね」
ザルバ『…? 嬢ちゃん、オレを見ても驚かねえのか』
鳳翔「ええ。魔導具なら馴染みがありますので」
-
6 : 2016/02/26(金) 19:01:02.60 -
鳳翔「…話を戻します。ここへは、朧さんと秋雲さんが運んできてくれました」
鋼牙「浜辺にいた二人か」
鳳翔「ええ…目立った傷はありませんでしたが、何分ずぶ濡れでしたので、勝手ながらお洋服を替えさせていただきました。もうすぐ乾くと思いますが…」
ザルバ『まさか、魔法衣もか? あの中には…』
鳳翔「…では、次は私の質問に答えてください」
鳳翔「あなたは…冴島提督なのですか?」
鋼牙「…俺は、冴島鋼牙という」
鳳翔「! では、やはり」
鋼牙「だが、俺は軍に入った覚えなど無い。別人だ」
鋼牙「…まだ、名を聞いていなかったな」
鳳翔「あっ、すみません…私は、ここでは鳳翔と呼ばれています」
鋼牙「呼ばれている?」
鳳翔「かつて私は、人としての名を捨て、鳳翔の名を持つ船の魂を身に宿して戦っておりました」
ザルバ『船…そりゃもしかして、空母の名前か』
鳳翔「その通りです」
鋼牙「? 何の話をしている?」
ザルバ『表の歴史も知っとくもんだぜ、鋼牙。太平洋戦争の終わりまで活躍した軍艦さ。そう考えると朧、秋雲ってのも船の名前だな』
鳳翔「今となってはその魂を手放し、後方で皆さんのお世話役に預かる身ですが、皆さんには船としての名前のほうが馴染みが深いのです」
ザルバ『まるで魔戒騎士の修練場だな』
鋼牙「…」グッ
-
7 : 2016/02/26(金) 19:01:57.08 -
鋼牙「…さっきから言っている、魂を宿すとか手放すというのは、一体」
コンコン
鳳翔「どうぞ」
ガチャ
朧「失礼します」
秋雲「ねえ鳳翔さん、さっきの人、気が付いて…!」
鋼牙「ああ、どうにか回復した。礼を言う」
朧「良かったです…あ、アタシ、朧。こっちは秋雲って言います」
秋雲「…ねえ、あんた」
鋼牙「分かっている。…俺は、お前たちの提督とやらではない。まして、お前の父親でもない」
秋雲「! …そっか」
鋼牙「そもそも何故、俺がその冴島提督だと思う?」
秋雲「…」ゴソゴソ
秋雲「これ…」スッ
-
8 : 2016/02/26(金) 19:02:29.03 -
ザルバ『至って普通のロケットだな。魔力の類は感じられないが』
鋼牙「…」パカッ
鋼牙「!!」
ザルバ『おいおい、どうしたんだ』
鋼牙「ザルバ、見ろ」スッ
ザルバ『どれどれ? …!』
ザルバ『この写真の男…お前にそっくりじゃないか!』
鋼牙「だが、俺はまだこんなに老けてはいないぞ…それに、隣にいるのは……邪美?」
秋雲「! ママを知ってるの!?」
鋼牙「お前の母親なのか? と言うことは、間にいるこの娘は」
秋雲「…秋雲さ」
ザルバ『ちょっ、待ってくれよ…てことは、お前さんは』
秋雲「そうさ」コクリ
秋雲「海軍将校にして魔戒法師、冴島鋼牙と、同じく魔戒法師、邪美…その娘が、この秋雲さ」
-
9 : 2016/02/26(金) 19:03:20.08 -
…
ザルバ『…エラいことになっちまったな』
鋼牙「一つ確かなのは、ここが俺たちがいたのとは別の世界だということだ」
ザルバ『本当か? お前、実はこっそり邪美とも』
鋼牙「ザルバっ!」クワッ
ザルバ『じょ、冗談だよ、怒るなって…まあ普通に考えりゃそうだよな。あっちの世界の日本に軍なんて存在しない。それにお前は魔戒騎士であって魔戒法師じゃない』
鋼牙「それに…気を失う直前、微かに聞こえた『深海棲艦』という言葉…何か、嫌な予感がする」スクッ
ザルバ『だが、忘れるなよ。お前がこの世界に来た訳…その、目的を』
鋼牙「…ああ。とにかく、今は剣と魔法衣だ。出るぞ」
ガチャッ
カッ カッ カッ カッ…
「提督! お前、生きてたのかよ!」
鋼牙「…」ピタッ
鋼牙「…誰だ」クルッ
天龍「誰って…オレだよ、天龍だよ。忘れちまったのか? ってか、お前何か若返ってねえか?」
-
10 : 2016/02/26(金) 19:03:52.22 -
鋼牙「俺は、お前たちの知る冴島鋼牙じゃない」
天龍「はぁ? だってお前、提督の服着てるし、顔も一緒だし、何より」ガシッ
鋼牙「っ!」
天龍「…ほら。ちゃんとザルバ付けてんじゃねえか」
ザルバ『なっ、オレを知ってるのか?!』
天龍「当たり前だろ。お前の親父の親父のそのまた親父、ずっと前から友達だったって、よく言ってたじゃねえか」
鋼牙「さっきの二人も、これを見て動じなかったが…」
ザルバ『…』カチッ
鋼牙「…この服は借り物だ。元々来ていた服は、故あって今乾かしている。今からそれを取りに行くところだ」
天龍「乾かすったって、日も暮れちまってるし、どこで……あ、そうだ」ポン
天龍「提督の執務室に暖炉があったな。そこにあるかも知れねえ。案内するぜ」
-
11 : 2016/02/26(金) 19:04:18.39 -
カッ カッ カッ
ザルバ『お前さん、その目はどうしちまったんだ?』
天龍「これか? 目自体は何とも無いんだが、艦としての記憶がこうさせちまうんだよな」
鋼牙「その、船とか艦の魂とか、記憶とか言うのは、一体何なんだ?」
天龍「お前…本当に提督じゃねえのか」
鋼牙「ああ、そうだ。恐らく、お前たちの思っているよりも遥かに突拍子もない話になるが」
天龍「だろうな。まあ、こっちも話せば長くなるから、おいおい話してやるよ。…着いたぜ」ガチャ
ザルバ『上官の部屋だってのに、ノックも無しかよ』
天龍「…持ち主が、いなくなっちまったからな」ギィ…
スタ スタ
鋼牙「…! あった」スタスタ
ファサ
鋼牙「これだけ乾いていれば、着ても問題無いだろう」
天龍「…」
ザルバ『…嬢ちゃん、コイツの着替えでも観てくかい』
天龍「! わ、わりい! ゆっくり着替えててくれ!」ガチャ
バタン
-
12 : 2016/02/26(金) 19:04:46.08 -
…
ギィ
天龍「終わったか…?」ソロリ
鋼牙「ああ」
天龍「そうか、良かった」スタスタ
鋼牙「一つ、訊いてもいいか」
天龍「何だ?」
鋼牙「このコート…運んだのは誰だ?」
天龍「ンなこと、オレが知るわけねえじゃねえか。お前のことだって、さっき知ったばっかだし」
鋼牙「そうか…」パサッ
天龍「…? そのコートに何かあるのか?」ツカツカ
グイッ
鋼牙「あっ、待てっ! 勝手に触るんじゃ」
天龍「! 何だこの剣! かっけえー!」ガシッ
天龍「…っ、熱っ!?」バッ
ザルバ『『熱い』だと? 『重い』じゃなくて…鋼牙!』
鋼牙「ああ!」ガチッ ボウッ
天龍「ライター…?」ジッ
ジジジジジジ…
…シュルルルルル
天龍「…くあっ!?」ガクッ
鋼牙「やはりホラーか…」シィィィィン…
ジャキッ
天龍「ちょっ、な、何のつもりだ!」
鋼牙「とぼけるな! 貴様…魔戒騎士を謀るとは、良い度胸だ」
-
13 : 2016/02/26(金) 19:08:52.15 -
鋼牙「貴様の陰我…俺が断ち切る!」
ウゥーーー…ウゥーーー…
天龍「!」
鋼牙「!?」
『哨戒部隊より入電。大規模な深海棲艦隊が鎮守府に接近中。第一水上打撃部隊・第二水雷戦隊は直ちに出撃、迎撃されたし。繰り返す…』
天龍「…わりいな、お前に付き合ってる暇は無え」ダッ
鋼牙「待てっ!」ダッ
天龍「付いてくんじゃねえ! こっからはオレたちの戦いだ」
鋼牙「知ったことか! ホラーが何のために戦う。そもそも、深海棲艦とは何だ! 人を喰らう方便か」
天龍「…テメェ」ピタッ
鋼牙「っ」
天龍「それが知りたきゃ…電信室に行けよ。オレたちの知ってる提督が、ここでどんなことをしていたか、知るといい」
天龍「あばよ」ダッ
-
14 : 2016/02/26(金) 19:09:19.87 -
…
鋼牙「ここが電信室か…」
ザルバ『良いのかよ? ホラーに憑依された人間の言うことを聞くのか?』
鋼牙「…」
ガチャッ
大淀「第二水雷戦隊、出撃。続いて第一水上打撃部隊…」
長門「月が明るい…海面には常に目を光らせろ。潜水艦が潜んでいるやも知れぬ。ところで」
長門「…そこにいるのは誰だ」クルッ
鋼牙「!」
長門「! 提督!」
大淀「えっ!?」サッ
長門「提督、無事だったか…」
長門「…いや、違う…?」
鋼牙「…」カッ カッ カッ
大淀「だ、誰ですか貴方。部外者は」
鋼牙「俺はこの世界の冴島鋼牙ではない。だが、故あってここにいる」
大淀「何を…」
鋼牙「教えてくれ。お前たちは、一体何者だ。深海棲艦とは、一体何なんだ?」
-
15 : 2016/02/26(金) 19:09:47.41 -
大淀「…今、それを話す時間はありません」
長門「見て分からないのか。今から敵を迎え撃つのだ。我々は」
ツ ツー ツ ツー ツー ツー ツ ツー ツー …
大淀「!」サッ
大淀「先行する哨戒部隊より…敵編成を確認。戦艦二隻、重巡三隻、軽巡二隻、駆逐艦四隻…」
長門「そんなにいるのか…」
長門「何としても食い止めろ。これ以上、ここに近づけさせる訳にはいかない」
大淀「…」カチカチカチ
長門「…さて」
鋼牙「迎え撃つ…戦争でもしているのか」
長門「その通りだ。我々『艦娘』は、深海棲艦と戦っている」
ザルバ『カンムス…また聞き慣れない言葉が出てきやがったぜ』
長門「! その声は、ザルバ…」
ザルバ『おっ、嬢ちゃんも知ってるのか』
長門「ああ。提督も持っていたから…だが、提督は『あの日』の前日、ザルバをお父上に預けられた筈…」
鋼牙「父だと!?」ズイッ
長門「ああ…もしもの時のために、受け継いだ魔導輪を返しておくと」
鋼牙「では、父は…この世界の冴島大河は、生きているのか!?」
長門「冴島元帥…いや、今は冴島大臣か。海軍省のトップだ」
鋼牙「父さん…」グッ
-
16 : 2016/02/26(金) 19:10:36.93 -
長門「…どうやら、貴様は冴島鋼牙で間違いないらしい。しかし、この世界の人間ではないということも…だが、細かい話は後だ」
大淀「迎撃部隊が哨戒部隊と合流。交戦を開始しました」
長門「頼むぞ……貴様にも、映像で見せられれば良いのだが」
大淀「…駆逐艦三隻撃沈。軽巡、重巡一隻大破…」
長門「よし、押している…」
長門「…本来なら、ここにいるのはこの世界の冴島鋼牙の筈なのだ」
鋼牙「それが、この世界の俺の仕事か」
長門「そうだ。だが彼は…提督はあの夜、海の底へと消えた」
長門「…我々を差し置いて」ギリッ
ザルバ『てことは今、ここは指揮官も無しに回してるってことか』
長門「今は私が臨時の指揮官を務めている。だがもうじき、新たな将校が派遣されてくるだろう」
長門「我々は…」
大淀「! 戦艦山城に直撃弾、機関部を損傷し、航行困難です!」
長門「敵は!?」
大淀「大破した二隻はいずれも撃沈。ですが他は健在…」
大淀「!? 残存勢力、迎撃部隊の砲火を無視して突撃を敢行!」
長門「何だと?」
大淀「丁字有利で迎え撃っていましたが、その列を突っ切るように向かってきます! …そんな!」
長門「どうした!」
大淀「山城を曳航していた最上が、避けきれず敵戦艦と衝突…諸共に大破です。…! 駄目、先行しないで!」
鋼牙「今度は何だ!?」
大淀「第二水雷戦隊旗艦、天龍が二隻を保護しようと列を抜け…至近弾を受け、大破炎上…」
鋼牙「天龍…」
ザルバ『さっきの女だな』
-
17 : 2016/02/26(金) 19:11:02.54 -
鋼牙「…おい、お前」
長門「何だ! 今は貴様の質問に」
鋼牙「ここに、人が乗れる船はあるか」
長門「…何をする気だ」
鋼牙「何でも良い! あるのか、無いのか!?」
大淀「入江の小屋に、余暇に誰かが買ったジェットスキーがあった筈ですが…」
鋼牙「分かった」ダッ
長門「あっ、おい!」
…
タタタタタタタ…
ザルバ『おい鋼牙! 本当に行くのかよ。あいつはホラーなんだぜ?』
鋼牙「今更、言い訳などはせん。…救いたい。それだけだ」
鋼牙「…カオルの時も、そうだった」
ザルバ『後悔すんなよ…』
鋼牙「…」タタタタタタ
秋雲「!」ハッ
秋雲「パパ…いや、鋼牙!」
鋼牙「…秋雲か。丁度良かった」
秋雲「丁度良いって、何が? それに、そっちは海だよ。今は行かないほうが良い」
鋼牙「今だから行くんだ。…入江の小屋に案内しろ」
秋雲「入江の小屋ぁ? 何しに行くのさ」
鋼牙「理由は後だ。早くしろ」
秋雲「ンなこと言ったって…敵が、この鎮守府に近づいてきてるんだ。秋雲も今から出撃なんだよね」
ザルバ『スケッチブック持って撃ち合いかよ?』
秋雲「っ、よ、余計なお世話だね!」
鋼牙「では…提督命令だ」
秋雲「!」
鋼牙「小屋に…ジェットスキーのところに案内しろ」
-
18 : 2016/02/26(金) 19:12:25.95 -
…
ザザーン…ザザーン…
天龍「あーあ、下手こいちまった…」
ザザーン…ザザーン…
天龍「艤装も兵装もパーだ…こりゃ死んだな」
天龍「…?」
リ級「」ゴォーッ…
天龍「残党狩りかい。精が出るねえ…」ガシャッ…ガシャッ
天龍「最期に、ちょっと遊んでやるよ。…他の奴らには、手ぇ出すんじゃねえ!」ジャキッ
リ級「」ジャキン カチ カチ カチ
天龍(…あばよ、皆。……提督)
ギュン
…ズシャァァァッ!
-
19 : 2016/02/26(金) 19:12:52.77 -
天龍「え?」
リ級「___!?」
ザアアアアッッッ!
鋼牙「…」ヴゥウンッ ヴゥゥウンッ
鋼牙「はあぁぁぁぁぁ……っ!!」ギュゥゥン
ザァーーーーッ
天龍「お、お前……さっきの」
天龍「っ、よせ! お前、死ぬ気か!?」
鋼牙「」ジャキッ
天龍「剣…まさか」
リ級「___」ザッ ガキン
ズドン ズドン ズドン
鋼牙「」ザ−ッ ザッ ザ−ッ
鋼牙「はあっ!」ブゥンッ
リ級「___!」
ザシュゥッ
リ級「____!?」グラッ
ザバァァァン
リ級「」ズズズズ…
天龍「深海棲艦を…沈めた…? それも、生身で…」
鋼牙「…」ギュン
ザァーーーーッ
天龍「! お、おい、待てよ!」
-
20 : 2016/02/26(金) 19:15:05.06 -
…
ザルバ『鋼牙、今度は複数だぞ!』
鋼牙「分かっている! …飛ぶぞ!」ダンッ
ザルバ『イヤッホーゥ!』
ビシュゥッ ビシィッ
カシィンッ
_ __
//〉 〈/ \
//// ∨/Λ
///// ∨/Λ
/////! l///Λ
|////l{ }l////|
Λ |////Λ r-、 /////l|
Λ \_ ト、 |/////ハ,ィー'´{ }`ーr'//////l} /〉
Λ/ヽ,ノ\ ト} \ ∨////rl |:| ∨ |:|〈l//////l / i/
/ l ゝ‐、 ‾>— 、 | \ `‐ト;.:.:.: }/ 》 人 《 i∨////7´ /イ ガオォウッ
. | |/ λ l `ー— 、| \ トミ/! 乂ソ《O》乂ソ!∨∨ノ 7 /
. | | /\/ | / l\_ ヽヘ {/ Y⌒ ∨ ⌒Y V >ィ/ ∠イ
. | Λトミ | l ,/ ∨\ト、トミゝ \ 人 / 〈彡イ> ´ /
. ∨ /ヽノ ! ! l ヽ >イ ト、,トミヽ,个,イ 彡イ ゝ< /ー 、
∨ / | | l `≪><ゞ`ミ´ヽ 川 イ `彡ヾ><≫'´ー—ヽ__ _
∨ ム l l l `ー≪ ゝ ヽヽ}_{ノノ ヽ ≫一'´::〉 〉 〉 >< ヽ,
. ∨‾\ ', { | l::《 { ト、{,`Y´,}イ〉 } 》::::::::::/ / / 〉 / ><>‐r 、__
. \__乂 ', l| l l::≪ヽ∨WWW∨ノ ≫:::::::/ / / / / / / `7\
トミ彡ィ〉 ', l| l l|:::《ィ ヽ`竺竺´ノヽ》:::::::/ / / / / / / /
/ \Yミ ヽ l| l l::::::::廴ノ 个 ヽノ:::::: / / / / / / / /
. /ヽ} ゝミ \ ヽ } }::::::::::::`ー——'´:::: / / / / / / / / /
. /{/ | } ヽ_ \ \ ヽ |:::::::::::::::::::::::::::::: / / / / / / / / ,/
{ヽr‐'—' /⌒ヽヽ, \ \ \ {:::::::::::::::::::::::::: / ,/ / / / / / / /
ト/ __,/{⌒ヽ ∨ ‾ \_ \ \ \::::::::::::::: // / / / / / / 〈_
〈 / / ゝミ_ } _}‾‾`ー-、二ニニニ/‾‾/ ‾ _/ / ,/ / / / ,ィ / /
ヽ/ ヽ_/`ー‐' }ヽヘ }ヽ_ l|‾‾〉_, イ / / / ,/ _/‾ / _乂_ノ二乂/
ヽ \/ ∨ヘ }〈_r 、 ヽ, l| l| >x ‾‾/ ‾ _/ ‾‾ / __/ /
. /\/〉 ∨{ ヽr-、__) 〉 l| / ‾‾`ー=ニ__,r—‐-ミ-、l__l__/ ヽ
/ ∨ヽ___/ l| |! /‾`ー'´〉 _r—‐Y´‾`ヽヽ// \
/ ,ィ'⌒ヽ二ニ___,イ |l l 〈‾〉 / / / {γ⌒ヽノ// `ー-
.. / / /工ヽ 〉_____ヽ/ `ヽヽ `´/ /,/ 乂__,ノ//
-
21 : 2016/02/26(金) 19:16:49.67 -
牙狼『轟天!』
カッ
,イ
ィ,,,ィ辷イ,ィ
,ィ辷ニニニニ-彡イ彡ィ,,
_,,イ/-‐辷ニニニィ辷ヾ彡彡彡 ,、 .ト、
,,イ´ ヽ二シ ィ‾二二辷、 >彡彡ィ .j ヽ_,ド ', ,,
イ ´ _ニ-‐‐- 、 j 〈_/-‐‐_>キ彡 .',イゞ,,ィ彡i ,、
i<イjjjjニi( {ニ辷‐-=、" 〉二 .ヾヽ ヽィイ彡ッ 〉,''゜,"ジイ7フ"ヾi ヒヒィィィィン!!
‾ヾ辷二二イニ`'''''''ニ二辷-ゝ__ヽ‾ヽ ゝ彡彡ッ `゛辷/ィ‐-、 j j
`''''''''''''ヽ `'''''イ _,,ィ—`゛'‐‐‐二辷‐-ヽ彡彡彡 ,,、 ,,,,,,ィ辷ィヾヾヾ i//
\ jィ二j‐‐‐、 jヾ ヾ‾‾ゝニ辷/77ッッ ィヾ=ニ>///ィヽ/ j"
___ `ヽ 、_ j_ ‾ ', ヽト 、\圭 i_j_j_jソィ二__イイヾ´ ノッ二j
`ヾニ辷三ニ辷‐–,,,,,,_ ‾i_ ヽイ',j ヽ `ヽゝ圭三メ´‾`イ,イY フ-/ゝ _j
‾''''''''‐-ニ辷辷 ‾i ヾ イ /`ヽ、 ヽ彡彡彡メ,,イY´`Yjヾイ'´フ _
‾'''''7‾ヽ ィ ヽ_/`ヾ彡彡彡彡フ,ィヾ',ニ辷、/ィ// ィ-、 _,,_
、=/`ヾ ヾ"j /ゝ-‐‐イヽ彡彡彡ゝノノニ辷 j jィニ7<<ィイ,,-ヽ
i `ヽヽ ィヽ イニ辷辷ィヽ ィニ彡ツYYイj j/ ヾiニ辷二 イ_ノヾ辷ニゝ
,ィ、 ゝ辷 / ,,,,,ィ==イ/ヽ ヽ、i,,,/7ニ辷イ´‾‾‾`ヽ 、 `ヽ辷=,_
i'',j ヾ" // イ /—— 、 7 //、_,,ィ /`ゝ"´二二辷ヽ辷ニニヽ、_jメ',___
ヾツ ,,/ ゝ__ィィ´`ヽ、 >i ii__ィ/ / _ iゝヾヾヽ、ゝゞィ',ト、:: _,,
ゝ,、 ィ-イ''"二_イ辷ニ"‾`ヽ辷j / j jj _,,,イ j /j、__ノノ‾ヾヾ jヽ ヾヾヽ ヽ三圭辷ニ辷ニ=-、,,,ィイ_、
、、 _j‾ 7/ / /´ ド辷イ、 ∨/ j jj / j j j ヽ i ヽ ヾヽヽ ヽ三辷ニ三圭ニ辷ニニニ、ヽ
_', ヽ、iゝiニイヽ i i ヽ `ヽ イ ヽ jイ''''ド∨ /j ヽ i j __`''''丶_jト辷ニニニィイニ=二、`'''''''
,イニヽ ヾ ヾ_ィヽ ヾヽ /⌒‾ヽ /_ ヽヽj_jゝイi / j j j j j // ` `ヾ `
/ ', ) ト、 ヽ<`ヽイ イヾj>'""ィイ⌒ヽ i ==j / iィ ',ヽj j j // 〉イ /
j jヽイイ j j=辷-∠、 ヽ ヽ辷ニイ,,,イ'´‾ jj.', i / / ヽ',ヽヽ_ イj / // j
', j 二辷j/i_/ヽ== 、ヽ ヽ / 7 / j ', j i //ヽ ヽ==='" ∨ __i/ i ,ィ
', j´ゝ、 j ‾`ヾ、 j、 ヽ ‾´ / / / jヽ ヽ i辷ニ" i \ / j辷 イ j—‐ィィヽ、__/ j-‐フ
i j> イ ヽ-‐‐ / ヽヽ ヽ / j ヾイヽ" `"シ j-、、i ノ j‾ j `'''" /ィ彡ィ‐ヾ∠ ノ i /
i ヽ ジ ', i `ヽイ > イ_i __/–ゝイ j ヽ‾ ィ==j辷ニニイ彡彡/ ゝ辷イ /ヽヽ、,、、
/ ヾ ヽ \(ごィ辷辷ィニニイ イヽヾ / / j !==<'''"ヽ ヽ`ヽ_jシツツツi i (イlヽ ヽ—イ´ \
i ゝ__ ヽ ヽイ ゝ、 jニ イ (_,,,ィ' ‾'''''''''''ヽ ‾i フヽ ィヽィイゝ、 イト、イヽ‐–、
‾ヽ辷(辷j j j ヽ ヽィ二 ゞ辷ゝ二,,/ .ヽ ニ辷ゝ ヽ辷、 `""'ヾイイ,,イj /''´
\ ス j j j j ヽ ヾイ '´ ‾‾ ‾`''''‐- 、`ヾ、 Y ∨イゝ
ヾ辷イイ j j /`ヽi、 `ヽ、 ヽ、 j j>イモ',''j
ヾイ ヽj j j ,> `ヽ ヽ`ヽィヾ辷ノ j j j
`''' j j_,,,,ィ , \ /ヽ `'''ツツj j
‾ヽ ヽイニヾ-i-j ‾ ヾイイソソ-i
ヽ ヽニイ i i ヾイ辷_j
ド辷 ツツ/j `''゛
',圭彡イ、,'
ヾイ ヾ/
ヾ'
-
22 : 2016/02/26(金) 19:17:17.07 -
…
扶桑「もっと! もっと速度を上げないと!」
三隈「急がないと、ますます距離が……ですが、これ以上はボイラーが融けてしまいますわ…」
長良「天龍ちゃんたち…大丈夫かな」
三隈「敵は皆、こちらに引き寄せた筈ですわ。増援さえ無ければ…」
三隈「…いやぁっ! 重巡と駆逐艦が一隻ずついませんわ!」
扶桑「お願い、山城…持ち堪えて」グッ
扶桑「…全主砲、発射用意」ガリガリガリガリ
扶桑「撃…っ!?」
ダカダッ ダカダッ ダカダッ ダカダッ
扶桑「何の音…それに、あの光は…?」
長良「馬に乗った、金色の……狼?」
三隈「海の上を走ってます! 信じられませんわ…」
ダカダッ ダカダッ ダカダッ
牙狼『轟天!』
ヒヒィィィィン!!
ギン!!
-
23 : 2016/02/26(金) 19:18:21.15 -
,、 {‾` 、
ノ 乂 | ,ノニ\\
∧ ',\ノ`二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二__人__二二二二乂三_/ヽヽ
/ ∧ }'/',三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三/二二,\==《三∧∧
r —f if if i _八ニ丿/i}===彳´‾‾‾`Y´≫∩─┬、、┌┬┐\{〉∧≪∈┼〈>''´‾\三 { { } }三}}三ニ} }
`¨¨>' }ハf´‐='チ∠彡'フ== 、、____人j≫∪─┴''´└┴┘/{〉∨≪∈┼〈>、、_/三 { { } }三}}三ニ} }
, ィメ,\ノ ゝv∨ミミ三〈 三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 \二二/==《三∨∨
. / /\\〉'〈‾ `>-‐======、、 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 `ヽイ 二二二二ヽ三_\, ' , '
レヽ' 7´ __>´''"´:::::::::::::::::::::::ヾ、 `ヽイ | iLニ イ/
/ }イ ハ〃::::::::::::::::::::::::::::::::::}} {__,. イ
<_>'´ニ乂ノV 〉/ ‾‾ }\::::::}}
. 〉<‾‾‾ ノV 〉/‾‾ }ヽ{彳´/:}
〈_/〉二二ニ彡∨〉/ ‾ /ヽ〉ム,/:::} 牙狼『…』
ゝ/v´ヽ\ \∨〉 _/ i}ニ{:::::/
〈∧_/' \ 〉><´ ヽ/'三〉/
r'‐≦ヽ≧x__ \/ \/{}三〈/
/}}∨ 〉二ヽ三≧,{ 〈]==〈〉=|〉三ハ
{彳 i}___//‾'∨ _||_ /三三〉
ヽ_ノ / { { 《 》 ヽ, ∨/‾ /}}
/ 〈 _,ィ≦\\__/‐/‾`ヽ /ノ
{i /三三三三三〈 人___ノ_/_}
/レ'/ハ ∨三三=> ´‾`ヽ三三/
三三∧ ∨—/_ ヾ/ヽ ',三=|
三三r==ミ/{ ,イ 〉-〈ノ彳/三=|長良「剣が大きく…!」
牙狼『うおぉぉぉぉ…!!』
ザンッ ザシュッ ズシャァッ
扶桑「敵が…斬られて、沈んでいく…」
-
24 : 2016/02/26(金) 19:18:57.56 -
…
秋雲「えっ、敵艦隊が全滅?!」
朧「どういうことですか?」
比叡「私にも、何がなんだか…通信では、『黄金色の騎士が現れて深海棲艦を残らず斬り捨てた』と…」
秋雲「…まさか、鋼牙」グッ
…ザバァッ
秋雲「!」ハッ
イ級『』アァァァァ…
秋雲「う、そ」
比叡「秋雲、しっかり!」ジャキッ
比叡「撃ちます、当たって…」
イ級『』ズドン
比叡「は、早いっ…このっ!」ズダァン ズダァン
朧「秋雲! 何ボサッとしてるの! 被弾しちゃう…」
-
25 : 2016/02/26(金) 19:19:57.32 -
秋雲「あ…」
秋雲(何で…体、が)
ヒュルルルルルル…
秋雲「…よ、避けないと」ググッ
フワッ
秋雲「!?」ビクッ
スィーッ
??『…』フワフワ
秋雲「な、何でそんなとこに立ってるのさ…当たっちゃうよ?」
??『…』スッ
秋雲「スケッチブック…何さ、描けっての? 何を」
??『…』
秋雲「ねえ、早く戻りなって。死んじゃうよ。お願いだから、ねえ! 絵なら一杯描いたげるから! 戻って! …戻れよ!!」
ルルルルルルルル……
アキグモ『…』ニコッ
秋雲「秋雲ぉぉーっ!!!!」
…グシャァァッ
-
26 : 2016/02/26(金) 19:42:22.61 -
牙
ーGAROー
狼
-
27 : 2016/02/26(金) 19:47:18.56 -
(アイキャッチのAA無いの許して)
(もうちょっと書き溜めたら続き書きます)
-
32 : 2016/02/27(土) 15:40:28.49 -
…
鳳翔「…五年前、謎の兵器型生命体が海から現れ、人々を襲いました。数少ない生存者の証言から、それらが海中から出現することが分かったため、『深海棲艦』と名付けられました」
鳳翔「彼らには、普通の兵器は効きません。深海棲艦に対抗するために造られたのが、私たち『艦娘』です」
鳳翔「私たちは皆…元々、魔戒法師の見習いでした」
鋼牙「!」
鳳翔「魔戒法師は太古の昔より、『妖精』と呼ばれる存在と共に暮らしてきました。妖精はモノから生まれ、私たちに力を与えてくれます」
ザルバ『…間違いない。ホラーのことだ』
鳳翔「深海棲艦と戦うため…私たちは、かつて存在した軍船の残骸から、妖精を生み出すことにしました。召喚の儀を経て誕生した軍船の妖精を、魔戒法師の娘の体に宿したのです。彼女らは艤装と呼ばれる装備を身に纏うことで、深海棲艦に匹敵する力を持つようになったのです」
鋼牙「娘…女でなければならないのか」
鳳翔「ええ…理由は分かっていませんが」
ザルバ『魔戒騎士が男しかなれないのと一緒だな』
鳳翔「…艦の魂を宿した娘、艦娘。そして、深海棲艦。貴方が知りたがっていらっしゃったことを、一通りお話しいたしました」
鋼牙「…ザルバ」
ザルバ『ああ…』
ザルバ『オレたちの知る言葉に置き換えるなら…艦の残骸や、縁のあるものとか、そういったものに宿る陰我をゲートに魔界から召喚したホラーを、娘さんたちの体に憑依させてたって訳だ』
鋼牙「だが…」ガチッ ボウッ
鳳翔「…?」ジッ
鋼牙「…この女はホラーじゃない」シュウ
-
33 : 2016/02/27(土) 15:41:00.60 -
ザルバ『信じられんな…そりゃ、ホラーだって一枚岩じゃないし、オレみたいに人間に協力的なのもいる。だが、モノに宿るならまだしも人に宿って何とも無いなんて、聞いたことがないぞ』
鋼牙「宿主の命も人格も奪わず、そして何より、可逆的に…」
鳳翔「…あの」
鋼牙「!」
鳳翔「ここまで、私の話せることをお教えしました。ですが、貴方は…一体、何者なのですか?」
鋼牙「…冴島鋼牙。黄金騎士、ガロの称号を継ぐ者だ」
…
鳳翔「魔戒騎士…ホラー…貴方の世界では、そのようなことになっているのですね」
鋼牙「俺はこの世界で、ある使命を」
ガチャ
朧「鳳翔さん!」
ザルバ『お前さんは…朧、だったか』
鳳翔「どうなさいましたか?」
朧「秋雲が、目を覚まさないんです!」
鋼牙「!」ガタッ
朧「入渠ドックに入れても、傷が治らなくて…」
鳳翔「行ってみましょう。…貴方も?」
鋼牙「ああ。この世界では、俺の娘らしいからな」
-
34 : 2016/02/27(土) 15:41:35.79 -
…
タタタタタタ…
鋼牙「…入渠ドックとは?」
鳳翔「傷ついた艦娘を修復する施設です…体だけでなく、心も」ハァハァ
ザルバ『心?』
朧「私たちだって、元は人間だから…死ぬのは、怖い。でも、そういう恐怖とか絶望を洗い流してくれるの」
鋼牙「恐怖や、絶望を…」
鳳翔「…つ、着きました」ゼエゼエ
鳳翔「…鳳翔です、開けてください!」ドンドン
ウィーン…
ザルバ『ゲッ、良いのかよ? ここ、どう見ても風呂じゃねえか』
鋼牙「…」カッ カッ カッ
比叡「あっ、どうも……って、ひえぇっ!? しっ、司令! どうして」
鋼牙「細かいことは後だ。秋雲は?」
比叡「えっと、こちらに」スッ
秋雲「」
ザルバ『見たところ、大きな怪我は無さそうだが…』
朧「そうなんです…駆逐艦からの砲撃が直撃した筈なのに、体の方は無傷で」
比叡「ですが意識を失うと同時に、装備していた艤装が全て外れて、海の中に沈んでしまったんです」
ザルバ『艤装が外れた…』
鋼牙「…」スッ…
グイッ
比叡「司令、何を…」
ガチッ ボウッ
鋼牙「…」ジッ
-
35 : 2016/02/27(土) 15:42:03.38 -
シュウッ
鋼牙「…この入渠ドックというのは、艦娘しか治せないのか」
鳳翔「ええ、そうです」
鋼牙「では、今すぐこの娘を引き上げろ。この娘はもはや、艦娘ではない」
比叡「!?」
朧「どういうことですか!?」
鋼牙「この炎は」ボウッ
朧「…?」ジッ
シュルルルルル…
比叡「! 朧さん、目に何かが」
朧「比叡さんも…これは、文字…?」
シュウ
鋼牙「ホラー…お前たちの言う『妖精』が取り憑いた人間が見ると、目に魔戒文字が浮かび上がる。今の秋雲にはそれが無い」
鳳翔「そんな…どうして」
鋼牙「知らん。だが急げ。早く人間の治療を施すんだ」
比叡「は、はいっ」ガシッ
秋雲「」ザバァ
鳳翔「図らずもドックが空いてしまいましたね…次に修復が必要な方は」
カッ… カッ カッ カッ…
長門「ほら、キリキリ歩け」
天龍「ケッ、オレは大丈夫だっての…」
-
36 : 2016/02/27(土) 15:42:39.57 -
長門「…! 貴様」
天龍「? あっ! てめえ」
鋼牙「何だ、生きていたのか」
天龍「ったりめーだ! そっちこそ、何なんだよさっきの…剣一本で重巡沈めやがって」
長門「気になっているは私も同じだ。だが今は」
天龍「ずりい! オレもやりてえ!!」
鋼牙「なっ」
ザルバ『おいおい…大怪我したってのに、元気な嬢ちゃんだぜ』
長門「ザルバの言うとおりだ。さっさとドックに入れ」グイッ
天龍「おおっと」ヨロッ
鋼牙「!」ガシッ
天龍「あ、わりい…」
鋼牙「…先程は、済まなかった」
天龍「良いってことよ。こっちこそ、お前に助けられちまった。一つ、借りとくぜ…」
天龍「…んだよ、オレの風呂でも観てくのか?」
鋼牙「っ、し、失礼するっ」バッ
鳳翔「あっ、待ってください!」
鋼牙「…何だ」
鳳翔「もう夜も更けてしまいましたが…よろしかったら、ここに泊まっていかれてください。提督のお部屋でよろしければ、ご案内します」
-
37 : 2016/02/27(土) 15:43:06.30 -
…
鋼牙「…」
鋼牙(この世界…元の世界と、一見変わらないように見える)
鋼牙(だが…この世界の日本には軍が残っている。それに、魔戒法師の存在も広く知られているようだ。そして、何より)チラッ
ザルバ『』
鋼牙(…ここの人間は、ホラーと敵対していない。故に、魔戒法師はいてもホラー討伐に特化した魔戒騎士は存在しない)
鋼牙(だからか…俺はカオルと出会うことも無く、邪美と結婚した)
鋼牙「っ、そんなことはどうでも良いな…」ボソッ
鋼牙(気がかりなのは、この世界の俺が何をしていたのか…ザルバを父さんに預けたところから、ただ戦いに赴いたというよりは、予め死を覚悟していたように思える…)
鋼牙(そして何より、この世界で俺が成すべきこと…)
-
39 : 2016/02/27(土) 15:44:46.69 -
…
鋼牙「…ん」パチ
鋼牙「朝…か」ムクリ
スッ キュ
ザルバ『…っ』ピク
ザルバ『…あぁ、台座が無いからちっとも休まらないぜ…』
鋼牙「我慢しろ」
コンコン
鋼牙「! 入っていいぞ」
ギィ
鳳翔「あ、おはようございます…朝ご飯をお作りしましたので、よろしければご一緒に、いかがですか?」
…
カッ カッ カッ カッ
…エッ、コノヒトダレ? テッ、テイトク…? デモナンカ、フンイキチガウキガ ワカイトキノテイトクッテカンジ エーイケメンジャン
鋼牙「…」
鳳翔「こちらの席にどうぞ」ゴト
鋼牙「うむ」ギシ
ザルバ『おお、和食か。美味そうだな』
鋼牙「いただきます…」パク
鋼牙「…!」
鋼牙(ゴンザ並…いや、それ以上…?)モグモグ
鳳翔「お口に合いますでしょうか…?」
鋼牙「っ、あ、ああ……カオルにも、これくらい頑張ってもらいたいものだ」
鳳翔「カオルさん?」
鋼牙「妻だ。いつも残してきてばかりだが…」
ザワッ
ケッコンシテルノ!? ソコマデテイトクニニナクテイイノニー デ、デモ、リョウリガデキレバ… ホウショウサンニカテルワケナイッテ
鳳翔「あっ…ご結婚、なさっているのですね…」シュン
鋼牙「?」キョトン
-
40 : 2016/02/27(土) 15:45:23.73 -
鋼牙「…そうだ。秋雲の様子が知りたい」
鳳翔「! ご、ごめんなさい…秋雲さんなら医務室です。今朝方目を覚ましたので、後でご案内します」
…
秋雲「…」カリカリ
カッ カッ カッ
秋雲「…?」
「秋雲、いるか」
秋雲「ああ、鋼牙…いるよ。入って」ゴソゴソ
シャーッ
鋼牙「調子はどうだ」
秋雲「もう平気。元々体の方は大したことなかったしね」
鋼牙「そうか…」
鋼牙「…スケッチブック」
秋雲「あ…」
鋼牙「絵を描くのか」
秋雲「艦としての記憶がね。天龍の眼帯みたいなものさ」
秋雲「…もう、描かなくても良いんだろうけど」
鋼牙「どういうことだ?」
秋雲「夕べの戦い…真っ直ぐに砲を向けられて、怖くて足が竦んだ秋雲の前に、現れたのよ。『秋雲』の妖精が」
ザルバ『憑依していたホラーか』
秋雲「そいつは秋雲を庇って…バラバラになって、死んじゃった」
鋼牙「それで、お前はただの人間に」
秋雲「…」コクリ
秋雲「元々絵描きが趣味ってわけでもなかったし、船としての記憶を喪った今となっては描く必要もないんだろうけど」
-
41 : 2016/02/27(土) 15:46:10.37 -
鋼牙「それでも」
秋雲「死に際に…アイツ、スケッチブックを指差して言うんだ。『描け』って。描けば、願いだって叶うって…」
鋼牙「願い…それは」
秋雲「パパが…」
ポタ…ポタ…
秋雲「パパが、帰ってくること…」ポロポロ
ギュ
秋雲「!」
鋼牙「…俺は、お前の父親ではない。だが、俺も冴島鋼牙だ。そして…親を喪う悲しみは、よく知っている」
秋雲「…」
鋼牙「そう長くはここにいられない。それでも、ここにいる間だけでも…お前の、力になろう」
秋雲「鋼牙…」ギュ
秋雲「っ、あぁ…こんなイケメンにハグされるなんて、秋雲も果報者だねぇ…グスッ」
ザルバ『おまっ…意外と口が達者じゃねえか』
秋雲「へへっ。……でも、ありがとね。鋼牙」
-
42 : 2016/02/27(土) 15:46:46.61 -
…
長門「…単刀直入に言って、戦況は悪化している」
大淀「提督がいなくなる少し前から、深海棲艦の侵攻は激しくなっていました。昨夜のように、鎮守府近くまで攻めこまれたのも初めてではありません」
鋼牙「哨戒の時点で気付けないのか?」
長門「相手がただの船ならば、そうなのだが…」
ザルバ『文字通り、深海からいきなり現れるって訳か』
鋼牙「そんな危険な折に、この世界の俺は何故海に繰り出した…?」
大淀「…提督は、焦っておいででした」
鋼牙「攻撃の激化にか」
大淀「いえ、それとは別に…詳しくは話されませんでしたが、提督にはその原因が分かっていたようでした」
鋼牙「何だと…?」
長門「提督は、何かを準備していた。巨大な輸送船で、沖に何かを運んでいたのだ。その折に、深海棲艦に襲われて…」
鋼牙「準備…」
ザルバ『住む世界が違うせいで、見当もつかないぜ…』
バンッ
長門「! どうした、入る時はノックをしろと」
長良「大変です! 深海棲艦が、浜辺に上陸してきました!」
-
43 : 2016/02/27(土) 15:47:28.04 -
…
風雲「嫌…来ないで…来ないでよっ!」ズドン ズドン
レ級『』ビュンッ ビュンッ
風雲「っ、当たらな…」
ビュンッ
風雲「!」ビクッ
レ級『キシシシ…』ニカァ
風雲「ひ、あ…」
レ級『イタダキマァ…』クワッ
「そこまでだ!」
ズザッ
レ級『!?』
風雲「えっ!?」
鋼牙「…」ジャキッ
風雲「あっ、今朝の…」
長門「風雲! 早くこっちへ!」
風雲「えっ、でも、この人は」
-
44 : 2016/02/27(土) 15:48:10.51 -
長門「危なくなったら支援する。だが…」
レ級『ニンゲン…艦娘デスラナイ…』
ザルバ『おい鋼牙、こいつ喋るぞ』
鋼牙「そのようだ」シィィィィン…
鋼牙「だが、関係ない…!」チャッ
レ級『オ前カラ、喰ウ!』バッ
ガキィン ガキィン キンッ
風雲「嘘…剣で深海棲艦と渡り合ってる…」
長門「ああ。信じられないことだが」
長門「彼は…魔戒法師よりも戦闘に特化した、魔戒騎士という存在らしい」
風雲「魔戒騎士…」
鋼牙「たあっ!」ザンッ
レ級『キィィッ!』ブンッ
ザンッ ダンッ バシィッ
鋼牙「ええい、ちょこまかと…」ゲシッ
レ級『ギシャアッ!?』ドシャアッ
-
45 : 2016/02/27(土) 15:49:50.15 -
鋼牙「…」バッ
ビシュゥ ビシィッ
カシィンッ
______
ヽ////////\
. \////////\
\/////// ヽ /l
|\ ヽ////////\Λi| /| ガオォウッ
l,//\ ∨///////Λ/} / ,l ,イ
∨///\ ∨/////Λ/ハ/ | /Λ
. ∨////>r〈l/////Λ/ ,/ | /l / lΛ
. ∨/////》|///、/ | / / / / /:::Λ
∨/》》、 / イノヽ/ /\/ / //ll /:::::: Λ
〈《》Yフ 厶斗rくノ / > \ ィ/ / ィ7// / ::::::::: Λ
. }Yi / ,ィi Y^Y´フ/</‾\/‾‾\ /ヽ/ //l/ /:::::::::::::::: Λ
. ト川 〈ツノノ _ムフ / /、___> /\/ / / ヽ/l /::::::::::::::::::::: Λ
{ヾハノ 、/,……∠>、 / } / / / /_/_/ /::::::::::::::::::::::::::ハ
. 7'´{ rミヽゞ、ノ __フフ∠lr—‐イ__/ / / // / /::::::::::::::::::::::::::::l l
ゞ,〉 `rく\ゝ'ハ'´ゞ-く´::::::::/ _/ / / ム | /:::::::::::::::::::::::::::::/ /
. `ヽイゝ'ヽ〉 ハ__《_ノ:::::/ // / / / _/ /:::::::::::::::::::::::::::::/ /
`ゝミrくヽ/:::::/ // / / 〉 /l /:::::::::::::::::::::::::::::/ /
. /ヽ/ヽムィ幺/:::::/ // / / <‾,//:::::::::::::::::::::::::::://
// // /ミ/:::::/ // / / / //::::::::::::::::::::::::::::∠/
. // / / /ミ/:::::/ // / / l// \///\ \
.. // / l l/:::::Λ// /__/l /:l\ ∨//Λ ヽ
| l_/___ヽ/::::/〉/ / ><ィ彡'⌒ヽヽ, ///Λ ヽ /V,//Λ ハ
|/´ヽ:::::/‾‾‾‾‾‾ // Vハ__//////Λ O</`ヽ///l |
/{ l:::://‾‾‾‾‾‾| l /\ V}ll////////Λ ∨ ∨/l |
ハ / /::// ト、 /| l \/ ハl/////////Λ ∨ ヽ l\ ヽ
. { } {:::{ l __| l / /ヽヽ //l//////////Λ ∨ ∨/\ ハ
V´ヽ, l::::l l /_ | / / oヽ`ー—ィ / |///////////Λ \ \/Λ/!
|ハノ |::::| l / / 〈__/ | | /rゝ—‐ィ |////////////Λ \ \Λ |
-
46 : 2016/02/27(土) 15:51:59.85 -
風雲「!!」
長門「黄金色の、騎士…!」
牙狼『…』カシン カシン カシン
レ級『キサマァ…!』ガゴン
ドォン ズドォン
牙狼『…ふんっ!』ブンッ
ガギィンッ ズバァン
レ級『!? コノォ…』バッ
/`ヽ
Λ ////ハ ___
l,Λ ////Λ/ヽ ,イ´/////,\
l/,Λ ,…__,イ//// / / 〉, ////////////ヽ
V//\,,/ノ´ゞV//、/》',ィ l/| ////////////////〉
∨,// } ,' くノ. ;ヽノレ、{/,/ /////////////////,/ 牙狼『…!』チャッ
∨/{》、Y/ , ',イィノフ/ノ/ /////////////////,/
,ゝヽ、、ヽ!,'、イノ,,.'"フ´ //.////////////////,/
,….___ `Zゝゝ7''´;´, /,ゞ"´/ //ィ´ `ヽ/////////
. r' イr-、ヽ`Y二ヽ, `ゞ、ヽイ´,,ノ、〉/ ./´ ハ/イ/////
r—‐'—''ヽゝ{___,ゞl `l‾>ー—–、`ヾィ´/ ./、____/ ∨,/,/
レ'´`ヽ∠イ、.`ヽ / ,/ r、 /‐フ´ィ / 、/,∨ /. x<〉/
. \ 、,ゞ'`、-、ノ/ ノゝ{´7`ヽ;'⌒ヽイ ,Λ/,∨x< x< {/
\ヽ y丶`ヽゝ-'ヽ/イヘ { ノ ノ {////} / __〉
\\πヽ. l lレム, `‐フ i l::〉/,{,_/ x< /\
\\κ丶. Vイノ / /ヽ V///!x< / .〉
\\У \`‐' / 「 ハ、/}/Λ_____/_/
\.\ 彡,ヽー' / /r‐<´ /
\.\_ξ_\'__/ィ´`ヽ>r 、 / |
_,…\ \ \`ヽ><>、 Λ,´ヽく__l
____ム'ミハミ,\ \ \ハ__r'´ ヽΛ /
_ __,r<>〉`ヽ/ゞ、rノミノ, \ ' , \ 〉 ゝ, /
,ィ´}}‾‾ 7フヽ`ヽ \ヽ、r'"´`ヽ > . ` ヽ ヽ/ /ハ
,.ィr'"´ / .,. -'}`´ 〉、ハ\ >ヽヽ、__/ハ,. > . ', /77><ハノ〈
/ {l ノ/ ハ / `ヽ ヽ ハ、/、 } } }_ >'i"i´ \/ 人ハ
/〉 Y'"´フ´ },…,r'‐‐、 ト–、ヽ/__/!, / /'"´ \ヽヽヽ、__ノΛ\〉,
. / / /,/ヽ} >'"´フ ハ ,イ iヽ,rr〉,}/ /ヽ、 `"''‐-..、-‐′∨/Λ
ヽノ'"´ / '/ / /´ヽ´ // ノ `´/ >、 \ ∨/Λ
-
47 : 2016/02/27(土) 15:53:10.64 -
牙狼『はぁぁぁっ!!』
ズシャァァァァッ
レ級『ガアァァァァッッッ!!?』
ドサァッ
レ級『』
牙狼『…』
ヒュンッ ヒュンッ
鋼牙「…終わったか」バサッ
レ級『…』ムク
ザルバ『! 待て、まだアイツ』
レ級『死ネェェェェ!!』バアッ
鋼牙「っ、この…」ジャキッ
鋼牙「!」
シュタッ
ズバァッ
レ級『ガ、ア…』
ドシャッ
-
48 : 2016/02/27(土) 15:54:07.06 -
鋼牙「…お前」
天龍「…へっ、油断大敵だぜ」カチンッ
天龍「下がってな。ぶった斬ったくらいじゃ、コイツは死なねえ」ジャキッ
ズダァン ズダァン ズダァン ズダァン…
レ級『』ビクン ビクッ ビクッ…
『』ピク…
天龍「これで良し、と。…借りは返したぜ、鋼牙」
-
49 : 2016/02/27(土) 15:54:44.15 -
…
「こ、困ります!」
鋼牙「だから、俺は冴島鋼牙だと言っている! 父に…冴島大臣に会わせろ」
鋼牙「深海棲艦が陸に現れた…もう、一刻の猶予も無いんだ!」
「しかし、冴島少将、いえ、大将はもう亡くなった筈です! それなのに…」
鋼牙「良いから…」
ドタドタ
??「な、何の騒ぎですか…あぁっ!?」
「! 倉橋秘書官! それが」
??「ば、馬鹿な…これは夢? …痛いっ、ゆ、夢じゃない! 間違いない!」
ゴンザ「鋼牙様ぁっ!!」ダッ
鋼牙「ゴンザ! ここにいたのか!」
ゴンザ「鋼牙様ぁ~」ヒシッ
ゴンザ「よくぞご無事で戻られました…もうお亡くなりになられたものと…既に二階級特進まで」
鋼牙「あぁ、その、言いづらいのだが、実は」
ゴンザ「さあ、大河様がお待ちです。どうぞこちらに」
-
50 : 2016/02/27(土) 15:56:39.18 -
…
大河「…深海棲艦が徒党を組んで本格的に活動し始めたのは、確かに五年前からだ。だが…実際には、それよりも前から存在はしていた」
鋼牙「!」
大河「原因不明の遭難、沈没…それらは遡ると、丁度二十年前から始まっていた」
鋼牙「二十年、だと?」
大河「ああ…そして、この事実と、魔戒法師に古くから伝わる伝承から、俺と鋼牙…この世界のお前は、ある結論に達した」
大河「…近い内に、深海棲艦は我々に総攻撃を仕掛ける。そして、それを止めるすべは…無い」
鋼牙「…」
鋼牙「…陰我消滅の晩」
大河「それは?」
鋼牙「二十年に一度、この世の全ての陰我が一時的に消滅する夜…この夜だけはホラーは決して現れない、魔戒騎士にとって唯一の安息の日」
大河「ホラー…お前の世界での、妖精のことか」
鋼牙「…」コクン
鋼牙「艦娘の力の源は、艦船の持つ陰我より現れたホラーだ。故にその日、全ての艦娘は力を失う」
大河「…ああ、俺たち魔戒法師に伝わる伝承と、殆ど同じだ。最も俺たちにとっては、忌むべき日として伝わっているが」
鋼牙「どうするんだ。手をこまねいて見ているのか」
大河「そんなことはあり得ん。魔戒法師と科学者の力を結集し、一日だけでも深海棲艦を食い止められる兵器を、洋上に建造していた」
鋼牙「! では、この世界の俺が海に出たのは」
大河「ああ。兵器の部品…その、最後のパーツを海に運ぶためだ」
鋼牙「そうか…それで」
-
51 : 2016/02/27(土) 15:57:46.95 -
鋼牙「っ、感謝する。そこまで分かれば十分だ」
大河「もう、良いのか」
鋼牙「ああ。…本当に、済まなかった。あなたに会うために俺は、あなたの息子の名を騙った」
大河「だが…お前も、冴島鋼牙なんだろう?」
鋼牙「それさえも嘘だとは思わなかったのか」
大河「思うものか。阿門法師の最高傑作は、この世に二つと無いからな」スッ
大河ザルバ『オレがもう一人いるなんて、何か変な気分だぜ』
ザルバ『ああ、同感だ』
大河「それに…分かるのさ。住む世界が違っても…お前は、俺の自慢の息子だ」
鋼牙「!」
鋼牙「…父、さん……!」
ゴンザ「私も…自信を持って言えます。貴方様は、冴島鋼牙であると」
鋼牙「ゴンザ…」
鋼牙「…ありがとうございました。俺は…戦う。それがきっと、俺がこの世界に来た理由だから」
鋼牙「失礼します」ペコリ
カッ カッ カッ…
大河「鋼牙…信じているぞ」
カッ カッ カッ カッ…
鋼牙「…」
鋼牙「…っ」ツゥ…
鋼牙「っ…くっ……」ポタ ポタ
-
52 : 2016/02/27(土) 15:58:14.09 -
鋼牙「父さん…っ、父、さん……」ポロポロ
-
56 : 2016/02/28(日) 08:24:31.25 -
…
ミシ…ミシ…
朧『…』
ミシ…ミシ…
ピタッ
朧『…ドルチェ……』スゥ…
秋雲「Zzzz…」
朧『…アァァァ』ガバァ
「動くな!」
朧『!!』ビクッ
朧「…えっ、私、どうしてここに」キョロキョロ
鋼牙「…朧か」
朧「鋼牙、さん…何で」
秋雲「…何さ、騒がしいなぁ」ムクリ
秋雲「っ! 朧…それに、鋼牙!? 何でここに」
鋼牙「…やはりか」
ザルバ『ああ…残念だが』
鋼牙「朧は部屋に戻れ。今夜のことは忘れろ」
朧「忘れろって、どうして」
鋼牙「良いから! それから、秋雲」
秋雲「ふぇっ?」
鋼牙「今すぐ俺と来い。それから…今後一切、俺のそばを離れるな」
-
57 : 2016/02/28(日) 08:25:06.39 -
…
秋雲「そんな…秋雲の命が、あと百日だなんて」
ザルバ『厳密にはあと九十九日だがな』
鋼牙「あの時、お前を庇った妖精…ホラーが砕け散った時、お前はその血を浴びてしまったんだ」
秋雲「で、でも、よく覚えてないし、もしかしたら勘違いかも」
鋼牙「…血に染まりし者は、ホラーにとって」
ザルバ『最高のご馳走なんだ。その匂いが、ホラーを…妖精を、引き寄せちまう』
秋雲「! じゃあ、さっき朧は、秋雲を食べようとしてたってこと…?」
鋼牙「…そうだ。最も、本人も無意識だったのだろうが」
秋雲「そんな…」
鋼牙「ここからは、覚悟して聞いてくれ。…血に染まりし者の辿る運命…気絶することさえ許されぬ激痛の中、腐り、溶け崩れてゆく」
秋雲「!」
鋼牙「そうなる前に…せめて苦痛を和らげるため、魔戒騎士は斬らねばならん」
秋雲「斬るって、まさか」
鋼牙「ああ。ホラーの血を浴びた者…お前を」
秋雲「…」
-
58 : 2016/02/28(日) 08:25:42.52 -
秋雲「…そっか」ゴロン
秋雲「良いよ。一思いにやっちゃってよ」
鋼牙「…秋雲」
秋雲「大丈夫だって。どうせいつ死ぬか分かったもんじゃないし、今死んだって同じことさ。それに…」
鋼牙「秋雲!」
秋雲「…これで、パパのところに行ける」
ザルバ『帰ってきて欲しいんじゃなかったのか』
秋雲「そんなの…分かってたさ。ホントは帰ってくるわけ無いって。だから…せめて、鋼牙の手で」
鋼牙「秋雲。…それは、最後の手段だ」
秋雲「…?」
鋼牙「俺はかつて…お前と同じように、ホラーの血を浴びた者を救った。そいつは今でも生きている」
秋雲「…」
鋼牙「だから、諦めるな。力になると言っただろう。…必ず、お前を救ってみせる」
-
59 : 2016/02/28(日) 08:27:22.96 -
…
ザルバ『…良いのかよ、鋼牙』
鋼牙「…」
ザルバ『あの嬢ちゃん…』
秋雲『…やだよ。そんな、叶いもしない望み…』
鋼牙「…自暴自棄になっているだけだ」
ザルバ『だとしても、だ。血に染まりし者の浄化に必要な、ヴァランカスの実…あれは、紅蓮の森にある。元いた世界ならな』
鋼牙「…」
ザルバ『だが、この世界ではホラーは狩るべき対象じゃない。それはつまり、無限にホラーを狩り続けるグラウ竜が造られることもないし、グラウ竜が無ければホラーの恐怖心が固まったヴァランカスの実ができることもないんだぞ。分かってるのか?』
鋼牙「分かっている」
ザルバ『だったら、いっそ最初から楽にしてやるのが』
鋼牙「どんなに可能性が低くとも…目の前の命を救う。それが、守りし者だからだ」
ザルバ『…』
鋼牙「幸い、これについてはまだ猶予がある。秋雲は鍵のついた部屋に入れた。じきに助けも来るだろう。差し迫った問題は、深海棲艦だ」
パサッ
ザルバ『…この服』
鋼牙「…冴島鋼牙。暫く、借りるぞ」
シュル パチン パチン バサッ
キュッ
鋼牙「…」
ザルバ『おう、似合ってるぜ』
ガチャッ
カッ カッ カッ カッ
長門「…! 貴様…それに、その服」
鋼牙「長門か、丁度良い。直ちにここの全艦娘に通達しろ」
-
60 : 2016/02/28(日) 08:27:52.03 -
鋼牙「…提督が鎮守府に着任した。これより、艦隊の指揮を執る。と」
-
65 : 2016/02/29(月) 23:31:03.71 -
…
ザワザワ…
カッ カッ カッ カッ…
「「「!」」」
カッ カッ カッ
風雲「あっ、この人昨日の」
エッ、キノウノッテ レキュウヲヒトリデタオシタ… ウソデショ!? テイトクニニテルケド…ダレナノ?
鋼牙「…」
長門「気を付け!」
シン…
長門「提督に、敬礼!」
ザッ
鋼牙「…直れ」
-
66 : 2016/02/29(月) 23:31:43.04 -
鋼牙「まず…誤解の無いように言っておく。俺は、海軍から正規に派遣された将校ではない」
ザワザワ
鋼牙「かと言って、この鎮守府を乗っ取りに来たわけでもない。先日、冴島海軍大臣と面会し、ここにいることの了承は頂いた」
鋼牙「…本題に入ろう」
鋼牙「お前たち艦娘は、元は魔戒法師であったと聞く。ならば、知っているだろう。二十年に一度、全てのホラー…いや、妖精の力が失われる夜」
シン…
鋼牙「近頃の深海棲艦による攻撃の激化については、お前たちの知る通りだ。俺も実際に、この目で見た」
鋼牙「奴らは、妖精の力…すなわち、お前たち艦娘の力が失われる夜を狙い、この地に総攻撃を仕掛けてくる。そしてそれは、今から三日後になる」
「「「!!」」」
鋼牙「その日に備え、前の提督はある準備をしていたと聞く。その概要については先日大臣に確認したが、どこに準備していたのか…彼の乗った船が、どこに向かっていたのかを、俺は知りたい」
「あの…一つ、よろしいですか」
長門「質問は後で…」
鋼牙「いや、構わん。名は?」
足柄「第一遊撃部隊の足柄です。確かに提督は輸送船である場所を目指していましたが、そこは特に強力な深海棲艦が数多く出る海域です」
鋼牙「ああ、大体想像はついている」
足柄「個人的に吶喊作戦は望むところですが、それでも鎮守府近辺まで攻め込まれている現状、そのような場所を目指す目的を教えて下さい」
鋼牙「足柄、と言ったな。お前の疑問はもっともだ。彼の行動に対して、俺も初め、同じ疑問を抱いた。一日、陸への侵攻を止めるのであれば、沿岸に大砲でも置けば良いのではないか、と」
足柄「確かに…」
-
67 : 2016/02/29(月) 23:32:34.04 -
鋼牙「危険を冒してまで目指したということは、そこに設置するのが最も効果的ということ。…何故か。艦娘が動けない以上、陸へは一隻たりとも上げるわけにはいかん。多くを防ぐのでは不十分だ。…全てを防がねばならない」
長門「だが…どうやって」
鋼牙「つまり、全ての深海棲艦がその場所を通るか、或いは」
鋼牙「…そこから生まれるか」
足柄「…最後に、良いですか」
鋼牙「何だ」
足柄「あなたは…一体、何者なんですか?」
鋼牙「…俺は、冴島鋼牙だ」
ザワッ…!
鋼牙「俺はある使命のために、こことは別の世界から来た」
足柄「使命って…?」
鋼牙「分からん。だが、この世界が直面している危機を救うことこそが、その使命なのかもしれん」
鋼牙「…力を、貸してくれ」
-
68 : 2016/02/29(月) 23:33:00.59 -
…
秋雲「…」カリカリ
秋雲「…っ」ガリッ
秋雲「…何でさ…何で、素直に死なせてくれないのさ…」
…ドスッ
秋雲「!」ビクッ
ドスッ ドンドンッ
秋雲「な、何よ…」
…チノ、ニオイ……
秋雲「!!」
『血に染まりし者は妖精にとって、最高のご馳走』
『その匂いが、妖精を引き寄せる』
秋雲「…嫌」
秋雲「嫌だよ…何で秋雲が、こんなこと…」
-
69 : 2016/02/29(月) 23:34:10.55 -
…
ザァーッ
足柄「艦娘に乗って行くなんて、やっぱり無茶よ。ていうか、重いっ!」ヨロヨロ
ザルバ『仕方ないだろ。コイツがジェットスキーを海に乗り捨てちまうんだから』
足柄「こないだの、金ピカのお馬さんに乗って行けば良いじゃない」
鋼牙「…轟天は鎧を身に着けている時しか召喚できない。そして、鎧を召喚できるのは99.9秒の間だけだ」
足柄「それを過ぎると、どうなっちゃうのよ?」
鋼牙「鎧に喰われる」
足柄「はぁ…?」
天龍「おう鋼牙、あんまり難しい話は、足柄には勘弁してやってくれよな」
足柄「ちょっ、失礼ね! …それにしても天龍、新しい提督とやけに仲が良いじゃないの。もしかして…」
天龍「ばっ、そ、そんなんじゃねえっ!」カァァァ
足柄「あら、そう? じゃあ提督に訊いてみようかしら。…ねぇザルバ。この人って、今フリーだったり?」
ザルバ『残念ながら妻子持ちだぜ』
足柄「ガクッ…まぁ、良いけど」
天龍「…マジかよ」ズーン
足柄「えっ、何本気で凹んでるのよ?! まさか図星だった…」
-
70 : 2016/02/29(月) 23:35:16.15 -
吹雪「司令官、もうすぐ目的地です!」
鋼牙「!」
ザルバ『この辺か…見たところ何も無さそうだが』
鋼牙「だが、近くに例の輸送船が沈んでいる筈だ」
足柄「…守れなかった」ボソッ
鋼牙「…」
足柄「護衛艦隊として、随伴していたのに…大量の敵に、手も足も出なくて…私たちを逃がすために、提督は自らを囮に…!」ギリッ
鋼牙「…その犠牲を、無駄にしないことだ」
足柄「分かってるわよ…」
鋼牙「…」
鋼牙「…ザルバ、何か感じるか」
ザルバ『相も変わらず、酷い臭いだ。とびきり濃い陰我が渦巻いてやがる』
ザルバ『だが…海の底から、ちと懐かしい感じの匂いもするな』
鋼牙「懐かしい?」
ザルバ『これは勘だが…ここに沈んでるのは、号竜に近いヤツだろうな』
鋼牙「! では、兵器というのは」
ザルバ『ああ。巨大な人工の魔戒獣か、それに近いもの』
ザルバ『だが…コイツには核が無え』
鋼牙「イデアは、ギャノンの骸を核に使っていたが…それに近いものを、核も無しにどうやって動かす気だったんだ…?」
天龍「なあ…さっきから、何の話してんだ?」
ザルバ『それに、イデアの燃料は人の命だ。そんなこと、ここの鋼牙や大河が許す筈…』
足柄「…! 何か来る」
鋼牙「!」
-
71 : 2016/02/29(月) 23:36:41.16 -
ズズズ…ズズズ…
ザルバ『! 何だこりゃ、凄まじい魔力を感じるぜ』
鋼牙「どこからだ」
ザルバ『そこの嬢ちゃん…』
吹雪「えっ、私ですか?」
ザルバ『…の、後ろだっ!』
吹雪「!!」バッ
ザバァァァァン
装甲空母姫『ミィィィツケタァァァァ!!』ガガガガガ
ザバァン ザバァン ザバァン
ル級flagship『___』
ヲ級flagship『…』
ツ級elite『___』
イ級後期型flagship『__!』
イ級後期型『…__』
足柄「何て数…おまけに、姫級まで」
鋼牙「あの巨大な舟に乗っているのが姫とやらか」
ザルバ『牙狼シリーズのラスボスって大体あんな感じだよな』
鋼牙「ふざけたことを言うな。…足柄、俺の言うとおりに動け」
足柄「了解。もちろん撃っても良いのよね?」
鋼牙「天龍、さっき教えた通りだ」
天龍「おう。世界水準超えの戦い、見せてやるぜ!」
鋼牙「他の者は単縦陣を組み、距離を取って砲撃支援だ。ただし、無理はするな。あくまで俺と足柄、天龍のサポートに徹しろ」
「「「はい!」」」
鋼牙「では…いくぞ!」
-
72 : 2016/02/29(月) 23:37:48.62 -
…
ドンドンッ ガリッ ドスッ ドスッ
秋雲「嫌…嫌だ…」カタカタ
ドルチェ…チノニオイ…
秋雲「何でこんな…もう、嫌だよ…」
秋雲「もう…死んじゃいたい」
「そこをどきなさい!」
秋雲「!?」
…エッ、ホウショウサン? ッテ、ドウシテワタシ、ココニ アッ、ゴメンナサイ…
コンコン
鳳翔「秋雲さん、聞こえますか」
秋雲「鳳翔さん!」ダッ
ガチャッ
鳳翔「遅くなってすみません。鋼牙さんから、あなたのそばにいるようにと」
秋雲「鳳翔さん…!」ギュッ
鳳翔「秋雲さん…」ギュ
秋雲「怖いよ…嫌だよ…死にたくない…」ポロポロ
鳳翔「もう、大丈夫ですよ…」
秋雲「助けてよ…鳳翔さん……鋼牙ぁ…」
鳳翔「今は…信じましょう。皆を…そして、鋼牙さんを」
-
76 : 2016/03/02(水) 19:42:32.84 -
……
…
ガジャリ『…守りし者とは、かくも欲深き者であったか』
鋼牙「そうかもしれない…だが、それでも俺はやらねばならない」
鋼牙「予言に…ガロを継いで戦う雷牙が、ホラーに倒される未来を視た。そうさせるわけにはいかない」
ガジャリ『生と死には関われぬ』
鋼牙「分かっている。ただ、ほんの少しの間だけ、俺の肉体と魂を未来に転移させて欲しい。空間を超えることができるなら、時間を超えることだって出来る筈だ」
ガジャリ『…時を渡るは大業。必ず大きな代償が伴う』
鋼牙「覚悟の上だ」
ガジャリ『…』
ガジャリ『…願え。想像しろ。その時、その場所にいる己の姿を』
鋼牙「!」
シュゥゥゥ…
ガジャリ『忘れるな。望みを叶えたならば、そのままこの世界に戻ることは叶わぬ。『生まれなかった世界』に行き、均衡を保たねばならん』
ガジャリ『…ガロの系譜を、絶やすでないぞ』
……
…
-
77 : 2016/03/02(水) 19:43:13.97 -
…
牙狼『うおおぉぉぉぉっ!!』
天龍「はあぁぁぁぁっ!!」
ザンッ ズシャァァァッ
装甲空母姫『何故ダ…何故ダァァァァァッ!?』ズズズズズズ…
ヒュンッ ヒュンッ
鋼牙「」シュタッ
足柄「ぐえっ…」ヨロッ
天龍「へへっ、どんなもんだ…っ」フラッ
ザルバ『おいおい、大丈夫かよ。こっ酷くやられてるじゃねえか』
天龍「平気平気、入渠すりゃあすぐに治る…」
鋼牙「魔戒騎士でも、ここまでの激戦はそう無い。よく精神が保つな」
足柄「まあね…入渠ドックが体しか治せなかったら、私でもとっくに折れてるわね」
ザルバ『そういや朧が言ってたな。恐怖や絶望を洗い流すと…』
鋼牙「恐怖を、洗い流す…」
鋼牙「!!」ハッ
足柄「ど、どうしたの」
鋼牙「艦娘の抱く恐怖が、憑依したホラーに由来するものだとしたら…」
ザルバ『! 洗い落とされた恐怖心が、湯の中に固まってるかもしれないな』
鋼牙「とにかく、一刻も早く母港に戻るぞ」
-
78 : 2016/03/02(水) 19:44:07.73 -
…
ザァーッ
シュタッ
鋼牙「ご苦労だった。適宜、入渠してくれ」
足柄「どういたしまして。あー、肩が痛い」ズキズキ
タッ タッ タッ タッ
大淀「お疲れ様です」
鋼牙「大淀か。目的は達成できた。後ほど、皆に報告を行う。…その前に」
大淀「何でしょう?」
鋼牙「入渠ドックに使用した湯は、どこに行くんだ?」
大淀「…はい?」
ザルバ『ああ悪い、コイツ、これでも大真面目なんだ』
大淀「え、ええと、一度浄化槽で処理してから、下水に流しますが…」
鋼牙「魔力を使って何かしているわけではないんだな?」
大淀「ええ。傷を治した時点で、水に掛けられた術は切れますから」
鋼牙「では、今すぐ浄化槽のところに案内しろ」
…
カツン カツン カツン
大淀「えっと、鍵をここに…」ガチャガチャ
-
79 : 2016/03/02(水) 19:45:02.23 -
ギィ…
ザルバ『凄え錆と埃だな…』
大淀「トラブルでも起きない限り、誰も立ち入ることはありませんから…」
ザルバ『保守点検くらいちゃんとしろよな…』
鋼牙「…」
カツン カツン カツン
鋼牙「…!!」
大淀「あれが、浄化用のタンクの筈ですが…っ!?」
ザルバ『な、何だありゃ…』
鋼牙「凄い…」
大淀「わ、私も初めて…」
ザルバ『タンクの表面に…ヴァランカスの実が、鈴生りになってやがる…』
カツン カツン カツン
鋼牙「…」スッ
プチッ
鋼牙「…」ジッ
鋼牙「これが…これが、彼女たちの抱いてきた恐怖だというのか…!」グッ
鋼牙「…戻るぞ。一八〇〇に、もう一度艦娘を集めてくれ。それまでに、『用事』を済ませる」
-
80 : 2016/03/02(水) 19:45:49.78 -
…
ダンッ ダンッ ガリガリガリッ ドスッ ドンドンッ
秋雲「…っ」カタカタ
鳳翔「秋雲さん…」ギュッ
秋雲「鋼牙…鋼牙…」
カッ カッ カッ カッ
秋雲「!」
カッ カッ カッ
「何をしている。食堂はそこじゃないだろう」
アッ、テイトク! エッ、マタ、イツノマニココニ…
『しっかりしろよな。起きてんのに夢遊病とかシャレにならないぜ』
…コンコン
鳳翔「私が行きます」スクッ
ガチャ
鋼牙「鳳翔か。今までご苦労だった」
鳳翔「では、やっと…!」
鋼牙「ああ」チラッ
秋雲「鋼牙…ホントに、治せるの…?」
-
81 : 2016/03/02(水) 19:46:19.76 -
鋼牙「必要な物は手に入れた。後は、お前の心持ち次第だ」
スッ
鳳翔「これは…?」
鋼牙「ヴァランカスの実だ。これを絞って、秋雲に飲ませる。そうすれば、秋雲に付いた血を浄化できる」
…
鳳翔「…出来ました」スッ
秋雲「これを、飲めば良いの」
ザルバ『ああ。ただ、それなりの覚悟はしとけよ。楽に、とはいかねえからな』
秋雲「…」ジッ
秋雲「…ええい、ままよ!」グイッ ゴクン
秋雲「…? っく、あ…!」ドクン
鋼牙「!」サッ
秋雲「あっ…うぅっ…」
秋雲「」クタッ
鳳翔「秋雲さん!」
鋼牙「いや、待て…」ピタ
秋雲「…すぅ」
ザルバ『気を失っただけだな。心労が祟ったんだろう』
鳳翔「では、秋雲さんは…」
鋼牙「ああ…」コクン
鋼牙「もう、大丈夫だ。妖精に狙われることも、苦しみの中で命を落とすこともない」
鳳翔「よ、良かった…」ヘナッ
鋼牙「…もう少しだけ、秋雲を見ていてくれ。俺はまだ、やることがある」
-
82 : 2016/03/02(水) 19:47:14.10 -
…
鋼牙「…威力偵察の結果、分かったことを報告する」
シン…
鋼牙「まず、前の提督が海に運んでいたものだが、あれは魔力で動く巨大な兵器だ。妖精の力が失われるその日、兵器は深海棲艦が出現するときに生じる魔力を吸収することで動けるようになる」
鋼牙「問題は、その兵器がまだ完成していないことだ。これでは、魔力があっても動かないだろう」
長門「では、これから組み立てに行くか?」
鋼牙「いや、そんなことをしたら敵の妨害に遭うだけだ」
長門「では、どうするというのだ…!」
鋼牙「兵器など動かなくても良い。…俺が迎え撃つ」
ザワッ…!
長門「む、無茶だ! 貴様の実力は認めているが、それでも」
鋼牙「心配するな。俺は何度も、こういった窮地を乗り越えてきた。今度だって」
長門「しかし…」
天龍「オレたちにも、何かできることはないのかよ!?」
鋼牙「そうだな…お前たちは、祈ってくれ」
ザワザワッ
足柄「い、祈ってるだけなんて、そんな」
ザルバ『馬鹿にしてるんじゃない。魔戒剣や鎧に使われるソウルメタルは、守りたいという強い意志や願いに反応する。最強の魔戒騎士、牙狼の鎧ともなれば、その力もまた格別だ』
鋼牙「お前たちの祈りもまた、俺の力になる」
天龍「祈りが、力に…」
足柄「…」グッ
鋼牙「…だが、決行は明後日だ。明日一日はここを守り抜かねばならん。そしてそれは、お前たちにしかできないことだ」
長門「!」
鋼牙「頼んだぞ。…この世界を、守り抜くんだ」
-
86 : 2016/03/05(土) 22:16:18.88 -
…
鋼牙「…」カリカリ
コンコン
鋼牙「…入れ」カリカリ ペタン
ガチャ
扶桑「失礼します…」
鋼牙「扶桑か。迎撃ご苦労だった。どこまで押した?」
扶桑「目的の海域から、二海里手前まで」
鋼牙「そこまでいけば十分だ。制海権の無い海域には、流石に敵も現れないだろう」
扶桑「…提督は、本当は軍人ではないのですよね?」
鋼牙「? そうだが」
扶桑「何だか、ずっと前から指揮官をされていたみたいで…報告書も、そつなく書かれていますし」
ザルバ『まあ、魔戒騎士だって軍人みたいなもんだしな』
鋼牙「上への報告だって、口頭か紙面かの違いだけだ」
扶桑「そうなのですね…」
扶桑「…あ、そうでした」
鋼牙「今度は何だ?」
扶桑「提督にお見せしたいものがあるんです。ちょっと、来ていただいてよろしいですか?」
-
87 : 2016/03/05(土) 22:16:44.05 -
…
ザッ ザッ ザッ
天龍「…お、来たか」
足柄「こっちこっち!」パタパタ
鋼牙「あれは…」
扶桑「この間、提督が乗って行かれたジェットスキーです。帰投する路で見つけたので、持ち帰ってきました」
天龍「整備して、燃料も満タンにしといたぜ」
鋼牙「そうか。助かる」
ザッザッザッザッ…
秋雲「鋼牙!」
鋼牙「秋雲…」
ザルバ『もう調子も戻ったみたいだな』
秋雲「まあね。それよりもさ…」スッ
秋雲「…ずっと描いてた絵。完成したから、鋼牙にあげるよ」
鋼牙「俺に…良いのか?」
秋雲「うん。もう何の力にもなれない身だけど、せめてこれが、鋼牙の助けになってくれたらと思って」
鋼牙「ああ…」ジッ
ザルバ『描かれてるのは、お前の親父さんか』
秋雲「そのつもりで描き始めたんだけどね。でも、途中から鋼牙に変えた。この絵みたいに、無事に帰ってくるようにって」
鋼牙「…」グッ
-
88 : 2016/03/05(土) 22:17:34.81 -
秋雲「ふぅ…宿ってた妖精は死んじゃって、付いた血も綺麗に消えて、託された絵まで完成したんだね。これで、『秋雲』とは完全に縁が切れたわけだ」
鋼牙「これから、どうする」
秋雲「っても、簡単にここを抜けるわけにはいかないからね。当分、鳳翔さんみたいに後方でお手伝いかな」
鋼牙「そうか。…」
秋雲「…まだ、あたしの名前を教えてなかったね」
鋼牙「!」
秋雲「あたしは、美河。冴島美河」
鋼牙「美河」
秋雲「そう。…鋼牙」
ギュ
秋雲「…絶対、帰ってきてね」
鋼牙「ああ。必ず」
秋雲「約束だよ。…パパ」
鋼牙「美河…分かった。約束する」
鋼牙「…そうだ。一つ、頼みがある」
秋雲「何?」
鋼牙「この絵を描くのに使った筆…それを、俺に譲ってくれないか」
秋雲「筆…?」ゴソゴソ
秋雲「筆っていうか鉛筆だけど、これでよかったら」スッ
鋼牙「ありがとう」
ザルバ『…あ、なるほど。アレか』
秋雲「…?」
-
89 : 2016/03/05(土) 22:18:13.89 -
…
陰我消滅の晩。満月が煌々と照らす夜の海を、ジェットスキーに乗って駆ける。
ガジャリの言っていた『均衡を保つ』こと。その意味が、今なら分かる。
死ぬ運命だった雷牙を救うことで崩れる均衡を元に戻すため、この世界に来た。そしてこの世界で、死ぬ運命だった美河を救った。恐らく、どちらの世界でも『冴島鋼牙の子』は死ぬ運命だったのだ。それが、均衡だったのだ。
雷牙を救う代わりに払う代償。それは、この世界の冴島鋼牙の子である、美河を救うこと。そして鋼牙「雷牙がこれから救う沢山の人々と釣り合うだけの命を、この世界で救うこと…」
ザルバ『…鋼牙。見えてきたぜ』
目の前の海。不気味なほどに凪いだその水面に、巨大な穴が空いていた。
鋼牙「行くぞ、ザルバ」
シートを蹴り、穴の中に飛び込んだ。
剣を抜き放ち、虚空に円を描いた。その軌跡が砕け、光が降り注いだ。
仄暗い水面に足を着いた時、その全身は光り輝く金色の鎧に覆われていた。
-
97 : 2016/03/11(金) 22:51:39.31 -
牙狼『…!』
ザバァン ザバァン ザバァン ザバァン
ザバァン ザバァン ザバァン ザバァン『『『___』』』
『『『___』』』
ザルバ『これじゃあキリが無いぞ!』
牙狼『時間も無い…轟天を』
戦艦棲姫『…』ニヤッ
ズドン
ダァァン
牙狼『ぐああああっ!?』
主砲の直撃を受け、高く跳ね飛ばされる。鎧も解除されてしまった。
鋼牙「…がっ」ドシャ
ザルバ『ここは…元の海か…』
鋼牙「はぁ…はぁ…ここは……!!」
立ち上がり、あたりを見回して、気付いた。
いつの間に海上には数基の巨大な建造物が浮き上がり、鋼牙はその中の一つに乗っていた。鋼牙「これは…砲塔?」
ザルバ『…! 鋼牙、来るぞ!』
鋼牙「!」
-
98 : 2016/03/11(金) 22:52:26.08 -
目の前に変わらず広がる、巨大な淵。そこから這い上がるように、夥しい数の深海棲艦が姿を表した。
ザルバ『畜生…ここまでだってのか』
鋼牙「いや…」
その時、鋼牙の立つ砲塔が唸りを上げた。
鋼牙「!」
ぐらぐらと揺れながら、それは砲を深海棲艦の群れに向けた。
鋼牙「生きている…?」
ザルバ『あの淵が放つ魔力を吸ったってのか…魔力を吸い、吸った方に向けて撃つ。ホラーをゲートごと滅ぼすイデアの行動パターンに似てなくもないが、かなり単純な仕掛けだな』
見ると、周りにある砲塔も同じように動いている。数えて、六基。しかし
ザルバ『…撃たねえのか』
鋼牙「やはり未完成か…」
ザルバ『やっぱり駄目じゃねえか! どうすれば…』
鋼牙「…」
ザルバ『鋼牙?』
鋼牙「…約束したんだ。必ず帰ると」
抜身の剣を掲げ、円を描く。
丸い軌跡が砕け、光が降り注ぐ。鋼牙「俺は…」
心に浮かべるは、秋雲の…我が娘、美河の描いた絵。
鋼牙「守りし者だ!!」
召喚された鎧は、牙狼剣を残して鋼牙の元を離れ、ばらばらになって六基の砲塔の元へ向かった。それぞれが砲と融け合って一つになると、黄金色の輝きを放ち始めた。
-
99 : 2016/03/11(金) 22:53:37.28 -
鋼牙の目の前には、牙狼の兜。碧眼が頷くように煌めくと、それは鋼牙の背中の方へ飛んでいき、融けて一本の巨大な煙突となった。
鋼牙「たあっ!」
足元の砲塔を蹴り、宙へ躍り上がる。背中の煙突が翠の炎を噴き上げると、彼は荒れ狂う波の上に立った。
六つの砲塔が、台座からちぎれて鋼牙の背中に集まる。煙突から六条の金色の鎖が伸び、砲塔を捉えた。ソウルメタルの鎖は融けて新たな台座となり、砲塔と鋼牙を結びつける。辺りが、眩い光に包まれる。ザルバ『こいつは…』
鋼牙「…」
そして、光が収まった時
波を踏み締める男は、背に巨大な煙突を背負い
左右に伸びた船体には、片舷三基の三連装砲を載せ
船腹から伸びた魚雷発射管は、片舷につき二十門
振るう剣の軌跡は、無数の戦闘機となった
煙突から噴き出した魔導火が、夜空に炎で、古の魔戒文字を描く。
-
104 : 2016/03/16(水) 10:49:36.44 -
鳳翔『鋼牙さん…』
鋼牙「全艦載機、発艦始め!」
天龍『鋼牙…』
吹雪『司令官…』
風雲『提督…』
鋼牙「全魚雷発射管、開け!」
足柄『提督…っ』
大淀『提督…どうか』
長門『光、を…』
扶桑『…提督』
鋼牙「全主砲、斉射…」
秋雲『…パパ』
鋼牙「てェェェェっ!!」
-
105 : 2016/03/16(水) 10:50:30.88 -
焔が、海と空を覆った。
空を埋めんばかりの艦載機が爆弾の雨を降らせ、無限の魚雷が敵の脚を削ぎ、翠に燃える砲弾が海を薙いだ。朧「…! 見て」
比叡「海が、燃えてる…?」
秋雲「鋼牙…パパ……」グッ
洋上に浮かぶ、無数の炎の塊。それらが一つ残らず水底に消えた後。海面に空いた巨大な穴は消え失せ、その跡地の真ん中に、それはぽつりと立っていた。
戦艦棲姫『…コノ、ガラクタドモメ』
鋼牙「…」
灼け付いた砲塔が崩れ落ち、海の中へと消えていく。融けた鎧は元の形を取り戻し、鋼牙の体を覆っていく。
渡人の姿が解け、水上に立っていられなくなる前に。牙狼『…』
美河から貰った、すっかり短くなった鉛筆。
牙狼剣を縦に構え、その刃につがえる。牙狼『これで…』
弓を引くように、鉛筆を引くと、剣は弓へ、筆は光の矢へと姿を変えた。
戦艦棲姫『!!』
牙狼『終わりだ!!』
光矢流星。光の矢が放たれ、満身創痍の敵を…
戦艦棲姫『キヤァァァッッ!』
貫いた。
戦艦棲姫『アァ…駄目…ナノネ……』
黒と白の異形がほどけて、二つの人影へと還っていく。消えゆく白の影が、言った。
戦艦棲姫『オ前ハ…何者、ダ…?』
牙狼『我が名はガロ…』
-
107 : 2016/03/16(水) 10:52:14.48 -
戦艦棲姫『…ガロ……希望…カ。ソウカ…』
不思議に安らいだ表情を浮かべ…それは、沈んでいった。
…
ザァァァッ
鋼牙「…」
ザルバ『ツイてたな、鋼牙。ジェットスキーが無事だったなんて』
鋼牙「ああ、そうだな…」
ザルバ『…分かるぜ。後味悪いよな』
鋼牙「まるで、人を斬った後のような…」
ザルバ『…あいつらは、人間とそう変わらない生き物みたいだ。ただ、人間の紡いできた負の記憶から生まれた…だからこそ、奴らは強い陰我を抱えているし、ホラーにとって人間より美味いご馳走になる』
鋼牙「人間の歴史と同じだけ、深海棲艦も存在していたのなら」
ザルバ『上手いこと均衡を保っていたんだろうが、二十年ごとにそれが崩れ…そして、逆転したんだろう。もしもここの人間たちが深海棲艦を駆逐したのなら、次は』
鋼牙「…いや、止めよう。それは、この世界の人間たちが考えることだ」
ザルバ『ま、そうだな。…見えてきたぜ』
鋼牙「!」
ザァァァッ…
ザザザザッ
-
108 : 2016/03/16(水) 10:52:40.61 -
ストッ
秋雲「! 鋼牙!」ダッ
ザッザッザッザッ
秋雲「鋼牙…」ギュッ
鋼牙「美河…約束は、果たしたぞ」
秋雲「鋼牙…鋼牙ぁ…」
ザッザッザッ
天龍「鋼牙! おい皆、鋼牙が帰ってきたぞ!」
ザッザッザッザッザッ
ザワザワッ
鳳翔「鋼牙さん…よくぞ、ご無事で戻られました」
鋼牙「鳳翔…」
長門「ぼんやりとだが、見えたぞ。貴様の姿…」
鋼牙「…あれが、ソウルメタルの力だ」
鋼牙「湧きだした深海棲艦は殲滅した。お前たちの祈りと…この世界の冴島鋼牙が残したもののおかげだ」
大淀「前の提督が残されていたのは…?」
鋼牙「かなり単純な兵器だ。だが、それが役に立った」
鋼牙「後は…」
シュゥゥゥゥ…
秋雲「! 鋼牙、体が…」
ザルバ『ああ、もうお別れみたいだ』
秋雲「そんな…」
鋼牙「…美河」ポン
秋雲「あ…」
鋼牙「心配するな。お前たちなら、きっとやれる。この海を…この世界を、救える」
天龍「何だよ、行っちまうのかよ…」
鋼牙「天龍。教えたことを忘れるな。魔戒騎士の業も、元はといえば魔戒法師のものだ。使えるはずだ」
天龍「…おう!」
鋼牙「鳳翔。美河…秋雲は、もう艦娘ではないが…それでも、もう少しだけ面倒を見てやってくれないか」
鳳翔「ええ、勿論です」
鋼牙「他には…」
足柄「…あの、提督…いいえ、鋼牙!」
鋼牙「足柄か。お前にも世話になった」
足柄「ううん、それは良いの。でも…もし、叶うなら…」
足柄「…また、会えないかしら」
鋼牙「…」
鋼牙「…ああ。機会があれば」
足柄「良かった…」
シュゥゥゥゥ…
鋼牙「…さらばだ。最後に、父に…冴島大臣と、ゴンザに、よろしく頼む」
「はい!」
鋼牙「ではな…」
フワッ
-
109 : 2016/03/16(水) 10:53:11.91 -
……
…
カオル「~♪」サラサラ
スタスタスタ
ゴンザ「お茶をお持ちしました」コト
カオル「ありがとう、ゴンザさん。雷牙は…」チラ
雷牙「」スヤスヤ
ゴンザ「お腹いっぱいのようですなぁ」フフッ
カオル「…あら、カップの数が」
ゴンザ「…予感、でしょうか」
カオル「! じゃあ」
スタスタスタスタ
鋼牙「カオル、それにゴンザ。ここにいたんだな」
カオル「鋼牙!」バッ
ゴンザ「おかえりなさいませ、鋼牙様」
鋼牙「ああ。二人とも、留守番ご苦労だった」
カオル「二人じゃないでしょ」ヒョイ
雷牙「…?」パチ
鋼牙「雷牙も。留守にしてすまなかったな」ツンツン
鋼牙「…キャンパス。今度は何の絵を描いてるんだ?」
カオル「新しい絵本の構想を練ってたんだけど、中々良いのが浮かばなくて…」
鋼牙「そうか…」
鋼牙「…なあカオル」
カオル「どうしたの?」
鋼牙「今度…皆で旅行にでも行かないか」
カオル「」
ゴンザ「」
雷牙「う?」
鋼牙「…どうした? そんなに固まって」
カオル「あ…い、行こうよ! うん、行きたい! 絶対楽しいよ」
ゴンザ「鋼牙様のお口から、そういった言葉が聞けるとは…ど、どちらにいたします?」
鋼牙「どこでも…ただ、船に乗って行きたいな」
カオル「船…っ!」
カオル「新作の構想が浮かんできた。船かぁ…」スッ…
鋼牙「カオル」グッ
カオル「あうっ」
鋼牙「…帰ってきてからで良いだろ」フッ
カオル「…そうだね」ニコッ
-
110 : 2016/03/16(水) 10:53:54.35 -
……
…
天龍「上段から下にこうっ! それからこう構えて…」
木曾「ていっ!」
皐月「やあっ!」
天龍「そうだ。それから…」
木曾「…なあ。敵艦倒すのに、剣術磨いてどうするんだ? あっちは遠距離だぜ?」
天龍「良い質問だ。これはな、魔戒騎士の業だ」
皐月「魔戒騎士? ボクたち魔戒法師とは違うの?」
天龍「ああそうだ。この技を身に付ければな、オレみたいな旧式だって、姫級と渡り合えるんだぜ」
木曾「おお!」
皐月「凄い!」
天龍「実際にオレはこの剣で装甲空母姫を…」
吹雪「…あれ、でも傷を付けたのは殆ど司令官の攻撃でしたよね?」
天龍「うっ、余計なことを言うなぁ!」グワー
…
足柄「はぁ…」
那智「どうしたのだ、この間から溜息ばかり吐いて」
足柄「那智姉さんには分からないわよ…」
那智「…『鋼牙』」ボソッ
足柄「っっっ!!」ドキッ
那智「ふん、戦一辺倒でなくなったのは良いが、だからと言って叶わぬ恋に心を惑わすことはない。そもそも、彼は妻子持ちなのだろう?」
足柄「分かってるわよ…ただ、また逢えたらなって…」ハァ
那智「…」
-
111 : 2016/03/16(水) 10:54:39.79 -
…
ザザーン…ザザーン…
秋雲「…」カリカリ
ザザーン…ザザーン…
秋雲「んーと、ここで…」カリカリ
ザッザッザッザッ
朧「秋雲ー、鳳翔さんが呼んでるよ」
秋雲「あ、やべっ。洗濯物干さなきゃ」スクッ
ザザーン…ザザーン…
朧「…また漫画描いてるの」
秋雲「まあね。一枚の絵に言いたいこと詰め込むには、まだ技量が足りなくてさ」
秋雲「何か、イラストばっかり上手くなっちゃったけど」アハハ
朧「はぁ…」
ザザーン…
朧「絵を描くのも良いけど、鳳翔さんのお手伝いもちゃんとしないと」
秋雲「分かってるって。でもさ…」
ザバァッ バシャッ バシャッ
秋雲「折角、『秋雲』があたしに遺してくれたんだから」
ザザッ
??「げほっげほっ…ここは…俺は、死んだ筈では」
秋雲・朧「「!!?」」ビクッ
-
112 : 2016/03/16(水) 10:55:22.17 -
??「ここは…鎮守府…?」ヨロ…ヨロ…
秋雲「嘘…嘘でしょ、ねえ!」ザッザッザッザッ
朧「あっ、待って!」
ふらふらと立ち上がる、白い服を着た男。
駆け寄ってくる二人の少女を見た瞬間、その顔が驚きと、安堵に染まった。提督「美河! 朧!」
秋雲「パパ…本当に、パパなんだね…」
朧「提督…生きてた…」
涙を流しながら駆けてくる二人を抱きとめると、彼は…冴島鋼牙は、意識を手放した。
-
114 : 2016/03/16(水) 11:04:05.85 -
鋼牙「艦隊これくしょん…?」
これにて完結となります。
クロスオーバーは初めてだったのですが、いかがでしたでしょうか?ここ設定と違うじゃんとか、キャラおかしいじゃんとか、そういったご意見は、静かに、胸の中に、しまっていただけると嬉しいです。
ちなみに>>1MAKAISENKIが一番好きです。映画は蒼哭ノ魔竜ですね。このSSも、蒼哭をベースに作りました。
では、依頼出してきます。処理されるまで、質問にはお答えしたいと思います
最近のコメント